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「サンダーアーム/龍兄虎弟」
龍兄虎弟 Armour Of God
1986年・香港
〇監督:ジャッキー=チェン〇脚本:エドワード=タン/バリー=ウォン/ロー=キン/シト=チクホン/ジョン=シェパード〇撮影:ボブ=トンプソン/ピーター=ニョール/アーサー=ウォン/アブドル=モハメッド=ラムジャン/チャン=ユージョ〇音楽:マイケル=ライ
ジャッキー=チェン(「アジアの鷹」ジャッキー)、アラン=タム(アラン)、ロザムンド=クワン(ローラ)、ローラ=フォルネル(メイ)ほか



 
 先日、映画館で久々にジャッキ=チェン主演映画「カンフー・ヨガ」を見たので、そこからの連想で本作をチョイス。たまたま少し前にNHKのBSでジャッキー映画を何本か放送した中にこれが含まれていて録画だけしてあったので久々に通して鑑賞した。
 なんといっても「ジャッキーが死にかけた映画」として名高い。ジャッキーが危険なアクションにノースタントで挑んでるのは当時よく喧伝されていたが、それが真実であることを「事故で瀕死の重傷」という形で証明してしまうことになった。その騒ぎの当時は僕はジャッキー映画の洗礼はまだ受けてなかったのだけど、この事故の騒ぎは耳に入っていた。それだけ大きな話題になったということでもある。

 で、実際にこの映画を見たのはずいぶん後になってからのこと。僕がジャッキー映画にハマっていたのはもっぱら90年代で、その中の一本「プロジェクト・イーグル」がえらく面白く、その前作がこの「サンダーアーム」であると知って、レンタルビデオで借りて鑑賞することになったのだ。ところが不思議なことにこっちの映画のストーリーはほとんど覚えていないことを今度の再観賞で確認させられることになってしまった。「あれ?冒頭はこうじゃなかったっけ?」と思っていたところも「プロジェクト・イーグル」との混同だったし。僕自身の記憶力の問題ももちろんあろうが、実のところ記憶に残るほど「僕にとっては」面白くなかった、ということなんだと思う。

 なにせ「ああ、これは見たな」とはっきり分かったのが、ジャッキー映画のお約束、エンディングのNG集映像に含まれた、問題の「瀕死の事故シーン」なんだから、ここにしか興味を覚えなかった、ということなんだろうな。
 ジャッキー演じる主人公「アジアの鷹」は世界をまたにかけた「トレジャー・ハンター」で、映画冒頭でとある未開民族の聖地に侵入、まんまとお宝を頂戴して闘争する。この冒頭部分だけで「ははぁ、インディ・ジョーンズのパクリか」と分かっちゃうわけなんだけど、問題の事故はこの冒頭部分の撮影で起こっている。NG集でもその様子が映されているが、ジャッキーが飛び移った木の枝が折れて地面へ落下、ジャッキーはこれで頭蓋骨陥没の大怪我をおって耳にも障害が残ってしまった。回復後に映画撮影が再開されて無事完成となるのだが、監督がジャッキー本人に交代になったほか、メイ役の女優さんはスケジュールの都合で交代になったんだとか。

 映画自体の話に戻ると、この冒頭の冒険でジャッキーが手に入れた剣が、実は太古の昔にはびこった邪教を打ち負かした「神の武器」5つのうちの一つだった。ひそかに命脈を保っていた邪教教団はそれらを全てそろえれば世界が征服できると考え、それらを集めるためにジャッキーを利用することにする。そこでジャッキーがかつてグループを組んでいた歌手のアラン(演:アラン=タム)の恋人ローラ(演;ロザムンド=クワン)を誘拐。このかよわい音の子一人を誘拐するために邪教教団のみなさんマシンガンをバリバリ撃ちまくり無関係の人を殺しまくるのだが、これはジャッキー映画には珍しい殺戮描写で驚いてしまう。邪教連中のひどさを強調する狙いなんだろうけど、後半になるとちっともそんな凶悪な感じじゃないんだよな。これももしかすると監督交代の影響なんだろうか。

 で、このローラは今はアランの恋人だが、かつてジャッキーとアランは彼女をめぐって争った過去があり、ジャッキーもまだ未練を残している。さらにアランも必死に懇願するのでジャッキーは友情にもほだされて「神の武器」を集める話に乗ることになる。邦題にもサブタイトルではいった原題「龍兄虎弟」は兄弟、あるいは兄弟分二人が一緒に戦うストーリーを思わせるようにできていて、一応ジャッキーとアランのコンビがそれに当たることになるはずなのだが、ジャッキーはいつもの通り強いのだけど、アランの方は戦闘力まるでなし、頭のめぐりも悪くてドジばかり、ひたすら彼女の救出を考えるばかりで思いっきりジャッキ―の足を引っ張ってくれちゃう(笑)。思えばこういう「ドジな相棒」キャラは他のジャッキー映画にはいなかったんじゃないかなぁ。
 そうそう、タイトルと言えば英題は「Armour OfGod」で「神の武器」そのまんまである。しかし日本ではなぜかこれをそのままとらず、「サンダーアーム」というカッコいいのかもしれないけど、映画内容からすると意味不明の題名になってしまった。

 「神の武器」を邪教側に引き渡すための旅に、武器を集めていた伯爵の娘メイも加わり、中盤には一行は邪教の本部のある山上の城(修道院かな?)へと潜入する。これ、どこでロケしたのか気になったのだが、調べてみるとどうやら旧ユーゴスラヴィアのクロアチアで撮影したものらしい。教団の拠点に潜入するため、彼らが売春婦たちを招き入れるのに紛れ込む、という作戦をとってメイが売春婦になりすますためひと騒動おきたりするんだけど、直接的ではないとはいえちょっとエッチネタが入ってくるのは同じ「アジアの鷹」シリーズの「プロジェクト・イーグル」でも同様だった。

 いろいろあって案外あっさりとローラは奪還されるのだが、実はローラは薬で催眠術の暗示をかけられ、ジャッキーに言い寄って「神の武器」を盗み出せと命令される。一行が泊まったホテルでジャッキー、アラン、ローラ、メイの四人がそれぞれ部屋に出たり入ったりの「鉢合わせしそうでしない」コント状態をしつこいほどに繰り広げるのだが、これもジャッキー映画ではよくある場面。ホントによく出てくるのでジャッキー自身も好きなのかもしれないな。

 結局最後はジャッキーが敵の本部へ再び潜入、「神の武器」を全部とってしまおうとして教団連中との大乱戦になる。ここでアマゾネス四人組との大格闘があったのはさすがに僕も覚えていた。これも他のジャッキー映画では類似のものがない気がするし、また微妙にエッチでもあるんだよな。
 最後にはダイナマイトどんどんな盛大なあばれっぷりになり、本部を脱出したジャッキーは断崖絶壁の穴に飛び出し(このカットも「インディ・ジョーンズ魔宮の伝説」に似てる)、そこから気球へ向けて大ジャンプ!この最後の見せ場は、よく見なくても分かるが実際には崖からジャンプしたのではなく飛行機かヘリからスカイダイビングを行ったもの。もちろんノースタントでジャッキー本人がダイブするだけでなく、しっかり気球のバルーンの上に飛び移ってそこから下のかごのところまで移動するという、結構危険なアクションを敢行している。あんな大怪我してからよくまぁ、と思うばかりだが、主演当人が体を張ってこそのジャッキー映画、という当時の空気が良く分かるラストでもある。

 …で、見終わってみると、結局「神の武器」はどうなっちゃったんだか。途中からどうでもよくなってたような…(汗)(2018/1/20記)

 

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