るぅちゃんがやって来た

るぅちゃんは日本猫の女の子だ。昨日、家の近所の空き家の庭で鳴いているのを見つけた。

しゃがれ声で痩せてガリガリで目はヤニで塞がっている。赤ちゃんではないが成猫でもない。人慣れしているから、以前は飼い猫だったのは確かだ。捨てられたのか、迷子になったのか。猫を見つけても連れて帰れない、と反射的に思ってしまったのはアパート暮らしをしていた名残だ。

昼食を摂ってもどってきてもまだいた。

よく考えたら、うちは一戸建てだ。昼間はいないから自力でミルクの飲めないような赤ちゃん猫なら絶対に飼えないが、仔猫なら飼えるかもしれない。私は彼女に言った。

「あんたの餌とトイレを買うてくるから待っとき。待っといたら飼うたる」

近所のホームセンターで買い物をして戻ってきたら猫の姿はなかった。そんなもんか。しばらくして図書館へ行こうと外へ出たら、また空き家の前にいた。彼女はずいぶんとお腹をすかせていて、ドライフードをがつがつと食べた。私は肘をついてそれを見ながら考えた。次の休みは来週の月曜だ。それまでのあいだ部屋の戸を全部締めておかなければならないだろう。廊下、階段、玄関。糞尿の被害にあっても掃除しやすい。ともかく、この目ヤニでは健康体なわけはない。イシャに連れていかねば。

犬猫病院という看板を出している獣医というのも最近は珍しいんじゃないかと思う。先生は感じのよい中年男性だ。手伝いの女性は奥さんらしい。インフルエンザのようなものと結膜炎にかかっているそうだ。目ヤニをとって目薬を塗って、ぶどう糖と風邪薬の注射をして5000円也。名前は?と聞かれたが、まだ考えてなかった。明日も来なさいと言われたが、明日から5日間は仕事だ。じゃあ、具合が悪いようなら連れてきなさい。分からないことがあったら先生に電話するんだよ、と猫に言っても猫は電話せんと思うぞ、先生(笑)

さて、名前を考えねば。メリザンドにしようかと思ったけど、呼びにくそうなのでやめる。何の脈絡もなくるぅと言う名前が浮かぶ。どっから出てきたんやろ。しかし浮かんだものは仕方ないので、彼女の名前はるぅと決定した。

るぅちゃんは生後三ヶ月くらいだろうと、獣医師は言っていた。迷ったにしろ捨てられたにしろ、かなり長いあいだ外にいたのはまちがいない、あと一日おそかったら死んでいたとも言った。長いあいだというのが何日ぐらいをさすのか分からないが、私が飼うことに異を唱える者はなさそうである。ほどなく判明したことだが、るぅちゃんはちゃんとトイレのしつけをされていた。

捨てられたのではなく迷ったのだと思いたい。でももう、ウチの子だよ(笑)

1997年12月11日


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