恐怖の浴室

昨夜、いつものように30分タイマーで風呂のガスを燃焼させたが、ぬるくて入れなかったので、今日は最初から50分でやってみた。…ら、熱すぎた。

水を足してうめながら、寒いのでじゃんじゃん湯を体にかける。体も温まり、湯かげんもちょうどよくなり、極楽モードにひたる。やはり狭いの寒いのと文句をいいながらもお風呂は日本人の友である。ちなみに入浴剤は新聞屋がくれた旅の宿。NHK風に言えば×××か(笑)

さー、布団乾燥機で布団もあたたまっている時分である。いっぱいひっかけて寝よう。と、私は浴室から出ようとした。戸が開かない。

戸が開かない。

戸が開かない。ほかでもない風呂場の戸が、である。

「冗談やめてよ!」と叫ぶ。

押しても引いても叩いても蹴飛ばしても開かない。鍵をかけた覚えもないし、かけたとしても内側からノブを回せば開く式の鍵である。

「ちょっと、イヤよ!」と叫ぶ。

私は独り暮らしだ。夜中に尋ねてくる知人のあてはない。猫はいるが、こんな時に猫の手は借りられたとしても使い道がない。開かない戸と格闘しながら、この窮地を脱する方法を考える。一つしかない。窓を開けて裏のアパートの住人に現状を訴えて合鍵を持っている両親に電話してもらい、外から開けてもらうのだ。

富士山を壁面に描いてある内風呂って珍しいよね…夜の夜中である。

当然、私は裸である。

それでも窓は開けた。パニックを起こしたので息苦しくなったのだ。罵り声をあげながら、もう一度ドアに組み付く。開いた。

開いた。

開いた!

「やった! ああ! よかった!」と叫ぶ。

裏のアパートの部屋に明かりがついた。慌てて時計を見ると午前1時である。どうも、お騒がせして申し訳ない。甲高い女の声と眠そうな男の声が聞こえた。裏の(向こうからすれば、こちらが裏)中古住宅での騒ぎを何と解釈しただろうか。

ともかく、どきどきしてとても眠れそうにない。明日から風呂は戸を閉めずに入ることにしよう。

ちなみに二階に上がってみれば、猫はパソコン用の椅子の上で丸くなっていた。役に立たん(笑)


1998年1月17日

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