トリオップス(カブトエビ)飼育記


1.トリオップスとは?
トリオップス1
  和名はカブトエビです。学名の属名がTriopsのようです。
  日本では田んぼに棲息する甲殻類(綱)つまりエビなどの仲間で、
上の写真や下のイラストのような生物です。
キットのイラスト
  飼育キットが売っていて、私は東急ハンズで買いました。
キットの箱
  トリオップスの魅力はこの写真やイラストでは分かりにくいですが、
幼体の時は透明感がありかわいい感じですが、成体になるにつれ、胴を
中心にメタリックな感じになります。地球外生物のようです。
  水底にいればその兜のような殻と黒い眼が格好良く、一方、底を掻く脚は
かわいい感じです。水中を泳げば、まるでUFOのよう。水面ではラッコの
ような仕種で餌を食べます。みるみる大きくなり成長の楽しみもあります。

  実はリクガメを飼う前にも飼った事がありました。良く覚えてませんが、
結局1匹だけ大きくなり数週間生きていたのですが、帰省時に
なめ茸の空き瓶に入れておいたら、翌朝死んでいたのを覚えています。
(今考えると死亡原因じゃおそらく酸欠だったのでしょう)

  リクガメだと何年も殺さないように気をつかいますが、
カブトエビの寿命は1ヶ月から50日くらいらしいので、気が楽です。


2.飼育日記
トリオップス2


  飼育キット(デラックス)には以下のものが入っています。
  ・円柱+タワー付き水槽
  ・卵入り木屑
  ・餌A(幼児期用。木屑みたい。ツナキューブ的な匂い)
  ・餌B(少し大きくなったら食べる丸い粒)
  ・ルーペ付きものさし(理科大の入試の時に配られたやつだ!!)
  ・スポイト(これは便利)
  ・卵入れ(採卵した卵を乾燥保存する容器)
  ・温度計(使わなかった)
  ・育児日記付き説明書
  ・底砂(白い小石)
  ・光砂(暗闇で光る。子供向けのおまけですね)
キットの構成品


1/15 説明書に従い24時間汲み置きした水を水槽に入れセット。孵化のためには
     18-25度に水温を保つため、ピタリ適温の上に載せ、リクガメ用の簡易温室の
     温風器前へ。
     ここに卵入り木屑を半分入れて(残りは再チャレンジ用)待ちました。

1/20 1匹発見。もう5mm近くあります。最初2−3日は毎日見てましたが、
     3日で孵るはずが、孵らないのであきらめかけてました。発見した時は
     うれしかったです。
     結局、木屑にまぎれ、幼生は発見できませんでした。(孵化直後は0.5mm)
     とにかく餌Aを給餌。なお、5mmまでは木屑が餌だそうです。

1/21 温風器の前のせいか水が大幅に減少。水温は28度もあり...。
     慌てて、寝る前に汲み置き水を用意しましたが、翌朝みると、
     水位が下がり過ぎとタワーの水がいくらか落ちてます。そこで
     約6時間しか置いていないですが、水を足し水。水はアルカリイオン水(浄水)
     なので、塩素が抜けていると期待しつつ。とりあえず無事。

1/22 朝は元気で餌Aをやりましたが、帰宅後死亡してました。仰向けで、
     近くに脱皮した皮があったので、脱皮直後だったと思います。
     大きさは約1cm。
     死亡原因は
     ・水温の上がり過ぎ
     ・白く濁っていたので、水の汚れ過ぎ
     ・足し水にカルキが残っていて、脱皮直後の体にはきつかった。
     ・足し水にカルキが残っていて、餌だったバクテリアが死んだ
     などを考えました。
     しかし、「ガーン」って感じでした。これからという時にあまりにも
     短い時間で別れが...。仰向け姿が哀れです。

1/23 「次は対応策を...」と考えつつも、とにかく孵化まで3日はかかるので
     常時備える事にした汲み置き水を使い2度目を開始。水槽は簡易温室から出し
     ました。これでもピタリ適温で22-25度はキープできることを確認。水温高過ぎの
     心配はなくなりました。
     卵は全部入れ、失敗したら「はい、それまでよ」の背水の陣で臨みました。

1/26 誕生確認。今度は4匹です。3mmくらいだったでしょうか?
     とにかく、注意深くみてもそれまでは木屑の中の幼生を
     発見できませんでした。

1/27 初めて餌A給餌。木屑にかじつくものもいます。

1/28 前回の反省を生かした秘策エアレーション開始。
     エアポンプ「ミニマックス S-75」(日本動物薬品(株))にセラミックの
     エアストーンを購入。これで、水の汚れでも酸欠を防ぎ、水質劣化も
     遅らせる事ができるはずです。ただ、カブトエビは田んぼにいるので、
     酸素の少ない状態を好む可能性が頭をよぎりました。このためポンプは
     大きなものにせず(0.75l/分)、エアストーンは泡の細かいものを選択しました。

1/29 換水。この時木屑は捨て、底砂を敷きました。
     木屑は餌だというし、最初の換水タイミングには悩んでいました。
     説明書でもタイミングはわかりづらい。汚れはがまんできないほどではないし、
     エアレーションもうまくいっているし。でも「最後に残った前回死亡原因の
     未対応要素である水質低下が原因なら」の不安に勝てず半分換水決行。
     この時点では換水は勝負でした。

1/30 餌Bを始めてやりました。それと秘策第2段浄化バクテリアの「たね水」(日本
     動物薬品(株))を少し入れてみました。「たね水」は封切ると臭いがしましたが、
     白濁が直る事を期待しつつ。底砂もありますし、そのまま、定着してくれれば
     良いのですが。
「たね水」右上はパッケージの裏面。右の瓶の緑の液体が中身。
製品はビニール袋に入っているが、写真は市販の瓶に詰め替えたもの。
なお、左にエアポンプ「ミニマックス S-75」とエアストーンがある
写真が悪くちょっとわかりにくいが、小玉タイプの餌Bを口元に持って行って食べて
いる。これを水面で行うとまるでラッコのようでかわいい
たね水とエアポンプ 餌を食べる


1/31 説明書で推奨しているので水草を入れてみようと思ってました。
     そこでアナカリスという水草を購入一束300円。いわゆる金魚藻ですね。
     水洗いして適当に切って2本ほど入れました。
     水草の周りを泳ぎ回ったり楽しそうです。
     でも水草を入れた翌日死んだという話もあるので要注意のようです。
     水草に薬品類がついているのか、はたまた水草も光合成をしなければ
     酸素使うので、一時的に酸欠になるのかも知れません。そうならば
     エアレーションするか入れる時は換水の翌日にするのが良いと思います。


手前が現在の水槽。汲み置き水兼余った水草を入れているペットボトルが奥にあり、
その手前にカッターでカットしたペットボトルの蓋付き上部が見える。これは差水
(足し水)の時漏斗して使えて便利
飼育水槽

2/1  寝る前に覗いたら、最大の個体がへの字に背中曲げてピクピクしてました。
     数時間前に差水したので、最初は「げっ、死にそうなのか」と思いました。
     しかし、たぶん、脱皮を試みていたのだろうと思います。10分くらい
     見てましたが、結局脱皮は目撃できませんでした。しかし翌朝は脱皮殻を 
     複数確認してます。

抜け殻。これは2/1のものではないが、こうした抜け殻がほぼ毎朝浮かぶ
抜け殻


2/2  水草入れても元気です。この日水草を食べているところを目撃しています。

2/3  なんと一匹腰の両側ににオレンジ色卵嚢を付けているではないですか。
     最大の個体で約2cmの個体です。

卵嚢。写真が悪くわかりにくいが、楕円で囲った部分にある左右の張り出し
卵嚢


2/6  その1:「おやおや、卵嚢に卵がないぞ」という状態でした。オレンジ色だった
     腰の卵嚢が透明になっています。
     白い底砂(砂というか小石)を良く見ると、底砂にオレンジ色の球体が
     ついたものがあります。1つずつのものが多いですが、中には複数個を
     産み付け数粒の砂にくっついているものもありました。
     スポイトや水草用ピンセットで回収。
     その2:ブラインシュリンプやってみましたが、飛びついてたべるような事は
     ありませんでした。入れたブラインシュリンプはそのうちいなくなりましたが、
     食べたのか単に淡水で死んだのか不明です。ただ、淡水でもブラインシュリンプは
     数日は生きるようです。

2/7  この日も採卵。結局、およそ10個ありました。

2/10 数日前に2匹目の卵嚢を確認してましたが、この日卵を発見。
     再度、採卵。

2/11 2/3ほど換水。採卵の続きも。

2/14 1個採卵。卵嚢に半分くらい卵の入った個体を目撃。おそらく、多くの卵は
     食べられているのでしょうね。(^_^;)

以下3/8までの世話。
  4匹とも元気です。大きくなり、脱皮はさすがに数日にどれか1匹が
する感じです。ちなみに今日までの世話は以下の通りです。
2/17,23,3/7    差し水
2/18,21,3/2    換水。ちなみに換水はタワーの水を残し後は捨てます。
               それまで、餌Bを1個/匹×2回/日だったのですが、
               2月末から2個/匹×2回/日にしてたので、水が汚れます。
               それで最近は夜は1個/匹、朝2個/匹。ちなみに餌Aは水が
               汚れるのやってません。水草は丸坊主にされます。
2/20,21,23,3/5  採卵。3/5は5-6個。あとは1-2個。
3/7,8

3/12 2匹死亡を確認。1匹の目玉を含む頭部の前部以外は食べられたようで
     それ以外の死体はありませんでした。水はこれまでになく汚く黄色く濁った状態。
     おお、なんと。最初は脱皮殻かと思いましたが、黒い眼がついている。
     数秒考えて気づきました。この週は忙しく、観察もおろそかになっていたので
     数日前に死亡していたのかも。前日死亡として、48日。

3/14 換水。採卵。卵は10個以上。この日抜け殻がありました。
     換水時触ると1匹は元気なく柔らかい。「長くないな」の予感。

3/15 1匹死亡。水草の下で動かなくなっていました。ウルウル。享日51日。

3/27 それまで元気だった最後の1匹を殺してしまいました。(;_;)
     熱帯魚を薬浴で使うため6時間ほどエアポンプを外したら死んでました。
     タワーの中で仰向けに背中をまるめて動かなくなっておりました。
     死因は酸欠でしょう。朝やった餌は食べてましたから、朝数時間は生きていた
     はずです。
     エアレーション効いていたのですね。完全に私の過失致死です。
     タワーは上まで水ですから水面からの酸素補給はできません。タワー外なら
     水面に逆さまになって酸素補給できたかも知れません。しかし、タワーにいた
     のも思い当たる節があります。水替えはいつもタワーに新しい水を入れていた
     ので、タワーは水が新しい事が多かったのです。そこで、これまで汚水による
     水質悪化はタワーに入った方が有利だったのでしょう。これまでももっとも
     大きな個体はタワーにいる事が多かったです。
     
     今更ながらですが、水もかなり汚れてました。
     ちなみに最近は餌Bを3-4粒、日に2回で与えてました。水替えはなく、差し水
     した程度。
     
     享日63日。死後測定すると体長3.3mmでした。フィルムケースに入れ、消毒用の
     70%程度のエタノールに浸けました。動かない事以外生きている時と同じ死体でした。
     
     完全に殺しました。申し訳ないです。合掌(=m=)
     天寿全うはほぼ確実だと思ってましたが、寝覚めが悪い事になって後悔してます。
     
     底砂に卵は相当数あると思いますが、採りきれないので、底砂毎乾燥させて
     再度、孵化に挑戦しようと思います。
     
     最後にこの貴重な経験を生かして死の原因をまとめると、次のようになります。
     ・4匹中初めの3匹が死んだのは餌不足の可能性が高いと思っていました。
       要は餌B2粒/匹・日では足りなくなるのですよ。最後のは初めにいった
       2匹の死体を食べたのだと思います。
     ・今回の経験から、最初の2匹は酸欠が影響していたのかも知れません。
       とにかく、大きくなると酸欠がかなり効くようです。
     ・3匹目で死ぬ直前柔らかくなるらしい事を経験しました。この時は
       換水が切っ掛けなのかも知れません。

消毒用エタノールと最初に入れたフィルムケース。
エタノール

3/29 東急ハンズの理化学用品売り場にいって、ガラスの標本瓶を買い、
     標本を移し替えました。既にフィルムケースのアルコールは
     減り始めていたのと、フィルムケースは半透明で良く見えませんでしたが、
     こうしてみると生きていた時そのままの姿なので、良かったです。
     ちなみに標本瓶は確か130円でした。
最後の個体の標本(4/3)
蓋には「'99.3.27 63日目 3.3mm」と書いた
濁りもなく非常にクリアな状態。
瓶の高さ約6cm、直径約2.5cm。
標本1
腹側。肉眼では生きている時は動いて
良く見えなかった鰓脚もばっちり見える。
標本2
背側。底から見る事になる。
なお、死亡時の姿ほぼそのまま。
標本3



3.卵について
トリオップス3
  キットのトリオップスは単為生殖でメスだけで増えます。1匹でもブリード可能です。

  しかし、バラバラと産み落とすのかと思っていたら、石に付けるという点が
意外でしたね。キットの底砂も白い小石で良く考えられていると感心しました。
  ちなみに底に泥を敷いて飼う場合はかき混ぜて浮遊したものを細かい網ですくうと
良いと本にありました。

  孵化するためには10日以上乾燥されるのが普通で、採卵した卵は、一月ほど乾かして、
再び水中にいれるようです。
  田んぼは孵化の条件が揃い「10日(?)以上の乾燥時期がある」「再び注水され、
水温が適正(20度前後)」はもちろん、もう一つの条件「光がある事」も田おこしで
土中の卵を水中に放出してくれるので、非常に好都合なようです。
キット付属の容器に入れた卵:白い底砂に0.5mmくらいのオレンジ色の粒が。
○で囲った部分は複数個ついている
ルーペで拡大
卵 卵拡大
道具の数々。
 ・左上の円盤はキット付属で、水を入れたタワーを立てる時に使用するもの
   (知らないとあのタワー不思議でしょ)
 ・右上は3倍ルーペ(採卵時や幼体観察など役に立ちます。3-400円)
 ・左下は15倍ルーペ(ブラインシュリンプベビーの観察に役立ちました。約1,000円)
 ・右下はブラインシュリンプの卵(通称"シーモンキー"と同じもの。530円)
なお、上記すべて、東急ハンズ(新宿)で購入
ルーペなど


4.その他
トリオップス4
  その他本やHPで調べた事などについて書きます。
  ・カブトエビ目は鰓脚類(亜綱)で、脚が鰓の役割をするらしい。
    ミジンコ目も同じ仲間。
    注)節足動物の分類については諸説あり、「平凡社日本動物大百科」では
          節足動物門−多顎亜門−甲殻上綱−鰓脚綱(ミジンコ綱)
        になっているとのご指摘を頂きました。

  ・カビトエビには以下の4種がいて、
      アメリカカブトエビ     Triops longicaudatus
      アジアカブトエビ       Triops granarius
      ヨーロッパカブトエビ   Triops cancriformis
      オースラリアカブトエビ Triops australiensis
    日本にはオースラリアカブトエビを除く3種が確認されている。
    でも、ヨーロッパカブトエビなどの発見は珍しい。(山形県の
    天然記念物になったらしい)
    日本では近代になって発見されたが、どうも「いない」というより、
    報告されていなかったというのが本当のところらしい。なにせ、卵は長期の
    乾燥に耐え、田んぼを畑にしてまた田んぼに戻しても現れるようなところもあり、
    いないようでいたりするみたい。
    ちなみにキットのはアメリカカブトエビらしい。

  ・この手の甲殻類は酸欠には弱いらしい。(とはいえ消費量が少ないので普段は
    問題になりませんが、輸送時など注意)

  ・ミジンコやブラインシュリンプ(少なくとも幼体)はバクテリアを食べるらしい。
    したがって、カブトエビも食べていると期待される。その意味で「たね水」は
    成功だったかも。どうも鰓脚でバクテリアを濾すというか集めるらしい。
    ちなみにブラインシュリンプの餌の一つはドライイスートとの事。ミジンコは
    乾燥鶏糞入れる(「または油粕」という本もあった。「ミジンコ道楽」(坂田 明)では
    藁を浸した水)といいらしいが、これもバクテリア目当てかも。
    カブトエビも堆肥を入れた田んぼで良く増えるらしく、ここにはうじゃうじゃなのに
    すぐ隣の田んぼにはいないという事もあるようだ。
    (ちなみに餌の大きさの評価すると、バクテリアは数ミクロンなので1-2cmの
     トリオップスには10,000の1で、人間に置き直すと0.1mmオーダの食べ物と
     なります。う〜ん、小さい。きな粉のような粉末系のノリ。
     同じようにミジンコで比較すると体の大きさは1mmオーダなので、
     人間にとっての1mmオーダの食べ物になりますね。これならゴマ粒程度ですか。
     カブトエビの幼体もミジンコ感覚でしょう)

   ・1回のカブトエビの孵化率は30%そこそこだそうですが、この時孵化
     しなかったやつを再び10日〜2週間以上乾燥させた後、水を入れるとまた
     その中から孵化するやつが出るそう。これが何度もあるので全滅を免れる。
     #ん〜、知っていれば水替えの時、木屑捨てずに再チャレンジしたのに。


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