今日も雨は背中を濡らす

同僚のIさんが辞め、もう一人のNさんはあと三日で産休に入る。
Iさんの代わりのパートさんと、Nさんが休んでいるあいだの短期アルバイトの人が来た。

12月1日、師走の声に合わせたか、外はみぞれまじりの冷たい雨、足元から冷気がたちのぼってくる。
ここのところ毎日かならず雨がいくらか降り、日本海側の冬への陰気なプレリュードを奏でているが、殊更に寒い一日だった。  
その前日、東舞鶴に平和堂がオープンしていた。
私は財布を握りしめて敵情視察にいった。
しかしバーゲン品はあったが、安いものはなく、少しく落胆した。
この日も雨が降っていて寒く、つまさきが濡れて冷たさに泣いていた私は、内側にボアがついたアンクルブーツを求めた。
安物のバーゲン品とはいえ、完全防水という文字がうれしい。
翌日にはさっそく、みぞれのなかに履いて出た。  

あたたかいボアのなかに両足をつっこみ、くるぶしまでジーンズの裾で隠して店に到着したとき、新しくきたパートのMさんの足元は私とおそろいのバーゲンブーツに輝いていた。
みぞれは冷たい。


'95.12.3

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