三高歌集

寮歌(寮灯青き)

昭和八年 中寮十番 篠岡 博 作詞   宮本正義 作曲

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憧憬(あこがれ)多きものゝ悲哀は大きい。だがそのいたでを観照してのみ更に新な悦びに蘇る。友よ、いたずらに嘆くをやめて心静かに雨の一夜を教へらるゝ所多く声を感慨の歌に合わさん。


寮灯青き夜の雨
闇を流るる感激の
友の歌声我和せば
窓金色にしめりつゝ
頬を傳ふる涙かな


りょうてい あおき よるのあめ
やみをながるる かんげきの
とものうたごえ われわせば
まど こんじきに しめりつつ
ほほをつとうる なみだかな


遙々丘に上り来て
紅貌三年春と秋
静かにこの夜感慨ては
山の彼方に住むならで
人生の幸こゝに見ぬ

はるばるおかに のぼりきて
こうぼうみとせ はるとあき
しずかにこのよる おもいては
やまのかなたに すむならで
じんせいのさち ここにみぬ


君の憂は秘む勿れ
共に孤燈に我泣かん
君が喜び語れかし
共に抱きて我舞はん
君と我との仲なれば

きみのうれいは ひむなかれ
ともにことうに われなかん
きみがよろこび かたれかし
ともにいだきて われまわん
きみとわれとの なかなれば


げにうれしきは友にして
げに尊きは若さなれ
冷たき智恵のあざむきの
まどひの夢をふりすてゝ
あゝ若き日をすごさばや

げに うれしきは ともにして
げに とうときは わかさなれ
つめたきちえの あざむきの
まどいのゆめを ふりすてて
ああ わかきひを すごさばや


燃ゆる血潮のうすれては
友は何處に老いて行く
悲しく春の褪め行かば
美かりし日の思い出の
花は何處に萎み行く

もゆるちしおの うすれては
ともはいづこに おいていく
かなしくはるの さめゆかば
うまかりしひの おもいでの
はなはいづこに しぼみゆく


三寮にてる灯に
静かに夜の雨更けて
寒々窓に風鳴れば
契りは固き我友よ
語り明かさん今宵かな

さんりょうにてる ともしびに
しづかによるの あめふけて
さむざむまどに かぜなれば
ちぎりはかたき わがともよ
かたりあかさん こよいかな

私は寮生活の経験がないので、数々のすばらしい寮歌をほとんど知らない、その中でこの歌は在学中にもよく歌い印象に残っている。神陵史によると、小牧・佐々木両氏の手になる「白雲なびく」(明治三十六年)が寮歌第一号で、以後数々の寮歌が作られて行くが、ことに昭和初期には盛んに寮歌が作られた。しかし時代の流れを反映して昭和十年以降ばったりと新曲は途絶えた。昭和8年に作られたこの歌も、「光さみしく黄昏るゝ」(大正十五年)、「現なき日の放浪に」(昭和八年)などと共に、昭和十年以降もよく歌われていたという。昭和15年に作られた「沫雪ながれ」は最後の寮歌となった。

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