猫の戸騒動

ノラが増殖している。猫だからホンマにノラなのか、行儀の悪い飼い猫なのかは不明だが。しばらく姿を見ていなかった胃拡張猫がもどってきたと思ったら、やっぱり馬鹿でかい黒猫がウチから出てくるではないか。また、まゆのご飯が危機である。

べつにノラが大嫌いというわけではない。しかし、まゆのご飯を一粒残らず食べていかれるのは困る。それに、ちょっと見ないあいだに、青い目のノラは被毛の襤褸に拍車がかかっている。病気かノミを持っているかもしれない。そんなものを持ち込まれては堪らない。まゆには可哀相だが、私が留守のあいだは猫の戸を閉めておこう。そのうちノラもあきらめて再びどこか他所へいくだろう。

猫の戸をにらむまゆしかし、ノラが諦めるより、まゆの辛抱のほうが先にキレた。猫の戸には開かないようにするための板がついており、それを差し込んでおいたのだが、なんと、ワクを剥がして、その隙間から外に出たのだ。しかも、外からはワクが動かないため、戻るに戻れなくなっていた。何時間、外にいたのか分からないが、最長なら10時間ぐらい自らを締め出していたことになる。以前、ノラの侵入に困らされていた時にも全く同じことをやったのだが、憶えていなかったようだ。猫に学習能力を期待しても無駄か。

実はその時、私は通販で磁石つきの猫の戸を買っていた。が、しばらくするとノラがいなくなったので、そのままになっていたのだ。今回はさっさと取り付けよう。と、「どなたでもご自由にお入りください」仕様の猫の戸を取り外した。見たところ同じような大きさと思ったのだが、磁石つきの戸は一回り大きかった。穴を広げなければならない。

私は猫の戸を持って、母の家に行った。父はいろいろと不要な道具類を買ってくる癖があったから、糸鋸があるかと思ったのだ。残念ながらなかったので、近所のホームセンターへ買いに行った。200円のものから1000円のものまで各種ある。私は裁縫も工作もきらいだし、多分使うのは今回だけだろう。しかし、200円のは見るからに使い勝手が悪そうだ。中をとって、500円のものを買ってきた。そして母に手伝ってもらって、糸鋸を使い始めたのだが、これが巧くいかない。まっすぐに切れない。

「あんた、そこまで不器用やったんか」と、母が呆れ声を出した。

不器用なんだよぉ(泣) それでも何とか新しい猫の戸を取り付け、まゆの首輪に磁石キーを通した。顔を近づけると開くからね、と教えたのだが理解しない。顔を近づけさせて戸を開けるのだが、その時にロックの外れる音がするのがいけない。まゆは、予測できない音がすると、どんな微かな音でも、びくっとなるのだ。で、驚いて顔をひっこめるものだから再び戸が開かなくなってしまう。もう一度顔を近づければいいのだが、猫は前足を使おうとする動物である。一所懸命猫の戸を引っかく。それでは開かへんねんて。頭突きをかませるんだ、頭突きを!

恨めしげに猫の戸から中をのぞきこむノラしばらくは、まゆが入ろうとするたびに補助しなければならず、つけかえるんじゃなかtったかなと後悔したものだ。慣れるのに一週間もかかるとは思いもよらなかった。ま、何とか出入りはスムーズにできるようになった。しかし、自分しか出入りできないということには気がつかないらしい。以前とおなじく、猫の戸から外をじーっと見ては、ノラが来ると精一杯威嚇しつづけた。ちなみに、ノラの方はまゆの抗議も威嚇もどこ吹く風である。体格差も大きいが、何よりまゆの気が弱いことをお見通しなのだ。

とは言え、もう出入りがかなわず、ご飯にありつけないとなれば、またどっかへ行くだろう。

そう思っていたのだが、彼女はいっかな去る気配がない。侵入を試みることはなくなったが、相変わらず人んちの屋根や庇やベランダを我が物顔で歩き回ったり寝そべったりしている。なんだろう、ご飯は食べられなくても、少なくともウチなら棒で追いまわされたり水をかけられたりする心配がないからだろうか?

猫の溜まり場になっても困るんだけどなあ…


03/03/18

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