使える練習方法たいへんよくできました


"It worked well for me."

- 「(他の人はどうか知らないが、少なくとも)私には有効だった」と思われる練習方法や発見を、思いつくまま書いてみます。

皆さんのご意見やアドバイスをお待ちしております。

プロのホルン吹きの皆さんへ: 私あてのメールによる無料ワンポイントレッスン大歓迎です。


音階練習

譜例1Scale exercise

譜例1は、 Archive of Information from Horn Mailing List にありました。ガンサー・シュラー著「ホルンのテクニック」(音楽之友社)にも同じパターンがあります。ボストン交響楽団の4番奏者ディック・マッキー Dick Mackey は、このパターンを in F, E, F#, Eb, G, D, Ab ... のように上下に移調していく方法を採用しているそうです。この方法だと、無理なく幅広い音域のウォーミングアップができる上に、各調のフィンガリングもマスターでき一石二鳥です。シンプルですが、奥の深い練習方法といえます。

このページのトップへ


ウォーミングアップ

酒田フィルは、公演先のハンガリーでお世話になったソルノク・フィル Solnok Philharmonic の指揮者と木管五重奏団を1996年3月、酒田市に招待しました。そのときのホルン奏者フェレンツ Ferenc Szoke はブダペストのフランツ・リスト音楽院でゾルタン・ルビク教授 Prof. Zoltan Lubik に師事し、マルクノイキルヘンのコンクールで入賞したこともあるそうです。卒業試験ではウェーバーのコンチェルティーノを演奏したそうです。日頃のウォーミングアップのパターンをいくつか教えてもらいました。

譜例2   Warming Up #1
譜例3   Warming Up #2
これらは、リスト音楽院で教わったものだそうです。 Ferenc は、毎日これを5分間やれば充分、というようなことを言っていました。しかし彼の場合は、朝から晩まで学校や劇場の仕事に追われているので、これ以上の練習をする時間がないようです。移調したり、スラーやスタッカート、付点のリズムで練習するなど、いろんなヴァリエーションが考えられます。譜例3に慣れると、ベートーヴェンの七重奏曲(譜例4)のようなパッセージが楽になります。

譜例4

Beethoven: Septett

譜例5Warming Up #3   譜例5は、低音域に重点をおいたもの。F管を使用し、たっぷりと息を吹き込みます。

この他に、ヴェクレの本にあるパターンを練習しています。

このページのトップへ


息のスピード

高音域では息のスピードが重要です。アンブシュアのみに頼ろうとすると、ますます悪循環に陥ってしまいます。マウスピースだけで、低音と高音の間をサイレン(またはグリッサンド)のように鳴らしてみます。高音域になるほど息のスピードが速くなることが実感できます。この感じがつかめたら、音階やアルペジオでそれぞれの音のセンターをねらって発音すると、音の当たる確率が向上します。こうした練習方法については、BERPのホームページに譜例とともに掲載されています。

BERPとは、 Buzz Extension & Resistance Piece の略で、マウスピースでバズィングの練習をするときに使用する器具です。読んで字のごとく、響きを増幅し、楽器を吹いているときと同じ抵抗感が得られます。私は、練習に向かう途中、車の中でウォーミングアップするときに使っています(それだけならゴムホースでも代用できますが)。BERPの特長は、楽器とマウスピースの間に装着することで、ふだんのリードパイプの角度で、同時にフィンガリングの練習もできる点にあります。

ショスタコーヴィッチの交響曲第5番のホルンパート抜粋(第1楽章 122-150小節)は、プロのオーディションでもよく出題されるそうです。クリーヴランド響の2番ホルン奏者が、その傾向と対策を書いています(「ホルンコール」1998年11月号)。その中の譜例に、音符のひとつひとつに制限速度の道路標識を書き加えたものがありました。つまり、音の高さによって息のスピードをコントロールすることを視覚的に表現したもので、おもしろいアイディアだと思いました。

このページのトップへ


練習時間

アマチュアの楽器奏者にとっての最大の悩みは、練習時間の確保ではないでしょうか。特にホルンはアンブシュアのメンテナンスが欠かせません。週1回のオーケストラやバンドのリハーサルでは、勘を取り戻すだけで精一杯です。私の場合、職場と自宅が目と鼻の先にあるため、昼休みに自宅に戻り10分間ほど楽器に触れることを目標にしています。毎日休まずとはいきませんが、1年半ほど続けたところ、自分なりの効果が確認できました。「ホルンコール」1998年11月号の「アマチュアへのアドバイス」という記事によると、「一日の仕事を終え疲れた状態で練習するよりも、心身ともにフレッシュな状態にある時間帯に練習するのが効果的」で、早朝や昼休みの時間を練習に当てることをすすめています。

私の友人の中にも涙ぐましい努力をしている人がいます。

このページのトップへ


練習用ミュート

プラクティス・ミュートは、使わないで済めばそれに越したことはありません。数年前、TrumCor 社の、その名もステルス(米軍の爆撃機と同じ)というミュートを購入しましたが、音程と吹奏感が気に入らず、その後ほとんど使用していませんでした。最近何気なく取り出して、ベルへの入れ方を浅めにしてみると、結構使えることを発見しました。ホルンの演奏用ミュートは、軽くベルの中に置き、右手で抜き差ししながら音程や音色を調整します。プラクティス・ミュートも同じように使えばよかったのですが、音を消すためにベルの中に押し込んで使用するもの、という思い込みが強かったようです。

バリー・タックウェルは、演奏旅行中にいつもホテルの部屋でテレビの音量を最大にしてホルンをさらっていたとか。しかし今まで苦情を言われたことは一度もないそうです。隣の部屋からタックウェルの音が聞こえてきたら、私だったら苦情どころか、うれしくなりますがね。

このページのトップへ


ゲシュトップ

Gestopf, Stop, +, ... ベルを右手で完全にふさぐと、ピッチが半音上がるから、移調読みして半音下の運指を用いる・・・。これはF管での話で、Bb管ではピッチが上がりすぎて音程が悪くなる傾向があります。そんなときには替え指を使います。いろいろな運指を試して正しい音程になる管の長さ(=フィンガリング)を調べます。各管長の自然倍音の第5、第7倍音はピッチが低めなので、Bb管のゲシュトップで使うとちょうど良い、・・・などが発見できると思います。個人個人、 楽器も違えば、右手の大きさや吹き方は千差万別なので、自分専用のゲシュトップの運指表を作ると便利かもしれません。

このページのトップへ


イメージトレーニング

私にとって、トルコ国立チクロヴァ交響楽団にエキストラ出演するということは、海外のプロオケとの共演という、いまだかつてない経験でした。こうした状況で果たして冷静に演奏できるか、たいへん不安でした。その対策のひとつがイメージトレーニングです。アバド&ベルリン・フィルのライブのビデオ(チャイコフスキー交響曲第5番)に合わせて練習しました。効果のほどは定かではありませんが、本番では意外とあがらなかったのは事実です。また、本番当日は山形県寒河江市のチェリーランドで、トルコ人が作る肉料理シシケバブとトルコティーの食事をとりました。同市の名物さくらんぼの起源がトルコということから、交流を進めているとか。トルコ人のおやじが、お茶のおかわりやブルーベリーをサービスしてくれて、私のトルコへの親しみが一気に高まったことは言うまでもありません。こうして血中トルコ度数が高まったところで、演奏会場に単身乗り込みました。楽屋で楽団員の到着を緊張しながら待っていると、楽器を抱えた楽団員の一行がようやく到着しました。「ハロー」と出迎えると、「日本人ですよね」ということばが返って来ました。よく見ると私と同じエキストラの、日本人のチューバ吹きでした。


このページで使用した譜例は、音楽用ソフトウェア"モーツァルト"で書きました。
All of the music examples seen on this site have been written with MOZART the Music Processor.

[ このページのトップへ | 目次 | ホーム ]

Last Update: 99/05/28
Copyright © 1998 Toru Ikeno