みゃあみゃあ

これはうちのまゆの子供のころアパートの3階で仔猫の声。  
人慣れした雉トラの仔猫が足にまとわりついてくる。
あ、この子はお腹がすいてる。
どうしようか迷ったけど、廊下にポリパックを出して牛乳をやる。  

ぴちゃぴちゃ飲んでいるのでドアを閉める。
なでなでしたかったけどね。  

世の中には先々の面倒が見られないなら猫にミルクをやったりするのはかえって罪だと言う人がいる。
そりゃそうかもしれんけどさ。
でももし、いまミルクをやらなければ、この仔猫は今夜死んでしまうかも知れない(それほど弱ってはいなかったけど)。
今ミルクをやっても明日は生きられないかも知れない。
だけど、明日まで生きられれば、それだけ生き延びる可能性が出てくるんじゃないか。  

アパートでなかったらなぁ。せめて、一階だったらなぁ。  

しばらくして、またみゃあみゃあとか細い声が廊下に響いた。
どこかでドアのあく音がする。
仔猫の声は途絶えた。
どうなったんだろ。
だれかが部屋に入れたのか、それともアパートの外へ連れていったのか。  

このところ寒い日がつづいている。
手のなかの仔猫は暖かかった。
こんな夜は猫が必要だよね、やっぱ。

'96.10.12

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