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かなり強い雨の降る、寒い日でした。 で夜は寝られるのだろうか?」私がホテルに連れて行くその
    公園を横切ろうと歩いているとゴミ捨て場の方からミャー 時など、女房ときたらギャー、ギャー泣き出すほど。「たまらん
ミャーと力のない仔猫の泣き声が聞こえてきたのです。私と女 なー」と思っていたら、我が息子、実はホテルに行っても病院
房がおそるおそる近ずき覗き込むと、まだ目もあかない生まれ に入院してもエサだけはしっかりとハグ、ハグと食べるとの事
たばかりの捨て猫。ガタガタ体を震わせながら、小さい体をさ 。やはり、人間も猫も多少は小さい頃苦労はしたほうがたくま
らに小さくしてうずくまっていました。「何てひどい事をする しく育つらしいのです。
人がいるんだろう。かわいそうに、連れて帰ろうか?」女房が 「ヨシ、ヨシ、レオの様に男らしく生きて行くのだヨ。わんぱくで
私につぶやいたものの、やはりその時の私には連れて帰る事 もいい。男らしく、たくましく!」と、すっかり息子の様に育てて
ができませんでした。二人とも働いていて、昼間は誰もいない きた私でした。ところが最近、ショックな事がありました。春に
のにどうやって世話をしたらいいのか。私達は自動販売機で牛 なり暖かくなり始めた頃、例によって彼にも”さかり”がきまし
乳を買ってきて、その場で口に含まそうとしましたが、もうそ た。あまりに辛そうな彼に、童貞のまま「カワイソ!」とは思い
の仔猫はほとんど虫の息でした。 つつ近くの獣医さんに彼を連れて行きました。初老の感じの
    友人の話を聞くたびにその時の苦い経験が思い出されます。 良さそうな先生です。
あの仔猫は間違いなく死んでしまったでしょう。今回も友人が 「ちょっとあばれない様におさえていて下さい。メスですか?」
勇気を出して獣医さんにその猫を連れて行かなければ間違い 「いやぁー、たぶんオスだと思うんですが…」
なくのたれ死んでいただろうに…。 「フム〜、いや、メスですね」  「エッ!?」「睾丸は付いてない
    しばらくして友人はその片目の猫の写真を持ってきました。 ですし、ペニスもないですヨ」    ミケのオスは珍しいとは聞いて
何事もなかった様に、無邪気に遊んでいるその猫の写真を見た はいましたが、今までなぜだかてっきりオスだと思い込み、レ
時、私はもう「あぁこのコは私が引き取って育ててあげよう」 オの様に育ててきたというのに。  「そんな今さら娘とは思えな
という気持ちになっていました。片目の無いそのコの写真は、 いヨー」  明日から紀子さまの様に教育しなければならないな
確かに不具にも見えました。でも実は私も20歳の頃オートバ んて。
イで大事故を起こし、未だに左目はほとんど視力の無い状態。
そんな不自由さが私にもよくわかるので、なおのこと、そのコ     午後になって雨も上がり、明日の日曜はどうやら晴れそうで
をいじらしく思ったのかもしれません。女房は賛成してくれる す。いつもの様になにくわぬ顔をしてスヤスヤと寝入っている
だろうか?マンションの管理人に見つかったらどうなるだろう 彼(やっぱり私にとっては息子である)の顔を見ていると思わ
?不安はありましたが、そうと決めたら意外と行動の早いのが ず安らぎます。
私の性格でした。    『やんちゃできかん坊で、そのくせ甘えん坊のオマエ。何を
写真4 写真5
    避妊手術の退院後…。女の子だったとは… 「紀子サマ…」とはやっぱり思えない!?
    10月の初め、彼が私の家にやってきました。不安そうにあ 考えているの?私はオマエが我家に来てくれたおかげで、色
ちらこちらクンクンと、何を確かめているのか落ち着かず、キ 々と幸せな気分を味わっているヨ…。人間なら私達が年寄り
ョロキョロと大きな片方の瞳でもの珍しそうにしていたあの姿 になった時、オマエに色々面倒を見てもらうのだろうけれども、
は、今でも忘れられません。その夜はダイニングテーブルの下 やっぱりオマエは猫だから私達より先に死んでしまうのだろう
 で、丸くなって眠りにつきました。 ……。
  「カワユイ、カワユイ」「ヨチ、ヨチ、どうしたのぉ〜」     思うと悲しいけれどそれが寿命ならば、しょうがないサ。オ
   そしてあっという間に私も女房も、すっかり彼のトリコにな マエがボロボロになってボケ猫になっても、面倒だけは最後ま
ったのです。今年の正月、どうしても彼をペットホテルに預け で見てあげるヨ。生きている間はせいぜい幸せを味わっておく
なければならなくなりました。我家に来てわずか三ヶ月だとい れ……。
うのに私達にとってはもう我が子と一緒。もう不安で不安で。     オマエを助けてくれた友人、獣医さん、そして私の回りの色
     「エサはちゃんと食べるかしら?」「狭くて寒いオリの中 々な人達に感謝を込めて…。』



長い文章なのに、最後迄読んでくれてアリガトウゴザイマシタ!