室内飼い失敗

実は橘は猫、それも女の子の猫を飼うのは初めてである。

これまで、我が家には入れ代わり立ち代わり様々な猫がいたが、いずれも雄の成猫で、いずかたよりともなく現れ、いつき、1・2年するといなくなるのが通例だったのだ。

20年ほどまえに一度だけ、仔猫をもらってきたことがあった。しかし、このコも来て間なしに車にはねられて果敢なくなってしまった。以来、母は「死んだら悲しい」といって猫を飼うことには消極的である。(勝手にいつくのはかまわないらしい。その猫のために縁側に寝床を用意したり、毎日ご飯をやったりしても、家の中に入れなければ「飼っていない」そうだ)

とゆーわけで猫の飼育書を買ってきた。本屋へ行くと、たくさん並んでいる。そのなかで、一番イラストの可愛いのを買ってしまうあたり、やっぱ視覚に訴えるのが販売促進の重要なポイントと言えるであろう。

本には猫は室内で飼うがよし、と書いてあった。なにより外は危険である。交通事故、他の猫とのトラブル、ノミや病気をもらってくる可能性、猫嫌いの人間、近所からの苦情(三味線屋に誘拐されるかも…という項目はなかった)などなど、いちいちもっともである。うちに来ていた猫も三匹まで交通事故で死んでいる。猫は道路のまんなかでピタッと止まっちゃうんだよね。幸い、我が家は細い石段を登った先にあるので目の前は道路ではないが…

ずっと室内で飼っていれば、猫は外へ出たがったりしない。女の子の猫ならなおさらだ。

と、本にも書いてあったし、犬猫病院の先生もそう言った。

だが、しかし。

帰宅して戸を開けた瞬間、足の間をすりぬけて外へ走り出る。それでは、と足元をかばんでガードしながら開けると、しゃがんだ私の肩に飛び乗り、ホップ・ステップで出て行ってしまう。洗濯物を干すのにベランダの戸をあけると、そこからひらりとダイビングである。

どうやらウチにくるまでのるぅは、自由に外出を楽しんでいたらしい。(それで迷子になってりゃ世話はないが)

仕方がない。私自身も外出は大好きだ。というわけで猫の戸を買ってとりつけた。幸い、近所は猫好きな人が多い。…例外もあるけど。回覧などを持っていったときに「ウチの猫、悪さしてませんか?」と聞いているが、今のところ苦情は発生していない。ちょっとどきどきなご近所ライフである。


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