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「ミッション・インポッシブル2」
Mission: Impossible II
2000年・アメリカ
○監督:ジョン=ウー○脚本:ロバート=ダウン○撮影:ジェフリー=L=キンボール○音楽:ハンス=ジマー○製作:トム=クルーズ/ポーラ=ワグナー○製作総指揮:テレンス=チャン/ポール=ヒッチコック
トム=クルーズ(イーサン・ハント)、ダグレイ=スコット(ショーン・アンブローズ)、タンディ=ニュートン(ナイア)、ヴィング=レイムス(ルーサー)、リチャード=ロクスバーグ(ヒュー・スタンプ)、ジョン=ポルソン(ビリー)、ブレンダン=クリーソン(マックロイ)、ラデ=シェルベッジア(ネコルヴィッチ)




  ちょっと前にNHKのBSシネマで放送していたので久々に全編を見た。公開時に見てるんだけど何年公開か忘れていたので、いま確認してみたら2000年の公開、もう15年も前の映画なのかとビックリした。公開時のパンフレットもまだ持ってるんだけど、トム=クルーズ目当ての女性客に買ってもらおうという意図だったのか、やたらに大判でトムのお写真がデカデカといっぱい載ってる。当時雑誌だったかネット上だったかで「写真集じゃないんだから」と突っ込まれていた記憶がある。
 説明不要だけど、このシリーズは往年の人気テレビドラマシリーズ「ミッション・インポッシブル」、邦題「スパイ大作戦」を映画版にしたもの。主演のトム=クルーズ自身が立ち上げたプロダクションで製作していて、弟一作はブライアン=デ・パルマ監督を起用、懐かしのテーマ曲とノリを使いながらも全く新しいスパイアクション映画としてヒットとなり、以後のシリーズ化につながった。もっとも「原作」のテレビドラマの出演者たちや熱心なファンたちにはブーイングもあったけど(理由は察しが付くはず)
 この「2」は前作より開き直った。もはやテーマ曲以外は完全に別物になったと思う。なにせ起用された監督がジョン=ウー。香港映画出身で「男たちの挽歌」が代表作。90年代後半からハリウッドに進出して「フェイス/オフ」でヒットも飛ばしていた。香港だろうとアメリカだろうとそのアクション描写は「ジョン・ウー印のお約束」のテンコ盛りで独特の映画世界を作っていて、そういうクセの強い監督をわざわざ起用したあたり、トム=クルーズら製作陣の狙いがうかがえる。ストーリーや脚本は別人によってつくられてるけど、出来上がりを見れば頭から尻尾まで見事なまでにジョン=ウー印。前作のデ・パルマだって相当な個性派だし、2作続けて見ると「監督が映画の作者」とはどういうことなのか、よくわかる例になると思う。

 今回のミッションは開発されてしまった「キメラウィルス」の入手。感染すると20時間以内に死んでしまうという恐ろしい威力のもので、それを解毒剤と共に運び出そうとしたネコルヴィッチ博士は乗っていた飛行機ごと抹殺されてしまう。その博士を飛行機に連れ込んだのは主人公イーサン=ハント…かと思いきや、変装マスクを外せばその正体は元同僚のショーン=アンブローズ(演:ダグレイ=スコット)だった。
 本物のイーサンの方はユタ州で危険なロッククライミング中。ようやく頂上についたところへヘリが「ミッション」を伝えるサングラスを届けに来る。サングラスをかけると作戦指令が流れ、お約束の「5秒後に消滅する」が出てイーサンが投げたとたんに爆発、おなじみのオープニングメロディーがハイテンションで開始される。この作戦指令は前作ではテレビ版を意識した古風なカセットテープ方式だったが、さすがに一気に先端技術になっちゃった。もっともあれを作る手間と爆発の仕掛けを考えると(すげえ危ないよな)、カッコいいけどあんまし効率がよくないような(笑)。イーサンのロッククライミングの場面もさすがにワイヤーで釣ったりはしてると思うんだけどどうやらクルーズ当人が演じるかなり危険なものではあったらしく、冒頭から映画に一気に引き込まれる。このオープニングが秀逸すぎちゃって、この辺ばっかり記憶に残ってたんだよな(笑)。いやホント、今回見てたらオープニング以外ずいぶん忘れてましたよ。
 
 イーサンはショーンに接近するため、ショーンの元恋人の女泥棒ナイア(演:タンディ=ニュートン)を味方に引き入れるよう命じられる。ナイアが盗みに入った現場に待ち伏せし、イーサンはいつになくニタニタとニヤケ顔でナイアにアプローチ。割とあっさりとベッドインしてしまう。あくまでスパイ大作戦の手段として色仕掛けを使ったものではあるんだけど、イーサンはこれまたあっさりと「本気」で彼女を愛してしまう。そしてナイアは計画に従ってショーンとよりを戻し、イーサンたちはナイアに埋め込まれた発信装置によってその動向を遥か彼方から衛星中継のリアルタイムで「のぞき見」することになる。つまりはナイアとショーンがくっついてるところも見張ってなきゃいけないわけで…(汗)。
 かくしてイーサンとショーンは、単に所属する立場による敵味方関係から、同じ女をめぐる恋敵関係にもなってしまう。このため両者の対決は非常に「情念」のこもったものになっていて、ここら辺もジョン=ウーの好む構図だ。当時のパンフレットによると話が来た時点でこうした基本ストーリーはできてたみたいで、監督は「二人の男が一人の女を愛してしまう」というシチュエーションが気に入ったと話している。

 この話、お互いにある程度の組織を抱えていて、集団対集団の戦いのはずなんだけど、男と男のタイマン勝負の色合いがすごく濃い。おまけにお互いに変装を駆使するため、ショーンがイーサンに化けてナイアから本音を聞き出すくだりなんかは三角関係のサスペンスにあふれてて面白い。なんかこの構図、覚えがあるなぁと思ったら、そう、同じウー監督の「フェイス/オフ」とよく似てるのだ!あれは男同士が顔を取り替えてお互いの立場に入れ替わる話であって、全く同じというわけではないんだけど、この映画のイーサンとショーンの関係もその一歩手前までいってる感じ。あくまでイーサン主役の「スパイ大作戦」なんでそこまでは踏み込めなかったんだろうけど、彼ら二人の間に単なる敵同士ではない、どこか「共感」「共鳴」のようなものが描けたら、なかなか深い映画になったんじゃないかなぁ、と妄想。

 「ミッション・インポッシブル(不可能作戦)」であるだけに、今回もまたビルの屋上からヘリに吊るされて間一髪で侵入、ハプニングも起こって派手なドンパチの末に脱出というなかなか凝ったシチュエーションがある。それ以外はジョン=ウー印のせいか大味で、細かいことは気にするな、な展開になっちゃってるけど。ナイアが自らの体にウィルスを撃ち込んで、20時間というタイムリミットのうちに解毒剤を入手しなくちゃならない、というシチュエーションは冒頭で予想の範囲内だったけど、やっぱり面白かったな。
 終盤はもう、これでもか、これでもかの、アクション連続で満腹。というか、こりゃやりすぎでは(笑)。サングラスに黒服がスローモーションですっ飛びながら二丁拳銃を連射し、意味もなくハトが飛ぶウー映画のお約束はここでもバッチリ(前半で出てくる十字架もお約束の一つ)。まるで「ルパン三世」みたいな変装の使い方には苦笑もしたけど、そのあとの延々と続く二人のバイクチェイスシーンは、その手間を考えるとやっぱり凄いよウーさん、と思うばかり。それだけの大騒ぎの割に最後は男同士のドツキ合いになってしまい、なんだか昔の青春ドラマだと殴り合いの末に友情が生まれそうな雰囲気も(笑)。そこはさすがに銃でケリ付けちゃったけどね、ちょっとしたアイデアもんだとは思うけど(香港カンフー映画的というか)、それまでのド派手な展開からいうとえらくあっけない結末だ。

 ラストはきちんとハッピーエンド、イーサンとナイアはイチャイチャと公園に消えていくことになるんだけど、この設定はこの映画きりの話。「007」とおんなじで女性関係はそれっきり、次作ではイーサンは別の女性と結婚していたりする。もっとも僕は3作目以降は現時点では未見で、気が付いたら今年で5作目ということに驚いてしまっている。(2015/11/4)



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