夢日記その4

舞台は旅館である。

目の前に細くて長い廊下が奥へとのびている。なにか特別な場所へ通じるらしい。女中さんが私の前に上履きをそろえた。茶色いバックスキンのような素材で、指先の分かれていない足袋のような形をしている。私は素直に足を突っ込んだ。すると、そろえてくれた女中さんが慌てて言った。

「あの、左右がちがいます」

私は怪訝に思って、女中さんの顔を見た。薄茶色にショートボブを染めた二十歳前ぐらいの、ほっそりした可愛い女の子だ。彼女は困った顔をしている。しかし、こっちは目の前に並んでいるとおりに足を入れているし、スリッパじゃないんだから左右がちがったら足が入らないはずである。彼女はなおも、私に注意しようとした。

それを先輩らしい女中さんが止めた。先輩といっても、やはり二十歳を超えたか超えないかぐらいの女の子で、こっちはおかめを若くしたような顔をしている。彼女は口に出しては言わなかったが、私はその表情の意味を知っている。

「お客様の間違いを指摘してはいけません」

はっきりと正さなければサービスが提供できないとか、他の人に迷惑になるとか、違法であるとかでないかぎり、客に恥をかかせるのはご法度である。

それはいいけど、どうしてこれの左右が逆だと言うんだ! 釈然としないまま夢は終わる。そして、なぜか全く同じ夢を二日続けて見たのである。なんなんでしょう?


HOME