〈其の七十六〉

 久しぶりに通った沼の冬鳥、特に白鳥の数に驚き。
冬の間中観ていたツムギ達も、いつの間にか旅立ちしたのか、ここのところとんと目にしていない。
 季節の、春の微かな気配を、僕ら達より敏感に感じて、誰かさんの好きな南へ、彼奴の好きな北へ、それぞれに向かったのに違いない。
「どちらへお帰りですか?仙台はどうでした?」
「今年は雪が多くて大変でしたねぇ・・」
「最近の異常気象はどう感じています?」
と、聴いてみたい気がする。
 三月に入っての大雪も嘘のように、ここに来てやっと春めいた日が戻ってきた。喉元過ぎれば・・・と、あの寒さも忘れ彼方此方の桜の開花が気になる時期になりました。
毎年「お花見」を誘われるのだが、どうも都合が合わず時期を逃していたのだが、今年は飲むぞといや見るぞと、決めたがどうなりますか。
 雲一つなく晴れ渡った空の青さ。頂にはたっぷりと残雪の白さ。その雪解けで、元気を取り戻した沢や川。そしてヤマメや岩魚。岸辺では咲き乱れる山桜の艶っぽい臼桃色。僕も乱れて、正しく桃源郷の世界。
・・・と、一人ニタニタとにや付いて悦に入り、口元に涎。
 やっぱ、行こ行こっと。

(フニャフニャのデレデレ)