◎T.horsfieldiiについて
  多くの飼育書などで、ヨツユビリクガメ(ホルスフィールドリクガメ)の
学名は「Testude horsfieldi」と最後のiが一つになっています。
  実際私もそうだと思っていましたが、「Testude horsfieldii」が
正しいという事です。
  学名は1つの種を特定できる、つまり、1つの種に名前は1つである事(一意性)が
肝心です。つまり、言葉より記号である訳です。
  ラテン語、ギリシャ語で記述するのが普通ですが、極端な話、
アルファベットの並びならその用に立つ訳です。
  では、一意性は何で保証するかというと、「最初にその種につけられた学名を
採用する」というルールでしています。

  で、ヨツユビリクガメの場合、それはDr.Grayが最初に記載した
「Testude horsfieldii」です。したがって、学名も「Testude horsfieldii」が
正解です。

  では、なぜ広くT.horsfieldiが使われているのでしょうか?
  まずこの学名(種小名)はHorsfield氏という人物の名前を学名にしている訳です。 
  もちろん、「horsfieldの」という意味のラテン語の所有格にしなければ
なりませんが、この時次の2つの考え方があります。
  A)人名のHorsfield自体をラテン風にして、それにiをつけて
      ラテン語の所有格に変える
  B)Horsfieldはそのままで、最後にiをつけてラテン語の所有格に変える

  Horsfieldの場合、ラテン語風はHorsfieldiusなので、
A)だとhorsfieldiiに、B)ならそのままですから、horsfieldiになります。

  この問題の無い場合もあって、例えばT.hermanniはこれであっています。
最初からB)で付けられているからです。

  Dr.Grayは非常に多くの爬虫両棲類に学名をつけた大英博物館の大博物学者
さぞラテン語に堪能だったのでしょう、A)の方法を好んだようです。

  ところで、2つの流儀があると紛らわしいので、後にB)の方法が
推奨されました。しかし、それは「これから新しく付ける学名はそうするのが
良い」という事であって、「一旦ついた学名まで変えろ」とは言っていません。
第一それをしたら、前に書いた学名の一意性を守るルールを崩す事になります。
  しかし、1980年代にこの勘違いをした学者がT.horsfieldiiをT.horsfieldiと
変えて本を出してしまい、これがすっかり定着してしまったとの事です。

  したがって、T.horsfieldiと書くと、その学者と同じ勘違いをしているか
またはDr.Grayの原記載(最初の論文の学名)を知らないのが見え見えですね。
私のような素人はともかく、専門家だとちょっと恥ずかしい気がします。