錆色の空(2)

人々はそろそろと地上に出てきた。
美しく、知性にあふれた市民たち。
一切の穢れを断ち、高度に論理的な人々が、108年に一度、論理で説明できない儀式のために地上に出てくる。

光を見るために。 

体毛を全て取り除いた体にぴったりと人工皮膚をまとい、
更に全身をゆったりとした白い布で覆った姿が錆色の空の下を列をなして進んでいく。
地上をうろつく穢れた者たちは息を殺して物陰から見つめるばかり。
彼らも、そして人々も、水たまりに目をやろうとはしない。 

祭場につく。
人々は布を取り、平らな胸を開いて天を仰ぐ。
見ることはできないが天には美しい円筒が無数に浮かんでいることを人々は知っていた。

静かに、その円筒に火が灯る。

それさえ、人々には感じられた。 
やがて、無数の光が愛を伴って地上に降り注ぐ。
人々が捨てた布が、あっという間に素粒子に分解される。
穢れた者たちも、愛によって分解される。
有機体は全て。
光が降り注ぐのは108年に一度、ほんの3分だけ。
人々はまた静かに、豊かで機能的な格子の中へと戻っていく。
子供のいなくなった世界へ。

へっへっへっへっへっ。  


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