谷口君の「北海道旅行記」(1996年6月)

 [プロローグ]

 入社して20年をすぎた今年、7日間のリフレッシュ休暇が付与されましたので、期限も間近の6月17日から25日までの土日を含めた11日間お休みをいただきました。
 いきなり決まった休暇だったので(とれないと思い、半分諦めていたのです)何をするか決めていませんでした。

 6月16日の日曜日に「そうだ、まだ行ったことのない北海道に行って来よう」と思い立ち、ガイドブックを買ってきました。
 土地勘が無かったので、とりあえず「札幌」「小樽」「函館」に行って見る事に決めて、早速その日の夜に札幌のホテルに電話しましたところ、この時期は十分あいているとのことでしたので、とりあえず17日と18日の2日間を予約しました。当初、18日は小樽に泊まろうと思っていたのですがガイドブックをよく読んでみると、札幌から小樽まで電車で小一時間しかありません。これじゃぁわざわざ泊まらなくても札幌から往復できると思いましたので、連泊にしました。

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表題 :北海道旅行記(1日目)
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 北海道旅行記(1日目)です。副題は「初めての札幌」かな!

 さて、17日の朝になりました。帰りを電車にするか飛行機にするか迷ったのですが、寝台特急は飛行機並の料金がかかることがわかったので、往復共に飛行機に決めて、早速ANAへ電話しましたところ、こちらも十分空きが有りますとのことでしたので、とりあえず当日3時の便を予約しました。

 電話を切ってから、函館のホテルに電話して19日の分を予約しました。
早速荷物をバッグに放り込んで出発です。あわただしい出発でした。

 浜松町で飛行機の搭乗券を受け取ったときに、ついでに20日の函館−東京便を予約しました。飛行機に乗る2時間前にやっと「足」と「宿」の確保が終わったことになります。

 羽田空港には午後2時過ぎに着きました。新装になってから初めての「新羽田空港」でした。 いきなり「ここは何処??」状態になってしまいましたが、「出発ロビー」の矢印があったのでそれを頼りに歩き始めました。さっそく持ってきたPHSで友人宅に「留守にする」旨の電話連絡を入れました。歩きながら話していると丁度エスカレータが終わるところで電話も終わりました。

 浜松町でチェックインは済ませてきたので、そのまま待合いロビーに行きました。真新しい椅子に座って窓の外を見ると、目の前にANAのジャンボがいました。ゲートの番号を確認すると、これが搭乗予定の機体のようです。 さっそく持ってきたガイドブックを広げて札幌市内の町並みの確認を始めました。初めての街は方向感覚が掴めないので、事前に地図で確認しておかないと、行ったが最後迷子になってしまいます。
 午後2時45分、搭乗開始です。観光にはOFFの時期であるとはいえ、乗客の列は長く続いておりました。少し待って、人並みがばらけてきた頃に乗り込みました。僕の席は主翼の付け根部分、機体が一番太くなっている所でした。
 乗客は思ったより少なく、ほとんど全員が窓際の席に座っているだけで機体中央部はがら空きでした。
 午後3時に離陸すると飛行機は左旋回をして機種を北へ向けました。眼下に東京湾とたくさんの船が見えました。数分で東京ディズニーランド上空をすぎました。人工海浜と幕張メッセまでもがよく見えました。茨城県上空あたりから雲が出てきました。しばらくして雲の切れ間から残雪の残った会津の山々が見えてきました。でも上空から見下ろす山は何処の何という山なのか特定が出来ませんでした。
 その後、下界は雲の中。見渡す限り雲海が広がるばかりです。途中一度だけ雲の上まで頭を出した山が見えました。形や高度から「岩手山」と推測されました。

 新千歳空港は雲の中、天候は「曇り」でした。着陸寸前まで雲の中だったので、高度を下げていることに全く気が付かす、いきなりタッチダウンの轟音が聞こえたので、読んでいた小説から顔を上げると空港の滑走路の上を滑っておりました。
 空港に降りるとさすがに涼しく、暑い東京都は段違いです。札幌までは電車で一時間ほどかかるようなので、とにかく早くホテルでくつろぎたいと思い、駅のホームへ向かいました。午後4時47分発の快速は、すでに座席が満杯の様だったので、5時02分発の電車に乗りました。札幌駅に着くまでは、窓の外に流れる初めての北海道の景色に見入っていました。

 ホテルには午後6時半くらいに着きました。季節柄まだ外は明るく人通りも多かったので、近くにある「旧北海道庁(通称:赤レンガ)」へ足を延ばしました。札幌に来たら「大通公園」に行かないと来た意味がない・・と勝手に思いこんでいましたので、さらに足を延ばして「大通公園」を散策してきました。テレビ塔に登ったところでおなかが空いてきたので「展望レストラン」に入りましたところ、客は僕一人だけでした。一人で眼下に広がる公園を見下ろしながらピラフを食べました。
 ホテルに戻ろうとテレビ塔を降りたところで雨が降って来ました。傘を持っていなかったので地下鉄に乗って札幌駅まで戻りました。駅の地下街で傘を買ってホテルに戻りましたが、テレビの天気予報は明日も明後日も「雨」と告げております。

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表題 :北海道旅行記(2日目)
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 北海道旅行記(2日目)です。副題は「初めての小樽」かな!

札幌での一日目の夜、ホテルのロビーで友人宛のメールを遅くまで書いていたので、次の日の朝はなかなか起きることが出来ませんでした。それでも8時頃に起き出してホテル最上階にあるレストランへ向かいました。窓の外は「いまにも降り出しそうな曇り空」です。今日は小樽の観光と決めていましたので天気が気になりますが、こればかりは仕方有りません。時間はたっぷりとあるので、ゆっくり食事をとりました。眼下に見える駅前の通りには出勤途中のサラリーマンやOLが早足で歩き回っております。休暇中の自分に少しばかりの「優越感」を覚えながら食事を終えました。それにしても、ホテルの朝食はいつも何処でも「おいしくない」ですね。なぜなんでしょうか。

 さて、午前9時30分にホテルを出て札幌駅へと向かいます。昨夜、駅の時刻表で小樽行きの快速電車の時刻を調べておいたので、比較的余裕をもって行動することが出来ました。
 午前10時発の快速電車はすでにホームに停車しておりました。寝不足の解消にずっと眠って行くつもりが、やはり窓の外の景色に目が行って、結局眠れませんでした。

 11時ちょっと前に小樽に着きました。駅を降りると海の香りがします。魚の臭いもありました。何となく「懐かしい」においです。 あらかじめ電車の車内で地図を確認しておいたので、真っ先に「レンガ倉庫群」を目指しました。明らかに観光用に整備されたとわかる運河に沿って歩いていると、おそれていた「雨」が降ってきました。さいしょは小雨程度だったので散策に大した支障は無かったのですが、次第に大粒の雨が落ちてきました。仕方がないので駅の方に戻りました。駅近くのアーケード街に入
って雨宿りです。 商店街を歩いていると喫茶店が有りました。「光」という名前でした。
「とりあえず雨が弱くなるまで紅茶でも飲むか」と思い入りました。中にはいると香ばしい「コーヒー」の香りが迎えてくれましたので、店員に「コーヒーください」と言ってしまってから「あ、紅茶のつもりだったんだ」と気が付きました。でもすぐにコーヒーが出てきましたので、そのままいただきました。
 薄暗い店内は落ち着きますが、壁際を見ると一面に古いランプやコーヒーミルが並べられていました。店員に「すごいコレクションですね」と言うと「代々の店長が集めた物で、いまでは手に入らないような貴重な物が有るらしいです」とのこと。聞けば「創業が明治時代」だそうです。小樽が出来たばかりの頃から街の発展と共にあったのでしょう。コーヒーも「自家焙煎」とのことでしたが、コーヒー通でない僕には「なんとなく古い味」くらいしかわかりませんでした。
 小一時間ほどしてから店を出ました。雨は小降りになっていましたが、まだ降り続いています。商店街を抜けたところに市営の「文学館/美術館」がありましたので、ちょっと入ってみました。石川啄木や小林多喜二の展示が目を引きました。受付で石川啄木の色紙を一枚500円で売っていましたので2枚/2種類買ってきました。

 「かなしきは 小樽の町よ 歌ふことなき人人の 声の荒さよ」
 「こころよく 我にはたらく仕事あれ それを仕遂げて死なむと思ふ」

の2首です。両方とも僕の好きな啄木の歌だったので、すごく得した気分でした。

 美術館を見て外にでると、雨足が激しくなっておりました。職場の先輩に小樽出身の課長がいまして、その方が「小樽に行ったら石原裕次郎記念館に是非寄って来なさい」と言っていたので、どんな物かと思い、タクシーで向かいました。なるほど「石原裕次郎」ばっかりが有りました。(^^; 裕ちゃんはそんなに好きでもなかったので、とりあえずあらましを見て回ってから外にでました。なんと雨が一段と激しくなっております。ガラス工芸館にも行ってみたかったのですが、こんな天気じゃ自由が利かないので、駅に戻ることにしました。昼食をとってなかったので駅の食堂で遅いお昼を
食べました。「小樽はお寿司だ!」と言われていたので、とりあえず「海鮮弁当」なるお寿司の定食を頼みました。なるほど駅の食堂ではあるものの、味はなかなかのものでした。

 雨がいっこうに弱まる気配も見せないので、小樽観光を諦めて札幌に戻りました。札幌に着いたのは午後4時半くらいでした。札幌も雨でした。地下街を散策してホテルに戻りました。夕食は「ススキ野でラーメンだ」と思いまた外にでました。雨はほとんど上がっていましたが、降ってくるといやなので地下鉄でススキ野まで行きました。札幌の地下鉄はまだ新しいようで電車もきれいでした。

 「狸小路」を散歩しておみやげを物色していたのですが、何がいいかわからなかったのでPHSで京都の姉に何が欲しいか聞いてみましたところ「熊の置物が欲しい」と言われたので、近くにあった土産物屋さんで購入し宅配便で送ってもらうよう依頼して外にでました。ラーメンを食べるはずだったのですが、食欲も無くなってきましたので、ラーメン屋は素通りして商店街を歩き回りました。午後7時をすぎたのでホテルへ戻って駅あたりの食堂で定食でも食べようと駅への道を歩き始めました。しかし周囲はすっかり暗くなっていて、方向感覚がわからなくなっていましたので、途中何度か方角を
間違えてしまいました。 大通公園近くの回る寿司屋さんで寿司を食べてからホテルに戻りましたがたどり着くまでに1時間ほどかかってしまいました。

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表題 :北海道旅行記(3日目)
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 北海道旅行記(3日目)です。副題は「雨の函館」かな?

 札幌のホテルでの二泊の滞在が終わる6/19日の朝、朝食は和食にしました。
前日は洋食で南側のレストランでしたが、今度は北側のレストランです。眼下に北海道大学のキャンパスが広がっております。外は相変わらずの雨模様。今日の日程が不安です。 レストランの朝食は、高い割にはおいしくなく、民宿の朝食の方がどれくらいおいしいかわかりません。まぁ「ホテルのレストラン」はこんなものなんでしょ
う。いままでもそうでしたから。
 北海道三日目のスケジュールは「特急北斗」で函館まで直行するか、途中「大沼公園」で降りて大沼と駒ヶ岳を見物するかの「二者択一」です。とは言っても二日前ホテルの部屋で考えただけのことです。「大沼公園と駒ヶ岳」は山の好きな私にとって今回の重要ポイントだったのですが、こんな天気では眺望は言うに及ばず、写真さえも撮ることが出来そうにありません。雨だったらそのまま函館に直行することにして早々にホテルをでました。 
 乗車予定の「特急北斗」は9時46分発です。前日ススキ野から帰る途中、札幌駅で指定券を購入しておきましたので、時間までに着けばいいと思い慌てることも無かったのですが、ホテルを出たのが9時30分。ちょっと焦ってしまいました。

 特急の座席は空いておりました。函館まで3時間半の電車の旅です。もっと近いように思っていたので、3時間以上かかることに改めて北海道の広さを実感しました。
 定刻に札幌を出発した「北斗号」は、苫小牧まで内陸を走ります。2日前、新千歳空港から札幌まで異動した時と今度は逆方向です。北国特有の「準平原」らしき起伏を持った大地が何処までも続いています。南国九州の山の中で育った私にとっては「異国」の光景がいつまでも車窓を流れて行きました。
 苫小牧を過ぎたところでいきなり目の前に「海」が広がっていました。同じ太平洋のはずなのに、北海道を走る列車の窓から見るそれは、天気の性かどことなく暗く沈んで見えました。

 苫小牧から高校生と思われる修学旅行生の一団が乗り込んできて、それまで閑散としていた車内が「喧噪の嵐」に取って代わってしまいました。僕の席の斜め向こうに男性と女性の教員が座って、そこのラインから前方すべてが高校生達の席です。 それまで読んでいた本をしまい、パソコンを取り出してメールを書き始めました。ホテルに着いたら出すつもりです。(実際にそうしました)
 窓の外を流れる海の景色は何処まで行っても変化がありません。この列車は本当に走っているのだろうか?・・そう思わせる位に変化に乏しい景色です。東室蘭を過ぎると「内浦湾」沿いを走ります。でも海の名前が変わっても、窓の外を流れゆく景色に特別な変化は有りませんでした。途中「登別」「洞爺」「長万部」と聞いたことのある駅名がアナウンスされます。何度も降りてみたい衝動に駆られますが、「また来ればいいんだ」と自分に言い聞かせて窓の外を眺めておりました。

 午後一時過ぎに列車は「大沼公園駅」に着きました。でも外は雨が降り続いております。もちろん「駒ヶ岳」は雲の中、「大沼公園」は雨の中、これではどうしようもありません。途中下車は諦めてそのまま函館まで行くことにしました。
 午後1時30分、無事に函館に着きました。さてどうしよう・・・。とりあえずせっかく来たのだから「五稜郭」を見ておこうと思い立ち、ガイドブックを広げます。駅からはちょっと離れておりました。でも「時間は有るんだから」と歩き始めました。昼食がまだでしたが、商店街あたりならレストランでも有るだろう思い、歩きながら探しますが、それらしき店が見あたりません。20分ほど歩いたところで小さなラーメン屋さんを発見し入りました。函館で食べる「札幌ラーメン」は金額の割には量が多く食べ切れませんでした。でも、空きっ腹だったのでとてもおいしかった。正解だったかもしれません。

 五稜郭には午後3時くらいに着きました。食事に30分ほどかかっていますので、駅から五稜郭までおよそ一時間かかった計算になります。4kmほどの距離でしょうか。
 でも、ずっと「雨」。雨なのに、いや「雨だから」五稜郭タワーは混雑していました。仕方がないので傘をさしたまま五稜郭を散策しました。一通り回って出てきても30分ほどしか経っておりません。寒いので、五稜郭タワーの売店でホットコーヒーを飲みました。PHSで京都の姉に電話しました。「何処にいるの」と言うので「函館の五稜郭に居るけど、雨が降っていて観光どころじゃない。」と答えると「日頃の行いが悪かったんだね」とのたまいます。ま、そうかもしれません。

 さて、疲れたのでホテルへ向かうことにしました。ホテルは駅の前。また同じ道を戻るのは面白くないので、一つ隣の大通りを戻り始めました。駅近くまで来たところに「土方歳三最期の地」という石碑がありました。でも雨も降っているし面倒だし、とりあえず今回はパス。ホテルに着いたのは午後4時半でした。
 駅前のホテルはまだ新しいようできれいでした。なんと部屋まで荷物を運んでくれたのは女性でした。重い荷物を持っていただくのは気が引けましたが「これが仕事ですから」と言うことでしたのでお言葉に甘えました。ホテルの窓からは雨に煙る函館山が真正面に見えました。「赤レンガの倉庫群まで近いですか」と聞いたら「歩いて15分から20分ほどです」とのこと。窓から「朝市」の看板が見えたので「朝市はここですか」と続けて聞くと「はい、すぐそこですから明日ご覧になってみてください」と言われました。お礼を言って部屋から出ていくのを見送った後、さっそく「金森倉庫群」へ向かいました。雨は小降りになっていますが、相変わらず降り続いております。言われたとおり15分で着きました。 せっかく来たんだからと傘を差しながらカメラを構えます。暗くなってきたので手ぶれを気にしながらの撮影でした。
 「海鮮市場」にいろいろ並んでいたので、またまたPHSで姉に電話です。「函館の海鮮市場です。おみやげ何がいい?」と聞くと、「何があるの?」との質問。「海の幸がたくさん」そしたら「生ものは危ないからいらない」とのありがたいお言葉。出費が助かる。
 東京の友人達に宅急便で送ることにして、友人宅に電話をすると「いったい何処に居るんだよ!、連絡無いじゃん」とのおしかりを受けました。話しながら歩いて実況中継をすること5分ほど。 いつの間にかあたりは薄暗くなってきて、人通りも無くなってきましたので、早々にホテルに戻ることにしましたが、途中おなかが空いたので食事をしようと思い立ち、駅周辺に食事どころが無かったのを思い出して途中の「かにっ子」というカニ料理屋に入りました。定食を頼んだのですが、適当に入ったにしてはおいしい食事が出来ました。今回の旅行で一番おいしかった食事でした。
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表題 :北海道旅行記(4日目)
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 北海道旅行記(4日目)です。副題は「雨上がりの大沼」かな?---------------------------------------------------------------------
 6月20日、会社はボーナス支給日のその日、ホテルの部屋で目覚めたときすぐにカーテンを開けて外を見ました。昨夜まで降っていた雨は上がっていました。函館山の木々の緑が雨に洗われた澄んだ空気を通して輝いて見えました。
 いい天気になりそうな予感です。この分なら「大沼公園」は快適かもしれない。もしかしたら「駒ヶ岳」も見えるかもしれない。はやる心を抑えて、ホテルの2階にあるレストランに朝食を採るべく降りていきました。
 バイキング形式に戸惑いながら一人外を眺めて食べていました。窓の外では駅前の並木が風に揺れています。少し風が強そうだ。そう思いながら黙々と和洋折衷の朝食をついばんだあと、部屋に戻ってもう一度外を眺めました。 窓から見える「函館市場」は賑わっている様子です。大沼公園へ向かう特急は午前10時過ぎまで無いので、チェックアウトした後「函館市場」を覗いてみることにしました。

 函館市場はごった返していました。観光客らしき人達も結構いました。京都の姉にPHSから電話して「何か欲しい物があったら送るよ」というと、何がいくらくらいであるのかを訪ねられました。夕張メロンが4000円である旨を告げると、それじゃこっち(京都)と変わらないとのことなので、メロンキャンディーを買っていくことにしました。

 午前10時になったところで函館駅へ向かい、ホームに停車していた「特急北斗」に乗り込みます。乗客はまばらでしたので、適当に窓際の席を選んで座りました。10時16分に函館駅を離れたた北斗5号は昨日の曇天とはうって変わって初夏の日差しが降り注ぐ道南の空の下を北へ向かいます。大沼公園駅には20分後、10時36分に着きました。駅前は閑散としています。駒ヶ岳の頂上部分には雲がかかっていて、その特異な山容は見えませんでしたが、それでもコニーデの作り出すなだらかな裾野は確認することが出来ました。 大沼公園はちょっと風が強かったけど、写真で見ていた風景と同じ光景が目の前に広がっている事に少し満足でした。
 遊覧船に乗りました。シーズンオフとはいえ観光客はちらほら居て、船内は半分くらいが埋まっていました。最初の内は湖畔の風景にカメラを向けて写真を撮っていたのですが、風が強くて遊覧船が立てる波が水しぶきとなってカメラにかかってくるので、途中で窓を閉めてのんびりと遊覧を楽しみました。
 一時間の遊覧を終えたとき、ちょうど12時でした。湖畔のレストハウスで昼食をとりました。最初入ったときは客はいませんでしたが、僕が海鮮定食を頼んだところで、数人のグループが入ってきてテーブルが半分くらい埋まりました。

 函館へ戻る特急北斗は午後1時3分です。それまで30分ほど島巡りを楽しみました。人があまり居ないので、静かな散策でした。あちこちで被写体がささやきかけるのですが、カメラを向けると普通の景色しか見えず、自分の芸術眼の無さにがっかりさせられっぱなしでした。
 午後1時30分に函館に戻りました。とりあえず昨夜行けなかった函館山に行こうと思ってバスの発着場へ行き、函館山へのバス停を聞くと、函館山へのバスは午後5時を過ぎないと出ないとのこと。仕方がないのでタクシー乗り場へ行き函館山へ行ってくれるよう頼んだところ、「観光なら市内をぐるっと回るよ!」との事だったので、「じゃぁ5000円で回れるところを全部回ってください」とお願いすると、「そんなにかからないと思うけどいいよ」とのことで、ひとときのお抱え運転手さんになってもらいました。函館山から見下ろす函館市内は昨夜の雨で洗われた後だけにとても綺麗でした。なるほどこれを夜見下ろしたら綺麗な夜景だろうと思いました。運転手さんに市内の解説をしてもらいました。「一番狭いところは1.3KMしかないんだよ。以前は1.2KMだったけど、駅のあたりの港を埋め立てたので100Mほど広くなったんだよね」なんてことを言います。函館市内が函館山への砂州の上に発達したのが上から見下ろすと良くわかります。

 降りる途中に「日本で初めてのコンクリート製の電柱」なる物が有ることを聞いていたので、そこを教えてもらいました。なるほど四角形の電柱が2本立っていました。「あれ?確か一本だけだと思ったけど?」と聞くと「つい最近もう一本復元したんだよ」とのこと。たしかに手前の一本は真新しいように見えました。

 昨夜行きそびれた「明治館」に寄ってもらいました。中を見学している間待ってもらってガラスのコップを買いました。今回の北海道旅行で唯一自分へのおみやげです。

 函館市内の近場だけを一通り回ってもらって駅前に戻ってきたのが3時30分でした。帰りの飛行機は午後6時10分発です。リムジンは駅前を午後5時に発車するとのことなので、それまで一時間ほど「函館シーポートプラザ」と「メモリアルシップ摩周丸」を見学しようと思い足を運んだところ「摩周丸」は休館でした。仕方がないので駅前まで戻り、ホテルの一階の売店でおみやげを買うことにしました。後で気が付いたのですが、なんとこの売店は「KIOSK」でした。なんでホテルの売店がKIOSKなのかさっぱりわかりません。

 函館空港を離陸するときには北国の太陽はまだ高かったのですが、羽田空港に降り立ったとき、あたりはすでに夜のとばりが降りていました。「やれやれ、帰ってきたか」名残惜しさと、少しの安心感を抱きながらモノレールに乗りました。
 自宅に着いたのは午後10時過ぎでした。パソコンのスイッチを入れ、会社に接続するとメールが51件もありました。でも、まだ僕の「リフレッシュ休暇」は半分が終わっただけです。明日は一日休んで、翌日からの後半を楽しもうと決めて、眠りにつきました。



 とりあえず、以上で「初めての北海道旅行記」を終わりといたします。