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「プロジェクトA2 史上最大の標的」
A計劃續集 Project A II
1987年・香港
〇監督:ジャッキー=チェン〇脚本:エドワード=タン/ジャッキー=チェン〇撮影:チョン=イウジョウ〇音楽:マイケル=ライ
ジャッキー=チェン(ドラゴン=馬如龍)、マギー=チャン(サンサン)、ロザムンド=クワン(パク)、チャーリー=チャン(タイガ―)、トン=ピョウ(警察局長)ほか



 
 傑作の「続編」というのが作られてしまうのは映画界の常だが、その多くが前作を越えられない。悪くすると存在自体を忘れられてしまう。残念ながらこの「プロジェクトA2」はそんな一本と言っちゃっていい。他の候補としては「スティング2」なんかも挙げられるかな。
 この「2」、弁護すれば見るべき点のいくつかあるにはあるんだけど、なにせ前作が前作である。ジャッキー映画数あれどやはり「最高傑作」といえば「プロジェクトA」、と言い切るファンは多いはず。僕も「プロジェクトA」を初めてテレビの吹き替え版で見たとき、本気で感動しちゃったもん。泣かせ系ではない、娯楽アクション映画を見て「感動」することがある、という体験をあれでしちゃいましたから。人間の身体ってこんなに動くもんなんだと…。

 この「2」が製作されたのは前作の4年後だから、まぁ早くもなく遅くもない。どうしてわざわざ「2」を作ることにしたのか事情は知らないが、作るんなら絶対サモハ=ハン=キンポーユン=ピョウは出さなくちゃダメでしょ。前作があんなに面白かったのは明らかにこの二人とジャッキーのトリオが見事なアンサンブルをやってたからで。「スケジュールの都合」でこの二人抜きの続編制作ということになったらしいのだが、そりゃもう別モンでしょ。「スケジュール…」という理由もウソではないのだろうが、三人とも「大物」になってきちゃったために製作上、共演自体が難しくなってしまったというのが実態ではあるまいか。翌年公開の「サイクロンZ」で三人共演が実現するが、それが最後になってしまう。

 一応2」が前作から引き継いでいるのは主人公、部下の「大口」「ひょうきん」のコンビ、警察のチー総監くらいのもので、前作で退治された海賊の生き残りたちが復讐に…というつながりもあるにはあるんだけど話のメインにはなっていない。
 今回、ジャッキー演じる主人公のドラゴン=馬如龍は沿岸警備隊ではなく全編陸の上の警察官として行動することになる。香港の開発区では警察署長チャン(演:デヴィッド=ラム)が八百長の事件をでっちあげて手柄をたてたり、裏社会のボスと結びついたりと不正の限りを尽くしている。そこへドラゴンが新任署長として赴任し警察の刷新、立て直しをはかることになる。

 これと並行して、物語の時代が20世紀初頭であったことに目をつけて、大陸で孫文らが進める革命運動を話に絡ませている。この辺は歴史もの好きの僕にはむしろ興味深いところで、その革命運動協力者としてマギー=チャンロザムンド=クワンの大物女優さんが参加して映画に華を添えている(二人ともすでにジャッキー映画出演済み)。特にマギー=チャンの存在のためにこの映画、「ポリス・ストーリー」シリーズに雰囲気が近くなってしまった気もする。そうそう、20世紀初頭ということで、パーティーの準備のためにドレスを着こむお嬢様たちが「きつい!」と騒ぎながらコルセットで腰を締め付けているのもちょっとした注目点。
 こうした革命運動を取り締まるべく、清朝の刺客、密使も香港に潜入してくる。当時の香港はもちろんイギリス植民地であり、清朝の支配が及ばないことから革命家たちが立ち寄ることは実際多かったみたい。この時代の香港を舞台に孫文オ命を狙う清朝密使たちと孫文の命を守る武術者たちが対決する「孫文の義士団」って映画もあったが、あれは完全なフィクションだけどね。

 中盤の見どころは「手錠アクション」。これも古典的といえばそうなんだけど、ジャッキーがやるだけについてく方も大変だ。まずジャッキーと部下が手錠でつながれたままマギー=チャンの家に行って、革命党員・清朝の密使・警察長官など三つ巴に入り乱れての「かくれんぼドタバタ」が繰り広げられるのだが、この辺はほとんどドリフのコント状態。今回見て改めて思ったけど、ジャッキー映画にはこのシチュエーションが結構多いような…

 そして続いては悪役であるチャンと手錠でつながれたまま、海賊の残党たちに襲われる。このくだり、そう長くはないんだけど実はこの映画最大の見せ場なんじゃないかなぁ、初見の時もこの場面だけやたら印象的でよく覚えていたもの。
 本来は敵味方、しかも身体能力的にも差が大きい二人が、手錠でつながれているために一心同体で逃げるしかなくなる。しかし意思疎通がてんでできてないから、柵を乗り越えるのかくぐるのか、柱を左へ抜けるか右へ抜けるか、いちいち食い違って、そのたびに時間をロスしちゃう。しかもジャッキーがヒョイヒョイ身軽に動いていくのに対してチャンのほうはついていくのもできるかどうかというレベルなので、一人なら余裕で逃げるOR反撃できるジャッキーもこれでは力が発揮できない。建物の二階のバルコニー部分をショートカットして飛び移るシーンでは、チャンがついていけずに落っこちそうになるところなど、悪役のはずなのにハラハラさせられてしまう。
 この場面、次から次へとアイデア投入のシーンが続くのだが、敵がテーブルの上に乗ったところを、ジャッキーが「テーブルクロス抜き」をしてスッ転ばせるという一瞬のシーンがある。さりげなく一瞬で決めてスローも繰り返しもしないのでぼんやりしてると見落とすほどだが。エンディングのお約束「NG集」でもこのシーンの練習をしてる映像が入っていて、ジャッキーがホントにやって見せてるのが確認劇る。

 このピンチを逃れたあと、ジャッキーはチャンの指図によって川に投げ込まれ抹殺されかかる。Wikipediaで知ったが、この部分、最初に日本で試写会が行われたバージョンではジャッキーが刑務所に入れられてひと騒動という展開になっていたのを、ジャッキー監督が不満を感じて試写後に追加撮影や編集でストーリーを変更したのだという。最初のバージョンは日本の試写会に来た人しか見ていないわけで、キネマ旬報のオンライン映画データベース「KINENOTE」でもストーリーがこの最初のバージョンで説明されている。

 最後のクライマックスは、チャンと結託した清朝密使たちとの開発区を舞台にした追いかけっこ&大乱戦。工場内の巨大「すり鉢」(?)でじわじわ殺されそうになるシーンとか、ニワトリかアヒルを入れる「回転鳥かご」(いまだに何に使うものかわかんないんだが)の中での格闘など、相変わらずいろいろ使ったアクションは満載。マギー=チャン、ロザムンド=クワンの二人も危険なアクションを体を張って頑張っている。さすがに落下シーンなど一部スタントがいるような気もするけど、アップで映るカットでは本人が屋根にぶらさがっているのが確認できるし、香港映画って男女問わず結構危ないことやらせますからね。

 清朝密使との大格闘で、ジャッキーが目の前に積んである「唐辛子」をバリバリ食って、その液を敵に浴びせて目つぶしする、って場面があってビックリしちゃったのだが、これ、ホントに本物の唐辛子を口にふくんでやってるのがやはりエンディングのNG集で確認できる(ジャッキーがたまらず水を飲むカットがある)。何も本物使って本当に喰わなくても撮れるようにも思うのだが、あくまで「本物志向」なのか。
 ラスト、逃げるチャンを捕まえるために完成祝いの巨大飾り看板(でいいのかな)を引き倒し、その上をジャッキーが駆け下りていくアクションも忘れ難い。前作の「時計台落ち」と比べると地味ではあるんだけど…そのあとジャッキーにも看板が直撃、うまい具合に骨組みの隙間を抜けて助かるというシーンも、少なくとも一度はNG出してることがエンディングで分かる。

 海賊の残党たちもすっかり改心しちゃって、形だけの「復讐」をして去って行っちゃうところとか、挙げれば面白いところはいろいろあるんだけど、「プロジェクトA」の続編、って性格はほとんど希薄。やっぱりサモハンとユン=ピョウがそろってないと…「史上最大の標的」という日本でつけた変なサブタイトルはそれを埋め合わせる意図もあったんだろう。だいたいこういう「意味不明に強調するサブタイトルつき邦題」って、配給する側も自信がなさを露呈してるんだよな。これは今でも変わってないと思う。(2018/1/26)

 

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