川崎市議会 全国初の「子どもの権利条例」
子どもの権利の保障をはかることを目的にした全国初の川崎市の「子どもの権利に関する条例」が二十一日の同市議会で、日本共産党を含む全会一致で可決されました。
制定された条例は、多くの市民や子どもたちの意見を生かし、二年をこえて検討されてきた「骨子案」を土台につくられました。来年四月一日から施行され、十一月二十日を「かわさき子どもの権利の日」と定めています。条例は、「前文」と第七章からなっています。「前文」では、子どもは権利の全面的な主体で、最善の利益の確保、差別の禁止、子どもの意見の尊重などの国際的な原則の下で、その権利を総合的に、現実に保障されると明記。国連の「子ども権利条約」にのっとり、子どもの権利の保障をすすめることを宣言しています。
条例では、子どもの権利にかかわる市などの責務、子どもの命が守られ、尊重され、差別、暴力を受けないなどの権利を明文化、虐待・体罰の禁止、救済と回復、育ち・学ぶ環境の整備、いじめ防止などが具体化されています。
また、学校施設などの運営で、子どもの参加、意見を聴くことに努力すると定めています。子どもの権利の保障状況を検証するための「子どもの権利黍員会」の設置、虐待等の予防、権利侵害からの救済と回復巻図る新たな体制の阜急な整備をはかるとしています。 高校生や子どもたちと一緒に「子ども会議」に参加した中原教育研究所「あらぐさ」代表の橘孝さん(五〇)の話、
会議での議論では、「条例には実現してほしい内容がいっぱい」というのが高校生の感想でした。子どもの最善の利益を守ることが条例の原点だと思います。不登校の生徒の問題などで行政や学校が、予算や人の配置なども含めどれだけ具体的な対応をとれるか、また、市民団体の取組みなどにどうサポートしてくれるのか、言わなければ動かないというのではなく、積極的に目に見える対策を示すかどうかが問われていると思います。
解説
川崎市の「子どもの権利条例」は、全国的に注日されていますが、これをいかに具体化し、子どもの権利保障を進めるのかが問われています。
同市の学校では、「いじめ」とそれが原因の不登校が増大し「学力の危機」というべき深刻な事態が広がっています。この解決のための市の具体的な取り組みは遅れ、危険な老朽化施設改善には消極的です。さらに、公立保育園の民営化、空き教室を利用した「全児童対象」だけにして、いまの学童保育を廃止するなど、「育ち」の環境を根本から見直す計画をすすめようとしています。このため学校や福祉施設の関係者からは、「条例の理念・内容とはかけ離れている」との指摘もあります。
日本共産党は、この条例を子どもたちと教職員に普及し、「前吝を各学校に掲示することや、条例の視点から「生徒の心得」を全面的に見直し、教職貧の総論議で「いじめ」の問題、授業の改善、学校運営のあリ方を見直すことが必要と指摘しています。また、条例の「行動計画」の具体化とあわせて、いまの実態からみた思い切った予算も措置して施策を進めることが求められ、老朽化校舎の早期改築、臨時教職員の早期解消など、教育予算しを思い切って増額すべきであるとしています。
今後は、条例に基づき、子どもが育ち・学ぶ権利を保障し、具体化させる市民の運動がいっそう大切になっています。