宇宙家族カールビンソン

オリジナルストーリー

「Gの日」の巻

 

 

登場人物

コロナ

おとうさん

おかあさん

ターくん

ケン

最強オヤジ

ミドリ先生

デン助

トム(最強オヤジの次男)

 

原住民:

ジュンちゃん

カズちゃん

コーちゃん

ショウちゃん

ジッソーくん

ヤッくん

スーちゃん

ハッちゃん(額に「薩」の字・頭に手拭いの鉢巻き)

 

フルネルソン提督

チーフ

アジーン

ドワー

 

 村の上空。直径20kmに及ぶ巨大な円盤が浮かんでいる。

 円盤の影になっている学校の校庭。原住民たちとコロナが空を見上げいている。

 

コロナ「もう二日になるね」

ジュンちゃん「大きいなぁ、どこから来たんだろう」

コーちゃん「アメリカ製かな

カズちゃん「デカけりゃいいってもんじゃないのに」

 

 宇宙空間。惑星アニカ上にくっきり見える円盤。

 宇宙パトロール旗艦ブリッジ、アニカを見つめるフルネルソンとチーフ。

 

チーフ「いきなりワープしてきて二日・・・」

フルネルソン「機体データも登録されていない、通信にも応じない、か」

チーフ「どうします。このままほっといていいんですか」

フルネルソン「相手の意図がわからん以上、こっちから攻撃するわけにもいかんだろ。それに・・・」

 

 宇宙空間。虚空に浮かぶアジーンとドワー。

 

アジーン「あれだけのガタイだ、このまま攻撃すれば地上も巻き込んでしまうしな」

ドワー「ま、いざとなったらヤツもいるから・・・」

 

 村、コロナ家円盤の入り口。浮かぶ円盤に目をやるケン。

 洗濯物を干しているおかあさんと、それを手伝うデン助とに声をかける。

 

ケン「こんちは、アネさん」

おかあさん「こんにちは」

デン助「あ、ども」

ケン「(見上げて)相変わらずですねぇ」

おかあさん「そうだね」

ケン「・・・ひょっとして、コロナちゃんの星の宇宙船じゃあ・・・」

おかあさん「最初はそう思ったけどね。それだったら、なんかしら反応があるはずだろう。船のタイプも違うようだし・・・」

ケン「そうですか・・・ところでこれ、お見舞い」

おかあさん「いつもすまないね。ま、あがっとくれ」

ケン「どうすか、だんなの具合は」

 

 中に入るケン、おかあさん。

 氷嚢を当て、寝床に伏せるおとうさん。枕頭に座すターくん。

 

ケン「やあ。具合はどうです」

ター「あ、どうも。・・・熱は下がったんですがね。鼻水と、それから咳が止まらなくって、もうそのたびに大変ですよ」

おとうさん「ゴホ、ゴホ、ゴホ・・・ウベクショィ!

(おとうさん、咳のはずみでバラバラになる)

ター「ほれ、このとおり(おとうさんを拾い集め、組み立てる)」

デン助「(こっそりと見舞い品に手をつけつつ)近頃の夏風邪はたちが悪いですからねぇ」

ケン「ジョンから伝染ったんだそうですね・・・だけど、どうして機械がカゼなんてひくんですかい?」

おかあさん「さあね」

(デン助、おかあさんに見つかって取り押さえられる)

 

 上空に円盤を仰ぎながらも、日常をおくる村の人々。

 

チーフ「動きました!」

フルネルソン「どうした」

チーフ「わかりません。ただ、地上に何かを照射してます」

 

 円盤から地上に放たれる細い一筋の光線。

 

ドワー「ビーム砲か?」

アジーン「違うようだが・・・何だ?」

 

 円盤と地上、村はずれの一点が光線で結ばれる(期待に反し爆発などはない)。

 不安と好奇の目で見守る人々。

 学校の窓からのぞく生徒たち。

 

ジュンちゃん「あ、あれは何だ」

 

 光線の中をゆっくりと、ひとつの点が降りてくる。

 地上に近づくにつれ大きく、はっきりと姿を現しつつある。

 ついに、地上に降り立つ。

 身長数十メートル、イグアナを思わせる体躯、長い手足と尾、そして背ビレ。

 周囲を伺いながら、降下点にたたずんでいる。

 

アジーン「見えるか」

ドワー「ああ。なんだ、あれは!?」

アジーン「わからんが、とにかくいってみよう」

 

 学校。授業を中断し、大型爬虫類を見ている生徒たちとミドリ先生。

 

コロナ「おおきーい」

ジュンちゃん「かっこいい」

ヤッくん「さすがアメリカ製は違うな」

ショウちゃん「なんだよ、それ」

 

 カズちゃんとコーちゃん、他の生徒と距離を置きながら大型爬虫類を見ている。

 

カズちゃん「フン、頭がでかい

コーちゃん「手足が長すぎるんだよね」

カズちゃん「背ビレがあるのは認めるけどさ」

コーちゃん「僕らのイメージとはほど遠いよね、あれじゃ」

ショウちゃん「あいつら、なにいってんだ」

ジッソーくん「(レオン完全版のビデオパッケージで顔をかくし)ほっとこう」

 

ジュンちゃん「大丈夫かな。暴れ出したりしないかな」

コロナ「平気よ。だって、おとなしそうじゃないの」

 

最強オヤジ「ふふふふ、ついにその正体を現したな!」

 

最強オヤジ、校庭に雄々しく立っている。

 

最強オヤジ「いつまでもこの私が手をこまねいているものとは思うなよ。宇宙最強の名にかけて、おまえの暴虐も今日限りにしてやろう!」

トム「うわぁ、パパかっこいい!」

コロナ「・・・暴虐って、まだ何もしてないけど」

最強オヤジ「見ていろよ息子よ! (コロナを見て)機械のくせしてウィルスに感染するような輩と、宇宙最強のこの私との違いというものを・・・行くぞ!」

 

 最強オヤジ、大型爬虫類のいる村はずれ目指して駆け出す。

 

ジュンちゃん「行っちゃったよ」

コロナ「大丈夫かしら」

 

 村はずれ、おとなしく立っている大型爬虫類。

 見ようによってはひなたぼっこにも見える。

 それを望む小高い丘に、最強オヤジ現れる。

 最強オヤジ、あらゆる武装で攻撃を仕掛ける。

 弾幕に包まれる大型爬虫類。

 

最強オヤジ「わっはははは。どうだ、おそれいったか!」

 

 煙の向こうから、咆哮とともに突進してくる大型爬虫類。

 

最強オヤジ「む、こしゃくな。だが、宇宙最強の名にかけてこの場はとおさ・・・」

 

 最強オヤジ、疾走する大型爬虫類に踏みつぶされる。

 大型爬虫類、村にむかっている。

 

 学校。恐慌を起こす生徒たち。

 

トム「わーっ、パパ!」

ジュンちゃん「たいへんだ、こっちに来る」

コーちゃん「どうしよう」

ヤッくん「コロナちゃんのおとうさんにやっつけてもらおうよ」

コロナ「だめよ、おとうさんカゼで寝込んでるんだもの」

ミドリ先生「とにかくみんな、落ち着きなさい」

ショウちゃん「(自信たっぷりに)安心しろ。大丈夫だ、心配ない!」

ジュンちゃん「どうして?」

 

 一同、ショウちゃんに注目。

 ショウちゃん、スイッチをとりだし、みんなに見せる。

 

ショウちゃん「これ、なんだかわかるか?」

ジュンちゃん「さあ」

ショウちゃん「無線式の起爆スイッチさ。こんなこともあろうかと、この校舎にはありったけの爆薬を仕掛けておいてあるんだ。ヤツがここを通ったときに爆破すれば、あっという間にこなごなだぜ」

 (言い終わる前にショウちゃんをのぞく一同、悲鳴とともに教室より逃げ出す。)

ミドリ先生「(ショウちゃんを無視して)みんなー、落ち着いて避難するのよ」

ショウちゃん「こら、人の話は最後まで聞けよ!」

 

 ショウちゃんを除く生徒たちとミドリ先生、校庭に逃げ出す。

 迫りくる大型爬虫類、石をけとばす。

 その石が、学校に飛んでくる。

 教室の窓をやぶってショウちゃんの頭に直撃する。

 よろけるショウちゃん、そのはずみで起爆スイッチを押してしまう。

 大音響とともに校舎、大爆発

 爆煙の方向を見やり、かたずを飲む生徒一同。

 

ミドリ先生「よかったわ、間に合って・・・」

 

 廃墟となった校舎の瓦礫の下から、ショウちゃんが這い出してくる。

 

ショウちゃん「バカヤロー、やたらに爆発させればいいってもんじゃねーぞ!」

一同「おまえがいうなーっ!」

 

 コロナ家円盤。外を見てきたターくん、おとうさんが寝ている部屋に戻ってくる。

 

ター「大変だアネさん! あのバケモノ、村にむかってきますぜ」

おかあさん「困ったねぇ、宿六がこんな時に」

おとうさん「・・・・・・」

 

 おとうさん、ゆっくりと寝床から起きあがる。

 心配げに見守る一同。

 

おかあさん「おまいさん、大丈夫かい」

おとうさん「・・・う、う・・・」

 

 おとうさん、でっかいくしゃみとともに分解する。

 

おかあさん「だめだ、こりゃ」

おとうさん「(首だけで)げしょ」

ケン「とにかく逃げましょう」

デン助「(冷蔵庫を開け、食料を風呂敷に移しながら)さあアネさん、急いでください」

 

 ドロボウよろしく風呂敷包みをもって逃げようとするデン助。

 それをつかまえるおかあさん。

 

おかあさん「おい、どこへ行く」

デン助「・・・いえ、あの、その、食料も避難させないと・・・」

 (デン助、冷蔵庫に閉じこめられ、縄でぐるぐる巻きに縛られる。)

おかあさん「(みんなに)さあ、急ごうか」

 

 村にたどりつき、建物を蹂躙する大型爬虫類。

 すっかり怒り狂い、手当たり次第に破壊している。

 それを見下ろす神社の境内に避難した一同。

 おとうさん、バラバラのままで、ターくんの持つネコ車に積まれている。

 

ターくん「ありゃりゃ、完全に怒り狂ってるよ」

最強オヤジ「・・・まったく、なんでこんなことになったのだろうか・・・」

ケン「誰のせいだと思ってるんだ!

おかあさん「どうしようかねぇ、宿六はああだし、ベルカもライカも留守だというのに・・・」

 (おかあさんの隣にいたハッちゃん、突然手を打つ。)

ハッちゃん「そうだ、思い出した!」

ジュンちゃん「なんだい、ハッちゃん」

ハッちゃん「この裏山に、ライカさんのパワードスーツがあるんだ。それなら勝てるかもしれない」

一同「本当か、それ」

 

 神社の裏山。秘密基地を思わせる山肌に、巨大パワードスーツが隠されている。

 パワードスーツは怪獣を思わせるフォルムだが、何となく安っぽく、いかがわしい感じがする。

 パワードスーツに乗り組もうとするハッちゃんと、それを見守る一同。

 

おかあさん「本当に操縦できるのかい」

ハッちゃん「うん、ライカさんに教わったからね。もう何度も動かしてるんだ」

ケン「がんばってくれよ」

コーちゃん「負けないでね。なに、あんなヤツなんか一発さ」

カズちゃん「そうそう、ああいうノーテンキ愛国映画野郎が、僕らにかなうもんか」

コーちゃん「そうだよね、連中に、僕たちの情熱と愛情が理解できるわけないからね」

(カズちゃん、コーちゃん、二人して大笑する。)

ヤッくん「なんだよ、それ」

 

 パワードスーツのコクピット。

 いかにもありがちな操縦席で、出撃態勢のハッちゃん。

 

ハッちゃん「頼むぞプルガサリ、発進!」

 

 パワードスーツ、ロケットのように空に打ち上げられる。

 大型爬虫類の近くに着地し、ゆっくりとファイティングポーズをとる。

 しばし対峙する二体。

 口を開き、光線を発射するパワードスーツ。

 ダッシュでそれを回避する大型爬虫類。

 

ハッちゃん「(コックピットで)はずしたか、それなら」

 

 今度は肩口にパラボラ状照射装置を開き、レーザー光線を発射しようとする。

 歓声をあげる一同。

カズちゃん「おおっ、メーザー光線だ!」

 

ハッちゃん「発射っ・・・ん?」

 

 パラボラ照射装置、わずかに光っただけで光線は発射されない。

 呆然と見守る一同。

 

カズちゃん「なんで、なんでメーザー光線が出てこないんだよ」

コーちゃん「メーザー出さないなんて、邪道だよ邪道!」

ショウちゃん「責任者出てこーい」

 

ハッちゃん「エネルギー不足かっ。ようし、こうなったら肉弾戦だ」

 

 ゆっくりと、一歩を踏み出すパワードスーツ。

 すばしこく間合いをとる大型爬虫類。

 ゆっくりと、もう一歩前進するパワードスーツ。

 横にまわりこみ、きょとんとそれを見守る大型爬虫類。

 ゆっくりと、その方向に向きを変えようとするパワードスーツ。

 あまりにゆっくりすぎて、相手についていけない。

 

おかあさん「どうしたんだい、あれ」

 

 ゆっくりと動いているパワードスーツ。

 それに、大型爬虫類の尾の一撃が加えられる。

 ゆっくりと反応するパワードスーツだが、機敏に動く大型爬虫類に次々と攻撃される。

 

ケン「いかん、スピードが違いすぎるんだ!」

ジュンちゃん「ああっ、もうダメだ」

 

 パワードスーツ、大型爬虫類に振り回され、ついに投げ飛ばされる。

 神社境内に放り出され、戦闘不能になる。

 コクピットから、ハッちゃん這い出してくる。

 

罵声1「なんだよ、速さが全く違うじゃないか」

罵声2「でかいばかりで、とんだノロマだな」

罵声3「そりゃ、動作はなめらかかもしれないけど・・・」

罵声4「人が入ってたってね・・・コンピュータ制御にしたほうがいいんじゃないの」

罵声5「どだい、張り合おうとしたのが無理だよ。・・・レベルが違いすぎさ」

ハッちゃん「うるさい! 人が入ってる方が・・・あ、あ、味があるんだよ! ・・・だいたい、あの大きさであれだけすばしこいなんて変だよ! 巨体には巨体なりの動き方ってものが・・・」

スーちゃん「(ミツルギの人形を吊しながら)負け惜しみだよ、それ」

 

 大型爬虫類、神社の方向に目をやり、村人一同を見つける。

 やがて、神社めがけて突進をはじめる。

 

ジュンちゃん「わっ、こっちに来る!」

ヤッくん「逃げろ!」

 

 村人一同、パニックにおちいり逃げ出す。

 アジーンとドワー、村の遙か上空でそれを見つけるが、もう間に合わない。

 

カズちゃん「(大型爬虫類に突っかかるように)くそっ、俺たちだって予算があればなぁ!」

コーちゃん「カズちゃんカズちゃん(を引き留めつつ)、落ち着いてよぉ、逃げようよぉ」

カズちゃん「(目を血走らせて、なおも大型爬虫類に)いい気になってんじゃないぞ! お前なんか、ちょっとCGが使いこなせて、ミニチュアに質感があって、合成技術が優れていて合成ラインなんか全然ばれなくって、おまけに吊り線なんかその存在すら感じさせないだけじゃねえか。ね、コーちゃん

コーちゃん「うっ・・・。ハ、ハートなら負けないぞぉ・・・」

コロナ「わーん、こわいよー!」

 

おとうさん「泣いている」

 

 ネコ車のおとうさん、バラバラのまま飛び立つ。

 おとうさん、巨大ロボット形態に変形し、大型爬虫類に立ちふさがる。

 

一同「おとうさん、おとうさんだ。待ってました!」

 

 おとうさんと大型爬虫類、がっぷりと組んで押し合う。その力は互角。

 

コロナ「おとーさん、がんばってー!」

 

 おとうさん、じりじりと大型爬虫類を押しはじめる。

 そのとき、上空の円盤から、さっきと同じ光線が照射される。

 光線を受けた大型爬虫類、空へと舞い上がりかかるが、おとうさんのパワーに押さえられる。

 

カズちゃん「逃がすな、おとうさん!」

コーちゃん「やっつけろ!」

 

 必死に引き留めるおとうさん。

 しかし、突然のくしゃみにその体が四散し、落下する。

 束縛から解き放たれた大型爬虫類、光線に導かれるように昇天。

 そして、円盤に吸い込まれて消える。

 円盤、銀色に輝き、やがてワープして消滅する。

 その光景を見守る一同。

 

チーフ「・・・消えました」

フルネルソン「なんだったんだ、あれは」

 

 カズちゃん、コーちゃん、ハッちゃん、3人並んで空に向かって、罵声を浴びせ続ける。

 

カズちゃん「バカヤロウ、二度と来るなー」

コーちゃん「どーだ、恐れ入ったか! 帰れ、帰れーっ!

ハッちゃん「バンザーイッ、バンザーイ!」

 

 上空で、円盤のいた位置をみつめるアジーン、ドワー。

 

アジーン「なんだったんだ、あれ」

ドワー「・・・さあ。ただ・・・」

 

 ドワー、天高く、遙か宇宙の彼方を見据えるようにして、

 

ドワー「宇宙は、我々だけのものではない。自分たちの世界を、これがすべてと思いこんで安穏としているのは、間違いなのだろうよ、きっと」

アジーン「・・・戻ろう」

 

 コロナとおかあさんたち、おとうさんのパーツを集めている。

 

おかあさん「(あつめたパーツに)おまいさん、よくやってくれたね」

コロナ「(手にした首に頬をよせて)おとうさん、ありがとう!

おとうさん「けひょ」

 

 コロナ、空を見上げる。

 暮れかかって、夕日に雲が輝いている。

 

コロナ「また、来るのかな」

(FIN)

 

 

※本編はフィクション、あるいはジョークです。

 登場している、あるいは想起できるいかなる人物、団体、事件も、実在のものとはまったく無関係であることを、お断りしておきます。

(H10.7.8・Y.Yasumitsu)