はじめの第一歩

かまってっベランダで猫を飼うのは難があると判明。少なくとも人恋しいさかり仔猫は無理だ。私が帰宅すると、ベランダでにゃーにゃー派手に呼ばわるのである。メルは声がでかい。初日に比べれば、しゃがれ度は低くなったが。やはりあれは、捨てられた直後で、泣き喚きすぎた果ての嗄れ声だったようだ。

とにかく、足音が聞こえると鳴く。しかも、私の帰宅は深夜である。近所迷惑だ。

仕方がないので、ベランダの戸をあけて中に入れることにした。ベランダに面した部屋はパソコンルームである。その北側の部屋が私の寝室になっている。階段をあがっていくと、中で仔猫が戸口に駆け寄ってくるのがわかる(首輪に鈴がついているから)。戸を開けると、外へ出ようとする。後ろ首をつまんで動きを封じ、その間に戸を閉める。ベランダからパソコンルームになっただけで、状況は同じだ。

私がパソコンルームに入ると、まゆもやってくる。一緒に入り口から入る場合もあれば、ベランダから入ってくることもある。どうやら、私が仔猫をかまうのが気になるのだろう。だいじょうぶ!と、まゆを撫でようとすると、これが嫌がる。仔猫のいる部屋では緊張するらしい。仔猫は、おもいきりすりよってくる。私の体をがじがじ登ってくる。耳をかじりたがる。指もかじる。容赦がないので痛い。るぅも仔猫のころはよく私の指をかじってくれたが、説得したらそのうちやらなくなった(説得の効果かどうかは不明)。まゆは、母親に育てられたためだろう、最初から咬まない猫だった。咬み癖は直しておかないとマズいだろうな。説得は効くだろうか?

しかし、咬まれるよりもっと痛いこともある。

キーボードを使っている時に、メルがのぼってくると邪魔なので、その都度おろしていたのだが、何しろ相手は仔猫である。制止が間に合わなかったことがある。ナニを踏んだのか、1時間かけた入力が一瞬でパーになってしまった。

電源が入っていなければ飼い主も余裕あーっっ、何してくれるねんっ!

叫ぶのと同時に、かなりの勢いで仔猫をキーボードから、はたき落としてしまった。

頭に血が上ったんですな。はたき落としてからびっくりしたけど、メルもかなり驚いたようだ。以後、私がいるときにはキーボードには乗らなくなった。あまりの剣幕に恐れをなしたのかも知れない。それとも、前の飼い主が拳骨でしつけをしていたのか。しつけと言えば、彼女は私がトイレ掃除をはじめると、必ず用を足しに来る。なんで、掃除中にやるんだ、と思うが、こっちを期待に満ちた目で見あげるところを見ると、どうやら「トイレを使うと誉めてもらえる」と認識しているのだ。はいはい、よくできました。

さて、まゆである。

まゆは私がパソコンルームに入ると必ずやってくるが、そこで何をするでもなく、ただ座って仔猫を見ているだけである。メルは、私が構わないでいると、まゆにちょっかいを出し始める。遊んで欲しいのだろうと思うが、まゆは仔猫に寄ってこられると、まず前足で牽制。つづいて逃げ惑う。それから高い位置に移動し、そこから仔猫に前足バシバシ攻撃を加える。高いとこまでいかんと仔猫に対抗できないというのもかなり情けないものがあるぞ、おい。

それが、つい先日のことである。メルに寄られてまゆが、いつもの牽制ではなく、ふっと仔猫の顔をなめたのだ。おおっと思って見ていたら、すぐ日常パターンに逆戻りしたけど、ちょっとは馴れてきたかな?

メルの方も、以前はひたすら食欲最優先で、とにかく食べる、食べられるだけ食べる、という姿勢だったのだが、いくらか余裕が出てきたようで、前のご飯が残っていたり、食事中に私が外へ出ようとすると、中断しておっかけてきたりするようになった。そんなに一所懸命ご飯に執着しなくても大丈夫だということがわかってきたのだろうか。

先行きへの不安が少し減ってきた猫との暮らしである。


03/08/01

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