旅行中のトラブル

治安の良くない国を長く旅行するとなると何かしらトラブルに会うことになります。もちろん短い旅行でもなんの注意もはらわずに行けば同じことでしょう。
いろいろな手口が知れ渡っていてもやはりひっかかる人はいるものです。それでもある程度の知識と心構えがあればかなり安全に旅をすることはできるでしょう。
ここでは旅行中に実際に出会ったトラブルについて紹介しておきます。


引ったくり

ちょうど小さなディパックを半分だけ肩にかけてコロンビアの首都ボゴタの旧市街を歩いていた時です。後ろから早足で近づいてくる人の気配を感じたので振り向くと赤いシャツを着た身なりのいい若い男がいました。こちらが見たのがわかったのでその男は立ち止まって誰かを待っているような素振りを見せました。男が近づいてくる時に他の老人も声をかけてきたのでこちらの注意をひこうとしたのかも知れません。怪しいやつだと思いつつ歩いているといつのまにかまたその男が走り寄ってきていて、まさにバックをつかもうとしているところでした。直前でかわせたのでその男はバックを盗りそこねたまま走っていきました。
バックの中にはたいした物は入れていなかったのですが、だらしなく肩に掛けていたのが標的となったのでしょう。街を歩いている時に前後左右に注意を払っていたため被害にはあわなかったと言えるのですが、人の注意をそらして、そのすきを狙うというパターンが多いのでこの場合、運がよかったのだと思います。
大事なものが入っていなくても盗られやすい格好で歩くのは狙ってくださいといっているようなものです。街を歩いている時はいつも誰かに狙われていると思うくらいがちょうどいいでしょう。


尾行

チリのプエルトモンの人通りの多い商店街を歩いていた時です。後ろを歩いている男がなんとなく怪しかったので通りの反対側に渡ってお店のショーウィンドウをのぞくふりをしてガラスに映るそいつの様子をうかがってみました。思った通りそいつも通りの反対側で立ち止まって様子をうかがっています。こちらが動き出すと向こうも動く。目的ははっきりしないが尾行されているのは確かでした。プエルトモンは南米では治安のいい街ですが、こういう気の抜けそうなところこそ隙が出来てしまいます。
こういう場合は相手を巻いてしまうのが一番です。人通りが多いところならそれほどむずかしいことではないでしょう。スリや引ったくりならこちらが気づいているとわからせて牽制してしまいましょう。


国境でのぼったくり

国が変わると通貨が変わります。レートがわからないとごまかされることが多いのが国境での両替です。エクアドルからペルーに入った時にはイミグレーションのオフィスが閉まる間際の時間であわてていたためかなり悪いレートで両替をしてしまったことがあります。
慣れない土地で余裕のない行動をとってはトラブルの元です。国境でもレートの書いてある両替屋があればそこで両替した方がいいでしょう。場所によっては路上の両替屋しかいないところもあります。こういう人にぼられないためにはあらかじめレートを知っておく必要があります。また、レートがはっきりしないところでは必要最低限の金額のみを両替するようにした方が安全です。
米ドルのなかには偽札があることもあるので最低限紙質と印刷の違いぐらいは区別できるようにしておきましょう。


ガサ入れ

バンコクの安宿に泊まっていた時のことです。早朝5時ごろ部屋のドアをたたく音がしました。誰か寝ぼけた奴がたたいているのかと思ったのですが、他の部屋も同じようにドアがたたかれ外が騒がしくなていました。火事でも起こったのかと思ってドアを開けると警察の人たちがいました。そしてパスポートと荷物を調べられました。薬物の不法所持の取り締まりのためのガサ入れだったようです。
安宿だったからこんな無礼な振る舞いをされたのかも知れませんが、人権もへったくれもありません。
海外では簡単に薬物が手に入る国も多く、だからといって法律で許されている国はほとんどないので興味半分で手を出すと一生棒にふることにもなりかねません。トラブルにあわないためにはそうしたものには手を出さないことです。


預けた荷物

インドネシアのジャカルタでは安宿に荷物を預けていた間にバックの中身をあさられてドルの現金やトラベラーズチェックを盗まれました。もちろんバックには鍵を掛けておきましたが、こじあけられたようです。しかも盗み方が巧妙で現金もトラベラーズチェックもすべてを盗むのではなく気づかれにくいように一部だけ盗んでいました。お金の管理をいい加減にしていたら気付かなかったかも知れません。トラベラーズチェックは再発行できましたが、現金は戻ってきませんでした。犯人が断定できそうなのに警察は盗難証明書を発行してくれただけです。宿の人はとぼけたままでした。
結局預けたバックの中に現金を入れていたのが馬鹿だったということです。しかし、これはなかなか難しい問題で、貴重品を持ち歩いていても治安の悪い国なら強盗にあう可能性のほうが高かったりする場合もあります。被害を少なくするためには、貴重品は分散して持つしかないでしょう。


タンジェの悪者達

ヨーロッパからジブラルタル海峡を渡ってモロッコへ行く場合、その玄関口になっているのがタンジェの街です。タンジェの街の治安の悪さは前から聞いていたのでスペインからこの街に来た時には普段以上に注意していました。宿を案内するという人がしつこく付きまとって来たりするのですが、ここでは無視して歩いていても勝手についてきて宿に着いたら案内したのだから金をくれなどと言うものもいます。
僕が歩いていた時もそんな奴がついてきました。ちょっとでも話をしてしまったらいつまでもついてきます。しばらく歩いていると別の2人組みの男達が現れて「これはおまえの友達か」と聞くので、「違う」と答えるとその男は今までつきまとっていた男を突き飛ばし、突き飛ばされた男はあわてて逃げていきました。どう考えても更に悪い奴等と一緒になってしまったことは明らかです。「何を探しているんだ俺達が案内しよう」と言ってきたのですが、「これは親切にどうも」などと言ってついて行けば金を巻き上げられることは間違いありません。
幸い「これから列車に乗ってタンジェを出るから」と言って離れることができたのですが、列車を待っている間にもカモを探している自称学生とかガイドだとか言う人に会いました。
モロッコを楽しく旅行しようというならタンジェは素通りするのが無難です。モロッコにはメクネスやフェズ、マラケシといった面白い街がたくさんあるので、スペインからモロッコへ渡っていく人は怯まず進みましょう。たとえ次のような恐い目に会っても・・・。

タンジェの悪者達2

本当のトラブルは荒れくれ者の街タンジェを列車で出た後にやってきました。列車のコンパートメントにはスペインに出稼ぎに行っていたというモロッコ人が2人いました。
彼らはスペイン語も話すので嘘をついているとは思えなかったのですが、ジュースはいらないかと聞かれた時には断りました。ジュースやお茶の中に睡眠薬を入れられて目が覚めた時には身ぐるみはがされていたという話はよく聞きます。
しばらく話していて僕が夜にメクネスの街着くことを知ると「大きな街に夜に着くのは危ない。モロッコ人の自分達でもそんなことはしない。」と言ってもっと手前にある小さな町を紹介してくれました。
実際昼間のタンジェの印象はとても悪かったので彼らの言うことには説得力がありました。彼らもそこで降りるというので一緒に降りました。駅から町までは1キロほどあったので駅前に待機していた乗合いタクシーに乗って町まで行きました。値段もぼられないようにと教えてくれました。
彼らが案内してくれた安宿は看板も出ていなくて、値段もモロッコの相場からすると高いものでした。彼らのマージンが入っているようだったのですがこれで今日は安心して休めるのならもういいいやと納得しました。
しかし、彼らはまだ帰ろうとせず、晩飯を妹の家でごちそうしたいとか言い出して、外に出ることになりました。
完全に向こうのペースにはまっていると感じました。どうも怪しいので断わると、それならお茶ぐらいはと、レストランへ行きました。お茶が出てくるのに妙に時間がかかっていたので、そのお茶は飲まないようにしました。甘すぎて口に合わない、僕の分も飲んでいいとそいつらにわたすとやはり飲もうとしません。何とか彼らから逃れなくては、それにしても荷物は彼らの知っている宿、相手は2人組み、気づいた時には手後れでした。
絨毯屋にも案内されることになりましたが、もう断れない空気になっていました。そこで買えば彼らにマージンが入って開放されるとも思ったのですが、値段はとんでもなく高価でした。金がないと言って店主の勧めもなんとか切り抜けて宿に戻ることが出来ました。しかし、彼らはまだ帰らず、いわば密室状態です。
そして最後に言いました。「きょうはいろいろおまえのことを助けてやったんだから今度はおまえが俺達を助ける番だ。俺達は金が必要だ。」と。
もちろんチップ程度のじゃり銭では引き下がってくれませんでした。脅されている状態になりましたがまだナイフは出ていなかたので、ここでもかなりねばって自分がいかに金を持っていないかをアピールしました。そして3000ペセタ(ペセタはスペインの通貨で3000円弱)までわたした時点で、これ以上取られたらスペインまで戻れないから別の助けが必要になるといってなんとか帰ってもらえました。
油断したおかげで恐い目にあって3000ペセタ失いましたが命は助かりました。


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