家庭内サファリ

まるでライオン?見てください、この精悍な顔つき! これが生後3ヶ月のまゆ。丸顔で可愛かったるぅの娘とは思えない…

顔も野性的なら、やることも野性的。私が着替えの間(笑)で化粧などしていると、たびたび隣の居間からドンッという地響きが聞こえてくる。おどろいて駆けつけても、特に変わった様子も見られず、いったいなんだろうと首をひねっていた、そんなある日。

私は見た。

安物のデジカメでは、これ精一杯ウチの居間の天井には妙な段差があって、ごく狭い隙間が作ってある。まゆは、低い本棚から食器棚、食器棚からカーテンテール、カーテンレールからその隙間に飛び乗り、匍匐前進して反対側まで行く。反対側は壁があるだけで下りるための足がかりがない。

で、なんと垂直壁くだりですわ。途中で壁を蹴りながら飛び下りてくるのである。映画などで、ロープを使った人間がやるのは時々見るが。

そんな危ないことをせずに、回れ右をしてもう一度カーテンレールから下りればいいのに…

と思っていたのだが、どうやらこれがかなり楽しいらしい。足がかりのない壁面のみならず、天井近くまで高さのある本棚の上からもやる。

本棚くだりするまゆ理解できない趣味であった。

しかし、さすがに1歳になるころには、これはやらなくなった。顔も比較的おだやかになった。しかし、新たな趣味は少しも穏やかではなかった。

狩猟である。

まずゴ○○リが標的になった。幸い、食欲の対象にはならなかったが、手足をバラして遊ぶのがお気に入りだ。しかしてなお、生きているのだから始末にわるい。思わず掃除機で吸い取って、ダニ退治用の熱風処理をしてしまう飼い主であった。

つぎに守宮である。守宮のいる家には福があるとか言うが、白い腹を見せてひっくり返っているのでは福は回ってくるまい。

ビニールロッカーは柔らかいせいか対象外であるそして、盛夏の訪れと共に、家の中は虫の屍骸だらけになった。一番よく転がっているのは蝉である。長い地中生活を終えて出てきた途端に猫のおもちゃでは蝉も浮かばれまい。またこれが、死体ならまだしも生きてるやつで遊ばれるとうるさくて仕方がない。秋が来た時は心底ほっとしたものである。

が、寒い時季になると、標的が一気に大きくなり、スズメが災難に遭い始めた。

いたいけな少女のころのまゆ(顔は怖いけど)春には小さなヘビが玄関に転がっていた。なんで家の中にウグイス餅が落ちてるんだ?と思ったらメジロだったこともある。名前を知らない小鳥のときもあった。

理解はできるが、やめてほしい趣味である。

狩りをしない母猫に育てられた猫は、狩りをしないことが多い、と本には書いてあったが、るぅは狩りのカの字もやらないのだ。なのになぜっ!?

食べもしないものを獲らないでほしい。獲ったものを私の枕もとに持ってくるのも勘弁してほしい。リボンにからまって遊んでいた、いたいけな少女はどこへいったのだろう。飼い主の嘆きをよそに、今日もトンボを楽しげに追いかけるワイルドなまゆであった。


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