〈其の九十〉

 気が付くと、見上げた電線に成りきっていない赤トンボの集団が止まって
いる。道沿いのススキの穂も大きく背丈を伸ばし、ここに来て頭を垂れた
稲の穂もお米の香りをぷんぷんさせている。
 期待はずれの夏が過ぎ、時間に正確な秋が来て、几帳面さも時と場合と
不満たらたらの夏の感が残る。
何もしなかった夏である。着残しのアロハシャツが未だ出番を待って秋風
に揺れている。不満げなキャンプ道具もカチャカチャ云っている。
何も出来なかった夏なのである。
で、律儀な秋が時間通りにやって来たのである。
  まっ、季節折々に楽しみはあるもので、頭を切り換えて秋を堪能しない
と、せっかちで気の早い冬神様がお出でなさいますからね。
 この時期空気が澄んで、景色がはっきり見え空の青さが目に染みる。
透明感のある躍動的な青さなのか・・・。純真な青さなのか・・・・。
そして、なんと云っても夕焼けが良い。あのときめきの朱色が心に響く。
燃えるような情熱の朱なのか・・・。生命観漲る色なのか・・・。
見ている此方も陶酔の世界で火照り顔・・・?・・・?・・・?       
 **あぁ、シャンパングラス越しで見る夕日・・・堪えられない!!**
理屈はいらないね。素直な気持ちがあれば素直な感動がある。
 そうそうなのだ。見る側の問題だな。
綺麗な心があれば、綺麗な物が見えるんです。・・・言えるんですよ。
 兎に角、難しい話は抜きにして、もう芋煮会のシーズン。
美味しい空気で気持ちの良い河原でのキャンプと芋煮・・・。
不十分な夏の太陽を浴びた、不満足げな秋野菜の味は如何な物でしょう。
そんなこんなも、アルコールが入れば何処かに行っちゃうこの性格。
秋は秋でもあ・き・れるのアキかな・・・。

(モグモグのグビグビ)