〈其の三十八〉


 蓋を開けてみれば先月の猛暑が嘘のよう、今月始めから梅雨に戻ったみたいにジメジメとした低温続き、いったいあの夏はどこへ行ったのやら・・・

 また、いい加減な夏神がどこかで油でも売っているのか。そんな夏も未だ終わりきらないと言うのに、公園では気の早いコスモスが、花を咲かせ始め萩の蕾も開き始めている。もっとも仙台ではお盆を境にして海では土用波状態、山では秋風が吹く頃ではあるんだがそれにしてもねぇ、日向ぼっこの反焼け状態、少しも黒くなりゃしない。本当パッとしないねぇ、天気も景気も・・・

 遊ぶ元気もでやしないと、受け身の状態だから気が滅入る、嫌々こう言うときだからこそ、何か前向きに仕掛けないとと身を奮い立たせてみるがしかし空回り、そんな最中でも一つだけ良い話。

 久しぶりの釣行、それなりに遊んで沢から上がって林道をテクテク。途中畑仕事の地元人に挨拶「こんにちわ、旨そうな枝豆ですね・・・」「食べっかぁ・・」となり、三人で地べたに座り世間話のもぎ取り作業。袋一杯になったところで、おじさんがトラックの荷台から取れたてのナスをで、益々袋は膨らんで、今度は婆ちゃんが「夕顔も持って行け」と、大人の太股程もあるウリ科の植物を差し出すはで、「ユ・ウ・ガ・オ?」と余り口にしないし、持てる状態ではないので体良く断ると、婆ちゃんの顔がちょっぴり寂しそう。何か後ろ髪を引かれる思いで、深々と礼を告げ再び林道をテクテク。途中婆ちゃんの乗ったトラックに追い越され、ズッシリと腕に堪える釣果を抱え車まで戻ると「んっ!・・・」。先程の『夕顔』がゴロンと置きみやげ。「一本やられた!!」と苦笑い、その日一日はいい気分。婆ちゃんクスクス笑って居るんだろうな・・・。

(偶には良いあるもんだぁ)