1.まえがき
黒体とは入射する全ての波長の放射を完全に吸収する物体を言います。
ただし、これは従来仮想物体といわれており、炭や煤が比較的似かよった性状を示
めすと考えられていました。
この度弊社において、この仮想物体を実態化し、キルヒホッフの法則*¹を実践し、
21世紀の新素材として提案させて頂きます。
2.黒体の性状
当該黒体は、地元産業である和紙製造業者より出される産業廃棄物(スラッジ)
を再利用し、この有機物に成型加工用助剤、バインダー及び遷移金属を加え、充分
混練後、高温にて加熱焼成し微粉末化したものであります。
黒体の主な物性は次の通りです。
外 観 : 黒色微粉末状
かさ比重 : 0.5〜1.3(g/ml)
比表面積 : 700〜2000(u/g)(BET法による)
平均粒子径: 10μm以下(粒子分布0.1〜10μm)
3.機能と効果について
黒体の応用としては、(1)吸着分解,(2)電磁波遮蔽,(3)マイナスイオンの発生,
(4)熟成,(5)温熱,(6)放電の六つが主なものとしてあげられます。
これらは一般に炭(備長炭、竹炭等)においても同様の効果が得られるとし、広
く流通、商品化されていますが、その実効果には疑問が残ります。
弊社の黒体では、吸着分解、電磁波遮蔽及びマイナスイオンの発生の三点に重きを
おき、これらの問題を抱える諸分野への対応材料(素材)として商品化いたしまし
た。
1)吸着分解
黒体は悪臭物質を吸収して分解することができます。一般的に市販されている活
性炭系の消臭剤では、単なる吸着で終わるために、飽和状態による平衡に達すると
その効果は期待できなくなります。黒体では、吸収の後分解されるがために、その
効果は半永久的に持続されます。(この吸着分解に関しての、アンモニア、
ホルムアルデヒドの分解反応は次の通りです。
NH₃→N₂+H₂O,HCHO→CO₂+H₂O)
ここに、一般的な悪臭物質といわれているアンモニア、ホルムアルデヒド、
ジメチルアミン、プロピオン酸の時間ごとの分解能を図1〜図4に示します。
2)電磁波遮蔽
近年、特別な周波数帯の電磁波を使用する機器や高圧線から放出される不要電磁
波が、通信障害や電子機器の誤動作を引き起こし、かつ身体に異常を来す原因の一
つではないかという説が発表され、社会問題化しています。一例としては、電磁波
の生体内への発熱作用があります。発熱作用の影響をもっとも受けやすいのは、血
管分布の少ない眼や睾丸で、特に眼に対するその障害としては、白内障がよく知ら
れています。ここ数年来その患者数も増大の一途をたどっています。(熱による眼球
内のレンズ部分の温度上昇による不透明な白色化現象。)
既に電磁波遮蔽材(製品)は、種々発表、発売されていますが、当該黒体では経済性
安全性、リサイクル性からいっても、このニーズに最適の素材で、今日の時代に適
合していると言えるのではないでしょうか。
ここに、当該黒体を粉末化して基材に塗布し、10メガヘルツから1ギガヘルツ
までについて電磁波遮蔽能力を測定した結果を図5に示します。(KEC法による)
3)マイナスイオンの発生
大気中にはイオンという存在があります。イオンにはプラスとマイナスの二種類
があり、地球上のあらゆるところに無限の広がりをもって分布しています。このイ
オンの状態が、常にバランスがとれていればよいのですが、今はそのバランスが保
てなくなっています。また大気中には、イオン、イオンと分子や分子集合体が結び
ついたもの以外に荷電粒子が多く存在しています。荷電粒子は分子と比べるとはる
かに大きな物質粒子で、正・負に帯電しています。それらは大気中の汚染物質、排
気により発生する粉塵、煙などがあげられます。それらに含まれる花粉、ダニ、環
境ホルモンなどは光のエネルギによって電子を弾き出し、その結果いずれもプラス
に帯電しています。このように空中に浮遊しているもののほとんどは、プラスに帯
電しています。
その反対に噴水や滝の側、または渓流など水の多い場所では、水が岩などにぶつ
かり微細な水滴が飛び散るときに、水滴はプラスに、周囲の環境はマイナスに帯電
し、その結果マイナスイオンの多い環境が作り出されています。
当該黒体によるマイナスイオンの発生は、大気中の湿気成分である水分子の集合
体が黒体内の多孔質に近づくと、瞬間的な放電により水分子は電離(電気分解)され
H₂O→H⁺+OH⁻の反応により水素イオンは水素ガスとなり放出され、水酸基イ
オンは水分子と水和結合しヒドロキシルイオンをつくります。一例として体内では
このイオンの働きにより、血圧を下げ血行を良くし、新陳代謝や発育及び内分泌機
能を向上させます。
ここに、マイナスイオンを測定するために1㎤の黒体を振動させ、発生するマイ
ナスイオン数を電気的に測定した結果を図6に示します。
4)その他
黒体におけるその他の効果、熟成、温熱及び放電の各々の効果等については、当
該黒体が何ら機能しないわけではなく、また、その効果が顕著に表れないわけでは
ありません。現に、黒体を用いた水の熟成効果は感覚的な要素は否めませんが、そ
れなりにまろやかに感じられます。また、黒体の多孔質性を利用した、てんぷら油
の改質についても効果が得られることがわかりました。
4.用途について
これまで述べましたとおり黒体の様々な特性を用いて製品を作ることは、その可
能性・範囲を際限なく広げるように思われます。
ここに、一例としてその用途を挙げさせていただきますが、これら以外黒体におけ
る応用の概念は、これまでに見られなかった新しい考えを導き出すものと思います。
黒体の応用例
・吸着分解…たばこフィルター、冷蔵庫・下駄箱の悪臭除去、排気ガス等の吸着、
環境ホルモン類の分解、自動車内の異臭除去、扇風機・エアコン出口
への塗布
・電磁波遮蔽…携帯電話からの遮蔽、家庭電化製品からの遮蔽、コンピューターか
らの遮蔽、高圧電線からの遮蔽、病院内機器の誤動作防止、ペース
メーカーなどの誤動作防止
・マイナスイオン発生…住宅産業への応用、衣服への応用、花粉・埃・煙などの無害化、寝具
などへの応用、住空間の環境への応用、サッシ・窓枠への塗布
・熟成効果…ウイスキー・ブランデーなどの熟成促進、ヨーグルト・チーズなど乳
製品、醗酵食品、おいしい水、醸造用水、食品用水の品質をまろやかに
する
・温熱効果…肩こり・腰痛などの改善、血液循環の向上、保温肌着、体内の乳酸分
散による痛みの解消、つぼ刺激効果との相乗効果
・放電効果…静電気の放出、人体の帯電防止、IC工場の製品の帯電防止、
人体のカルシウムイオン溶出防止
5.その他
黒体の応用として、プラスチック材料との混合による成型品の作製が考えられま
す。今回、PP材に黒体を20%混合し、射出成型することはノズル詰りもなく容
易にできることを確認しました。ただし、その物の性能等については未確認ですが、
応用範囲を広げるひとつの目安となると考えます。
黒体の抄紙への応用については、すでに特許出願(特願2001-268301号)して在
り、カレンダー用台紙として利用、消臭効果が得られることを確認しております。
また、この抄紙された和紙については、弊社にて「Amazing Black Paper 不思議な
黒い紙」として商標登録(商願2001-73386号)されております。
黒体の毒性については、水への溶出試験という形で確認してあります。弊社にて
粉砕前の黒体を、一般水道水中へ30日間浸漬した後、供試試料を福井県工業技術
センターにて発光分光分析により分析依頼し、その結果、水銀、クロム、砒素の重
金属は一切検出されませんでした。
*¹キルヒホッフの法則…ある物体が吸収によって得るエネルギーの平衡を考えて
「ある波長の放射線をよく吸収する物質は、またそれを
よく放射する」という法則。

図1 アンモニアの吸着性能試験結果

図2 ホルムアルデヒドの吸着性能試験結果

図3 ジメチルアミンの吸着性能試験結果

図4 プロピオン酸の吸着性能試験結果
<酒井理化学研究所>
分析方法
4種類の試料片紙(100mmX100mm)を2Lのテドラーバッグに入れ、化学物質を各々に封入し、
0時間濃度を初期濃度として、経時的にガスクロマトグラフィによりガス濃度を測定する。