〈其の四十三〉

  ふんわりとした風が、萌葱色の暖かみを帯びた波形となって、瞼の重くなった顔を撫でていく。

 ふんわりとした風が、生命感溢れる草木達のおしゃべりと、太陽のエネギーを一杯に受けて元気に飛び回る虫達の羽音を運んでくる。
 そして、ほんわかとした風が、山の頂が色を取り戻した様子。渓流では岩魚たちが跳ねる様子。林道では、一輪草が咲いた様子を乗せ「ねぇ、どこか散歩に行こうよ」と囁きかけてくる。

 「良い季節になりました。」

山の喫茶店に行こう! 自分だけの喫茶店に・・・。
お気に入りの場所を見つけたら、パーコレーターで入れたコーヒーの香りをゆっくり吸って、壁もない、屋根もない。
もうそこは、一日しか開かない喫茶店。
 ちょっと様子を見に来た野鳥の囀りをBGMに・・・。
そこに落ちてるミズ楢の枯れ葉を二枚コースター代わりに・・・。
たった一度しかない自分だけの時間。

 「見つけに行こうよ!」

(ビールも良いけれど・・・)