〈其の五十八〉

 もうススキの穂が開き、未だ青々とした実りのない田からは、一向に米の臭いがしない、寂しい秋である。青く澄んだ秋空と黄金色に輝く稲穂のコントラストが、そこに風上に向かうトンボの赤色があれば、まさしく正しい「秋」の絵である。
 今年は端から異常気象の連続で、そのつけが回ってきた・・・神様の食い扶持も減るというのに・・・。
 実りの少ない山では、危険を冒し食料を求めて里へ下りてくる獣達と、人とのトラブルが後を絶たない。良い事が少ない現代で、尚更の事く拍車を掛ける。相変わらず地球の何処かでは、大砲の音が鳴り止まず。
 神様は何を怒っているのか・・・、何を言いたいのか・・・。此方も、訳が分からずただ怒ってみる。罵声を吐いてみる。
 「馬鹿野郎ーっ!ったく!」ってか?
んて怒っても仕方ないが、もう”渓流釣り禁漁”である!!。
 「えっ!何回振ったの?」
楽しみに勇んでいけば”土砂降り”だし、暇をこさえれば”仕事”が入り。
 やっぱ「馬鹿野郎ーっ」だわ。
魚が減らないのは良いけど・・・。

(もういくつ寝ると解禁日)