| MOONLiGHT SyndЯomE | 月光症候群 |
| 高層マンションが立ち並ぶ新興信仰都市・雛代町。急激に変貌を遂げたこの街で、女子高生・ミカに怪しい影が忍び寄る。執拗につきまとうストーカー、耳を犯す妄想電波、高層団地からの飛び降り自殺。10篇のオムニバスストーリーが、あなたを狂気狂喜の世界へ誘う……。 |
| オープニング 他者批判←→自己批判 破壊されたテキスト 無駄なテキスト クラブ・シーン ポテンシャル Kyoko Kazan 許す/許さない |
| 守る/守られる |
| あなた、正気ですか? ルミ←→リル、ミル? 世代 アゾート Eva以前/Eva以後 間 自己規制とは? エピローグ 最後に 『ムーンライトシンドローム解析文書』 |
オープニング Contents ポリゴンで描かれた登場人物の紹介に意味ありげなテキストが挿入され、幻想的な(倒錯的な)力の入った映像に仕上がっている。流れる音楽も映像とマッチして、心理的な不安定さを露呈している。ムーンライトシンドローム(以下、MSと略す)全体に云えることだが、ノイズをはじめとする効果音の使い方が非常に上手い。マニュアルの「このゲームは制作者の意図により、ノイズ音を多用しています」という記述にも素直にうなずいてしまうのだ。
ゲームを最後までプレイしても疑問のまま残ったのは、イエスの磔刑を思わせる岸井ミカの映像である。あのカットは何かのメタファーなのであろうか。私の印象ではMSというゲームは、イメージが先行して作られ、混沌とした物語を整理するつもりもなく発売されたものだから、物語に直接リンクするとは思えないのだが。
……と、まあ、カタい口上はこれくらいにして、私はMSのオープニングが気に入っています。本体の電源を入れてデータをロードする前に、必ずオープニングを見てしまうくらいに。「鉄拳2」や「ソウルエッジ」以来でしょうか、こんなにオープニングにはまってしまったのは。タイトルからしてルナティック、ですからね!
破壊されたテキスト Contents まずは、台詞について。
MSの登場人物たちが語る言葉は、日本語が徹底的に破壊されているように感じました。とくに、華山リョウと逸島ヤヨイ、リルの言葉が。(スミオはまだマシかな?) 純粋に日本語として未熟ですし、語っている内容も、精神が弱っているひとが話すそれのように聞こえます。前後の文脈を無視していて、唐突であり、独白のようでもあり、スクリプターが心に浮かんだ言葉の断片を継ぎ接ぎして出来た台詞のように聞こえるんです。私はイライラして、
「それって、ただのへらず口でしょ。あんた、誰に向かって話してるの?」
とずっと思っていました。
だから、彼らは誰とも会話も成立させることができないんですよね。成立させようとも思わない。これは制作者が意図した結果なのか、そうではないのか。どちらにせよ、これらの不思議なテキストがMSの特徴となっていることは確かです。私は制作者に、『あなた、正気ですか?』という問いを投げてみたい。(『本気である』と応じられそうですが)。
無駄なテキスト Contents これは前述した破壊されたテキストとは異なって、MSの明確な弱点でありましょう。ダラダラと続く長い台詞はメリハリがなく、それを聞かされる側は非常にストレスがたまります。語らせることなど何もないのに、無理矢理に台詞を作り出したという感じですね。登場人物の口を借りて、制作者が何を表現したいのかが伝わって来ないので、なおさら不快になるんですよ。こっちも忙しいなかを時間を作って遊んでるんですから。
このあたりは単純に制作者の力量不足だと感じます。まあ、私のような偏屈なユーザが何を云っても虚しいのですが。
華山 キョウコ Contents 華山リョウの姉です。あるいは義姉なのかもしれません。(「ムーンライトシンドローム解析文書」によると実姉だそうです)。
リョウの特異なパーソナリティを形づくったのは、キョウコの妄執なのでしょうか。それとも、リョウがああであったからこそ、キョウコがリョウに執着したのでしょうか。そのあたりの背景は本編では明らかにされませんでした。どちらにせよ、MSというゲームの根っ子の設定のひとつです。
うーん。それにしても謎の多い女性です。前作、「トワイライト・シンドローム」でも主役だった(?)岸井ミカと瓜二つだという設定も、何らかの裏設定があった方が作品の完成度を高めたと思います。たとえば誰かに、「彼女たちは遠い血縁関係なのだ」、というような設定をさりげなく喋らせても良かったんじゃないかと。まあ、偶然を嫌うのは本格推理小説好きの私の嗜好なので、一般の人にとっては取るに足りない点なんでしょうけれどね。
許す / 許さない Contents MSでは、「(あなたを)(絶対に)許さない」という台詞が多用されます。プレイしていた私としては、「だからなに?」「たまには行動してみたら?」と云ってみたくもあったのですが。
日常的に罪を犯しつづけている人間は、潜在的に「許されたい」と思っているのでしょうかね。というか、罪を犯した自覚もなく、最後の審判のようなキリスト教的価値観のない我々ですから(一緒にするなって? ゴメンナサイ)、許すも許されるもないのでしょうね。ただ、ひとつ云えることは、他人を許すことができないものは、他人から許されることもないという現実でしょうか。世の中、そんなに甘くはありませんよね。MSに登場するなかでは、要注意人物が何人もいましたが(笑)。
ルミ←→リル、ミル? Contents 「岸壁」と称されている団地で子供の飛び降り自殺が多発しているエピソードで、リルという謎の存在があらわれました。私は彼女の正体は冬葉ルミだと思っていたのです。なぜかというと、彼女の名前を逆から読むと……「ミル」じゃないですかっ、「リル」ではなく! と気づいたのは、リルが登場する直前でした。なんとかこじつけて――ルミをルリという名前にしてお話をリンクさせてあげれば――もっともっと盛り上がったのに〜とひとりで騒いでいたのでした。
しかし、このエピソード、かなり危険ではないですか? それとも私は、今の小中学生の判断能力を過少に評価しているのかな。
アゾート Contents 「占星術殺人事件」(島田荘司)という推理小説があります。講談社文庫か、光文社文庫におさめられていたと記憶しています。ま、使い古されたモチーフではありますが。
Eva以前 / Eva以後 Contents ここで云う「Eva」とは、ご承知とは思いますが例の「新世紀〜」のアニメのことです。
MSは、Evaがブレイクしなければ企画にあがりもしなかったゲームではないかと邪推します。「ファイナルファンタジーVII」でも同様に感じたのですが、エンディングまで到達しても明かされない多くの謎や、演出や設定などの細かい部分にEvaの影響を見てしまうのです。MSでもそれは同じでして、おそらくこれには私の偏見――といいますか、欲目やひいき目が混ざっているのでしょうね。お恥ずかしい話。
さて。実は私が主張したかったのはそういう(似てる/似てない)の指摘ではなく、ソフトハウスがくだした「こういうゲームもアリなんだ。しかも、それは売れるかもしれない」という判断の要因についてです。おそらくMSのような人間心理の昏い部分を扱ったゲームは他にもあるのでしょう。ユーザがそれを受け入れている(購入している)のかは知りません。でも、商品としてこれらが企画された時期を考えると、「Eva以後」という認識ができると私は考えるのです。(怠慢で申し訳ないのですが、裏付けはまったくとっていません。私の推測あるいは妄想にすぎません)。
謎を多く残したままゲームが終わってしまったのも、前例にならったからなのでしょうか。そうすれば、謎本、攻略本も売れるだろうし、という。しかし、特にサイコ・ホラーなどのジャンルの作品では、謎が最後まで明かされぬまま終幕を迎えるというのはアリなのですが、MSのケースでは極端であると感じるのです。制作者がシナリオや演出を練りに練って、このゲームはこういうふうにしか表現できないんだ、これがベストの表現なんだ、という主張が伝わってこないんですよね。(謎解きが無さすぎたのは制作者の怠慢に思えます、正直なところ。小説を例にあげれば、「らせん」とは云いませんが、「リング」程度の謎の説明は必要でしょう?)。
自己規制とは? Contents マニュアルに面白い記載が見られました。「このゲームは1997年7月自主規制を行いました」というものです。完成はそのひと月後、8月となっています。
MSは規制前はどんなゲームだったのでしょうかね? 「自主」規制と書かれてはいますが、字句通りに受け取るのは素直すぎる解釈でしょう。たとえば元々PCエンジン版だった「Linda3」というRPGは、プレステに移植されたときは表現がかなり穏やかになっていたそうです。その後、サターンにも移植されましたが、まだPCエンジン版と異なっていると聞いています。
規制と云われてまず最初に思いつくのは、スプラッタ・ムービー的な直接的残酷表現の規制でしょう。ポジ・ネガ反転された静止画で、そういうカットがありましたものね。性的表現は、MSはそーいうゲームではありませんので、考えなくてもよいですよね。私がもうひとつ思いついたのは、精神的な暗黒面の描写に対する規制です。製品版の華山キョウコの存在が曖昧だったのも、そのあたりに原因があったのではないでしょうか。(ゲスカンもここに至ると救いようがないですな〜>わたし)
エピローグ Contents リョウのラストシーンは、何を意味していたのでしょうか? TVに映っていた映像も象徴的ですが、何を象徴していたかと云えば、やはり夏Eva的なモノを想起してしまうのです、愚かな私は。というか、いかにEvaといえど、作品中のほぼすべての要素は過去の様々なジャンルの作品の焼き直しでありますから、「Eva的」と私が云うとき、それは単に比喩がしやすいという理由にすぎません。(あ〜、何について書いているんだか分からなくなってきた)。
で。まあ、私の感想を詳しく書くと、自身の精神の深い部分が露わになって、怖いのでよします。真似であるとかそういうマイナスの意味ではなく、物語の系統として、「夏エヴァなの、これ?」と思ったことだけを、書いておきます。
いきなりエンディングの曲が流れ、リョウが疾走する映像は良かったですよ!
最後に Contents ひどくけなした点もありましたが、「ムーンライト シンドローム」というゲームを私は買います。(ほんとに嫌いだったら、手間をかけてこんなページは作らないですよ)。何を買うかといえば、そのスピリットをです。磨けばもっと輝きを増す可能性を秘めていたのに、とても惜しい。よい作品をあらわすために、規制なんてクソ食らえでもっともっと頑張ればよかったのに。オトナの理屈はわかるけどさ……。
最後に一言。
『HUMANさん、作品中に自社ソフトの宣伝が多すぎると、かえって逆効果になりますよ!』
白夜書房 1997年10月初版 1000円(本体)
『ムーンライトシンドローム解析文書』 Contents
白夜書房から、「コンプリートデータファイル ムーンライトシンドローム解析文書」という仰々しいタイトルで出版されていますが、「コンプリート」でも何でもなく、中途半端な攻略本なので気をつけましょう。帯に書かれている惹句も誇大広告もいいところです。ただ本書には、ゲームにおける「エピローグ」後のエピソードとして「輪廻」なる小説が載っています。ミカとリョウのその後が匂わせてありますが、けして読者に誠実な内容ではありません。(あまりユーザを舐めてもらっちゃ困るんだけどなぁ……)
「解析文書」で明かされていた裏設定は、華山リョウが高校を中退してバイクの修理工場でバイトしていること、冬葉スミオと彼を好いているルミは関係があったこと、くらいでしょうか。少年の名がミトラというのは、ゲーム中で分かっていたのかな。あと、親切にも、ミカのPHSをリダイアルしたら誰が出るかもふせてありました。ネタバレに気をつかったいい本ですね。……って、それぐらい書いておけっつーの! また最初からプレイしろって? 冗談ぢゃねーやい。
本書のタイトルは「解析文書」から「ファンブック」くらいに改名した方がよいですね。以上!