〈其の四十六〉

 優しさを取り戻した太陽も、まだまだ遊び足らない夏神のせいで扱き使われている。田では十分に膨らんだ稲穂が頭を垂れ、米の臭いをプンプンさせている。未だ若いのか、赤みのないミヤマアカネが済まして飛んでいる。

 まだまだ不景気が続くストレス社会。追い打ちを掛けるように次々と現れる諸問題。悩め悩めと不適に笑うサタンの呪縛。タールの様にドス黒く流れる太い川、光明の出口を塞ごうと湧き出る霧。重く深く纏わり付く・・・。

 突然開いた漆黒の穴。打ちのめされた心を掻き毟り、当て所無い足取りで地獄の淵を彷徨い歩く。

 「一体俺が何かした?」・・・「ムネニテヲアテテカンガエロ!」

 埋めても埋めても戻しきれないその穴は、犯した罪の大きさなのか・・・。絶望感と虚しさが絡み合い、お釣りの来る悲しさが覆い被さる。埋め様もない虚脱の穴に、せめてそのお釣りで一輪の花でも飾ろうか・・。