〈其の五十九〉

kouyoh.JPG (15318 バイト)

 朝夕の冷え込みが強くなり、吐く息もじき白くなる。
遠くに見える山並みの頂に始終重い雲が被り、流れ去る頃白い置き土産を残し、冬の到来だけは疑いがないようだ。
 だが、その季節の流れを断ち切るように、夏の日は終日灰色の雲に隠れ、町々の何処にも暑い季節の印も落ちて居ず、ではなを挫かれた蝉たちは、出番を忘れ秋の空の下でも、寂しく啼いていた。
 季節感のない年でも、寒い冬は間違いなく来る。
早くも、後二月。意欲のない夏の日のせいばかりではないにしても、めっきり減った釣行もツーリングも、その道具達は、出端を挫かれた蝉のように物置の片隅でただジイッとしている。アルコールが入ると、その思いは強くなり、余計に頭の中では「竿を振り、バイクに跨る」。
 まっ、其れは其れで良いのかもしれないし、アルコールも進むがちょっぴり、あの蝉のように寂しい気もする。又、その趣も酒の肴になる。
 ついでに頭の中では、遠の昔にできあがっている「絵」でも、好きなCDを聴きながら描こうか・・・。
 あの、暑い夏の日を思って・・・。

(ブルルンブルルンのプスッ)