〈其の五十二〉

 日が長くなり元気を取り戻した太陽を、澄み渡った小川の水面が捕らえ、僅かな流れに微かに動く太陽も、心なしか うきうき して見える。でも、川面にいる独りぼっちの太陽は、お喋り相手の小魚達を「早く上ってお出で」と、ちょっぴり寂しそう。

 頂に綿帽子を被った山々も、目覚めたばかりか瞼を擦り、彼方此方で大欠伸。ついつい此方も釣られて「うっあ〜ふぅ〜」。山も森も木々達も、枝葉を思いっきり伸ばして囁き出すのも後少し。人も自然もみんな、春の陽気に笑い出すのももうすぐ。

 と同時に世間様では、新たな門出、出会い、別れがあり、それぞれの思い出のページを捲る時季でもある。まっ、我が”たもたも”に限っては、辛い事にこれ以上お客さんの数は減りようが無く、新しい常連を望んでやまないのだけれども・・・。

 その思い出のページに、一行でも良いから心に響く出会い、楽しいイベントなど衰退の道をたどる店だが、二十年近く”カラー”づくりに・・・と言っても、誰よりも自分自身が一番楽しんでいたのだが・・・。

 陽気と共に滅入っていた気持ちも和らいで、徐々にではあるが枝先の新芽のように、陽を求めて上向きに伸ばし出した。

 はてさて、今春はどんな癖のある人間が現れるやら・・・。

(ウキウキのぽっかぽっか)