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Tue Nov 19 16:31:11 2024
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#1928 
バラージ 2024/11/16 11:05
最近観た映画

 長塚京三さん主演の『敵』という映画が来年1月に公開されるとのことで。実は僕、昔から長塚さんが好きなんですよね。共演が瀧内公美さんだし、これは観たい……と思ってたら、なんと東京国際映画祭でグランプリと主演男優賞を獲っちゃった。いや、おめでとうございます。ちなみに原作は筒井康隆で監督は吉田大八。

>映画館で観た映画
 『国境ナイトクルージング』という中国・シンガポール合作映画を観ました。主演は中国のチョウ・ドンユィ、リウ・ハオラン、チュー・チューシアオで、監督がシンガポールのアンソニー・チェン。
 北朝鮮との国境にある中国東北部の朝鮮族が多く住む延吉が舞台。雪深い冬に友人の結婚式に出席するため、金融関係の仕事をしている上海からやってきた河南出身の青年は、仕事に疲れ果て心に問題を抱えていた。結婚式を中抜けした彼は観光ツアーのバスを見かけ参加するが、そこでスマホを紛失。ツアーガイドの女性はそのお詫びに彼を夜の街に連れ出し、彼女の男友達も交えた3人は夜中まで飲み明かす。翌朝、寝過ごした青年は飛行機に乗り遅れ、他の2人の提案で数日間、延吉の街やその周辺を3人でぶらついて楽しむことに。ツアーガイドはかつてオリンピック出場を嘱望されたフィギュアスケート選手だったが脚のケガで挫折し、家を飛び出して延吉に流れ着いた。男友達は子供の頃から勉強が苦手で、四川の実家から叔母を頼って延吉に働きに来ていた。それぞれ心に傷を隠し持ち、何かから逃げてきた3人。彼らはお互い微妙な距離感のままバイクや車で凍てついた延吉や国境の長白山を歩き回る……。
 うーん、期待したほどではなかったかなぁ。雰囲気系の映画でえらく淡々としています。僕はそういう映画も嫌いではないんですが、この映画はなんとなく今ひとつ合わないところがありましたね。つまらないわけではないんだけど、すごく面白いってわけでもなく、まあまあって感じ。シンガポール出身の監督は自国に無い冬の映画、氷の映画を撮りたかったそうで、それで舞台も中国東北部になったらしい。しかし、これから冬になろうってのに、映画の中で極寒を観るのもいまいち気が乗りませんでした。
 ツアーガイド役のチョウ・ドンユィは相変わらず良い。3年前の『少年の君』では28歳で女子高生役を違和感なく演じてた細身童顔のカメレオン女優ですが、本作ではちゃんと年相応の大人の女性で、さすがチャン・イーモウに見出された演技派。ベッドシーンも演じていて、おお、と思ったんだけど、よくよく考えたら10代でデビューした彼女ももう30代に突入してたのであった。
 あと終盤に熊が出てくるシーンがあって、おそらく着ぐるみではなくCGだと思いますが、ほとんど違和感がなくて驚きました(着ぐるみだったとしてもそれはそれで違和感がない)。『ゴールデンカムイ』や『八犬伝』のCGとはえらい違いだな、おい。

>DVDで観た映画
『セレブの種』
 2004年の米国映画(日本公開は2006年)。スパイク・リー監督作で、原題は『She Hate Me』。ハーバード大卒でバイオテクノロジー会社に勤める黒人エリートビジネスマンの主人公は、会社の不正を告発しようとしたことで逆に会社を追われ、カードや預金も凍結されて無一文状態に。困り果てる彼のもとを元恋人のレズビアンが訪れ、子供が欲しいので大金を支払うから彼女および彼女の恋人とセックスして妊娠させてほしいと頼まれる。金に困っていた主人公は困惑しつつも仕方なくその申し出を了承。元恋人は見事妊娠する。やがて元恋人は子供が欲しい金持ちレズビアンを彼のもとに次々送り込むビジネスを展開。彼はレズビアンたちを次々に妊娠させて大金を手にするが、そんな毎日に嫌気が差す。彼の“ビジネス”の噂が漏れると、元いた会社はそれを利用して彼を取引詐欺容疑で告訴。逮捕された彼をめぐって世論は沸騰し、やがて裁判が始まるが……。やっぱりスパイク・リーは黒人を主人公にしたほうが面白い。リーらしく基本的にはヒューマンドラマでありながら、エンロン(懐かしー)など企業の不正や人工授精なども扱ったかなりの社会派。ウォーターゲート事件の犯人を最初に見つけた警備員のフランク・ウェルズがその後報われない人生を送ったことはこの映画で初めて知りました。まぁ主人公の顔した精子たちがレズビアンたちの顔した卵子に突撃するという、いかにも一昔前のエッチなアニメにありそうなシーンはちょっと笑っちゃったし、いくらなんでも主人公百発百中すぎだろとも思いましたが、久しぶりにスパイク・リーらしい映画を観たという感じで、なかなか面白かったです。

 その後、所持DVD&Blu-rayの再視聴ターンに入り、『軍中楽園』(レジーナ・ワン出演、2014年〈日本公開2018年〉、台湾)、『私は猫ストーカー』(星野真里主演、2009年、日本)、『狙った恋の落とし方。』(スー・チー出演、2009年〈日本公開2010年〉、中国)、『台北カフェ・ストーリー』(グイ・ルンメイ主演、2010年〈日本公開2012年〉、台湾)と、好きな女優の出てるお気に入り映画を観まくって浸りまくっております。

>テレビドラマ
 『つづ井さん』『明日、私は誰かのカノジョ』に加え、新たに観始めたのが『マイダイアリー』。静かで穏やかな雰囲気と若手俳優の自然な演技が良いです。『きみの継ぐ香りは』もTVerで観ました。変わったテーマの作品で、星野真里さん(と加藤ローサさん)主演だから最後まで観続けるつもり。
 さらに星野さんがゲスト出演するってことで『全領域異常解決室』第5話も観ました。面白かった。なるほど、ノーマークだったけどそういう話だったのね。八百万の神々の戦い。藤原竜也の演劇的な芝居が物語に上手くハマってます。これも続けて観てみるかな。前4話観てないけど。



#1927 
バラージ 2024/10/19 19:36
戦場の疑似体験

 『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(原題:Civil War)を観ました。
 舞台は近未来の米国。米国連邦政府から19の州が離脱して全米は分裂状態となり、カリフォルニア州とテキサス州の「西部勢力」と政府軍の間で内戦(シビル・ウォー)が勃発。各地で激しい戦闘が繰り広げられ、政府の首都ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。それでも勝利の日は近いとテレビでうそぶく三期目の大統領(現在の大統領は二期まで)は、14ヶ月もの間、報道機関の取材を一切受けていない。そんな大統領への突撃独占インタビューを行うべく、4人の戦場カメラマンとジャーナリストがニューヨークからワシントンへと向かうが、彼らは行く先々で戦争の狂気を目の当たりにし、それに巻き込まれていく……。
 いやぁ、すごい映画でした。久々に米国映画の底力を見せつけられましたね。近未来といってもいわゆるSF的要素は無く、一昔前の第三次世界大戦ものみたいとでも言うべきか、要するに一種の架空戦争映画ですが、戦争を娯楽的またはシミュレーション的にとらえたものでもなく、南北戦争(英語ではAmerican Civil War)以降本土が戦場となったことのほぼ無い米国が戦場の狂気を疑似体験してみるといった感じの映画。実際にパレスチナやウクライナでも行われているであろうような、目を背けたくなる戦場の恐怖と狂気がこれでもかと描かれています。音響も素晴らしく、銃声や爆発音が鳴るたびにビクッとしてしまいました。ところどころで流れるロックやヒップホップなどの音楽も非常に印象的で心に残ります。
 主演の戦場カメラマン役のキルスティン・ダンストはいい女優になったなあ。もうすっかりおばさんで中年体型になりながらも、それすらも魅力に変える演技派ぶりを遺憾なく見せてくれます。彼女の初見はたぶんドラマ『ER 緊急救命室』でのゲスト出演だったと思いますが、まだ10代の可愛い少女ながら抜群の存在感を見せてましたね。その後、『スパイダーマン』シリーズでの大ブレイクを経て、実力派若手スターから今ではすっかりベテラン女優になりました。そして彼女に憧れる新人カメラマン役の若手女優ケイリー・スピーニーって子も良かった。今後、要注目です。
 ラストがややあっけなくて少々拍子抜けだったのだけがちょっと残念。


>その他の映画館で観た映画
『パリのちいさなオーケストラ』
 90年代半ばが舞台のフランス映画。パリ近郊の音楽院でビオラを学び指揮者を目指すアルジェリア系の17歳の少女と、チェロを学ぶその双子の妹は、パリの名門音楽院に最終学年で編入する。女性が指揮者を目指すのは著しく困難で(現在でも指揮者の女性の割合はわずか6%)、名家の子弟の同級生たちには敵視されてからかわれ、校長も名家の子弟をひいきし女性が指揮者になることには否定的。だが彼女は特別授業に来た世界的指揮者のセルジュ・チェリビダッケに見出され、彼の自宅で特別指導を受ける指揮者候補の1人になる。やがて彼女は妹と共に自分たちのオーケストラを創設することを目指し、地元の仲間やパリの同級生たちなどに声をかけ、夢の実現へと動き出す……。
 面白かった。世界中で公演している実在のディヴェルティメント・オーケストラを立ち上げたザイア・ジウアニとフェットゥマ・ジウアニの姉妹の実話の映画化とのことで、チェリビダッケ(故人)も実在の人物。姉妹役の2人の女優とチェリビダッケ役の俳優以外の楽団員や演奏家たちを演じたのは実際のミュージシャンだそうで、監督は生音で録音することにこだわったとのこと。そのクラシック音楽がやはりいいですね。ラヴェルの『ボレロ』が重要な曲として使われてますが、僕はもう一曲の重要な曲として使われているサン=サーンスの『サムソンとデリラ』作品47「バッカナール」が思い出深いです。高校の吹奏楽部時代にレコードで聴いて、いい曲だなあと印象に残った曲なんですよね。その時に聴いたのは吹奏楽バージョンだったわけですが、もちろん本作では本来のオーケストラ(管弦楽)バージョン。映画館の大音響で聴くとやっぱりいいですねえ。音楽の力は偉大だ。
 ストーリーも、最初は差別や敵意を受ける主人公姉妹が仲間を得て、夢に向かい1歩ずつ努力していく姿がポジティブに描かれていて心地よい。実際の姉妹が脚本や撮影にも協力したそうで、おおよそ事実通りの展開のようです。監督ばかりでなく撮影も女性とのことで、ある意味女性映画ですが、男にも全く違和感なく楽しめました。終わり方がやや物足りないけど、それでも十分に良い映画でしたね。
 ちなみにどうでもいいけど、主人公(姉のほう)が寝る時に1シーンだけ、日本語のひらがなで「まっくろくろすけ」と書いてあるTシャツを着てるシーンがあり、なんだか気になったりなんかして(笑)。そのTシャツに特に意味はないんだけど。

>DVDで観た映画
『逆光の頃』
 2017年の日本映画。『殺さない彼と死なない彼女』『恋は光』『新米記者トロッ子』の小林啓一監督がそれ以前に撮った監督3作目で、1時間ちょいの中編映画です。原作は「コップのフチ子」の原案者でもある漫画家タナカカツキのデビュー作で、小林監督が映画化を熱望したとのこと。原作者も映画の出来を絶賛したそうです。
 京都の平凡な高校2年生男子の、友人との突然の別れ、幼馴染とのほのかな恋、不良にケンカを挑む、といった何気ない、だが内面では言語化できないようなモヤモヤが流れる中途半端なところでたゆたうような日常を、静かに穏やかに描いていく青春映画。いつものことながら小林監督の映画に流れる空気感が抜群にいい。青春というものがあっという間に過ぎ去ってしまうもの、そしていつかはその記憶さえ忘れてしまうようなものだということが、言語ではなく“空気”として映画の中に満ち満ちています。そのようなことのできる人はそうはいません。思うに小林監督は青春の空気というものをいつまでも自分の中に感覚として記憶していて、しかもそれを映像化できる稀有な人なんでしょう。僕も観ていて青春時代の感覚が呼び覚まされ、そしてそれがいずれたやすく消え去ってしまうものであることもわかっているから、切なくなってちょっと胸が締めつけられそうになりました。なんだか眠りの中で夢を見てるような感覚とでも言いますか。映画に映し出される京都の風景もどこまでも美しく、画作りの上手さもこの頃からすでに健在。面白くて2回も観ちゃいましたね。
 主演の高杉真宙もとてもいいし、何よりヒロインの葵わかながとにかくめちゃくちゃ可愛い。『殺さない〜』の桜井日奈子にしろ、『恋は光』の西野七瀬にしろ、特にファンというわけでもないんですが、どちらもめちゃくちゃ可愛く撮られていて、おそらく小林監督は女の子を魅力的に撮る天才なんでしょう。そういう監督って僕はかなり好み。DVDも買おうかな。監督デビュー作の『ももいろそらを』と2作目の『ぼんとリンちゃん』も観たい。

『海岸通りのネコミミ探偵』
 2022年の日本映画。好きな女優の星野真里さんが脇役で出てるんで観た映画です。逃げた飼い猫を探す青年がペット探し専門のペット探偵なるチラシを見かけ、事務所を訪ねて猫探しを依頼する。猫は無事見つかるが、すでに別の夫婦に拾われて幸せに暮らしていた。ところが青年は実は無職宿無し無一文で報酬を支払えず、代わりにペット探偵の仕事を報酬分手伝うことに。そこへ子供が飼い猫探し依頼に来るが、探偵は子供の依頼は受けられないと言う。実は両親が離婚調停中だという子供を、自らも子供の時に両親が離婚し拾った猫に心救われた青年は同情。探偵に黙って勝手に猫探しをすることに……。とにかく主人公がクズでバカでガキで、全く共感できず終始イライラしました。子供のほうも子供のほうでこれまたイライラさせられます。正論を言う探偵と両親のほうがはるかにマトモ。演出は悪くないんですが、これは脚本の問題でしょう。あと主演の演技もなんかビミョー。調べたら2.5次元俳優らしい。そういや星野さん特別出演の『恋するふたり』の主演俳優も2.5次元俳優で同じように微妙な演技だったし、WOWOW録画を15分で観るのやめた『映画 刀剣乱舞 黎明』の2.5次元俳優陣も全員微妙でしたね。星野さんは母親役で出番はそれなりにありますが特に可もなく不可もなく。

>その他の映画の話
 ジャッキーの新作『A LEGEND/伝説』が今月の2024東京・中国映画週間で上映されるようです。ジャッキー映画がこういうマイナーな映画祭で上映されるのは珍しい。ひょっとしてこのまま劇場公開されずにDVDスルーか配信スルーになってしまうんかな? 近年のジャッキー映画の興行は中国本国(や香港)でも日本でもかなり苦しいようで、『A LEGEND/伝説』も中国では大コケしたらしいしなあ。

>テレビドラマ
 地元の地方局で深夜に始まったドラマ『明日、私は誰かのカノジョ』がなかなか面白い。レンタル彼女を扱ったドラマのようですが、暗めな感じがいい。調べたら2年前の深夜連ドラのようです。
 また地元ではやってない深夜ドラマ『つづ井さん』の放送が始まったんでTVerで視聴。仲良しのオタク女子5人のしょーもないウダウダをゆる〜く描いたドラマで、そのゆるさがなかなか面白い。実話エッセイが原作とのこと。
 そして『きみの継ぐ香りは』という星野真里さんの主演ドラマが11月から始まるとのニュースが! これはサプライズ! いや、うれしい。加藤ローサさんとW主演だそうです。ただ放送局がTOKYO MXっていう東京ローカル局だか関東ローカルだかだからなあ。これまたTVerに頼るしかありません。



#1926 
バラージ 2024/10/18 00:36
追悼・西田敏行

 西田敏行さんが亡くなられました。ドラマも映画も出演作が多すぎて触れきれないんですが、個人的な思い出で言うと僕が西田さんを最初に観たのはテレビドラマ『西遊記』(1978年)の猪八戒役でしたね。アニメ以外の実写ドラマを観始めたほとんど最初の頃なんじゃないかな。『西遊記II』(1979年)ではスケジュールの都合か左とん平に変わっちゃったけど。ああ、そうか。『西遊記』の主要キャラで存命なのはこれでマチャアキだけになっちゃったんだな。夏目雅子も藤村俊二も左とん平も岸部シローもみな旅立ってしまった。
 その次が『池中玄太80キロ』(1980年)。雑誌カメラマンの役で、編集長役の長門裕之との掛け合いの中で叫ぶ「今やろうと思ってたのに、言うんだもんな〜!」という台詞が記憶に残ってます。主題歌の「もしもピアノが弾けたなら」も大ヒットしましたね。三姉妹のシングル・パパの役でもあり、長女役がまだ少女俳優だった杉田かおる。彼女の「鳥の歌」もヒットしたなあ。翌1981年にパートIIも放送されましたが、1989年にパートIIIが作られてたのは知らなかった。ちょうど僕が故郷を離れた大学1年生の時か。
 そしてその次がNHK大河ドラマ『おんな太閤記』(1981年)の豊臣秀吉役。僕が最初に観た大河ドラマです。その後も大河には何度も出て、いろいろな役を演じてますが、やはり個人的にはこの大河での秀吉役が今だに印象深い(次点で『葵 徳川三代』(2000年)の徳川秀忠役)。主人公である佐久間良子演じる「ねね」を、「おかか!」と呼ぶ台詞も流行ったなあ。

 映画ではテレビドラマほどには西田さんを見てないんですが、やはりなんといっても1988年から始まった『釣りバカ日誌』シリーズですね。僕は数本しか観てませんが、2009年まで22作も続きました。当初は『男はつらいよ』併映のB面映画でしたが、やがては動員に陰りの見え始めた末期の『男はつらいよ』を支えるほどに。渥美清の死によって『男はつらいよ』が終了した後に一本立ちしてからも人気シリーズとなりました。スピンオフとして前日譚ドラマ『釣りバカ日誌 新入社員浜崎伝助』シリーズも2015年から19年まで放送され、若き日のハマちゃんを描いたこちらではスーさん役でした。また山田洋次監督の『学校』(1993年)、『学校II』(1996年)でも主演しましたが、山田監督が『男はつらいよ』終了後に作った『虹をつかむ男』シリーズ(1996〜97年)は上手くいかなくて2作で終わっちゃいましたね。

 21世紀に入ってからも出演映画は『半落ち』(2003年)、『相棒 劇場版』(2008年)、『探偵はBARにいる』(2011年)、『終戦のエンペラー』(2013年)、『風の電話』(2020年)といったあたりを観てますが、正直今ひとつ印象に残っていません。三谷幸喜映画の常連にもなりましたが(『THE有頂天ホテル』(2006年)、『ザ・マジックアワー』(2008年)、『ステキな金縛り』(2011年)、『清須会議』(2013年)、『ギャラクシー街道』(2015年))、僕は観てないもんで。1番印象に残ってるのはレンタルDVDで観た『丘を越えて』(2008年)の主人公・菊池寛役かな。
 テレビドラマは『タイガー&ドラゴン』(2005年)や『俺の家の話』(2021年)など宮藤官九郎作品が個人的に印象に残ってますが、他に世間的に有名なのは『白い巨塔』(2003年)、『華麗なる一族』(2007年)の山崎豊子原作ドラマ、そしてなんといっても2012年から始まった『ドクターX 外科医・大門未知子』シリーズでしょう。今年上旬もドラマ『さよならマエストロ』にレギュラー出演してましたが、12月に公開される映画『劇場版ドクターX FINAL』が遺作となるようです。
 御冥福をお祈りします。



#1925 
バラージ 2024/09/29 10:44
氷上の美しく透明な時間

 『ぼくのお日さま』という日本映画を観ました。
 田舎町の雪国に住む吃音の内気な小6の少年は野球とアイスホッケーをしていたがとにかく下手。彼はある日、スケート場でフィギュアスケートをしている中1の大人びた少女を見かけ、彼女に憧れて自分もホッケーシューズでフィギュアの真似事をするが上手くいかない。それを見ていた少女の男性コーチは、少年自身も気づかぬ少女への淡い想いに気づき、彼にお古のフィギュアシューズを貸して彼にもフィギュアスケートを教え始める。やがてコーチは2人にアイスダンスのコンビを組むことを提案。2人はぐんぐん上達していくが、大人しく繊細な少女がコーチへの淡い想いを秘めていることには少年もコーチも気づかない。そしてコーチには同性の恋人がいた……。
 少年と少女と男性コーチ、3人の孤独な魂の束の間の美しい触れ合い。それが淡い光の中で優しく穏やかに紡がれていくのが良い。そしてそれがほんの少しのボタンの掛け違いで脆くも儚く壊れていく思春期特有の繊細な難しさまでもが愛おしい。コーチ役の池松壮亮のどこか影のある佇まいも良いですが、少年役の越山敬達、そして何より少女役の中西希亜良が素晴らしい。子役出身で映画初主演の越山くんのピュアな少年ぶりも上手いんですが、演技初経験の中西さんの繊細で複雑な内面の少女像を演じる姿が秀逸。もちろん役との親和性の要素によるビギナーズラック的な部分もあったのかもしれないけど。
 それにしてもこれほどフィギュアスケートを美しく映像に捉えた劇映画は初めてなんではないでしょうか。これまで米国映画『冬の恋人たち』『アイ、トーニャ』などを観たけど、この映画は頭抜けています。越山くんと中西さんが共にフィギュア経験者というのが大きかったんでしょう。共に4歳からフィギュアを初め、中西さんに至っては現役フィギュアスケーターでコーチの勧めでオーディションを受けたんだとか。撮影時は14歳と12歳ながら中西さんのほうが背が高いんですが、それから1年過ぎた舞台挨拶では越山くんの背がすっかり伸びて池松壮亮も抜きそうなくらいになっててびっくり。成長期すげえ。流れる音楽のドビュッシー「月の光」もフィギュアではお馴染みの名曲でこれまた良かった。
 20代の奥山大史監督はこれが長編2作目で、初監督の2019年『僕はイエス様が嫌い』(未見)で66回サンセバスチャン国際映画祭最優秀新人監督賞を受賞したとのことで、史上最年少受賞だったそうです。本作もカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に出品され、普段ならエンドロールの最中に帰っちゃうような観客たちが、エンドロールが終わって照明が点き監督や出演者が退出するまで5分間もスタンディングオベーションを続けたとのこと。それもうなずけます。単純に映画としての出来がすごく良い。これからも楽しみな監督かも。


>その他の映画館で観た映画
『箱男』
 安部公房の有名な原作を石井岳龍(旧名・石井聰亙)監督が映画化。主演は永瀬正敏、共演に浅野忠信、白本彩奈、佐藤浩市。1997年にも石井監督により日独合作で映画の製作が決定していましたが、ドイツのハンブルクで撮影を行うべく現地まで行ったところ、クランクイン前日に日本側の製作資金の問題で撮影が頓挫したとのこと。それから27年の時を経て再び製作に至ったそうです。27年前も永瀬正敏が主演予定だったらしく、ひょっとして97年の頓挫が永瀬の出てる石井監督の『五条霊戦記』(2000年)製作につながったのかな? もっとも佐藤浩市も27年前に出る予定だったそうですが『五条〜』には出てない一方で、『五条〜』に出てた浅野忠信は27年前には出演予定じゃなかったとのこと。
 安部公房の原作は昔読んだんですが内容はほとんど覚えていません。映画を観て、ああ、そういやこういう話だったっけと思い出しました。ただ、シーンごとに観た後から話を思い出すだけで、観てるシーンより先の話は思い出せなかったんで、結局はまっさらな気持ちで観ることになりました。原作が出版された70年代を舞台としてますが、ノートパソコンが出てきたり「配信映画」という台詞が出てきたりで、あまり厳密にはこだわってない感じ。それはそれとして、すごく70年代っぽいなと映画を観ていて感じましたね。まず映画の作風がものすごく70年代の映画っぽい。悪く言うと僕の世代の青春時代より一昔前の映画を観てるような感じ。狙ってやったのかとも思ったんですが、パンフレットやネット記事のインタビューを読むと、どうもそういうわけでもなさそう。で、これも観てて思ったんですが、そもそも原作小説が(書かれた当時の)70年代前半的な小説なんだろうってこと。原作が出版されたのは1973年ですが、その3年後の1976年には村上龍が『限りなく透明に近いブルー』でデビューし、さらにその3年後の1979年には村上春樹が『風の歌を聴け』でデビューします。おそらくそこで文学の感覚というか流れがガラッと変わったんでしょう。一世代若々しくなったとでも言いますか。そういう意味では僕の世代的には映画はちょっと古い感じがしてしまったのも事実ではあります。石井監督は小説も映画も現代に通じるものを描いた作品と言ってますが……。
 とはいえなかなか面白い映画だったことも事実で、段ボール箱をかぶった、いい歳したおっさんたちが妙なことに取り憑かれて妙なことしてる姿を、前衛性や不条理性は抑えつつ娯楽映画的に仕上げています(最初に企画が持ち上がった時の安部の要望は「娯楽映画にしてほしい」の一点だけだったそう)。永瀬正敏や浅野忠信、佐藤浩市が良いのは当然ですが、なんといってもヒロイン役の白本彩奈って子がいい。全く知らない子ですが好演でした。ヌードにもなって(ロングショットや暗い映像のシーンが多いながらも)美しい肢体を見せてくれ、濡れ場やちょっと変態チックなシーンも演じてましたね。この映画で1番嬉しいサプライズでした。大人っぽく見えて20代半ばか後半ぐらいかと思ったら、まだ22歳だそうでびっくり。永瀬や浅野と父娘ぐらい離れてるじゃねえか(笑)。でも永瀬も浅野も若く見えるんで、恋愛的になっても不自然には感じませんでした。ちなみにヒロインの造形は原作とはかなり変わったらしい。やはり原作では少々男に都合のいい女性像になっていて、現代にはちょっと合わないとのこと。

>録画やDVDで観た映画
『ベイビーわるきゅーれ』
 2021年の日本映画。映画館で3作目の予告編をやってて、なかなか面白そうだったんで観に行こうかなと思って、じゃあまあ過去作も観とこうとDVDをレンタルしました。若い女の子の殺し屋2人組を主人公に、彼女たちのゆるい日常と超絶アクションを交互に描いた妙にポップなイマドキ映画。明らかに低予算でなんだかVシネっぽい。主演の片割れでこないだ観た『新米記者トロッ子』に出てた石あかりって子と、ヤクザ組長役の本宮泰風以外は知らん人ばっかり。なんか日常のゆる過ぎ感と殺人のあっけらかんさがどうも趣味に合いません。まあ悪くはないけどっていう程度。アクションはすごいけど、最後の戦いは銃に何発弾入ってんだよと思っちゃいましたね(笑)。2は借りるか微妙だなーと思ったんですが、WOWOWで放送されたんで一応録画しました。さて映画館でやる3はどうしますかね。前田敦子と池松壮亮も出るみたいなんでちょっと気になってはいるんですが。

『スナッチアウェイ』
 2003年のフランス映画で、日本ではDVDスルー。主演のマリー・ジラン目当てで観ました。しがないテレビカメラマンとして働く20代女性が、取材対象の娼婦から金になる仕事があると誘われ、行ってみるとそれは4人組の強盗が押し込むところを撮影するヤバい仕事だった。しかしそれをきっかけに強盗たちと親密になった主人公は、やがて誘われるままに彼らの仲間となって強盗稼業に手を染めるようになる。最後にデカいヤマをというリーダーの提案に皆は危険すぎると反対し、主人公も一旦は袂を分かつが、結局は金に困って5人は計画通り金庫を襲撃することに……。軽快に進むピカレスクロマンでよく出来ててなかなか面白いんですが、マリー・ジランが上手くて可愛くて魅力的という部分に負ってるところも大きく、彼女がいなかったら多少評価が下がるかもというのも正直なところではあります。あとネタバレになるんであまり言えませんが、最後が意外というか予想してなかったというか、ええ!?それでいいのか?とも思ってしまう。まあマリー・ジランだから、まぁいいかとはなるんですが。

『リリー・デイル 再会のメロディー』
 1996年の米国のTVムービー。好きな女優のメアリー・スチュアート・マスターソンが主演なんで観ました。もちろん日本ではDVDスルーなんですが、映画情報サイトなどに全く情報が無く、今年ヤフオクをなんとなく眺めていて初めて日本版DVDの存在を知りました。Amazonで購入したんですが500円の激安DVDが1000円以上に値上がりしてましたね。再生中に再生時間のカウントが出ないという変な仕様のDVDでした。
 多分19世紀あたりが舞台。ある青年が汽車でヒューストンに帰郷する。むかし父親がアル中で死に、母親と再婚した義父が妹のリリー・デイルだけ引き取って青年には自立することを求め、彼は住み込みで働いていたが、母が息子と不仲な義父の出張中に密かに呼び寄せたのだ。わがままに育てられた妹は兄をあまり歓迎しないし、義父が出張を切り上げ早めに帰宅したため不仲な2人が鉢合わせしてギスギスした雰囲気に。喧嘩して息子は帰ろうとするが突然原因不明の病に倒れ、しばらく義父宅で療養せざるを得なくなり……みたいな話。うーん、何だこれ? 何が描きたいんだかさっぱりわからん。脚本が悪いんだか演出が悪いんだかその両方なのか最初から最後まで話がさっぱり見えない。ただただ家族4人がギスギスしてるだけ。そもそもマスターソンがトップクレジットでタイトルも彼女が演じる妹の名前なのに、妹が全然主役じゃなくて兄貴のほうが主役っぽいというのもよくわからない。妹の名の由来の、実父がよく口ずさんでた「リリー・デイル」という歌を覚えてるかと兄が母や妹に執拗に尋ね、その話を最後まで引っ張るんで何か重要なネタなのかと思いきや、結局ただの懐かし話で特に意味がなかったというのも何だそりゃ? わりと全編その調子で、兄と義父の極端な不仲の理由も描かれないし、妹と兄や義父の関係に何かあるのかと思ったがそれもない。妹の恋人が過去に酒癖が悪かったという話が序盤に出て、何かの伏線になるのかと思いきや、これまた恋人はもう酒はやめたと言い、実際その後はその話題に触れられもしない。そんな調子で何もドラマが起こらず、何なんだこの話は?と観てて終始イライラしました。途中でマスターソンが10代設定と知って驚きましたが、当時30歳前後の彼女が10代はさすがに無理があるし、兄も同様で到底10代に見えない。マスターソン演じるリリー・デイルもただの身勝手でわがままな娘で全く魅力がないし、兄も両親も同様で、全く面白くないTVムービーでした。やれやれ。

>テレビドラマ
 『ビリオン×スクール』も終了。なかなか面白かった。この手の学園ドラマはこれからの若い有望株がごろごろ見れるのがいいですね。教頭役の永野宗典っておじさん俳優は初めて見ましたが、教師役の坂口涼太郎といっしょに毎回アドリブとばしまくりの大暴走で共演者も笑っちゃってたのがおかしかった。
 NHKの『Shrink』ってドラマも面白く観てたんですが、たった3話で終了。精神科医を主人公として心の病を描くドラマでした。



#1924 
バラージ 2024/09/13 19:57
さらに訂正

 『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』および『殺さない彼と死なない彼女』『恋は光』の監督は小林啓一でした。



#1923 
バラージ 2024/09/12 21:53
あらら

文字化けした字は、石偏に「蝶の右側(つくり)」です。



#1922 
バラージ 2024/09/12 21:50
この胸のときめきを

 『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』という映画を観ました。『殺さない彼と死なない彼女』『恋は光』の小林恒夫監督の最新作で、地元ではいつものごとく1か月遅れの公開です。
 主人公は文学少女な高校1年生。憧れの高校生作家が在籍する高校に入学し、2年連続で高校文芸コンクールの大賞を受賞しているエリート集団・文芸部の入部試験を受けるが、窓からドローンが飛び込んできてぶつかり失神。再試験は無く、入部はかなわなくなってしまう。しかし大賞受賞者である女性部長は、実は覆面作家で正体不明の高校生作家を見つけ出せば入部を認めると主人公に持ちかけ、取材のためにドローンを突入させた張本人で、高校生作家の独占インタビューを掲載したことがある学園非公認の新聞部にスパイとして潜入することを依頼。こうして主人公は新聞部に入部するが、正義感あふれるパワフルな女性部長に引っ張り回され鍛えられているうちに、彼女の中にも記者魂が芽生え始める。文芸部長と新聞部長、対照的な2人の魅力的な先輩に惹かれつつ憧れの作家も追いかけるうちに、彼女は文芸部の裏でうごめく学園の闇を新聞部長が追っていることを知り、圧力を掛けてくる学園理事長と対峙する。新聞部が危機に陥る中で彼女にも部長譲りのジャーナリスト魂に火がつき突っ走る!
 日大藝術学部映画学科の非常勤講師を務めていた企画プロデューサーが、在籍していた院生が大学の授業の課題として提出したオリジナル映画の企画書を原案に採用し、それをプロの脚本家が脚本化したとのこと。ちなみに「トロッコ」とはジャーナリズム界で「半人前の記者(汽車)」のことを呼ぶ隠語だそうです(実際には現在ではほとんど使われてないらしい)。
 いやぁ、面白かった! 小林監督、さすがです。潜入スパイが対象に感化され、やがてその対象によって真実に目覚め巨悪を討つという、ある種の王道的な展開で、またある意味予想通りに物語は進んでいくんですが、社会派の色合いを持ちながらも青春エンタメ娯楽映画としてはそういう風に話が進んでくれなくちゃ困るというか、胸がスカッとして溜飲が下がり快哉を叫ぶ物語でなくちゃ困る。そして主人公たちの若き正義感あふれる姿がクライマックスの疾走に重ねられていく爽快感。またも自然光のみで撮られたと思しき淡い映像美に彩られた大団円の終わりゆく青春の美しさ。本編に通じるエンディング曲の疾走感。全てがとてもいい映画でした。
 主演の櫻坂46の藤吉夏鈴という子は映画初出演にして初主演とのことで、やや拙い演技ながらもその拙さが主人公の朴訥さと素直さと無邪気さに上手くハマってましたね。そして脇を固める新聞部長役の石あかり、文芸部長役の久間田琳加、新聞部副部長役の中井友望、元文芸部員役の綱啓永など若い芸達者俳優たちも皆好演。巨悪の理事長役の高嶋政宏もギャグにならないぎりぎりのラインで怪演してました。そのあたりのバランス感覚も小林監督は相変わらず上手い。出演者曰く、わずかな目の動きや前髪のミリ単位にまでこだわるという画作りの絶妙さ加減も健在。ちなみに小林監督の前2作と違って恋愛要素はほとんどないんですが、それでもちょっとだけそこはかとなく百合っぽい感じもあったりなんかして。
 いや〜良かった。小林監督、3作連続で傑作を送り出すとは。このまま大林宣彦とか市川準とか森田芳光みたいになっていくのかも。犬童一心以来久々の要チェック日本映画監督です。


>その他の映画館で観た映画
『夏目アラタの結婚』
 逮捕時にピエロのメイクをしていたことから“品川ピエロ”の異名で日本中を震撼させたバラバラ連続殺人犯の女性・品川真珠、22歳。児童相談所の職員である主人公は、未発見のままの父親の頭部の在処を探して真珠と文通していた遺族の少年に成り代わって真珠と接見する。現れた真珠はぶくぶくに太っていた逮捕時とは似ても似つかぬ、ほっそりとした可憐な美少女に変貌していた。さらに一瞬で手紙の主ではないと見破られ、焦った主人公はなんとか彼女の心を惹きつけようと突然結婚を申し込む。意外にもそれに食いついた真珠はやたらと頭の切れる女性で、接見するたびに性格がころころ変わり、その底知れぬ言動に主人公は翻弄されつつも、徐々に彼女に惹かれていく……。
 小説の映画化かと思ったら、これもマンガの映画化のようです。ストーリーはスプラッタホラーっぽく始まり、サスペンス・ミステリー的に展開し、最後には異形のラブストーリーになってしまうという奇想天外ぶり。映画では妙に凝りまくって外す印象のある堤幸彦監督ですが、本作はもともとのストーリーがぶっ飛んでいるためかそのような印象はなく、なかなかに面白い映画でした。
 いや、それにしても真珠役の黒島結菜ちゃんが大怪演。トップクレジットの柳楽優弥も相当な演技派ですが、この作品では立ち位置上、完全に受け役に回っているし、脇を固める中川大志らもあくまで真珠=黒島さんを中心に動いています。真珠の不気味な印象を与える特徴的な不揃いな歯はマウスピースによるもので、接見室の独特なライティングなども駆使されているものの、やはり何よりも底知れぬ恐怖を感じさせる一方で接する人々を抗いがたい引力で引き寄せて魅了していく複雑な魅力を持つ人物像を演じ上げた黒島さんの演技力の賜物でしょう。同世代女優の中ではピカ一と言っていいかも。実際、映画を完全に真珠=黒島さんが支配しており、彼女がいなかったらこの映画は成り立たなかったんではないでしょうか。いやはや黒島結菜は怪物です。

>録画やDVDで観た映画
『宇宙探索編集部』
 去年公開されたけど地元には来なかった中国映画。90年代に大評判となり人気を集めたUFO雑誌『宇宙探索』。だがそれから30年の月日が過ぎ去った今はすっかり落ちぶれ、電気代の支払いにも事欠く廃刊の危機にあった。それでも宇宙人の存在を信じ、長年腐れ縁のパート女性編集者に罵られながらも日々活動を続け、侘しい生活を送る中年編集長は、ある日、中国西部四川省の辺鄙な田舎村で宇宙人の仕業とされる怪現象が起きたとの情報を知り、編集部員や外部協力者を引き連れてその村に向かう。村では高額な金を支払ってインチキに引っかかり、またも女性編集者にキレられながらも、やがて頭に鍋を被った不思議な少年と出会う。怪現象の手がかりを握ると思われるその少年を取材し、女性編集者に呆れられながらも編集長は皆と別れ、少年に導かれるように1人山奥へと進んでいく。そして……。
 北京電影学院の大学院生だった監督が、90年代に人気を誇った実在のUFO雑誌『飛碟探索』(飛碟とはUFOのこと)をモデルに卒業制作として作った初長編で、脚本が学院教授や有名監督の目に止まりサポートを受けて製作がスタートしたとのこと。アジア各国の映画祭や映画賞で大きな注目を集め、中国全土で劇場公開されることになり大ヒットしたそうです。実際、学生の卒業制作とは思えぬクオリティで驚き。ドキュメンタリー・タッチというかセミドキュメンタリーというかモキュメンタリーというかそんな感じの作風で作られていて、馬鹿みたいな夢を今でも信じて疑わずに追い続ける、しょぼくれた中年男(というか初老というか)の妄執が、おかしみの中にも何とも切なく物悲しくも愛おしい。そして最後は見事に感動に着地します。主演と女性編集者役はプロの有名俳優で演技も非常にしっかりしており、撮影や編集などの完成度も到底学生映画のレベルではありません。いやぁ、面白かった。

『バカ塗りの娘』
 去年の映画ですが地元ではなぜか他市だけで公開され、僕の住んでる市は県庁所在地にも関わらず来ませんでした(最近こういうパターンが多い)。DVDもなぜか近所のレンタル店に並んでないんですが、WOWOWで放送されたんで録画。
 青森県弘前市で父が伝統の津軽塗職人をしている23歳の女性が主人公。業界の衰退もあって生活は苦しく、頑固な父に嫌気がさして母は出ていき、美容師になった兄も職人は継がないという。主人公は高校卒業後、やりたいことも見つからず、家計を助けるためにスーパーでのバイトと父の仕事の手伝いをしていた。内気な性格のため友達も恋人もいない。実は津軽塗職人を継ぎたいという思いを密かに抱いているのだが、それも言い出せずにいた……というストーリー。うーん、いい映画ではあるんですが、なんというか……地味。そしてちょっとだけ暗い。まあ逆に言えば地味だけど良い映画という言い方もできますが、主人公が内気という設定もあって静かというか寡黙でわりと淡々とした雰囲気の映画で、人によっては退屈と思われてしまいそう。主演の堀田真由ちゃん目当てで観たんですが、堀田さんも顔立ち的にどっちかっていうと地味可愛いタイプなんで、外見にあまり気を使わないという設定もあって印象もすごい地味。その辺にいる普通のちょっと可愛い女の子にしか見えません。ファッション誌でモデルもやるくらいの人なんで普段は華もある子ですが、本作では彼女も映画もとにかく地味でちょっと暗め。もちろん演技は上手いし、役柄的にはリアルっちゃリアルなんですが……。いや、いい映画ではあるんですけどね。元りんご娘の王林とジョナゴールドも友情出演?してました。ジョナゴールドは顔知らなかったんでエンドロールで名前見て気づいた。


>配信とDVD化と
 中国映画『人生って、素晴らしい Viva La Vida』がNetflixで配信開始されたようです。東京では4月公開、中国本国でも今年3月公開のようですが、もう配信開始なのか。てかDVD化はされんのか? Netflix入らないともう1回観れないってのは痛い。Netflix配信だとテレビ放送もされないでしょうし。
 そういや去年日本公開された中国映画『兎たちの暴走』はいまだDVD化も配信もされんなあ。なんで?

>テレビドラマ
 結局今季観続けてるドラマは『ビリオン×スクール』のみ。変則的な期間で放送の深夜ドラマ『さっちゃん、僕は。』は終了。ちょっと純文学的でなかなか面白かった。ローカル放送の台湾ドラマ『お仕事です!』はまだまだ続きます。



#1921 
バラージ 2024/08/25 21:16
あれ?

 『ゴールデンカムイ』、そんな前に終わってましたか。なんかつい最近まで見かけてたような気がしてましたが勘違いだったようです。

 テレビアニメが原作マンガに追いついてしまうというのは昔からあったようで、僕が小学生の頃に『あしたのジョー』の再放送がされてたんですが、対カーロス・リベラ戦の後にジョーがどこかへふらりと旅立つという終わり方をしていて驚いたことがあります。プロボクサーをやめるわけでもなく、ただ旅に出ちゃうんですよね。当時は子供だったんで再放送だということも知らなかったんですが、原作が完結してることはなんとなく知ってたんで一体なぜ?と。実はこれもアニメが原作に追いついてしまったためだったとのこと。本放送は1970〜71年だそうですが僕が再放送を観たのは70年代末あたりで、この再放送で人気が再燃して、劇場アニメ化を経て、テレビ続編『あしたのジョー2』が始まり完結しています。ってこの話最近書いたような……と思ったら#1898に書いてましたね(笑)。
 アニメ版『ドラゴンボール』はあまり観てませんでしたが(ハリウッド実写映画も未見)、同時期のジャンプ漫画のアニメ化作品だと『聖闘士星矢』『北斗の拳』といったあたりもオリジナルエピソードの挿入がされてたようですね。やっぱりアニメのほうはあんまり観てなかったんですが。あの頃のジャンプ漫画は動画にしちゃうと消化スピードが早いものが多く、テレビアニメ化では苦労したのか、『キャプテン翼』なんかでもちらっと観た時に選手たちが地の果てまで走ってくんじゃないかってくらいドリブルのシーンが延々続き、どんな広さのグランドなんだと心の中でツッコんだ記憶があります(笑)。
 『セクシー田中さん』は原作は知らずドラマのほうだけ観たんですが、終盤まではなかなか面白かったのに終わり方が完結した風でもないし、かといって続編の可能性を残すものでもない中途半端なモヤモヤする終わり方で、えっ!?これで終わり?と思っただけでなく、終盤2話は正直ドラマの感じが違うというか、質がちょっと下がったように感じたんですよね。実際、そう感じたのは僕だけではなかったようで、SNSにそういう感想が多く流れたというネット記事が事件前にありました。その終盤2話が原作者が完成脚本に納得せず、素人であるにも関わらず自ら脚本を書いたということで……。難しいところですねえ。
 原作者が映画化作品やドラマ化作品に不満を表明するということは時々あり、有名な作品では『ティファニーで朝食を』(原作・映画ともに読んだ&観た。やっぱり原作のほうが面白かった)や『シャイニング』(原作・映画ともに未読未見)があります。



#1920 
つね 2024/08/24 23:36
AI補足

私もそんなに詳しいわけでもこだわっているわけでもないのですが、たまたま金曜の新聞に掲載されていて思い出したので追記。
ChatGPTの音声機能が先月末追加されたのですが、予定より1カ月遅れ。原因は当初予定していた音声に対し、スカーレット・ヨハンソンが「自分の声が使われている」と抗議されたため。先月下旬にはAI声優を懸念してゲーム声優のストライキもあったとのことです。アメリカでは、声優の役割が分けられているんですねえ。
ところで、同じ記事でアメリカでは「パブリシティー権」を誰もが持つそうで、日本では明文規定がなく、判例によって確立されているそう。今後、日本でも各省庁が連携してAI声優の利用ルールを整える方針だそうです。
AIに限りませんが、最近は特に、医学など技術の進歩にルールや倫理観が追いついてないと感じますね。



#1919 
つね 2024/08/24 13:33


「ゴールデンカムイ」は、2022年4月に連載終了してますね。
連載中の映像化で思い出すのは、テレビアニメですが「ドラゴンボール」。原作に追いついてしまってオリジナルエピソードを追加したり、30分放映のうち前半15分は前週の大杼エストだったり(なので1話見逃してもOK)、まるまる30分ストーリーが進まないのはザラだったり。見ていたわけではないですが、半ば伝説ですね。もう35年くらい昔の話ですが。「ドラゴンボール」つながりだと、ハリウッドの実写化も話題でした。「ゴールデンカムイ」と比べると実写化に明らかに不向きに思えますが、それ以前の問題だったようです。今年は、「セクシー田中さん」のような痛ましい話もありましたが。(原作もドラマも未見)

さて、ハリウッドストライキの話ありがとうございます。こういうのってたいてい、顛末は小さくなってしまいます。受け手側が興味を維持できてないというのもありますが。
たまたまマクドナルドのXでのCMが話題になっていました。見てみましたが、まあ確かにレベルは低い。せめて全員が若い女性というのでなく、老若男女織り交ぜれば、もう少し顔のパターンが誤魔化せたような気もしますが。実はAIどうこうより、歌が耳障りでした。「おーいお茶」のCMのAI女性はそれほど不自然ではないし、いずれCMとかニュース読み上げなんかはかなりの部分、人間に取って代わりそうな気がします。SMSに不適切な投稿をしたり、違法薬物に手を出したり、不倫騒動を起こしたり、台本にないメッセージを突然発したりしませんから。



#1918 
バラージ 2024/08/18 14:27
いろいろ

 『JFK/新証言 知られざる陰謀【劇場版】』と『オッペンハイマー』については映画板ではなく歴史板のほうに書いております。

『ゴールデンカムイ』……原作を読んでる僕の友人も「まさにあれは原作ファンのための作品だね。監督が原作ファンだったから変えたくなかったんだろ。画の構図まで漫画のカットどおりに作ってる」と言ってました。そういや映画の続編がWOWOWで連ドラとして放送されるんでしたね(配信と同時にやるらしい)。もうすっかり忘れてた(笑)。さかのぼって自分の書き込みを見たら「それなりに面白かったけど1週間後にはほとんど忘れてしまいそう」「次も観るかは微妙だなぁ。どうせまた「次回につづく」だろうし」と書いてますが、全くその通りになっております(笑)。ただまあ週刊誌連載マンガって長大だから映画では消化していきにくいのも確か(しかも原作はまだ連載中だし)。一方でスケール的には映画でないと難しいというジレンマもあって、実写化がそもそも難しい作品なのかも。『キングダム』(未読)も原作連載中なのに映画(やはり未見)は4作目で完結らしいけど、どの程度省略して、どの程度消化されてんだろ?

『無名』……観た時の書き込みにも「それぞれのシーンの雰囲気優先で、お話の辻褄が合わないところも多く、どういうことなの?と考えても理解できないところもあります。これは脚本が良くないのかも」と書きましたが、最後のほうのトニー・レオンとワン・イーボーの本気の殺し合いはほんとに意味がわかんないですよね。途中まではワン・イーボーといっしょにいる第三者を欺くためということで一応説明がつくんですが、そいつらがみんな死んだ後まで殺し合うのは完全に意味不明です。

>AI
 僕は正直あんまり興味ないんですが、完全創作人物を主役にするのはほとんどフルCG3Dアニメに近いような。昔『ファイナル・ファンタジー』が3Dアニメになって、他の映画を観た時に予告編だけ観ましたが、あの頃の技術水準だと人物がマネキンみたいでなんだか気持ち悪かったですね。最近もペットボトルのお茶のCMだったかでAIで作った女性タレントを起用してましたが、やっぱりどことなく不自然で、実際の人間には見えませんでした。あと無関係の物故俳優を新作に使うのはおそらく肖像権で問題になるでしょう。
 ハリウッドのストライキについては、そういやどうなったんだっけ?と調べてみたら、以下のような展開だったようです。まず全米脚本家組合の組合員が2023年5月にストライキに突入し、全米映画俳優組合の組合員たちが7月から現場を離れた。全米脚本家組合のストライキは、AIが脚本家たちの仕事を侵害しないよう保護する“ガードレール”を設置するという歴史的な合意で9月に終結。全米映画俳優組合がスタジオ側の代表である全米映画テレビ製作者協会と合意に達したのは11月で、合意内容には最低報酬の引き上げや動画配信された出演作の成果(視聴回数)に基づくボーナスの支給、同意と補償なしに本人の映像がAIによって複製や改変、使用されないことの保証などが盛り込まれた……ということみたい。



#1917 
つね 2024/08/14 23:59
AI

AI動画も広い意味でのCGになると思いますが、まだそんなに活用はされてませんかね。
以前から、俳優はいらなくなるという論もありましたが。「ローグ・ワン」のように、過去の俳優をストーリー上の必要性から蘇らせたりするのは許容範囲だと思いますが、全く無関係の物故俳優を新作に使ったり(法的に厳しいか)、完全創作人物を主役に使うのは抵抗がありますかね。とはいえ、CMなんかではもうAI人物が登場したりしているようですが。

そういえば、ハリウッドだかで脚本家がAIに反対してストライキ起こしてたのどうなったんでしたっけ。いつの間にか収束? 「ブラック・ジャック」の新作をAIで作ったという話もありましたけど、まだキワモノ扱いですね。
囲碁や将棋の世界最強はAIということになるでしょうが、それでも人間が主役の座を譲らないのと同様、映画も、根本的なところは人間が譲らなさそうな気がします。



#1916 
つね 2024/08/14 23:44
今年観た映画

まずはそんなに多くないけど今年観た映画。
「ゴールデンカムイ」
原作は一通り読んでいますが、再現度ほぼ100%で大満足。丁寧に作っているので続編に続くのも納得。なのですが、配信ドラマは見てないんですよね。「沈黙の艦隊」もそうだけど、配信ドラマでの続編はやめてほしい。
「JFK/新証言」
途中で寝てしまいました。なので、あまり大きな声では言えませんが、別に主張が変わったわけではないし、そんなに驚くほどの新証言でもなさそうだったし、映画にするほどでもなかったのでは?
「オッペンハイマー」
トリニティ実験をクライマックスに科学者の苦悩を描いた力作に感じました。現在から過去を振り返るのもこうした伝記物ではよくあること。ただ、この作品ではもう一つの時間軸の名誉回復も混ざっており、それに気づくのに少し時間がかかりました。あと取り調べ室内で、突然、自殺した恋人とのセックスを始めるという幻想が入ったり、分かりにくい場面もありました。全体としては高評価ですが。
「無名」
人に誘われて見ました。ただでさえ、登場人物がお互いに自らの素性を隠してスパイ活動をするという分かりにくい話の上、時間軸をバラバラにして、最後まで見るとストーリーが合わさってくるというパズルのような作品。監督の意図がそうなので、「分かりにくい」という批判は筋違いになりそうですが、ストーリーで伝えたいことがあれば素直に見せればという気が。あと主役2人は、同じ陣営に所属して周りを欺いていたようなのですが、途中、本気で殺し合っていたようにしか見えなかった。
「ゴジラxコング 新たなる帝国」(まだキングではありませんでしたね。ラストでそうなったと思いますが)
頭空っぽにして楽しめた映画でした。前作に続いてコングが主役でゴジラは名前を貸しただけ状態ですが、チョイ見せでも存在感は抜群。CGはこんなものと思っているからかあまり気になりませんでした。CGならではの無重力状態での怪獣決戦もありましたし。
「あんのこと」



#1915 
バラージ 2024/08/12 15:21
映画いろいろ

『赤羽骨子のボディガード』
 普通の女子高生・赤羽骨子の殺害になぜか100億円の懸賞金が掛けられ、彼女自身はそんなことに全く気づかぬまま殺し屋たちに命を狙われていた。骨子の幼馴染で彼女に密かに想いを寄せるヤンキーは、実は彼女の実の父である国家安全保障庁長官から、彼女自身にも気づかれぬように彼女を守るよう命令される。しかし実は彼だけではなくクラスメイト全員が赤羽骨子のボディガードだった! そして骨子の命を狙う中には、ある理由から骨子を憎む、やはり骨子も知らない実の姉がいた。こうして殺し屋たちとボディガードたちの壮絶なバトルが(骨子に気づかれないまま)始まる……というストーリー。
 マンガ原作映画で、主演がラウール(Snow Man)、ヒロインの骨子が出口夏希、姉が土屋太鳳、実父が遠藤憲一。そして秘密ボディガードのクラスメイトが、奥平大兼、橋ひかる、倉悠貴、山本千尋、戸塚純貴、鳴海唯、中田青渚、長井短、坂口涼太郎、木村昴、芝大輔(モグライダー)、詩羽(水曜日のカンパネラ)、安斉星来、橘優輝、松岡広大、大久保桜子、有輝(土佐兄弟)、かなで(3時のヒロイン)、工藤美桜、三浦獠太、橋大翔、あの(あのちゃん)、といった面々という超豪華メンバー。
 お気に入りの鳴海唯さん目当てで観に行ったものの、正直出来にはさほど期待してなかったんですが、肩のこらない娯楽作で予想外になかなか面白かったです。とにかくアクションがすごい。現代風にアップデートされた香港映画的肉体バトルアクションが繰り広げられ、そういうのが好きなんで、おお、と引き込まれました。悪ボス役の谷田歩って人とその手下役の堀丞と浅川梨奈も素晴らしく、アクション指導が良かったんでしょうね。お話のほうも軽快にテンポ良く進み、なかなかによく出来てました。ツッコミどころも多々あれど、多分もともとがそういうマンガなんでしょうし、そんなこと言うのは野暮というか目くじら立てるようなことではないような映画です。肩の力を抜いて気楽に観るには最適な映画でした。
 それにしてもラウールくんもイケメンですが、出口夏希ちゃんが滅法可愛く、土屋太鳳さんもべらぼうに美しいという顔面偏差値が異様に高い映画です。ボディガードたちも美男美女が多く、たいへん目に楽しい映画でもありました。ボディガードは何しろ人数が多いんですが、それでも最低限の見せ場は振り分けられており、その中でも橋さんと奥平くんはメインに近い役。お目当ての鳴海さんもわずかな出番(というか出番自体はみんな多いんですが見せ場がね)ながらやっぱり演技が上手く、魅せてくれました。

『ゴールド・ボーイ』
 金子修介監督の最新映画ですが、東京では3月に公開されたものが地元では遅れ公開。どうも最近このパターンが多いんですよねえ。それでも金子監督の映画が地元で公開されたのは2017年の『リンキング・ラブ』以来ですかね。中国の紫金陳という小説家の小説『悪童たち』(ハヤカワ文庫より邦訳)を日本の沖縄に舞台を変えて映画化した作品で、中国本国ではすでに『バッド・キッズ 隠秘之罪』(原題:隠秘的角落)というタイトルでドラマ化されています。ドラマはWOWOWで以前放送されたようですが、僕はあまり興味がなく見逃しました。原作も未読。
 両親が離婚して母親が女手一つで育てている13歳の中学生男子のところに、同い年の幼馴染で荒れた貧困家庭の少年と、実父が殺人を犯してその家庭に引き取られたやはり同い年の少女がやってくる。少女が義父(貧困少年の実父)に襲われそうになり、包丁で刺してしまったという。3人は気晴らしに海に出かけ動画を撮影していたところ、偶然に遠くで崖から人を突き落とす男の姿が映っていた。金持ちの婿養子であるその男はある目的から妻の両親を殺したのだが、完全犯罪を目論んだ男の計画は完璧で、警察も事故として処理してしまう。母子家庭少年は自分たちの問題は金があれば全て解決できると他の2人を誘い、男を脅迫して大金をせしめようとする。こうしてお互いを出し抜こうとする少年たちと男の頭脳戦が展開されていくのだが……というストーリー。
 さすがは金子監督、質の高い映画ではありました。原作のおかげもあるでしょうが脚本もしっかりしていて、“実は……”という展開が何度も繰り返され最後まで飽きさせません。役者陣も殺人犯役の岡田将生をはじめ、みな演技派ぞろいの好演で、3人の子供たちも遜色のない及第点の演技を見せています。ただ、やはり舞台を中国から日本に移し替えた違和感はどことなく残っているように感じられ、どうも最後までしっくり来ないところがあったのも事実。それと登場人物の大半がクズで、胸糞悪い話なんでそこも観る人を選びそう。僕はそういうのはちょっと好きじゃないんですが、その辺も中国ドラマ版だったらどんな感じだったんだろ?と思ったりもしました。ドラマ『バッド・キッズ』は原作とは変わってるところが多いらしく、日本映画版のほうが比較的原作に忠実らしいんですが。原作者の紫金陳は中国の東野圭吾と言われてるとのことですが、僕は東野圭吾にも特に興味がないんですよね。
 中国の犯罪ミステリードラマは今年観た『ロング・シーズン 長く遠い殺人』がすげえ面白くて、『バッド・キッズ』も同じ監督&主演コンビとのことなんでちょっと観てみたい気も。もっとも『ロング・シーズン』の原作は紫金陳ではなく別の人なんでやはりちょっと感じは違うのかもしれませんが。

>DVDで観た映画
『コーポ・ア・コーポ』
 去年公開されたけど地元には来なかった日本映画。脇役で『ビリーバーズ』の北村優衣さんが出てるんで観ました。これまたマンガが原作とのこと。
 大阪の下町にあるオンボロ安アパート「コーポ」に住んでいる様々なうらぶれた訳あり住人たちを描いたオムニバスっぽい映画です。折り合いの悪い母親から逃げるように流れてきた金髪のフリーター女性、女にだらしなくてキレやすい日雇いの建築労働者の青年、いつも甘いマスクとスーツ姿で女に貢がせて生活してるが複雑な過去を持つ男、人当たりはいいが実はコーポの別の部屋でストリップの興行をして生活している老人。そんなダメでしょーもないけど愛すべき人たちの姿をゆる〜く描いた、何とも言えない雰囲気の映画でした。
 演じてる馬場ふみか、倉悠貴、東出昌大、笹野高史もそれぞれにハマり役で好演。特に貢がせ男役の東出くんはこういう役に妙に説得力があるというか、演技者として一皮も二皮も剥けたような雰囲気ですね(って偉そうな言い方ですが)。個人的お目当ての北村さんは倉くん演じる日雇い青年が働く建設現場にバイトに来る女子大生役で、「コーポ」のすれた連中とは違う世界に住む清純な女の子ですが、それ故に日雇い青年はもちろん、「コーポ」の連中からも好意を持たれるという役どころ。『ビリーバーズ』や今やってるドラマ『初恋不倫』とは全然別人ですな(笑)。あと「コーポ」の住人の1人でやたら他人とタバコを交換したがるオバチャンが出てきたんですが、他の人の感想を見てたら演じてた藤原しおりっていう女優が元ブルゾンちえみだと知ってちょっとびっくり。ブルゾンの時は濃いメイクが特徴だったからでしょうが面影が全くありません。
 ともかく、「いろいろあるけど、まぁええか」というキャッチコピーがぴったりな、それぞれがちょっと重いものを少しずつ抱えながらも、都会の片隅で日々を淡々と生きていく人たちをゆる〜く描いた良作でなかなか面白かったです。

『サマー・オブ・サム』
 1999年(日本公開2000年)の米国映画。80年代末から90年代に黒人映画の旗手だったスパイク・リー監督の映画ですが、登場人物のほとんどが白人(ジョン・レグイザモ、エイドリアン・ブロディ、ミラ・ソルヴィーノなど)で今一つ興味がわかず、この頃からリーの映画はあまり観なくなってしまいました。以後リーは黒人映画というよりもより広く一般的な映画を撮るようになっていきます。
 1977年にニューヨークで実際に起こった“サムの息子”による連続殺人事件を背景に、私生活に様々な問題を抱えながら、“サムの息子”に怯えて狂奔していく人々の姿を描いた群像劇。いつものリーの人種的問題意識は希薄で、むしろ地域的・カルチャー的な偏見が悲劇を生み出していく話となってますが、いささか焦点が定まらず散漫に感じました。140分以上というのもちょっと長すぎ。製作当時から70年代ニューヨークを回顧する形式になってますが、公開当時は9.11前だったのが今となっては今昔の感があります。

>テレビドラマ
 酒と肴ドラマ『#居酒屋新幹線2』も録画してたのをようやく観終わりました。このドラマを肴に酒を飲むのにちょっとハマってたんですが、僕は暑い夏にアルコールを入れると余計暑くなってダメなんで、残り2話ほどで停滞してたんですよね。しかし夏が終わるまで持ち越してらんねえってことで、スポーツドリンクを飲みながら観終えたのでした。最初のは東北新幹線編でしたが、2は上越・北陸新幹線編でした。

>つねさん
 お久しぶりです。『あんのこと』は確か映画館で予告編は観たんですが、どうもあんまり僕の趣味ではなく、スルーしてしまいました。河井優実は今年のドラマ『不適切にもほどがある!』でブレイクしましたね。まあ、そっちも観てないんですが……。
 『ゴジラxコング 新たなる帝国』も映画館の予告編で『猿の惑星 キングダム』『デューン 砂の惑星 PART2』とSF映画が3連続で流れたのを観たんですが、どれもこれもあまりに全編CGだったんでなんだか萎えてしまい、結局どれも観ていません。あそこまでいくとほとんどアニメを観てる感覚に近いような。『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(#1749)の頃はすげえと思ったんですが、だんだんCGにも飽きてきましたね。



#1914 
つね 2024/08/04 23:00
あんのこと

あまりこういう映画は見ないのですが。ちょっと気になって見てみたら予想以上に引きずっています。ハッピーエンドであってほしかったですね。
河井優実さんは初めて見たのですが、実に名演でした。主役3人組の佐藤二朗さんと稲垣吾郎さんも難しい役柄を上手く演じていました。実話を基にしたということですが、映画はもっとこう楽しく観たい(「ゴジラxキングコング」くらい弾けてるのがいい)。いやいい作品なんですけどね。



#1913 
バラージ 2024/07/22 18:16
巡り会えた奇跡

 『人生って、素晴らしい Viva La Vida』という中国映画を観ました。
 腎臓病を患い、週3回の人工透析が欠かせない20代半ばの女の子が主人公。腎移植は何年待ちになるかわからず、両親や親族は腎臓のタイプが適合しない。思い詰めた彼女はSNSに、私と結婚して腎臓を片方ください。その代わりあなたの親の面倒を死ぬまで見ますという動画を一瞬載せるが、すぐ思い直して削除する。ところがそのわずか数秒で動画を見たという男から連絡が入る。あれは間違いだったと断ろうと呼び出しに応じるが、現れた小汚い青年は“超”が付くほど天然でアホでマイペースな性格で、彼女の言うことなど全く聞かずにつきまとう。実は彼は悪性脳腫瘍で、再発したら命が危うく、自分の死後に女手一つで育ててくれたアル中の母親の面倒を見てほしいと言う。彼のあまりに天然なマイペースぶりに主人公は始終イライラさせられるが、やがて彼のどこまでもバカでまっすぐな純粋さに徐々に惹かれていく……。
 いや〜、すごく良かった。『最も功利的な結婚の契約、最も感動的な永遠の約束(原題直訳)』というルポルタージュの一部だけを題材としているそうで、いわゆる難病ものですが、暗かったり後ろ向きだったりジメジメ湿っぽかったりせず、あくまで前向きな姿勢のところが良い。泣かせどころはもちろんあるものの、過剰に泣かせに走るあざとさがなく、あくまでさらっと自然に見せてくれるのも良かったです。それでいて腎臓病と人工透析や脳腫瘍の辛いところや大変なところもきちんとくわしくリアルに見せてくれる、しかもドキュメンタリーではなく劇映画として見せてくれるというところにも感心しました。そういうのって日本映画にはあまりないような気がします。中国の難病ものの映画だと2021年に観た『薬の神じゃない!』もそういう感じの映画でしたね。重い題材を広い意味でのエンターテイメントとして見せてくれるところがなんともエラい。監督のハン・イエンの作品は日本のマンガ『カイジ』を原作とした『カイジ 動物世界』を観てて、そっちもなかなか面白かったんですが、ここまで良い映画を撮れるとはびっくり。
 主演のリー・ゲンシー(『兎たちの暴走』、ドラマ『ロング・シーズン 長く遠い殺人』)とポン・ユーチャン(『象は静かに座っている』)も素晴らしい。以前の映画やドラマとはまるで違うキャラクターの人物をごく自然に演じていて、まさに若き演技派。美男美女すぎない2人だからこそとはいえ、素顔とは別人のように冴えない、というかポン・ユーチャンに至っては小汚い人物を演じながら、それでいてその人の魅力を余す所なく表現してました。荒れた肌のメイクをしたリー・ゲンシーが後半どんどん魅力的になっていく姿もすごいんですが、それでも彼女の場合は最初からその可愛さが隠しきれないのに対して、ポン・ユーチャンの別人ぶりには本当に驚かされましたね。後半2人の心が通じ合っていくシーンはなかなかに感動的。デートシーンなども本当に楽しそうで、そこから再びシリアスな展開に向かう脚本の緩急の付け方も上手い。
 今年ようやく傑作と呼べる映画に巡り会えました。モンゴル映画『セールス・ガールの考現学』もなかなか良かったけど、こっちのほうがさらに上かな。


>その他の映画館で観た映画
『湖の女たち』
 吉田修一の小説を大森立嗣監督が映画化したとのことですが、僕は吉田氏の小説は未読で大森監督の映画も初見。
 湖の畔にある老人介護施設で100歳になる老人が呼吸器の停止で死亡し、故障の可能性はありえないため殺人事件として捜査が開始されるところから物語が始まります。捜査にあたるベテラン刑事(浅野忠信)は中年介護士(財前直見)を犯人と決めつけ、部下の若い刑事(福士蒼汰)と共に違法すれすれの暴力的な取り調べを執拗に行う。若い刑事はそれに疑問を感じながらも従い、一方で妊娠中の妻がありながら美しい介護士(松本まりか)に歪んだ支配欲を抱き、脅しをかけながら彼女を従わせていく。彼女も支配されることに悦びを感じ、2人は倒錯的な愛欲に耽るようになっていく。一方、事件を取材する若い雑誌記者(福地桃子)は、かつて警察署が政治家の圧力で隠蔽した薬害事件との関わりに気づき、それを追ううちにそれが大戦中に満州国で暗躍した731部隊にまで遡ることを知る。だが事件の真相は誰もが思わぬ意外なところにあった……。
 うーん、映画の底知れぬ不穏な雰囲気や演出はいいし、俳優陣も全員熱演かつ好演なんですが、主人公2人の支配願望と被支配願望による変態的性愛、暴力的取り調べによる冤罪の強要、薬害事件から731部隊に至る日本の暗部という3つのエピソードが上手く融合しておらず、それぞれ別の話を交互に見せられてるような感じになってしまいます。一応まったく別の話ではなく、ベテラン刑事が若い頃に政治的圧力で薬害事件の捜査が打ち切られた失望感から堕落したとか、登場人物は共通してるんですが関連性が薄いというか上手く有機的に絡み合っていません。特に主人公2人の話が基本的に事件とあんまり関係がないし、若い雑誌記者の話とは全く絡まないため、なんだか主人公2人が全体から浮いてしまっているように感じましたね。1つ1つの話はよく出来てるんですが、それをまとめた1本の映画としてはちょっとどうも。なんとも惜しい映画です。
 薬害事件は明らかにミドリ十字事件をモデルにしていて、僕の大学時代に大学生協の本屋に晩聲社から出版されたルポルタージュ本が置かれてたのを覚えています。その本で既にミドリ十字の創設者が731部隊の関係者だったことが明らかにされてました。後の薬害エイズ事件もミドリ十字によるもので、劇中の事件のモデルはこちらでしょう。他に2003年の滋賀・湖東記念病院人工呼吸器事件と、2016年の相模原障害者施設殺傷事件が混交的かつ象徴的なモデルとされているようで、さらに2018年に杉田水脈衆議院議員が雑誌寄稿で「LGBTのカップルは生産性がない」と述べた記事が劇中で一瞬映し出されており、こちらも物語に象徴的な意味合いが含まれています。

>録画で観た映画
『星願 あなたにもういちど』
 1999年の香港映画(2001年日本公開)。なんとなく見逃してるうちに今に到ったんですが、WOWOWで放送されたんで録画しました。日本でも2003年に『星に願いを。』のタイトルで竹内結子主演でリメイクされています。子供の頃から目が見えず口もきけない青年が主人公。彼は病院に住み込みで点字翻訳の仕事をして生活していた。親しくしてくれる優しい看護師に恋心を抱きながら気持ちを伝えられずにいた彼は、ある日交通事故で死んでしまう。ところがあの世で天使が100億人に1人だけ願いを叶える死者に選ばれ、5日間だけ目も見え口もきける状態でこの世に戻れることになる。ただし彼の姿は他人には別人に見え、正体をバラすことも不可能という条件付き。それでも彼はなんとかして看護師に自分の想いを伝えようするのだが……。ま、言っちゃえばよくある話なんですが、いかにもあの頃の香港映画っぽくベタでストレートな作りでまあまあ面白かったです。ジングル・マー監督、これ以後はろくな映画撮ってないっぽいけど。主演の台湾俳優リッチー・レンも今になって観ると広東語吹替なのがまるわかりですが(笑)、なかなかの好演でした。同じ頃にジャッキーの『ゴージャス』でも助演してましたね。ヒロインのデビュー間もないセシリア・チャンも、実はとんだビッチだったことがわかった今になって観ても魅力的で演技も上手い。惜しいことです。

>テレビドラマ
 今季観てるドラマは、継続の『#居酒屋新幹線2』『さっちゃん、僕は。』と前記台湾ドラマの『お仕事です!』の他に、『ビリオン×スクール』とBSテレ東の『初恋不倫』。ボーダーラインが『マウンテンドクター』と系列局のないテレ東なのでTVer視聴になる『夫の家庭を壊すまで』。出演女優目当てが多かったりする(笑)。



#1912 
バラージ 2024/07/03 22:14
ジャッキー・スタントマン

 ジャッキー・チェン主演映画『ライド・オン』を観ました。
 今回のジャッキーの役柄は落ちぶれたスタントマン。第一線を退いた今は愛馬と共にあばら家に住みながら、借金返済のために愛馬を使ったエキストラや映画村での記念写真のモデルなどをして糊口をしのいでいた。ところが愛馬の元持ち主だった亡き旧友の企業の債務トラブルが原因で、愛馬が借金のカタに取られそうになる大ピンチ。主人公は離婚した亡き妻に引き取られ疎遠になっていた法学部学生の娘を頼り、娘は仕方なく恋人の新米弁護士を紹介する。一方、映画村での借金取りとの大立ち回りが撮影された動画がネットでバズり、再び主人公と愛馬にスタントの仕事が舞い込み始め……といったストーリー。
 なかなか面白かったです。アクション・シーンもあることはあるものの基本的にはドラマ映画、それもコテコテの人情喜劇といった感じですかね。ちょっとコメディ・シーンもある泣かせ人情ドラマと言いますか。ストーリーはある意味単純そのもので、娘との和解と愛馬との深い愛情を軸に、スタントマンとしての矜持をまぶした、ま、言っちゃえばよくある話です。とはいえジャッキー映画だし、こっちもそんな複雑な話や深い話を求めてるわけではないんでね。別にそこはいい。ただ娘との和解が序盤でなされちゃうのはちょっと早すぎるように感じました。これ、『ポリス・ストーリー レジェンド』の時もそう思ったんだよな。
 アクション・シーンのほとんどは主人公スタントマンの映画撮影におけるスタント・シーンですが、それ以外のアクションも含めてそれこそ本物のスタントマンやCGのシーンがかなり多いのが一目瞭然。まあ、これも近年のジャッキー映画では当たり前の風景で、CGもこれまでの作品に比べればそれほど不自然には見えません。唯一、ほとんどをジャッキー自身が演じてると感じたのは借金取りたちとの小競り合いシーンで、そのあたりは昔のジャッキー映画的アクションの懐かしさを感じさせつつ、小ぶりなアクションに収まっていることに時の流れも感じました。一方でかつて主人公が全盛期に演じたスタント映像の数々として過去のジャッキーのスタント・シーンが出てくるのも、ジャッキー自身の半生を投影してるかのようでノスタルジーに包まれます。ラリー・ヤン監督はもともとは馬映画を作りたかったらしいんですが、上手いアイデアが出ず、たまたまドキュメンタリー映画『カンフー・スタントマン』を観て感動し、これだ!となって、ジャッキー主演前提で脚本を書き持ち込んだとのこと。
 共演者はユー・ロングァン、アンディ・オン、ウー・ジン、レイ・ロイ、そして映画監督役でジャッキーの盟友監督スタンリー・トンと懐かしい顔ぶれをそろえつつ、なんといっても娘役のリウ・ハオツンがめちゃくちゃ可愛い。演技もしっかりしていて、チャン・イーモウに見出され『ワン・セカンド』『崖上のスパイ』と連続出演しただけのことはあります。イーモウの女優を見る目は相変わらず健在ですね。ジャッキーとは父娘というより祖父と孫娘くらいの年齢差で、ハオツンは見た目も童顔なのでやっぱりおじいちゃんと孫に見えちゃうんですが、ま、それも御愛嬌(笑)。映画のかなりの部分が彼女の存在で保っているというのも正直なところではあります。その恋人役のグオ・チーリンは全くイケメンではないコメディ要員ですがこれもなかなかの好演でした。
 ま、ともかく面白かったです。もう1回観てもいいかなと思いつつ、スケジュール的にちょっとなあ。


>録画やDVDなどで観た映画
『セールス・ガールの考現学』
 去年公開されたけど地元には来なかったモンゴル映画。モンゴル映画を観たのは初めてです。首都ウランバートルを舞台とした映画で、草原も馬もゲルも出てこないモンゴル映画という売り文句に惹かれて観ました。地味で素朴なおとなしめの女子大生が主人公。彼女は足を骨折した同級生から、怪我が治るまで自分のバイトを代わりにやってほしいと頼まれる。なんとそのバイトはアダルトグッズショップの店番だった。店を訪れる様々な客の観察、そして店の売上金を自宅に届けさせる謎めいた初老の女性オーナーとの交流の中で、彼女の中の何かが変わり大人へと成長を遂げていく……といったストーリー。いやぁ、面白かった。確かにモンゴルのステレオタイプなイメージを覆す新感覚というか、淡々とした中に何とも言えない味がある映画です。80〜90年代の中華圏(香港・中国・台湾)でニューウェーブと呼ばれた作品群や00年代韓流ブーム初期のアート系韓国映画を思わせ、なんだか懐かしい気持ちにもなりましたね。300人のオーディションを勝ち抜いたという主演のバヤルツェツェグ・バヤルジャルガルが素晴らしい。素朴な垢抜けない女の子がどんどん可愛くなっていく様子を好演し、意外なナイスバディでヌードなどの大胆なシーンも演じていて、おお、と意表を突かれつつちょっと喜んでしまいました(笑)。オーナー役のエンフトール・オィドブジャムツはモンゴルでは有名な女優らしく、現在ドイツ在住で30年ぶりの映画出演だったそうですが、これまた名演でした。ところどころ挟まれるドゥルグーン・バヤスガラン(モンゴル人はみんな名前が長いな)という歌手が歌うMV風シーンも面白い表現で、またモンゴルっぽい音楽ではないのも印象に残ります(まぁ、どんなのがモンゴルっぽいんだと言われると知らないんだけど)。思わぬ拾い物というか、とてもいい映画でしたね。

『The Izakaya Dialogue』
 2022年の日本の短編映画。鳴海唯ちゃんが出演してるんですが、YouTubeで無料配信されてました。主演は村雨辰剛(スウェーデンから日本に来て庭師やってる人)。スウェーデンから留学のために来日した男性が、居酒屋で出会ったバイトの女の子と「日本人にとっての“幸せ”とは何か?」を調べるためにインタビューをして回るというお話。30分弱の短さでサラッと観ることができます。唯ちゃんはやっぱり上手いし、村雨さんもなかなかの好演。

>テレビドラマの話
 テレ東ドラマ『君が獣になる前に』もTVerで最終回を見終わりました。タイムループ・サスペンスでツッコミどころ満載でしたが、それでもまあまあ楽しめたのは鳴海唯ちゃんの出番が多く、なおかつ相変わらず演技が上手くて可愛かったから。『#居酒屋新幹線2』と『さっちゃん、僕は。』は7月もまだ放送継続中。あと地元ローカル局で日曜深夜に始まった台湾ドラマ『お仕事です!』がちょっと面白い。柴門ふみの同名マンガが原作です。



#1911 
バラージ 2024/06/20 20:39
緩やかに流れる時間の中で

 今真っ先に観たいジャッキー映画『ライド・オン』は地元では1ヶ月遅れの公開です……。そしてチャン・イーモウがSF小説『三体』を映画化するというニュースが。いや原作小説には特に興味はなくて、2種類のドラマ化作品も観てないんですけどね、イーモウの映画ならぜひ観ようと。まぁまだ準備段階らしいんだけど。てかまずその前に東京国際映画祭で上映された『満紅江(マンジャンホン)』やその前に撮った『狙撃手(原題)』、『満紅江』の次に撮った『堅如磐石(原題)』と最新作『第二十条(原題)』を早く公開してくれ。

 映画『からかい上手の高木さん』を観ました。
 原作はベストセラー漫画と知ってますが僕は未読で、テレビアニメはちらっと観たけどあまりハマりませんでした。大人の声優がやるとやっぱりいまいち中学生らしく見えなかったんですよね。だから実写ドラマも当初は興味なかったんですが、たまたま偶然第1話を観たら意外に面白くて(やっぱり実際の中学生に近い俳優が演じるとそれだけでリアリティが出て良いですね)、全話観て結局映画まで観に行ってしまいました。
 原作は高木さんと彼女にからかわれ続ける西片の日常を描いた日常系マンガのようですが、ドラマでは高木さんが親の仕事の都合でパリに旅立つという2人の別れが描かれてました。映画はそれから10年後、故郷の島に帰ってきた高木さんと母校で中学教師をしている西片のエピソードを描いています。原作には大人になって結婚し、子供ができた2人を描いた『からかい上手の(元)高木さん』というスピンオフがあるらしいんですが、映画は原作にはないオリジナルストーリーとのこと。
 いやぁ、面白かった。さすがは今泉力哉監督。派手な出来事の起こらない何気ない日常を積み重ねていくことによって、緩やかな時間が流れていく穏やかな島の日々が描き出され、その癒やされる空間がとても心地よかった。その心地よさを助けているのはなんと言っても原作者の故郷で、原作の舞台のモデルになったとも言われる小豆島の風景です。ドラマの時も思ったんですが、スクリーンの大画面で見ると小豆島の風景が余計に美しく感じました。むかし青春18切符の旅で小豆島へ行った時の記憶が甦りましたね。あの時はあまりに心地よくて1泊の予定が2泊してしまったんだよな。なんか映画を観てたらまた行きたくなっちゃいました。小豆島は今や『高木さん』の聖地になってるようですが、僕も映画を観ていて、これは『二十四の瞳』に匹敵する小豆島を象徴する作品になるかもしれないなと感じましたね。
 主演の永野芽郁ちゃんと高橋文哉くんも、ドラマ版の主演2人がそのまま大人になったような雰囲気で好演。サブエピソードとして描かれる教え子の中学生たちの恋模様と成長も微笑ましく、それが高木さんと西片の関係にも影響を与えていく展開も素晴らしい。ドラマ版・映画版を通して登場する担任教師(映画では教頭)役の江口洋介さんもワンポイント的出番ながらいい味です。そして流れる音楽と主題歌がこれまたすごく良かった。


>その他の映画館で観た映画
『無名』
 日中戦争・太平洋戦争の時代の上海租界を舞台として、日本軍の傀儡である汪兆銘政権(南京政府)・中国共産党・国民党(国民政府・重慶)のスパイたちが繰り広げる諜報戦を描いた中国のスパイ・サスペンス映画。主演はトニー・レオンと若手イケメン俳優のワン・イーボー。
 うーん、期待外れだったかなぁ。監督のチェン・アルって2年前にDVDで観た『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・上海』の人だったんですね。あっちも同じ時代を舞台とした映画でしたが、問題点もほとんど同じ。話が見えづらい上に妙に淡々とした作風で、時系列や舞台が錯綜しててあっちこっちにやたら話が飛ぶため今一つストーリーがわかりづらい。そもそも各登場人物の立ち位置がわかりづらく把握しにくい。スパイ映画お決まりの二重スパイもたくさん出てくるんですが、それ以前の表の顔の描写がわかりにくいから、実は……という展開も混乱が増すばかり。個々のエピソードがぶつ切りで、それぞれの関連性が見えてこないからストーリーの流れも悪い。本筋と関係ない余計なエピソードなんじゃないかと思えるものもいくつかある。また、それぞれのシーンの雰囲気優先で、お話の辻褄が合わないところも多く、どういうことなの?と考えても理解できないところもあります。これは脚本が良くないのかもしれない……と思ったら脚本もチェン・アルでした。それでも俳優たちはなかなか良く、それでなんとか観れる映画にはなっています。出番は少ないながらも、ジョウ・シュン、ジャン・シューイン(ドラマ『30女の思うこと』)、チャン・ジンイー(映画『あなたがここにいてほしい』)といったきれいどころの女優さんたちは眼福だし、森博之という中国で活動してるらしい日本人俳優がなかなかの好演でした。相変わらずの勘違い日本描写もありますが、まあ許容範囲でしょう。
 ちなみに森さん演じる日本スパイ機関長が当時の世界情勢をいちいち丁寧に説明してくれるシーンが多いんですが、それでもこの時代の予備知識がないと相当にわかりにくいと思う。アート映画なら多少わかりにくくても映画の雰囲気で問題なく楽しめますが、明らかに娯楽映画だからなあ。それでいて純粋に楽しむ映画というわけでもなく、史劇映画とか社会派映画でもないという、何を狙ってるのかいまいちよくわからない映画です(これは『ワンス〜』もそうだった)。同じくスパイが題材のロウ・イエ監督『サタデー・フィクション』や、チャン・イーモウ監督『崖上のスパイ』なんかに比べると数段落ちると言わざるを得ません(まあ彼らと比べるほうが間違ってるのかもしれないけど)。トニーとジョウ・シュンが共演したスパイ・サスペンス映画なら、国共内戦期を舞台とした2012年の『サイレント・ウォー』なんかも面白かったですね。

『青春18×2 君へと続く道』
 台湾でベストセラーとなったジミー・ライの紀行エッセイ『青春18×2 日本慢車流浪記』を読んだ俳優のチャン・チェンが映画化を思い立ち、10年の月日を経て台湾にルーツを持つ『青の帰り道』『新聞記者』の藤井道人監督に白羽の矢を立てたという日台合作映画。主演は台湾ドラマ『時をかける愛』で準主演だったシュー・グァンハン(グレッグ・ハン、グレッグ・シューとも)と、日本側からは清原果耶。
 挫折した36歳のゲームクリエイター兼社長の台湾人男性が主人公。会社を去った彼は日本へと旅に出る。彼は故郷の台南のショボいカラオケ屋でバイトをしてた18歳の時、財布を失くして旅費を稼ぐためバイトに訪れた4つ年上の日本人女性バックパッカーに恋をしたのだった。彼は日本を電車で旅しながら、恋に落ちた青春の日々に思いを馳せていく……。18年前の台南での青春と恋の日々がメインで、そこに日本での傷心旅行が重ねられていくという構成。おそらく原作の忠実な映画化ではなく、あくまでインスパイアされたオリジナルストーリーだと思われます。
 非常によく出来てはいるんですが、どうしても今一つ入り込んでいけなかったのは多分清原果耶ちゃんが僕の好みとはちょっと違うからなんではないかと思われます。確かに演技は上手いし可愛いんですが、なんというかちょっと芝居が上手すぎるというか達者すぎて、個人的には逆に演技感を強く感じてしまうんですよね。一昔前の成海璃子さんみたいな感じと言いますか。そこがどうも個人的な好みと上手く合わなかった。あと、ぱっと見シュー・グァンハンより4歳年上には見えない。4歳年上という設定は途中でわかるんで、それまでは同い年ぐらいの設定だと思ってました。とはいえまあそれなりには面白かった。よく出来てたとは思うし他の人なら十分楽しめるでしょう。18年前の台湾で流行ってるサブカルチャーも興味深く、主人公たちがいっしょに観に行く日本映画が岩井俊二監督の『Love Letter』で、同じ映画館では台湾映画『百年恋歌』(ホウ・シャオシェン監督、スー・チーとチャン・チェン主演)や『藍色夏恋』(グイ・ルンメイとチェン・ボーリンのデビュー作)を上映してるってのも、なんとも懐かしい気持ちになりましたね。しかしゼロ年代もついにノスタルジーの対象になっちゃったか。まあ考えてみりゃ20年前のことだしなぁ。

>テレビドラマの話
 『くるり』と『お迎え渋谷くん』が終了。面白かったです。どっちも終わり方は予定調和的でしたが、この手の恋愛ものはだいたいがそういうもんですからね。『くるり』はよくあるラブコメものに見せかけて、記憶喪失になることで人生が“くるり”と変わる女性の物語でした。
 『からかい上手の高木さん』の後番組として火曜深夜から放送が始まった深夜ドラマ『さっちゃん、僕は。』。なかなかにエロくて暗い雰囲気がちょっと純文学ぽくて良いですね。マンガ原作みたいだけど。しかしアパートの隣の部屋に石川恋ちゃんみたいな人妻がいて誘惑されたりなんかしたらそりゃそうなっちゃうよな。まあ現実には起こり得ない話ですが。

>観てなかったかも……
 #1895で大学時代に『ジョン・ブック 目撃者』を観たと書きましたが、ひょっとしたら僕が観た同時期のハリソン・フォード主演サスペンス映画は『フランティック』だったかもしれません。映画の内容はどっちにしろ覚えてないんですが、大学のビデオ上映会で観た時のタイトルとしてなんか『フランティック』の記憶がなんとなくあるような……。うーん、どうも記憶が曖昧なんですが。

>追悼・久我美子
 いやぁ、93歳とはこれまた大変な御長寿でしたねえ。僕が観た出演映画は、『また逢う日まで』『新・平家物語』『お早よう』『ゴジラvsビオランテ』『おこげ』『119』といったあたり。印象に残ってるのはやはり『また逢う日まで』かな。ご冥福をお祈りします。



#1910 
バラージ 2024/06/05 10:34
最近観た映画

 『パスト ライブス/再会』という米韓合作映画を観ました。
 お互いに淡い恋心を抱くソウルに住む12歳の少年少女。しかし少女は親の都合で海外に移住し、2人の連絡は途絶える。12年後、ニューヨークの女とソウルの男はSNSで再会を果たし、オンラインで交流を続けるが、作家を目指す女と中国に留学した男にはやがてすれ違いが生じ、再び距離を置くことに。さらに12年後、女はユダヤ系米国人の作家と結婚していたが、男はそれを知りつつも休暇を利用してニューヨークの女に会いに来る……。
 「パスト・ライブス(Past Lives)」とは「過去の人生」という意味と「前世」という意味が掛かってて、後者の意味は終盤で明かされます。子供時代の話はほんのちょっとで、24歳の時と36歳の時の話がほとんど。比重としては最後の36歳が重く(当たり前だけど)、女の夫を含めた3人の関係が描かれます。内容上当然ながら客層の年齢は高めで、土曜の朝1の上映にしては結構客が入ってました。女性監督セリーヌ・ソンの実体験をもとにした映画とのことで、なにやら評判がいいんで観てみたんですが、予定調和というか現実認知というか、ま、現実にはそうだろうな、という感じの落ち着いた大人の恋愛映画というか人生映画で、うーん、やっぱり僕はこういう大人の恋愛映画(というか人生映画というか)はいまいち興味持てんなあ。同じようなネタなら青春映画『からかい上手の高木さん』のほうが面白そう。主演女優のグレタ・リーがちょっとオバサン顔で、24歳の時はちょっと無理があって、そこもいまいち興味持てないところでした。男優のほうのユ・テオは3年前に観た韓国映画『めまい 窓越しの想い』にも相手役で出てた人だったんですが、全然気づかんかった。主演女優のチョン・ウヒしか見てなかったもんで(笑)。


>録画やDVDやVHSで観た映画
『アルファヴィル』
 1965年のフランス映画。ゴダールの珍しいSF映画です。舞台は1984年の地球(外界)から9000km離れた星雲都市アルファヴィル(アルファ都市)。そこでは全てを司る人工知能アルファ60の支配のもとで住民の全てが記号化され個人の自由が奪われていた。地球の秘密諜報員である主人公はジャーナリストとしてアルファヴィルに潜入。先に潜入して行方不明となった同僚の捜索と、アルファ60の開発者の救出もしくは暗殺を任務としていた……というお話。なんだこれ! わけわかんねえけど面白え! さすがはゴダール! SF設定のモノクロ・ハードボイルド映画といった感じで、特撮は一切なし。パリの街をそのままアルファヴィルに見立てて、設定と描写とストーリーテリングだけでちゃんとSFに見せていくのがすごい。アルファヴィルの住人たちがとにかく変で、なんとなく初期ウルトラシリーズ(『Q』『マン』『セブン』)の趣きもあります。いや面白かった。トリュフォーのSF映画『華氏451』も機会があったら観たいですね。ゴダールはこの次のカラー作品『気狂(ちが)いピエロ』あたりからもっとわけわからん映画を作り出すようです。

『小さな兵隊』
 1960年製作・1963年公開のフランス映画。『勝手にしやがれ』に続くゴダールの監督2作目のモノクロ映画ですが、当時継続中だったアルジェリア独立戦争を背景としていたため公開禁止となり、3年後にようやく公開されたとのこと。舞台は永世中立国スイスのジュネーブ。主人公は表の顔はカメラマンだが実はフランス極右の秘密軍事組織(OAS)の一員だった。一仕事終えた彼はジュネーブで出会ったロシア系デンマーク人女性と恋に落ちるも、組織からアルジェリア独立支持派のジャーナリスト暗殺命令が下る。主人公は当初はためらい拒否するが、追いつめられて実行せざるを得なくなる……。『アルファヴィル』ほどではありませんが、こちらもなかなか面白かった。後にゴダールと結婚するアンナ・カリーナがヒロイン役として初めて起用されてます。1時間半弱という短さの映画で、ラストもやや唐突で尻切れトンボですが、検閲でだいぶカットされたらしいんでそのためなのかも。

『友よ、風に抱かれて』
 1987年の米国映画。コッポラ監督の作品で、ベトナム戦争中を舞台に、戦死した兵士を埋葬するアーリントン墓地の儀仗兵士を描くという“銃後”映画です。コッポラというとなんといっても70年代の『ゴッドファーザー』と『地獄の黙示録』(どっちも未見)ですが、80年代後半はスランプに陥ってもう過去の人という感じでしたね。この映画もとにかく地味で普通の映画といった感じ。同時期の『プラトーン』や『グッドモーニング、ベトナム』と比べるとあまり面白くありません。好きな女優のメアリー・スチュアート・マスターソンが脇役で出てるからという理由で観たんですが、てっきり出征していく若者たちが主人公の映画だと思ってたら、ベトナム戦争に疑問を持ちながらも彼らを鍛え見送る歴戦の曹長を主人公とした中年映画というか初老映画でした。なので主人公が可愛がるかつての戦友の息子の新兵と結婚するという役どころのマスターソンの出番は多くありません。マスターソンの代表作『恋しくて』に不良学生役で出てたイライアス・コティーズも脇役で出演してましたね。

『キラー・コマンドー』
 2001年の米国のTVムービー。VHSスルーでDVD化はされてないんですが、中古VHSが激安だったんで他の買い物ついでに買っちゃいました。これまたメアリー・スチュアート・マスターソンが脇役で出てるからという理由。南フロリダの街で3人のベトナム人青年が無惨な死体で発見され、農場を経営するベトナム帰還兵の初老の男が容疑者として逮捕される。その男とベトナムで戦友だった主人公の弁護士は妻からの依頼で弁護を担当することになるが、調査を重ねるうちに次々と意外な事実が明らかになっていく……。たいして期待してなかったんですが意外にもなかなか面白かったです。これは思わぬ拾い物。エド・マクベインの小説「ホープ弁護士シリーズ」の『三匹のねずみ』が原作とのことで脚本がよく出来てるし、登場人物のバランスも良く、主演のブライアン・デネヒーをはじめ俳優陣もみな好演。ベトナム戦争の傷痕を感じさせるストーリーテリングも心に残ります。2時間サスペンスTVムービーとしては上々の出来でしょう。マスターソンは容疑者を起訴しようとする若手検事役で、出番は多くないものの好印象を残す役どころ。この頃は30代半ばですが相変わらず若々しく、清楚で爽やかな風貌の中にもちょっと熟したいい女ぶりが含まれてきて、やっぱり僕の好きなタイプだなぁ。

>テレビドラマの話
 『からかい上手の高木さん』は映画版公開のため、深夜連ドラは早めの最終回。いいドラマでした。さすが今泉力哉監督。中学生の思春期恋愛ドラマとして秀逸でしたね。主演の子2人も好演。映画版は大人に成長した2人の話となります。
 WOWOW再放送の『早朝始発の殺風景』全6話も観終わりました。原作小説が短編集のようで、1話&最終話の登場人物が2〜5話もちょこちょこ出つつ、1話ごとに登場人物が変わるドラマでした。途中までは面白かったんですが最後がちょっと後味悪かったな。



#1909 
バラージ 2024/05/25 15:43
昔観た映画E #1101〜#1200編

 過去ログで触れられてる映画のミニ感想、最後は#1101から#1200まで(#1201以降は僕がこちらにお邪魔するようになったため省略)。

『硫黄島からの手紙』
 民放のテレビ放送で観ました。米国人監督がここまで勘違い日本にならず日本人にもリアルに感じられるような映画が作れるんだなあと感心しましたね。ま、それでもちょっと変に感じたシーンもあって、それが憲兵が犬に文句をつけて射殺するシーン。そこは不自然に感じました。あと二宮和也と祐木奈江が夫婦というのも年齢的に無理があるだろとツッコんじゃいましたね。でもまあ全体的にはなかなか良かった。『父親たちの星条旗』のほうは観てません。

『レザボア・ドッグス』
 映画館で観ました。タランティーノの最初の監督作で、日本でもカルト映画的にマニア受けし、タラの出世作となったわけですが、僕はダメでしたねえ。興行的にも苦戦したのか、日本で最初にビデオ化された時には「仁義なき男たち」なんてサブタイトルが付けられてました。吹替版ビデオなんて「仁義なき男たち」のほうがデカデカと書かれ、「レザボア・ドッグス」のほうが小さくてそっちがサブタイトルみたいでしたね(笑)。

『敬愛なるベートーヴェン』
 これも以前に歴史板のほうに書いたと思うんですが、実はこの映画、ほとんどフィクションなんですよね。最初はヒロインの女性写譜師について、へぇ〜こんな人いたんだ、と興味深く観てたら、ところどころで、あれ?と思うところがあり引っかかっていたところ、第九の初演のシーンで決定的にこれはおかしい!と気づきました。第九の初演については非常に有名なエピソードがあり、『不滅の恋 ベートーヴェン』ではちゃんとそれが再現されてるんですが、この映画ではそれとあまりに違う明らかな創作がなされています。調べたら女性写譜師は全くの架空人物で、基本的に彼女を絡めてストーリーが展開するんで、もう半分以上がフィクションのお話。どうも監督が女性でなおかつベートーヴェンの熱烈なファンらしく、もしも自分がベートーヴェンの時代に生まれたら……みたいな妄想炸裂映画だという指摘がありました。単純に映画としてもいまいち面白くなく、『不滅の恋〜』のほうがよほどおすすめ。あっちはあっちでかなりフィクション入ってるものの、それでもこっちよりは史実忠実度も映画の出来もだいぶマシです。

アンディ・ラウとニッキー・ウー
 アンディはワーカホリックかと言われるくらいむちゃくちゃたくさんの作品に出る人らしいんで、そういう人はどうしても玉石混交になって、しょーもない映画(香港映画はそういうのがいっぱいある・笑)にもたくさん出ることになっちゃうんでしょう。フィルモグラフィー見ると確かにどうでもよさそうな映画にもいっぱい出てますな(笑)。もうちょっと作品を選べばいいのにと思わなくもないけど、まあそれが彼のやり方なんでしょうね。香港映画をわりと観てた僕はこの頃までのアンディの出演映画だと、『七福星』『愛と復讐の挽歌』『愛と復讐の挽歌 野望編』『いますぐ抱きしめたい』『ゴッド・ギャンブラー』『欲望の翼』『炎の大捜査線』『酔拳2』『インファナル・アフェア』『ブルー・エンカウンター』『インファナル・アフェアIII 終極無間』『LOVERS』を観てますね。この中だと『欲望の翼』『インファナル・アフェア』『LOVERS』は良かったんじゃないかな。特に『欲望の翼』はアンディだけでなくレスリー・チャンもマギー・チャンもカリーナ・ラウもジャッキー・チュンもあまりにもハマり役。『いますぐ〜』は同じウォン・カーウァイ監督作でもまだ作風が定まってないデビュー作で個人的にはいまいちですね。アンディも特に良くはないと思います。『インファナル〜』は米国で『ディパーテッド』としてリメイクされましたが、細かいカット割りまでオリジナルに忠実にリメイクしてるらしく、僕はリメイクのほうは未見。それ以後のアンディ出演作では、『ウォーロード 男たちの誓い』『三国志』『王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件』『新少林寺 SHAOLIN』『桃(タオ)さんのしあわせ』『私の少女時代 OUR TIMES』『誘拐捜査』『グレートウォール』『レイルロード・タイガー』『グレート・アドベンチャー』『ホワイト・ストーム』『バーニング・ダウン 爆発都市』を観ています。
 ニッキーはねえ……懐かしーってのが第1の感想です。90年代に香港映画(や台湾映画)に出てたっていう遠い記憶。出演作は観たことありませんが。00年代には中国に拠点を移してたんですね。でもって日本における中国ドラマブームの火付け役『宮廷女官 若曦』に出演し、主演のリウ・シーシーと結婚したのか。

テレビドラマ版『北京バイオリン』
 オリジナルの映画版も含めて僕は未見ですが、中国本国では2004年に放送されたようです。さすがにオール中国人スタッフがオール中国人キャストで日本向けドラマは作らんでしょう(笑)。海外セールスは考えてたかもしれませんが、まずは本国での放送だったはずです。

『N -私とナポレオン-』
 僕は未見ですが上記は映画祭上映邦題で、劇場公開はされず『ナポレオンの愛人』の邦題でDVDスルーされたようです。

『猿の惑星』
 子供の頃に民放の吹替テレビ放送で観ました。これも前に書いたんだけど、たぶん触れてなかった話を。原作では主人公が着いた“猿の惑星”は地球によく似た別の星で、最後に脱出した主人公は地球に帰ってくるそうです。文明批判の要素があるのは原作も映画も同じだそうですが。僕は子供の頃(小学生か中学生?)に観たんで、あのラストは本当にショッキングでしたね。『続〜』もやはり民放吹替テレビで観ましたが駄作。『新〜』はまあまあ良かったです。『〜征服』『最後〜』は未見。新しいシリーズも観てません。ちなみに今やってるやつは予告編だけ観ましたが、猿人間が全CGである意味異様にリアル。ただそれだけにほとんどアニメを観てるような感覚が……。日本のテレビドラマ『猿の軍団』はもっと小さい頃に土曜か日曜の朝放送してるのをチラッと観た記憶があるような気がします。

『用心棒』
 確かかなり昔、おそらく90年代初めの大学時代にビデオで観ました。僕が初めて観た黒澤明映画は『椿三十郎』で、大学で行われたビデオ上映会ででした。正直言いまして個人的にはそんなに面白くなかった。確かその次に観たのがやはり大学のAV(オーディオヴィジュアル)センターとかいうところのビデオコレクションにあった『羅生門』。その後は黒澤映画をどういう順番で観たか忘れましたが、『用心棒』も大学時代に確かレンタルビデオで観たんじゃなかったかな。こっちはなかなか面白かったですね。やっぱりきわめてストレートな娯楽作品だったからかな? 『椿三十郎』は続編だからヒネりを加えたってこともあるんでしょう。とはいえ僕はこれも「なかなか面白い」止まりで、他にも黒澤映画は10本ほど観てるけどどれも絶賛とまでは行きません。僕は黒澤映画と今一つ合わないのかも。

『トト・ザ・ヒーロー』
 映画館で観ました。これも大学時代か。ベルギー映画(正確にはベルギー・フランス・ドイツ合作)という珍しさに観た映画ですが、内容はもうほとんど忘れちゃったなあ。

『グリーン・デスティニー』
 ビデオで観ました。これも前に書いたけど、もう1回書いちゃおう。映画館で公開したのは知ってましたが、時代劇なのによくわかんない横文字邦題で興味がわかず観なかったところ、どうもえらく評判が良いことを知りまして。レンタルビデオで観てみたらこれが大興奮の傑作で、ぐわー失敗した、映画館で観るべきだったーと激しく後悔したのでした。時々そういうことがあるんだよなあ。ワイヤーアクションは香港映画ではそれ以前からありましたが(『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』とか『スウォーズマン』とか『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』とか……ってみんな横文字だな)、これは桁違いの凄さで驚嘆しましたね。いやー映画館の大スクリーンで観たらもっと興奮してただろうな〜。4Kレストア版とか午前十時の映画祭とかで再上映してくれないもんですかね。そしたら絶対観に行くのに。チョウ・ユンファ、ミシェール・ヨー、チャン・チェンもいずれもハマり役で素晴らしいんですが、彼ら大スターを向こうに回して全員食ってしまった(当時の)新星チャン・ツィイーがなんといっても鮮烈。詩情あふれるラストも印象深い。

『カムイ外伝』
 これはWOWOW放送を録画して観たんだったかな? まあまあ面白かったってとこですかね。僕は白土三平はどうも苦手で原作もほぼ未読なんですが、映画は残虐描写とか不快感を煽るような部分をライトにしてると思われ、そこが良かったというかホッとしたというか。



#1908 
バラージ 2024/05/09 22:23
あら

 本文のほうが間違えてる。タイトルにあるように#1001〜#1100までです。



#1907 
バラージ 2024/05/09 22:22
昔観た映画E #1001〜#1100編

 過去ログで触れられてる映画のミニ感想、#901から#1100まで。今回は中国映画づくしですな。

『初恋のきた道』
 映画館で観ました。チャン・イーモウ監督が公私ともにコンビを解消したコン・リーに次いで見出したチャン・ツィイーのデビュー作で、彼女はこれ1作でスターダムに躍り出て、90年代のコン・リーに代わる00年代中国映画界のミューズ、中国映画を代表するアイコンとなりましたね。本国では中程度のヒットだったようですが、金鶏奨の最優秀作品賞と最優秀監督賞、百花奨の最優秀作品賞と最優秀女優賞を受賞した他、ベルリン映画祭でも銀熊賞を受賞。日本でも大ヒットし、ツィイーはアジエンスのCMに出演するほどの人気になりました。とはいえ僕はイーモウとコン・リーのコンビ時代に強い思い入れがあったんで、コンビ解消後にハートウォーミング路線に転換したイーモウの映画にはいまいち満足できませんでしたね。ツィイーのファンになったのも台湾のアン・リー監督の『グリーン・デスティニー』での鼻っ柱の強いお嬢様役ででした。ただこの映画、邦題のセンスはすごくいい(原題は『我的父親母親』、英題は『The Road Home』)。文革を背景としつつ内容的にはやや非現実的なストーリーのようですが、そこをどうこう言うのは少々野暮なんではないかなぁ。あくまでラブストーリーなんだし。文革で迫害する側の階級だったチェン・カイコーやティエン・チュアンチュアンと異なり、両親が教師だったため迫害される側の階級だったイーモウは文革を描く映画の製作に最も慎重な第五世代でしたが、『活きる』で初めて文革を描いた後、本作、『サンザシの樹の下で』『妻への家路』『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』と最も長く文革にこだわり続けている監督です。

『小さな中国のお針子』
 ビデオで観ました。フランスで活動する中国人作家ダイ・シージエが自作の小説『バルザックと小さな中国のお針子』を自ら監督して映画化したフランス・中国合作映画。ダイ・シージエはフランス語で小説を書いており、世界的ベストセラーになった作品だそうです。確かに映画もちょっとフランス映画っぽいところのある作風でした。これも文革の下放を描いた作品で、ダイ・シージエ自身も文革での下放経験があるとのこと。僕は香港映画『ハリウッド★ホンコン』に主演していてすごく良かったジョウ・シュンがヒロインだったから観たんですよね。ジョウ・シュンはこの映画でもとても良かったけれど、主演のチェン・クンとリウ・イエの顔が似ていて非常に区別がつきづらく、観ててかなり混乱しました。

『至福のとき』
 ビデオで観ました。チャン・イーモウのハートウォーミング路線3作目(1作目は栄耀映画徒然草にある『あの子を探して』)で、原作は後にノーベル文学賞を取る莫言(モー・イエン)の同名短編小説。イーモウが莫言の小説を映画化するのはデビュー作『紅いコーリャン』以来でした。過去の時代を舞台とするかあるいは現代でも田舎を舞台にすることの多いイーモウには珍しく、現代の都会・大連を舞台とした作品で、個人的には『あの子〜』『初恋〜』よりは良かったかな。宣伝的な意味合いか主演のドン・ジエをポスト・チャン・ツィイーなんて書いてる日本のメディアもありましたが、いくらなんでもチャン・ツィイーはちょっと前にデビューしたばっかだろ(笑)とツッコんじゃいましたね。個人的にはドン・ジエはコン・リーやチャン・ツィイーに比べるとちょっと地味だなと思ったんですが、やっぱり先輩2人に比べるとちょっと地味なキャリアになりました。

『単騎、千里を走る』
 DVDで観ました。チャン・イーモウの映画では観るのがかなり遅れた映画ですね。なぜならあまり気乗りしなかったからで、だって主演が高倉健なんだもん。それじゃ半分日本映画みたいなもんですよ。実際観てみたらやっぱりチャン・イーモウの映画というより高倉健の映画になっちゃってました(ちなみに日本パートの監督は降旗康男)。イーモウが高倉にずっと憧れてて、今でもこの映画を心の宝物にしてるってのはわかるんですがね。あと、イーモウ・ファンの僕ですが、この映画や『秋菊の物語』『あの子を探して』みたいに現代の田舎を舞台としてほとんどの配役に素人を使った作品はあんまり好きじゃないんすよね。

『古井戸』
 ビデオで観ました。チャン・イーモウより一世代前の第四世代のウー・ティエンミン(呉天明)監督の映画で、なんと主演はもともと撮影(カメラマン)として参加していたチャン・イーモウ。適役な主演俳優が見つからず、ティエンミンに「お前、顔が田舎者っぽいからやれよ」と言われたらしい(笑)。東京国際映画祭で主演男優賞まで取ってしまい、去年特別功労賞を受賞して来日した際にも思い出を語ってました。イーモウが役者をやってるのはこれ以外には香港映画『テラコッタ・ウォリア 秦俑』などごく一部だけ。

>「『梁山泊与祝英台』…ほほう、「水滸伝」の祝家荘との対決のネタですね。」
 え〜、どなたからもご指摘がされなかったようなので今さらながら書かせていただきますと、『梁山伯と祝英台』は『水滸伝』とは全く関係ありません。「梁山伯」「祝英台」は主人公男女の名前で、2人の悲恋物語を語った民間説話です。中国版『ロミオとジュリエット』とも言われるらしく、wikiによると中国の四大民間説話の一つとされているとのこと(ちなみに他の3作は『白蛇伝』『孟姜女』『牛郎織女』 または『白蛇伝』『柳毅伝』『董永与七仙女』らしい)。唐代に話の起源があるそうなので『水滸伝』よりも前に成立した物語ですね。映画化も何度もされてるようで、そのうち日本でも公開されたのは1963年の『梁山伯と祝英台』(リー・ジャンハン監督)、1994年の『バタフライ・ラヴァーズ』(ツイ・ハーク監督)、2008年の『バタフライ・ラヴァーズ』(ジングル・マ監督)でいずれも香港映画です。僕は数年前に2008年版をDVDで観たという話は以前書きました(#1821、#1823)。アニメ版はwikiを見ると2003年の台湾アニメ『蝴蝶夢 梁山伯与祝英台』(日本未公開)なのかな?

>「TVで見た珍品は邦題『ドラゴンの妖怪退治』」
 これは以前も書いたと思いますが、劇場公開邦題およびVHS邦題は『ドラゴン水滸伝』。ブルース・リー関連の珍品としてリーのファンや香港映画ファンにはそこそこ有名です。僕は確か1985年頃、ジャッキー・チェンの『ポリス・ストーリー 香港国際警察』が公開される前後に発売されたジャッキー&香港映画全集ムックみたいので知りました。当時VHS化されてた香港・台湾・中国映画が網羅されてた本?雑誌?で、当時はそれができるくらいの数しかVHSがなかったんでしょうね。懐かしいなあ。

『マッハ!』
 ビデオかDVDで観ました。トニー・ジャーのアクションやスタントは昔のジャッキーやブルース・リーを思わせる凄さなんですが、映画としての出来はやや今ひとつ。まずやりたいアクションやスタントがあって、そのシーンとシーンをつなげるために無理やりストーリーを作ってるような感じで、映画というより超絶スタント集を見せられてる感覚。正直途中でちょっと飽きてしまいました。こういうのを観るとジャッキーはちゃんと“映画”を作ってんだな〜と思いますね。

『疑惑』
 昔テレビ放送で観ました。岩下志麻と桃井かおりの演技合戦で、桃井さんがすっげえヤな女演じてましたねえ。桃井さん自身が「すっごいイヤな女」と表現してましたし。面白いことは面白かったけど観終わった後の後味悪し。今ならまだしも観たのは高校以前だったしなあ。

『SAYURI』
 DVDで観ました。僕は意外と嫌いじゃないんすよ(笑)。確かに現実の昔の日本として見ると過去の外国映画と同様に相変わらずかなり変なんですが、たいして期待を持たずにあくまでただの映画として自然体で観てると意外に違和感なく観れちゃうんですよね。たぶん監督は事実性よりも自身の美的感覚を優先し、実際の昔の日本を再現するんじゃなくて自身の中にある日本的架空世界を描こうとしたんじゃないかなあ。だから無理に日本に似せようとしたような、いわゆる勘違い日本描写感が薄かったんだと思います。「これは決して“ニッポン”ではなくて、あくまで“ニッポンとよく似たどこかの国”なんだ」とでもいうような監督の姿勢が美学として一貫性のある世界を生み出したんじゃないかと。ま、個人的にはチャン・ツィイーとコン・リーが共演して2人のキャットファイトを観られたからそれだけで満足です(笑)。

『トランスポーター』
 ビデオで観ました。実はヒロイン役のスー・チーが目当てでして。彼女の欧米映画進出作でしたね。ただ、観た当時はスー・チーの魅力をあまり上手く引き出せてないなぁと少々不満というかがっかりした記憶。当時、他のスー・チーのファンの方ともそれで意見が一致しました。ところがそれから数年後にテレビ放送(確か字幕)で観た時にはちゃんとスー・チーの魅力が引き出せてるように感じたというちょっと不思議な作品です(そこも前述のファンと意見が一致した)。映画自体はカーアクションにあまり興味がないんでわりと漫然と観てたんですが、後半肉弾戦アクションになってからはなかなか良かった。あと、スー・チーの父親役の人、明らかにヅラだと思うんだけど、作品的に何か意味があるのかと思ったらなんにも意味がなかった。ということは本当にただのあからさまなヅラだったのか……。観ててすげえ気になるんだよなあ。

『青い凧』
 映画館で観ました。ティエン・チュアンチュアン(田壮壮)監督の映画で観たのはこれだけですね。中国現代史の反右派闘争から文化大革命までを舞台とした映画で、同じ第五世代のチェン・カイコー監督『さらば、わが愛 覇王別姫』、チャン・イーモウ監督『活きる』と同時期の作品ですね。イーモウやカイコーに比べると田壮壮の映画はちょっと難解というか、あまりに淡々としたリアリズム的作風なんで僕の好みとしてはちょっと今一つでした。


>テレビドラマ
 1クール遅れで始まった深夜ドラマ『居酒屋新幹線2』も視聴中。飯ドラマにはとんと興味のない僕ですが、出張帰りの新幹線で御当地の名産を酒の肴に御当地の酒でキュッと一杯という、この箱庭的晩酌ドラマは結構好き。またWOWOWで2年前のドラマ『早朝始発の殺風景』が再放送されてて、青春ドラマ好きとしてはこちらもなかなか面白い。今をときめく若手俳優がごろごろ出ています。



#1906 
バラージ 2024/05/04 18:26
カウリスマキの労働者3部作+1

 前にも書きましたが、フィンランドのアキ・カウリスマキ監督の最新作『枯れ葉』の公開と連動して、カウリスマキの初期作品がCSのザ・シネマで1月に放送されたんで録画しといたのを観賞終了。ちなみにカウリスマキ映画でこれまでに観たのは『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』(1989年。日本公開は1990年)、『ラヴィ・ド・ボエーム』(1992年)、『レニングラード・カウボーイズ、モーゼに会う』(1994年)、『希望のかなた』(2017年)で、いずれもビデオかDVDかテレビ録画で観賞しています。

『コントラクト・キラー』
 1990年(1991年日本公開)のフィンランド・スウェーデン合作映画。僕の大学時代の映画で、その頃住んでいた街でも公開されてたような気がするんですが記憶が定かではありません。舞台はイギリス。水道局の退屈な仕事を15年勤めたフランス出身の男が民営化による人員整理でリストラされる。友人も恋人もいない孤独な男は人生に絶望し自殺しようとするが臆病で上手くいかない。ふとしたことから殺し屋の存在を知った男は自分を殺すよう依頼することに。ところが依頼をした途端ある女に一目惚れ。しかもその女と付き合うことになる。男は殺しの依頼をキャンセルしようとするが、殺し屋ブローカーのアジトはなぜか取り壊されていて連絡がつかない。依頼を受けた殺し屋は忠実に仕事をしようとし、男は女とともに逃げ回ることに。一方、殺し屋は殺し屋で不治の病に冒されていた……。面白かったです。カウリスマキの映画はいつものことながら、うらぶれた生活の映像が印象的でなんとも心地よい。街も家も店もうらぶれてるし、男と女は電話(もちろん固定電話)も持っていません。実際にはイギリスにもフィンランドにももっと裕福とまではいかなくとも中産階級の人々がいたはずですが、そのあたりはカウリスマキの美学なんでしょう。うらぶれた生活の孤独な人々に訪れるほのかな希望を描くのが多くの人々の心をとらえるんだと思います。また曇りか雨か夜か薄明(夜明け前の太陽が上る前の薄明るい時)ばかりで晴れのシーンがないのもカウリスマキの特徴。個人的には薄明の街を見下ろすようなアングルで映すシーンが印象的でした。カウリスマキに限らず僕は映画に時々出てくる、ああいう薄明の都会をロングや全景で映すシーンがすごく好きなんですよね。なぜだかわかんないけど。登場人物がみんな無表情でなんとも言えぬとぼけた味わいがあるのもいつものカウリスマキ映画で、そのじんわりとしたおかしみも胸にしみるものがありました。あと音楽もすごく良かった。

『真夜中の虹』
 1988年のフィンランド映画(1990年日本公開)。カウリスマキ監督の“労働者3部作”の第2作で、カウリスマキの日本公開映画2作目でもあります。これも僕の大学時代で、その頃住んでいた街でも公開されたような気がしないでもありません(最初に公開された『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』は公開されてた記憶があります)。鉱山の閉山で失業したフィンランド北部の男が主人公。父親は彼にオープンカーのキャデラックを譲り自殺。男はその車で一路南部のヘルシンキに向かう。その途中で強盗に金を奪われ、ようやく着いたヘルシンキで日雇いの仕事につく。駐車違反取り締まりなどの仕事を掛け持ちするシングルマザーと惹かれ合い結ばれるが、偶然強盗と再会した男は追いかけて捕まえ殴りつけたところ逆に警官に逮捕される。刑務所に入れられるが意気投合した同獄の男と脱獄。闇商売から手に入れた車で銀行強盗し、その金で偽造パスポートを買い、シングルマザー母子と共に海外へと高飛びしようとするが……。今回は少々シリアスなためもあってかいつものユーモアも控えめ。かと言って過剰に重々しくもなく、妙に淡々としてるのもカウリスマキらしい。またカウリスマキは主義として90分を超える映画を作らないとのことで、今回も72分ですが、それでも十分に面白い。エンドロールに流れる「オーバー・ザ・レインボー」のフィンランド語バージョンも良い。

『マッチ工場の少女』
 1990年のフィンランド映画(1991年日本公開)。カウリスマキの“労働者3部作”の3作目。これもその頃住んでた街で公開されたような気がする。マッチ工場で働く、貧しく若い女性が主人公。地味で冴えない彼女はディスコに行っても男に相手にされず、わずかな給料も働かない母と継父に家賃用として取り上げられる。ある日ショーウィンドウでおしゃれなワンピースを見かけた彼女は、給料を家に入れず衝動買いするが、継父に殴られ母には返品してこいと言われる。しかし彼女はその服を着てディスコに行き、男にナンパされリッチな彼の家でベッドイン。彼女は恋に落ちたと浮かれるが、男にとっては一夜の遊びだった。ショックを受ける主人公はさらに妊娠が発覚。男に連絡すると“始末しろ”と小切手が送られてきた。さらにショックを受け、家を出たところで車にはねられ病院へ。見舞いに来た継父は、事実を知った母が寝込んでるから家を出ろと冷たい一言。継父を嫌って独立した兄のもとに転がりこんだ主人公は復讐を決意し実行に移す……。タイトルは原題通りのようですが、主人公は「少女」というほどではなく、しかも結構な老け顔。マッチ工場も冒頭で延々映し出される製造過程は面白いんですが、ストーリーにはあまり関係がありません。いつもは乾いたユーモアで笑わせたり、ラストにほのかな救いを描くカウリスマキですが、本作は『真夜中の虹』以上に不幸・不運の連続で、最後まで救いがなく、ユーモアを感じさせるシーンもほとんどなし。それでも68分という短さもあって、流れる歌の歌詞に主人公の心情を当てはめたりといった変わった手法で面白く見せてくれます。合間に天安門事件など当時の事件のニュースを登場人物がテレビで見たりするのも何やら懐かしい。これで90年代前半に日本で公開されたカウリスマキ映画はほぼ観たかな。

『パラダイスの夕暮れ』
 1986年のフィンランド映画(2002年日本公開)。カウリスマキの“労働者3部作”の1作目ですが、これだけ日本公開がずいぶん遅れ他の初期作品数作といっしょに公開されたようです。退屈な日々を送るゴミ収集車作業員の男がある日スーパーのレジ係の女に恋をする。男はデートにこぎつけるが、その内容が女の不興を買いフラレてしまう。ところが女はリストラでクビになり、店のミニ金庫を盗んだ挙げ句、ひょんなことから男のもとに転がり込んで2人は付き合うことに。孤独で不器用で少々粗暴な男は女を一途に愛するが、女は男に不満でデートをすっぽかし、ある日出ていってしまう……。主人公の住むアパートの部屋が後のカウリスマキ映画に比べると少々小ぎれいだったり、登場人物が後の映画よりはやや饒舌だったり、まだ作風が確立する前の過渡期的作品といった感じ。それでも独特のユーモアは健在だし、主演2人も後の初期カウリスマキ映画の常連で、希望の地への脱出というラストも共通しています。本筋はメロドラマですが、冒頭で独立を持ちかけた同僚があっさり急死したり、酔って暴れて入れられた留置所で出会った男をその後釜に入社させてやり、その新たな同僚とのやり取りなど脇道エピソードも何やらおかしかった。



#1905 
バラージ 2024/04/25 19:48
昔観た映画D #601〜#1000編

 過去ログで触れられてる映画のミニ感想、今回は#601から#1000まで一気に。このあたり、観たけど感想を書いてないという映画が少ないんですよね。

『座頭市』(北野武監督版)
 確かテレビ放送で観ました。ちなみにオリジナルの勝新版は1本も観ておりません(ついでに後の綾瀬はるか版、香取慎吾版も観てない)。さすが北野武。いろいろひねりを加えて、面白い映画に仕上げてました。一部、女性キャラクターの扱いなどにやはり若干趣味に合わない部分もありましたが、この映画では許容範囲。なかなか良かったです。

>ジェニファー・ロペスとベン・アフレック主演映画『Gigli』
 僕はこの映画の存在を全く知りませんでしたが、日本では『ジーリ』の邦題でビデオ&DVDスルーされたようです。続報が無かったようなので一応お知らせまで。あと『ハットしてキャット』も日本ではビデオ&DVDスルーだったようで、『From Justin to Kelly』という映画も『アメリカン・スター』という邦題でDVDスルーされたようですね。

『チャイナシャドー』
 ビデオで観ました。確か当時(大学時代)住んでた仙台でも公開されたはずですが、映画館では見逃しちゃいましたね。西木正明の『スネークヘッド』をヒントにした柳町光男監督による国際派キャスト&スタッフの日本映画で、主演はあの頃旬だったジョン・ローン。共演に『ラスト・エンペラー』でもローンと共演したヴィヴィアン・ウーとまだ若かった佐藤浩市。懐かしいなあ。香港が舞台でまあまあ面白かったような記憶はあるものの、内容についてはかなり忘れちゃってますね。ジョン・ローン最盛期の作品ですが、今のところ彼の最後の出演映画は2007年のジェット・リー&ジェイソン・ステイサム主演ハリウッド映画『ローグ アサシン』。今はどうやって生活してんだろ?

『ミスター・ベースボール』
 これは映画館で観ました。前にも書いたような気がしますが、僕は相変わらずの勘違い日本描写だなぁとがっかりした記憶があります。当時はロバート・ホワイティングの日米野球ノンフィクション『菊とバット』『和をもって日本となす』なんかが話題になってた時期で僕もなかなか面白く読んでたんで、この映画もそのあたりを参考にした良作なんではあるまいかと思ったんだけど、全然でしたねえ。特に高倉健監督の娘がトム・セレックと風呂に入るシーンが……おい!それじゃ風俗嬢だよ!という国辱的勘違いぶりで怒りすら感じましたね。単純に映画としての出来もイマイチで面白くありませんでした。

小林旭の「渡り鳥」シリーズ
 僕は第1作の『ギターを持った渡り鳥』は昔ビデオで観ました。プログラム・ピクチャーで難しいことを考えずに観ることができる娯楽作でしたが、シリーズ全作同じようなキャストで同じようなストーリーらしいんで、わざわざ何作も観るほどではないかなとそれ以外は観ていません。

『ボウリング・フォー・コロンバイン』
 これもDVDで観ました。これは面白かったですねえ。いや、いろんな意味で衝撃的でした。マイケル・ムーアは同じような社会派映画監督として80年代半ばから90年代に暴れまくったオリバー・ストーンの元気が無くなってきた頃に入れ替わるように出てきたという感じでしたね。

『華氏911』
 DVDで観ました。面白かったけど、前作『ボウリング〜』ほどの衝撃はなかったかな。マイケル・ムーアの映画を観たのは今のところこれが最後。その後はなんとなく興味が向かず、これ以降の作品は観ていません。

『ポセイドン・アドベンチャー』
 これはむかし民放の日本語吹替テレビ放送で観たんだったかなぁ。もうよく覚えていませんが、昔水泳選手だったという老夫婦の奥さんが潜水してピンチを救うも自らは命を失うとか、助かるのはこっちだと言い張って主人公たちとは別方向に向かうグループとか、最後に主人公たちが助かるところなどがぼんやりと記憶にあります。

『アレクサンダー大王』
 これは確かNHK-BSの放送を録画して観ました。なにしろ3時間半もあるので正直何回かに分けて見通しましたね。テオ・アンゲロプロス監督の映画はそれ以前に『霧の中の風景』を公開時に、『旅芸人の記録』『シテール島への船出』をリバイバル上映で観てまして、『旅芸人〜』も4時間ありましたが、映画館だったから一気に通して観れたわけで録画やDVDを自宅でとなるとなかなか難しいところ。ただ映画自体は非常に面白かった。20世紀現代史を象徴的かつ寓話的な物語で描くという手法が個人的にはかなり好き。まぁアンゲロプロスは長回しのやや難解な作風なんで好き嫌いが分かれるだろうから万人におすすめはしがたいんですが。

『半落ち』
 これはテレビ放送で観たんだったかな? それともビデオかDVDだったかな? もうあんまりよく覚えていません。うーん、まあまあだったかな? 評判ほどではないと思ったような記憶です。

『WASABI』
 ビデオかDVDで観ました。リュック・ベッソンが脚本と製作を担当した映画で舞台は日本。主演はジャン・レノで娘役のヒロインが広末涼子という、当時の日本人というか日本の映画好きの心をくすぐりまくる布陣ですが、出来はまあまあって感じかなぁ。ベッソンはそれ以前から『グラン・ブルー(グレート・ブルー完全版)』や『フィフス・エレメント』でキッチュな日本人像を描いてきましたが、その延長にあるような映画です。そこまでひどい勘違いはないんだけど、日本人から
見るとやはりちょっと違和感がありました。

『狼たちの午後』
 ビデオで観ました。確か当時シドニー・ルメット監督の『十二人の怒れる男』『ネットワーク』などを観て、ルメットの映画にハマってた時だったんではないかと思います。この映画はまあまあ面白かったって程度かな。単純なサスペンスじゃなく人間ドラマに比重が置かれてるのは良かった。あとアル・パチーノ若けーと思っちゃいましたね。なおWikiによると原題『Dog Day Afternoon』の「Dog Day」とは「盛夏」を意味する英語の熟語だそうです。


>テレビドラマ
 『お迎え渋谷くん』『からかい上手の高木さん』『くるり 誰が私と恋をした?』『君が獣になる前に』は相変わらず面白い。『JKと六法全書』は1話で脱落。



#1904 
バラージ 2024/04/15 21:27
ベタでもいいのだ

 『レディ加賀』という映画を観ました。
 タップダンサーになるため上京したが夢破れた女性が主人公。老舗旅館の女将をする母が倒れたとの報せを受け、故郷の石川県加賀温泉に駆けつけるが母はピンピンしていた。別の旅館で若女将をする親友に誘われ同窓会に参加し、そこで元カレの市役所職員の挑発に乗って女将修行を始める。若女将たちの集まる講習会に参加するが失敗続きで厳しい講師に叱責され、激しく落ち込み一度は逃げ出すものの、元カレや親友の励ましで立ち直り再び女将修行に励む。そんな中、プランナーを招いて検討されていた加賀温泉を盛り上げるためのプロジェクトで、若い女将たちを集めてタップダンスのイベントを開催することになり、主人公は親友を含む若い女将たちにタップダンスを教えることになる……というストーリー。10年前に加賀温泉を盛り上げる為に結成された旅館の女将たちによるプロモーションチーム「レディー・カガ」から着想を得て企画されたとのこと(登場人物やお話自体は全くの創作)。
 面白かった。ベタな話ではありますかな、良い脚本、良い演出、ハマり役の良い俳優がそろうと面白い映画になるという見本のような映画ですね。主演はドラマや映画に出ずっぱりな上にぐるナイゴチのレギュラーまで務めてるというワーカホリックなのか?な小芝風花。親友役に『賭ケグルイ』やライフネット生命CMの松田るか。2人とタップダンスに挑む若女将たちに中村静香、八木アリサ、奈月セナなど。可愛い女の子たちが目の保養で良い(笑)。それから元カレが青木瞭、テンション高いプランナーが森崎ウィン、女将修行講師が佐藤藍子、旅館の女将でもある母親が檀れい、といずれもすごくハマり役でした。
 クライマックスのタップダンス・シーンも素晴らしく、なかなかに感動的。女の子たち、相当がんばったんだろうなあ。特に主演の風花ちゃんのラストのソロダンスは圧巻で、とてもじゃないけどゴチでしょっちゅう変なダンスやってる子とは思えません(笑)。練習に9ヶ月(他の子たちは半年)もかけたとのこと。撮影は1年半前だったそうですが、今年元日の大地震を受けて配収の5%を現地ロケをした舞台の石川県に寄付するとのことで、1日でも早い復興を祈りたいです。


 今季観てるドラマは、『お迎え渋谷くん』『からかい上手の高木さん』『くるり 誰が私と恋をした?』『君が獣になる前に』。あとはこれから始まる『JKと六法全書』の第1話をとりあえず観てみるつもり。



#1903 
バラージ 2024/04/10 19:37
昔観た映画C #501〜#600編

 過去ログで触れられてる映画のミニ感想5回目は#501から#600まで。

『レナードの朝』
 映画館で観ました。これは感動的な映画でしたね。ロバート・デ・ニーロもロビン・ウィリアムスも良かった。さすが2人とも名優です。デ・ニーロはこの後、少ししたあたりからちょっと出すぎという感じになって飽きられてきちゃうんですが、この映画の頃は絶頂期と言っていいんじゃないかな。コメディの多いウィリアムスも抑えたシリアスな演技が見事でした。

ルパン3世ハリウッド実写映画化
 そんな話があったんですねえ。ちっとも知らなんだ。まあ今に至るまで実現してないんだからポシャったんでしょう。そして本国日本で小栗旬主演で実写映画化されたと。

『マレーナ』
 これはビデオで観たかなぁ。モニカ・ベルッチの出世作ですね。そりゃ『ニュー・シネマ・パラダイス』に似てるはずですよ。監督が同じジュゼッペ・トルナトーレだもん。ファシスト・イタリアの時代には生きていくためにこういうことをせざるを得ない女性も実際にいたんでしょうね。ヴィシー・フランスにも実際にいたみたいだし。

『髪結いの亭主』
 これは映画館で観ました。僕はダメでしたねえ。眠くなってしまいました。パトリス・ルコント監督の出世作ですが、ルコントの映画は合わんなぁと以後ルコント監督の映画は観ていません。

レスリー・チャン(とアニタ・ムイ)の死
 これは前にも書いたと思いますが、「NEWS23」で第一報を知った時には本当に衝撃でした。レスリーは『男たちの挽歌』『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』の頃は女受けタイプの軟弱なジャニーズ系イケメンという感じであまり魅力的には感じませんでしたが、ウォン・カーウァイ監督の『欲望の翼』での虚無的な青年役で役者として開花。さらにチェン・カイコー監督の『さらば、わが愛 覇王別姫』で演技派俳優としての地位を不動のものとし、カイコーの次作『花の影』でも主演する一方で『楽園の瑕』『ブエノスアイレス』とカーウァイ映画の常連ともなりました。その他の出演映画では、『ルージュ』『君さえいれば 金枝玉葉』『金玉満堂 決戦!炎の料理人』『夜半歌聲 逢いたくて、逢えなくて』『夢翔る人 色情男女』を観ています。
 また同年の12月30日には癌で闘病中だったアニタ・ムイも死去。彼女の出演映画で観たのは、レスリーとの共演作『ルージュ』、ジョン・ウー監督の『アゲイン 明日への誓い(アゲイン 男たちの挽歌III)』、ジャッキー映画『奇蹟 ミラクル』『酔拳2』『レッド・ブロンクス』。撮影中の映画『LOVERS』にアニタをキャスティングしていたチャン・イーモウ監督は病状の回復を待っていましたが、ついにかなわず。イーモウはアニタが演じる予定だった反唐組織の女首領を顔を隠した状態で1シーン登場させるにとどめ、アニタに哀悼の意を表明しています。
 2人の大スター(2人とも歌手としても有名)の若すぎる死によって、この年は香港映画の落日を象徴するような年になりました。

『エル・マリアッチ』
 ビデオで観ました。当時24歳のロバート・ロドリゲス監督が製作費7000ドル(約77万円)という低予算、かつ撮影日数14日間で撮り上げたというのが話題になりました。なかなか面白かったです。あくまでこの予算にしては、ということですが、低予算を逆手に取った面白さでしたね。

『デスペラード』
 映画館で観ました。実に前作『エル・マリアッチ』の1000倍の700万ドルの製作費とのことですが、やってることはほとんど変わりないという(笑)。なお本作は『エル・マリアッチ』とストーリーが繋がっている直接的な続編ではなくシリーズとしての続編兼リメイクのセルフリメイク作品とのこと。僕も観た時に話が微妙につながってないなと思った記憶があります。まあ面白いことは面白かったけど。

ジャッキーのラブシーン
 今さら言っても全くもってしょうもないことなんですが、この時点でもジャッキーのラブロマンス映画というかラブコメ映画に『ゴージャス』がありましたね。もともとジャッキーはプロデューサーだけやる予定が紆余曲折の末に主演もすることになったとのことで、そのためか前半はヒロイン役のスー・チーのほうがむしろ主演っぽく、ジャッキーは脇にまわってました。僕はこれでスー・チーのファンになって、その後数年間彼女の出演映画を観まくった記憶。懐かしい。

『少林寺三十六房』
 うーん、これは観たような観てないような……。観たとしたら映画館で何かの同時上映だったか、それともテレビ放送だったか……。まあ、この映画自体は有名で主演のリュー・チャーフィーももちろん知ってましたけれども。

『スティング』
 ビデオで観ました。詐欺師を主人公とした騙し映画であり、どんでん返し映画ですね。面白かったけど、こういう映画って2回観る気にはならないんだよなあ。ネタが割れてる状態で観ると面白さ半減だし。

『JM』
 映画館で観ました。たけし本人も言う通り、わけわかんない映画でしたね。サイバーパンクの旗手ウィリアム・ギブソンが初期短編『記憶屋ジョニイ』(『クローム襲撃』〈ハヤカワ文庫〉所収)を自身で脚色したそうですが、なんでああなっちゃったのか? SFファンでない僕にはよくわかりません。なおキアヌの最初のブレイクはもちろん『スピード』です。

『ライジング・サン』
 ビデオで観ました。これもわけわかんない映画だったなあ。日本文化に対する海外の勘違いが相変わらず大爆発ですよ。やれやれ。まあ、そういう意味ではところどころで爆笑できますが(ショーン・コネリーが日本人に向かって「フザケルナ!」と怒ってみせるところとか・笑)。



#1902 
バラージ 2024/04/07 00:22
昔観た映画C #401〜#500編

 過去ログで触れられてる映画のミニ感想4回目は#401から#500まで。なんかこのあたりからリアルタイムではない映画の話が多くなってきたような。

『ソードフィッシュ』
 むかし友人が面白かったと言ってたんだけど、なんとなく興味がわかなくて長く観なかった映画。WOWOWだったかNHK-BSだったかで放送したのを録画して観ました。よくできた映画だとは思いますが、やっぱり僕の趣味には合わないなあ。終わり方がどうにも後味が悪いし、雰囲気でごまかしてるけど実はえらくご都合主義。それとネタバレになるからくわしくは言わないけど、あの人が生き残っちゃうあたりユダヤ系のハリウッドはイスラエルに甘いと思っちゃうのは深読みのしすぎでしょうか?

『スピード』
 映画館で観ました。これはなかなか面白かったですね。ま、正直言ってネタとしてはどっかで聞いたことあるような……と思わないでもなかったんだけど、それでもやはりよく出来ててそれなりに面白く観ました。『2』も映画館で観ましたが、そっちは1作目に比べるといまいち。キアヌ・リーブスが降板したのはともかくとして、止まらなくなるのがデカい豪華客船だからあんまりスピードを感じなかった(笑)。

『セント・オブ・ウーマン 夢の香り』
 これも映画館で観ました。うーん、僕はいまいちだったかなぁ。観る前は面白そうだと思ったんですが、なんとなく惹きつけられるものがなかったですね。そういやガブリエル・アンウォーが出てたんだな。この後、日本でLUXのCMに出てましたね。

『フェイク』
 前回書いた前売券を買ったけど結局観に行かなかった映画の1本。同じく数年前になってDVDで観ました。DVDは劇場公開版より20分長いエクステンデッド・エディションというやつでした。今はもう前売券なんて買わなくなっちゃいましたね。これも個人的にはいまいち。実話の映画化でマフィアの下っ端のセコいシノギやつらい日常などのリアルな姿が描かれるんですが、なんか観てて悲しくなっちゃいましたね。
 アル・パチーノの出演映画は他に『狼たちの午後』『シー・オブ・ラブ』『ディック・トレイシー』『恋のためらい フランキーとジョニー』『ヒート』を観ています。マフィア映画は皆無ですな(笑)。

テレビドラマ『トリック』
 僕は第1シリーズのテレビ放送時から観てました。いや〜、これは面白かったですね。僕はハマりました。たぶん実在の千里眼事件とかがヒントになってると思うんですが、コミカルなテイストの中に哀しさを忍ばせたストーリーがなんとも言えず良かった。仲間由紀恵と阿部寛の出世作で、エンディングの鬼束ちひろの「月光」も素晴らしく、彼女たちをスターダムに押し上げましたね。懐かしいなあ。ただ第2シリーズはそういう哀しみのテイストが減って、出来もやや下がったように感じました。その次の劇場版ではさらにはっきりと凡作に。再びテレビに戻りゴールデンに進出した第3シリーズでは面白さが戻るかと思いきや、完全におフザケ路線にスライドしてしまいました。堤幸彦っていっつもそうなんだよな。『SPEC』でもそうだったし。そんなわけでその後のシリーズや劇場版は観ていません。

『蒲田行進曲』
 確か昔に民放のテレビ放送で観た記憶。なかなか面白かったように記憶しています。映画好きのウッチャンナンチャンが昔よくコントでパロディにしてたなあ。

『愛を乞うひと』
 これはビデオで観たかな。面白かったという言い方をするとあれですが、なかなかにすごい映画でしたね。原田美枝子さんの二役が印象に残ってます。好きな女優の野波麻帆さん(当時は野波麻帆ちゃん)が原田美枝子(現代)の娘役で出てるんですが、これが映画出演2作目だったんですね。彼女も印象に残りました。

若い頃の織田裕二
 金子修介監督が1993年の『卒業旅行 ニホンから来ました』で主演した際の織田裕二の態度・行動を批判した手記は月刊誌『シナリオ』1993年10月号に掲載されていて、僕はたまたまそれを読みました(「『卒業旅行 ニホンから来ました』演出ノート──にっちもさっちもどうにもブルドッグ」)。それを読んだ限りでは、なるほどこれはちょっとひどいと思わざるを得ませんでしたね。織田からはシナリオの変更も要求されたようですが、脚本の一色伸幸は実は当時うつ病を発症してた(ずっと後になって告白している)ようで態度を硬化させ、また金子監督と一色氏の仲も険悪だったらしくこれもかなりモメたようで……。また当初ヒロインに予定されていた松雪泰子が保阪尚希との恋愛問題でメンタルが不安定になって直前に降板するなど、金子監督は相当に大変だったようです(代役は鶴田真由で彼女の出世作となった)。ただ「二度といっしょに仕事をしない」とは書いてなかった記憶。また「新人時代に初主演した映画」でもなく、何度も主演映画に出た後の作品で、金子監督映画でもそれ以前に1991年の『就職戦線異状なし』で主演しています。
 若い頃の織田裕二が生意気、というより少々問題児だったという話は、バラエティ番組なんかでたま〜にちらほら聞こえてきたりします。確か『ダウンタウンDX』で陣内孝則が後輩であるはずの若い頃の織田の態度の悪さをネタにして話してました。もっともその後かなり経ってから久々に会ったら先輩に対して礼を尽くす人に変わっていて、「あ、この人、ホントはいい人だったんだ」と思った、とオチをつけて笑いにしてましたが。香取慎吾も『SMAP✕SMAP』に織田がゲストで来た時に、ドラマで先輩の織田と共演した時のちょっとムカついた話を(冗談っぽく)チクリとしてたのを観たことがあります。まあ昔の話だから今になって話せるってのもあるんでしょう。『卒業旅行─』ももう30年前の映画ですからね。
 なお、トラブルが原因かはわかりませんが今だに『就職戦線─』『卒業旅行─』はDVD化されていないんですよね。どっちも面白いんだけどな〜。ま、その前後の金子監督映画『どっちにするの。』『香港パラダイス』『咬みつきたい』もDVD化されてないんで、必ずしもトラブルが理由ではないのかもしれませんが、もっと前の金子監督初期作品はなぜかDVD化されてるんですよね。



#1901 
バラージ 2024/03/30 22:09
昔観た映画B #201〜#400編

 過去ログで触れられてる映画のミニ感想3回目は#201から#400まで。

『聖なる酔っぱらいの伝説』
 映画館で観ました。タイトルとあらすじを読んで面白そうだと思いまして。でも実際に観てみたら僕にはちょっと合わない作風だったかなあ。正直眠くなっちゃいましたね。エルマンノ・オルミ監督はそれ以前に『木靴の樹』『偽りの晩餐』が評判になってると知り、観てみたんですが残念ながら僕はダメでした。

『バッド・ガールズ』
 数年前にNHK-BSの放送を録画したものを観ました。観たのは主演女優4人の中に好きな女優のメアリー・スチュアート・マスターソンがいたからでして。西部劇にそんなに興味ないしなぁとなんとなく観ないできたんですが、テレビ放送されるんなら録画しとくかってことで。映画自体はまあまあ面白かったって程度ですが、マスターソンはやっぱり良かった。やっぱり俺はこの女優が好きなんだなあと再認識しましたね。

『プリティ・リーグ』
 これはテレビ放送で観たんだったかな?(日本語吹替?) 多分たいして期待しないでなんとなく観始めたような気がしますが、予想に反してなかなか面白い映画でした。改めて調べたら監督が『ビッグ』のペニー・マーシャルだったのか。だからトム・ハンクスが出てたのかな? そりゃ面白いはずですよ。ペニー・マーシャルの映画は『レナードの朝』もすごく良かった。マーシャル監督、2018年に亡くなられてたんですね。ご冥福をお祈りします。

『テルマ&ルイーズ』
 これは映画館で観ました。最近4Kレストア版も公開されるなどしてますが、僕はまあまあってところで特に面白くはなかったですねえ。リドリー・スコットとは合わんのかなぁ。

『ミラーズ・クロッシング』
 これはビデオで観ました。もうほとんど覚えてないけど、あんまり面白くなかったなあ。僕はギャング映画・マフィア映画に関しては、王道を外して通好みの映画を選んでは好みに合わず失敗してる感じ。『グッド・フェローズ』とか『フェイク』とかいずれもいまいちでした。

『トータル・リコール』
 これはテレビ放送(日本語吹替)で観ました。SFファンでもなければ原作も読んでない僕はまあまあ面白かったんですけどね(笑)。あくまで『ターミネーター』からの流れでシュワ主演アクション映画としか観ていませんでした。最近のリメイク版?2度目の映画化?のほうは観ていません。

『ロスト・ワールド ジュラシック・パーク』
 これは確かDVDで観たかなぁ。えー、数年前に家の物置を整理してたら昔(80〜90年代)の映画のチラシや前売券の半券が出てきまして。懐かしーと見てたらその中に半券になってない買ったままの前売券が8枚ほどあったんですよね。うわ、もったいねーと思いながらも、なんで前売券を買ったのに観に行かなかったのか、もう全く思い出せませんでした。この映画もその1本。そもそも1作目を観てないのに、なんで2作目を観ようと思ったのかも今となっては謎。しかしまあその前売券を買いながら無駄にしてしまった8本ほどの映画たちをその時になって観ようという気になりまして。忘れていた過去の借金を清算するとでも言いますか。図書館などでタダで観れるものはなるべくその方法で観たんですが、この映画は無かったんでレンタルDVDで観たんじゃなかったかな。ま、どうせ旧作だから安いもんなんですが、前売券を無駄にしたからなんかもったいなくって。
 てなわけで映画の感想ですが、1作目を(3作目以降も)今だに観てないんであくまで本作単独での感想です。やっぱり僕はこういう映画は苦手だなあというのが正直な感想ですね。パニック映画というかホラー映画にありがちな、女子供が出しゃばってどう考えても行かないほうがいいところに行っては勝手に危険に陥りギャアギャア喚くとか、あーこいつ死ぬなと思ったやつがベタに予想通り死ぬとか、どうにも観ててイライラしました。ファミリー向けというか子供向けなところが余計にダメでしたね。

『光の旅人 K-PAX』
 ビデオかDVDで観ました。これはすごくいい映画でしたね〜。レンタル店ではSFコーナーに置かれていることが多いんですが(ソフト邦題は『K-PAX 光の旅人』)、SF映画ではなくファンタジー要素のあるヒューマンドラマと言ったほうがいい作品です。前に1回紹介したような気もしますが、もう1回書いちゃおう。自分はK-PAX星から来た異星人だと言う男が主人公。送られた精神科病棟で検査されても、彼の主張は科学的にも合致していた。さらに彼は他の患者たちにも良い影響を与え、患者たちの症状が回復していく。彼は本当に異星人なのか? 彼を精神病による妄想患者だと思っていた精神科医にもだんだんよくわからなくなっていく……。最後までどちらとも取れるような、それでいてどちらだとしても矛盾が生じるような、謎を明らかにしない不思議な余韻の残る佳作でした。脚本も演出も俳優たちも秀逸。これはおすすめです。

『イレイザー』
 映画館で観ました。シュワ主演という以外はもうあんまり覚えてないなあ。可もなく不可もなくの凡作だったと思います。

『ロボコップ』
 テレビ放送(日本語吹替)で観ました。僕はなかなか面白かったですね。マンガ『ロボット刑事』を描いた石ノ森章太郎が「やられた!」と悔しがったとか。まあテレビ放送だから残虐描写はカットされてたのかもしれないけど。僕の中ではポール・バーホーベンはレニー・ハーリンと同じく「まあまあ面白いけど大味な映画を作る人」というくくりです。続編の『2』(アービン・カーシュナー監督)、『3』(フレッド・デッカー監督)もやはりテレビ放送(日本語吹替)で観ましたが、『2』は面白くなかった。『3』は日本企業が作ったスーツに日本刀のロボが出てくる珍作ですね。ただ日本企業が米国企業を買収するって筋立てには時代を感じるなあ。


>寺田農・追記
 そういや映画『森の向う側』も去年VHSで観たばかりだから寺田さんの記憶がありました。これも声だけの出演だったけど。



#1900 
バラージ 2024/03/23 22:31
昔観た映画A #101―#200編

 過去ログで触れられてる映画のミニ感想2回目は#101から#200まで。個人的事情でこの頃からはビデオ視聴が多くなります。

『運動靴と赤い金魚』
 これはレンタルビデオかテレビ放送で観ました。とはいえぼんやりとしか覚えてないんだよな。マジッド・マジディ監督作ですが、イラン映画というとそれ以前にアッバス・キアロスタミ監督の『友だちのうちはどこ?』を映画館で観ました。どちらの映画も子供を主人公にしてますが、イラン映画に子供を主人公にしたものが多いのは政府の検閲を通過するのに有利だからだそうです。

『フルメタル・ジャケット』
 これもビデオで観ました。『プラトーン』のヒットに始まるベトナム戦争映画流行作品群の1つで、キューブリック・ファンはやたら持ち上げてるんですが、「ベトナム戦争映画」としては僕はそこまででも……といったところ。特に前半の特訓シーンというか“しごき”シーンは、出来自体は素晴らしいんだけれどもベトナム戦争とはあまり関係ないんで、「ベトナム戦争映画」を期待して観た僕としてはちょっと肩透かしでしたね。後半の市街戦もベトナム人がほぼ出てこないこともあって、あまりベトナム戦争感はありません。「ベトナム戦争映画」としては『プラトーン』や『グッドモーニング,ベトナム』(どちらもやはりビデオで観た)のほうがよく出来てたんじゃないかなぁ。ただ特訓シーンを見て、ゲーム『ファミコンウォーズ』のテレビCMの元ネタはこれだったのか!と知ったのはうれしかったけど(笑)。

『風の丘を越えて 西便制(ソピョンジェ)』
 これもビデオで観ました。巨匠イム・グォンテク監督作品ですが、ちょっと重くてやや難解な映画だったような記憶。『シュリ』以前の日本公開アート系韓国映画はこんな感じのやや難解で重い作品が多かったですね。イム・グォンテク監督の映画は他に『シバジ』を観ましたが、そちらは難解ではないもののやはり重い映画でしたし、イ・チャンホ監督の『旅人は休まない』なんかも重くて難解な映画でした。

『アポロ13』
 これは映画館で観ました。『フォレスト・ガンプ』の次のトム・ハンクス主演映画でしたね。僕はまあまあ面白かったって程度かなあ。悪くはないんだけどなんだか今一つ物足りないって感じでした。

『雨あがる』
 ビデオで観ました。原作は未読で過去の映像化作品もすべて未見です。僕はダメでしたねえ。とにかく退屈でつまんなかった。僕が別に黒澤ファンじゃないからってのもあるかもしれませんが、決してそれだけが理由ではないと思う。俳優陣もねえ……平均年齢が高すぎて僕の興味にはちょっと合わなかったなあ。あと主要俳優に1人えらく大根で華もない男優がいるなと思ったら、なんと三船敏郎の息子とのことで。この二世俳優は売れねえだろうなあと思ったんですが、やっぱり売れませんでしたね。あるいは御本人にも自覚があって、だからこそその後は俳優業をせずに社長業に専念したのかもしれないけど。

『ヒマラヤ杉に降る雪』
 これもビデオで観ました。なかなか良い映画だと思った記憶はありますが、内容についてはほとんど忘れちゃったなあ。工藤夕貴さんはその後もしばらくハリウッドにいましたが、出演作は『SAYURI』『ラッシュアワー3』ぐらいで、現在は日本に帰ってきて半農半芸能みたいな暮らしらしいですね。

『どら平太』
 ビデオで観ました。原作は未読で過去の映像化作品も未見。『雨あがる』よりはマシだったかなぁ。とはいえまあまあ面白かったって程度で、今となってはこれまたほとんど忘れちゃってますね。配役もこれまたやや高齢ですが、『雨あがる』よりはまだ若いか。あと『雨あがる』もこの作品も公開当時(ビデオ視聴だけど)すでに作風がやや古く感じました。

『太陽を盗んだ男』
 これもビデオ視聴。この映画は面白かったですね。荒唐無稽といえば荒唐無稽な話だし、プロ野球中継の延長も僕が物心ついた時には実現してて、しかも今じゃ地上波中継そのものがほとんど無くなったし、ストーンズ来日公演も僕がこの映画を観た時にはとっくに実現してたらしいんで、今となっては古い内容なんでしょうが、それを差し引いてもなかなか面白かった。監督の長谷川和彦は僕もリアルタイムじゃないんで個人的にはピンと来ないんですが、あれ?亡くなったっけ?と思ったらまだ御存命だったようで(どうもすいません・笑)。今だに熱狂的なファンがいてときどき復帰話が出るようですが、ここまでブランクがあるとさすがにもう監督復帰はないんじゃないかなあ。

『サイダーハウス・ルール』
 これは映画館で観ました。これもなかなか面白かった。主演のトビー・マグワイアはこの後、『スパイダーマン』シリーズで大ブレイクしましたね。でもシャーリーズ・セロンなんて出てたかな? ヒロイン役はジュリエット・ルイスじゃなかったっけ?と思ったら『ギルバート・グレイプ』とごっちゃになってた(そっちの主演はジョニー・デップ)。どっちも監督がラッセ・ハルストレムだったんですね。思えば作風だけでなく、内容もなんとなく似てるんだよな。彼の作品だとスウェーデン時代の『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』が1番記憶に残ってるんですが。ちなみにジョン・アーヴィングの原作はずいぶん前に買ってあるんですが今だに積ん読状態です(笑)。

『天使にラブソングを…』
 これも映画館で観ました。確か『エディ・マーフィのホワイトハウス狂騒曲』の併映だったんだけど、こっちのほうが面白かった記憶。非常によく出来た映画でしたね。パート2も面白かったけど、1作目ほどではないかな。


>追悼・寺田農
 寺田農さんが亡くなられましたね。個人的には大河ドラマ『独眼竜政宗』での大内定綱役が印象的で、そのドラマで初めて寺田さんを認識した記憶。その定綱役をはじめ一癖も二癖もある人物を演じることが多く(ご本人も何かのインタビューで「僕本人は江戸っ子のがらっぱちなんですが、なぜかそういう役ばっかり来るんですよね(笑)」と言ってました)観ていて印象に残る俳優ですが、出演作がすごく多いわりには脇役が多いこともあって代表作は何かと言われるとちょっと困ってしまう役者でもあります。おかげでか訃報を伝えるニュースでも声優としての出演だった『天空の城ラピュタ』のムスカ大佐を代表作にあげているものがほとんどでした。ご本人は声優としての出演だった『ラピュタ』には(当然ながら)さほど思い入れもなく、記憶もあまりないようでしたけど。『ラピュタ』以外で僕が観た映画だと、『激動の昭和史 軍閥』『野性の証明』『真田幸村の謀略』『セーラー服と機関銃』『里見八犬伝』『台風クラブ』『トットチャンネル』『森の向う側』『MISTY』『ご挨拶』『夏の庭 The Friends』『きけ、わだつみの声』『キャンプで逢いましょう』『信虎』に出てますが、『信虎』以外はどれも寺田さんの記憶があまりないんだよなあ。ただ、これもほんの一部で出演映画はゆうに100本を超えているようです。それに加えてテレビドラマですから本当にたくさん出てたんですね。ご冥福をお祈りします。



#1899 
バラージ 2024/03/20 21:05
帰ってきたカウリスマキ

 フィンランドのアキ・カウリスマキ監督の『枯れ葉』という映画を観ました。僕は知らなかったんですが、カウリスマキって2017年の『希望のかなた』(地元では翌年公開。僕は見逃して録画で観ました)を撮った後に引退宣言してたんですね。しかし6年の月日を経て、あっさり復帰したようです。良かった。
 今回の『枯れ葉』は、『パラダイスの夕暮れ』(1986年。日本公開2002年)、『真夜中の虹』(1988年。日本公開90年)、『マッチ工場の少女』(1990年。日本公開91年)の労働者3部作に続く4作目にあたるとのこと。あくまでこの4作はテーマやモチーフがいっしょってだけの別々な独立した作品なんで、前3作を観てなくても全く問題はありません。僕も前3作は未見ですが、CSのザ・シネマで1月に放送してたのを録画してあるんで後で観ようと思ってます。
 ヘルシンキでぎりぎりの苦しい生活を送る孤独で内向的な女と男が主人公。スーパーでゼロ時間契約者として働く女は消費期限切れの食品を求めるホームレスに渡し、自らも持ち帰ろうとしたのを咎められクビにされる。場末の居酒屋に再就職するも店主がドラッグ売買で逮捕され閉店。工場で危険な労働に従事することに。一方、工事現場で働く男は鬱な日々の中で酒に溺れ、仕事中にも酒を飲んでいることが見つかり、やはりクビに。2人とも悪条件にも我慢して仕事をしてきたのにまったくツイてない。そんな2人がそれぞれの友達に連れられて行ったカラオケ店で偶然出会い、惹かれ合う。お互い名前も住所も電話番号も知らぬまま、また会うことを約束するが、男は女からもらった電話番号のメモをうっかり無くしてしまい……というラブストーリー。
 絵に描いたように貧しい人たちの姿をやや陰鬱な映像の中で寡黙に描くといういつものカウリスマキ映画。そう書くとなんだかものすごく暗い映画のようにも聞こえますがそんなことはありません。もちろん明るい映画というのとはちょっと違うし、主人公2人に次々とつらいことも起こるんですが、カウリスマキ流のとぼけたユーモアに思わず笑っちゃうシーンが多い。登場人物全員が全編ほぼ無表情な仏頂面で、一度も笑顔を見せないのもまた可笑しい。2人が初めてのデートの時に映画館で観る映画がカウリスマキの盟友ジム・ジャームッシュのゾンビ映画『デッド・ドント・ダイ』だとか、それを観終わって出てきたおっさん2人がこれはゴダール風だ、いやブレッソン風だと議論を始めるとか、女が飼い始める犬の名前がチャップリンとか、映画の小ネタがやたら多いのにもつい笑ってしまいます。
 その一方でラジオからは頻繁にロシアのウクライナ侵攻による戦争のニュースが流れてきたりもするし、かたくななまでに文明の利器を映画に登場させなかったカウリスマキが、ネットカフェや携帯電話を出してきたのもちょっとびっくり。まぁともかく、いつものカウリスマキらしくふわっとした可笑しみのあるなかなか面白い映画でした。見事にハッピーエンドに着地します。客も結構入っててちょっとびっくり。最終上映日もいつの間にか延びてました。


>その他に映画館で観た映画
『熱のあとに』
 2019年の新宿ホスト殺人未遂事件にインスパイアされて製作したというフィクションの日本映画。あくまでインスパイアされただけで、映画自体は全く架空の話です。僕は事件自体を知らなかったか、聞いたとしてもすっかり忘れてます。事件の概要を検索して読んでも何も思い出せません。
 愛したホストを刺し殺そうとした女が主人公。その6年後、すでに刑務所から出所した女はしたくもない見合いで出会った男にホストとは違う親近感を感じ結婚。林業に従事する男は彼女の過去を知った上でそれを受け入れていた。2人の穏やかな結婚生活が始まるが、実は今だに精神科に通い治療を受ける女は、心の奥底に消えないホストへの激しいまでの愛があることを心理療法家に告白していた。やがてどこか謎めいた飄々とした隣人の女が現れ2人と親しく接するようになるが、その女は主人公に関係する、ある秘密を抱えていた……。
 うーん、これはちょっとなあ。主人公を含めて、登場人物たちに全く共感できません。主人公はサイコパスとしか思えないし、それが伝染したかのように周囲の人物もみんなちょっとずつサイコパスになっていく。娯楽映画的なサイコパスではなく、一般的な文字通り「狂ってる」という意味でのサイコパス。現実の事件に配慮してストーリーだけでなく人物像なども変えてあるようですが、そのために非現実的な人物や行動になってしまっているように感じられました。それと肝心のホストが少ししか出てこないので、なぜ主人公がそこまで狂ったのかが曖昧になってしまってます。全く出てこないならまだしも、少しだけ出てきて深堀はされないんで、彼女が狂ったのがそのホストのせいなのか彼女自身のせいなのかがブレてしまっているように感じました。
 映像も暗い場面が多く見にくいし、車の中のシーンは車の音がうるさくて台詞が聞き取りづらいところがあるのもマイナス。俳優陣は主演の橋本愛、夫役の仲野太賀、隣人役の木竜麻生、夫の後輩役の鳴海唯と若手演技派勢ぞろいでそれぞれ素晴らしいんですけどね。それだけでは映画の欠点を補いきれないというか。橋本さんと太賀くんはもちろんですが、この映画ではやっぱり木竜麻生ちゃんが非常に魅力的。そりゃ太賀くんも惚れるわ(笑)。鳴海唯ちゃんは終盤までちょろっとしか登場せず、チョイ役か?と思ったら終盤にちゃんと出番がありました。
 ま、とにかくすげー暗い映画でしたね。主人公は自業自得だけど、周囲の狂わなくてもいい人たちが狂わされて主人公よりひどい結末迎えるのはやっぱりちょっと納得できなかったな。

>DVDや録画で観た映画
『美しき運命の傷痕』
 2005年(翌年日本公開)のフランス・イタリア・ベルギー・日本合作映画で、実質的にはほぼフランス映画。ポーランド出身の故クシシュトフ・キェシロフスキ監督がダンテの『神曲』に着想を得て構想した三部作「天国」「地獄」「煉獄」のうちの「地獄」編の遺稿を、ボスニア出身のダニス・タノヴィッチ監督が映画化した作品とのこと。原題は直訳するとそのまま『地獄』らしい。夫の不倫を知り、激しい嫉妬に駆られ夫や愛人を尾行などして暴走する長女。車いす生活の無愛想な母の住む施設を電車で訪ねる日々を送り、不眠症に悩まされる孤独な日々を過ごす次女。父親ほど歳の違う不倫関係にあった大学教授から別れを告げられ、あきらめられず彼に迫る3女。そして彼女たちが幼少期に体験した父母のある衝撃的な事件が描かれていく……。いかにもフランス映画といった感じの作風で、最初はくわしい関係性もわからないままそれぞれの状況が交互に漠然と描かれていきます。姉妹だということも途中まで全くわかりませんでした。とにかく暗く重い映画で、映像も暗く曖昧模糊とした部分も多い。ひたすら重苦しい、まさに“愛の地獄”。とはいえ面白くないとか苦痛とかでは全くなく、そういう米国映画とも日本映画とも違ったフランス映画というかヨーロッパ映画特有のリズムや作風が意外に心地いい。なかなか面白かったです。長女役が有名なフランス女優エマニュエル・ベアール、次女役のカリン・ヴィアールという女優はよく知らないんですが、3女役がベルギーの当時若手女優だったマリー・ジラン。母親役がキャロル・ブーケで、3女の不倫相手がジャック・ペラン(『ニュー・シネマ・パラダイス』で初老になった主人公を演じてた人)という豪華キャストですが、僕は90年代に好きだったマリー・ジラン目当てで観たんですよね。
 マリー・ジランは1991年(93年日本公開)の『さよならモンペール(未見)』で若干15歳で鮮烈デビューを飾り、『裸足のマリー』『ひとりぼっちの狩人たち』『ラスト・ハーレム』と90年代の主演作はよく観てました。21世紀に入ってからはなんとなく観なくなってしまいましたが、日本公開されたのも2009年の『ココ・アヴァン・シャネル』(未見)が最後となっています。もちろんその後も映画には出てるようなんですが日本公開されてないんですよね。久々に見たがやっぱり可愛い。そして演技力も先輩たちに引けを取らない。この頃は30手前ぐらいで、今はもう48なんだな。時が経つのは早い。なんかまだ観てない彼女の出演映画をまた観たくなってきました。

『お早よう』
 1959年の小津安二郎監督の映画。去年末にNHK-BSでデジタル修復版てのを放送してたんで録画しました。小津のカラー作品2作目のようです。東京郊外の小さな住宅密集地を舞台に、隣近所の噂話から始まる小さないざこざや、子供たちの間で流行る妙なオナラ遊び、テレビが観たくて仕方がない子供たちと大人たちの大げんかなどをユーモラスに描いた喜劇風味の映画。小津というと『晩春』(1949年)から始まるいわゆる“小津調”の映画のイメージがあり、僕も小津映画は戦後のものしか観てないんですが、戦前には様々なジャンルの映画を撮っていたそうで。奥さん連中によるご近所の陰口とかそういう日本人的ないやらしいところの描かれ方も上手いし、ご近所のテレビで相撲中継に夢中な子供たちが親にテレビ買ってくれとねだる時代的事象がテレビの登場で押される映画で描かれるのも面白い。オナラが出やすくなるという理由で子供たちが軽石削って食うのには驚きましたが、小津的創作かそれとも当時実際にそんなことがあったんだろうか? とはいえ以前別の昔の映画でも言ったと思うんですが、カラーになり始めた頃の映画って白黒映画よりもむしろ古臭く感じるのもまた事実。実際、小津が油の乗りきった1940年代末〜50年代半ばの映画に比べると今一つに感じました。杉村春子や沢村貞子が出てることもあって、子供の頃に祖母が観てた東芝日曜劇場っぽくも感じましたね。笠智衆と東野英治郎が共演してるのもなんだか興味深い。

『秋刀魚の味』
 1962年の小津の遺作。これもNHK-BSのデジタル修復版の放送を録画。妻に先立たれた初老のサラリーマン(笠智衆)が主人公。結婚した長男(佐田啓二)は独立して団地住まい、主人公は適齢期の娘(岩下志麻)と学生の次男と暮らしていた。中学時代の悪友たちとは今でもしょっちゅう会って酒を酌み交わしており、娘の上司でもある悪友の1人に早く娘を嫁にやれと言われるが、主人公はまだあまりその気はない。だが中学時代の恩師(東野英治郎)を囲むクラス会で、やはり妻を早くに失ったその恩師が娘(杉村春子)に頼りすぎて嫁に行き遅らせたと嘆く姿を見て思い直し、娘に結婚を勧めるのだが……というストーリー。主人公・笠の恩師が東野でその娘が杉村。『お早よう』ではみんなお隣さんで年の差はほとんどないように感じましたが、小津は役者にいろんな年齢を演じさせるんですね。長男夫婦(妻は岡田茉莉子)のいざこざとか、悪友の1人が若い嫁と再婚したとか、恩師と娘が営むラーメン屋とか、主人公の海軍時代の部下との再会とか、その元部下に連れられて行ったバーの若いママ(岸田今日子)が亡き妻の若い頃に似てるとか、やたらと寄り道エピソードが多く話がやや散漫。娘の恋愛や結婚もその1エピソードといった感じで、あまり話の中心になっていません。そのため終盤でバタバタと話が進んでしまう感があります。また女性の結婚観がいかにも一昔前の日本なので、今ではちょっと通用しないでしょう。そのため小津の映画では1番新しいのに、むしろちょっと古く感じます。カラーなこともあって風景やセットも同時代のゴジラやウルトラマンに近く、そこも逆に白黒時代よりちょっと古く感じさせるし、若い頃の岩下や岸田が出てくるのも個人的には昔感を抱いてしまうところ。戦争に対するスタンスにも50年代半ばあたりまでに比べて迷いが感じられ、時代の移り変わりと共に小津もちょっと苦しくなってきたのかなと感じさせられました。ちなみに秋刀魚は全く出てきません(笑)。これは成瀬巳喜男の映画や夏目漱石の小説なんかもそうなんですが、小津の映画もタイトルにあまり意味がないことが多い。なんなら最初にタイトルだけ決めてからお話を作り始めたりするらしい。

>テレビドラマの話
 『アイのない恋人たち』『正直不動産2』が終了。家族の付き合いで観てた『グレイトギフト』『院内警察』も終わりました。『アイのない恋人たち』は面白かった。ちょっと大人の青春映画という感じで良かったです。福士蒼汰・岡崎紗絵・本郷奏多・成海璃子・前田公輝・深川麻衣・佐々木希の主演俳優陣もみな好演。『正直不動産2』『院内警察』はまあまあ。『グレイトギフト』はラス前まで盛り上げときながら最終回があっさりとした感じで肩透かしというか拍子抜け。



#1898 
バラージ 2024/03/18 09:38
昔観た映画@ 25年も経つといろいろ変わる

 先日なんとなしに栄耀映画掲示板の過去ログを読んでいて、昔はいろんな人が書き込んでたんだなーと思いつつ、書き込まれてる映画の数々にわりと懐かしくなってしまいまして、それら懐かし映画にまつわるミニ感想を書いてこうかなと思い立ちました。観てないものや以前書いたものは当然ながら基本的に省略いたします。まずは書き込み100件目まで。しかしまあこの頃は25年も前の話なんですねえ。なんかそんな昔の気がしないんですが。

「金田一耕助も最近ダンディ化が進んでないか…」
 確か昔『ぴあシネマクラブ』で、昔の金田一耕助映画には明智小五郎みたいなスーツ姿のやつもあったと読んだような……と思ってWikipediaで調べてみると、「初めて金田一を演じた片岡千恵蔵は(中略)事情により原作とは全く異なるスーツ姿で、1950年代の間はこのイメージが他の俳優にも引き継がれ、1961年の高倉健も軽装ではあるが洋装であった。(中略)1976年に石坂浩二が初めて原作に忠実な和装スタイルで金田一を演じることになった。」「時代劇スターであった片岡千恵蔵が演じる金田一耕助は「ソフト帽にネクタイ、トレンチコート」が定番スタイル。(中略)この「初代金田一耕助」については、「スーツにソフト帽でピストルを振り回している姿」が時折り揶揄の対象となるが、ここでの金田一は、戦前の因習にとらわれた封建的な動機による殺人を、戦後の民主的な精神によって断罪する「民主主義の使者」として描かれており、アメリカ帰りという設定ともども、スーツ姿は民主主義の象徴として必然であった。」とのこと。まあ25年も前の書き込みなんでとっくにご存知のことかもしれませんが。

『花のお江戸の釣りバカ日誌』の出来ちゃった結婚
 『釣りバカ』シリーズはどれか観たものもあるんですが、『花のお江戸─』は観てないんで誰の話だろ?と調べてみたら、酒井法子だったんですねえ。彼女についてはその後、出来ちゃった結婚なんて問題にならないくらいのとんでもなくショッキングな事件が起こるわけですが、書き込みを読んでると、未来のことなんてわからんもんだなと思っちゃったりなんかして。

『HANA−BI』
 これは映画館で観ました。北野武監督の映画はテレビでデビュー作の『その男、凶暴につき』を観たのが最初で、次の『3―4X10月』もテレビで観た後に、『ソナチネ』を観たのが映画館で観た最初。『キッズ・リターン』も映画館で観て、これが1番面白かった。『HANA−BI』はなんだか過去作の焼き直しのように感じられていまいちでしたね。これを最後に北野監督作はしばらく観なくなり、去年の『首』が久しぶりでした。

『L.A.コンフィデンシャル』
 これも映画館で観たなあ。まあまあ面白かったっていう程度で、もうあんまり覚えていません。

『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』
 これも映画館で観ました。金子修介監督3部作の中ではいまいちでしたかねぇ。最初のが1番面白くて、2、3とちょっとずつ面白さが落ちていく感じでした。あくまで3作で比べればで、単体で言えば面白い映画ではあるんですが。3は特にあのラストがねえ。考えた上でのあのラストだということはわかるんですが、3部作の最後がああいう完結しないオチというのは、僕は今一つすっきりしませんでしたね。あと金子監督、よく少女俳優を起用するわりにはその選択眼があまり良くないような……。特にガメラシリーズは水野美紀こそ怪演女優として再ブレイクしましたが、中山忍は2サス女優に落ち着いちゃったし、藤谷文子にいたっては全然で、前田愛も梨園の妻に収まってしまいました。その辺が同じ少女俳優をよく起用しながら、その選択眼が確かだった市川準との違いなのかなあ。

『鉄道員(ぽっぽや)』
 ふりがなが付いてないけど多分この映画のことですよね。1956年のイタリア映画のほうではなく(そっちは未見)。これはビデオで観ました。なかなか面白かった。高倉健の映画でリアルタイムで観たのは『ブラック・レイン』『ミスター・ベースボール』に次いで3作目でした。しかも前2つは外国映画だから、日本映画では初めてでしたね。正直に告白すると当時トップアイドル女優に躍り出た広末涼子が目当てでしたが(笑)、映画自体もとても良かったです。

『伝説巨神イデオン 接触編・発動編』
 これははるか昔(1990年前後)にビデオで観ました。ガンダムの富野由悠季監督の最高傑作だとの評判を聞きまして。ただテレビシリーズを観たことがないまま観たので、『接触編』はテレビ(の途中まで)の再編集だからあまりにダイジェストでわかりにくく、『発動編』はなかなかにすごい内容ではあったもののやはり非常に観念的でわかりにくいところがあるのも否定できませんでした。やっぱり富野監督は映画じゃなくてテレビの人なんじゃないかなあ。

『あしたのジョー』
 うわ、懐かしい。最初のテレビアニメは小学生の時に再放送されて、その時に観ました。カーロス戦で終わって、なぜか丈がどこかへフラリと旅立つという終わり方で、なんで?と思ったんですが、実はアニメが原作に追いついちゃったというよくあるパターンだったようで。当時は子供で再放送だということもよくわかってなかったんで、原作は最後まであるみたいなのになんで?と不思議でしたね(原作はアニメパート2も終わった後に読んだ)。おそらくはその再放送の好評を受けての再編集劇場版の製作とテレビアニメパート2の放送だったと思われます(同時期の『巨人の星』や『エースをねらえ!』も同じパターンでしょう)。劇場版もテレビ放送の時に観ましたね。声優は最初のアニメ、劇場版、パート2と作品が変わるたびに別の人に変わって、そこはちょっと不満でしたが、劇場版やテレビパート2の頃には最初のが再放送だったことも知ってたんで、昔の人が使えないからかなぁと思ってました。それでも白木葉子なんかはあまりに違う声だったんで、劇場版やパート2は最後までしっくり来ませんでしたね。


>こちらは個人的懐かし映画
 『ミレニアム・マンボ』4Kレストア版が地元では上映されず、隣県に遠征しようか迷ったものの時間が合わず観に行けない悔しさから、同じホウ・シャオシェン監督、スー・チー主演の『黒衣の刺客』のBlu-rayをまた観直してしまいました。やっぱり何度観てもすごくいいですねえ。映像も音も役者も完璧。新たな千年紀の幕開けと共に始まった台湾の世界的巨匠と香港でトップとなり故郷台湾に凱旋した女優のコラボは、間に『百年恋歌』と2本の短編を挟んでホウの最後の作品まで続くことになったんだなぁ。
 そこからなんか懐かし映画づいてチャン・イーモウ監督とコン・リーのデビュー作『紅いコーリャン』のDVDをまたまた観てしまいました。こっちもやっぱり何度観てもいい。映画自体ももちろんいいんですが、観ているうちにその頃の記憶もよみがえってくるんですよね。大学受験が終わってちょっとした頃に、昔のあった小さな本屋で「ロードショー」を立ち読みしてこの映画を知り、地元のミニシアターで観て衝撃を受けたこと。大学入学後に中国語の授業で再びビデオを大スクリーンで観たこと。そんなことが走馬灯のようによみがえってきます。なによりチャン・イーモウもコン・リーも今だに中国映画界のトップとして走り続けていることがうれしい。とにかくとても良かった。今だにこの映画が僕のNo.1中国映画です。



#1897 
バラージ 2024/03/05 16:16
映画いろいろ

>映画館で観た映画
『一月の声に歓びを刻め』
 事前にあまり情報を入れず、性被害が題材ということしか知らずに観たんですが、3つの物語を描いたオムニバス的な映画でした。三島有紀子監督が47年前の6歳の時に受けた性被害の記憶をモチーフに作った自主映画だったそうですが全国公開にまで至ったそうです。
 第1章は洞爺湖の中島を舞台としてかつて娘を失ったことをきっかけに性転換した初老の男を、第2章は八丈島を舞台として妻を交通事故で失い、娘を男手1つで育ててきた中年男性を、第3章は大阪の堂島を舞台として昔の恋人の葬儀に参列するため故郷に戻り、出会ったレンタル彼氏の男と寝ようとする女性を、それぞれ主人公としています。各パートの主演はカルーセル麻紀、哀川翔、前田敦子。三島監督によるとオムニバスではなく、3つの物語は「罪の意識」というもので通底し、その世界がつながっている映画だとのこと。
 テーマがテーマだけにかなり暗く重苦しい映画で、最初の洞爺湖パートは終始曇天で海は荒れ狂い、主人公の住む邸宅の静謐さが際立ちます。八丈島パートは一転して緑豊かでのどかな中にも、やはりある種の暗さや重苦しさが若干漂い、海の波も激しい。それでもこのパートが唯一救いのある話。大阪の堂島はまた一転して都会の雑踏の喧騒が騒がしいんですが、このパートだけモノクロ。そしてやはり一度雑踏を離れると妙な静けさの中で重い空気に包まれます。
 三島監督によると主人公3人は主演3人へのアテ書きとのことで、俳優陣は全員素晴らしい。第1章終盤のカルーセル麻紀の一人芝居は圧巻で、観てて圧倒されます。第2章の哀川翔も妊娠して帰ってきた娘に戸惑う等身大の父親を好演してました。第3章は全編モノクロでイタリア映画の引用も出てくるだけにヨーロッパ映画のような印象。前田敦子もネオレアリズモとかヌーベルバーグのヒロインのような雰囲気をまとっています。オファーを受けてから1か月も悩んだそうですが、あっちゃんもすごい女優になりました。終章でのカルーセルの叫びと前田の口ずさむ歌も印象的。
 ただ個々のストーリーはすごく良いと思うんですが、やはり1本の映画としてのまとまりというか統一性は今一つのように感じました。監督の中ではつながっているのかもしれないけど、僕はどうもちょっとピンと来ないところがあったというのが正直なところ。モチーフとなった性被害についても重いテーマだということは理屈ではわかってるんですが、自分事として考えるのはやはり難しい。むしろカルーセル麻紀や前田敦子が演じる人物たちの、どうしようもない孤独感のほうが胸に迫るものがありましたね。

『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』
 米国映画でコンピューター・ホラーゲームを原作としたホラー映画らしいんですが、そのゲームは全く知らないし興味もありません。じゃあなんで観たのかというと脇役で昔好きだった女優のメアリー・スチュアート・マスターソンが出てるからという、かなり間違った理由で観たのです。
 ホラー映画もあまり興味がないジャンル(怖いとか苦手とかではなく単純に面白くない)なんであまり期待してなかったんですが、意外に恐怖シーンやスプラッタシーンがほとんど無く(そのため年齢制限もない)、ストーリーで見せていく映画だったんで予想してたよりは楽しめました。マスターソン以外は知らない俳優ばかりでしたが俳優陣の演技もみんな良かった。ヒロイン役のエリザベス・レイルという女優もなかなか可愛かったし、マスターソンもちょっとおばあちゃん入ってるけど見れただけでうれしかった。CGをほとんど使ってないのもいいですね。細かいところでいくつか気になるところはあるし、相変わらず子供が余計なことしてピンチに陥ったりするのはちょっとイライラしたけど、ホラー映画なんだしまぁ許容範囲というところか。
 ヤフーで「メアリー・スチュアート・マスターソン」をリアルタイム検索すると、僕以外にもマスターソン目当てで観たり、知らずに観たらマスターソンが出てきて懐かしくてうれしいという感想がちらほらあったりして、僕だけじゃなかったんだとうれしい。リアルタイム検索で見つけたマスターソン目当てで観た1人が映画監督の金子修介。そうか、金子監督もマスターソンが好きだったか。そういや自分の映画にもやたらいっぱい美少女出してるもんな(笑)。twitter見たら金子監督の新作『ゴールド・ボーイ』(大ヒットした中国ドラマ『バッド・キッズ 隠秘之罪』(未見)と同じ中国の原作小説の映画化)の試写公開行脚やってて、そういやそろそろ公開だっけ。地元じゃ相変わらず公開予定出てねえなあと思ったら、なんと去年観た『春画先生』と同じくまた県庁所在地の地元を差し置いて県内他市で全国公開の3月8日に公開されるらしい。やっぱりまたTOHOイオン系かよ!

>録画やDVDで観た映画
『悲しみよさようなら』
 1990年の米国映画(日本公開は1991年)。当時ブレイクし始めた若き日のウィノナ・ライダー主演映画です。懐かしいなあ。WOWOWでやってて、おっ、と思って録画しました。オハイオ州の田舎町は、地元出身でスターとなったロキシー・カーマイケルが15年ぶりに凱旋することに浮足立っていた。主人公である15歳の少女もその1人。孤児で養女だった彼女はロキシーこそ自分の本当の母親だと固く信じ、変人として疎外される日々の中で、母がこの町から連れ出してくれることを強く願っていた。彼女の味方になってくれるのは彼女に惹かれるイケメン同級生とニューヨークから来たスクールカウンセラーの女性だけ。一方、ロキシーの元恋人だった中年男も彼女の帰郷に動揺していた。かつてロキシーは彼と産まれたばかりの子供を残して町を出ていったのだ……。いや良かった。いかにもAround'90時代の青春映画ですが、やっぱり僕はこういうのが好きなんだな。あの頃はこういう映画がいっぱいありました。やや群像劇的なドラマ映画でもありますが、ボサボサ頭の変わり者を演じながらも美しさを隠しきれないウィノナがまさにハマり役。『ビートルジュース(未見)』でブレイクスルーし、『1969』『グレート・ボールズ・オブ・ファイヤー(未見)』『ヘザース ベロニカの熱い日』を経ての本作で、次作『シザーハンズ(未見)』で人気を確固たるものにし、90年代を席巻しました。その後いろいろあったけどやはりあの頃の輝きは色褪せない。ラストは少し消化不良なところもあるけどとてもいい映画でした。

『バタアシ金魚』
 これも1990年の映画で、またまた懐かしい。大学時代に住んでた街の映画館でやってた記憶があります。その時はなんとなく見逃して、レンタルビデオからDVDになってもやはりなんとなく今まで観ないできましたが、やはりWOWOWでやってたんで録画しました。高校の水泳部の女の子に一目惚れした主人公がカナヅチにも関わらず彼女を振り向かせるためだけに水泳部に入部。変なババアに水泳の特訓を受けながら、異常な押しの強さとバカポジティブっぷりで彼女に迫る。女の子は彼のウザさと思い込みの激しさを罵倒するが、彼はカエルの面にションベンで全くこたえず彼女に求愛し続ける……。監督はこれが商業映画デビューの松岡錠司。後に『ドラゴンヘッド』を描く望月峯太郎の出世作マンガの映画化で、原作は未読ですが夏目房之介のスポーツ漫画エッセイ『消えた魔球』で取り上げられてたのを読みました。その感じでは多少原作とは変えてあるっぽくギャグ要素は控えめ。ちょっとシュールな青春コメディ映画という感じ。主演はこれがデビュー作だった筒井道隆と2作目の高岡早紀。東幹久や浅野忠信も出てますがエンドロールで名前見るまで全然わかんなかった。いや〜、みんな若い。15歳の浅野はチビッコで声変わり前だし、今になって初めて観るとなんだかちょっと変な気分になります。映画の出来はまあまあといったところですが独特な雰囲気があり、風景とか雰囲気がこれまたいかにもAround'90映画っぽくてそれも懐かしかった。1990年は他にも『東京上空いらっしゃいませ』『つぐみ』『櫻の園』といった少女青春映画が公開された年でした。ほんと懐かしいな。

『恋するふたり』
 一転してこちらは2019年の日本映画。これまた好きな星野真里さんが特別出演してるからという間違った理由で観ました。もちろん地元には来なかったんですが、星野さんは特別出演だし別にレンタルでいいやと思ったらレンタル店にもDVDが並ばず、DVD買うまではなあと思ってるうちに5年経って800円ぐらいになってたんで1000円切ったからいいやとDVDを買ってしまいました。バンドの男と付き合ってる23歳の引っ込み思案なバイト女性が、口が異常に達者な無職の29歳カッコつけイケメンから、俺の婚約者とお前の恋人が浮気してると言われ、いっしょに浮気した2人のもとへと車で向かうロードムービー。全く期待してなかったんですが意外に出来はまあまあ。男のホストみたいな外見と言動は不快でいらつきますが、逆を言えば役者の演技はそれなりに上手いということ。全体的には不思議とそれほど嫌な感じはしませんでした。女の子役は最近プチブレイクしてる芋生悠という子。映画に出まくってるみたいですね。星野さんは特別出演だから出番は少しだけでした。



#1896 
バラージ 2024/02/08 22:09
映画は映画だ

 『カラオケ行こ!』という映画を観ました。マンガの映画化で原作は全1巻ですでに完結してるとのこと。ちょっと面白そうだったのと評判がいいようなので観てみたんですが、まぁそんなに客はいないだろと思ったら結構客が入っててパンフも売り切れてました。
 中学3年生男子の合唱部部長が、3位に終わったコンクールから帰るところで突然強面のヤクザから「歌が上手くなるコツ教えてくれへん?」と声を掛けられる。そのままカラオケに誘われ恐怖のあまり付いていった中学生にヤクザは、カラオケ好きの組長が開くカラオケ大会で最下位になった組員は刺青初心者の組長から下手くそな刺青を彫られる罰ゲームを受けることを話し、なんとしても歌が上手くなりたいと言う。ヤクザの勝負曲は大好きなX JAPANの「紅」。中学生はいやいやながら歌を教えていくうちに、やがて2人には奇妙な友情のようなものが芽生え…というストーリー。
 いやぁ〜、面白かった! そりゃ客が入ってパンフも売り切れるはずですよ。さすが山下敦弘監督、脱帽です。ヤクザ役の綾野剛も非常に良かったけど、何よりもオーディションで選ばれたという合唱部部長役の齋藤潤くんが素晴らしい。主演2人が演じる主人公2人の空気感が絶妙で、間の取り方や映画のテンポが抜群。結構笑っちゃうところが多く、その一方でクライマックスではちょっと泣ける映画でもあります。芳根京子ちゃん演じる顧問の先生は原作にない役だそうだし、合唱部副部長の女子生徒や後輩男子、主人公の両親、主人公の友達の「映画を見る部」なんかも原作にはないらしいんですが、観てる間はそんなこと全く感じさせず、原作の部分と馴染んで違和感がないため全然気づきませんでしたね。そして役者たちがみんなハマり役で上手い! 強面ヤクザ役の皆さんはほんとに強面だし(笑)、主人公と副部長と後輩の関係性もいかにも中学生らしくて絶妙。芳根ちゃんのちょっと能天気な顧問の先生も良い。そして部室でVHSで映画を観るだけの実質部員1人の「映画を見る部」、俺も入りてー。中学生のくせに『カサブランカ』とか『自転車泥棒』とか観る映画のチョイスが激シブです(笑)。
 一種の思春期映画であり青春映画であり友情映画でもある感動作。マンガの映画化として理想的な作品と言ってもいいでしょう。原作そのままに作るだけでは映画というものは傑作たり得ないんですよね。まず何よりも映画として面白くなくては。マンガ原作とか口コミで評判が広がった売れ方の感じとかは『殺さない彼と死なない彼女』や『恋は光』にも通じますが、それら同様に非常に良い映画でした。


>その他の映画館で観た映画
『ゴールデンカムイ』
 これまた大ヒット漫画が原作ですが、僕は原作はほんのちょっとしか読んでません。最初に結論から言うとまあまあ面白かったかな。ストーリーもアクションも及第点ではあると思うし、原作読んでないからはっきりしたことは言えないんだけど、原作にかなり忠実に作ってあるように感じました(監督が原作の大ファンらしい)。原作と変わったところで僕もわかるのは、アイヌ少女が原作のガキンチョから山田杏奈ちゃん(好演!)になったところですが、これは良い変更点。映画観て思ったんだけど、実写であんなガキンチョが弓矢の達人だったり大の男と同じ速さで走ったりするのは不自然を通り越して不可能でしょう。その他の実写にしちゃうと非現実感が強くなりそうなキャラクターたちもぎりぎりリアリティのあるラインで創り上げたスタッフはすごいし、それを演じる俳優陣もみな好演でした。
 いまいちなところとしてはやっぱりCGがなあ。アクションシーンも結構CG使っちゃってる。まあ、しょうがないっちゃしょうがないけど、長年ジャッキーやトムの本物アクションを観てきた身としてはねえ。それ以上に、うーんなのが動物CG。特にデカい狼がもろCGなんだよなあ。これもしょうがないんだけど熊と狼の戦いなんかCG対CGだから観ててなんだかなあと思ってしまいます。主人公の超回復能力に何の説明もないのも首をひねるところ。原作でも説明されてないのかもしれませんが、魔改造でもしないとあんなのあり得なくねーか? 漫画ではありがちなネタですが、実写にするとご都合主義の極みみたいに見えてしまう。全体的なストーリー展開も、おそらくは原作に忠実であり過ぎるがゆえに悪くはないが突出した面白さでもないという程度にとどまっています。多少原作を逸脱してもいいから何かもうちょっとフックになるようなエピソードを入れても良かったんではあるまいか。なんというか一生懸命原作をなぞっているようで、物語の印象がツルツルで心に引っ掛かるところがありません。それなりに面白かったけど1週間後にはほとんど忘れてしまいそう。
 そして1番がっかりしたのが、終わり方が完全に「次回につづく」だったこと。えー!? これで終わり!?という終わり方で、第一部完どころか第一話終わりみたいな序章(プロローグ)が終わっただけという感じ。しかも最後の最後にそれまで出てこなかった人たち(有名俳優)がずらずらと1秒程度の台詞無し顔見せ出演するから、もう完全に続編ありきになっている。すでに続編が企画されてるのか、それとも続編やりたいよーっていうサービスシーンなのかはわからんけど。原作が連載中だからかもしれませんが、僕は映画というのは1作である程度は完結してほしいんですよね。1900円も払ってこれで終わりかよと思ってしまいます。次も観るかは微妙だなぁ。どうせまた「次回につづく」だろうし。

>最近観たテレビドラマ
 WOWOWで放送してた中国ドラマ『ロング・シーズン 長く遠い殺人』(原題:漫長的季節、英題:The Long Season)が終了。いや〜、面白かった! 1997年、1998年、2016年の3つの時間軸で描かれる犯罪サスペンスの要素を含んだヒューマンドラマで、2016年の現在から物語が始まり、1997年&1998年の過去と現在とが交互に描かれていきます。最初はユーモアを交えつつゆったりと進むドラマで、ドラマとしては面白いけどこれがサスペンスになるのか?と思うんですが、やがて1998年に殺人事件が起こり、それが2016年現在へとつながっていきます。事件の進展や過去と現在のつながりが各話で小出し小出しにされるんで最後のほうまで真相がわからないんですが、じっくりと描かれていく人間ドラマが秀逸。
 ドラマ全体も画面の画作りも映画的で、90年代の再現にもたっぷりお金を掛けてます(時代劇ほどには掛からんだろうけど)。日本なら現在も90年代もそう大して変わりませんが、中国の現在と90年代は日本の現在と60年代ぐらいに違うというところに猛スピードで変化する中国社会の姿がよく表れてましたね。エンディングにエンドロールが流れる(縦ではなく横に流れる)のも映画的ですが、その時のエンディング曲が毎回違うのも印象的で音楽センスもすごくいい。おそらく配信ドラマなので放送時間も回によって異なるんでしょうが、そんなところも映画的に感じます。
 主人公とその2人の仲間が(2016年では)哀愁漂うしょぼくれた初老&中年のおっさんというのもすごい。日本ならなかなか企画が通らないんではなかろうか。そしてその3人も含めてほとんどの人物を2016年と1997年&1998年で同じ役者が演じています。メイクや特殊メイクの力もあるんでしょうが、演技力で年齢の違いを表現しているのも素晴らしい。20年前はまだ若くやる気に満ち溢れている彼らやその周囲の人々が、歳を取って外見や内面が変わったり変わらなかったりという時の流れも心に沁みますね。
 90年代パートでは若者たちも主要人物で、そこで描かれる青春の光と影もすごくいい。そしてその若者たちが物語の重要な鍵になっていきます。僕はそこで出てくる物語のヒロイン女子大生役のリー・ゴンシー(リー・ゲンシー)目当てで観始めたんですよね。去年観た映画『兎たちの暴走』で主演してた子で、そっちは製作が3年前なんでまだまだ子供でしたが、成長してずいぶん大人っぽくなりました。どっちでもやむにやまれぬ事情で犯罪に関わる暗い役を演じてますが、いずれも非常に好演。ちなみにもちろん暗い役ばかりやってるわけではなく、『花咲く合縁奇縁』というラブコメ時代劇ドラマでは明るい役を演じているとのこと。
 まあ、とにかく映画並みの出来の非常に面白いドラマでした。もう日本のドラマは中国ドラマに敵わないかも。ただジャンルの広さではまだ日本に一日の長があると思いますが。

 今季のドラマで1番面白いのは『アイのない恋人たち』。これはすごくいい。あとは『正直不動産2』『院内警察』といったあたりを観ています。『Eye Love You』も脇役で出てた鳴海唯ちゃん目当てで観てみましたが、ドラマ自体が全然趣味じゃないんで早くもリタイア。



#1895 
バラージ 2024/01/31 01:00
戦後から戦前まで

 中国映画『サタデー・フィクション』(原題:蘭心大劇院、英題:Saturday Fiction)を観ました。2019年製作で、もともとは2020年公開予定でしたがコロナ流行で延期となり、中国本国では2021年に、そして日本では去年になってようやく公開された映画です。監督は『シャドウプレイ』のロウ・イエ。
 舞台は日中戦争により“陸の孤島”となった上海租界。1941年12月1日、租界にある劇場「蘭心大劇院」で上演される演劇『サタデー・フィクション』に主演するため、香港にいたスター女優がやってくる。かつて恋人だった左派の監督が呼び寄せたのだ。その一方で女優が上海租界に来たのは実は密輸の罪で日本軍に拘束されている元夫を救うためだというのがもっぱらの噂だった。しかし女優にはフランス亡命政府の凄腕スパイというもう1つの裏の顔があり、実際にはある任務のために呼び寄せられたのであった。そして日本海軍の暗号担当少佐も上海に来て、暗号の変更という重要機密を特務機関員に通告。そこから12月7日までの7日間、フランス、日本、重慶(国民党)、南京(汪兆銘政権)のスパイが入り乱れる激しい諜報戦が上海租界で展開されていく……。
 いやぁ、面白かった。主要人物のほとんどが裏の顔を隠してお互いに接触し(舞台監督だけは裏の顔を持たないが)、またその一方でその裏の顔を見破り、そのまた裏をかく虚々実々の駆け引きが描かれていきます。全編モノクロの映画でロングショットも多いため若干見にくいところもあるし、現実世界と劇中劇の境界線を意図的に曖昧にしているところがあったり、結末付近に解釈の難しい謎の部分も残しているため、きれいにすっきりとわかるタイプの映画ではありません。そもそもロウ・イエだから娯楽映画ではなくアート映画であって、あえて言えば娯楽映画寄りのアート映画というか、アート映画寄りの娯楽映画というか、そんな感じ。
 「歴史」を感じさせる仕掛けも上手く、舞台となる蘭心大劇場は実在の劇場で他にも上海には当時の建築物が多く残されているらしく、それらの場所でロケが行われていることが映画の歴史的臨場感を高めてました。また主人公の逃亡先の候補として劇中では香港やアントワープが挙げられてましたが、後の歴史を知る者にはいずれもやがて日独の手に落ちる場所だということがわかる一方で、劇中の人物たちは当然そのような先の歴史は知らないわけで、そのような先の見えない中で彼らはその時その時を必死に生きていたのだということを強く感じさせる作劇も上手い。
 中欧日の各人物の描き分けも素晴らしく、コン・リー、マーク・チャオ、オダギリジョー、パスカル・グレゴリー、トム・ヴラシア、ホァン・シャンリー、中島歩、ワン・チュアンジュン、チャン・ソンウェンら俳優たちの演技によってそれぞれが血肉を持った人物像になっています。群像劇要素の強い映画ですが、そんな名優たちの中でも登場すると一気に観客の耳目を惹き付ける主演のコン・リーの華というか演技力というか存在感。もちろんロウ・イエの演出力も間違いなくあるんですが、やはりこの人は特別な俳優なんだと思います。デビュー作の『紅いコーリャン』からリアルタイムでずっと彼女を観続けてくることができたのは本当に幸運でした。
 まあ、とにかく面白かったです。やはりロウ・イエは並の監督ではないな。


>DVDで観た映画
『ヒンターラント』
 去年日本公開されたけど地元には来なかった映画。ドイツのドラマ『バビロン・ベルリン』のリヴ・リサ・フリースが出演してるんで、てっきりドイツ映画だと思ってたらオーストリア・ルクセンブルク合作映画でした。
 第一次世界大戦後のオーストリアのウィーンが舞台で、ロシアの捕虜収容所に数年収容された後、ようやく解放されて帰国した兵士が主人公。帰国してみると皇帝は逃亡してオーストリア=ハンガリー帝国は解体され新たにオーストリア共和国となっており、共産主義や無政府主義が台頭して、復員兵はねぎらわれることもなく教会で施しを受ける悲惨な状況下に置かれていた。主人公の家に妻子の姿はなく、主人公は言いようのない喪失感に落ち込む。そんな中、共に帰国した収容所帰りの戦友の殺された遺体が発見される。残忍な拷問の末に殺されたその手口から殺害犯もまた帰還兵であることが推測され、さらに次々と戦友たちが殺されていく。元腕利きの刑事だった主人公は強い無力感に囚われながらも、自らの過去や苦悩と向き合うためにも警察と共に真犯人を探し出そうとする……といったストーリー。
 なかなか面白かったです。とにかく全編に渡って暗い映画で、国家や家族のために戦争に行ったのに敗戦によって悲惨かつ惨めな状況に落とされた人々の姿がこれでもかと描き出されている。もちろん映画の連続殺人事件は最終的に解決するんですが、後の歴史を知る者にはそれでハッピーエンドにはなり得ないことももちろん知っているわけで、あるいはそのようなルサンチマンがオーストリアにおいてもファシズムの台頭となって現れ、やがてナチス・ドイツに併合されていくんだろうかと連想させられました。ドイツでは『バビロン・ベルリン』をはじめ、去年DVDで観た映画『さよなら、ベルリン』など大戦間期を舞台としたドラマや映画が増えているらしいんですが、この映画はそのオーストリア版なのかもしれません。現在のヨーロッパも極右の台頭に揺れてますが、過去のそのような時代を描くことによって現代への警鐘とする意図もあるんでしょう。全編ブルーバックで撮影されたとのことで、CGで作られた街の建物や室内の調度などが歪んだ非現実的な姿をしてるんですが、このあたりは実際の第一次大戦後のドイツ表現主義映画『カリガリ博士』あたりにインスパイアされたものだと思われます。後のナチズムの台頭を予言した映画として有名で、そこにも象徴的な意味合いが込められているのかも。
 そんな陰鬱な映画ですが、主人公に協力する美しい検死医役のリヴ・リサ・フリースが一服の清涼剤。そういや『バビロン・ベルリン』シーズン4が放送されないなあ。早く観たい。

>栄耀映画徒然草
 おお! お久しぶりの更新、お疲れさまです。今回追加された映画で僕が観たのは、『刑事ジョン・ブック 目撃者』『白い巨塔』『君たちはどう生きるか』。リドリー・スコット監督の『ナポレオン』は今一つ食指が動かず、僕も観ていません。
 『君たちはどう生きるか』の感想はすでに#1886で書きましたが、僕はそもそもファンタジーってのは全部きれいに説明のつくもんじゃないと思っているので(その辺が科学的味付けをしているSFとは違う)わかんないとこがあって当然というか、とりあえずそういうのもまるごと受け入れちゃいますね。#1886でも書いたけど、逆にそこに入るまでの現実世界の話がちょっと長い。僕が観に行った映画館は子供がいなかったけど、あんな大人向けの話を延々やられたらファンタジー世界に入る前に子供は絶対飽きて騒ぎ出しちゃうでしょう。
 『刑事ジョン・ブック 目撃者』は確か大学時代(1990年前後)に大学でのビデオ上映会(そういうのがよくあった)で観ました。まあまあ面白かったという記憶はあるものの、内容はほとんど忘れちゃいましたね。そうそう、ヒロインがケリー・マクギリスだったんだ。『トップガン』でスターとなり、当時はジョディ・フォスターとダブル主演した『告発の行方』(1988年。日本公開1989年)が話題になってましたね。ルーカス・ハースも確か当時はリー・トンプソンと共演した映画『さよなら魔法使い』(1988年。日本公開1990年)が公開され、「ロードショー」や「スクリーン」に載ってた記憶があります(僕は未見)。同じ頃に僕が観た映画『ミュージックボックス』(1989年。日本公開1990年。コスタ=ガブラス監督)にも出てたようですがハースの記憶はないなあ。ハースの出演映画で覚えてるのは少年(青年?)に成長してからの『マーズ・アタック!』(1996年。日本公開1997年。ティム・バートン監督)。このブラックジョークなSF映画では登場人物のほとんどが悪趣味に面白おかしく火星人に殺されていくんだけど、ハース演じる内向的で家族からも相手にされない少年が地球を救っちゃうんですよね。ハースは同年に『世界中がアイ・ラヴ・ユー』(ウディ・アレン監督)、『BOYS』にも出演しており、前者は数年前にDVDで観ました(感想は#1713)。『BOYS』はウィノナ・ライダー演じる年上の女性に恋する少年の話で、興味がありつつも未だに観ていません。21世紀に入ってからの出演映画で観たのは『インセプション』(2010年)と『リンカーン』(2012年。日本公開2013年)かな。どっちもあんまりハースの記憶はないけど。ダニー・グローバーが出てたのは全然覚えてませんねえ。やっぱりこの人は『リーサル・ウェポン』シリーズのイメージが強すぎるよなあ。そういや『リーサル・ウェポン5』はどうなったんだろ? 故リチャード・ドナー監督がメル・ギブソンに託したって話だったけど。
 『白い巨塔』も確か大学時代にレンタルビデオで観ました。それとももっと前の中高生時代にNHKかなんかで観たんだったかな? 当時は古い日本映画にもこんな面白いのがあったんだ!と興奮しましたねえ。『水戸黄門』の東野英治郎があんなワルそうな役やってるのも新鮮でしたし、財前の対抗馬に担ぎ出される気弱な教授役の船越英二もハマり役でしたが、この人も個人的イメージは『熱中時代』の校長先生だったんだよな。良心派の里見を演じた田村高廣はほとんど初見でしたが、後に観た映画『海と毒薬』では生体解剖に手を染める医者という真逆の役を演じてます。この映画が山本薩夫のベストなんじゃないかなあ。この後、『忍びの者』『続・忍びの者』『座頭市牢破り』『戦争と人間』三部作、『華麗なる一族』『金環蝕』『不毛地帯』『皇帝のいない八月』と山本監督作を観たけれど、『白い巨塔』を超えるものはありませんでした。僕は原作小説は未読でドラマ化作品も全て未見ですが、それほどわかりにくくは感じなかったですね。山本薩夫の息子で映画プロデューサーの山本洋によると、タイトルバックの後に映る噴門ガンの手術シーンは実際の患者の手術シーンを映したとのこと。患者に許可を得てカメラマンだけが1人入って撮ったそうで、それ以外は人間の内臓と似ている子豚の内臓を使っているそうです。



#1894 
徹夜城(支配人) 2024/01/28 22:36
徒然草を実に久々に更新

いやぁ、気が付いたら四年ぶりくらいらしい(汗)。
栄耀映画徒然草に先ほど8本の追加を行いました。去年からぽつぽつと書いてたやつです。一部にかなり前のもあるんですが。
なるべく映画を何か見たら書くようにはしよう、と去年に思いたちはしたんですが、実行というのはなかなか大変でありまして。
去年見た映画では「ゴジラ-1.0」とか「首」とかの文章はまだ書いてなかったりします、。「ナポレオン」は見損ねてしまった。



#1893 
バラージ 2023/12/30 20:19
うーん

 スマホを変えたら、スマホで入力した「〜」が文字化けするようになっちゃったなあ。波ダッシュと全角チルダが同じ文字になっちゃってる。



#1892 
バラージ 2023/12/30 20:09
始まりのウォン・カーウァイ

 「ウォン・カーウァイ ザ・ビギニング」と銘打たれた香港のウォン・カーウァイ監督の初期作品特集で上映された監督デビュー作の『いますぐ抱きしめたい』と第2作『欲望の翼』の4Kレストア版を観ました。ま、観た映画館では4Kではなく2Kにコンバートしたバージョンだったようですが別にそれはいいんです。
 以前も書きましたが、僕の好きな映画ベスト5に入る『欲望の翼』は1992年日本公開。しかし当時住んでた街や実家のある地元には来ず、レンタル店にもなぜか置かれず、1995年に日本公開された『恋する惑星』がビデオ化された時に低価格再発売されたビデオがレンタル店に置かれてようやく観ることができました。その後、地元の映画館で初上映された時に2回観に行ったんですが、なぜか2度とも途中で寝てしまい映画館では観れていないんですよね。なので1度は映画館で観てリベンジしたかったんです。そんなわけで目当ては『欲望の翼』だったんですが、せっかくだから『いますぐ抱きしめたい』(1991年日本公開でやはり当時住んでた街には来ず、『欲望の翼』より後にビデオで観た)のほうも観ちゃおうと思い立ち、今回はちゃんと眠らずに2本とも観ることができたのでした。良かった(笑)。

 『いますぐ抱きしめたい』は最初にビデオで観た時(『恋する惑星』『欲望の翼』『天使の涙』『楽園の瑕(きず)』よりも後)に、後のウォン・カーウァイの作風と違って普通の平凡な香港ノワール映画だな〜と思った記憶があります。いわゆるチンピラ映画で正直言ってそれほど面白くありません。映像感覚や音楽センスにところどころ後のウォン・カーウァイらしさが垣間見えるものの肝心のストーリーがきわめて平凡で、きっちりとしたストーリーを脚本通りに撮っていく普通の映画なんですよね。後に脚本家出身でありながら脚本を完全無視して即興的なシーンを延々(時には数年かけて)撮って、それを編集でつないでいくという手法を取るようになる人の映画だとは到底思えない。おそらくカーウァイ自身も撮っていていまいちしっくりこないというか、あまり面白くなかったんじゃないかなぁ? だからこそ次作から作風──というより製作のしかたそのものを自分のやりたいように大幅に転換したんでしょう。
 『欲望の翼』では映画の文法そのものを大幅に解体し、脚本を無視した明確な起承転結を持たない構成、説明描写よりも作品の空気や雰囲気を重視して観客の想像に委ねるスタイル、撮影のクリストファー・ドイルによるスタイリッシュな映像、マヌエル・プイグや村上春樹などの文学作品から影響を受けた詩的なモノローグとラテン音楽の多用、誰もが誰かに片想いという恋愛群像劇など、カーウァイ独自の作風がこの第2作で確立しています。これは前作からですが、レスリー・チャン、マギー・チャン、カリーナ・ラウ、アンディ・ラウ、ジャッキー・チュン、トニー・レオンなどといった大スターの共演も後々まで続くカーウァイ映画の特徴ですね。
 やはり今回また観てもすごく良かった。『いますぐ抱きしめたい』も出来自体はそれほどではないものの、あの頃の平均的香港映画としてとても懐かしく感じましたし、『いますぐ〜』『欲望の翼』と続けて観ることで、カーウァイの作風の劇的変化をより鮮明に感じることができました。大満足です。
 『欲望の翼』はパンフレットだけでなく、4K版新作ポスターも売ってて(『いますぐ抱きしめたい』のも売ってた)、おお!カッケー!と嬉しさのあまりめちゃくちゃテンション上がって、しっかり買ってしまいました。

 なお、邦題の『いますぐ抱きしめたい』『欲望の翼』は原題とも英題とも全く異なる(『いますぐ〜』は原題:旺角●門〈●は上と下を縦に組み合わせたような漢字〉、英題:As Tears Go By。『欲望〜』は原題:阿飛正傳、英題:Days of Being Wild)ばかりか、実は内容ともあんまり関係ありません(笑)。でも僕はタイトルなんてそれでいいと思うんです。なんとなくカッコよくてオッ⁉と耳目を引くタイトルであればそれでいい。逆に原題(や英題)に忠実だったり内容をよく表していてもタイトルとしてはいまいちっていう邦題もありますしね。ウォン・カーウァイの初期映画には他にも原題とも英題とも全く異なる名邦題が多く、『恋する惑星』(重慶森林、Chungking Express)、『楽園の瑕』(東邪西毒、Ashes of Time)、『天使の涙』(堕落天使、Fallen Angels)、『ブエノスアイレス』(春光乍洩、Happy Together)といずれも傑作邦題ぞろいです。今はなき配給会社プレノンアッシュの功績でしょう。プレノンアッシュがつぶれた後の他社による邦題は『花様年華』『2046』『マイ・ブルーベリー・ナイツ』『グランド・マスター』と原題か英題そのままばっかりでどうもいまいちなんですよねえ。


>翔んで関西
 『翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて』を観ました。いやぁ、今回も壮大にバカバカしくてくだらなくて面白かった。笑わせていただしました。
 今回の舞台は関西。タイトルから滋賀がフィーチャーされるんだろうと思いきや、確かに滋賀も大きく取り上げられているものの、むしろ印象に残るのは悪役である大阪のコテコテっぷり。やっぱり大阪のほうがキャラが立っててネタにしやすいんでしょうね。特に大阪府知事役の片岡愛之助が、神戸市長役の奥さん藤原紀香、京都市長役の川ア麻世ともどもに怪演です。それに比べると滋賀はメインに据えられながらどうも今一つ印象が薄い。琵琶湖と「とび太」だけなんだもんなあ。ひこにゃんは公式キャラクターだからか台詞で触れられるだけで登場しないし。さらに和歌山は白浜海岸とパンダだけ、奈良にいたっては鹿だけでほんのちょっと、神戸以外の兵庫は出てこず、三重は関西を離れ中部に行ってしまったと台詞で触れられるのみです。まあ前作でも茨城と栃木はほとんど出てこなかったんですけどね。
 今回、関西に向かうのはGACKTのみで二階堂ふみはなぜか埼玉でお留守番役で出番が少ない。一応、埼玉でもなんだかんだ事件が並行して起こるんでそれなりに出番はあるんですが、GACKTとはほぼ別撮り。なんで?と不思議に思ったんですが、そういやと思い出したのは多分GACKTの病気で撮影が1年以上延期されたんで二階堂さんがモンゴルに行った『VIVANT』と撮影時期がかぶったんではなかろうかと。前作の千葉解放戦線リーダー(演じてたのは伊勢谷友介)の不在もしっかりネタにされててちょっと笑いましたね。そういうアクシデントも笑いに変えられるのがこの映画の強みというかなんというか。
 ただ面白いことは面白かったんだけど、さすがにこのシリーズはこれで打ち止めかなあ。関東と関西をやっちゃったらあとはやるとこないでしょう。次は九州なんて言う人もいるようだけどどうなんだろ? 埼玉や大阪があれだけネタというかコケにされても笑ってられるのは現実には大都会だからだろうし。

>録画で観た映画
『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』
 児童文学で著名なエーリヒ・ケストナーの唯一の大人向け長編小説『ファビアン あるモラリストの生涯』を映画化したドイツ映画。原作は1931年の作品で、映画も原作通り1931年が舞台となっています。出版社をクビになった作家志望の青年ヤコブ・ファビアンの青春の彷徨を描いたヒューマンドラマというか青春映画で、第一次大戦の敗戦で巨額の負債を抱えながらも空前の繁栄を迎えた狂乱の20年代が大恐慌で終わり、深刻な不況に陥って間もなくナチスが台頭するドイツ・ワイマール共和国時代を舞台に、ファビアンと女優志望の女性との出会いと恋、共産主義に傾倒する唯一の親友の死などが描かれていきます。ワイマール時代を舞台としたドラマ『バビロン・ベルリン』がすごく面白かったんで、同じ時代が舞台ってことで興味があって観たんですが、こっちは原作が同時代のものなんでナチスの台頭など歴史的事象はあくまでほのめかす程度で、青春の日々の彷徨と挫折と焦慮といったものが主題。なんとなく80年代バブル時代を描いた名作『ブライト・ライツ、ビッグ・シティ』にも似た作品でした。いつの時代でも若者の苦悩や当惑は同じなんだなあと思ったりして。3時間弱の長さで、やや前衛的な表現も見られるんでちょっと取っつきにくいところもありますが、まあまあ面白かったです。主演のトム・シリングは数年前の『コーヒーをめぐる冒険』に主演してたと知って、ああ、そういえばと思い出しました。ヒロイン役のザスキア・ローゼンダールもなかなかに美人で魅力的。ヌードになって美しい微乳も見せてくれます。10年前の『さよなら、アドルフ』に主演してた子で、『バビロン・ベルリン』にも脇役で出てたと知り、あ〜あの子か、同一人物だったんだとこれまた感慨深かったですね。脇役で出てたメレット・ベッカーという女優も『バビロン・ベルリン』に出てる人でした。
 そういや『バビロン・ベルリン』シーズン4は日本に来ないなあ。てっきりBS12でプロ野球のシーズンオフに放送すると思ってたのに。

>テレビドラマの話
 今季観てたドラマの『時をかけるな、恋人たち』『あたりのキッチン!』『セクシー田中さん』が終了。先月末には『たそがれ優作』も終わっています。どれも面白かった。『時をかけるな、恋人たち』はタイムトラベル×恋愛の脱力系ラブコメディ、『あたりのキッチン』は絶対味覚を持つコミュ力ゼロ女子大生のほんわか成長ドラマ、『セクシー田中さん』は『Shall We ダンス?』風味のベリーダンス上級者アラフォーOLドラマ、『たそがれ優作』はバツイチ中年脇役俳優の日常と酒と肴の哀愁ドラマ。『時をかけるな〜』『あたり〜』は悪い人が1人も出てこない、『あたり〜』『セクシー〜』は超内向的な主人公という共通点があり、それが今の流行りなのかも。
 僕は中でも特に『あたりのキッチン!』がすごく良かったですねえ。桜田ひよりちゃん演じる主人公が超絶良い。めちゃくちゃ感情移入してしまいました。ひよりちゃんは子役あがりだけあって演技派ですな。定食屋の主人役の渡部篤郎も好演。友達役の工藤美桜ちゃんも可愛かった。あと窪塚洋介の息子の窪塚愛流が渡部の息子役で出てました。


 今年の映画ベスト3は、『恋は光』『アイスクリームフィーバー』『兎たちの暴走』でした(『欲望の翼』4Kレストア版や『エドワード・ヤンの恋愛時代』4Kレストア版は実質リバイバルなんで除外)。では、また来年。



#1891 
バラージ 2023/12/16 21:52
暗い地平のわずかな光

>録画で観た映画
『マイスモールランド』
 去年公開された日本・フランス合作映画。地元でも確か公開されたと思うんですが、なんとなく観逃してしまいました。テレビ版もNHKで放送されたらしいけどそれも観ていません。
 埼玉に住むクルド人の女子高生が主人公。幼い頃に政治的弾圧を逃れて父・妹・弟と来日し、それ以来日本で育ってきた。流暢な日本語を話し、同世代の日本人と変わらぬ生活を送り、高校には2人の親友もいる。クルド人であることを忘れないようにと強制する父に反発しながら、進学資金のために東京のコンビニでバイトもし、そこでいっしょにバイトする店長の甥で東京の高校に通う男子高生と惹かれ合いデートのようなものを重ねる。だがある日、主人公ら家族の難民申請が不認定となり、ビザが没収され在留資格が失われる。それは居住する埼玉から出られなくなり就労もできなくなることを意味した。やがて父が不法就労で入国管理局に収監され、主人公もバイトをクビになり彼女は徐々に追いつめられていく……。
 とてもいい映画でした。非常に重いテーマを扱いながら、女子高生を主人公とすることで社会派ヒューマンドラマだけではない一種の青春映画としても描いており、それが観る人の感情をより強く揺さぶる映画にしてましたね。そして映画初出演にして主演を務めた嵐莉菜ちゃんが素晴らしい。『ViVi』で専属モデルを務めており、本名はリナ・カーフィザデー。父がイラク・ロシアにもルーツを持つ日本国籍を取得した元イラン人、母が日本人とドイツ人のハーフというミックス(昔で言う混血)で、本人は日本生まれ日本育ちとのこと。初演技とは思えない好演でした。父・妹・弟役を演じてるのも彼女の実の父・妹・弟だそうでびっくり。みんなそろって好演です。当初は実際のクルド人を起用することを考えていたそうですが、かえって彼らに不利益になる危険性を考えて断念し、オーディションで嵐さんが選ばれたそうです。
 川和田恵真監督もイギリス人の父と日本人の母を持つハーフで、是枝裕和監督の率いる映像制作者集団「分福」に所属する30歳の女性とのこと。やはりこれが初監督だそうで、初監督でこれだけの映画が作れるのはすごい。多層的な問題を含めて描いているのが印象的で、取材した実際の埼玉在住クルド人や監督自身の体験や心情が反映されているとのこと。終盤は胸が締めつけられるような展開になっていきますが、あのひどいヴィシュマさんの死の事件もちょっと思い出されました。結局こういう問題は我々1人1人がもっともっと考えていかなければいけないことなんでしょう。


>またもレンタルVHSで観た懐かし映画&映画的PV
『愛と青春の鼓動』
 1990年の米国映画。DVD化されてなくて、またもネットでVHSをレンタルしました。医者を目指す5人の医学部3年生のインターンの男女を描いた青春群像劇で、原題は『Vital Signs』。邦題はちょっとなあ。日本ではダイアン・レインを前面に押し出して公開したようですが、トップクレジットはエイドリアン・パスダーでダイアン・レインは2番手。とはいえあくまで5人の学生を均等に描いた群像劇で、医療ものとしても青春群像劇としてもよくできててなかなか面白かったです。この映画のダイアン・レインは非常に美しく魅力的で、やっぱり彼女は知的で等身大な役のほうが似合ってますね。あと指導医役の俳優がドラマ『L.A.LAW 7人の弁護士』のジミー・スミッツでなんだか懐かしかったです。

『マンハッタン・ラブ 女と男のいい関係』
 1991年の米国映画。これもDVD化されてなくて、ネットのVHSレンタルで観賞。ニューヨークを舞台に、世代もそれまでの人生も職業も所得も生活レベルも異なる3組の夫婦が、とある偶然から知り合い交流を深める中で、それぞれの夫婦が危機を迎え、やがて新たな夫婦関係を見いだしていくまでを描いたドラマ映画です。原題は『Married to it』なんですが、ビデオスルーだったためか絶妙にダサい邦題に。好きな女優のメアリー・スチュアート・マスターソンが主演の1人として出てるから観たんですが、主演6人の役者がいずれも上手く、人物像もきちんと描かれていてなかなか面白かったです。子役の子も子供子供してなくて、ちゃんと1人の人間として描かれてるのも良い。ラストでその女の子が小学校(中学校?)の演し物で歌う歌が上手くて、ちょっと感動しました。あと、僕はメアリー・スチュアート・マスターソンがやっぱり好きなんだなぁと再確認した次第。

『kiss off』
 1986年の村上里佳子(現・RIKACO)のプロモーションビデオで、監督は市川準。CM以外では最初の市川の映像作品です(映画デビュー作『BU・SU』は翌1987年)。やはりDVD化されてなくて、ネットVHSレンタルで市川準を検索したらレンタルされてるのを発見しました。45分の作品でプロモーションビデオというよりも短編映画のオムニバスに近く、里佳子主演の各短編の間に彼女へのインタビューが挟まれるという構成。市川も初映像作品への気負いがあったのかやや実験的な作風で、市川も若い頃はとがってるところがあったんだなあと思わせます。短編集だけにやや散漫な印象なんですが、雨の街のシーンはなんか80年代のあの頃を思い出させてくれてなかなか良かった。また、その後も何度か市川と組むことになるイッセー尾形が里佳子と絡む短編はやはり面白くて、ずっと観ていられます(その短編だけやたら長い)。ラストのあたりで里佳子のトップレスシーンがあり、ちょっとびっくりするんですが、それも里佳子らしいというか、あんまり性的な感じはしません(色っぽいとかセクシーという感じではない)。吉本ばななはこの作品が大好きで、市川から『TUGUMI』の映画化を申し込まれた時に即諾したのはそのためだったとのこと。

『漂流姫(ひょうりゅうき)』
 やはり1986年の斉藤由貴のプロモーションビデオで、監督は市川準。こちらはDVD化されてるんですが、すでに絶版で中古もとんでもないプレミアがついてます。やはりネットVHSレンタルにあったんでレンタルしました。46分の作品ですが、『kiss off』よりもぐっと洗練されてて、もはやプロモーションビデオというより中編映画と言っていい作品。何しろ半分くらいは斉藤由貴が出ていないシーンですからね。日本政府によって斉藤由貴禁止令が出され、香港に逃れた斉藤を追ってファンや殺し屋やボディーガードが彼女の行方を探すというメタフィクション的なストーリーで、ほぼ全編香港ロケが行われており、市川準作品にしては珍しく銃撃戦などのアクション・シーンもあります。何よりすごいのは斉藤が最後まで台詞を一言も言わないこと。1シーンだけ、ワーッと泣き叫ぶシーンがあるだけです。香港が舞台とはいえやはり何か懐かしいあの頃が感じられる作品で、なかなか面白かったですね。そしてこの頃の斉藤由貴はやはり超絶可愛いということも改めて認識させられました。



#1890 
バラージ 2023/12/07 22:47
三丁目のゴジラ 永遠の−1.0

 今アクシデンタルに忙しいんですが、スケジュールを縫って『ゴジラ−1.0』を観てきました。うーん、残念ながら僕は大変不満です。
 まずVFX(特撮)はすごい。ゴジラの放射能熱線で東京の街が吹っ飛ぶところとか、重巡高雄とゴジラの戦いなんかは着ぐるみでは表現できないものでしょう。高雄の他にも駆逐艦雪風とか幻の戦闘機震電とかミリタリー・マニアの心をくすぐるようなネタが多く、山崎貴監督(脚本も単独)もかなりのミリタリー・マニアなんではないかと思われます。
 その一方で肝心のドラマ部分というかストーリー部分については不満が多い。テレビCMで第1作と同時代の戦後間もなくを舞台としたゴジラ初の時代劇だとなんとなくはわかったんですが、なんと第1作の1954年よりも前の1947年が舞台でした。そのため第1作とも微妙に状況が異なり、まだ自衛隊の前身の警察予備隊も発足しておらず、GHQが日本の占領政策を行っていた時代となります(GHQの廃止が1952年。警察予備隊の発足は1950年で保安隊への改称が1952年、自衛隊への改称が1954年)。ところが非常に不自然かつ無理やりな理由でGHQがゴジラに全く対処せず、軍備を持たない日本政府も民間に丸投げ。じゃあGHQや日本政府がゴジラのやってくる東京から、あるいは日本から逃げ出すのかというと特にそういう描写もないため、彼らは頼りになりそうもない民間人に丸投げしなからゴジラが来る東京でただじっと待つということになり、不自然きわまりない展開になっています。普通に考えればGHQが米軍を動かしてゴジラに対処するでしょう。もちろんそれでは米国人が主役になってしまうためできなかったんでしょうが、あまりにご都合主義な展開です。山崎監督は『シン・ゴジラ』があまりにも完璧な出来だったんで現代や近未来を舞台にしたものは作れないと考えて舞台を第1作に近い昔に設定したらしく、また「コロナ禍の時代を経験して、その間の“官”の対応ぶりに不信感が生じ、その実感から自分たちの問題は自分たちで解決するという民間人のドラマにした方が、今の時代の空気に合っていると思った」とのことですが、完全に裏目に出てしまったようです。
 また主人公たち市井の人々の物語とゴジラとの関係性があまりに希薄なのもどうかと。前半は主人公とヒロインと周囲の人々の人情話みたいなのが延々描かれるんですが、基本ゴジラはそこに関係がないのでゴジラ映画なのにゴジラが蚊帳の外に置かれたような描写がわりに長い。そもそもこの映画、ゴジラの立ち位置というか位置付けがいまいちはっきりしません。1作目のゴジラは“戦争の象徴”とか“核の象徴”ともいうべき存在でしたが、本作ではそういう雰囲気は希薄。むしろ主人公たちがゴジラに立ち向かう行為が疑似戦争として描かれてますし、水爆実験でゴジラが生まれるのは踏襲してるもののただそれだけで、人々は誰も核兵器に言及しないしそもそも核にも放射能にも無頓着というか無関心に見えます。ゴジラがなぜ生まれたかにも人々はほとんど関心を示しません。だいたいにして主人公とゴジラの最初の因縁がゴジラが放射能を浴びる前の恐竜?段階だから、本作のゴジラは単なる“恐怖の象徴”でしかなく、それ以上でもそれ以下でもない。要するにすっげえ怪物が出たというただそれだけなので、あれだけ大暴れしてるわりにゴジラの存在感が薄く、ほとんど脇役でしかないんですよね。怪獣映画はドラマ部分が薄くなるという弱点があるんでそこに力を入れたんでしょうが、逆に肝心の怪獣が薄くなるという皮肉な結果になってしまいました。
 登場人物に悪人や嫌なやつが1人もいないというのもなあ。焼け跡の闇市にも悪いやつが1人も出てこず、ヒロインは縁もゆかりも無い赤ん坊を育て、主人公もその縁もゆかりも無い2人を養い……なんて、いくらなんでもあの戦後の混乱期にそんな美談は嘘くさすぎる。『三丁目の夕日』じゃないんだから。いや『三丁目の夕日』でも原作マンガでは確か悪いやつが出てきたはずだし。
 死に遅れた特攻隊の生き残りが再び戦うというのもどこかで何度も観たような展開ですが(『ゴジラの逆襲』もそうじゃなかったかな)、主人公ばかりでなく旧日本海軍の元軍人たちが旧日本軍の兵器でゴジラと戦うという展開なので、戦争中の指導者を批判して戦前戦中との決別を謳っていながら、同時に元日本軍のリベンジマッチのようにも見えてしまうというのもどうにも引っかかりました。こうすれば太平洋戦争に勝てたというif小説の感覚に近いと言いますか。そしてこれは当然のことかもしれませんが、多くの日本の戦争映画と同じく日本による加害の側面は全く抜け落ちています。戦中日本の兵の命を省みない無謀な作戦を批判して、対ゴジラで1人も死なせない作戦を取ると言いながら、その作戦は無謀そのもので特攻めいてるのも矛盾してるし、それでいて結果的に1人も死なないというのもあまりにご都合主義で、平和ボケした頭がお花畑の戦争映画みたいになっているのもかなりどうかと思う。そもそも1人も死なない戦争なんてありえないわけで、それ自体がきれいごとというかなんというか。
 他にも重巡1隻と駆逐艦4隻と民間船だけで倒せるんならゴジラそんなに強くねーんじゃねーかとか、これは確信犯だろうけどゴジラがくわえた電車から落ちそうになったヒロインが『ミッション・インポッシブル』のイーサン・ハント完コピのアクションを披露するのは笑っちまったとか、いろいろと不満あり。何やら世間や米国では大ウケのようですが僕はダメでした。ま、いいや。僕はゴジラよりウルトラマン派だし。


>録画で観た映画
『地球防衛軍』
 1957年の日本映画。『ラドン』と『モスラ』の間に作られたカラー映画で『ゴジラ』からは3年後。ソ連の人工衛星スプートニク打ち上げの年だったんですね。円谷英二の特撮がとにかくものすごく、セットの壮大さとか近未来兵器のデザイン(特にロボットのモゲラとパラボラ光線砲マーカライト・ファープが秀逸)とか発足して間もない自衛隊全面協力による戦闘シーンとかそっち方面の見所はあるんですが、これも肝心のお話のほうがなあ。宇宙人が攻めてきて地球人がそれを撃退するだけという寄り道のほとんどない単純きわまりないストーリーのわりには、細かいツッコミどころが満載。地球人はやたら無警戒に危険なところに近づくし、かと思えば人質取られてんのに宇宙人と交渉もへったくれもなく攻撃を仕掛けるし(イスラエルかよ!)、宇宙人の側も行動や作戦に一貫性がなく支離滅裂。戦闘も終始優勢だった宇宙人が突然あっけなくやられちゃうし、序盤で宇宙人側へと裏切る地球人科学者の理由も最後までよくわかりませんでした。登場人物それぞれのキャラクターもほぼないに等しく、ストーリーにところどころ挟まれる小ネタも消化不良。このあたりがしっかり描かれるのは60年代の『怪獣大戦争』やテレビ『ウルトラマン』まで待たなければならないのであった。あと、これは仕方のないことだけど、ド田舎の茅葺き屋根だの盆踊りだのといった当時の日本の伝統文化と近未来的なSF部分とのミスマッチぶりが、今になって観るとすげえ違和感。カラーということもあってかモノクロの『ゴジラ』よりも(あるいは小津や成瀬よりも)よっぽど古臭く感じましたね。無意味に女性の入浴シーンがあったりするのは観客へのサービスなのか?(日本的奥ゆかしさなのかずいぶんおとなしめな肌露出ですが) とはいえ特撮の素晴らしさがストーリーのつまらなさを補って余りあるのも確かで、1時間半弱という短さもあってそれなりに退屈せずに観ることはできました。空飛ぶ円盤とインベーダーの恐怖みたいなのも当時の時代を感じましたね。僕の子供時代にもまだギリギリそういうのがありました。ただ映画館まで行って観るかと言われるとやっぱり微妙かなぁ。



#1889 
バラージ 2023/10/30 20:21
母を求める少女

 『兎たちの暴走』(原題:兔子暴力、英題:Old Town Girls)という中国映画を観ました。
 中国四川省の寂れた工業都市が舞台。父親と継母、幼い異母弟と暮らす高校生の少女は継母に疎まれ家に居場所がない。産まれたばかりの自分を捨てて都会の成都に出ていった実母の色褪せた小さな写真を隠し持ち心の慰めとしていた。学校では、両親が不仲で家に不在がちな金持ちのわがまま少女や、過干渉で暴力を振るう父との貧しい父子家庭の広告モデル少女が友人だ。そんなある日、主人公の実母が突然街に戻ってくる。初めて会う母は憧れていた通りの美しく魅力的な女性で、主人公は彼女にどんどん惹かれていく。だが母の帰郷の裏にはある事情が隠されていた。主人公はやがて母の窮地を知り、彼女を救うために友人の誘拐という凶行に走る……。
 いやぁ、面白かった。どこまでも純粋に母を求める少女の孤独が、犯罪をも辞さぬ悲劇へと落ち込んでいく姿が哀しくも愛しい。女性監督のシェン・ユエという人はこれがデビュー作だそうで、1作目からすごい映画を撮るもんです。実際にあった事件にインスパイアされて脚本を書いたとのこと。
 野暮ったいロングヘアを母の手で短く切ってもらってからみるみる可愛くなっていく主人公。元ダンサーの母親が高校で同級生たちに文化祭の出し物のダンスのイロハを教えて生徒たちを魅了する時の主人公の何とも言えぬ誇らしげな表情。トンネルの闇の中で友人2人と母とでそれぞれ何かを告白することになった時、隣にいる母を意識しながらトンネルの奥に向けて「あなたのためなら何だってする!」と叫ぶ主人公。その主人公を演じる若手女優リー・ゲンシーが本当に素晴らしい。11月からWOWOWで始まるドラマ『ロング・シーズン 長く遠い殺人』にも出るようだからこれは要チェックだな。
 そして個人的お目当ての母親役を演じるお気に入り女優ワン・チェン(レジーナ・ワン)。1歳の娘を捨てて出ていった16年前から何一つ成長していない少女のまま大人になったような女性、自分本位のようでいてそれでも娘を愛してるような矛盾の塊という難役をこれまた見事に好演してました。さすがは演技派。
 とにかくとても良かった。これもBlu-ray(もしくはDVD)出たら買おっと。


>ホウ・シャオシェン引退……
 台湾映画の巨匠ホウ・シャオシェン監督が引退というニュースがホウ監督の家族から正式発表されました。アルツハイマーを発症しており、それでも次回作の準備をしていたそうですが、コロナにもかかって後遺症があったため一時仕事を休止。そっちは良くなったものの、ついに引退とのことです。歳を取ってくるとこういう寂しいニュースが多くなりますね……。ブルース・ウィリスもアルツハイマーで引退したし。
 ホウ・シャオシェンの映画を初めて観たのは大学時代の『恋恋風塵』。中国のチャン・イーモウ監督ともまた違った長回しの作風が非常に印象的な傑作でした。続いて『悲情城市』も公開され、さらに『冬冬(トントン)の夏休み』『風櫃(フンクイ)の少年』『ナイルの娘』と過去作も順次公開されました。どれも面白かったですね。いや懐かしい。大学卒業後も日本で最初に公開された『童年往事 時の流れ』をテレビ放送で視聴した他、『戯夢人生』『好男好女』『憂鬱な楽園』『フラワーズ・オブ・シャンハイ』『ミレニアム・マンボ』『珈琲時光』『百年恋歌』と日本公開作はほとんど観ましたが、地元ではなぜか『好男好女』以降はなかなか劇場公開されなくなってしまい、DVD視聴ばかりになってしまいました。
 結局、2015年の『黒衣の刺客』が最後の監督映画になってしまったな。地元の映画館に1年ほどリクエストを出し続けて、DVD化1週間前にようやく公開されたんですよね。これまた傑作でした。Blu-rayも買って何度か観返しております。

 一方、東京国際映画祭に来日し、特別功労賞を受賞したチャン・イーモウはまだまだ元気。上映された新作『満江紅(マンジャンホン)』も好評のようで、早く劇場公開してくれ。
 東京国際映画祭では『TOKYO POP 4Kデジタルリマスター版』も上映されたとのこと。な、懐かしい。若い米国人女性の目から見た不思議の国ニッポンを描いた先駆的作品で、バブル前夜1988年の日米合作映画ですが製作会社の倒産によりソフト化もされなかったらしい。僕も大学生の頃からその存在は知ってましたが、観てはいないんですよね。主人公と恋に落ちるミュージシャン志望の青年を演じてるのが、当時売り出し中だったRED WARRIORSの田所豊、現ダイアモンド☆ユカイというのはわりと有名な話。



#1888 
バラージ 2023/10/26 20:25
最近観た映画いろいろ

>映画館で観た映画
『春画先生』
 平凡で退屈な毎日を送る喫茶店バイトのヒロインが、妻を亡くして以来ライフワークの春画研究に没頭する“春画先生”と呼ばれる変人研究者と出会い、春画と“春画先生”に魅せられていく風変わりな恋愛映画。ヒロイン役の北香那ちゃんがヌードになってるという噂を聞きつけて興味を持った映画です。まあまあ面白かったかな。予告編などではコメディと謳ってますが、むしろ恋愛映画と言ったほうがいいでしょう。確かにある意味変な人たちのおかしな話ではあるんですが、ゲラゲラ笑えるような映画ではなく、せいぜいフフンとかクスリとか笑えるかな?といった程度。ただ話の入りが強引かつ唐突で、ヒロインがなぜ春画や変人の“春画先生”に惹かれたのかがいまいちよくわからない。それでも話が進むうちに物語に引き込まれて、そのあたりはまあいいやとなるんですが、前半はちゃんと春画の話をやってるものの、後半どんどん春画の比重が軽くなっていき、クライマックスでは完全に春画と関係ない話になってしまう(笑)。まあ個人的には映画として面白いから別にいいんだけど、これは決して春画についての映画ではなく“春画先生”という変人、いや変態の映画ですな。恋愛映画というか変態恋愛映画。別に変態映画でもいいんですが、残念ながら僕が興味ないタイプの変態なんだよなあ。なのでいまいち感情移入できませんでした。塩田明彦監督って名前を聞いたことあるなと思って調べたら、喜国雅彦のマンガ『月光の囁き』を映画化した人だったんですね。そっちは観てないし原作マンガもチラッとしか読んでないけど、あれもかなりの変態恋愛マンガだったような。
 北香那ちゃんのヌードは大変美しゅうございました。事の最中ではなく翌朝にさらっと見せてるんですが、それが監督の狙いだったらしい。ただ、決して演技の下手な子ではないんですが、今回は主演の内野聖陽をはじめ、柄本佑、安達祐実と芸達者な人たちに囲まれ、しかもそれぞれがハマり役を演じているため、彼女だけ芝居が少々一本調子に見えてしまうのがちょっと残念なところ(役どころのせいもあるかもしれませんが)。

『ゆとりですがなにか インターナショナル』
 宮藤官九郎が脚本を手がけたテレビドラマ『ゆとりですがなにか』の劇場版。2016年の連続ドラマ放送後、2017年にスペシャルドラマ放送およびスピンオフのHulu配信がされ、そこから実に6年も経ってからの劇場版です。僕は連ドラ&スペシャルは観ましたが配信は未見。テレビドラマは、ゆとり世代と呼ばれるアラサー男子たち(当時)の人生や恋愛・結婚などの奮闘を社会背景を交えてコミカルなテイストで描いたヒューマンドラマで、主演は岡田将生・松坂桃李・柳楽優弥。共演が安藤サクラ・仲野太賀・吉岡里帆・島崎遥香・中田喜子・吉田鋼太郎など。映画はドラマから6〜7年の月日が経ち30代半ばを迎え、Z世代の登場など怒濤のように押し寄せる新たな時代への変革と対峙しなければならなくなった彼らの相も変わらぬ奮闘ぶりを描いています。
 テレビドラマは面白かったんですが、ドラマの劇場版はいまいちのことが多いんで期待しすぎないようにと思いつつも、やっぱりちょっとは期待してたんですが、うーん残念ながらやっぱり……といったところ。まず第一に脚本や演出がいちいちテレビドラマっぽくて映画っぽくありません。なので単に映画館のスクリーンでテレビドラマを観てるような気分になってしまい、これならテレビのスペシャル版で良かったじゃんというお馴染みの結論に達してしまうんですよね。エピソードがぶつ切りの構成で社会事象や時代の問題意識を多数盛り込みすぎて結局それぞれが浅くて薄い描写になっちゃってるとか、出演者たちが今やみんな売れっ子になってスケジュール調整が困難をきわめたのか多数の人物が出てくる群像劇なのにそれぞれが順番にかわりばんこに出てきて相互の関係性が希薄とか、ギャグというか笑いの部分もことごとくスベってるとか、他にもいろいろと問題点が多い。タイトルに「インターナショナル」と入ってるだけあって外国人がいっぱい出てくるんですが、韓国人ビジネスウーマンの役が木南晴夏ってのもなあ。木南さん自体はすごく好演だったけど、木南さんはどこまで行っても日本人なわけだし、いくら韓国人を好演していても観てて(でもあんた日本人じゃん!)とどうしても思ってしまうのは仕方ない。ちゃんと韓国女優をキャスティングしてほしかったところですが、この映画の外国人描写(に限ったことではなく登場人物や社会事象全体に言えるが)にはコメディという性質もあってか誇張とステレオタイプが見られるので本物の韓国人女優を使うのはためらわれたのかもしれません。でもユンソナを使った『木更津キャッツアイ』にはそういうとこなかったんだけどなあ。その他の外国人出演者が厚切りジェイソンと稲川素子事務所の皆さんというのも仕方ないこととはいえ甚だ貧乏くさい。ちなみに企画が立ち上がった当初(コロナ前)は海外ロケとかも検討してたらしいんですが、コロナと金銭面であきらめたとのこと。
 全体的にはつまらない映画ではなくそれなりには面白かったんですが、やはり期待したほどではなかったですね。やっぱり演劇人クドカンは映画とは相性が悪いのかなあ。個人的には限定空間の芸術である演劇と開放空間の芸術である映画って実は対極的な芸術だと思ってるんで。

>録画で観た映画
『偽りのないhappy end』
 一昨年公開された日本映画。つい先日の『どうする家康』で注目した鳴海唯ちゃんを調べたら、この映画で主演してることを知り、観たいなと思ったらちょうどWOWOWで放送されました。ナイス・タイミング。しかし公式サイトを見たら地元でも今年3月に公開されてました。ハハハ。くそう。中学卒業以来故郷の滋賀を離れ、東京で暮らす20代の女性が主人公。3年前に母が死んだ後も主人公の誘いを拒み1人滋賀で暮らしていた妹がなぜか突然変心して東京に出てくるが、すぐに妹はどこかへと姿を消してしまう。妹を探す主人公はまだ残る滋賀の実家を訪れ、そこで同じように行方不明の妹を探す同年代の女性と出会う。そこから事態は思わぬ方向に向かい、妹や主人公の意外な事実が明らかにされていき……というストーリー。ポスターデザインやあらすじから暗い映画なことは予想してましたが、これはいくらなんでも救いのないバッドエンドすぎる。タイトルも予感はしてたけど安易なハッピーエンドを否定するという隠喩なんでしょう。決して出来の悪い映画ではないし、暗い映画も個人的には嫌いではありませんが、ここまでバッドエンディングな映画は僕の好みではない。鳴海唯ちゃんをはじめとする若手女優を中心とした俳優陣はみんな好演だったんですけどね。鳴海さんはゲスト出演したドラマ『時をかけるな、恋人たち』でも好演してました。

>テレビドラマの話
 今季、『パリピ孔明』の他に観てるドラマは、『時をかけるな、恋人たち』『たそがれ優作』『あたりのキッチン!』『セクシー田中さん』。
 『時をかけるな〜』は、違法なタイムトラベルを取り締まるタイムパトロールと恋愛ものを掛け合わせたコメディで、馬鹿馬鹿しいテイストもありつつ恋愛の切なさもきっちり描く、一捻りも二捻りもあるドラマになりそう。『たそがれ〜』『あたり〜』は、どっちも今流行りの飯ドラマの一種ですが、飯以外のストーリーがしっかりしてるのが良い。そしてどっちも主人公のキャラクターがいいですね。ちょっとダメな人のところがいい。今季土曜夜の癒しドラマですな。『あたり〜』主演の桜田ひよりちゃん、子役からやってるからか演技が上手い。この子も映画とかでちょくちょく見るんですよね。『セクシー田中さん』も主人公のキャラ設定が『あたり〜』と似てますが、それにプラスして『Shall we ダンス?』風味のあるドラマ。どのドラマも面白いんですが、オリジナル脚本の『時をかけるな〜』以外は全部マンガが原作なんだよな。



#1887 
バラージ 2023/10/09 18:48
1980〜90年代中華圏映画の1つの到達点

 『さらば、わが愛 覇王別姫』4K版を観ました。日本初公開が1994年で、その時にも観て感動したし、VHSも安売りの際に購入したし、今はもちろんDVDを持ってますが、午前十時の映画祭で上映された時にも再見しています。調べると2014年頃だから9年前か。なので映画館で観るのも3回目となります。
 1924年の北洋軍閥時代に京劇の養成所で出会い男役と女形に成長した2人の男と、男役の妻となった元娼婦の女。3人の男女の愛憎劇を日中戦争・国共内戦・反右派闘争・文化大革命といった激動の中国近現代史を背景に描いた大河ドラマで、日本軍・国民党・共産党と移り変わる権力に翻弄される彼らの過酷な運命を描き出したストーリーが素晴らしい。80年代末からの中国第五世代、香港ニューウェーブ、台湾ニューシネマの流れが渾然一体となって生み出された歴史的傑作と言っていいでしょう。今回改めて観て感じたのは、主人公たちは京劇の大スターですが支配者の権力の前ではしょせん何の力もないただの人に過ぎないというところ。1997年公開のウー・ティエンミン(呉天明)監督の中国映画『變臉(へんめん) この櫂に手をそえて』でも「確かに私は大スターだが、しょせんはただの役者に過ぎない」というような台詞がありましたが、文革の地獄をくぐり抜けてきた映画人の実感なのかもしれません。
 チェン・カイコー監督はこれ以前の『黄色い大地』『大閲兵』『子供たちの王様』の評判は聞いてましたが、観たのはこれが初めてでした(『黄色い〜』は後にビデオで観たけどまあまあ面白かった)。カイコーはこの『さらば〜』が最高傑作でしょうね。次の『花の影』は失敗作だったし、その次の『始皇帝暗殺』も期待したほどではなかった。そのまま興味を失って、ハリウッド進出した『キリング・ミー・ソフトリー』や、中国に戻っての『北京ヴァイオリン』『PROMISE』は観ていません。その後、久しぶりに観た『花の生涯 梅蘭芳』『運命の子』『空海 美しき王妃の謎』もいまいちとしか言いようのない出来でしたし(『北京ヴァイオリン』は評判が良かったようですが)。チャン・イーモウと比べると圧倒的な差をつけられちゃったという感じ。
 一方、出演者を見るとレスリー・チャンもチャン・フォンイーももちろん素晴らしいけれど、何よりもこの頃のコン・リーは圧倒的なまでに美しい。そしてこういう気の強い役が本当に上手い。チャン・イーモウ監督によって見いだされ、二人三脚で中国映画を世界へ押し上げていった人ですが、やはりそういう気の強い役が神がかり的に上手かったんですよね。そういやチャン・イーモウの映画は4Kとかで再公開されないなあ。ホウ・シャオシェン、ウォン・カーウァイ、エドワード・ヤン、チェン・カイコーと4K版やデジタルリマスター版が公開されてるんだから、チャン・イーモウの映画もぜひ4Kで再公開してほしいもんです。『紅いコーリャン』とか『紅夢』とかお願いしますよ、マジで。


>その他の録画やDVDやVHSで観た映画
『森の向う側』
 1988年の日本映画。VHS化のみでDVD化されておらず、またまたネットレンタルのVHSで観賞しました。村上春樹の初期の短編小説『土の中の彼女の小さな犬』(短編集『中国行きのスロウ・ボート』収録)の映画化で、存在はずいぶん前に知ってましたが(といってもDVD時代への移行後)、わざわざVHSを購入してまではなあ……と思って観てこなかったんですよね。しかしまあ村上春樹の映画化だし、そういやネットのVHSレンタルがあったなと思い出して、どうせDVD化されることもないだろうしと観てみたのでした。
 正直出来のほうはあんまり期待してなかったんですが、予想外になかなか面白かったです。原作の内容は全く忘れてましたが、村上春樹の小説世界の雰囲気を非常に上手く再現していて、80年代アート系日本映画感も濃厚。こういう映画、僕はかなり好き。海岸のホテルで出会った男女が延々会話するだけの映画なんですが、75分という短さもあり全然退屈しませんでしたね。あえて難点を言えば主演のきたやまおさむって人が強面でいまいちイメージに合わなかったかな。本来は北山修といってミュージシャンなどの活動と共に精神科医・臨床心理学者をしてる人らしい。台詞運びも若干拙いんですが、その淡々とした感じはむしろ村上小説の登場人物に合ってたかも。ヒロイン役の一色彩子(現・一色采子)という女優さんはかなり良かったですね。監督の野村恵一って人も全然知らなかったんですが、寡作ながらも結構作品を発表してた人らしい。それにしてもずっと雨と曇りと夜のシーンばっかりの映画で(原作がそうだからだけど)、ホテルの一面が全面ガラス張りで雨がずっと打ち付けてるんですが、雨はホースとかで降らせたにしても、曇りの日ばっかり選んで撮影したんだろうか? 僕は雨の映画って結構好きなんですよね。実際の雨はあまり好きではないんだけど。
 あんまり面白くて、観終わってから原作を読み返してもう1度観ちゃいましたね。多少原作とは変えられてましたが、その変えられた部分もいかにも村上春樹っぽい。あるいは他の村上作品から引用してるのかもしれないけど。ま、とにかく面白かったです。

『カイジ 動物世界』
 2018年の中国映画で、日本では2019年に映画館の特集上映で上映された後にDVD化されました。日本のマンガ『賭博黙示録カイジ』の実写映画化で原題は『動物世界』。僕は原作マンガの絵柄も話もキャラ設定もあまり好きじゃなく、日本版の実写映画も観ていません。じゃあなぜこの映画は観たかというと出演してる女優のチョウ・ドンユイ目当てなのでした。なかなか面白かったです。原作通り主人公のカイジが命がけのギャンブルに挑むというというストーリーですが、設定が多少変わってるというか追加されてて、カイジの生い立ちなども多少描かれてます。原作ではギャンブル依存症なんじゃねえのかってほどのギャンブル狂のカイジですが、この映画ではそう描かれてないのも感情移入しやすい。ドンユイは原作にはないカイジの幼なじみで、カイジと好き同士という設定になっており出番は序盤とラストだけでギャンブルとは関わりませんが、可愛らしい彼女の存在が一服の清涼剤。セットやCGも日本では考えられないほど金が掛かっていて、なんとマイケル・ダグラスまで出演しています。もう日本映画はかなわねえなあ。

『25時』
 2002年の米国映画(日本公開は2004年)。黒人映画の旗手スパイク・リー監督の映画で、リーの映画もオリバー・ストーン同様に90年代まではよく観てましたが、前作『サマー・オブ・サム』(1999年。日本公開は2000年。未見)あたりから白人を主人公とした映画も撮るようになって、なんとなく興味を失ってしまいました。この映画も白人が主人公で主演はエドワード・ノートンですが、2019年の『ブラック・クランズマン』で久々にリーの監督作を観たんでストーン同様にリーの映画も落穂拾い的に観ていくかなと思い直しまして。
 麻薬密売の罪で収監されることが決まったドラッグディーラーの男が、葛藤と疑念と悔恨の中で高校以来の親友たちや恋人や父親と過ごす保釈中の24時間を描いたヒューマンドラマ映画。面白かったです。さすがはスパイク・リー。登場人物のほとんどが白人というかつてのリーからは考えられないような作品ですが、あるいはリーも黒人ばかりでなくもっといろんな映画を撮ってみたくなったのかも。個人的には主人公よりもどっちかっていうとフィリップ・シーモア・ホフマンとバリー・ペッパーが演じてた親友たちのほうに共感しちゃいましたね。あとホフマン演じる冴えない高校教師と絡むセクシーな女子生徒がどっかで観たことあるなと思ったらアンナ・パキンでした。『ピアノ・レッスン』の天才子役で『グース』では美少女に成長してましたが、ずいぶんでっかくなったなあ。この後『X-MEN』とかにも出てたんでしたっけ? 観てないけど。原作小説があるとのことですが、リーは原作には無いという9.11テロで崩壊した貿易センタービルの跡地を劇中に登場させてます(原作は9.11前に書かれたとのこと)。破綻したエンロンにもちょっと触れられてて、あー、そういえばそんなことあったな〜などと思い出してしまいました。昔のことなんて忘れてるもんですな。

『インサイド・マン』
 2006年の米国映画。スパイク・リー監督がたびたびコンビを組んでいるデンゼル・ワシントンを主演に迎えた犯罪サスペンスで、クライブ・オーウェン、ジョディ・フォスター、クリストファー・プラマー、ウィレム・デフォーなど超豪華キャスト。リー&ワシントン・コンビの映画ですが、過去の『モ’・ベター・ブルース』『マルコムX』『ラスト・ゲーム』のような黒人映画ではなく、普通の(?)エンタメ映画になっています。オーウェン演じる知能犯リーダーの銀行強盗グループと、ワシントン演じる説得工作にあたるニューヨーク市警刑事およびデフォー演じる機動隊隊長の攻防、さらにプラマー演じるある秘密を抱える銀行会長からとある密命を依頼されるフォスター演じるやり手弁護士の暗躍を描いた作品で、普通の犯罪映画とはちょっと違って事件を解決して終わりというのではなく、かなりひねったストーリーになっており、脚本がよく出来ててリーの演出もテンポ良く、先の展開のわからないなかなか面白い映画でした。話の本筋とは関係ありませんがアルカイダやビン・ラディンのネタがちょこっと出てくるのはこの頃の時代ですね。



#1886 
バラージ 2023/09/15 22:58
90年代台湾という「時代」

 『エドワード・ヤンの恋愛時代』4Kレストア版を観ました。日本初公開されたのは1995年だから、もう今から30年近く前になります。観るのはおそらくそれ以来ですが、そんなに経った気が全然しません。当時はチェン・カイコーの『さらば、わが愛 覇王別姫』やウォン・カーウァイの『恋する惑星』、ティエン・チュアンチュアンの『青い凧』やツァイ・ミンリャンの『愛情萬歳』も公開され、80年代末に躍り出たチャン・イーモウやホウ・シャオシェンも走り続けていて、中華圏映画が百花繚乱の時代に入った頃でしたね。いい時代でした。
 『恋愛時代』は製作当時の高度経済成長下の台北を舞台とした社会人の若者たちの青春群像劇ドラマで、金持ちの令嬢で会社社長のモーリーと彼女の下で働く親友のチチを中心にその同級生・恋人・姉妹・同僚など、どこか満たされず人生や恋愛に惑う都会の10人の男女の過ごす3日間を描いています。同じ台湾ニューシネマでもホウ・シャオシェンは過去(1960〜40年代)や田舎を舞台にすることが多かったんで、現在の大都会を舞台とした台湾映画はとても新鮮でした。台北も東京と変わりないぐらい都会なんだなぁとあの頃は感心したもんです。そしてそこで繰り広げられる人生に迷う若者たちの姿もまた日本と変わらないもので、とても惹き付けられたことを思い出しますねえ。
 また同じような青春群像劇を描く香港のウォン・カーウァイの映画も去年4Kレストア版が公開されましたが、カーウァイと比べるとエドワード・ヤンの映画には若干の時代性というものが含まれていることに今回気づきました。カーウァイの映画は普遍性は強いけれど時代性はあまりありません。ヤンの映画ももちろん普遍性は強いけど(じゃなきゃ時代を超えた支持は得られない)、『恋愛時代』はそこにいくばくかの時代性も含まれている。観てて、あの頃の台湾と中国、あの頃の東アジアが思い出され、ひいてはあの頃の映画や映画館の思い出がよみがえってきて、あー、あの頃はそうだったよな〜と懐かしさになんだかちょっと目が潤んでしまいました。
 そして原題の『獨立時代(独立時代)』は、当時はいまいちピンと来なかったんですが、台湾は80年代まで戒厳令が敷かれ、90年代初めにようやく民主化されたという歴史を知ると、非常に深い意味を持つタイトルだったことが今になってわかります。自由を得て「独立」した喜びと、手に入れた自由な世界での「独立」への戸惑い、言わば外的な独立が終わった後の大都会の若者たちの内的な独立が描かれている映画というわけですね。
 まあ、とにかく最初に観た時と同様にとても面白かった。やはり僕は最初に観たエドワード・ヤン作品ということもあってこれが彼のベストです。Blu-ray化されたら買おうっと。前作『[牛古]嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』も4Kレストア化され、さらにその前の『恐怖分子』『台北ストーリー』もデジタルリマスター化されたんだから、次は次作の『カップルズ』、そして事実上の遺作『ヤンヤン 夏の想い出』もぜひ4Kレストア化してほしいところですね。


>その他の映画館で観た映画
『リボルバー・リリー』
 関東大震災翌年の1924年の東京を舞台とした綾瀬はるか主演のアクション映画。監督は行定勲。元国家機関の凄腕女スパイが、陸軍機密資金の謎を握る少年と偶然出会い保護したことで、少年を追う陸軍や彼女を付け狙う現役スパイらと戦うことになり、さらに資金の横取りを狙う海軍やヤクザも絡んでくるというストーリー。
 うーん、アクションはすごいし映画全体の雰囲気もいいし豪華キャストの皆さんもみな好演だとは思うんですが、お話というか状況設定がしっちゃかめっちゃかのような。主人公およびその仲間たちと陸軍部隊が白昼の街中で派手なドンパチ繰り広げてるのに、なぜか警察とかが一切絡んでこない。主人公も陸軍もなぜか暗殺とかじゃなく思いっきり堂々と銃撃戦しちゃってるんだよなあ。いくら陸軍といえどあんな街中で公然と銃撃戦をして不問に付されるとは思えないんですが。あんな堂々とやってちゃ揉み消すことも不可能だろうし。アクションシーンにしてもたった4〜5人の主人公たちに数十人〜100人以上の陸軍部隊が一方的にやられちゃうのはあまりに荒唐無稽すぎる。主人公たちは百発百中なのに陸軍の弾は見事に全然当たらないというのはアクションもののお約束とはいえ、んなアホなと思っちゃうし、あまりのやられっぷりに、陸軍弱っ! あれじゃ戦争しても勝てねーよと思ってしまった(笑)。
 要するに脚本もしくは(未読ですが)原作小説が悪いんでしょう。原作は好評な作品のようですが、文章と映像じゃ表現のしかたが違うし、映像化してみたら文章ではわからなかった荒唐無稽さが露になってしまったのかも。ちょっと期待外れでしたね。

『君たちはどう生きるか』
 宮崎駿監督の最新作をようやく観賞。どうせ長くやってるだろと後回しにしてました。ちょっと開始時間を勘違いして最初の5分くらい見逃しちゃったんですが、わざわざ最初の5分のためにもう1回観るのもなあ。
 内容については箝口令が敷かれてる?(笑)ということであまり多くは触れませんが、個人的にはいつもの宮崎ファンタジーだと感じました。吉野源三郎の小説からはタイトルを借りてきただけで、中身はほとんど関係ないと思います(一応劇中に小説がちょっとだけ出てくるが)。吉野の小説は読んでないけど、絶対にあんな話じゃないはず。その辺は前作の『風立ちぬ』といっしょで。
 『ナウシカ』や『もののけ姫』みたいな女の子のほうが活躍しちゃう話ではなく、『ラピュタ』みたいに少年が活躍する話だったのでそこは個人的に良かった。『風立ちぬ』同様にやや大人向けの話で、子供はちょっと退屈するかもしれません。ファンタジー世界の大冒険は子供も面白いだろうけど、そこに入るまでが結構長い。ファンタジーの外枠である現実世界の話は完全に大人向けなので子供はそこまでに飽きちゃうでしょう。また現実世界とファンタジー世界とのつながりの必然性が今一つ弱いようにも感じました。あと終わり方もちょっと唐突に感じましたね。もう少し余韻があっても良かったんではないかなあ。それでもまあ個人的にはなかなか面白かったかな。絶賛するほどまでではないけれど。

>中国映画とテレビドラマの話
 去年ウォン・カーウァイの『恋する惑星』『天使の涙』『ブエノスアイレス』『花様年華』『2046』が4Kレストア版で公開され、今年は『若き仕立屋の恋』ロングバージョンが公開されましたが、12月にカーウァイ初期作品の『いますぐ抱きしめたい』『欲望の翼』も4Kレストア版が公開されることが決定。『いますぐ〜』はともかく、『欲望の翼』はマイ・ベスト・ウォン・カーウァイなのでぜひ観たい。地元にまで来るんかなあ。
 またロウ・イエが監督、コン・リーやオダギリジョーが主演の『サタデー・フィクション』の公開が11月3日に決定。中国・日本ともに2020年公開予定がコロナで延期され、中国本国では2021年に公開されたものの日本ではようやくの公開です。でもまあとりあえず公開されて良かった。とはいえ地元には来るとしても来年かなあ。
 そういやアリス・クー主演の『時をかける愛』映画版は日本公開されないんかなあ。台湾では去年の12月に公開されたようですが、ドラマの続編らしいし日本じゃドラマはBS11だか12だかと地方局で放送されただけであとは配信とDVDだからなあ。NHK地上波かせめてNHK-BSとかWOWOWで放送されんと難しいのかなあ。ファンは待ち望んでると思うんですが……。
 そしてジョウ・シュン主演の2014年の中国ドラマ『紅いコーリャン〜紅高粱』が「みるシネマ」という配信サイトで配信開始。チャン・イーモウの監督デビュー&コン・リーの女優デビュー映画『紅いコーリャン』の原作でもあるノーベル賞作家の莫言の小説『赤い高粱』が原作で、前から観たかったんですよね。どっかで放送されんかな。



#1885 
バラージ 2023/09/03 21:33
神話?映画

『タイタンの逆襲』
 2012年の米国映画で、2010年の『タイタンの戦い』(1981年版のリメイク)の続編。10年代前半になぜか突如起こったギリシア神話映画ブームの1本で、その頃のギリシア神話映画はあらかた観たんですが、これは前作がいまいちだったんで観る気が起きなかったんですよね。しかし最近ギリシア神話映画づいてるし、これも観とくかってことでちょうどWOWOWで放送されたのを録画視聴。
 基ネタとなるペルセウスの神話は前作でほとんど終わっちゃってるんで、こっちは全くのオリジナル・ストーリー。前作ではいまいちだったCGはかなり良くなってるんですが、お話のほうはやっぱりギリシア神話を期待するとちょっと、いやかなり違うんだよなあ。なんだ、これ?と思っちゃうところが多い。ペルセウスと神様が普通に闘っちゃうし、神様はただ強いってだけで人間を超える超越的存在ではないんですよね。ギリシア神話っていうよりマーベルやDCみたいなアメコミ映画のノリに近いような……。まあ、そう思って観ればそれなりには楽しめます。でもギリシア神話好きとしてはどうもなあ。

 10年代前半のギリシア神話映画の感想は、#1356、#1437、#1490に書いてますが、その少し後にDVDなどで観た『ザ・ヘラクレス』と『ヘラクレス 帝国の侵略』の感想は書いてなかったようですね。#1490に書いた『ヘラクレス』と合わせて、なぜか同時期にヘラクレス映画が3本も作られたんだよな。
 『ザ・ヘラクレス』はレニー・ハーリン監督作で、ファンタジー性皆無の古代アクションだった『ヘラクレス』とは違い、一応ちゃんとファンタジー・アクションとして作られてました。ただやっぱりギリシア神話らしさは希薄で、ただのファンタジー映画という感じだった記憶。それでもまあファンタジーである分『ヘラクレス』よりはマシで、面白さもまあまあだったような記憶です。
 『ヘラクレス 帝国の侵略』は、観た後で知ったんですが便乗B級映画専門のアサイラム社という会社が作った映画らしく、ものすごく安っぽい。やはりファンタジー性皆無の古代アクション映画で、そもそもヘラクレスが主人公というより準主役程度の立ち位置という変な映画でした。もちろん面白くはなく、ギリシア神話好きは別に観る必要のない映画だと思いますね。


>その他のDVDや録画で観た映画
『四月の雪』
 2005年の韓国映画。監督は名作『八月のクリスマス』のホ・ジノで、主演は当時日本で人気絶頂だったヨン様ことぺ・ヨンジュンと、コロナ下でドラマ『愛の不時着』が大ヒットしたソン・イェジン。イェジンが日本で最初にブレイクしたのがこの映画でした。本国ではあまりヒットしなかったらしいんですが、日本では大ヒットし、翌2006年には140分のディレクターズカット完全版も公開されています。しかし僕が観たのは107分の通常版。
 妻が乗っていた車が交通事故を起こし、意識不明となった妻のいる地方の病院に駆けつけた男(ぺ・ヨンジュン)。そこには妻と車に同乗し同じく意識不明となっていた男の妻である女性(ソン・イェジン)もいた。やがて妻と男は不倫していたことがわかり、2人は強いショックを受けながら、意識不明の伴侶を見守り続ける。事故の巻き添えで死んだ人の遺族への謝罪のために車で赴いた2人は、遺族にも責められる不条理の中で、他の誰とも共有できない苦しみを唯一分かち合える相手としてやがて徐々に惹かれ合っていくのだが……。
 ひたすら暗く重く切ない恋愛映画で、観てて胸が締め付けられるような映画です。しかし、さすがは『八月のクリスマス』のホ・ジノ、台詞を少なめに抑え、何気ないふとしたしぐさや表情で2人の心理描写を丹念に描いてましたね。風景や街の情景の描き方も素晴らしく、自分がその街にいるかのように感じられました。僕はこういう映画、かなり好き。とても良かった。ディレクターズカット完全版も観てみたいけど、そっちは販売専用なのかレンタルされてないんだよなあ。

『グレイトフルデッド』
 2014年の日本映画。2017年の『彼女の人生は間違いじゃない』で知った瀧内公美さんの初主演映画(笹野高史とのダブル主演)とのことで、観たかったんですがどのレンタル店にもDVDがなかったんですよね。以前からリクエストしてたWOWOWでようやく初放送ということで録画視聴しました。
 親失格の金持ち両親のもとで孤独に育ったが、今は死んだ親の遺産で何不自由なく暮らし、自分よりも孤独な人間の暮らしを観察して悦に入ることを趣味にしている女が主人公。ところが主人公が最近目を付けた孤独な老人は、ボランティアのキリスト教徒韓国人女性と出会ってみるみる生きる希望を取り戻していく。嫉妬に駆られた主人公はボランティアを襲い、さらに老人を襲撃して監禁。しかしそこからなんとか脱出した老人が逆襲に転じ、2人は凄惨な死闘を繰り広げていく……というサイコ・バイオレンス映画。多少コメディタッチなところもあるものの、正直僕の好きなタイプの映画ではありません。まだこの頃はだいぶ若い瀧内さんのヌードになってのSEXシーンもありますが、全く色っぽいシーンではないので興奮もせず。瀧内さんは相当にがんばったと思うけど、これでブレイクしなかったのもわかるような気がする。女優さんって大変ですね。『彼女〜』でブレイクしてほんとに良かった。

『とんかつDJアゲ太郎』
 2020年の日本映画。劇場公開された時に、なんじゃこのタイトルは?(笑)と思いつつ、ちょっとだけ面白そうだなとも思ったんですが、結局観に行かなかったんですよね。とんかつ屋の息子アゲ太郎がたまたま出前に行ったクラブでDJを初めて見て衝撃を受け、自分もDJになろうとする青春コメディ。マンガが原作らしく、なかなか面白かったです。なにも難しいこと考えず気楽に観れる映画ですね。DJの音楽がいいし、主演の北村匠海はじめ出演者も好演。気の強い役が多い山本舞香が普通に可愛い女の子やってるのも珍しい。とんかつも旨そうで、とんかつ食いたくなりました。



#1884 
バラージ 2023/09/03 21:32






#1883 
バラージ 2023/08/10 00:55
長いかなと思ったがそれほど長くは感じなかった

 『ミッション・インポッシブル デッドレコニング PART ONE』を観ました。アクション映画で3時間近くかぁとちょっと尻込みしてたんですが(やっぱ娯楽映画で2時間43分は長すぎるよなあ)、ふと気づいたら1日の上映回数が少なくなってて、こりゃいかんと思って観に行ってきた次第。
 観たら観たでやっぱり面白かったですね。とにかく脚本が相当に練られてて、複数の勢力が入り乱れる追っかけっこは本当にハラハラさせられるし、それでいて決してわかりにくくはありません。AIやコンピューターウィルスといったネット空間や人工知能が重要なネタにされてるんですが、非常にリアルな説得力の感じられる描かれ方で、なおかつアクションとの絡め方に不自然さを感じさせないのも見事。アクション映画でここまで緻密に脚本や演出が考えられてるのも珍しい。穴だらけで、んなアホなの展開だった『ダイ・ハード4』とはえらい違いだ(笑)。
 アクションも相変わらずの乱れ打ちで、ジャッキー・チェンばりに命知らずなのもこれまで通り。ちょっとコミカルなアクションシーンもちょっとだけ入れて、ますますジャッキー寄りになってきました。蒸気機関車のシーンなんて絶対『ポリス・ストーリー3』を意識というかインスパイアしてるでしょう。トムは相当にジャッキーをリスペクトしてるみたいだし。
 ただ、面白かったことは面白かったんだけど、5作目・6作目みたいな大興奮とまではいきませんでした。なんというか想定の範囲内の面白さなんですよね。予想外の驚きというのはあんまりなかった。このあたりはシリーズものの難しさなのかも。パート1だから話が解決してなくて、パート2に続くってのもちょっとカタルシスに欠けました。
 でもまあ面白かったことは確かだし、何よりとにかく観てる間長いと全く感じさせないのはすごい。パート2も観ると思いますが、ハリウッドのストで来年の公開は延期されるんですかね。


>その他に映画館で観た映画
『アルゴ探検隊の大冒険』
 午前十時の映画祭で上映してたのを観ました。ハリーハウゼンのコマ撮りアニメ映画は昔『シンドバッド虎の目大冒険』(1977年)をテレビで、『タイタンの戦い』(1981年)をビデオで観て、それぞれ面白かった記憶があります。最近『トロイ』『トロイ ザ・ウォーズ』と立て続けにギリシャ神話映画を観たんで、本作は観たことがなくレンタル店にDVDもなかったしちょうどいいやと思って観に行ったんですよね。
 しかし、うーん……期待外れだったかなぁ。まず画質が良くありません。リマスターとかされてないのか、なんか昔のVHSをそのまま上映してるようにすら見えます。特撮もすごいことはすごいんだけど、今になって観るとやっぱり古い。まるで初代『ウルトラマン』を観てるかのよう。『虎の目〜』『タイタン〜』を観たのは80年代でリアルタイムに近かったから楽しめたんだろうけど、1963年公開の本作は今となっちゃ60年も前の映画だからなあ。CG時代の今観ると正直ショボく感じてしまう。それでも青銅の巨人タロスとか、海から巨大なポセイドンだかトリトンだかが出てくるところはなかなかの迫力でしたが、ハーピーや骸骨剣士は今見ると正直いまいち。デジタル上映だからDVDをそのまま上映してるんだろうけど、今になって映画館の大スクリーンで観ると特撮の粗が見えちゃうんですよね(『シン・ウルトラマン』の併映で初代『ウルトラマン』の上映を観た時もそう感じた)。
 そして何より映画として特撮以外の部分が凡庸に過ぎる。ストーリーは何てことないし、昔の映画ということもあってかテンポやリズムがスローモーではっきり言って退屈。ちょっと眠くなってしまいました。お話も尻切れとんぼなんだよな。主人公のジェーソン(英語発音。ギリシャ神話ではイアソン)が黄金の羊毛を手に入れようと旅立ったのは父親の復讐のためだったのに、羊毛を手に入れたところでめでたしとなって復讐までは描かれない。え!? そこで終わり?となっちゃった。まあギリシャ神話は悲劇的な結末が多いんで、ハリウッド的ハッピーエンドとは合わないところがあるのかもしれないけど、やっぱり映画の本質ってそういうとこだよなあ。その辺が『ベン・ハー』や『スパルタカス』との違いだろうし、同じ午前十時で観た『アメリカン・グラフィティ』なんて全然古く感じなくて、すげえ面白かったですしね。やはり特撮は「技術」であって、技術の進歩で古くなってしまう。初代『ゴジラ』や『ウルトラマン』が古びないのも、特撮以外のところが優れているからなんではないでしょうか。監督も知らん人だし俳優も知らん人ばっかりで、特撮以前に単純に映画として凡作でしたね。
 次の東宝特撮映画『地球防衛軍』もちょっと興味があったんだけど、どうすっかなあ。

>録画で観た映画
『男たちの挽歌V アゲイン/明日への誓い』
 1989年の香港映画。劇場公開時の邦題は『アゲイン 明日への誓い』ですが、ソフト化の際に『アゲイン 男たちの挽歌V』、さらに上記邦題へと変わっています。『男たち〜』シリーズの3作目で原題も『英雄本色V 夕陽之歌』ですが、1作目より前の時代が舞台でチョウ・ユンファのみが続投。監督も前2作のジョン・ウーからツイ・ハークに変わりました。1974年〜75年というベトナム戦争末期のサイゴンを舞台に、ベトナム華僑の叔父シー・キエンを連れて香港に帰ろうとするユンファと従弟(叔父の息子)のレオン・カーフェイが謎の女アニタ・ムイの助けで、南ベトナム政府軍のゴロツキやムイの恋人で裏社会のボス時任三郎(広東語吹替)と派手なドンパチを繰り広げるというお話。その合間にユンファとアニタのラブロマンスも描かれます。前日譚のわりには1作目に上手くつながってなくて、そのあたりはいかにも香港映画。実際、前2作との関連性はあまりありません。出来はまあまあですが、主人公たちがちょっと無敵すぎるだろと思っちゃいましたね。またウーとハークではやはり作風が違い、女性を描くのが苦手なウーよりもハークのほうが女性を魅力的に描いています。



#1882 
バラージ 2023/08/01 21:01
女子たち、スタイリッシュ、おしゃれ系、そしてウォン・カーウァイ

 『アイスクリームフィーバー』という日本映画を観ました。川上未映子の短編小説『アイスクリーム熱』を原案に、アートディレクターの千原徹也が初監督したという作品で、主演は吉岡里帆と松本まりか。
 美大を卒業してデザイン会社に就職するもいろいろと上手くいかず、退職してアイスクリーム店でバイトを続けながら、デザインの道に戻るか思い悩む女性(吉岡)と、アイスクリーム店の近所に住んでいて、突然訪ねてきた姪に数年前出ていった父親を探したいからしばらく泊めてくれと言われ、実はその男がかつて姉に横取りされた恋人で姉とは絶縁状態だったため戸惑う女性(松本)の2つの話が平行して描かれていきます。2つの話は何度もニアミスしますが最後まで明確には交わりません。アイスクリーム店員の女性が衝動的に惹かれる客の女性(モトーラ世理奈)、アイスクリーム店のバイトの後輩(詩羽〈水曜日のカンパネラ〉)、突然訪ねてきた姪(南琴奈)を含めた5人の女性の群像劇的な作品となっています。
 いやぁ、面白かった。監督がアートディレクターだからか映像感覚がファッショナブルというかスタイリッシュで、音楽の使い方もアート的に一風変わってて、全体的にアートっぽい映画です。だからといってストーリー性が希薄とか、前衛的でわかりにくいとかではなく、その辺はちゃんと映画になってるんですよね。アート系というか、おしゃれ系映画とでも言いますか。2つの話の間の時系列がややわかりにくく、また全てをあえて説明しない部分もありますが、そのあたりは行間を読ませる小説的というか純文学的な感じ。
 観ていてなんとなく90年代のウォン・カーウァイっぽいなと思ったら、監督のインタビューを読むとやっぱりウォン・カーウァイを含めた90年代映画のムーブメントや空気感を意識してて、それを再現したかったらしい。キャッチコピーの「100万年君ヲ愛ス」も、『恋する惑星』での金城武の台詞「一万年愛す」を連想させます。エンディングテーマが小沢健二ってのもいかにもという感じで、おお、と思っちゃいましたね(別にオザケンのファンではないんだけど)。
 出てくる人物が上記のメイン5人を含め、ほとんどが女子(松本さんは30代後半だけど雰囲気が女子っぽい)で、男はほんの少しの脇役しか出てこない女子映画でもあり、悪い人も極端にいい人も出てこず、等身大の彼女たちが描かれてるのも良い。女優さんはみんな上手くて可愛いんですが、セクシャルな(性的な)感じを全く描かないのも印象的でした。
 今年ここまでで1番かな(『恋は光』は去年の映画だし、『若き仕立屋の恋』も00年代の映画なので)。非常に良かったです。アイスクリーム映画は、ちょうどこのクソ暑い日々でナイスタイミングでもありました(笑)。



#1881 
バラージ 2023/07/23 18:55
観れねえよ

 好きな中国女優のレジーナ・ワン(ワン・チェン、万茜)が出演してる映画『兎たちの暴走』が8月25日に公開されることが決定。2020年の東京国際映画祭で上映され、翌2021年には本国で公開された作品ですが、ようやくの日本公開です。といっても地元までは来ないだろうなあ。せめて隣県まで来てくれれば頑張って観に行くんですが、果たして?
 また、ジャッキー・チェンの新作映画『プロジェクトX-トラクション』がどうやらNetflix配信となるようです。28日配信開始というからたぶん配信前の限定劇場公開も無いんでしょう。やれやれ。米中合作映画で撮影は2018年に終了してたらしいんですが、コロナの感染拡大、中国映画市場の変化、共演のジョン・シナが他の映画のプロモーションに際して台湾を「国」と呼んだことから起きた騒動などを受けて、度重なる公開延期を余儀なくされていたとのこと。米国でも28日からNetflix配信で、中国(香港含む)では今だ公開未定ですが、なぜかロシアやインドネシアでは13日から劇場公開されているらしい。それにしてもわざわざこれだけのためにNetflix入る気は起きんし、パソコンの小さな画面で観るような映画じゃないんだよな。Netflix配信映画ってDVD化されますっけ? 中国で今年4月に公開されたジャッキーの新作映画『龍馬精神(原題)』の日本公開のほうに期待しますかね。チャン・イーモウ発掘女優のリウ・ハオツンも出てるみたいだし。

>最近観た映画
『波紋』
 筒井真理子主演、荻上直子監督作で、実は筒井さんが結構好きなんで観てみた映画です。
 夫と息子と夫の父と一軒家で暮らす平凡な中高年主婦が主人公。寝たきり義父の介護やパート先のスーパーの不快な客など細かなイラつくことが澱のように溜まっていたある日、夫が突然姿を消してしまう。それから10年。失踪した夫が突然帰ってきて、癌にかかったから治療費を出してほしいと言う。苦悩の中で新興宗教にハマり、義父の死も看取った自分に勝手なことを言う夫に怒りを覚える主人公。宗教にハマった母を敬遠し実家を離れ九州の大学に進学して、そのまま九州で就職した息子も久しぶりに帰省するが、主人公の知らない恋人を連れてくる。息子より6歳も年上の聴覚障害を持つ女性で、主人公には受け入れることができない。更年期にも苦しみ、職場の女性清掃員の勧めで水泳を始め、宗教にすがり、それでも心の闇と苦しみから逃れられない主人公の行き着いた先は……。
 面白かったです。やたら重い話のはずなのに、同時に喜劇でもあり、観てて不思議と嫌な感じはしません。観終わった後にはむしろ爽快感の残る映画でした。ラストの筒井さん演じる主人公というか、主人公を演じる筒井さんというか、とにかく素晴らしかったですね。もちろんラストだけでなく筒井さんは全編素晴らしく、脇を固めるのも夫役の光石研や息子役の磯村勇斗をはじめ、安藤玉恵、江口のりこ、平岩紙、柄本明、木野花、キムラ緑子と名優ぞろい。ほんとにお芝居の上手い人ばっかりです。エンディングを見たらムロツヨシの名前も出てきて、え? ひょっとしてあの役?と思ったらやっぱりそうでした。いつものムロ臭を見事に消していて、ああいう芝居もできるのね。息子の恋人役の津田絵理奈という女優さんは本当の聴覚障害者とのことで、意外にしたたかな障害者女性を演じていてこれまた好演でした。そういや磯村くんは『ビリーバーズ』に続く新興宗教映画だな。

『聖地には蜘蛛が巣を張る』
 2000〜2001年にイランの超保守的な風土を持つ聖地マシュハド市で実際に起こった娼婦ばかりを狙った連続殺人「スパイダー・キラー事件」を題材とした社会派サスペンス映画で、「社会を浄化する」という異常な信念を持つ殺人犯サイード・ハナイと事件を追う架空の女性ジャーナリストを中心に事件を描いています。
 イラン出身のアリ・アッバシ監督によるイランを舞台とした映画ですが、当局の圧力があったようで撮影はヨルダンで行われ、デンマーク・ドイツ・スウェーデン・フランス合作映画として製作されているようです。同事件はこれまでに3回映像化されているとのことで、2003年のドキュメンタリーでは犯人のサイード自身がインタビューに応じているとのこと。本作も当初は普通に犯人を中心とした作品にしようとしたそうですが、事件の背景となるイラン社会の根深い女性嫌悪・女性差別も描くべきだと考えて、女性ジャーナリストをもう1人の主人公にしたそうです。女性ジャーナリストを演じた主演のザーラ・アミール・エブラヒミは2006年にプライベート映像が流出して炎上しイラン映画界を追われているとのことで、当初はスタッフとして本作に関わっていたそうですが、当初の主演女優がヒジャブを脱いでの演技を拒否し降板したため主演を決断したとのこと。カンヌでイラン人初の主演女優賞を受賞したらしい。
 非常によくできた映画でイラン社会や組織の問題点を突いた社会的問題提起として価値が高い作品だと思うんですが、それゆえにかイラン文化・イスラム指導省は「この映画はサルマン・ラシュディ『悪魔の詩』のような道をたどる」などと非常に物騒な非難をしているとのこと。困ったもんだ。

>60年代プログラム・ピクチャー
 BS12で市川雷蔵主演『眠狂四郎』全12作品週一放送ってのを前にやってて、半分くらい観てなかったので録画しといたのをちびちびと観て、ようやく視聴終了しました(現在2度目の放送中のようです)。6〜7作目『眠狂四郎魔性剣』『〜多情剣』と9〜12作目『〜無頼控 魔性の肌』『〜女地獄』『〜人肌蜘蛛』『〜悪女狩り』で、1〜5作目『〜殺法帖』『〜勝負』『〜円月斬り』『〜女妖剣』『〜炎情剣』と8作目『〜無頼剣』は過去に観賞済み。こういうシリーズものってまとめてレンタルでもしないと、どれを観てどれを観てないかわかんなくなっちゃうんですよね。5作目の『〜炎情剣』も観てないと思って録画したら前に観てたやつでした。
 雷蔵の『眠狂四郎』シリーズは1963年から1969年に公開された映画で、60年代に各映画会社で数多く作られたシリーズもののプログラム・ピクチャーの1つ。60年代というと日本映画がテレビに押されて下り坂に入った時代で、観ていても後半の作品になるほど野外ロケが多くなったり、セットが小規模になったりと、予算的に苦しくなって徐々にスケールが小さくなっていくのがよくわかります。内容的には娯楽時代劇としてはよく出来てて、殺陣とか雷蔵の魅力とかで楽しめることは楽しめるんですが、その半面猟奇色というかエログロ度が高く、その辺はあまり僕の好みじゃない。あと後半の作品になるほどお約束なシーンや定番の展開ばかりになって、またかよ!というワンパターンに飽き飽きしてきます。もうツッコミどころ満載で(笑)。前記予算の減少と相まって、後年のテレビ時代劇みたいな印象になっちゃうんですよね。そりゃ、こんなんばっかり作ってちゃテレビに負けちゃうよな。テレビなら半年に1回映画館に行かずとも、毎週茶の間でタダで観れちゃうわけだし。雷蔵も長生きしてたら盟友勝新や他社の裕次郎とか萬屋みたいに自分で会社立ち上げてテレビに進出してたかもしれませんね。
 そんなわけでやっぱりこの雷蔵版『眠狂四郎』シリーズも初期の作品のほうが個人的には面白い。1〜3作目の『〜殺法帖』『〜勝負』『〜円月斬り』あたりが秀逸だった記憶。

>小説とテレビアニメの話
 歴史板のほうにも書いたんですが、村上春樹の新作長編『街とその不確かな壁』を読了。いやあ、素晴らしい出来でした。ごく控えめに言って傑作でしょう。映画の話じゃないんで長々と語りませんが、非常に良かった。
 テレビアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』も終了。こちらも面白かった。富野監督作以外のガンダムはあまり観ないんですが、シリーズ初の女性主人公という珍しさに観始めたら見事にハマってしまいました。



#1880 
バラージ 2023/06/30 01:33
エロスと純愛の象徴としての“手”

 『若き仕立屋の恋 Long version』という香港映画を観ました。
 ウォン・カーウァイ、スティーブン・ソダーバーグ、ミケランジェロ・アントニオーニの3監督による2004年のオムニバス映画『愛の神、エロス』のウォン・カーウァイのパート「若き仕立屋の恋」をカーウァイ自身が再編集した56分の中編映画で、原題は『愛神 手』、英語題は『Eros The Hand』。『愛の神、エロス』は日本公開が2005年でしたが地元には来ず、少し経ってからレンタルDVDで観ました。カーウァイのパートが1番面白く、ソダーバーグのはまあまあ、アントニオーニのは面白くなかった記憶。それ以来観ていません。
 『若き仕立屋〜』はカーウァイ映画ではおなじみ1960年の香港が舞台。服の仕立屋見習い(チャン・チェン)が、親方の仕事の使いで愛人稼業をする美しい高級娼婦(コン・リー)のもとを訪れる。行為の真っ最中を目撃して肉体が反応してしまった若い仕立屋見習いに女はズボンも下着も脱ぐよう命じ、その美しい手で彼の股間を丹念にまさぐり巧妙に罵る。それ以来、彼は女のお気に入りとなってたびたび使いを命じられ、彼女に魅了された仕立屋見習いもやがて一人前となり、彼女の着る美しいチャイナドレスを次々仕立てるようになる。他の男たちのために彼女が着飾るドレスを仕立て続け、届け続ける仕立屋。やがて時が経ち、女も歳を取ってパトロンから捨てられ、支払いも滞るようになる。それでも彼は彼女に忠実に仕え、彼女も彼に弱さを見せようとしない。ヨーロッパに行くとうそぶいていた女はある日マンションから姿を消すが……。
 成就されぬ愛という、いつものカーウァイ節ですが、原題通り“手”がとにかく印象的な映画でした。直接的エロスの描写を最小限に抑えながら、ちまきとか採寸とかアイロン掛けとか間接的エロスの発想がいちいち素晴らしい。ちまきを作るコン・リーの美しい“手”、それをこれ以上ないほどいとおしそうに食べるチャン・チェン。今だかつてちまきでこんなにムラムラしたことなどありませんでしたが、映像で見せられれば、あーわかると感じてしまいます。でも普通あんなの思いつかないよ! ラスト手前のクライマックスとも言うべき2人の印象的なシーンも“手”の使い方が絶妙に上手い。これだけ“手”を効果的に使った映画もないんじゃないでしょうか。男前チャン・チェンのどこまでも一途に誠実に一歩引いた姿も良いですが、なんといってもコン・リーの圧倒的なまでの色気あふれる美しさ! そりゃあんな女に出会ったらそうなっちゃうよなという説得力を見事に生み出しておりました。名監督に名男優、名女優が集まれば、たとえ短くともこんなに面白い映画になるんですね。


>その他の映画館で観た映画
 『妖怪の孫』というドキュメンタリー映画を観ました。安倍晋三元首相および安倍政権を題材とした映画です。「妖怪」とは安倍元首相の祖父の岸信介元首相のこと。監督は菅義偉首相(当時)を題材とした2021年のドキュメンタリー映画『パンケーキを毒見する』(未見)の内山雄人で、同作のプロデューサー河村光庸が企画したものだったそうですが、製作中に河村および安倍元首相が相次いで死去し、映画も暗礁に乗り上げかけたとのこと。しかし古賀茂明がプロデューサーを引き継ぎ、完成にこぎ着けたそうです。
 うーん、部分部分は面白いネタや初めて知る事実があって非常に興味深いんですが、なんというか1本の映画としての完成度は似たようなテーマの『主戦場』や『i 新聞記者ドキュメント』なんかに比べると今一つ。つまらなくはないし最後まで飽きずに観れるんですが、部分部分のぶつ切り感が強くて流れが悪い。エピソードの羅列になっている感じで、広い意味での娯楽性に欠けてるような気がします。決して真面目一辺倒の映画ではなく、ちゃんと娯楽性にも気を配ってるとは思うんですが、なんだかテレビドキュメンタリーの延長のようで映画的ダイナミズムに欠けるような。結局、監督の腕の問題なのかなぁ。テーマや志や勇気は支持できるだけに惜しい。
 それにしても映画に岸政権が安保条約を強行採決する有名なシーンが出てきましたが、物心ついた頃からリアルタイムであんなシーンばっかり見てきたような気がします。入管法改正問題でもそうですが、自民党って昔っから強行採決ばっかりやってきてるな。

>録画で観た映画
『西の魔女が死んだ』
 2008年の日本映画で、梨木香歩の同名小説の映画化。前々から気になってたんだけど、なんとなく観逃してきた映画です。
 ある日から学校に通うことを拒否した中学生の少女が主人公。彼女は母の勧めで、自然に囲まれたド田舎の古い一軒家で暮らす大好きなイギリス人の祖母のもとで暮らすことになる。自分たちは魔女の家系だと言う祖母との二人暮しの中で彼女の心は少しずつ癒されていく……。
 いやぁ、いい映画でした。おばあちゃん役のサチ・パーカーが素晴らしい。シャーリー・マクレーンの娘とのことですが、よくこんなに日本語のしゃべれる俳優さんを見つけてきたなあ。この人がいなかったら成功しなかったでしょう。客観的にも良い映画だと思いますが、それだけでなくなんというか個人的にも心にぴったり来るものがありました。子供の時に日常を離れて過ごすことの重みをこれほど上手く描いている映画はそうはないでしょう。胸を震わせる作品でしたね。原作も読んでみようかな。



#1879 
バラージ 2023/06/08 21:48
最近観た映画

>DVDで観た映画
『シスター 夏のわかれ道』
 去年公開されたけど地元には来なかった中国映画。原題は『我的姐姐』で、直訳すると「僕のお姉ちゃん」、英題が『Sister』。
 舞台は四川省成都市。主人公の若い看護師の女性は医師になるため北京の大学院入学を目指していたが、ある日突然両親を交通事故で失い、長らく疎遠だった両親に弟が産まれていたことを知る。一人っ子政策のもとで望まれぬ女子として生まれ、両親に疎まれて早くから自立した生活を送ってきた主人公は、政策撤廃後に生まれた両親待望のその6歳の弟の養育を親戚たちから押し付けられるが、初対面で他人同然のその弟を養子に出すことにする。かつて男子を望む両親は彼女が脚に障害があると偽って第二子を許可されようとしたり、彼女の北京の医大への進学希望を家計の助けのために勝手に地元の看護学校に書き換えたりしてきた。だが養子先を探しながら、幼くてわがままいっぱいながらも姉を慕う弟と暮らすうちに、徐々に彼女に姉としての気持ちが目覚め、弟を取るか自分の夢を取るかの葛藤に苛まれていく……。
 男女平等をうたう共働き社会の共産主義国家中国にも古くから存在する男尊女卑文化と一人っ子政策(1979年〜2015年)とが結び付いた歪みを、これが監督2作目という女性監督が大学時代のルームメイトの脚本で描き出した社会派ヒューマンドラマで、中国では記録的大ヒットをするとともに、主人公が最後にくだす決断が賛否両論の論争となる社会現象にまでなったそうです。
 とにかく主演のチャン・ツィフォンが素晴らしい。子役から活躍してる女優で、行定勲監督の中国映画『チィファの手紙』でも主演の名女優ジョウ・シュンの子供時代と娘役の2役を演じてましたが、あの頃よりもちょっと大人になりました。とはいえまだ21歳ですが、まさに若き演技派で実年齢より5歳上の役をごく自然に演じています。オーディションで選ばれた弟役でこれがデビューという子役のダレン・キムも素晴らしく、この2人の演技に惹き付けられましたね。脇を固める伯母(父の姉)役のジュー・ユエンユエン、叔父(母の弟)役のシャオ・ヤンも好演。特にシャオ・ヤン演じる離婚して麻雀ばっかりやってるダメ叔父さんがいい味出してました。

『死を告げる女』
 これまた去年公開されたけど地元には来なかった韓国映画。ちょっとホラー風味のサスペンス映画で、特に好んで観るジャンルではないんだけど、好きな女優のチョン・ウヒが主演してるってことで観ました。原題は直訳すると『アンカー』で、ニュース番組のキャスター(アンカーウーマン)のこと。
 夜9時台のニュース番組の人気女性キャスターが所属するテレビ局に、そのキャスターを名指しで「私は殺されるかもしれない」「私が殺されたらあなたが報道してほしい」という女性からの電話がかかってくる。1度はイタズラ電話と思い、本番間近なので電話を切るも妙に気になり、スクープのチャンスだと発破を掛ける高圧的な母親の言葉に従って電話の主を割り出し自宅に向かうと、母娘の遺体を発見してしまう。それ以来、主人公は精神的変調を起こし、精神の均衡を失っていく。電話の女性は自殺(無理心中)だと警察は判断するが、特ダネを求める主人公は女性の主治医だった精神科医に出会い、彼に疑いを抱く。だが彼が催眠療法で治療をしていたことを知り、悪夢や幻覚に悩まされる主人公は自らも催眠療法を受けることにする……。
 ちょっとホラーっぽくて、不気味だったりちょっとびっくりさせられたりするシーンもあるんですが、基本的には心理サスペンス。途中でなんとなくネタが割れるというか、仕掛けが見えてくるきらいはあるものの、非常に丁寧に作り込まれておりなかなか面白かったです。
 とにかく主演のチョン・ウヒが良い。今回は高圧的な母親の精神的支配下にあり自らも他人を蹴落としてでも地位を保とうとする女性を演じていて、いつも通りの演技派っぷりです。役柄やストーリー上、笑顔のシーンはほとんどなく、冷たい顔か怯えた顔ばっかりなんですが、むしろそれがかえって彼女の美しさを映し出してました。しかしまあチョン・ウヒはいつもシリアスというかハードというか重めの大変な役ばっかりやってるな。精神科医役の俳優と母親役の俳優も不気味なようなまともなような絶妙なたたずまいで、これまた見事な演技派っぷりでした。

>またまたヌーベルバーグ
『突然炎のごとく』
 フランソワ・トリュフォー監督による1962年のフランス映画。第一次世界大戦前後を舞台に、文学志向で親友となった恋多きオーストリア人青年とフランス人青年、2人が出会い激しく惹かれ人生を翻弄されていく自由奔放で激しい性格のフランス人女性、3人の数年に渡る三角関係を描いた恋愛映画です。んー、まあ面白いことは面白いんですが、なんというかジャンヌ・モロー演じる女の性格と行動があまりに激しすぎて正直ちょっと引いてしまいますね。公開当時はフランスばかりでなく女性解放運動が盛んだった米国やイギリスでもヒットしたらしいんですが、そういう時代だったんでしょう。ただトリュフォー自身はそういう安易に世の動きに重ねる傾向には否定的だったらしいです。

『日曜日が待ち遠しい!』
 フランソワ・トリュフォー監督の遺作となった1983年のフランス映画で、モノクロのミステリー映画です。南仏のある小さな不動産会社の社長が連続殺人事件の容疑を掛けられ、1度はクビになりかけた女性秘書が社長の無実を晴らすために素人探偵よろしく独自の捜査を開始するというストーリー。原作小説があるらしく、お話が非常によく出来ていて最後まで事件の真相や犯人が全くわかりません。展開も秀逸でなかなか面白かったです。原題通りの邦題もまた秀逸。

>テレビドラマの話
 中国ドラマ『ロング・ナイト 沈黙的真相』を観終わりました。面白かったです。見ごたえのある社会派サスペンスでした。映画『THE CROSSING 香港と大陸をまたぐ少女』で主演してたホアン・ヤオが出演してましたが途中までは思ったより出番が少なく、あくまで脇役なのかなと思ったら、終盤に重要なキーパーソンだったことが判明します。やっぱり字幕で観たかったな。

>久しぶりに観てるテレビアニメ
 いやー、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』、すごい展開になってきましたねえ。富野監督作でもないのに富野イズム全開で目が離せません。10話も行かずにシーズン1が去年の12月で終了して次は今年の4月からとなった時はどうなることかと思いましたが、またも今月末でお話が終わりそうにもない。また休んでシーズン3とかになるんだろうか? なんでも最近のテレビアニメはそういうのが多いらしいんですが。
 映画『閃光のハサウェイ』パート2も、『水星の魔女』シーズン1が終わった後にテレビ編集版を放送してたからいよいよなのかなと思ったら、未だ公開の予定はないそうで。舞台となるオーストラリアの取材がコロナの影響で進まないんだとか。質の高いものを作るのももちろん大事ですが、シリーズものはある程度定期的に作るのも大事。毎年とは言わんけどせめて1年置きには公開してくんないかなあ。2年以上も開いたら前の内容忘れちゃうし、観に行く人も減っちゃうんじゃなかろうか。



#1878 
バラージ 2023/05/10 20:40
やっぱり小宇宙(コスモ)は燃えなかった

 『聖闘士星矢 The Beginning』というマンガ『聖闘士星矢』の米国実写映画を観ました。新田真剣佑主演のやつです。監督はポーランド人とのこと。いやね、十中八九ダメな映画だろうなとは思いつつ、まあ原作ファンとして観とくかってのと怖いもの見たさで観に行ってみたんですよ。
 うーん、なんて言うのかな。米国映画だからだいぶ改変はされてるだろうなとは予想してたし、それについては覚悟してたというか許容範囲ではありました。しかし改変の方向性がなあ。ギリシア神話っぽさは皆無で、ファンタジーっぽさもほとんど無くなって、どっちかっていうと近未来SF×サイキックSF風味のアクション映画になってしまってた。宇宙船みたいな垂直離着陸機とか敵組織のサイボーグ部隊が出てきて、いくらなんでも世界観が違いすぎ。逆に星矢以外の聖闘士(セイント)が全然出てこない。鷲座(イーグル)の魔鈴(マリン)は出てきますが、この人は師匠なので特訓シーンばっかりだし、星矢は敵サイボーグと戦うばかりで聖闘士同士の戦いが最終盤まで全然ない。アテナの女の子の親父のボディガードみたいなハゲ(原作のダメ執事のアレンジか?)がなぜか凄腕で、強化ショットガンみたいなのでサイボーグ部隊と壮絶アクションを繰り広げるんですが、なんで聖闘士星矢で聖闘士じゃないもん同士の戦いを延々見せられてんのか意味わからん。最後の最後にようやく鳳凰座(フェニックス)が出てきて、やっと聖闘士同士の戦いになるんですが、そこまでが長すぎ。正直途中でちょっと眠くなっちゃいました。ストーリーも聖域(サンクチュアリ)がどうこうみたいなのは一切出てこず、地球滅亡みたいな大風呂敷広げながら結局は家庭内騒動というのもスケールでかいんだかショボいんだか。
 確か最初期のチラシではタイトルが原題をカタカナにした『ナイツ・オブ・ザ・ゾディアック』となってたんですが(日本での集客を考えて邦題を変えたんでしょう)、2019年に『聖闘士星矢: Knights of the Zodiac』というNetflixオリジナルの米日合作3DCGアニメが作られており、この実写映画もそっちを踏襲した部分が多いようです。原作をかなり改変したアニメらしく、国際展開を前提に作られたからかアンドロメダ瞬を女に変えて批判を受けたやつですね。僕は観てませんが。またこれも僕はほぼ未見ですが、原作漫画と並行して放送された『星矢』アニメ版は原作とは多少設定が変わったり、話が追いついちゃうからオリジナルエピソードが入ったりしており、派生作品にも影響を与えた部分があるみたい。アニメではアテナこと沙織お嬢さんを育てた金持ち城戸光政のグラード財団が聖衣(クロス)を科学的に分析して開発した人工的な鋼鉄聖衣(スチールクロス)を着た鋼鉄聖闘士(スチールセイント)ってやつらが出てくるとのこと。原作ファンからは大不評で話が進むごとに消えてしまったようですが、『聖闘士星矢: Knights of the Zodiac』では原作の暗黒聖闘士(ブラックセイント)がそういう位置付けらしく、グラード財団が分裂して悪の組織になった側が開発した設定のようで、実写映画に出てきたサイボーグがその暗黒聖闘士らしい。他にも登場人物の変更された洋風名前とか、聖闘士が戦車や戦闘機と戦うとか、実写映画はそっちに影響を受けた部分が多いようです。
 ただまあ実写映画も『聖闘士星矢』が原作というのを度外視して観れば、単純な映画としての出来は『信虎』や『杉原千畝』ほどにはひどくありません。だからといって面白くもありませんが。駄作寄りの凡作といった程度ですかね。マーベル映画の劣化版みたいなチープさですが、それでも製作費が6000万ドル(82億円)かかってるというから驚きです。金は全部東映が出したみたいだけど大丈夫なのか? 大爆死してるみたいだけど(公開3日の興収が5000万円らしい)。僕が行った映画館も客はいっぱいいたけど多分マリオやスラムダンク観に来たやつらで、星矢の客は10人くらいでした。

 しかし映画レビューサイトの平均点はこれが意外にも低くない。『杉原千畝』や『信虎』もそうなんですが、5点満点つけてるやつがゴロゴロいる。僕にはあれに5点満点付けるなんて到底信じられないんですが、『杉原〜』の時は杉原が立派な人だからとか日本が良く描かれてるからというイデオロギーチックな理由で高い点つけてるやつが多いのかなと思ってたけど、そういう理由のない『信虎』や本作でも5点満点つけてるやつが異様に多い。これはおそらくですが映画会社がサクラを大量に送り込んでいるのではあるまいか? 食べログやAmazonと同じような不正が行われてると考えれば納得できます。やれやれ。


>テレビドラマの話
 今季面白いドラマは、テレ朝の『日曜の夜ぐらいは…』、NHKの『育休刑事(デカ)』、WOWOWの『ウツボラ』。他にNHK-BSで中国ドラマ『ロング・ナイト 沈黙的真相』が深夜に集中放送。気づいた時にはWOWOWでの放送が終わっており、その後NHK-BS4Kだか8Kだかで放送されましたが当然そっちは観れず。しかしよほど評判が良かったのか普通のBSでもやるようで、中国ドラマとしては全12話と短めだしとりあえず録画してみるかな……と思って録画を観たら吹替でした。そういやNHKの海外ドラマは吹替なんだよな。WOWOWでは字幕だったんだろうけど。



#1877 
バラージ 2023/04/27 23:55
喪失と再生

『大事なことほど小声でささやく』
 毎度おなじみ去年公開されたけど地元には来なかった日本映画です。森沢明夫の原作小説を横尾初喜監督が映画化した作品。
 ムキムキマッチョなオカマのゴンママが営むスナックには、ゴンママの通うジムの常連仲間が常連客として集まってくる。彼らはみな一様に何らかの悩みや不安を抱え、ゴンママに話を聞いてもらってそのような心に溜まった澱を吐き出していく。そんな常連客の中に四海という歯科医がいた。普段は過剰に饒舌でマシンガントークの彼も実は心に深い傷を抱えており、そのせいで妻との関係もすっかり冷えてギクシャクしたものになっていた。そしていつも明るいゴンママもまた、時にふと言い様のない不安に襲われる時があった……。
 暗く重いヒューマンドラマで、四海の抱える闇が徐々に明らかになっていく構成が上手い。観ていてなんとなく時系列が前後してるなというのが感じられ、そしてそれが物語の大きなキーになっていきます。序盤のジムやスナックのシーンこそややコミカルですが、四海夫妻のシーンになるととたんに重苦しい空気が画面を支配し、夫妻の深い喪失感とそこからの再生が描かれていく。
 四海役の深水元基と妻役の遠藤久美子の熱演が素晴らしい。特にエンクミは本当にいい女優になったなあと感慨深く感じました。やはり監督してるのが旦那さんということで、彼女の魅力と演技を最大限に引き出してるんでしょう。役者と監督の出会いって大事ですね。あとスナックのバーテンダー役の田村芽実っていう女の子がエンディングテーマも歌ってるんですが、演技のほうはまあまあながら歌が上手くてびっくり。調べたらハロプロのアンジュルムというグループにいた子らしい。
 唯一難点を言えば、ゴンママ役の後藤剛範がトップクレジットなのに物語のメインではなく、実質的に深水とエンクミが主演になっちゃってるところ。ゴンママの孤独感も描かれますがサブエピソードと言ってよく、どちらかというと狂言回しに近い。これは原作が連作短編らしく、その中の一編を事実上の原作としたためのようです。そういえば他の常連客(峯岸みなみ、遠藤健慎、大橋彰(アキラ100%)、田中要次)もそれぞれ何か事情ありげながら、アキラ以外はほのめかされる程度にとどめられてましたね。
 まあ、ともかく良い映画でした。面白かったです。


>その他のDVDで観た映画
『もっと超越した所へ。』
 こちらも去年公開されて映画館で観ようか迷ってるうちに見逃した日本映画。
 衣装デザイナーの女性のアパートに転がり込んできた元同級生で自称ミュージシャンの男、同居している元子役芸能人女性とイケメンのゲイ男性、同棲してるギャルとフリーター、子持ちの風俗嬢といつも彼女を指名する俳優という4組の男女の関係やいざこざを、それぞれの家や風俗店という4つの部屋を舞台に描いていきます。主演は前田敦子、趣里、伊藤万理華、黒川芽以、菊池風磨、千葉雄大、オカモトレイジ、三浦貴大。
 かなり序盤から、あれ? これ演劇の映画化じゃねーの?と思い、途中でそれが確信に変わりました。舞台が4つの室内にほぼ限定されてるし、その室内もどこかガチャガチャとして人工的で現実感に乏しい。登場人物がほぼ全編しゃべりっぱなしの台詞劇で、映像で見せるところが少ない。場面転換やシナリオ展開や作品演出もやたらと演劇的。観終わってから調べたらやはり演劇の映画化で、演劇の脚本・演出をしてる女性が映画の脚本も書いてました(監督だけ別の男性)。何度か書いてますが、僕はこういう演劇の映像化作品が苦手。この作品は特に演劇をそのまま映画に移し変えたような感じで、ここまで演劇的だとそもそも映像にする必要があるのかという疑問もわきましたね。もう1つ個人的に苦手だったのは明白に女性視点からの作品だったところで、そういうのも僕はちょっと……。女性視点オンリーの作品にはどうしても違和感を感じてしまいます。
 単純に作品としての出来は悪くなくて、俳優たちもみんな上手くて熱演で、最後まで飽きずに観れたんだけど、やっぱり最後まで今一つ入り込めませんでした。なんか苦手だなぁと居心地の悪さを終始感じてしまいましたね。

>映画館で観た映画
『釜石ラーメン物語』
 地元で先行公開されてる映画で、全国公開は7月の予定。
 岩手県釜石市が舞台。ラーメン屋を切り盛りしていた母が東日本大震災で行方不明となって数年。残されたラーメン屋を継いだ父と妹のところへ、家を飛び出していった姉が3年ぶりに突然帰ってくる。父と妹は母の味を継げず、店の売り上げは右肩下がり。店なんて畳んだほうがいいと放言する姉は妹と何かにつけて衝突を繰り返すが、ある日父が倒れ、また人気YouTuberが取材に訪れたことから姉妹は母の味の再現に挑戦することに……といったお話。
 まあ、ありきたりでベタなストーリーではありますが、きちんとしっかり丁寧に作られており笑いとか涙の要素もしっかり描かれていてごく普通に楽しめました。今関あきよし監督発信で作られた映画で、いわゆる御当地発信映画じゃないのが良かったんでしょう。ご当地映画って地域の魅力や歴史を伝えようみたいな余計なとこにばかり気が行って、肝心の映画としては退屈なものになっちゃうことが多いように感じます。この映画はあくまでプロ主導の娯楽映画として作られてたし、それでいて釜石の風景とかも十分魅力的に撮られてました。
 役者陣では主演の井桁弘恵の演技は正直微妙でしたが、妹役の池田朱那って子が結構上手かったです。そして父親役の利重剛がやはり上手い。この人の演技で映画がビシッと締まったものになってました。利重さんは最近お父さん役でいい味出してますね。ドラマ『リバーサル・オーケストラ』でも主人公の父親役だったし。そして亡き母親役が佐伯日菜子。金子修介監督の『毎日が夏休み』(1994年)でデビューしたんだよなあ。いやはや時が流れるのは早い。岩手県陸前高田市出身の村上弘明も特別出演してました。
 意外になかなか面白かったです。観ててラーメンが食いたくなって、食って帰りました(笑)。

>テレビドラマの話
 今季ここまでで面白いドラマはNHKの『育休刑事』。前田敦子が主人公の変人姉貴を怪演してて、ドラマの半分くらいはその面白さで持ってるような感じですね。前田さんは今季、テレ東の『かしましめし』とWOWOWの『ウツボラ』で主演、そして『育休刑事』で準主演とちょっとしたあっちゃん祭り状態。『ウツボラ』は最初見逃したんでまぁいいかなと思ったら、WOWOWお得意のまとめて再放送が最後まで終わらないうちから早くも始まったんでまとめて録画。妖しげな主人公2役を演じてて、こちらもなかなか良い。『かしましめし』は地元でやってないんで未見。観ようと思えばTVerで観れるんですが、なんだかんだで2話がもう消えてます。成海璃子ともう1人男優とのトリプル主演ですが、成海璃子とは映画デビュー作の市川準監督最後の長編映画『あしたの私のつくり方』(2007年)以来で感慨深いものがありますね。

>追悼リチャード・ン
 香港の俳優リチャード・ン(リチャード・ウン)が今月の9日に亡くなっていたとのこと。83歳だったそうです。『五福星』シリーズとかにとぼけた役で出てたヒゲがトレードマークの喜劇俳優で、『スパルタンX』『奇蹟 ミラクル』なんかも印象深い。最近も『スキップトレース』や『無敵のドラゴン』にちょい役で出てました。ご冥福をお祈りします。



#1876 
バラージ 2023/04/12 23:04
光り輝く女の子

『恋は光』
 去年公開された日本映画。地元に来たのか覚えてないんですが、先日ふと『殺さない彼と死なない彼女』の小林啓一監督ってその後なんか映画撮ってんのかなと気になり、調べてみたらこの映画を撮ってたのを知って、そしたらたまたまWOWOWで放送予定があったんで録画したのです。DVDももうレンタルされてますね。
 誰かに恋をしてる女性から光が発して視えるという特異体質を持つ変わり者の文学男子大学生・西条が主人公。彼はその特異体質を迷惑に感じており、自身は恋と無縁な人生を送ってきた。だがある日、恋がわからないため大量の文学を読んで恋というものを探求しているという文学少女の女子大生・東雲に一目惚れ。西条は唯一の友だちである幼なじみの女子大生・北代に橋渡しを頼み、東雲と恋の定義を探求する交換日記を始めるが、実は北代は西条にずっと秘めた想いを抱いていた。だが西条は北代だけはなぜか光って視えず、彼女の気持ちに気づかない。一方、北代や東雲の同級生で略奪愛でしか恋愛できない女子大生・宿木は西条を北代の恋人と思い込んで猛アタックを始め、やがて4人の奇妙な関係は“恋とは何か”という哲学的命題に……というストーリー。
 いやー、良かった。『殺さない〜』も傑作でしたが、こちらも負けず劣らず素晴らしい作品でした。これまたマンガが原作で、“文科系哲学恋愛映画”と銘打ってるだけあって、西条も東雲も文学調の時代錯誤なしゃべり方をしてるんですが、それが不自然さを感じさせないリアリティのあるキャラクターとして落とし込まれてるのがすごい。『殺さない〜』でもそうでしたが、小林監督はちょっと変な若者たちを魅力的に描くのが抜群に上手いですね。特に女の子たちは、北代役の西野七瀬も、東雲役の平祐奈も、宿木役の馬場ふみかも、悶絶するほどにめちゃくちゃ可愛かったです。特に西野七瀬は今まではそこまで良い女優だと思ってなかったんだけど、これ以上ない当たり役に出会ったんではないでしょうか。女優だから可愛いのは当たり前にも思えますが、実際に映画を観てると女優を輝かせるのが上手い監督とそうでない監督がいるんですよね。ジョン・ウーなんかは後者ですが小林監督は間違いなく前者で、『殺さない〜』の時も女優たちが光り輝いてました。本作でも主演の神尾楓珠が演じる西条のキャラクターや演技も絶妙で、彼も含めてキャスティングが完璧でしたね。
 早くも今年No.1かも。もし地元でも上映してたとしたら映画館で観るべきだったなあ。去年観てたら間違いなく1位でした。



#1875 
バラージ 2023/04/03 23:04
追悼・坂本龍一&高橋幸宏

 坂本龍一さんが亡くなられましたね。映画的にはやはりなんといっても『戦場のメリークリスマス』でしょうが、個人的には忌野清志郎さんとのコンビで歌った「い・け・な・いルージュマジック」が第1印象。それからYMOの「君に、胸キュン。」かな。そういや中学の同級生にYMOが好きなやつがいたなあ。
 少し前になりますが同じくYMOの高橋幸宏さんも亡くなられました。映画だと『ノルウェイの森』に細野晴臣さんともども友情出演されてましたね。
 ご冥福をお祈りします。



#1874 
バラージ 2023/03/31 22:03
『真・仮面ライダー 序章(プロローグ)』は序章のみで終わりました

 シン・シリーズ3作目(?)の『シン・仮面ライダー』を観ました。
 最初はまたまた専門用語みたいな難しい言葉連発でこっちがついてけないまま話が進み、そこがちょっとあれでしたが、オリジナルのテレビドラマ初期や石ノ森章太郎のマンガ版みたいなダークな作風は良かったです。怪人が爆発するんじゃなくて、泡になって消えちゃうというテレビ版初期みたいな演出とかね。Wikipediaでマンガ版の記事を読むと、映画はマンガ版を踏襲したところもあるみたい。出てくる怪人の数が多すぎて若干話が長く感じましたが、かといって怪人を減らすと話が唐突になっちゃうしそこは難しいところ。あと、面白いことは面白かったんだけど、なんだか仮面ライダーよりも浜辺美波ちゃんのほうが主役だったような(笑)。
 それからロボット刑事みたいなキャラが出てきたと思ったらKって名前で、やっぱロボット刑事Kじゃん!て思っちゃいましたね。そう考えるとその1つ前のタイプという設定のJってやつもキカイダーっぽいデザインでしたが、そういやキカイダーの名前はジローでイニシャルはJだなと思ったり。石ノ森ヒーロー総出演?って庵野秀明監督のマニアックぶり炸裂か。立花藤兵衛は出てこないのかと思ったら……なんてネタもあったなあ。
 竹野内豊や斎藤工など『シン・ウルトラマン』組も(もちろん別人の役で)出演。観てる時は誰だかわかんなかったけど、エンドロール見たら長澤まさみも名前が出てました。調べて、あー、あの役かと思った次第。他にも観てる時は演じてる俳優が誰だかわかんなくて、エンドロール見たら名前が出てきたなんて人が結構ぞろぞろいました。
 全体的には『シン・ウルトラマン』よりはやや落ちますが、『シン・ゴジラ』よりはずっと面白かったという感じですね。


>DVDで観た映画
『あなたがここにいてほしい』
 去年公開されたけど地元には来なくて、レンタルDVDで観た映画です。2021年の中国映画で、中国のソーシャルサイト豆瓣(ドウバン)に投稿された実話小説『十年間一緒にいた彼女は、明日他人の嫁に行く』を基にした、ある男女の高校時代からの10年間(3650日)に渡る恋愛を描いた恋愛映画とのこと。中国本国では大ヒットしたそうです。20年近く前の日本の『電車男』(未読未見)みたいなもんでしょうか。
 とにかく冒頭序盤から今時の映画としてえらく洗練されていて感心しました。昔から中国映画を観てる者としては、中国映画というと良い意味でのある種の武骨さ、あるいは先鋭的・野心的な芸術性といったものが特徴で、さもなくば娯楽映画ではやや古くさい野暮ったさが感じられるものがあったりもしたんですが、そのようなものとは無縁の洗練された高い映画的娯楽性を備えた作品となっています。そういう意味では台湾の娯楽恋愛映画に近い感じ。現代の中国の若者の結婚と経済的事情という社会的要素も入れながら、若い2人の純愛を描いたあたりが共感を呼んだらしいです。監督はこれが長編映画初監督とのこと。
 個人的にはお涙ちょうだいのベタな純愛映画という赴きが少々感じられて、そこまで好みの映画ではなかったんですが、映画としての出来自体は良くて最後までそれなりに面白く観れました。主演男優のチュー・チューシアオも悪くなかったんですが、映画初主演という主演女優のチャン・ジンイーが清楚な雰囲気を持ちつつ演技もなかなか上手くて良かったですね。

>テレビドラマの話
 今季面白かったテレビドラマは『リバーサル・オーケストラ』。尻上がりに面白くなっていきました。配役も絶妙でしたね。



#1873 
バラージ 2023/03/13 20:54
夜明けを待ちわびて

 『崖上(がいじょう)のスパイ』という中国映画を観ました。チャン・イーモウ監督の2021年の作品です。
 物語の舞台は1934年の満州。ソ連で訓練を受けた中国共産党の4人のスパイが落下傘で雪深い森林地帯に潜入する。彼らは「ウートラ計画」という極秘任務を帯びていた。男女それぞれ1人ずつの二手に分かれてハルビンに向かう彼らをバックアップする計画の同志が合流するが、その正体は処刑の恐怖に怯えて寝返った裏切り者の密告で計画を知った満州国特務機関だった。一方、特務機関内部にも共産党の工作員が潜り込んでいた……。
 いや、面白かったです。まさにスパイ映画の見本のような秀作でしたね。実録スパイもののようなリアルタイプと、『ミッション・インポッシブル』『007』のような娯楽タイプのちょうど中間くらいで、リアルな娯楽映画といったところでしょうか。チャン・イーモウ監督だけあって、とにかく画作りが素晴らしい。雪の吹きすさぶ雪原での野外撮影もものすごいし、ハルビンの街のセットもすっげえ大掛かり。あんなの作られたら日本映画はもう敵いませんな(まあチャン・イーモウのレベルの作品と比べるのはフェアじゃないけど)。そして脚本ももちろん良いんですが、演出も素晴らしく、暗号、毒薬、睡眠薬、逃走、裏切り者、二重スパイ、読み合いに騙し合い、格闘に銃撃戦にカーチェイスと全てがてんこ盛りでありながら、やり過ぎ感が全くない。絶妙なバランスで完成されており、先がわからなくて最後までハラハラしたし、人物描写も緻密でドラマ性にも溢れています。ちょっと同監督の『SHADOW 影武者』にも似てましたね。
 役者陣、特に男優陣はいわゆるイケメンを排除した地味な演技派ベテラン俳優とおぼしき面々で固められていて、そういう目立たない外見がスパイや特務機関という目立っちゃいけない職業に見事にマッチしています。おそらくチャン・イーモウは間違いなくそれを狙ったんでしょう。客を呼べるイケメンを出せみたいな圧力があったとしても、イーモウ自身が客を呼べる監督なんで跳ね返せるんでしょうね。実際、中国本国では記録的な大ヒットになったみたいだし。
 各配役は、年嵩の男性スパイ役のチャン・イーがイーモウの前作『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』に続く主演。その妻である女性スパイ役のチン・ハイルーは2000年にフルーツ・チャン監督の香港映画『ドリアンドリアン』でいきなり主演デビューした女優ですが(懐かしい)、当然ながらもうすっかり大人というか素敵な中年女性ですね。若いほうの男性スパイ役のチュー・ヤーウェンはドラマ『大明皇妃』で主演女優タン・ウェイの相手役でした。その恋人の女性スパイ役は『ワン・セカンド』で主演デビューしたリウ・ハオツン。相変わらず可憐でした。特務機関の出世頭役のユー・ホーウェイはチャン・ツィイー主演ドラマ『上陽賦』でツィイーの父親役でしたね。
 ま、とにかく面白かったです。良かった。

 御年72歳のチャン・イーモウ監督ですが、この作品の後、2022年には『狙撃手(原題)』、今年2023年には『満江紅(原題)』が公開され、『堅如磐石(原題)』が公開待機中といまだ精力的に活動し続けてます。その間にオリンピックの開会式だの閉会式だのも演出してるんだからとんでもない強靭さですね。台湾のホウ・シャオシェンは後進の指導に力を入れているようだし、香港のウォン・カーウァイはもともと寡作家なんで、チャン・イーモウにはまだまだがんばってほしいところ。



#1872 
バラージ 2023/02/26 22:39
忘れてた追悼

 漫画家の松本零士さんも亡くなられましたね。松本さんの作品は『宇宙戦艦ヤマト』『銀河鉄道999』『1000年女王』などテレビアニメはよく観てたんですが、実はマンガは読んだことがないんですよね。アニメ映画はテレビ放送された『ヤマト』の最初の2作が印象深いかな。
 映画とは関係ありませんが、笑福亭笑瓶さんも亡くなられましたね。
 ご冥福をお祈りします。



#1871 
バラージ 2023/02/23 21:48
最近観た映画

『夜明けの詩(うた)』
 静謐な雰囲気の韓国のヒューマンドラマ映画。監督は韓国版『ジョゼと虎と魚たち』の監督とのことですがそっちは観ていません。
 ある小説家が、喫茶店で出会った女性、後輩でもある出版社の女性編集者、偶然出会ったかつて仕事をしたことがある中年写真家、店を辞めるという行きつけのバーの女性バーテンダー、それぞれに何かを抱える人々の話を静かに聴き、自らも記憶や物語を語るうちに、小説家自身もまた自らの過去や現在と静かに向き合っていく……というようなストーリー。
 ポスターは主演のヨン・ウジンと『ベイビー・ブローカー』でも好演してたIUことイ・ジウンが寄り添った印象的なデザインで、それで気になって観たんですが内容的には実質オムニバス形式でイ・ジウンはあくまで登場人物の1人に過ぎませんでした。ただポスターから受ける印象は映画の雰囲気をよく表してましたね。とにかく全編に渡って暗く静謐な映画で、ほとんどが会話劇で成り立ってます。登場人物の誰もが大声などあげず、静かな語り口でしゃべっている映画でした。映像も暗く、室内は喫茶店やバーだから暗いし、屋外も曇りや薄暮・夜・薄明のシーンばかり。それで80分ちょいを退屈させずに見せるのはすごい(そういや『宮松と山下』も80分ちょいの映画でした)。なんというか村上春樹の小説世界をちょっと思わせる映画でしたね。韓国映画には村上春樹の影響を感じさせる映画って結構多いんですよ。ま、それはともかく、これは観る人を選ぶ映画でしょう。僕も面白いことは面白かったんですが、あまりに静謐すぎて終盤さすがに若干眠くなりました(笑)。

>録画で観た映画
『燃えよデブゴン』
 サモ・ハン・キンポー主演・監督の1978年の香港映画。『死亡遊戯』で共演もした敬愛するブルース・リーのオマージュ映画でもある現代劇カンフー・アクション・コメディです。原題『肥龍過江』はリーの『猛龍過江(ドラゴンへの道)』、英語題『Enter the Fat Dragon』は『Enter the Dragon(燃えよドラゴン)』のパロディで、邦題もこれまた秀逸。おかげでサモの主演映画は以後漏れなく邦題に「デブゴン」と付くようになってしまいました。内容は『ドラ道』『燃えドラ』だけでなく『危機一発』『怒りの鉄拳』『死亡遊戯』といったリー映画のオマージュを散りばめながら、まあ一昔前の典型的な香港カンフー・コメディです。昔はこういうのよく深夜にテレビでやってたな〜と妙に懐かしかったですね。弟分のユン・ピョウとかもエキストラでちょこちょこ出てるのも今になって観ると楽しい。肩の力を抜いて観れば楽しめる娯楽映画でまあまあ面白かったです。ただカンフーのできる黒人(アフリカ系)が用意できなかったのか、香港人が顔を黒く塗ってアフロのかつらで黒人を演じてるのは今だったらポリコレ的に完全にアウトでしょう。

>追悼ヒュー・ハドソン
 『炎のランナー』の監督ヒュー・ハドソンが亡くなりましたね。『炎のランナー』を最初に観たのは地上波テレビでの吹替放送でしたが、とても感動したのを覚えています。その後、レンタルVHSで字幕版も観た後、低価格再発売VHS、DVDと購入しました。ま、正直それ以外の作品は観てないんですが。ご冥福をお祈りします。

>テレビドラマの話
 去年の10月頃の深夜にたまたまテレビをつけたらやってた木村文乃主演の『ちょこっと京都に住んでみた。』というドラマが面白かったんですが、観た時点で全6話の第4話だったんですよね。DVDレンタルが開始されたんで、観逃した最初の3話も含めて改めて観直しました。テレビ大阪の連ドラらしく、木村さん演じる主人公が京都の街を巡り、いろんな店で店の人と触れ合うという半分ドキュメント・タッチな部分と、普通に役者とのドラマ部分を組み合わせたようなスタイルのドラマなんですが、なんだか観ていて深夜ドラマ特有のゆったりとした空気がすごく心地良かったんですよねえ。そして、このドラマの木村文乃さんは最高に可愛いです。



#1870 
バラージ 2023/01/18 20:48
虚と実と

 『宮松と山下』という映画を観ました。去年の11月に公開された映画なんですが、地元じゃいつものごとくこんな時期になってようやくの公開です。
 京都でしがないエキストラ俳優として日々、斬られ役、射たれ役、通りすがり役、背景人物役などなどを演じつつ、食べていくためにロープウェイの仕事も兼ねている男・宮松が主人公。実は彼は過去の記憶のほとんどを失っていた。エキストラを続けながら静かに慎ましく日々を生きる宮松のもとに、ある日彼の過去を知る男が訪ねてくる。その知人は宮松を山下だと言い、もともとは東京に住んでいて歳の離れた妹もいることを告げる……。
 最初から最後まで不穏な空気の漂う映画で、あえて全てを説明せず、かといって説明が無さすぎてわからないほどでもないという絶妙なさじ加減の作品でした。直接的な説明を避け、ほのめかすような描写が多いのが特徴の非常に静謐な映画で、何気ない情景やふとしたしぐさや表情などに何らかの比喩や含意を含めてあるような作品。劇中劇と現実の境界をあえて曖昧に描いており、一応の区別はついているものの、時々、ん? これはどっちだ?となったり、えっ? これ、そうだったの?となったりします。ネタバレしたくないんで、あまり多くは言いませんが。
 主演の香川照之はドラマ『半沢直樹』あたりから過剰にオーバーなコテコテ演技が多くなりましたが、本作では抑えた静謐な演技に徹し、宮松=山下の多面性をわずかな表情の変化やしぐさで見せてくれます。ま、いろいろありましたが、やっぱりこの人は怪物ですな。個人的には品行方正な大根役者を見せられるよりずっといい。脇を固める中越典子、津田寛治、尾美としのりも同様に抑えた静謐な演技で好演。個人的にお目当ての野波麻帆は前半だけの登場でしたが、相変わらず色気駄々漏れ状態でやはり好演でした。いい女優です。


>続・スポーツ選手の出てる映画
 他にアスリートの出てる映画って何か観てたかなあ?と考えてもなかなか思い出せないのは、あんまりそういうところに着目して映画を観ていないから。
 そんな中、ふと思い出したのはジャッキー・チェンとクリス・タッカー主演の米国映画『ラッシュアワー』シリーズのどれかに、確か当時NBAで活躍してた中国人のデカいバスケ選手が出てた記憶が……と思って調べると『ラッシュアワー3』にソン・ミンミン(孫明明)という選手が出てました。役柄はバスケ選手ではなくカンフー道場の道場生役で、そこから、ああ、そういえば!と思い出したのが、ブルース・リーの死後に完成した『死亡遊戯』(&『BRUCE LEE in G.O.D. 死亡的遊戯』)に出てたNBA選手カリーム・アブドゥル・ジャバール。『ラッシュ〜3』にソンを出演させたのは、『死亡遊戯』のジャバールのオマージュだと何かで読んだ記憶があります。ジャバールはNBAの得点最多記録を持つバスケ史上最高の選手の1人らしいけど、子供の頃はそんなこと知らなかったから、あくまで五重塔でリーと戦ってたデカい黒人でした。というか今でもそう。バスケにあまり興味がないんで(笑)。そういやジャバールはコメディ映画(というかギャグ映画)『フライングハイ』にも出てたな。
 考えてみるとカンフー映画やアクション映画にはそもそも本職の格闘家が結構出てると思うんだけど、そういう人たちも入れちゃうとキリがなくなっちゃうんだよな。



#1869 
徹夜城(支配人) 2023/01/15 23:34
スポーツ選手が出た映画つづき

 少し間を開けましたが、その後「スポーツ選手が出演した映画」について思いをめぐらしたのでちょこっと書いてみます。

 まずほぼ一周忌になる水島新司の漫画を原作にした「野球狂の詩」。水島さんが懇意にしていた野村克也が本人役で出演してました。この実写版映画は女性投手・水原勇気をメインといた内容ですが、そもそも原作漫画でその設定を出す際に水島さん、野村さんに「可能かどうか」を質問して「決め球を持っていればリリーフで可能」と回答されたという逸話があり、その縁で出てるのかな、と。

 あとは韓国映画「力道山」で、プロレスラー役で現役のレスラーたちが出演してました。力道山当時のものとは全然違うスタイルなのは承知の上で、今の人が見て本物っぽく感じるほうを優先したとか当時パンフに載ってました。

 あと変わった例としては、黒澤明監督の「野良犬」。劇中で実際のプロ野球の試合が行われる球場で撮影したシーンがあり、戦後間もない時期のスター選手たちが映っています。ま、これは「出演」とは言わないでしょうが。



#1867 
KocmocKocma 2023/01/14 10:44
サッカー選手出演映画

1942年8月9日に行われた「死の試合」を題材にした映画では「勝利への脱出」«Победа»(かなりアレンジしている)がやはり一番有名ですね。
いい映画ですが、スラブ系の人物が殆どいなくていきなりあそこにペレが登場することの場違い感はやはり大きいです。しかしあのペレのバイスクル観てサッカーを志した人も結構いるみたいなんですよね。
死の試合についての最初の映画化作品は1962年のソ連映画«Третий тайм»(第三の試合時間)だそうです。
また、ロシア・ソ連文化についての大家である山田和夫さんによれば«Két félidő a pokolban»「地獄のハーフタイム」というハンガリー映画があるそうです。
さすがにご当地では何度も映画化されているようで、2012年にもロシア映画で«Матч»(試合)というのが作られています。GKニコライ・トルセヴィチをモデルにした主人公をセルゲイ・ベズルコフというそこそこ名の知れた俳優が演じ、技術指導をしているのは元ロコモチフ・モスクワ及びロシア代表GKの「ボス」ことセルゲイ・オフチンニコフ!というので、ぜひ日本で公開して欲しかったけれどならず、ロシアでの興行成績もあまりよくなかったみたい。

それから、サッカー選手に絞りますが、ドキュメンタリー以外でも結構映画出演はあります。ただ、本人役がやはり多いです。
ジブリル・シセ(フランス)の「TAXI4」、中山雅史「金色のクジラ」、エリック・カントナ(フランス)「エリックを探して」(カントナ自身がケン・ローチに持ち掛けた企画だったとか)、アレクサンドル・ケルジャコフ(ロシア)の「エターナル―奇蹟の出会い」(←この作品を観ようとしたとき東京では上映終了していたので大阪まで行ってレイトショーを観て夜行バスで帰ってきました。そのあとDVDも買いました。)。
「GOAL!」シリーズでは大勢の選手がゲスト出演しているそうです(観てない)。
本人役ではないけれど、サッカー選手・コーチ役で出演しているのは「ヴィーナス11 彼女がサッカーを嫌いな理由」のFWをやっていた方(一目見て、あ、これはプロだなとわかる)、「ピッチ」のルスラン・ニグマトリン(2002年ワールドカップロシア代表のGK、この作品出演当時は地元タタールスタンでラジオのDJやっていて演技も割と手馴れていた)等々。
しかし、サッカー選手からほんとうに俳優に転身して複数の映画作品に出演しているのはマーティン・コムストン(スコットランド)「SWEET SIXTEEN」「明日へのチケット」「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」と、そして何といってもヴィニー・ジョーンズ(ウェールズ)「スナッチ」「ミーン・マシーン」「監獄島」です!まあ割と似たようなキャラではあるけれど。



#1866 
バラージ 2023/01/08 18:38
今さらですが

 こちらの板でも新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
 これまた今さらながら村上春樹が大森一樹を追悼してる読売新聞のネット記事があったことに気づきました。胸に沁みる文章でしたね。

 実在のスポーツ選手が出てきた映画で僕の観たものというと、うーん、何かあったっけ?と考えて、そういえば『ベッカムに恋して』(原題:Bend It Like Beckham)があったなと思い出しました。女子サッカー選手を目指すインド系イギリス人少女を主人公としたイギリスのスポーツ青春映画ですが、インドとイギリスの宗教や文化慣習の違い、人種差別や性差別などを扱った社会派要素の色濃い映画で、邦題はやや甘すぎ。で、映画のラストにベッカムが本人役でちょっとだけ友情出演してるんですよね。ほんとに主人公たちの前を通りがかるだけなんですが。
 あと、つらつら思い出せば、ジャン=クロード・ヴァン・ダム主演の異種格闘技アクション映画『クエスト』に元横綱で格闘家の北尾光司(元・双羽黒)が日本の格闘家(力士?)役で出てたな。それから日本の芸者を題材とした米国映画『SAYURI』にも力士役としてやはり元力士の舞の海が出てましたね。どっちも格闘・相撲のシーンだけで特に演技はしてませんが。また時代劇映画『殿、利息でござる!』にはフィギュアスケーターの羽生結弦くんが出てました。伊達家の殿様役でスケートとは全然関係なかったけど、意外にもなかなかの好演でしたね。

>正月に観た去年の録画映画
『月はどっちに出ている』
 この間亡くなった崔洋一監督の代表作となった1993年の映画。WOWOWで追悼放送されたんで録画しました。原作は梁石日の自伝的小説『タクシー狂躁曲』で、同年に数名の監督の短編ドラマを集めたWOWOWのスペシャルドラマ企画「J・MOVIE・WARS」(懐かしー)の一編として崔監督が『月〜』のタイトルでドラマ化した30分のものをさらに長編映画化したもの。東京を舞台に在日朝鮮人のタクシー運転手を主人公として、出稼ぎフィリピン人ホステスとの恋愛や、主人公を取り巻く人間群像などを描いています。うーん、僕はいまいち趣味に合わなかったかな。つまらないわけではないんですが、登場人物たちのキャラクターとかが個人的にどうも。あと今になって初めて観ると時代性が強いというか、正直絶妙に古くさい。まぁ考えてみれば30年も前の映画なんだから当然かもしれませんが、まだバブルの余韻が感じられる筋立てだし、この10年後に『シュリ』や『冬ソナ』で韓流ブームが来たことを思えば今昔の感があります。ヒロイン役のルビー・モレノが出てきた瞬間、うわ、懐かしーと思っちゃったし、國村隼も若くてびっくり。岸谷五朗や小木茂光、遠藤憲一、金田明夫なんかは今とあんまり変わりませんが。



#1865 
徹夜城(管理人) 2023/01/03 23:55
年越しでの訃報ネタ

 新年あけましておめでとうございます…なんですが、また例によって訃報ネタになってしまいます。

 ただ俳優とか監督といった映画人の話ではなく、「サッカーの王様」ペレが亡くなった件です。僕はペレについては映画「勝利への脱出」でしか見ていないもので。
 知ってる人には説明不要ですが、「勝利への脱出」は第二次大戦問のナチス・ドイツの捕虜収容所が舞台で、連合軍の捕虜たちをドイツ人たちとサッカーの試合をさせるというもの。ドイツ人の優秀性を見せつける意図があるわけですが、捕虜たちはその試合のハーフタイムに脱出する作戦を立てる。ところが試合はドイツ側のラフプレー連発で、頭にきた捕虜たちは脱出をほったらかして試合後半に猛然とのオム、とまぁそういう熱いお話。

 で、これに捕虜の一人の役でペレが出演していて、その神業を披露するシーンがあるわけ。確かに見者なんですが、どうしても場違い感が否めない。まぁこの人を出したことでうぽーつ映画の一種として面白く見れる作品にはなりました。

 実際のスポーツ選手が出演した映画ということでは、僕が見たものでは日本映画「ミスタールーキー」があります。すでにタレントになっていた長嶋一茂が主演、普通のサラリーマンがナイターでマスクで顔を隠してと阪神の投手として登板するというとんでもない設定ですが、勢いでそこそこ見せちゃいます。劇場で見た時、阪神側のファインプレーシーンに「よっしゃ!」って声があがったのを覚えています(笑)。

 まぁ一茂さんの演技は正直微妙だったのですが、ライバルの打者役をやった駒田さんが名演(というよりとても自然)でビックリした覚えが。



#1864 
バラージ 2022/12/31 15:39
2020年代はなかなか大変な時代ですね

 今度は、あき竹城さんが……C-C-B笠浩二さんも……。追悼が続くなあ。

>録画で観た映画
『よこがお』
 2019年に公開された日本映画で、地元の映画館で上映してたような気がしますが、確か1週間だけだったんで見逃してしまいました。主演の筒井真理子さんが結構好きなんでちょっと気になってたんですよね。訪問看護師として真面目に働き、患者や同僚からも信頼されている女性が主人公。看護に通っていた家の長女からも慕われていたが、ある日その家の次女が行方不明となり1週間後に姿を現す。誘拐犯として逮捕されたのは主人公の甥だった。そこから主人公は様々な不条理に巻き込まれ、追いつめられ、転落していく。その姿を描いたヒューマンドラマ映画です。とにかく最後まで救いのない映画で、主人公がこれでもかと悲惨でやり場のない状況に追い込まれていきます。一種の鬱映画と言っていいのかもしれません。映画は時系列が頻繁に前後し、しかもいかにも前後しますよという感じじゃなくフッと変わったりするんで最初はちょっと戸惑うんですが、慣れれば気にならずむしろ心地よい感じ。妙なシーンが出てきたと思ったら夢や妄想(幻覚?)のシーンだったりもします。この映画の作風と雰囲気、どっかで既視感があるなと思ったら、監督の深田晃司は今年観た『LOVE LIFE』も監督してました。そっちは正直ダメだったんですが、この映画は意外に僕は良かった。なんでだろ? 主演の木村文乃と筒井真理子の違いでしょうか? 文乃ちゃんも演技派だけど、彼女だと無意識にもうちょっと爽やかなテイストを期待しちゃうのかもしれません。しかし筒井さんはいいですね。演技が上手いのはもちろんですが、雰囲気がなんとも言えずいい。しかし現在62歳にはとても見えないなあ。撮影当時は58歳くらい? なんと未婚(バツも無し)らしくちょっとびっくり。

 今年のベスト3は『雨とあなたの物語』(#1847、#1850)、『ビリーバーズ』(#1854)、もう1つは迷うなあ。実質リバイバル上映だけどウォン・カーウァイ4Kレストア版5作品(#1856)かな。
 それでは、また来年。よいお年を。



#1863 
バラージ 2022/12/19 23:40
追悼が続くなあ

>追悼 佐藤蛾次郎
 まぁ年代的に当然ですが、『男はつらいよ』出演者も次々亡くなっていかれますね。蛾次郎さん、見た目のインパクトが強くて、子供の頃から見た覚えがあるんだけど、『男はつらいよ』シリーズ以外は何に出てたか、さっぱり記憶にありません。ご冥福をお祈りします。

>またまた録画で小津映画
『晩春』
 小津安二郎監督の1949年の映画。『東京物語』と並ぶ代表作として名高い作品です。鎌倉を舞台に、男やもめの父親(笠智衆)を1人にして嫁には行けないと結婚を渋るファザコン気味の一人娘(原節子)が、父親の強い押しもあって紆余曲折の末に結婚していくまでを描いています。面白かったですね。台詞のない繊細な感情表現だけで見せるシーンがあるかと思えば、延々とどうでもいい無駄話が続くシーンもあったりするんですが、どっちも全く退屈させずに引き付けられて見せてくれるのがすごい。広津和郎という小説家の『父と娘』という小説が原作だそうですが、脚本の野田高梧の功績も大きいものがあるんでしょう。能舞台のシーンが延々映されるところも全く退屈させず、なおかつその能を見てる父娘の何気ない表情だけでその感情を全てわからせてしまう演出も圧巻。笠智衆って台詞は棒読みで決して上手い俳優ではないと思うんだけど、なんとも言えぬ“味”で名優に見えてしまうのは、やはり小津マジックなんだろうか。原節子も僕には特別に美人とは思えないんですが(むしろかなりの男顔)、このあたりは個人の好みかそれとも時代の違いなのか。父親の妹のおせっかい叔母さんを演じる杉村春子(娘の結婚相手の名前の話で笑わせてくれる)とか、娘の親友のバツイチを演じる月丘夢路も抜群の配役です。そしてストーリーもさることながら、社会風俗や風景描写がとても印象に残るのも小津映画。へぇー、この頃はこんなんだったんだ、とタイムスリップしたかのように思わせてくれます。もっとも敗戦から4年にしてはあまりに戦争の傷あとや貧困が無さすぎて不自然かもしれません(実際、公開当時にもそんな批判があったようで)。そのあたりも小津の美学なのかもしれないけど。

『麦秋』
 これまた小津による1951年の映画。「麦秋」とは初夏のことらしい。やはり原節子の結婚をめぐるホームドラマで、原が演じる役名がいずれも「紀子」のため、後の『東京物語』と合わせて「紀子三部作」というとのこと(名前が同じだけで別の人物ですが)。これまた鎌倉を舞台に適齢期を過ぎた娘(原)の結婚問題が題材。娘は独身生活を謳歌して結婚への焦りはないが、家族(兄夫婦と両親)や周囲は気を揉み、あれこれと世話を焼く……というお話。これも面白い。小津の映画を観ていて感心するのは、舞台を現在に移し変えてもほとんど違和感がないくらいに人物像がきわめて現代的なこと。ジェネレーションギャップとかガールズトークとか家族のやきもきとかおせっかいとか、とても戦後6年の話とは思えない。笠智衆はこちらでは原の兄役で、髪が黒くなり七三分け。『東京物語』では義父役だったから演じる役の年齢が幅広いですねえ。杉村春子は知り合いのおばさん役で、この人も小津映画にしょっちゅう出ています。



#1862 
バラージ 2022/12/13 21:26
小説の映画化は難しい

 『月の満ち欠け』という映画を観ました。佐藤正午による2017年の直木賞受賞作の映画化で、僕は今年の秋に原作を読み終えました。
 原作は4人に渡る生まれ変わりと前世の記憶を題材にした恋愛小説なんですが、やはり予想通り映画はいろいろと変えています。1番大きいのは生まれ変わりの3番目をカットして3人に減らしているところ。またその影響もあってか登場人物が原作よりも全体的に若くなってますね。他にも原作と変えられたところがかなり多く、原作をつい最近読み終わっただけに、あー、ここは変えられたか、ここもカットされちゃったか、の連続で、そういうところばかりが気になってなんだか映画そのものに集中できませんでした。それでも話を押し込むためにやや駆け足の展開になっていて、原作よりかなり薄味になっちゃった感が強いですね。
 『鳩の撃退法』の時も思ったんですが、佐藤正午の長編小説は文章ならではの表現や展開が多く、映像化するのが難しいものが多いように思います(まあ基本的にはリアリズムなんで、イマジネーション的な村上春樹の長編小説よりはなんとかなるでしょうが)。連ドラになった『身の上話』(ドラマ題『書店員ミチルの身の上話』)なんかはまさにそうでした。また文章表現の部分にこそ“味”があるので、あらすじだけを追ってもそれこそ味気なくなってしまいます。かといってそこまで表現していると上映時間が長くなるというジレンマ。そのあたりは廣木隆一監督をもってしても上手くいかなかったようです。あと1980年パートの風俗再現がなんだか甘いように感じました。実際の80年代の現代劇映画なんかを観てるとなおさらにそう感じました。ただ有村架純は相変わらず演技上手いなあ。

 今年映画館で観る映画はこれで終わりかな。他に観たい映画が特にありません。各映画館の上映予定を見てもしばらく観たい映画がないようです。
 ドラマ『ザ・トラベルナース』も終わりました。最後まで面白かったですね。『アトムの童』は途中から失速した感じ。


>録画で観たヌーベルバーグ
 数ヶ月前にWOWOWやNHK-BSで録り貯めてたヌーベルバーグ映画をまとめて観賞。

『死刑台のエレベーター』
 1958年の映画で、ルイ・マル監督のデビュー作。社長夫人と不倫している重役の男が、夫人と共謀して会社で社長を自殺に見せかけて銃殺。現場から逃れようと車に乗りかけたところで証拠を残してきたことに気づきひそかに会社に戻るが、全員退社したと思われ乗ったエレベーターの電源を止められて中に閉じ込められてしまう。一方、キーをつけっぱなしだった車を若いカップルが盗み、彼らもまた別の殺人を犯す。また社長夫人は殺害を実行したはずの男の行方が一向にわからず探し回るが……。原作はノエル・カレフという人の推理小説らしいんですが、たった1つの計算違いから運命が狂わされていく複数の人物が交錯する群像劇で、最後は見事に着地します。面白かったですね。全編に流れるマイルス・デイビスのジャズもかっこいい。

『大人は判ってくれない』
 1959年のフランソワ・トリュフォー監督の長編デビュー作で、ジャン=リュック・ゴダール監督の『勝手にしやがれ』と並ぶヌーベルバーグの代表作。トリュフォーの自伝的な映画とのこと。邦題のせいもあって、てっきりナイーブで傷つきやすい内向的な少年の話だと勝手に思ってたら、主人公は悪ガキというか相当な不良少年でした。もちろん家庭環境に問題があるという前提はあるものの、しまいには犯罪まで犯してしまいます。うーん、僕は『勝手にしやがれ』のほうがずっと面白かったなあ。主人公が学校をサボって行った遊園地にある当時の絶叫マシーンみたいなやつ(巨大な円筒形の桶みたいなやつに客がたくさん入って、それが猛スピードでぐるぐる回り、遠心力で壁に貼り付けられる)はちょっと面白かったです。原題は「無分別で放埓な生活をおくる」というような意味の慣用句に由来するらしい。ま、有名な邦題自体はもちろん優れたものだとは思いますが。

『いとこ同志』
 1959年の映画で、クロード・シャブロル監督の2作目とのこと。大学に通うため田舎からパリに出てきて従兄弟の住むアパルトマンに同居することになった生真面目で純朴な青年と、享楽的で奔放で放埒なその従兄弟の大学生。対照的な2人の青年の姿を描いた青春ドラマ映画です。女性にも奥手で恋愛も上手くいかずひたすら勉強を続ける田舎出身青年と、女性関係も自由奔放でその日その時が楽しければいいと勉強もしないパリ青年。アリとキリギリスのごとく最後はアリが勝つのかと思いきや、そう上手くはいかないのがヌーベルバーグということなのか、ラストはかなり苦い結末になります。考えてみるとここまでに観たヌーベルバーグにハッピーエンドな作品ってないなあ。

『獅子座』
 1959年製作、1962年公開の映画で、エリック・ロメール監督の長編デビュー作。日本では1990年に初公開されたらしい。僕の大学時代だったんですね。自堕落な生活を送る39歳の自称音楽家が死んだ伯母の莫大な遺産を従兄弟と共に相続することになり、浮かれて仲間を呼びツケで派手なパーティーを開く。ところが伯母は従兄弟にのみ遺産を相続させるという遺言を残していたことがわかり、主人公は取り壊しの決まったアパルトマンからも追い出され、無一文の宿無し生活に。折悪しくパリはバカンスの季節で、知り合いは皆パリに不在。ホテルに後払いで宿泊し続けるも、宿泊費の滞納を怪しんだホテル側に追い出され、当て所なくパリの街を何日もうろつく主人公。ついにはホームレスにまでなってしまい……。中盤以降は主人公がパリの街をただ歩き回るだけのシーンが延々続くんですが、それで十分見せてくれるのがすごい。主人公はとにかくダメなやつなんですが、個人的には妙に憎めないというか、少々身につまされるところもあったりなんかしました。ラストは少々あっけなかったんですが、一見ハッピーエンドに見えながらも本当にそうなのか?と思わせるものでしたね。面白かったです。



#1861 
バラージ 2022/12/01 23:18
大森監督&崔監督追記

 大森監督には新しい企画もあって脚本も見せてもらっていたという吉川晃司のコメントが出てましたね。また文芸評論家の河内厚郎によると、村上春樹(同じ中学の先輩で、村上のデビュー作『風の歌を聴け』の映画化で監督もした)の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の映画化を数年前に考えており、許可をもらいに行こうとしたところで病気になったとのこと。村上もかなり昔にエッセイで大森監督のことを書いてましたが、村上ファンとしては『世界の〜』の映画化という話には「ええ!? できるの?」という驚きのほうが先に来てしまう。村上春樹の長編小説は実写化が難しい、というかほとんど不可能に近いという作品が多く、『世界の〜』もその1つだと思うんですよね。村上もいくら仲がいいとはいえ、実際には頼まれても許可は出さなかったんじゃないかなあ。あと大森監督は昔、山田正紀の『火神(アグニ)を盗め』も映画化しようとして出来なかったという話も聞いたことがありますね。
 僕が大森作品で映画館で観たのは『津軽百年食堂』だけですが、これはいい映画でした。でも1番良かったのは録画で観た『トットチャンネル』かな。

 崔監督も新作の脚本を執筆し10月にクランクインの予定が、体調不良で来年春に延期されてたという話。黒井千次の『高く手を振る日』という作品を基にした老年の恋物語で、キャスティング作業も進んでいたとのこと。ここ10年以上新作を撮ってなかったのは病気のためとかではなく、日本映画監督協会理事長として多忙だったためのようです。
 崔監督の映画で映画館で観たのは『マークスの山』だけですが、これはいまいちでした。良かったのはビデオで観た『Aサインデイズ』。『カムイ外伝』は特に白土三平のファンではなく、むしろどっちかっていうとちょっと苦手な僕としてはまあまあといったところでした。


>録画やDVDでちょっと前に観てた映画
『コナン・ザ・グレート』
 1982年の米国のファンタジー映画。『ターミネーター』以前のシュワルツェネッガーの出世作ですな。監督・脚本はジョン・ミリアスで、共同脚本がオリバー・ストーン。原作はもちろん知ってますが未読です。1年ほど前にWOWOWで放送してて、この手の映画は好きなのにそういや観てないなと録画しといたのをちょっと前にようやく観たのでした。まあまあ面白かったけど、さすがに今観るとちょっと古いですね。特撮の古さは気にならないけど、それよりも映画のテンポが今の感覚からするとゆったりとしてて、きびきびしてないというかもったりとした感じ。また前半はショートエピソードの連続で、テーブルトークRPG(『ダンジョンズ&ドラゴンズ』とか)っぽく感じました。まあ原作のほうがRPGに影響を与えてるのかもしれないけど。1950〜60年代のスペクタクル史劇映画っぽい雰囲気もありました。ま、それでもそこそこ楽しめましたね。

『キング・オブ・デストロイヤー コナンPART2』
 監督がリチャード・フライシャーに変わった1984年の続編。脚本もストーンではなくなりました。そのためか全てにおいて前作よりもB級っぽくなってます。ストーリー展開もキャラクター設定もセットも衣装も美術も特撮もアクションも全てが安っぽい。製作費が減ったわけでもないと思うんですが……。特に物語展開が極めて平板で、ストーリーがあってないに等しく、ますます悪い意味でRPGみたいになってしまいました。シュワのボディビル度だけはアップしてますが、女戦士役のグレース・ジョーンズ(懐かしー)も今一つだし、お姫様役の新人女優オリビア・ダボは可愛いけど大根(ま、それを言い出したらシュワだって大概大根ですが)。ただ、このシリーズ、テーマ音楽だけはむちゃくちゃかっこいい。映画は観たことないはずなんだけど、このテーマ音楽はなぜかすごく印象に残ってて、あー、これこれ!と思っちゃいました。何かで聴いたのか、それとも忘れてるだけで1回観てたんだろうか?

『レッドソニア』
 『コナン』シリーズ原作者ロバート・E・ハワードの同じ世界観の別の小説を映画化した1985年の映画で、『コナン』シリーズの姉妹編みたいな感じ。これは大学時代にテレビでちらっと観たような。主演はブリジット・ニールセン(懐かしー)で、シュワは助演(なのにトップクレジット)のゲスト的お助けキャラ(コナンとは別人)。前作がコケたためか予算を削減されたのがありありとわかる出来で、『ターミネーター』でブレイクしたシュワに払うギャラが無かったのか、それともスケジュールの都合がつかなかったのか。監督も引き続きフライシャーなので、ノリや作風はほとんどいっしょ。とにかく全てが安っぽく、昔のテレビの特撮番組レベル。特に脚本がひどく、設定や展開がおざなりで支離滅裂でツッコミどころだらけ。演出も平板で、ファンタジー好きで女戦士好きの僕でもちょっと退屈しちゃいましたね。

『ツインズ・エフェクト』
 2003年の香港映画。ジャッキー・チェンが友情出演だか特別出演だかしてる映画ですが、あんまり面白くなさそうだったんで今まで観ないできました。しかし今年はジャッキー映画が1本も公開されなさそうなんで、なんとなくじゃあまぁ観てみっかと思いまして。当時香港の人気アイドルだったTwins(ツインズ)が主演で、バンパイア・ハンターとバンパイアの闘いをメインに、アクション、恋愛、コメディ、ホラーといろんな要素をぶちこんだ娯楽映画ですが、悪い意味で当時の香港クオリティ。いかにも香港映画といった感じの適当な作りで、やっぱりたいして面白くありませんでした。Twinsの2人は彼女たちよりちょっと前に売れたスー・チーやチャン・ツィイーに比べるといかにもアイドルって感じで、演技力もいまいちだし女優としては魅力薄。ゲスト出演のジャッキーは思ったより出番が多く、アクション・シーンもそこそこあります。当時ハリウッド進出が成功してたんですが、一時帰国した際にちょっと出てよとでも誘われたんでしょう。当時の僕はジャッキーのハリウッド映画がことごとくつまらなく、最もジャッキーから心が離れた時期でした。

『花都大戦(はなのみやこたいせん) ツインズ・エフェクトU』
 2004年の香港・中国合作映画で上記作品のパート2ですが、Twinsの2人が主演という以外は前作とは全く無関係。古代中国の隣にあった女人国という架空の国を舞台としたファンタジー時代劇で、明らかに当時流行してた武侠映画の影響を受けて路線変更したものと思われます。出来は前作よりもだいぶマシで、Twinsの2人も演技・アクション共にずいぶん見られるようになってます。ただどっちかっていうとTwinsは主演の中の2人で、多数のキャラが入り乱れる群像劇に近いですね。ジャッキーの息子のジェイシー・チャンのデビュー作で、いきなりメインの役柄を演じてるためもあってか、前作よりもかなりの豪華キャスト。前作ではアクション監督だったドニー・イェンをはじめ、レオン・カーファイ、チェン・ボーリン、ダニエル・ウーに、若手時代のファン・ビンビンも出ています。やっぱジャッキー兄貴に頼まれたら断れないんでしょうか。親父のジャッキーも特別出演でドニーと激しいバトル・シーンを演じており、そこが最大の見所。『グリーン・デスティニー』『HERO』『LOVERS』などにもろに影響を受けたというか、ちょっとパクリっぽいシーンも多々ありましたが、それでもそこそこ楽しめました。

『レジェンド・オブ・ドラゴン 鉄仮面と龍の秘宝』
 ロシア・中国・米国合作のファンタジー・アドベンチャー映画。2019年の映画ですが日本では去年ようやく公開され、今年DVD化されました。ポスターなんかではジャッキーとシュワがでかでかと載ってて2人が主人公みたいですが、実際には特別出演。知ってたんでわざわざDVDレンタルする気も起きなかったんですが、WOWOWで放送されたんでタダならと思って録画しました。ゴーゴリの中編怪奇小説『ヴィイ』(未読)を翻案したロシア・ウクライナ・チェコ合作映画『レジェンド・オブ・ヴィー 妖怪村と秘密の棺』(未見)の続編ですが、主人公が1作目と同じという以外は特につながりはないようで、その主人公も原作とは設定が全く異なるため、もうゴーゴリの原作とは全く関係がないようです。海外展開を狙ってか全編英語の映画でしたね。その主人公のイギリス人地図職人がいろいろあって中国人の少年と中国に向かうことになるが、実はその少年は中国の地方国家?の王妃で、国を乗っ取った魔女と戦うために国に向かっていた。一方なぜかロンドン塔の監獄に入れられていた鉄仮面の男ことロシアのピョートル大帝は、同獄にいた武術の達人の老中国人の助けで脱獄。老中国人に託された印章を娘の王妃に渡すためにやはり中国に向かう。さらに主人公の妻も夫を追って中国へ。波乱万丈の冒険行が始まる……といったストーリー。しかし主人公が全く活躍しないどころか出番がそもそも少なく、中国地方王妃とピョートル大帝のほうが活躍してるような。良く言えば群像劇ですが、悪く言うと誰が主人公なんだかわからん状態。展開も妙におざなりで、なんでピョートル大帝がロンドン塔に幽閉されてたのか、なんで鉄仮面かぶってたかの説明も全く無し。いつの間にか誤解が解けてたり、話の進め方がはなはだ適当ですが、子供向けの映画みたいなんでまあ気にしないで観るべきなんでしょう。その辺を気にしないで気楽に観てればそこそこ楽しめる映画ではありました。老中国人ジャッキーと監獄長シュワのバトルは2人とももうおじいちゃんだからかCGとスタントに頼りきりであまり面白くないんですが、ラストの王妃vs魔女のカンフーバトルはジャッキーアクションチームの振り付けのようでまあまあ面白かったです。



#1860 
2022/11/30 23:58
訃報ネタになると書いてしまう

ここんとこ、映画館も行ってないし、自宅では録画ダメドラマを見ているばかりで、映画ネタの書き込みができないんですよねぇ。結局映画関係者の訃報ネタばかり書いてしまう。

 まず大森一樹監督。
 僕にとってはなんといっても「ゴジラVSキングギドラ」。予告編を見てフラッと見る気になっての僕にとって最初の怪獣映画体験。それで大いにハマってしまったのですから、やはりエンタメとして良く出来た作品(タイムスリップに穴があり過ぎとか、当時流行のハリウッド映画を意識し過ぎたところとか批判店は分かるんだけど)だったのは間違いないかと。特撮部分の手柄ももちろん大きいですが、かなり破天荒な展開ながらスピーディーに見せてしまうシナリオは大森さん自身の作。、

 なんだかんだで平成ゴジラシリーズへの影響は多大で、「VSビオランテ」もマニアックなファンが多く、公開当時「2001年並み」とまで評していた知人がいました。あれって大森監督でビュー作と関わる医療現場のやり方がシナリオ展開のヒントになってるらしいですね。
 「VSモスラ」「VSデストロイヤ」で脚本担当。これらは面白かったかと言うと個人的にはうーん…なんですが、「デストロイヤ」はゴジラを死なせるというお題で社まずまずかと。

 ゴジラシリーズ以外で何見てたっけと回想すると、「ジューンブライド」と「T・R・Y」を見てました。
 神戸在住で阪神淡路大震災に遭遇(あの倒れた高速道路のすぐ近くのマンションだったそうで)、その経験から松竹版「日本沈没」の監督に決まったこともありましたが、残念ながら幻となってしまいました。


 そして崔洋一監督。
 やはり最初に見たのは「月はどっちに出ている」。その流れで詐欺師一家を描いた「東京でラックス」「マークスの山」「犬、走る」と立て続けに見ていた時期が。個人的には「犬、走る」が押しでした。岸谷五朗をよく主役に起用してましたが、「マークスの山」でも顔も見えないような役でカメオ的に出てました。
 そしてやはりと言うか、訃報で見出しによく使われていたのは「血と骨」。未読なんだけどこれ、まず原作が大変なものなんですよねぇ。映画はそこそこはしょって、勢いで作っちゃってるというか、あとはたけしの存在感ですか。
 そもそも崔監督は大島渚の直弟子みたいなもので、たけしと一緒に役者として出演した「御法度」も印象には残りました。最後の監督作が「カムイ外伝」で、大島監督の「忍者武芸帳」へのオマージュ的部分(白土原作の絵を一部使った)もありましたが、この映画は主役とヒロインの縁結びに貢献した、というくらいしか…

 本当は崔監督、軍事政権時代に済州島で起こった「共産勢力狩り」の弾圧事件の映画化をライフワークにしてて、そのために韓国に留学したりもしてました。当時、韓国の親戚を訪ねるドキュメンタリー番組を見たこともありました。しかし結局この映画化は果たせませんでした(韓国で作ったんだったかな?)。

 まぁ仲代達矢さんが言ってましたが、黒澤明は「戦争と平和」を、小林正樹は「敦煌」を熱望して果たせなかったそうで、多くの映画監督は本当に撮りたかったものはなかなか実現できぬままに…ということになりがちなようです。



#1859 
バラージ 2022/11/28 17:04
追悼 崔洋一

 ああ、次々と80〜90年代の監督たちが……。
 崔監督は1983年に『十階のモスキート』でデビューし、80年代は角川映画で『いつか誰かが殺される』『友よ、静かに冥れ』『黒いドレスの女』『花のあすか組』を撮った後、1993年にWOWOWのJ MOVIE WARS(懐かしー)で放送された自身の監督ドラマを映画化した『月はどっちに出ている』が話題となり、以後も活躍を続けてこられました。近年はワイドショーのコメンテーターをしてるところをたまに見かけたりしてましたが、2009年の『カムイ外伝』が最後の映画だったんですね。
 とか言いつつ、僕は『Aサインデイズ』『マークスの山』『カムイ外伝』しか観てないんだよなあ。『十階〜』も『月は〜』も『血と骨』も観てないんですよね。どっかで追悼放送されんかな。ご冥福をお祈りします。


>録画やDVDでちょっと前に観てた映画
『美しき獲物』
 1992年の米国・ドイツ合作のミステリー・サスペンス映画。クリストファー・ランバートが主演で、当時妻だったダイアン・レインと共演しています。とある島でチェスの世界選手権出場者を決める大会に出場している優勝候補が主人公。幼い娘とのヤモメ暮らしの主人公はホテル従業員の女性と一晩寝るが、その夜その女性が殺される。面倒に巻き込まれまいと警察に嘘をついたおかげで容疑者としてマークされ、真犯人から「これはゲームだ」という電話がかかってくるも自作自演を疑われる。警察に精神鑑定のため呼び出された女性心理学者と主人公は惹かれ合うが、次々と連続殺人が起こり主人公は絶体絶命に追い込まれる……。あんまり期待してなかったんですが、なかなか面白かったです。最後の最後まで犯人がわからず、あー、こいつだったのか!となりましたね。ラストはちょっとあっけなかったけど。あと主人公の娘がテレビゲームのスーパーマリオをやってて、ちょっとへぇーってなりました。当時から日本のゲームってすごかったのね。

『愛と精霊の家』
 1993年のドイツ・デンマーク・ポルトガル合作映画。チリの女性小説家イザベル・アジェンデのデビュー作『精霊たちの家』(未読)の映画化で、監督はデンマークのビレ・アウグスト。イザベルは1973年のチリ・クーデターで軍に殺されたアジェンデ大統領の姪で、クーデターの際に迫害が及んだためベネズエラに亡命。そこで祖父母から始まる自らの一族の半生をモチーフに1982年に執筆した処女作が原作小説とのこと。ちなみに映画は明らかにチリがモデルでありながら舞台が南米某国になってます。原作は3世代に渡る女性たちを描いた大河小説らしいんですが、映画はそれを2世代に縮め、さらにどちらかというと1世代目の女性の夫(2世代目の父)のほうが主人公。2時間半近い長さながら、それでも大河小説を消化するには時間が足りなかったようで、ところどころ駆け足の展開に感じました。また原作はおそらく南米文学特有のマジック・リアリズムが濃厚と思われますが、映画ではそれも希薄。さらにジェレミー・アイアンズ、メリル・ストリープ、ウィノナ・ライダー、グレン・クローズといったハリウッド・スターたちが英語で演じてるので、南米らしさがあまり感じられないのが致命的(アントニオ・バンデラスのみスペイン人だが、南米人ではない)。またストリープがいくら名優だからといって娘時代から演じるのもいかがなものか。ただ終盤のクーデター場面はなかなかのものだったし、何よりこの頃のウィノナ・ライダーはめちゃくちゃ可愛くて美人。それで演技も上手いんだから、そりゃ売れるわけですな。

『ハンニバル・ライジング』
 2007年の米国映画。ハンニバル・シリーズは1本も観てないんですが、好きな中国女優コン・リーが出てるという理由だけで観ました。コン・リーが出てることは公開された頃から知ってたんですが、中国映画じゃないし猟奇色の強い映画は趣味じゃないんでずっと敬遠してたんですよね。んー、観た感想としてはやっぱりこういう猟奇的な映画はいまいち好みじゃないなあ。よく出来た映画だとは思いますが。まあコン・リーが美しかったんで良しとしよう。レディ・ムラサキとかいう変な名前の日本人役で、例によっての勘違い日本人ですが、そもそも最初から英語しかしゃべってないし、コン・リーはコン・リーだし。てかリトアニアとフランスが舞台なのに全員英語をしゃべってるんだよな。リトアニア人もフランス人もドイツ人もロシア(ソ連)人もみんな英語をしゃべってる。だからみんな言葉が通じてしまう。ハリウッド映画ですな。


 今季面白いドラマは『ザ・トラベルナース』と『アトムの童(こ)』ですが、『アトム〜』はちょっと出来が落ちてきたかなあ。



#1858 
バラージ 2022/11/15 20:24
追悼 大森一樹

 大森一樹監督が亡くなられました。特に熱心なファンではなかったんですが、80年代の僕が映画を趣味にし始める前から、森田芳光監督と並べられて日本映画界新進気鋭の若手監督として話題にされていた人です。『すかんぴんウォーク』『ユー・ガッタ・チャンス』『テイク・イット・イージー』の吉川晃司三部作とか、『恋する女たち』『トットチャンネル』『「さよなら」の女たち』の斉藤由貴三部作なんかが話題でした。それだけに僕が映画を趣味とし始めた80年代末ごろから畑違いとも思えるゴジラ映画に進出したのは意外でしたね。
 僕が観た映画は、『ヒポクラテスたち』『風の歌を聴け』『トットチャンネル』『ゴジラvsビオランテ』『ゴジラvsキングギドラ』『ゴジラvsモスラ(脚本のみ)』『悲しき天使』『津軽百年食堂』といったあたり。
 それにしても80年代もどんどん後ろに過ぎ去っていきますね。ご冥福をお祈りします。


>DVDで観た映画
『MR.LONG ミスター・ロン』
 SABU監督が台湾のチャン・チェンを主演に招いて撮った日本・香港・台湾・ドイツ合作映画。4〜5年前に映画館で公開されて、興味はあったんですが見逃してしまいました。WOWOWでも見逃し、DVDレンタルもなんとなくしないまま過ぎてしまっていたら、DVDがレンタル落ち販売してたんでこりゃヤバいと買っちゃった次第。
 ナイフの達人である台湾の凄腕殺し屋ロンが日本の六本木にいる台湾マフィア殺害の依頼を受けるも失敗。マフィアの仲間の日本のヤクザたちに捕まるが、ある幸運から命からがら逃げ出すことができ、北関東の田舎町まで逃れる。日本語が全くわからないロンだったが、貧しい暮らしをする日台ハーフの男の子とその母親の台湾人と出会い、シャブ中の母親を縛りつけてシャブ抜きをしてやる。そのうちやたらと世話好きな近隣日本人住民のおせっかいで、料理の上手いロンは屋台の店をやることになってしまい、その店が大繁盛。母子や住民とのふれあいの中で、無口で仏頂面なロンの中の何かが変わっていく。だがそこへヤクザたちの手が迫ってくる……。
 いや〜、面白かった。これは映画館で観るべきでした。冒頭のハードボイルドな殺しのアクションから、逃亡の末に始まる奇妙な展開がなんとも言えずおかしくていい。気のいいおせっかい町民たちのおかげでいつの間にか屋台で台湾麺を売ることになって、しかもそれが結構繁盛してしまい戸惑う殺し屋。子供と母親とちょっといい雰囲気になって、しまいにはなぜかいっしょに温泉旅行にまで行くことになって、ほのぼのしてしまう殺し屋。そしてそこから終盤、また一気にハードボイルドに。殺し屋チャン・チェンのアクションもキレキレ。かっけー。台湾麺も旨そうでした。



#1857 
バラージ 2022/11/06 09:45
ウォン・カーウァイは永遠に

 『プアン 友だちと呼ばせて』というタイ映画を観ました。バズ・プーンピリヤ監督の『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』を気に入った香港のウォン・カーウァイが製作してプーンピリヤが監督した青春映画。「プアン」はタイ語で「友」という意味のようです。
 ニューヨークでバーを経営するバーテンダーのタイ人青年のもとに、かつて喧嘩別れしたバンコクに住む親友から電話が来る。彼は白血病にかかっており、どうしても彼に会いたいと言う。帰国した青年に親友は昔別れた元カノに返したいものがあるから、免許のない彼の運転手役として別の街に住む彼女のもとへ送ってほしいと頼む。こうして2人は白血病にかかった青年の元カノたちの住む街から街へと車を走らせることになる。元カノたちの反応は様々なものだったが、やがてこの旅には白血病の青年のある別な目的があったことをバーテンダーの青年は知ることになる……。
 いや、面白かった。今やタイ映画もこんなに洗練されてるんですねえ。ウォン・カーウァイが惚れ込むのもわかります。元カノたちのところを巡るシークエンスもとてもいいんですが、中盤過ぎでそこから物語が意外な方向へ転換していくのも感心しました。映像センスも素晴らしいし、音楽の使い方も上手い。『バッド・ジーニアス』は3〜4年前に地元でも上映されてなんとなく気になったんですが結局見逃してしまい、WOWOWで放送された際にもやっぱりなんとなく見逃し、レンタルDVDもあっという間に撤去されてしまいました。観とけば良かったなあ。後悔。
 今年前半に観た韓国映画『雨とあなたの物語』も明白にカーウァイの影響を受けた作品でしたが、プーンピリヤもやっぱりカーウァイの影響を受けたんでしょう。脚本のしっかりしてるところは、即興的演出をするカーウァイとはやっぱり違うけど。4Kレストア版の上映も合わせて、まさに今年はウォン・カーウァイ祭ですな。一昨年にコロナによる映画館閉鎖直前に観た中国映画『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』や、僕は未見ですが黒人青年の世界を描いた米国映画『ムーンライト』など、カーウァイの影響を受けた世代の若手監督が今世界中に出現しています。そんな中で日本映画だけは何やってんだ、まったく。


>ゴダール追悼観賞
 『勝手にしやがれ』4Kレストア版と『気狂(ちが)いピエロ』2Kレストア版も観ました。
 『勝手にしやがれ』は確か10年くらい前になぜか地元でリバイバル上映された時に初めて観ました。それまでゴダールの映画って難解そうだなぁというイメージがあって敬遠してたんですが、なぜか直感的に観たくなって観に行ったら、すげえ面白かったんですよね。BSだかで放送されたのもBlu-rayディスクに保存してあります。
 今回ゴダール追悼ってことで4Kのクリアな映像で見直したんですが、やっぱり面白い。モノクロの映像がまたいいんですよね。予算がなかっただけかもしんないけど(笑)。映画自体もいいんですが、これまた追悼のジャン・ポール・ベルモントと、とっくの昔に亡くなったジーン・セバーグも素晴らしい。なんといってもスターとしての輝きがあります。やっぱり役者って大事なんだな。特にセバーグのショートカットは美しい。『悲しみよこんにちは』でセシルカットとして有名になったのもよくわかります。ショート好きの僕にはたまりません(笑)。ゴダールもベルモントもセバーグも当時は20代の若々しい映画でした。
 一方の『気狂いピエロ』は今回が初見。1960年のデビュー作『勝手に〜』から6年後に撮られたゴダール10作目の作品です。こちらはカラーですが、一気に前衛的な作風に。難解そうという僕の当初のイメージに近づいた作品でした。ストーリー自体はわかりにくいわけではなく、問題なく話は追えるんですが、演出というか描写というか表現がすげえ前衛的で、有り体に言うとわけわかんない(笑)。こちらでも主演したベルモントが、こんなわけわかんねえ映画出てられっか!と以後ゴダールと決別したのもわからないでもありません。ちなみにこちらのヒロインは当時ゴダールが付き合っていたアンナ・カリーナ。

>女子ガンダム
 ガンダムのテレビ新作『水星の魔女』。第1話は観なかったんですが、知人がなかなか面白かったと言ってたんで2話から観てみたら、確かになかなか面白かった。初の女性主人公ということもあって今までにないテイストなのがいいですね。



#1856 
バラージ 2022/10/13 21:01
女は顔を伏せ/近づく機会を男に与えるが/男には勇気がなく/女は去る(『花様年華』より)

 『恋する惑星』『天使の涙』『ブエノスアイレス』『花様年華』『2046』と、ウォン・カーウァイ5作品4Kレストア版を全て観賞。よく行く映画館の1番ぐらいにでっかい部屋で上映してたんですが、客席は結構埋まってました。
 『花様年華』と『恋する惑星』は何度か観てるんですが、他は初見以来。スケジュールの合うものから順番に観ていったんですが、『天使の涙』と『恋する惑星』が逆になった他は偶然にも公開順に観ることができました。おかげでウォン・カーウァイと香港の時代の変遷も感じることができましたね。
 いやぁ〜、面白かった! 90年代、すっげえ懐かしい。『天使の涙』は最初に観た時はいまいちに感じたんですが、今回それ以来ぶりに観たらこれが予想外に面白い。『恋する惑星』も最初に観た27年前より遥かに面白いし、『2046』も初めて観た18年前より面白かったです。最初に観た時からめちゃくちゃ面白かった『花様年華』は、もちろんまた観てもすっげえ良かった。やっぱウォン・カーウァイすげえわ。唯一『ブエノスアイレス』だけが最初に観た時と同じく今一つに感じたんですが、これは多分ゲイの話で女優が出てこないから僕の趣味に合わなかったんでしょう。
 しかし『恋する惑星』から27年経ったなんてほんと信じられんなあ。そんな月日が過ぎてたのか。今観ても全く古びてないことに驚きます。そしてウォン・カーウァイの音楽のセンスの素晴らしさ。『恋する惑星』で流れるママス&パパスの「夢のカリフォルニア」やフェイ・ウォンの「夢中人」が一世を風靡したのも懐かしい記憶だし、『天使の涙』のエンディングで流れるフライング・ピケッツの「Only You」、『ブエノスアイレス』のエンディングで流れる「ハッピー・トゥギャザー」、『ブエノスアイレス』『花様年華』『2046』で流れるラテン・ミュージックの数々や、『花様年華』『2046』で流れる古い香港(中国)歌謡曲の数々。今回観直しても改めてそれら音楽の素晴らしさが印象深かったですね。撮影のクリストファー・ドイルや美術・編集のウィリアム・チャンの名前もウォン・カーウァイの作品で強く印象付けられたもんです。
 そして俳優。『恋する惑星』の金城武やフェイ・ウォンがスターダムにのしあがり、『2046』では木村拓哉の出演が話題になりましたが、基本的にはトニー・レオン、レスリー・チャン、ブリジット・リン、マギー・チャン、カリーナ・ラウなど、人気と実力を兼ね備えた香港映画界のスーパースターたちを起用しており(それ以前はアンディ・ラウやジャッキー・チュンも出てた)、それが21世紀に入るとコン・リーやチャン・ツィイーといった、やはり人気と実力を兼ね備えた中国の女優たちに取って代わっていくのも時代の流れというべきか。
 ちなみに個人的に1番好きなウォン・カーウァイ映画『欲望の翼』は今回のラインナップには入らず。何年か前にデジタルリマスター版が上映されちゃったからかな。やはり好きな『楽園の瑕』も「終極版」というのが数年前に上映されたし。
 ま、とにかくすっげえ良かったです。次はジャン・リュック・ゴダール追悼の『勝手にしやがれ』4Kレストア版と『気狂いピエロ』2Kレストア版ですかね。



#1855 
バラージ 2022/09/14 20:40
追悼ジャン=リュック・ゴダール

 91歳になられてたんですね。死に方については、ま、いろいろ意見もあるでしょうが、大往生だったと言ってもいいんじゃないでしょうか。実は観た映画は10年ぐらい前にリバイバル上映で観た『勝手にしやがれ』だけなんですが、難解そうという思い込みで敬遠してたんだけど何か直感が閃いて観に行ったらすげえ面白かったんですよね。他の監督作、さらには他の監督のヌーベルバーグ映画も観ようかななどと思いながらも、観ないまま今に至ります。今後いろんなところで追悼上映や追悼放送がされるのかな? ご冥福をお祈りします。


 あまりの大ヒットに敬遠してた『トップガン マーヴェリック』、ついに観てきました。かつてちょっとだけミリタリー・ファンだった身としてはジェット機空中戦映画にちょい興味があったんですが、これだけメガヒットしちゃうと僕の中の天邪鬼が頭をもたげてきちゃいまして、観るのを先延ばししてるうちにこんな時期に。

 1作目の『トップガン』は高校の時にリバイバル上映で観ました。『恋しくて』との二本立てで、僕の目当てはレンタルビデオで観て激ハマりした、今でも人生ベスト5に入る『恋しくて』のほうでした。『トップガン』のほうは主人公たちが乗ってたF14戦闘機がそれ以前から好きで、1番かっこいい戦闘機だと思ってたんですが、日本では航空自衛隊が使ってるF15のほうがメジャーで、それでも僕はF14のほうが絶対かっこいいと思ってたもんです。それが『トップガン』が公開されたら案の定F14が大人気となり、「だから前から言ってたじゃねえか」と僕は心の中で毒づいてたのでした。映画自体の出来はまあまあ。ベタと言えばベタな映画でしたね。そういや最後に戦う謎の敵機が、ちょいミリタリー・ファンだった僕にはF14の10分の1の値段の低価格小型戦闘機F5なのが丸わかりでちょっと冷めた記憶も。
 そんなF14も時代の変遷で使い出がなくなったらしく、米海軍からは全機退役したとのこと(ただしパーレビ国王時代に買ったイラン空軍ではいまだに現役らしい)。そんなわけで『〜マーヴェリック』ではかつての2番手機で、よりコストパフォーマンスの高いF/A18戦闘攻撃機が主人公たちの搭乗機となっているのでした。

 そんな『トップガン マーヴェリック』も、なんというか絶妙にベタな映画でした。ベタすぎずベタじゃなさすぎず、予想した以上でもなく以下でもなく、期待以上でも以下でもない。もちろん面白いことは面白いんですが、あくまで予想した範囲内での面白さであって、予想外の驚きとか期待以上の興奮とかはありませんでしたね。ただ逆に言えば期待以下、予想以下のところもなく、期待通り予想通りの面白さでもあります。あえて定型を外した非ベタな部分もない代わりに、思わず苦笑しちゃうようなやりすぎなベタもない。
 ジェット空中戦は期待した通りの面白さだったし、ジェニファー・コネリーやヴァル・キルマーが出てくると悔しいけれどやっぱり気分がアガってしまいます。トムも含めてあの80年代の青春時代から歳月を経て年輪を重ねシブくなった彼らの姿に、いろいろ人生を重ねてきたんだなぁと自らも含めた時の流れに思いを馳せつつ、思わず胸が熱くなってしまったことは否定できません。そして終盤、F14が出てきた時にはさらにそれ以上にアガってしまった。いや、もうほんとに期待した通りというか予想通りの展開。さすがに大ヒットするだけのことはある。僕は“追いトップガン”したいとまでは思いませんが、観て損はない映画だと言っていいでしょう。
 ちなみに敵の人物はほとんど画面上に出てこず、チラッと出てきてもヘルメットをかぶってて顔が見えないというのも1作目といっしょ。こういう(『ランボー』なんかとは違って)敵の姿を見せないというところも観てる人に違和感を感じさせない理由の1つなんでしょうね。極端に言えば敵が火星人でも何の問題もない作劇で(笑)。敵はF14持ってたし、“ならず者国家”とか言ってたから明らかにモデルはイランなんだろうけど、むしろF14出したいからそういう設定になったと思えなくもない。

 それから『凪の島』という映画も観ました。
 両親が離婚したため母の故郷の山口県の小さな島で看護士の母と診療医の祖母と暮らしている小4の凪という女の子が主人公。その子と同級生の男の子たちや担任の女性教師、女性教師に想いを寄せる若い漁師など島の人々との交流を描き出していくヒューマンストーリーです。
 主人公は父親がアルコール依存性で母に暴力を振るうところをたびたび見たため、ケンカっぽいものを見ると過呼吸におちいるというトラウマがあるんですが、そのわりには映画に暗かったり湿っぽかったりという雰囲気はなく、主人公はクールな大人びたところと年相応に子供っぽいところを共に持ち合わせた女の子に描写されてました。主演の子役の新津ちせという子が達者な演技で魅力的に演じていて感心しましたね。脇を固めるのも島崎遥香、結木滉星、加藤ローサ、徳井義実、嶋田久作、木野花といった実力派で、演技・脚本・演出ともに安定した落ち着いた感じで、安心して最後まで観ていられます。とても真っ直ぐで、ある意味非常にピュアな作品なので、底意地悪い見方をする人には物足りないかもしれませんが、僕は面白かったし、こういう映画がたまにはあっていいと思います。笑えるシーンも結構あって、なかなか楽しめました。

>録画で観た映画
『マイアミ・バイス』
 2006年の米国映画。80年代のわりと有名なテレビドラマシリーズのリメイクですが、そっちは観たこともなければ関心もありません。映画に興味があったのは中国女優のコン・リーがヒロイン役だったからですが、結局劇場公開時には観逃して今に至ります。マイアミ警察の凄腕コンビが中南米の巨大麻薬組織に潜入するハードボイルドな刑事ドラマで、全編シリアスかつスタイリッシュ。アクションは終盤までほとんどなく、その銃撃戦シーンも娯楽映画的ではなく比較的リアル志向。役者も映像も演出も雰囲気もいいんですが脚本に問題あり。FBIに内通者がいることを突き止めるがそれが誰かなどそれ以上の展開はなく、中ボスを倒したところで事実上お話終了で大ボスは逃げて映画はおしまい。テレビ版の中の1話が元ネタらしいんですが、続きのあるテレビドラマならともかく、映画でそれじゃあ消化不良です。コン・リーの演技は相変わらず素晴らしく、チャン・イーモウとのコンビ2作目だった90年の『菊豆(チュイトウ)』以来の濃厚なベッドシーンも演じてました(ヌードはもちろんなし)。妖艶なセクシーっぷりに、おお、となりましたね。



#1854 
バラージ 2022/09/01 22:32
カルト宗教と性愛、そして犬

 『ビリーバーズ』という映画を観ました。山本直樹が1999年にビッグコミックスピリッツで連載したマンガの実写映画化です。
 原作は連載時にちらっと読んだ気がしますが、そこが目的で映画を観たわけではなく、ヒロイン役の北村優衣という若い女優がヌードになってかなりの大胆艶技をしてると知ったから。北村優衣ちゃん、『世界ふしぎ発見』のミステリーハンターを何回かやってて、明るく元気な可愛い女の子で好感を持ってたんですが、こないだも出てたからたまたま検索したらこの映画の情報に行き当たり、ええ!あの子が!?と驚いて、調べたら地元の映画館でちょうどやってたんで早速観に行ったのでした。
 無人島で生活する2人の男と1人の女が主人公。宗教団体「ニコニコ人生センター」に所属している彼らは、それぞれをオペレーター、議長、副議長と呼び合い、本部から送られるわずかな食料で命をつなぎながら、本部からの指令により瞑想、見た夢の報告、テレパシー実験など、性欲や物欲、過度な食欲といった俗世の汚れを“浄化”して“安住の地”に旅立つための修行を日課としていた。だが、そんな彼らの日々や関係性も、抑えきれない彼ら自身の欲望により綻びを見せはじめ、さらには思わぬ外部からの侵入者の出現によって爆発。狂おしい性欲の日々から最後には……。
 いやぁ、映画初主演というオペレーター役の磯村勇斗、オーディションで抜擢された副議長役の北村優衣、そして議長役でこれ以上ない怪演のバイプレーヤー宇野祥平の3人が素晴らしい。終盤まではほとんど3人芝居なんですが、全く見飽きずずっと見ていられる面白さです。そして終盤のクライマックスは予想外にスペクタクルなシーンになっていきます。原作のカルト宗教は時期的にオウム真理教がモデルの部分が大きいんでしょうが(他に連合赤軍も一部モデルになってるらしい)、今この時期に公開されるというのがなんともタイムリーというかなんというか。
 前半はエロいシーンはあまりなく、磯村勇斗が夢の中で見知らぬ女の脚に触るとか、北村優衣の海の水で貼り付いたノーブラTシャツとか、徐々に小出しにしていくのが良い。性欲が爆発した後半は素晴らしく、優衣ちゃんの美しいヌードとエロいシーンの乱れ打ち。R-15だからそこまででもないかと思いきや、単に絶妙なアングルでヘアを見せてないから18禁じゃなかっただけのようです。エロいシーンに、一昔前の日本映画にありがちなジメッとした湿っぽさや後ろ暗さが感じられないところも良かった。優衣ちゃんは、ふしぎ発見での明るく元気な無邪気っぷりからは想像もできない女優魂で、演技も上手くて素晴らしかったですね。磯村勇斗も今までただのイケメン俳優くらいにしか思ってなかったんですがとても良かったし、宇野祥平にいたってはほんとにそういう人にしか見えないほどの演技。カルト宗教と男女の性愛がこれ以上ないほどに絡み合う快作でした。

 それから『ハウ』という映画も観ました。犬童一心監督による「犬」映画で、原作小説があるそうです。『グーグーだって猫である』『猫は抱くもの』などの猫映画&ドラマもある犬童監督ですが、犬映画はオムニバス映画『いぬのきもち』(未見)の中の1編以来とのこと。
 結婚直前だった恋人に手ひどいフラれ方をした市役所職員の男が主人公。落ち込む彼に、保護犬を大量に飼ってる上司夫婦が一匹の白い大型犬を飼うよう薦める。前の飼い主に声帯を除去され、かすれた声でしか鳴けないその犬に、主人公は「ハウ」と名付ける。主人公はハウと仲良くなり、すっかり元気になるが、ある日ハウは突然姿を消してしまう。探し回った主人公は、似たような犬が事故で死に、焼却されたことを知り、ハウは死んだものとあきらめ再び落ち込む。だがハウは偶然の重なりから、はるか青森までトラックで運ばれていたのだった。そこからハウが横浜の主人公のもとへ帰るための長い旅が始まる……というストーリー。
 ハウが青森から横浜まで南下するロード・ムービーで、ハウが各地で出会う様々な人々を描いていくオムニバス的な映画です。主人公はあくまで人間たちで、ハウが助演に徹しているのが良い。キャスティングも絶妙で主演の田中圭はこれ以上ないハマり役だし、同僚役の池田エライザも同様。ハウが各地で出会う人々や主人公の周囲の人々を演じる俳優陣──野間口徹、渡辺真起子、モトーラ世理奈、深川麻衣、長澤樹、田中要次、利重剛、伊勢志摩、市川実和子、田畑智子、石橋蓮司、宮本信子──も演技派ぞろいで、なんとも絶妙な配役。またハウ役の犬がこれまた名演で、アカデミー犬優賞をあげたいくらいの演技力でした。動物には勝てませんね。
 猫派の僕は最初、犬映画かあ、動物可愛い映画だったら興味ないけどどうなんだろ?と思いつつも、犬童監督ならまぁだいしょぶだろと思って観に行ったんですが、はたして予想通り犬童監督はひとつひとつの物語を丹念に丁寧に繊細に描き出していて、つらい現実と向き合う人々への優しい視線にあふれた、とてもいい映画でした。面白かった。しかし、でかいけど可愛い犬だったな。


>その他に映画館で観た映画
『コンビニエンス・ストーリー』
 売れない脚本家が同棲してる恋人の飼ってる犬が邪魔になり、遠い人気のない野原に捨てに行く。するとその近くにポツンとこれまた人気のない寂れたコンビニがあり、中に入って飲料の冷蔵庫の扉を開けるとなぜかその中に吸い込まれてしまう。すぐに外に吐き出されたと思ったら、そこにはさっきまでいなかったはずのどこか妖艶な人妻店員が。さらに変人じみたその夫の店長も現れ、いつの間にか外に停めたはずの車も無くなっていて、そこに数日泊まる羽目に。そこでは次々と不思議なことや変なことが起こり……みたいなストーリー。
 三木聡監督の映画は初めて観たんですが、噂に違わぬ変な映画を作る人です。最初の現実世界からして相当に変で、いちいち変な小ネタが入ってきながらそれが一切説明されないどころか以後全く触れられないというか軽く流されちゃうんで、これは何なんだ? わけわかんねえと頭を抱えたんですが、コンビニの向こう?の異世界に行ったあたりから、これはこういう映画なんだ、いちいち理屈なんか考えても無駄だと悟るとそれなりに楽しめるようになります。それには人妻店員役の前田敦子の存在も大きい。彼女が出てくると一気に引き込まれてしまいます。ファム・ファタールをあれほどの説得力を持って演じられる女優も日本にはそうはいないんではあるまいか? あっちゃんもすごい女優になりました。異世界?に行ってからは怪異譚というか昔話みたいな感じで、どことなく不気味な雰囲気もあり、もう夢の中みたいな脈絡のないなんでもありの状態に。小難しく考えず流れに身を任せて観るのが正解なんでしょう。ただ繰り返し言いますが現実世界からして異世界とたいして変わらず変なので、全体的に変でシュールな世界の映画でした。でもなかなか面白かった。

『今夜、世界からこの恋が消えても』
 交通事故による頭の怪我で前向性健忘症という眠るとその日の記憶を全て失ってしまう症状を持つ女子高生と、いじめられてる友人をかばうために彼女に嘘の告白をした男子高校生が、付き合ってる“ふり”をするうちにやがて惹かれ合っていく……という純愛ストーリー。
 主演は東宝シンデレラガールの福本莉子とジャニーズなにわ男子の道枝駿佑のW主演で、要するに『セカチュー(世界の中心で、愛をさけぶ)』『キミスイ(君の膵臓を食べたい)』に続く東宝シンデレラ女子高生難病純愛映画。小説が原作で略称は「セカコイ」だそうです。この手の映画は下手するとクサくなりすぎたり、お涙頂戴になりすぎたりするんですが、それを意識してか脚本も演出も派手になりすぎないように慎重に丹念に丁寧になされていて、『セカチュー』『キミスイ』同様にしっかりとよくできた映画でした。助演陣も萩原聖人や松本穂香、野間口徹など演技派ばかりの万全の布陣で若い主演2人をサポート。福本の母親役が水野真紀で道枝の亡き母親役が野波麻帆と、これまた東宝シンデレラの先輩たちがサポートする磐石の体制。前田あっちゃん顔の福本莉子は最近映画に出まくってて、JR東日本やオロナミンCのCMでもよく見ますが、出演映画は初めて観ました。やっぱり東宝シンデレラは訓練を受けているのか若くても演技がしっかりしてますね。長澤まさみや浜辺美波のように女優の道を上っていくんでしょうか。



#1853 
バラージ 2022/08/19 00:19
再見!映画

 ここ2〜3ヶ月ほど過去に観た映画を再観賞しまくってます。映画館で観て面白かった映画に触発されて、関連映画をやたら観てまして。韓国映画『雨とあなたの物語』に絶妙に巧みに引用されて、おー、と思った僕の人生ベスト5に入る香港映画『欲望の翼』(1990年、日本公開は1992年)も何度目かの再観賞。レスリー・チャン、マギー・チャン、カリーナ・ラウ、アンディ・ラウ、ジャッキー・チュン、トニー・レオンといった若き日のスーパースターたちが60年代の孤独な若者たちを演じる、今や巨匠のウォン・カーウァイ監督による青春群像劇。やっぱり何度観てもいいなあ。
 主演女優のチョン・ウヒが『雨〜』の1つ前に主演した『めまい 窓越しの想い』も再観賞。ひたすら暗い感じの恋愛ドラマ映画なんですが、その暗さがやっぱりなんとも言えずいい。そして演技派チョン・ウヒがひたすらに美しい。やっぱりいい女優です。
 香港映画『バーニング・ダウン 爆発都市』に出てた中国女優ニー・ニーもやっぱり美しかったんで、彼女がヒロイン役で出てる中国映画『雪暴 白頭山の死闘』も再観賞。これもやっぱり面白い。上質なクライム・サスペンス・アクションで、主演のチャン・チェンをはじめ役者陣も好演。そしてやはり演技派ニー・ニーがとにかく美しい。これまたいい女優。
 そして2005年の星野真里主演映画『さよならみどりちゃん』もふと再見したくなり、DVDを引っ張り出して観たんですが、夏が舞台の映画を夏に観るとなんというか没入感が違いますね。映画の画面の向こう側にどっぷり浸ることができるといいますか。これまたやっぱりいい映画でした。
 そこから夏を舞台とした少女青春映画が続けて観たくなり、2007年の『恋する日曜日 私。恋した』『渋谷区円山町』を再見。『私。恋した』はすでに引退した堀北真希が主演で、初見ぶりに観たんですがこれも良かった。思春期の少女の心の揺れを堀北真希が好演しています。『渋谷区〜』もまた初見ぶり。前半の話と後半の話の登場人物が別々でほとんどつながりのないオムニバス的な映画で、主演は前半が榮倉奈々と眞木大輔、後半が仲里依紗と原裕美子。この頃の榮倉奈々は本当に大根ですが、その大根ぶりが初々しい女子高生役に妙にハマっています。あと後半に脇役のいじめっ子で吉高由里子が出てましたね。まだ『蛇にピアス』でブレイクする前かな。映画の出来自体は上2つに比べると初見の時よりやや落ちるかなあ。まあ面白いことは面白かったんですが。



#1852 
バラージ 2022/07/29 18:53
最近観た映画

 是枝裕和監督初の韓国映画『ベイビー・ブローカー』を観ました。
 赤ちゃんポストに置かれた赤ん坊を、子供を欲しがる夫婦に売るブローカーを裏でしている中年のクリーニング店主(ソン・ガンホ)と若い赤ちゃんポストの職員(カン・ドンウォン)。ある日も捨てられた赤ん坊を家に連れてくるが、捨てた若い母親(イ・ジウン)に場所を突き止められ、自分も買い主を探す行程に同行させろと要求される。仕方なく彼女を伴って旅立つが、以前から2人の逮捕を狙っていた女刑事2人組(ペ・ドゥナ、イ・ジュヨン)も彼らの後をつけていた……というストーリー。
 なかなか面白かったです。犯罪を媒介にした疑似家族的な人々の物語というところは、同じ是枝監督の『万引き家族』ともちょっと似てましたね(テレビ放送でところどころしか観てませんが)。とにかく俳優陣が演技派ぞろい。名優ソン・ガンホはやっぱり上手いし、カン・ドンウォンも良かったけど、やはりこの映画の成功の要因は若い母親役のイ・ジウンでしょう。本業はシンガーソングライターで、そっちではIUという芸名で大人気だそうですが、映画でも非常に好演でした。先輩女刑事役のペ・ドゥナは、今回はほんとに普通のおばさんという感じ。さすがは演技派ですが、まあ目の飛び出るような美人というタイプじゃないしね。後輩女刑事役のイ・ジュヨンもどっかで見たことあるな〜と思ったら、去年観た『野球少女』で主演してた子でした。
 ただ、非常によく出来てるし、それなりに面白いことは面白いんだけど、なんとなく僕のフィーリングにはぴったり来ないところがありました。なんか上手く言えないんですけど。あと、若干家族礼賛、出産礼賛みたいなところもあって、そこもちょっと引っ掛かりましたね。

 『シン・ウルトラマン』ももう1回観てまいりました。確かに面白かったけど、2度観るほどまでではないかなと思ってたんですが、元祖『ウルトラマン』のメフィラス星人登場回「禁じられた言葉」がおまけ上映されると知りまして。個人的にウルトラマン最高傑作回だと思ってるんでまた観に行ってしまいました。先に『シン〜』を上映して、後から元祖が上映されたんですが、その順番もあってか、あれ? テレビ版ってこんなに短かったっけ?と思っちゃいました。なんかあっさり終わっちゃったという感じ。まあ25分だからなぁ。2度目の『シン〜』も面白かったです。


>またまた懐かしの女優たち
『ラ・ブーム2』
 言わずと知れたソフィー・マルソーのデビュー作の続編である1982年のフランス映画(日本公開は83年)。前作から2年後を描いた相変わらずのティーンズ青春ムービーで、面白いことは面白いんですがやはり前作ほどではありません。青春といっても日本人の感覚からするとそこまでやっていいのか?と思っちゃうような無軌道なところもあり、実際にいまの日本でやったら明らかに問題になりそう。今回は映画ネタがやたらと多く、主人公の友だちが男の子を黒澤明の映画に誘ったりするシーンがあったんですが、当時のフランスでは女子中学生がクロサワの映画を観たりしたんだろうか? 前作と違うエンディング・テーマも聞いたことある有名な歌でした。デビュー作では顔立ちだけは大人びていたソフィー・マルソーは、わずか2年で体型のほうもすっかり16歳と思えぬナイスバディな大人の女性に。清純派だったのもこの2作目までで、次の映画からはもれなくどの作品でもヌードになるのでした。

『ロンリー・ブラッド』
 1986年の米国映画(日本公開は87年)。1978年にペンシルベニア州で実際に起きた事件を基にした映画とのこと。高校を中退してぶらぶらしながら母、祖母、異父弟と暮らし、将来への夢も希望もない日々を送る貧しい少年が、家を出ていった窃盗団のリーダーを務める父と再会。ふとしたきっかけで愛し合うようになった少女との暮らしを夢見る少年は、父の犯罪グループに加わるが、やがて父の恐ろしい裏の顔を知り……というストーリー。主演はショーン・ペンとクリストファー・ウォーケンですが、僕はヒロイン役のメアリー・スチュアート・マスターソン目当てで観ました。実際の事件がそうだから仕方ないんでしょうが、とにかく全編に渡って暗く重い映画で、テンポも妙にゆったりとしていて娯楽性に欠けます。出てくるやつがクズとバカばっかりで観ててイライラしましたね。マスターソンもこの映画では残念ながらあまり魅力的ではありませんでした。

『愛は危険な香り』
 ダイアン・レイン主演の1987年の米国映画。ビデオ化のみでDVD化されていません。ショーウィンドウ・デザイナーの若い女性が見知らぬ男に執拗につけ回されて恐怖に陥る姿を描いたサスペンスで、男は今で言うストーカーですが当時はそんな言葉ありませんでしたね。ストーカーという言葉が使われ始めたのは90年代だったかな。ダイアン・レインが初めてヌードになった作品で、3年ほど休業してからの復帰作。当時22歳だったとのこと。青春アイドルから大人の女優に脱皮しようとしてたのかもしれません。映画自体の出来は平凡で可もなく不可もなく。劇中の80年代風俗も懐かしいというよりなんだか古くさく感じました。

>再見映画
『子猫をお願い』
 ペ・ドゥナ主演の2001年(日本公開は2004年)の韓国映画。確か去年の年末あたりに過去のペ・ドゥナ主演映画を『プライベート・レッスン 青い体験』『頑張れ!グムスン』『ほえる犬は噛まない』とまとめて再観賞したんですが、この映画は観漏らしてたんですよね。再観賞した中でこの映画が1番良かったかな。最初にDVDで観たのは00年代後半でしたが、初見の時よりもだいぶいい。そういう映画は良い映画です。商業高校を卒業した5人の仲良し女の子たちの、社会に出たり出なかったり、なんとなく疎遠になってしまったりというモラトリアムな日々を描いた青春映画。5人といってもそのうち2人は双子で賑やかしといった感じなので、実質3人の話といった感じです。やっぱりペ・ドゥナはいいなあ。この人の演技にはなにか得難いものがあります。



#1851 
バラージ 2022/06/27 22:21
ニッポン ニッポン

>最近、録画で観た映画
『海辺の彼女たち』
 去年公開されたんですが観逃してしまった日本・ベトナム合作映画。まだDVD化もされていませんが、CSの日本映画専門チャンネルで放送されたんで録画して観ました。
 ストーリーは、ベトナムから技能実習生として来日した3人の若いベトナム人女性が、過酷な労働を強いながら十分な給与を支払わない職場から脱走。彼女たちは不法滞在者として強制送還される不安に駆られながら、ブローカーの斡旋で北の港町の漁港で働き始める。だが、その中の1人が体調を崩し、病院へ行こうにも身分証や保険証がない。実は彼女は連絡の取れない故郷の男の子供を妊娠していた……。
 藤元明緒監督がインターネットを通じて知り合った外国人技能実習生の女性が過酷な労働の日々の末に行方不明になったことから、彼女と同様の境遇にある女性たちを取材してオリジナルの脚本を書き上げたとのこと。重くリアルな作風が胸に迫る良作で、ラストも何も解決していない暗く重い日々がそれ以後も続いていく予感で終わっています。広い意味での娯楽作ばかり続けて観てると、こういうリアルで暗く重い話を観たくなるんですよね。ちょっと異なる事情ですが、入管で死亡したウィシュマさんの事件とかも連想してしまいました。3人のベトナム女優も好演だったし、日本映画でありながら全編の9割がベトナム語なのも新鮮。とてもいい映画でした。


>最近、映画館で観た映画
『バーニング・ダウン 爆発都市』
 アンディ・ラウ主演の香港・中国合作アクション映画。『ショック・ウェイブ 爆弾処理班』(未見)という映画のパート2らしいんですが、設定や登場人物やストーリーは全く別で、アンディ主演の爆弾処理班員が主人公のアクション映画というところだけが共通してるらしい。なので前作を観てなくても全く問題なし。ヒロイン役の中国女優ニー・ニーが好きだったんでちょっと気になってはいたんですが、ジャッキー以外のこの手の中華圏娯楽映画は大都市だけの公開で、地元に来ることは珍しく、どうせ来ねーだろと思ってたんでちょっとびっくり。
 ストーリーは、アンディ演じる香港警察の凄腕の爆弾処理班員が処理任務の失敗による爆発事故で片足を失う。しかし彼は義足を付け驚異的なリハビリで事故前と変わらぬレベルにまで回復。任務復帰を要望するが、警察上層部はそれを拒否し内勤か広報に回るよう命令する。仕事に命を賭けてきた主人公は激しく失望し警察を辞める。それから数年。香港では謎のテロ組織による連続爆弾テロが発生。その現場で犯人として逮捕されたのはなんと主人公だったが、彼は爆発に巻き込まれたショックで記憶喪失となっていた。はたして主人公はテロリストになったのか? それとも……というもの。
 なかなか面白かった。いやはやすごいアクションでした。最近はハリウッドでもあまり作られなくなったようなものすごい金をかけた大規模娯楽アクション映画で、途方もない大風呂敷を広げたようなストーリーもこれまたかつてのハリウッド映画的。CGもすごくて、アンディの片足失った姿とか義足を見せるシーンがCG加工でほんとに見えちゃうほど。アンディのアクションも相変わらず香港映画的にむちゃくちゃで、もちろんスタントマンも使ってるんでしょうが、数年前に落馬事故で再起不能かと言われた人とは思えん。見た目も還暦とは思えぬ若さで、30代前半のニー・ニーと恋人同士という設定にも何の違和感も感じなかったりします。ニー・ニーも同僚警察官役でお飾りではなく、出番が多い上にストーリー的にも重要な役どころで、さらにアクションシーンもこなしてました。やっぱりいい女優です。広東語吹替で本人の声じゃなかったのだけがちょっと残念。まあ、主人公は爆弾処理班なのに刑事やテロリストよりもよっぽど強いとか、明かされる主人公の真実にも、そんなんありか? それでいいのか?と思っちゃうとか、いろいろと香港映画的なツッコミどころは多々あれど、んなこたどうでもいいんだよとなっちゃうようなパワーで押し切る系の娯楽アクション映画でした。

『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』
 テレビアニメ『機動戦士ガンダム』第15話「ククルス・ドアンの島」を、キャラクターデザインだった安彦良和の監督でリメイクというかリブートした映画。安彦のマンガ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』に準拠した設定で、ジャブロー戦とオデッサ戦の間に位置する物語となっています。ククルス・ドアンの島はイギリス沖にある設定でした(テレビ版では確か太平洋)。
 うーん、やっぱり安彦版だなぁという感じ。安彦さんの作品は安彦さんの作品で面白いんだけど、ガンダムのリメイクを作られちゃうと、富野派の僕としてはやや違和感を感じる部分があるんですよね。登場人物の性格設定や描写が微妙に安彦風にマイナーチェンジされてるんだよな。それとあくまでリメイク(だかリブートだか)だから1度観た話をもう1度見せられてる感は否めないし、何より独立したエピソードとはいえ物語の途中の話で、映画として1本だけで完結した物語になってない。結局、一種の外伝とかスピンオフであって、三部作のパート2だけ観てるような感じになってしまいます。単純に1本の映画として観ても、せっかくの新敵キャラの性格設定が陳腐で類型的な上に深く掘り下げられてないのも面白くないし、島の子供たちの描写が僕のキライなウザさだったのもちょっとイラつきました。映像表現的にも『閃光のハサウェイ』には遠く及ばない出来。それとカイ・シデン役の古川登志夫の声がやっぱり歳取っちゃったなあと。ファーストの頃と明らかに声が違うんですよね。まぁ、しょうがないっちゃしょうがないけど、そう考えるとファーストの頃とほとんど変わらない古谷徹はすごいな。ちなみに別の声優に変わったブライト、ミライ、セイラなんかはむしろ違和感をそんなに感じませんでした。まぁ、総じてつまらなくはないし、それなりに面白いことは面白いんだけど、わざわざ映画館で1本の映画として観るほどか(ましてや1900円払ってまで)っていうとそこまでの映画ではないかなぁというのが正直な感想です。



#1850 
バラージ 2022/06/11 01:03
脚のない鳥が地上に降りた

 『雨とあなたの物語』をレンタルDVDで見直したら、正確なセリフは上記のものでした。結局、DVD買っちゃった(笑)。



#1849 
バラージ 2022/05/23 22:18
新ウルトラマンは『帰ってきたウルトラマン』(今はウルトラマンジャックらしい)

 『シン・ウルトラマン』を観てきました。
 いや〜、面白かったです。個人的に『シン・ゴジラ』が全然ダメだったんで不安だったんですが、今回は杞憂でした。とはいえ序盤はまたやたら人物のアップの多い構図と、わけわからん難しい言葉を散りばめた怒涛の台詞量、いかにも「これ台詞です」みたいな不自然な台詞回しで、またか?と危惧したんですが、ウルトラマンが出てきたあたりからは上手く落ち着いて、普通に面白い空想特撮映画になってましたね。
 それにしても出てくる怪獣や宇宙人(本作での呼称は「禍威獣」と「外星人」)のチョイスがシブい。個人的に好きなメフィラスの登場がうれしかったですね〜。地球防衛軍的な存在である科特隊も「禍特対」として、よりリアルな設定になりましたが、『シン・ゴジラ』ともども未来の超兵器みたいなのが無くなっちゃったのはちょっと寂しい。結構好きだったんですよね、ああいうの。『ウルトラマン』だけでなく『ウルトラQ』『ウルトラセブン』も含めた初期シリーズのオマージュなんかもほんのりと含まれつつ、そのあたりはわかる人にだけわかればいいという感じで、ウルトラシリーズにくわしくない人でも問題なく楽しめるように作られてます。斎藤工、長澤まさみ、西島秀俊、有岡大貴、早見あかり、田中哲司、山本耕史といった俳優陣も好演。
 さて、次は『シン・仮面ライダー』ですね。来年あたり公開かな?

>追悼
 ヴァンゲリスというと『炎のランナー』の作曲の人というくらいしか知らないんですが、あの音楽は最初にテレビ放送(中高生の頃に吹替放送だった)で観た時から映画ともどもすごく印象に残りましたね。映画の内容もすごく感動的で、相乗効果で人々の記憶に残ったんでしょうし、だからこそ走るシーンなんかでしょっちゅう使われるんでしょう。昔ウッチャンナンチャンが『炎のランナー』のパロディコントやった時もちゃんと使われてたなあ。
 山本圭さんは昔から名前だけは聞いたことがあったんですが、それは山本学(山本學)さんの弟さんとしてでした。お兄さんの学さんのほうは子供の頃からテレビドラマなんかでよく拝見してて印象に残ってるんですが、圭さんのほうはさっぱり見かけた記憶がなく、少し成長してから学さんの弟も俳優らしいと知ったんじゃなかったかな? ご本人を拝見したのはたぶん21世紀に入ってから、下手したら10年代になってからだったかもしれません。その頃のテレビドラマでは好々爺やコミカルな役が多かったですね。しかし学さんとは顔が全然似てないよなあ。古い映画もほとんどが21世紀になってから観たんですが、調べると90年代に『遠き落日』『ヒーローインタビュー』『宮沢賢治 その愛』を観てました。でも圭さんの記憶は全然ないんだよな。
 皆さん、ご冥福をお祈りします。



#1848 
徹夜城(支配人) 2022/05/22 22:28
ヴァンゲリス逝く

 どうも、こちらではお久しぶりで書き込みます。そういうときはたいてい訃報ネタなのですが…最近映画館行ってないしなぁ。
 
「炎のランナー」がダントツで有名な、作曲家のヴァンゲリスが亡くなりました。どうも新型コロナに感染して、ということらしいのですよね…ワクチンやってなかったのかどうか。
 「炎のランナー」の曲は、映画本編よりもずっと知られてますね。僕はこの映画を中学校の映画鑑賞会(ってのがあったんです)で市民会館で見たんです。内容は当時はよく理解できなかったんでしょうが覚えてなくて、とにかくこのテーマ曲が頭にこびりつきました。この曲はこの映画とは無関係に「人が走ってるシーン」の定番BGMになってしまいました。
 ほかでは「ブレードランナー」。これは映画自体もトップレベルで大好きですが、曲がまた記憶に残るんですよね。特にエンディングの余韻が…同じリドリー=スコット監督作品では「1492コロンブス」もやってて、これも結構好き。
 日本映画では「南極物語」があって、この曲も南極BGMとしてよく使われてますね。

 追悼カキコとしてはタイミングを逸しましたが、先日亡くなった山本圭さんのことも。
 僕はこの人、「新幹線大爆破」で覚えたんですよね。その後「皇帝のいない八月」を見たら「あら、こっちにも出てる」と(笑)。僕は単に鉄道ネタ映画として近い時期に見ただけなんですが、これでこの人を覚えちゃった。
 その後「戦争と人間」で主役級の一人として登場、この人はいまあげた三本そろって左翼運動家、正義派として登場していて、そういうキャラと固定されてしまった印象すらありました。「新幹線大爆破」はどっちかというと極左系で内ゲバでやさぐれ、新幹線を人質にとった身代金を得たら「俺は革命が成功した国へ行きたいんだ」というセリフが凄く記憶に残りました。
 「人斬り」では勝新演じる岡田以蔵の弟分的なキャラで、武市半平太に利用され死んでいくところがこれまた極左運動家的ではありました。


>最近見た映画
とまぁ追悼カキコだけというのも何なので。
スケジュールの都合もあって映画館はとんと行ってないので映画を見るのはBSで放送されたものの録画ばかり。先日はヒッチコック映画で未見だった「私は告白する」とか、第二次大戦ものの「頭上の敵機」などを見てました。
 「私は告白する」は、舞台がカナダのケベック、つまりフランス系住民の多い土地です。なんでそうなってるんだと思って調べたら原作がフランスの戯曲なんですな。映画は一応全編英語ですが、ところどころフランス語が混じっている。これは字幕では完全無視してましたけどね。
 主人公がカトリックの神父で、それがドラマ上重要な意味を持ってるので、カトリックが多い地域に設定しないといけなかったんですな。



#1847 
バラージ 2022/05/17 21:24
脚のない鳥が地に落ちた

 『雨とあなたの物語』という韓国映画を観ました。
 主演の1人が好きな女優のチョン・ウヒってことで前から観たかったんですが、先月後半にもうとっくにDVD化されてるのに、地元の映画館ではなぜか今頃になって公開。上映予定は年初に出てたんで、あえてDVDでは観ずに映画館に出向きましたが……。その映画館はちょっと前にもロシアの戦争映画を何本かDVD化された後に公開してましたね(上映予定が最初に出たのは今回の戦争前)。
 映画の舞台は、2011年の主人公の男性が回想する2003年の韓国。ソウルで夢も希望もない冴えない日々を送る二浪の予備校生だった主人公は、ある日ふと小学生の時に運動会で優しくしてくれた女の子のことを思い出し、過ぎた過去を懐かしむように、転校していったとおぼしき彼女の住所を調べ出して、彼女の住む釜山に手紙を送る。手紙を受け取ったのはその女性の妹。女性は難病で寝たきりの状態になっていた。やはり夢を見つけられないまま母の経営する古書店で働く妹は、姉になりすまして手紙の返事を書く。こうして始まった手紙のやり取りは、やがて2人ばかりでなくその周囲の人々にも暖かな波紋を広げていく……。
 男女の恋愛映画かと思ってたんですが、実際観てみたら主人公の2人だけでなく、その周囲の人々も含めた群像劇ドラマでした。男性主人公に大胆に好意を示す予備校の同級生の女の子、小さな店を営む靴職人の父親、その父親に店を売ることをすすめるエリート会社員の兄、女性主人公の姉、母、古書店で働く人嫌いの読書家など、主人公の2人を中心にしながら多彩な人物が織り成すストーリーで、役者陣もみな好演。特にカン・ハヌル演じる男性主人公に大胆にアプローチする同級生役のカン・ソラが良かったですね。
 その同級生がビル面の巨大テレビジョンで流れていたレスリー・チャンの飛び降り自殺のニュースを見てつぶやく「脚のない鳥が地に落ちた」「『欲望の翼』って知ってる?」、主人公「幽霊と恋する映画なら観た」というやり取りを観て、それだけでこの映画は好きになれると確信しました。かのウォン・カーウァイの傑作『欲望の翼』の中でレスリー演じる人物がモノローグする「脚のない鳥がいるそうだ。飛び続けて疲れたら風の中で眠り、一生に一度だけ地上に降りる」という有名な台詞(テネシー・ウィリアムズ『地獄のオルフェウス』の一節とのこと)をアレンジして使った、この台詞。そのあと同級生は「一晩いっしょにいてよ。レスリーが死んだ日なら忘れることはないから」みたいな台詞を言うんですが、もうこのシーンだけで素晴らしい。レスリーの飛び降り自殺の第一報を確か『NEWS23』で知った時は、僕も本当に衝撃だったし、その記憶がまざまざと甦りましたね。ちなみに「幽霊と恋する映画」は多分『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』のことでしょう。
 そこで気づいたんですが、この映画も『欲望の翼』と同じように孤独な若者たちの青春群像劇映画なんですよね。脚本を無視した即興的演出で暗い作風の映画を撮るウォン・カーウァイに対して、脚本のしっかりとしたハートウォーミングな映画という意味では作品の雰囲気はだいぶ異なりますが、この2つの映画には間違いなく通底したものがあります。『雨と〜』には、久しぶりに同級生と会った2011年の男性主人公が『欲望の翼』のビデオを観るシーンもありました。
 とにかく脚本が本当によく出来た映画で、そこも非常に感心しましたね。何度も「あー、そうか。なるほど」と思わされたし、とてもいい映画でした。DVD(だかBlu-rayだか)も買おうかな。


>テレビドラマの話
 WOWOWで放送してたチャン・ツィイー主演の中国ドラマ『上陽賦 運命の王妃』の録画をようやく観終わりました。全68話。いや長かった。出来はまあまあといったところ。
 NHK-BSの『しずかちゃんとパパ』も終了。こちらは面白かったです。吉岡里帆、笑福亭鶴瓶、中島裕翔など出演者がみな好演でした。



#1846 
バラージ 2022/05/07 22:58
追悼カン・スヨン

 韓国の女優カン・スヨンが5月7日に亡くなったとのこと。55歳の若さでした。
 韓流ブームの起きる遥か前、僕が映画を趣味とし始めた80年代末から90年代前半にかけて韓国を代表する世界的女優だったのがカン・スヨン。今思い出してみると当時のレンタルビデオ店には、『シバジ』『女と男 愛の終着駅』『桃花(ドンハ)』『ハラギャティ 波羅羯諦』といったカン・スヨン主演映画が並んでましたね。とはいえ今になって改めて調べるとであって、当時は『シバジ』以外はカン・スヨン主演作だと認識してなかったような。当時の僕は香港・中国・台湾映画ほどには韓国映画を観てなかったし、世間的にも韓流ブーム以前はそんなもんでした。
 『シバジ』だけは観たんですが、ビデオ化された際には「快楽の報酬」なんてサブタイトルが付けられ、当時流行ってたコリアンエロス映画の走りみたいな扱いにされてました。実際にはエロスの欠片もないような真面目な映画で、シバジというのは李氏朝鮮時代の代理母のこと。その若い代理母が社会的・慣習的抑圧によってたどる数奇な運命を描いてました。カン・スヨンはこの映画でベネチア映画祭の主演女優賞を受賞しています。『ハラギャティ 波羅羯諦』ではモスクワ映画祭最優秀主演女優賞も受賞してるとのこと。2000年代に移る頃にやはりレンタルビデオで当時の主演映画『ディナーの後に』を観ましたが、この頃から韓国映画が変化し始めたのかな。その後、史劇ドラマ『女人天下』に主演して大ヒットしたとのこと。
 特にファンだったというわけではないんですが、やはりあの頃の懐かしさが甦るとともに、まだまだ逝くには若すぎるよなという切なさとやりきれなさを感じざるを得ません。ご冥福をお祈りします。



#1845 
バラージ 2022/04/30 19:26
消えてしまった者

 『やがて海へと届く』という映画を観ました。岸井ゆきのと浜辺美波が主演のヒューマンドラマ映画です。
 主人公は東京の高層ビルにある、おしゃれなレストランバーでウェイターをしている女性。彼女には大学入学時に出会った同級生の親友がいた。内気で引っ込み思案な自分とは対照的に、快活で要領がよく自由奔放でミステリアスなその親友は、5年前に一人旅に出たままいなくなっていた。親友の恋人も母親も彼女は死んだものとするが、主人公はそれを受け入れられない。やがて親友の残したビデオカメラを親友の恋人から受け取った主人公は、彼女が最後に旅した地へと向かう……。
 いやぁ、良かった。ほとんど情報を入れずに観たんですが、それだけになるほどこういう話だったかと深く印象に残りました。彩瀬まるの小説が原作で、中川龍太郎が監督なんですが、とにかく映像の感覚が素晴らしい。街、家、店、山、緑、空、海といった風景があまりにも美しく、また生々しく捉えられています。特に海の映像はものすごく心を揺さぶられました。人物の表情などの繊細な描写も、静謐な映画の雰囲気もすごく良かった。
 役者陣もこれまた最高で、若き演技派女優の岸井ゆきのと浜辺美波の安定した演技力も素晴らしかったし、脇を固める俳優たちもみな好演。特に光石研さんがまたまたすごく良かったですねえ。
 冒頭でアニメーションのシーンがわりと長く続いて、ちょっと、ん?となるし、全体的には若干冗長なところもあるんですが、それでも僕はすっげえ良かった。もう1回観てもいいかなってぐらい。DVD(だかBlu-ray)化されたら買おうかな。


>その他の映画館で観て面白かった映画
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
 Netflix映画で配信前の限定公開というやつ。ニュージーランド出身のジェーン・カンピオン監督がアカデミー最優秀監督賞を獲った映画ですが、それ以前から観ようと思ってたんですよね。
 1920年代の米国のド田舎モンタナ州が舞台。粗野で冷酷で独裁的な兄と、穏和で洗練された紳士的な弟が牧場を営んでいたが、弟が小さなレストランを営む子連れの未亡人と再婚する。それを快く思わない兄は未亡人とその連れ子の青年に冷たい態度を取り続けるが、あることをきっかけにそんな兄の態度に微妙な変化が生じ、やがて連れ子と徐々に打ち解けていくのだが……というストーリー。
 なんというかえらく淡々とした映画で、考えてみりゃカンピオン監督は『ピアノ・レッスン』もそんな感じでした。わかりにくい映画ではないんですが、なんというか物語の鍵になるようないくつかの部分がはっきりとは描かれず、あくまでも仄めかすようなボンヤリとした描き方しかされていません。そこが雰囲気で楽しめるかモヤモヤするかで評価が分かれそう。
 主演はベネディクト・カンバーバッチで、未亡人役がキルスティン・ダンスト。今や一児の母らしいキルスティンもさすがにちょっと歳とったな〜と思ったんですが、それでも十分に美しい。夫役のジェシー・プレモンスとは実際にパートナー関係とのことで、あんな小太りのイケメンでもないおっさんとパートナーとはますます好感度が高まる。ただ後半は息子役のコディ・スミット=マクフィーが全部持ってった感じですかね。

>DVDや録画で観て面白かった映画
『LOOPER/ルーパー』
 タイムトラベルを絡めた近未来SFアクション映画。2013年公開ですが、映画館に観に行こうか迷って、結局観に行きそびれた映画です。
 2044年の近未来が舞台。その2044年の世界には、タイムマシンが開発されたが使用は法律で禁止された2074年の世界から、追跡チップが全人類に埋め込まれたことによって殺人の隠匿が不可能となった犯罪組織により違法なタイムマシンで送り込まれる標的を、指定された時間に指定された場所で殺して遺体を処分する殺し屋“ルーパー”が存在していた。そんなルーパーの1人である主人公のもとに、ある日送り込まれてきた標的は30年後の自分だった。一瞬戸惑った隙をつかれて未来の自分に倒され逃げられてしまい、殺害の失敗で組織に追われることになった主人公は、殺害の完遂で処刑を逃れるために未来の自分を追うのだが……というストーリー。
 いや〜、面白かった。これは映画館で観るべきでした。近未来SFといっても前世紀の近未来映画と違って、世界は現在とそれほど大きく変わっていません。ほんの少しテクノロジーが発展してるだけというのが、21世紀の近未来SFとしてリアル(製作予算もそこまで掛からないだろうし・笑)。いかにもSFゥ〜って感じじゃなく、カラカラに乾いたドライでハードボイルドなちょっとだけSFのアクション映画という雰囲気が良い。初代『ターミネーター』みたいな感じと言いますか。2077年から来た未来の主人公を演じているのは、先日俳優引退宣言をしたブルース・ウィリス。他は知らない俳優ですが、主人公も子持ちヒロインも含めて皆好演。そしてウィリスが狙うヒロインの子供が天才子役でした。いや、良かった。

『メランコリア』
 2012年に日本公開されたデンマーク・スウェーデン・フランス・ドイツ・イタリア合作映画。これまた映画館に観に行こうか迷って、結局観に行きそびれた映画です。
 昔から精神的に不安定で結婚式当日に鬱病を発症してしまう妹と、巨大惑星メランコリアの地球への接近通過に強い不安感を抱く姉を主人公に、やがて地球終末の日を迎える彼女たちとその周辺の人々を描いた作品。主演の妹役がキルスティン・ダンスト、姉役がシャルロット・ゲンズブール。他に姉の夫役でキーファー・サザーランド、姉妹の母役がシャーロット・ランプリング、父役がジョン・ハートとやたら豪華な配役です。監督は『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(未見)のラース・フォン・トリアーで、彼の鬱病体験から着想された作品らしい。
 SF映画というより、SF的設定を含んだドラマ映画と言ったほうがよく、とにかく全編に渡って暗く陰鬱。だからといってつまらないとか退屈とか観るのがしんどいというわけではないんですが、他人におすすめするかと言われるとちょっと躊躇しますね。僕は面白かったんだけど。主演の2人をはじめ役者陣が素晴らしく、ダンストがカンヌ映画祭で女優賞を受賞したとのこと。ダンストの美しいオールヌードもばっちり見れます。全然色っぽいシーンではないんだけど。



#1844 
バラージ 2022/03/30 21:44
最近観た映画

 『KAPPEI カッペイ』という日本映画を観ました。チラシを観た時から、なんだ、こりゃ?と印象に残ってたんですが、テレビの番宣番組を観てそのあまりのアホアホコメディっぷりに面白そーと思って観に行きました。
 1999年のノストラダムスの大予言による終末世界の到来に備えて、その終末世界の救世主となるべく、幼少期から師匠のもとで血のにじむような修行に明け暮れてきた男たち。しかし2022年になっても終末世界が訪れる気配は無く、師匠はついに組織の解散を宣言。修行以外の世界を知らぬまま世間に放り出された主人公は、初めて見る女たちの中のある1人の女子大生にそれまで抱いたことのない感情を感じてしまう。そこから主人公および仲間だった終末戦士たちの恋という名の戦いが始まるのだった……というストーリー。
 いや、予想通り面白かったです。いい意味でくだらなくて馬鹿馬鹿しい。何度もゲラゲラ笑ってしまいました。終末戦士たちは一般世間の中で、終始まんま北斗の拳の登場人物みたいなノリでハチャメチャ。そんな終末戦士たちを、伊藤英明・大貫勇輔・山本耕史・小澤征悦が異様に濃い芝居で演じていて、笑わせてくれます。またアホアホコメディでありながら、意外と青春恋愛映画(ラブコメ)としてもちゃんと楽しめる映画になってて、そこも良かった。ヒロイン役は上白石萌歌。正直今までそんなに可愛いと思ったことはなかったんですが、この映画では非常に可愛らしく、やっぱり女優というのはすごいですね。東宝シンデレラは演技派ぞろいだな。1人ツッコミ役をつとめる、なにわ男子の西畑大吾って子も良かった。
 原作はマンガとのことで、エンドロールでそのマンガのコマが出てきたんですが、残念ながらそっちのほうは絵が下手ウマというか個人的にはあんまり好きじゃない感じの絵でした。

>DVDや録画で観た映画
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・上海』
 ついこないだDVD化された中国映画ですが、2016年の映画なので5〜6年前の作品になります。しかし日本にはなかなか来ず、ようやく去年公開されたんですが地元には来ませんでした。チャン・ツィイーが主演の1人ってことで観たかったんだけど、DVD化でようやく観ることができた次第。
 日中戦争勃発から太平洋戦争終結までの時代の上海マフィアを題材とした映画なんですが、あんまりギャング映画という感じではなく、後半は戦争色がどんどん強くなります。だからといって戦争映画というわけでもなく、何と言ったらいいんだろ? 大河ロマン的ドラマ映画とでも言ったらいいんでしょうか。主演はグォ・ヨウ、チャン・ツィイー、浅野忠信。
 最初から40分くらいはベテラン俳優グォ・ヨウ演じるギャングの大物とその妹婿で日本料理店を営む浅野忠信を中心に話が進み、チャン・ツィイーが全然出てきません。客寄せパンダ的顔見せ出演か?と危ぶんでたら、浅野忠信もあっさり殺されてしまい、え? もう?と思ったんですが、そこから一気に2年前に話がさかのぼり、チャン・ツィイーが登場。やはり彼女が出てくると一気に画面が引き締まる。絵になる女優というか、とにかくめちゃくちゃ美しい。そこまでの40分は話が見えづらい上に妙に淡々とした作風で、正直ちょっと退屈だったから、これはハズレかなあと思ってたんですが、そこからは話もいくぶん引き締まり、まあまあ面白く観ることができました。とはいえ時系列や舞台が錯綜してて、あっちこっちにやたらと話が飛ぶので、今一つストーリーがわかりにくい。主演3人以外の役者の顔が似てて見分けが付きづらいのもわかりにくさに拍車をかけてました。それでも主演3人の好演と、歴史のうねりを絡ませた作品の雰囲気で、それなりに面白くはありましたね。しかしまあ、チャン・ツィイーはしこたま美しかったな。

『ザラタン 大海の怪物』
 台湾のB級モンスター・パニック映画。アリス・クーが助演で出てるからという理由だけで観ました。放射性物質の不法投棄で巨大化した蜘蛛が漁船の乗組員たちを襲うという話ですが、どっちかっていうと船内の複雑な人間関係によるいざこざがメインで、巨大蜘蛛はむしろ添え物。B級モンスター映画かあ、興味ねえなあと思ってた僕としては、むしろ意外と楽しめました。主人公は元海難救助隊員だったが判断ミスで隊長を死なせ、難産で死んだ妻の最期も見とれず酒浸りに。しかしその時産まれた幼い一人娘のために金を稼ごうと頼み込んで義父の漁船に乗り込むが、船員たちは彼に反感を……みたいなストーリー。主演のサニー・ワン、どっかで観たなと思ったら、中国ドラマ『三国志 SECRET of THREE KINGDOMS』に郭嘉役で出てましたね。アリス・クーは名前は2番目にありますが、出てくるのは30分以上過ぎてから。群像劇のためもあって、あまり2番手という感じはありません。まあ十分きれいだったけど。もう1人、男のふりをして料理人として働いてる女性が出てきて、その子もなかなか良かった。その2人がいなかったらむさ苦しい男だけの映画になっていたでしょう。

『ドレミファ娘の血は騒ぐ』
 1985年の日本映画。黒沢清監督初期の作品です。高校時代の憧れの先輩を追いかけて東京の大学にやってきた女の子が、そこで様々な奇妙な体験をするというストーリーで、なんかやたらヌードとかエッチなシーンが多く、森田芳光のデビュー作『の・ようなもの』にもちょっと似てるな、同じピンク映画だか日活ロマンポルノ出身だからかなと思ったら、もともと『女子大生・恥ずかしゼミナール』というタイトルで作ったロマンポルノだったけど、会社に没にされてお蔵入りになってたのを追加撮影と再編集をして、タイトルを変え一般映画として公開したものだったそうで。予想外にシュールで前衛的な映画で、ぶっちゃけところどころわけわかんないんですが、にも関わらず意外になかなか面白かったです。その辺、合う合わないみたいな感覚的なものなんでしょう。あと、あの時代の大学を舞台としてるのが、自分の大学時代の思い出を甦らせ(4年ぐらいのタイムラグはありますが)、いかにもあの頃の映画という作風とも相まって、なんとも懐かしいような切ないような気持ちにさせられました。若き日の洞口依子さんも可愛かったです。でもロマンポルノとしてはそりゃ没になるだろうってのもわかる(笑)。

『潤(ユン)の街』
 1989年の日本映画。大阪を舞台に在日コリアンの少女と日本人青年の恋愛を描いた映画で、映画を趣味にし始めた大学1年生の時に映画誌『ロードショー』で知ったものの、その時住んでた仙台では上映されず、その後ビデオ化もされなかったんで観る機会もありませんでした。もちろんDVD化もされてないんですが、先日に日本映画専門チャンネルで放送され、うわっ、懐かしーと記憶がよみがえって録画しました。『君は裸足の神を見たか』の金秀吉監督の脚本を金祐宣監督という人が映画化した作品で、主演はオーディションで選ばれた姜美帆という女の子と、後に朝ドラでさわやか青年を演じた田中実。初井言榮、李麗仙、井川比佐志、佐藤充らベテラン勢が脇を固めています。現存する原盤で最も状態の良いものを放送したと最初に断り書きが出てましたが、確かにところどころ映像が歪んだり乱れたりしてましたね。映画は重い大事なテーマを扱っているのはわかるんですが、脚本にも演出にも硬さやぎこちなさが見られ、下手すると説教的と取られかねないような作品になってしまっているのが残念。まあ、それでも“あの頃の映画”という懐かしさはありました。最初に出てくる出演者の名前で上の人たちの次に光石研が出てきたんですが、映画を観てもどこに出てきたのか全然わからず、観終わってから調べると田中実の友人役でかなり出番が多かった役でした。ええ? あれ、光石さんなの!?と、もう1度観直してみたんですが、顔も声も今とは全然違ってて、言われないと絶対にわかりません。

>テレビドラマの話
 NHKの連ドラ『しもべえ』が終わりました。いや、面白かった。のんきで平凡な女子高生が手に入れた謎のスマホアプリ「しもべえ」。そのアプリを起動すると、どこからともなく見知らぬおじさん「しもべえ」が現れ、主人公を助けてくれる……というストーリー。主演の白石聖ちゃんが上手くて可愛いし、一言もしゃべらない「しもべえ」役の安田顕も良かった。他の出演者もみんな好演でした。途中オリンピックだのパラリンピックだの3.11特別番組だので放送がしばしば中断というか延期され、おそらくはそのせいで最後は2話連続放送最終回スペシャルになりましたが、まともに放送されてればもっと良かったんだけどなあ。ま、とにかく面白かったです。
 そして今度はNHK-BSで始まった吉岡里帆と笑福亭鶴瓶主演の『しずかちゃんとパパ』も面白い。聴覚障がい者の父と暮らす父子家庭の娘のヒューマンドラマで、これまた出演者がみな好演です。



#1843 
バラージ 2022/03/09 22:48
タイムスリップ恋愛青春ミステリードラマ

 地元ローカル局で放送されていた台湾ドラマ『時をかける愛』(原題:想見[イ尓])が終わりました。
 2019年の台北に住む27歳のOLが主人公。彼女は2年前に恋人を航空事故で失った悲しみから立ち直れないでいた。ある日、彼女はネットで自分そっくりの女子高生と恋人そっくりの男子高校生、見知らぬ男子高校生の3人が仲良さげに写っている写真を見つける。自分が恋人と出会ったのは大学時代で、高校時代に会ったことはない。不思議に思い調べていくと、彼ら3人は1999年の台南の高校生で、自分とも恋人とも別人だった。1999年に謎の死を遂げたという彼女の遺族から忘れ形見のカセットデッキとテープをもらい、台北に帰る夜行バスの中でそのテープに入っていた伍佰(ウーバイ)の「Last Dance」という曲を聞いているうちに眠りに落ちた彼女が目覚めると、彼女はその1999年の女子高生になっていた……というストーリー。
 基本的にはタイムスリップ恋愛ドラマで、そこにミステリー要素が絡むという感じですが、恋愛ドラマとして観ることもできるし、ミステリーとしても、タイムスリップとしても、青春ドラマとしても、それぞれに観ることができます。それでいてそれらが1つに融合した物語としてもちゃんと成り立っているのが素晴らしい。1999年の高校を舞台としたパートが最も長くかつ話の中心になっていて、2010年の大学パートも合わせて青春ドラマの要素が非常に強いというのも僕好み。青春の影と傷と痛みと切なさを晒すように描いているところがとても良かった。観てて胸が締め付けられるような展開で、1つの謎が解決しても、そこからまた別の謎が生まれ……というミステリーとしての出来も秀逸。タイムスリップの絡め方も絶妙に上手く、脚本がほんっとうによく出来てましたね。
 最終回もまさに大団円。正確には100%ハッピーエンドっていうわけではないんですが、多少の切なさを残しつつも、とても良い終わり方でした。伏線の回収がとにかくお見事。最後の最後でまた、えええ? ここは○○だったのか!となったし、あのラストには脚本ばかりでなく、カメラワークにも演出にも思わず、上手い!と唸ってしまいましたねえ。

 タイムスリップといっても精神だけが過去(や未来)にとぶやつで、しかも自分とかではなく顔のそっくりな見知らぬ他人の肉体にとぶというタイプ。そのため主演のアリス・クーは「2019年のOL」「1999年の女子高生」「タイムスリップしたOLの精神となった女子高生」「2010年の女子大生時代のOL」など、4役から5役以上をこなしており、彼女の演じ分けが繊細で本当に上手い。ちなみに彼女の出演映画を調べると、過去に『モンガに散る』(2010年日本公開)と『百日告別』(2017年日本公開)を観てました。どっちも映画はなかなか面白かった記憶があるんですが、アリス・クーの記憶は全くなし。作品との出会いって大事なんだな。
 オープニングテーマとエンディングテーマもすげえいい曲で、普段は録画したドラマを観る時はオープニングやエンディングを観るのは1〜2話ぐらいで、3話以降はほとんど飛ばしちゃうんですが、このドラマは中盤あたりから毎回ちゃんと全部聞いてましたね。

 DVD完全版は26000円するらしく、BS12あたりでまた放送されんかな。そしたら全話録画し直すのに。台湾オリジナル版は1話90分(CM込み)の全13話のため、日本版DVDおよび配信版では単純に1話を2つに分割して全26話にしているようです。しかしそれでは1話45分(CM込み)となってテレビ放送の尺に合わないためか、日本版テレビ放送バージョンは全21話という独自編集版となってるんですよね。以前BS11でも放送されてたらしいんですが、全45話というこれまたずいぶん細切れなバージョンだったらしい。
 ちなみに今年台湾で映画版が公開されるらしいんですが、いったいどういう形になるんだろ? 2時間にまとめきれる内容とは思えないんですけど、アナザー・ストーリーになるのかな? また中国でも大ヒットしたらしく、さらに韓国でもリメイクされるとのこと。まあオリジナル観ちゃった後でわざわざリメイク観る気はしないけど。


>巨炎さん
 はじめまして。『鑓の権三』を放送してたのは番組欄で見て知ってましたが、主演が郷ひろみの時代劇という以外は何も知りませんでした。岩下志麻とかも出てたんですね。映画自体は観てないんですが。
 『草燃える』の2代将軍頼家のあたりは、北条氏正当化のために曲筆をしている『吾妻鏡』に比べればかなりマイルドではありますが、それでもある程度は『吾妻鏡』のエピソードを取り入れており、やや頼家の悪行を強調したような感じになってますね。



#1842 
巨炎 2022/02/25 13:21
こちら初めまして

昨晩、BS日テレの木曜時代劇で「鑓の権三」という作品が放映されていました。

https://www.shochiku.co.jp/cinema/database/04188/

丁度、今年の大河ドラマの予習で「草燃える」を観直した直後だったので
鎌倉二代目寝取り将軍、寝取られ部下、息子への独占欲丸出しな尼将軍による
主要キャストがネタ的に(映画自体の評価は別にして)楽しめました。

https://sakuhindb.com/pj/6_BDBDB7E6BDB8/writing.html


#1841 
バラージ 2022/02/03 22:29
女たち、その美しきもの

 1月というか今日までにDVDや録画などで観て面白かった映画たち。

『ソウルメイト 七月(チーユエ)と安生(アンシェン)』
 去年公開された映画ですが、ようやくDVDレンタルが開始されたんで早速観ました。中国・香港合作映画で、香港のデレク・ツァン監督(名優エリック・ツァンの息子)による2016年のデビュー作。日本でも2017年の映画祭で上映され好評を博しましたが、なかなか一般公開はされず、去年ツァン監督の第2作『少年の君』の公開に合わせてようやく公開された作品です。しかし、いつものことながら地元には来ず、DVD視聴とあいなった次第。
 故郷を離れ上海で暮らす安生(アンシェン)という女性に映画会社から、ネット小説『七月(チーユエ)と安生(アンシェン)』を映画化したいとの連絡が届く。作者自身の名が七月(チーユエ)で、幼なじみの2人の女性を主人公とした自伝的小説だったが、作者がどこにいるのかわからないという。そこで小説の内容からもう1人の主人公・安生を探し当てたとのことだった。だが安生は七月という人など知らないと答える。しかし本当は七月は安生にとってかけがえのない親友、深いところでずっとつながっていた存在だった。そこから小説に描かれた2人の10年以上に渡る友情と愛憎劇が描かれていく……というストーリー。
 いい映画でした。親友などという言葉では片付けられない女同士の複雑な関係が描かれていくんですが、終盤では畳み掛けるようにどんでん返しが何度も連発されていきます。脚本は正直言ってちょっと凝りすぎのような気もしたんですが、主演のチョウ・ドンユイとマー・スーチュンがそれを補ってあまりあるほど良い。2人とも超絶美人というわけではないんだけど、女優の美しさというのはそういう単純な美しさとはちょっと異なるところにあるのでしょう。チョウ・ドンユイの天才ぶりはこれまでも散々見てきましたが、初めて見るマー・スーチュンの抑えた受けの演技もすごく良かった。やはり女優のいい映画は、いい映画です。

『目撃者 闇の中の瞳』
 ドラマ『時をかける愛』のアリス・クーが助演で出てるからという理由だけで観た台湾のサスペンス・ミステリー映画。中古で買った車が偽装された事故車で、しかもその事故がかつて自分が第一目撃者として関わったものだったことを知った元記者が、事件の真相を追う中で次々と思わぬ事態に直面していくというストーリーで、アリス・クーはかつての事故の被害者役。なかなか面白かったです。最初は普通のミステリー映画っぽく見せかけて、実は登場人物がどいつもこいつも裏に黒い一面を隠してたのが露にされていき、事件の真相が二転三転していく。その脚本がすごくよく練られてて、台湾で大ヒットしたんだとか。ちょっと猟奇的というかグロいところもあって結末の後味もあまり良くないんで、もう1回観たいかと言われればうーんとなるんですが、非常によくできた映画ではありました。

『ハピチャ 未来へのランウェイ』
 1990年代の内戦下のアルジェリアを舞台に、ファッションデザイナーを志す寮住まいの女子大生を主人公としてイスラム原理主義勢力による女性差別の実態を描いたフランス・アルジェリア・ベルギー・カタール合作の社会派ヒューマンドラマ映画。自由を求める若い女性たちの青春ストーリーであると同時に、非常に重い現実を突きつけてくるシリアスな映画で、特に原理主義勢力を支持する人々が女性たちの中にさえいたという事実が重くのし掛かります。最後も決してハッピーエンドで終わらないリアルな作品でかなり衝撃的。それでも未来への希望を託すかのような監督の視点が素晴らしい。監督自身もアルジェリアで90年代を過ごし、後に家族とともにフランスへ逃れたとのことで、その実体験を反映させた作品だそうです。

『チャイナ・ヒート 極悪強盗団vs特別捜査隊』
 中国・香港合作の実録犯罪アクション映画。DVD化前にWOWOWで先行放送というやつで、DVDは『オーヴァーヒート 最後の制裁』という邦題になるらしい。1990年代に強盗や殺人を繰り返した実在の凶悪犯をモデルとして、中国南部の地方都市を渡り歩く武装銀行強盗団とそれを追う警察の特別捜査隊を描いた作品で、主演は捜査隊長役が中国のワン・チエンユエン、強盗団リーダー役が香港のダニエル・ウー。もちろん実話そのままではなくフィクションが入った娯楽アクションで、実際の街を使っての大がかりでド派手な銃撃戦に爆破にカーアクションと、往時の石原プロみたいなものすごい大規模なアクション映画です。実録ものゆえの作品の地味さというか、ストーリー的にはやや弱いところもありましたが、その分妙にドラマチックにしすぎないリアルな感じで、まあまあ面白かったですね。それにしても90年代の中国であんな凶悪犯罪が頻繁に起こっていたという事実は初めて知ったし、犯人の死刑判決が短期間で決まり、執行も野原みたいなところで背後の至近距離から拳銃で銃殺ってのもちょっとびっくり。

>テレビドラマ
 『時をかける愛』はGYAOで配信されてるのを見つけて、観てなかった1・2話を回収。僕が観たのは3話からだったようです。放送も中盤を折り返しましたが、やっぱり素晴らしい。観てて胸が締め付けられるような展開で、ほんと脚本がよく出来てます。以前BS11でも放送されてたらしいんですが、再放送してくんないかなあ。そしたら全話録画するのに。DVD化はされてるけど、TSUTAYAでもGEOでもレンタルされてないんですよね。セル専用なのかな?



#1840 
バラージ 2022/01/04 22:02
あけましておめでとうございます

 こちらの板でも今年もよろしくお願いします。
 年末年始は録画がたまってた台湾ドラマ『時をかける愛』を何話か一気に観たんですが、いやぁ面白い! タイムリープ青春ミステリーなんですが、脚本がすっげえよく練られてて、観てて、ええええ!?とか、あぁ〜なるほどそうだったのかぁ、となっちゃいました。あー、続きが気になってしょうがない。そして主演女優のアリス・クーがめっちゃ可愛い。30代半ばのようですが(1998年の)女子高生役を全く違和感なく演じています(2019年の27歳女性との二役)。人生で1番がんばってスキンケアをしたんだとか。
 そこから今年の年末年始はもう、好きな女優の出てる映画やドラマしか観ねえぞと(なぜか直感的にそうしたほうがいいと)決意して、Blu-rayディスクに落としていた中国女優レジーナ・ワンの出てる香港映画『戦神 ゴッド・オブ・ウォー』や、星野真里さんが出てた一昨年(というか2019年末)のドラマ『BARレモン・ハートSP』などを再見して、大晦日以外は家から一歩も出ずにごろごろして過ごしたのでした。



#1839 
バラージ 2021/12/31 19:21
ここではないどこかへ、百年の孤独、越境する少女(今年のベスト3)

 『すべてが変わった日』という米国映画を観ました。ダイアン・レインとケビン・コスナー主演のサスペンスヒューマンドラマ映画です。
 1963年のモンタナ州のド田舎。老夫婦と息子夫婦が牧場を営んでいたが、ある日息子が落馬事故で死亡。産まれたばかりの子供を抱えた嫁は3年後に再婚するが、ある日義母は偶然その再婚相手が孫と嫁に暴力をふるってる姿を目撃してしまう。心配になった義母は嫁夫婦のアパートを訪ねるが、夫婦は何も言わずに引っ越していた。孫が心配でたまらない義母は、旦那の実家のノースダコタ州に向かうことを決意。義父は止めるが妻を翻意させることはできず、いっしょに行くことにする。長い旅の末に探し当てた旦那の実家は、恐ろしい母親が暴力的な息子たちを強力に支配する一家で、老夫婦は孫と嫁を取り戻すために戦うことを決意する……といったお話。
 面白かったです。基本的に静かなトーンで展開していく映画で、派手なハッタリズムのない地味で実直な作品。レインとコスナーをはじめとした実力派俳優たちの演技で見せていく重厚なサスペンスドラマでした。レインもコスナーもすっかりおじいちゃんおばあちゃんになったけど、歳取ってお腹が出ようとやっぱりかっこいい。人生の年輪を刻んだような重みのある渋い演技で魅せてくれます。他の役者は知らない人たちでしたが、これまたいずれも好演で、特に後半に出てくる悪者一家が怪演。登場時からいかにも不穏な空気を漂わせ、徐々に彼らの異常な素顔が見えてくるところがすっげえ怖い。老夫婦はこのピンチをどうやって脱するんだ?と、ずっとドキドキハラハラでしたね。
 ちなみに劇中では年代を示す描写が全く無かったんで、パンフレットを読むまで米国には今でもこんなド田舎があるんだなぁと思ってました。老夫婦が出会うネイティブアメリカンの青年の身の上話がさすがに今の話とは思えなかったため、あれ?とは思ったんですが、やっぱりちょっと昔の話だったんだ。ま、とにかく良い映画でした。


 今年の僕の映画ベスト3は、『象は静かに座っている』『めまい 窓越しの想い』『THE CROSSING 香港と大陸をまたぐ少女』でした。『象〜』は地元では去年公開された映画で、『めまい』『THE CROSSING』は地元では公開されずDVDやBS放送で観た映画。映画館で観た映画は個人的にはやや不作だったということかな。あえて挙げれば『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』ですが、まだ三部作の1作目だからなあ。
 それでは今年も1年お世話になりました。また来年。



#1838 
バラージ 2021/12/24 22:30
最近観た映画

 ついこないだNHK-BSで『トキワ荘の青春 デジタルリマスター版』が放送されてて、もちろん最高画質で録画して観てBD-Rに落としたんですが、あれ?そういえば劇場公開というかリバイバル上映もされてたんじゃ……と思って、公式サイトがあったんで見てみたら今年2月の公開で、またも地元では上映無しでした。やれやれ、またかよ。Blu-rayも発売されてるみたいなんで買おうかなぁ。

>最近DVDや録画で観た映画
『凱里(かいり)ブルース』
 中国映画の新鋭、『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』のビー・ガン監督のデビュー作。貴州省の凱里市という田舎町の、老いた女医1人だけの診療所で助手として働く男が主人公。男は刑務所から出てきたばかりだが、妻はその間に死んでいた。やがて可愛がってた甥(腹違いの弟の子)を弟がよその街へやってしまう。男は甥を連れ戻そうとその街に向かうが、途中立ち寄った村で不思議な体験をする……というストーリーはわりとどうでもよく、『ロング〜』と同じくあまり論理性を考えず映像詩に身を委ねるような映画です。えらく淡々とした作風の映画ですが、退屈はせずに最後まで観通せました。そのあたりは初期のホウ・シャオシェン映画と似てるような。肝はやはり後半、村に入ったあたりからのワンショット長回しシークエンスで、そこも『ロング〜』といっしょ。カメラが追いかける人物が次々に変わっていくのがユニークでした。ただ面白いことは面白いんだけど、ずっとこの作風でやっていくのかな? 早晩行き詰まりそうな気がしなくもないんですが。

『無敵のドラゴン』
 『メイド・イン・ホンコン』『ドリアン ドリアン』『ハリウッド★ホンコン』などの感覚派、香港のフルーツ・チャン監督がなぜか突然撮ったアクション映画。主演は『グランド・マスター』に出てたカンフー俳優マックス・チャンで、格闘家のアンデウソン・シウバって人が敵役をやってます。DVDパッケージをちらっと見た時はいかにも筋肉バトル映画って感じであんまり興味なかったんですが、監督の名前が目に入り、フルーツ・チャンがアクション映画?ってなって、しかも裏を見たら懐かし女優のロレッタ・リーが脇役で出てるみたいなんでちょっと興味を持って観てみました。そしたらこれが意外となかなか面白かった。筋肉バトルというより、マーシャルアーツの場面もある総合的なアクション映画ですね。80年代後半〜90年代のジャッキー映画みたいな作品で、舞台も香港とマカオだけだし、久々に“香港映画”って感じ。ジャッキーと違って笑いと命がけスタントはありませんが、ストーリーもしっかりしてたし、一部にCGを上手く融合したアクションも良かった。普通のアクション映画にはないような、人を食ったようなちょっと奇妙なシーンや展開があるのはいかにもフルーツ・チャン風味ですが、それでも他の映画に比べればかなり抑えめ。ロレッタ・リーは脇役も脇役、超脇役でしたが、すっかり太ったおばちゃんになっててちょっとショック。でも今のほうが女優としてはいいのかも。懐かしのリチャード・ンさんもちょっとだけ出てました。

『そして、私たちは愛に帰る』
 2007年のドイツ・トルコ合作映画で、トルコ系ドイツ人であるファティ・アキン監督の「愛、死、悪に関する三部作」の第2作(最終作の『消えた声が、その名を呼ぶ』(2014年)は映画館で観た)。定年を迎え余生を娼婦と暮らそうとするトルコ系ドイツ移民の老人と、野卑な父に反発する大学講師の息子。ドイツで稼いだ金を故郷トルコで大学に通う娘に仕送りしているその娼婦と、実はトルコで反体制運動に身を投じている娘。トルコを逃れドイツに不法入国したその娘と親しくなり、強制送還されたその娘を救うためトルコに渡るドイツの女子大生と、そんな娘を理解できない保守的な母親。そんなすれ違う3組の親子の人生が交錯するヒューマンドラマ映画です。面白かったですね。ファティ・アキン監督は『消えた〜』『女は二度決断する』もそうでしたが、社会派的テーマと純粋なヒューマンドラマを絡めるのがすごく上手い。社会派的テーマを扱いながら社会派映画にはせず、それをヒューマンドラマとして昇華しているのがすごい。いい映画でした。

>中国現代劇ドラマ
 『30女の思うこと 上海女子物語』(原題:三十而已)全43話をようやく録画視聴終了。最近日本でも中国ドラマが流行りですが、大半が時代劇(史劇、ファンタジー含む)で韓国や台湾と違って現代劇は少ないんですよね。あったとしてもコテコテのラブコメばっかりで、どうにも観る気が起きませんでした。しかしこのドラマは30歳女性3人のリアルな日常と人生を描いているとのことで、興味を持って観てみたんですが、大人向けの質の高い優れたドラマでしたね。43話という長さに途中ちょっとだれたところもありますが(とはいえ他の中国時代劇ドラマに比べれば短め)、それだけの長さだからこそ多彩な展開で様々な要素を入れ込むことができたんでしょう。現代中国の人々のリアルな(といってもちょっとセレブっぽい人々なんですが、まあどこの国でもドラマなんてそういうもんですし)生活の様子を見れて非常に興味深かったです。一人っ子政策のため登場人物のほとんどに兄弟がいない(一部例外あり)なんてのも、ドラマとして映像で見せられると非常によく実感できます。面白いドラマでした。来年にはDVDが出るようですね。
 ちなみにチャン・ツィイー主演の架空史劇ドラマ『上陽賦 運命の王妃』と、台湾のタイムスリップ恋愛ドラマ『時をかける愛』も現在視聴中。『時をかける愛』は僕の地方のローカル局で深夜に放送されてます。軽いラブコメみたいなやつかと思って最初は観てなかったんですが、第2話をたまたま観たら謎のあるミステリーっぽい青春恋愛ヒューマンドラマって感じで、なかなか面白い。その謎が気になり、ついつい毎週観ちゃっております。主演女優のアリス・クーが良いですね。グイ・ルンメイにちょっと似ています。



#1837 
バラージ 2021/11/03 16:35
いろいろな映画

>映画館で観てた映画
 何ヵ月か前に観て、感想を書くのをすっかり忘れてた映画の感想を今さらながら。それは『未来へのかたち』という日本映画。地域発映画なのかな。
 愛媛県の砥部町というところが舞台で、そこの砥部焼という陶磁器を作る若手陶芸家が主人公。そこでオリンピックの聖火台を砥部焼で作るという企画が持ち上がり、主人公もコンペに参加。見事勝ち抜くが、採用されたデザインは見覚えのないもので、実は陶芸を手伝う高校生の娘が考えたデザインをバイトの若者が勝手に応募したものだった。そのデザインを完成させるためには絶縁状態の父や、地元を出ていった兄の協力が不可欠で……といったお話。
 監督自身が砥部町出身とのことですが、手堅く作られた佳作でなかなか面白かったです。俳優陣が良かったですね。主演が伊藤淳史、その妻が内山理名、兄が吉岡秀隆、父が橋爪功とこれまた手堅い布陣で安定の演技で魅せてくれます。しかし1番感心したのは娘役の桜田ひよりって子。どっかで見た子だなぁと思って後で調べたら、『男はつらいよ』の最新作に出てた子でした。そっちでは吉岡秀隆と父娘役でしたが、こっちでは伯父と姪。しかし観てて全く違和感がなかったんで、2人とも演技が上手いんでしょうね。いや、吉岡秀隆が上手いのは当然わかってたことだけれども。あと陶芸バイト役の飯島寛騎っていう若いイケメン俳優も良かった。ちょっとチャラいお調子者役で笑わせてくれました。なんとなく面白そうという直感と、内山理名が出てるからってので観たんですが、まあまあ当たりだったと言っていいのかな。

>DVDや録画で観た映画
『リボルバー』
 1988年の日本映画で、佐藤正午の同名小説の映画化。DVD化はされてるものの長らく絶版でレンタルもされてないためずっと観ることができなかったんですが、CSの日本映画専門チャンネルで放送されたんで録画して観てみました。んー、ちょっと期待外れ。長らく観れなかったんで映画のあらすじを読んでしまったりして、ある程度知ってたんですが、ストーリーが原作からだいぶ改変されてます。大筋では原作と変わりないんですが、原作のだいぶ手前から話が始まってるんですよね。原作のわずかな過去の描写や伝聞の出来事が大きくふくらまされ、さらには原作にないオリジナルのエピソードまで挿入されて、なかなか原作の話が始まりません。原作のエピソードに入るまでで30分、原作の本編に入るのは半分近くが過ぎた50分過ぎくらいから。そのため原作の本編部分はやたら足早に進み、ずいぶんあっさりとした展開になってしまっているし、ラストの展開も原作とはだいぶ異なります。原作が映画的でないということなのかもしれないけど、だったら映画化するなよなあ。ただ原作を読んでない人なら、単純に映画としてはまあまあ面白いのかも。

『ソフィー・マルソーの刑事物語』
 1985年のフランス映画。原題は『POLICE』。モーリス・ピアラ監督作で、邦題と違ってマルソーは刑事ではなく、というか主人公でもなく、主演の刑事役はジェラール・ドパルデュー。マルソーは容疑者の1人でヒロイン役なんですが、日本では劇場未公開でビデオスルーになったため、こんな邦題になっちゃったみたい。00年代にピアラ特集で劇場初公開された際には『ポリス』という邦題に変えられたようです。
 なんというかちょっと変わった作風で、アクションでもサスペンスでも社会派でもなく、娯楽映画でも芸術映画でもありません。刑事の日常を仕事と私生活両面でドキュメント・タッチで描いていく人間ドラマとでも言えばいいでしょうか。主人公を含め刑事たちが結構暴力的な取り調べをするんですが、それを批判的に描くわけでも、かっこよく描くわけでもありません。逮捕して取り調べた容疑者が釈放されても、自分の仕事はしたんだからまあいいやって感じで、正義感に溢れてるわけでもないんだけど、だからといっていい加減でもなく、刑事としての仕事はきちっとしています。一方で釈放された側も特に恨んでる風でもなく、普通に刑事と交流してたりしている。主人公は悪党側(チュニジアから来たアラブ人の麻薬取引犯グループ)の弁護士とも友人で、弁護士も俺の依頼人は悪党ばっかりだと刑事に言ったり、お互い仕事は仕事と割りきってる感じ。マルソーは悪党の1人の恋人ですが、刑事や判事にはシラを切り通して保釈されるも、悪党側も騙して金を持ち逃げしようとしたりする役どころ。妻に先立たれた主人公はそんな女に惹かれていき……みたいな感じなんですが、主人公はそれ以前に保護した娼婦とやっちゃったり、研修中の新人女性を口説いたりと、結構見境がなかったりします。なんかその妙に人間臭い感じが面白かったですね。ハッピーエンドじゃない苦くて切ないラストもヨーロッパ的で良かった。マルソーもちらっとヌードになって軽いベッドシーンを演じてますが、もう1人ヘアまで見せるヌードになってナイスバディを惜しげもなくさらしてる娼婦役の女優がピアラの前作『愛の記念に』で主演デビューしたサンドリーヌ・ボネールだそうで、19歳の役だけど当時16歳だったそうですがもっと大人びて見えました。ヨーロッパの女優は自然にさらっと脱いじゃいますね。この人も現在まで息長く活躍してるようです。



#1836 
バラージ 2021/10/10 22:55
暗く静かに美しい

 『めまい 窓越しの想い』という韓国映画を観ました。今年日本公開された映画で、またまた観たかったけど地元には来なかった映画をDVD視聴です。
 高層ビルにあるオフィスで1年ごとの契約社員としてデザインの仕事をする30代のOLが主人公。いつ契約を切られるかわからない不安定な雇用、面倒な職場の人間関係、公にできないバツイチの上司との恋愛、無内容な電話を毎晩かけてきて遠回しに金の無心をする依存的な母親──日々のストレスからか彼女は原因不明の耳鳴りとめまいに悩まされるようになる。窮屈で息の詰まるような日々の中で、恋愛も仕事仲間も母親との関係も全てが少しずつ破綻して失われていき、彼女はゆっくりと静かに追いつめられていく。そんな彼女を遠くから見つめるビルの窓清掃の青年がいた……。
 とにかく全編に渡って、ほの暗く静謐で息苦しい映画でした。現代人の感じる生きづらさを、何気ない些細なエピソードを繊細に積み重ねていくことでリアルに描き出しています。登場人物の生い立ちや家庭状況、過去に何があったかなどを過剰に説明せず、行間を読ませるような文学的な香りのする映画でしたね。
 主演が好きな女優のチョン・ウヒで、彼女目当てで観たんですが、やはり素晴らしい。日々に生きづらさを感じる、ちょっと内向的なだけのごく普通の30代OLを見事に演じています。さすがは演技派。決して典型的美人ではないんですが、ちょっと奥二重の猫っぽい顔立ちが本当に美しい。役柄と演技力も相まって、思わず抱きしめてあげたくなっちゃいました。今年1、2を争う、とても良い映画でしたね。いやあ、良かった。


>テレビドラマの話
 今季観てたドラマは『ハコヅメ』と『#家族募集します』。どちらもなかなか面白かったんですが、いずれもメイン出演者にコロナ感染者が出て、中盤数週お休みとなり放送回数が短縮されるというアクシデントが。難しい時代になりました。
 そして去年終わりから今年初めに地元ローカル局の放送で観てた台湾の社会派ドラマ『悪との距離』(#1814)が、11月からBS11で放送開始。これ、めちゃくちゃ重いドラマでしたが、すっげえ面白かったんですよね。



#1835 
バラージ 2021/09/23 21:22
ライダー映画

 少し前に、庵野秀明が『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』に続いて『シン・仮面ライダー』も映画化というニュースが出てました。そんなわけで一抹の不安を抱きつつも(笑)、以前ウルトラマン映画の感想をいくつか書いたように僕が過去に観た仮面ライダー映画の感想を軽く書いていっちゃおうかな、と思いまして。といっても実は仮面ライダー映画ってあんまり観てないんだよな。

『真・仮面ライダー 序章(プロローグ)』(1992年)
 これは映画ではなくてオリジナルビデオです。当時はVシネマの登場でオリジナルビデオが流行り始めた頃で、大人向けの仮面ライダーを目指して作られたとのこと。確かに設定も造形もストーリーも大人向けな感じで、主人公(仮面ライダー)が全身筋肉剥き出しの怪物みたいな気持ち悪い姿だし、敵の組織も妙にリアル。タイトルに「序章(プロローグ)」とあるように、続編で主人公が仮面やスーツやバイクを手に入れ、「仮面ライダー」になるはずだったようですが、結局序章だけで終わりました。出来はまあまあ。低予算にしてはがんばってたほうなんじゃないでしょうか。原作者の石ノ森章太郎も1シーンだけ出演しています。

『仮面ライダーZO』(1993年)
 48分の中編映画で、仮面ライダー初の劇場オリジナル作品。マンガ祭り的なものの中の一本だったんでしょう。監督は雨宮慶太。ビデオで観ましたが、多少は大人向けながらもオーソドックスな仮面ライダーという感じ。時間の短さもあって内容はやや薄味ながら、これまたまあまあの出来かと。

『仮面ライダーJ』(1994年)
 これまた劇場オリジナルの46分の中編映画で、監督も引き続き雨宮慶太。脚本は上原正三。やはりビデオで観ました。この作品の最大の特徴は仮面ライダーがウルトラマンみたいに巨大化するところ(敵も当然でかい)。やはり短いので内容は薄いながらもまあまあの出来。石ノ森が最後に関わった仮面ライダーとのこと。

 ついでに隣接類似映画の感想も。

『人造人間ハカイダー』(1995年)
 「仮面ライダー」を2本撮って調子に乗った雨宮慶太が、今度はやはり石ノ森のマンガ原作のテレビ特撮ドラマ『人造人間キカイダー』の人気悪役ハカイダーを主人公として撮った52分のスピンオフ的中編映画。これもビデオで観ましたが、はっきり言って面白くなかった。雨宮慶太って上記2作や『ゼイラム』の時もちょっと思ったんだけど、目の付け所はいいし特撮や造形など部分的にはいいところもあるんだけど、映画全体としては内容が薄くていまいちという、なんだか惜しい感じの監督です。78分のディレクターズカット版も翌年に公開されてますが、そんなわけでそっちは未見。

『キカイダー REBOOT』(2014年)
 これは映画館で観ました。監督は下山天という人。タイトル通り『人造人間キカイダー』のリブート作品ですが、いやぁ全くつまらなかった。テレビのキカイダーシリーズは観たことなくて、大学時代に原作マンガを読んだだけ。面白かったけど、だからといって特に思い入れはありません。なので元祖テレビシリーズや原作に比べてどうこうというのではなく、単純に映画としてつまらなかったということです。とにかく退屈で仕方のない110分でした。


>再見映画
 昔懐かし映画を再見、今回は市川準監督、牧瀬里穂主演の『つぐみ』。この映画も年に1回くらいは定期的に観返しちゃってるんで、確実にもう10回以上は観てることになります。
 僕の大学時代の1990年の映画ですが、何かの理由で映画館では観逃して、レンタルビデオで観ました。その時ももちろんとても面白かったし、卒業後に確か中古ビデオを買ってやはり何度も観たんですが、00年代末にDVDに買い換えてからのここ10年ちょいでの面白さは、なんというかそれ以前とはちょっと異なるように感じています。それはおそらくそこに“郷愁”という要素が加わったからなんでしょう。
 1987年のデビュー作『BU・SU』なんかもそうですが、市川準の現代劇にはその時代の空気とか世界を、そのまま切り取って映像の中に封じ込めたような映画なのです。だから市川準の映画を観ていると、その中に“あの時代”がそのままあって、特に『つぐみ』や『BU・SU』の、自分にとっての青春時代である80年代後半から90年の“あの頃”“あの風景”がたまらなく懐かしくなり、思わず画面に飛び込んで映画の中の世界に行きたくなってしまうんですよね。画面の向こう側は1990年の“あの世界”で、そこに行けるような錯覚を起こさせてくれる。なんか『カイロの紫のバラ』の逆パターンみたいですが(笑)。
 牧瀬里穂と中嶋朋子、白島靖代の3人の若手女優も、市川準監督によって20歳前後の少女特有の美しさが見事なまでに映し出されており、輝かしくも神々しく、崇高なまでに美しい。もちろん最初に観た時から彼女たちは美しくて、僕はこれで(だけではありませんが)牧瀬ファンになっちゃったわけだし、アラフィフになった今でも牧瀬さんはとてもそうは見えないほど若々しく美しいんですが、この時の彼女は今観るとなんというか美少女とかそういうレベルではなく、“存在そのもの”が美しい。観てて思ったんですが、この映画に描かれているのは、ある種の“現代の神話”です。思春期の少女の一種の“神聖不可侵”なものを感じさせる。もちろんそこには原作の力もあります。実は吉本ばななの原作は買ったまま読んでないんですが、そろそろ読んでみようかなと思っている今日この頃なのでした。

>またまた思い出したように孫悟空映画
『悟空伝』
 ちょっと前というか夏前にレンタルDVDで観た映画です。タイトル通り(原題も邦題と同じ)孫悟空を主人公とした中国・香港合作のファンタジー・アクション映画ですが、『西遊記』の映画化ではなく、孫悟空のキャラクターだけを借りたほとんどオリジナルのストーリー。ネット小説が原作とのことで、天界を舞台とした神々の戦いの話なんですが、これがいまいちわかりにくくて取っ付きにくい。近年のこの手の中華圏ファンタジー映画ではおなじみの、CGをしこたまぶちこんだ3D映画で、クライマックスのバトルシーンはほぼアニメに近いような。ヒロイン女優のニー・ニー目当てで観て、確かに彼女は魅力的だったけど、ほんとにそれだけの映画って感じでした。それでも全くつまらないというわけではなく、まあまあ観れる映画ではありましたが。



#1834 
バラージ 2021/09/07 21:23
若者たちの見る世界

 『少年の君』という中国映画を観ました。邦題は原題の直訳ですが、この場合の「少年」とは男女の区別なく「少年少女」または「少年期」という意味でしょう。
 舞台は2011年の地方の大都市。熾烈な受験競争の中で進学校に通う女子高生は、苛酷ないじめを苦にして飛び降り自殺した同級生少女の遺体に上着をかけたことから、新たないじめの標的にされることになる。母子家庭の母は学費を稼ぐために詐欺まがいの商売をして家には被害者が押し寄せ、殺伐とした学校では友人もなく、受験勉強に没頭することで孤独な日々をやり過ごしてきた少女。ある日、敵対するチンピラたちにリンチされている少年を見かけた少女は、警察に通報しようとして彼を助ける。優等生とチンピラという孤独な少女と少年の魂の邂逅。彼らは救いを求めてお互いに徐々に惹かれ合っていく……というストーリー。
 いやぁ、すごく良かった。今年映画館で観た中では間違いなくNo.1ですね。中国における猛烈な受験地獄と、胸がムカつくようなひどいいじめの描写は、まるで80年代日本を思わせました。どこの国でも変わらんもんなんだな。貧困というのもやはり世界的に普遍的な問題です。その一方でスマホやラインなどの存在などはいかにも現代という感じ。
 そしてそんな中で出会った少女と少年の生活や心理の細やかな描写が素晴らしい。その少女を演じたのが、2010年にチャン・イーモウ監督の『サンザシの樹の下で』でいきなり主演デビューし、“13億人の妹”と呼ばれることになった若き演技派チョウ・ドンユイ。本作でも撮影当時26歳ぐらいですが高校生にしか見えません。童顔で小さくて痩せてるためもあるんでしょうが、他の映画ではちゃんと20代女性に見えるからなあ。さすがは演技派。そしてチンピラ少年役のイー・ヤンチェンシーも良かった。こちらはドンユイよりずっと年下のアイドルグループ歌手で、実年齢に近い役ですが、演技派チョウ・ドンユイに引けを取らない熱演でした。刑事や母親、いじめっ子など、その他の俳優陣もみな好演。
 監督は香港の名優エリック・ツァンの息子デレク・ツァン。『ソウルメイト 七月(チーユエ)と安生(アンシェン)』に続く2作目の単独監督作だそうです。『ソウルメイト 七月と安生』のほうは2016年の映画で、2人の女性の数年に渡る愛憎劇を描いています。主演はチョウ・ドンユイとマー・スーチュンのダブル主演。日本では数年前に映画祭で高い評価を得ながら、『少年の君』が公開された今年になってようやく公開されました。そっちも観たいんですが、地元には来なさそうなんでDVD視聴になっちゃうかな。


>最近観てる中国ドラマ
 7月からCSのLaLaTVで始まった中国ドラマ『30女の思うこと 上海女子物語』(原題:三十而已)を視聴中。上海に住む3人の30歳女性の日常を描いたドラマです。日本に来る中国ドラマは大半が時代劇で、たまにある現代劇もベタなラブコメやラブストーリーばっかりなんですが、このドラマは大都会に住む30歳女性のリアルな等身大を描いていて、なかなかに面白い。週5放送なんで録画視聴が追いつかないんですが、こつこつと観ております。
 もう1本、WOWOWではチャン・ツィイーの初ドラマ『上陽賦 運命の王妃』が始まりました。こちらは架空王朝が舞台の史劇風時代劇ですが、録画したまままだ観ていません。こっちは週2放送です。

>追悼
 澤井信一郎監督が亡くなられました。83歳なんで大往生ですかね。そんなに監督作を観てるわけではありませんが、『Wの悲劇』『ラブ・ストーリーを君に』は観ましたし、他に『麻雀放浪記』の共同脚本もされてたんですね。いずれもいい映画でした。堅実な作風の職人監督という感じでしたね。
 そして、ジャン・ポール・ベルモントも死去。やはり観た出演映画は『勝手にしやがれ』ぐらいですが、なぜか名前は昔から印象に残ってました。『勝手にしやがれ』は10年くらい前にリバイバル上映で観たんですが、なんでもっと早く観ておかなかったんだという良作でしたね。
 皆様、ご冥福をお祈りします。



#1833 
バラージ 2021/08/31 22:29
小説の映画化

『ドライブ・マイ・カー』
 原作は村上春樹の短編集『女のいない男たち』に収録されている同名の短編小説で、発売された時に買って読みましたが、内容はほとんど忘れております。短編小説なので映画原作としては量が足りないということで、同じ短編集に収録されている『シェエラザード』と『木野』も一部使われてるそうですが、そっちもやはり内容は忘れてます。村上春樹の短編は短編集『神の子どもたちはみな踊る』までは印象深い作品が多くてよく覚えてるんですが、それ以後の短編集『東京奇譚集』『女のいない男たち』『一人称単数』はどうも今一つ印象に残っていません。
 ある秘密を抱えた脚本家の妻(霧島れいか)を2年前に失った、舞台俳優兼演出家の男(西島秀俊)が主人公。自らが演出する多国籍多言語の演劇の上演のために、広島の演劇祭に愛車を自ら運転して訪れた男は、規則により付けられた専属ドライバーの若い女(三浦透子)や、オーディションにやってきたかつて妻から紹介されたことのある若手俳優(岡田将生)、そしてやはりオーディションにやってきて合格した世界各国の俳優たちとの関係の中で、心にふたをしていた妻を失った喪失感や自らも抱えた秘密について思いを致していく……といった感じのストーリー。
 映画は3時間近い長尺ですが、観ていて長さはほとんど感じなかったですね。序盤の妻が死ぬまでが僕はちょっといまいちノレませんでしたが、舞台が広島に移り多言語演劇の話になってからは面白かったです。役者たちも多国籍な人たちも含めて、みんな好演でした。多言語演劇は原作にはない要素のようですが、それでも全体的にちゃんと村上春樹っぽい雰囲気の映画になってましたね。もっとも映画は上映時間の長さのためもあってか、短編ではなく長編小説っぽい雰囲気でしたが。
 面白いことは面白かったんですが、傑作!とか断トツ!とかいうほどまでではなかったかな。なかなか面白かったというぐらいの映画でした。

『鳩の撃退法』
 佐藤正午の同名長編小説の映画化。原作のストーリーは、ある地方都市で起こった偽札事件と平凡な一家の失踪事件に関わることになってしまった元直木賞作家で今はしがないデリヘル嬢の送迎ドライバーの主人公が、自身が見聞した事実をベースとしながらそこに脚色や推測や想像や創作を加え、自分自身以外はすべて仮名にして“過去に実際にあった事実”ではなく“過去にあり得た事実”を小説として描いていくというもの。佐藤正午らしい複雑な構造と仕掛けに満ちた小説です。
 うーん、一言で言えば原作のダイジェストって感じかなぁ。原作がかなり長い上にちょっとミステリー仕立てだから仕方ないんですけど、大幅にカットできるところが少ないんで、どうしてもものすごいスピードで話を消化していくことになってしまいます。そのため原作の面白味でもある語り口の“貯め”や人物造形の深みや細やかな描写が無くなってしまい、ひたすら原作の大まかな話の筋を追いかけるだけの映画になってしまってるんですよね。
 また、つい最近原作を読み終えたばかりだから、どうしても原作と比べて「あー、あのエピソードはカットされたか」「ここはこう変えたのか」「あの人、出てこないんだ」とか、そういうのばっかり観ながら考えてしまいました。好きな小説(やマンガ)の映画化(やドラマ化やアニメ化)ではよくある話で、ずっと昔に読んだとか、『ドライブ・マイ・カー』みたいに読んだけど内容を忘れたとか、読んだけど面白くなかったとかなら話は別なんでしょうけど(原作が面白くなかったら映画も観ないか・笑)。逆に原作未読だったら、原作と比べてどうこうなんて関係ねえし!と思っちゃうのもまた事実ですし、また映画が面白かったんで原作も読んでみたら映画とは大幅に違ってて面白くなかったなんてこともほかの小説でありました。本末転倒な話ですが。


>録画で観た映画
『超・少年探偵団NEO Beginning』
 明智小五郎や少年探偵団の子孫と怪人二十面相の子孫が代々戦い続けてきたという設定の、4代目小林少年を主人公としたちょっと暗めの青春ジュブナイル学園ミステリー。7代目小林少年が主人公の近未来アニメ『超・少年探偵団NEO』というのがまず作られ、次いでこの実写映画が作られたとのこと。そんなに期待してなかったんですが、これは意外な拾い物。なかなか面白かったです。ちょっとSF風味というか、SFジュブナイルっぽくもあり、青春という季節の切なさにあふれた僕好みの映画でした。昔の角川3人娘の映画とか、観たことないけど昔NHKでやってた少年ドラマシリーズとか、そんな感じ。出演してる若手俳優たちもみな好演でした。

>追悼
 千葉真一さんの最初の記憶というと多分JAC(ジャック)ですかねえ。真田広之や志穂美悦子の師匠みたいな認知だったと思います。『キイハンター』はあの有名なオープニングだけなぜかおぼろげに記憶があるんですが、きちんと最初に観たのはテレビ放送された映画『里見八犬伝』だったんじゃないかな。最近は息子の新田真剣佑・真栄田郷敦が売れっ子となって、なんだかんだでずっと露出があった人ですね。
 また、『ウルトラマン』のイデ隊員こと二瓶正也さんもお亡くなりになられたということで、個人的にはこちらの方が思い出深い。これまた子供のときによく拝見してました。皆さん、ご冥福をお祈りします。



#1832 
徹夜城(支配人) 2021/08/21 23:16
千葉真一さんといえば

 こっちに久々に書き込むときって、かなりの確率で訃報ネタなんですよねぇ。
 先日、千葉真一さんが亡くなりました。。まぁ年齢的には…というお歳でしたがつい最近でも元気いっぱいの印象があったので、新型コロナにかかって…というあっけない最期がらしくないという感想も持ってしまいました。

 訃報記事では最初に名が売れた「キイハンター」と、ハリウッド作品である「キル・ビル」の二つを挙げるものが圧倒的に多かったのですが、何しろ出演数が膨大で、代表作が絞りにくい。
 印象の強さでは「柳生一族の陰謀」「魔界転生」での柳生十兵衛とか、「影の軍団」の服部半蔵(キル・ビルでも同役?)が当たり役ということになるんでしょうが、「戦国自衛隊」なんかも挙げたくなる。
 個性派では「仁義なき戦い・広島死闘編」での大友勝利役は強烈すぎて、シリーズでも二位か三位を争う人気キャラ。なんだけど当時の「千葉真一」のイメージを遠く離れた役だったために劇場で見ていた人も「千葉真一、どこに出てたんだ?」と言っていたという話ですね(千葉さん自身が劇場にもぐりこんで耳にしたとか)。

 僕が個人的に好きな映画で挙げると、「新幹線大爆破」。爆弾を仕掛けられた新幹線の運転士という役なので、劇中ほとんど運転席から動かない。指令室の宇津井健との緊迫のやりとりが見どころですが、これ関根勤が「ひとり新幹線大爆破」というモノマネ芸にしているそうで(ぜひ見たいんだけど未見)。
 しかしそこは千葉ちゃんだからなのか、最後の最後、運転席を離れて爆弾外しに直接かけつけちゃってましたっけ。


 「新幹線大爆破」では新幹線が並走するという映画ならではのシーンがありますが、並走新幹線を運転するのが弟の千葉治郎さんで、兄弟で新幹線を運転して並走するというニヤニヤしちゃうシーン。
 この千葉治郎さんは「仮面ライダー」に出てますが、その映画版を以前ネットで見たら千葉真一さんがカメオ的に出演していて、「千葉治郎さんのお兄さん、千葉真一さんである」と子供向けとはいええらく説明的なナレーションが流れてビックリしました(笑)。
 当時大人気の「仮面ライダー」には、萬屋錦之介まで息子さんのために出演希望したという逸話がありますが、千葉真一さんの顔見世出演もそれに近かったのかも。



#1831 
バラージ 2021/07/31 00:53
10年代の中華圏女優たち

 お久しぶりの中華圏の女優の話、最終回の10年代編。つい最近の話のようで、10年前のことでもあると考えると結構昔のことでもあるような。

ワン・ルオダン
 2009年騰訊娯楽版四小花旦(四大若手女優)の1人に選ばれた女優なんだそうですが、出世作はテレビドラマで、日本ではまだ中国ドラマブームが訪れてなかったので10年代中盤まで公開作がなかったようです。なので僕も全然知らない……と思ったら、2016年の主演映画『腐女子探偵 桂香(グイ)』を観てました。そういや主演女優はまあまあ可愛かったような記憶はあるんですが、映画自体はつまんなかったし、どうも印象が薄いんだよなあ。名前も全然覚えてなかったし。

ヤン・ミー
 2009年版四小花旦と2013年南都娯楽版四小花旦に選ばれた女優。子役出身らしく、出世作はやはりテレビドラマで、この辺からそういう女優が多くなっていくようです。特に2011年のドラマ『宮 パレス 時をかける宮女』が大ヒットし、その後もドラマに出まくってる売れっ子みたい。芸能事務所を経営する経営者としても活躍してるとのこと。しかし僕が出演作で観たのは映画『妖魔伝 レザレクション』『修羅 黒衣の反逆』『リセット 決死のカウントダウン』といったあたりだけで、どれを観ても今一つピンと来ないんですよね。『妖魔伝』なんて出てたのを忘れてました。映画のほうではまだ代表作はないって感じですかね。

チョウ・ドンユイ
 チャン・イーモウ監督の『サンザシの樹の下で』でデビューした女優。決して超絶美人とは言えない親しみやすい顔立ちながら、確かな演技力が絶賛され、“13億人の妹”と呼ばれる人気女優になりました。2010年網易娯楽版・2013年騰訊娯楽版・2016年南都娯楽版の90後(1990年以後生まれ)四小花旦と、2016年の央視CCTV版四小花旦に選ばれてます。イーモウの女優発掘力恐るべし。他に観た『シチリアの恋』『恋するシェフの最強レシピ』はどっちもいまいちの出来でしたが、評価の高い『少年の君』が今年7月に公開ということで、遅れてではありますが地元にも来るようなので楽しみにしております。さらに同じ監督のそれ以前の映画で、やはり高評価ながらなぜか日本では映画祭上映のみで劇場公開もDVD化も配信もされていなかった『ソウルメイト 七月(チーユエ)と安生(アンシェン)』も6月に公開。地元まで来ないかなあ。そして彼女もまたついにテレビドラマに進出したようです。

リウ・シーシー
 2013年版四小花旦に選ばれた女優の1人。出世作はやはりテレビドラマで、2011年の『宮廷女官 若曦』が中国で爆発的ヒットとなり、香港・台湾・韓国を席巻して日本にも上陸。日本における中国ドラマブームの火付け役にもなりました。しかし僕が観たのはやはり映画のほうで、三浦春馬と共演した行定勲監督の日中合作映画『真夜中の五分前』でのヒロイン役が初見。『ブレイド・マスター』でもヒロイン役で、ともに好演でしたが、キャリアとしてはテレビドラマが中心で、映画の出演作はそれほど多くないようです。

ニー・ニー
 チャン・イーモウ監督の『金陵十三釵(原題)』でデビューした女優。やはり演技力を絶賛され、2013年版四小花旦の1人にも選ばれました。しかし同作は南京大虐殺を舞台とした映画だったためかチャン・イーモウ映画としては珍しく日本未公開。そのためもあってか日本では出演作がなかなか公開されず、僕も去年日本公開され今年DVD化された『雪暴 白頭山の死闘』で初めて観ました。いい女優だなと思って、過去作をさかのぼり『ウォリアー・ゲート 時空を超えた騎士』『悟空伝』も観たんですが、それらはいまいちの映画。本国でも年下の先輩チョウ・ドンユイに比べて作品選びが良くないと言われていたようです。しかし初出演したテレビドラマ『鳳凰の飛翔』(未見)で再ブレイク。『雪暴』はその後の映画で、現在は映画とドラマに並行して出ているみたいです。

アンジェラベイビー
 この人も2013年版四小花旦の1人。上海生まれの香港育ちで、父方の祖父がドイツ人というクォーターらしい。モデルとしてデビューし、女優としても香港映画を中心に活動してたとのことですが、僕はあんまり観たことないなあ、と思ったら『ホット・サマー・デイズ』『ハッピーイヤーズ・イブ』『桃(タオ)さんのしあわせ』『ライズ・オブ・シードラゴン 謎の鉄の爪』『ロスト・レジェンド 失われた棺の謎』と実は出演作を結構観てたのでした。でも全然印象に残ってないということは、よほどピンと来なかったんでしょうね。実際、演技力はあまり評価されてなかったみたい。しかしやはり初出演した中国のテレビドラマ『雲中歌 愛を奏でる』(未見)での演技が評価され、以後はドラマと映画に並行して出演してるとのこと。

ジン・ティエン
 ジャッキーの『ポリス・ストーリー レジェンド』に出てた女優。10年代に入ってからのジャッキー映画は、もうおじいちゃんだからヒロインが設定しにくいということもあるのかもしれませんが、いいなと思う女優があまりいませんでした。でもこの子は久々に可愛かったですねえ。さらにチャン・イーモウ監督のハリウッド進出作『グレートウォール』のヒロインの女将軍役にも抜擢。凛とした美貌に一段と磨きがかかってましたね。その後も『キングコング 髑髏島の巨神』『パシフィック・リム アップライジング』とハリウッド映画に立て続けに出演しましたが、それらは僕は未見。主演したテレビドラマ『麗王別姫 花散る永遠の恋』と、若い頃に脇役で出てた映画『7日間の恋人』は観ました。

レジーナ・ワン
 『戦神 ゴッド・オブ・ウォー』で観て、美人だし演技も上手いし、いい女優だなぁと思い、次いで『軍中楽園』で完全にノックアウトされちゃった演技派美人女優。00年代前半以来久々の、ファンになった女優です。比較的遅咲きの人で、売れたのは30歳を過ぎてから。今回紹介した女優の中では実は1番の歳上です。以後、テレビドラマ『麗王別姫 花散る永遠の恋』『三国志 SECRET of THREE KINGDOMS』『海上牧雲記 3つの予言と王朝の謎』と出演作を観倒して、映画初出演作でチョイ役の『バタフライ・ラヴァーズ』や、YouTubeにあった日本未公開(字幕なし)の主演映画『柳如是(原題)』まで観てしまいました。主役から脇役まで、善人から悪人まで、何でもござれのカメレオン女優で、僕はそういう女優が好きなんだろうなあ。グイ・ルンメイとフー・ゴーの脇を演じた『鵞鳥湖の夜』も良かった。

エリカ・シアホウ
 ジャッキーの『ポリス・ストーリーREBORN』に出てたショートカット女優。これまた美人でアクションもできて、いい女優だなと思ったんですが、他の出演作がほとんど日本で公開されていません。テレビドラマ『孔子』(未見)に脇役で出てるくらい。『REBORN』では脚本家の1人としても名を連ねていて、他の映画でも脚本を兼ねることがあるようです。



#1830 
バラージ 2021/07/22 15:06
怪獣大戦闘

 『ゴジラvsコング』を観ました。
 ゴジラ、キングコングにメカゴジラまで出てきて、怪獣バトルは前作に引き続き大迫力でめちゃくちゃ面白かったんですが、その一方で人間ドラマのほうも前作に引き続き、どうにもこうにも陳腐。というか前作の人たちがほとんど出てこないし、小栗旬演じる芹沢は渡辺謙が演じていた芹沢博士の息子という設定だったはずなのに、劇中ではそれに全く触れられないため、ただの名字が同じ人みたいになっちゃってます。日本人とも言及されてないため、日本人なんだか日系人なんだかも設定を知らないとよくわからない。どうも編集で出番が大幅にカットされたらしく、前作にも出てたチャン・ツィイーなどは撮影シーンが編集で全カットされてしまったそうです。また、ゴジラとキングコングが半分ずつくらいの出番だろうと思いきや、ほとんどコングが話の中心で、7:3か8:2ぐらいでコングの出番が多い。ゴジラが出てくるのは、ほぼコングと戦ってるとこだけで、そこもちょっと不満。それでも怪獣バトルがものすごいのでアクション映画としては存分に楽しめることは間違いありませんが、ストーリー部分には若干の消化不良感があったのもまた事実でした。
 モンスターバース・シリーズはこれで完結のはずが、世界的大ヒットに製作会社も続編に色気を見せ始めたようです。各作品の監督たちもまだまだ作りたいと意欲的なので、また作られるんではないでしょうか。次はまたもキングコングが主人公との噂。


>DVDなどで観た特撮映画
『ULTRAMAN』
 2004年の日本映画。地元ではミニシアターでひっそり公開されてた記憶があります。『シン・ウルトラマン』が公開される前に観とくかってことでレンタルDVDで観てみたんですが、うーん、これはちょっと……。とにかく全編すべてがチープ。特に最も大事なはずの人間芝居がダメすぎる。脚本の台詞も演出の台詞回しも絶妙にダサく、80年代のトレンディドラマ、いや60年代の日活映画みたいなきわめて不自然な台詞と演出のため、役者たちの演技も大根演技に見えてしまいます。ストーリー展開もツッコミどころ満載で、怪獣(というか人間に寄生したバイオ生命体?)よりも自衛隊特殊機関(科特隊的存在)のほうが悪者っぽいし、ウルトラマンが地球に何しに来たのかもよくわからない。そもそもウルトラマンになった後も主人公は人間の意識を持ったままなので、ウルトラマンが何を考えてるのか終盤まで全くわかりません。CGを多用した特撮もすげえチープで安っぽい。バットマンやスパイダーマンに影響されて大人向けのウルトラマンを作ろうとしたらしいんですが、主人公が妻子持ちで子供がなんかうざいし、大人向けにもなりきれずもちろん子供向けでもない中途半端な映画。主人公の奥さん役で久しぶりに裕木奈江が見れたのだけが収穫でした。裕木さんだけが監督のダメ演出に引っ張られず、まともな芝居をしております。

>追悼リチャード・ドナー
 『リーサル・ウェポン』の新作もこれで立ち消えかあ。まあ、91歳なら大往生でしょう。ご冥福をお祈りします。



#1829 
バラージ 2021/07/13 19:40
中国版フィルムノワール

 待望の中国映画『鵞鳥湖の夜』をついにようやくやっと観ました。
 去年5月に日本公開予定がコロナで9月に延期となり、公開されたと思えば地元には来ない。わりと全国的に公開されたってえのに……。地元を含む数県だけ来ないってのにはもう慣れましたけどね。またかよっていう。結局DVD観賞になりました。やれやれ。
 2012年の中国南部の寂れた地方都市が舞台。バイク窃盗団の幹部である主人公は、組織内の別グループとの対立から起こった抗争の中で、誤って警官を射殺してしまう。警察からも対立グループからも追われる身となった男は、再開発から取り残された鵞鳥湖の近辺に潜伏。自分にかけられた警察からの報奨金を妻と幼い子供に残すため、自分の居場所を密告するように妻を呼び出そうとする。しかし妻の代わりに彼の前に現れたのは、鵞鳥湖で水浴嬢という娼婦をしている見知らぬ女だった……。
 いやぁ、面白かったです。ディアオ・イーナン監督の前作『薄氷の殺人』はいまいちだったんで、ちょっと不安だったんですが、この映画は良かった。夜のシーンが多いダークな雰囲気の中国版フィルムノワール・サスペンスで、映像がすごくいい。また効果音がちょっと変わってるというか非常に印象的。そしてそれを聞かせるDVDの音響がものすごく良かったですねえ。音楽の趣味もやっぱりちょっと変わってて印象的でした。
 また、主演のフー・ゴーも、水浴嬢役のグイ・ルンメイも、妻役のレジーナ・ワンも、みんな美男美女なのに、そういう輝きを一切消して小汚い底辺の人間にちゃんと見せているところがすごい。さすがは演技派。満足いたしました。


>Blu-ray化とWOWOW放送
 個人的にも思い出深い名作、相米慎二監督、牧瀬里穂主演(デビュー作)の映画『東京上空いらっしゃいませ』がついにBlu-ray化されます! DVD化はされたものの長らく絶版で、中古品もめったに出回らずとんでもないプレミアがついてたんですが、数ヶ月前から突如中古DVDが出回り始めたんですよね。なんで?と不思議だったんですが、あまりの高値に買い控えて正解でした。8月発売とのこと。買わねば。
 そしてDVD化されてない市川準監督『ざわざわ下北沢』がWOWOWで今月放送されました。DVD化の前触れなんだろうか? 中古ビデオを買って観ましたが、放送してくれるのはありがたい。もちろん録画してBlu-rayに落としました。



#1828 
バラージ 2021/06/24 20:26
30年後の感慨無量

 去年の夏からさんざん延期を繰り返させられた『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』。ついにようやく観ることができました。三部作の予定でその第1作目とのことです。
 いや〜、面白かった! 冒頭のタイトルロールまで10分以上続くハイジャックのシークエンスを観てるだけで、高校3年の時に観た『逆襲のシャア』、そして大学時代に読んだ原作小説からここまで来たのかと涙が出そうになりました。ハサウェイも大人になったなあと変な感慨に耽りつつ、原作小説のことも思い浮かべつつ。
 内容は完全に大人向けのアニメです。そもそも原作がそうだから当然なんですが、物語の半分くらいまではモビルスーツ戦が全くありません。人間ドラマのアニメになっていて、そこがいい。キャラクターたちの芝居もいいし、何よりヒロインである「幸運の女神=ファム・ファタール」ギギ・アンダルシアの造形と声優の演技が素晴らしかったですね。テロリズム、移民問題、格差社会、軍による抑圧、まさに「今」にふさわしい話で、富野由悠季の先見性と、それを具現化したスタッフと声優たちの勝利でしょう。空襲下のハサウェイとギギの姿を通して、戦闘に巻き込まれて逃げ惑う民間人の恐怖が詳細に描き込まれていたのも印象的。それまでのガンダムにもあった描写ですが、格段に細やかな描き込まれ方でした。僕が長らく劇場アニメを観なくなってたってこともありますが、アニメの表現技術の進歩もここまで来たのかと思いましたね。あえて難点を言えば、クライマックスも含めてモビルスーツ戦のシーンが夜ばかりなので、モビルスーツの姿がちょっと見づらかったかな。
 とにかく今年ここまでに映画館で観た映画の中では断トツの出来(録画&DVDも含めると中国映画『象は静かに座っている』が1位。DVDも買ってしまいました)。1900円とちょっとお高めの値段でしたが、間違いなくそれだけの価値がある映画です。第2部以降も楽しみ。


>その他に観た映画
『賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット』
 これまた公開延期を繰り返させられて、ようやく公開された映画。人気マンガのドラマ化の劇場版第2作です。これも相変わらずなかなか面白かった。やってることはいつもとだいたい同じだから改めて書くことはそんなにないんですが、とにかく出演してる若手俳優みんながみんな怪演合戦をしてる作品です。ただ前作もそうでしたが、レギュラーがみんな売れっ子になってるんでスケジュールの関係かレギュラー陣の出番量にばらつきあり。あとソーシャル・ディスタンスのためか別撮りっぽいところも多かったですね。最後はさらなる続編への引きで終わってましたが、さらに続編が作られるのかな?

>テレビドラマ
 今季観てたドラマ『レンアイ漫画家』が終了。面白かったです。おじさんだけど毎週キュンキュンしておりました(笑)。鈴木亮平も吉岡里帆も演技上手いなあ。



#1827 
バラージ 2021/05/31 21:52
処女作にして遺作、そして傑作

 『象は静かに座っている』という中国映画を観ました。地元では確か去年コロナが流行り始めた頃に公開されたように記憶してますが(東京では一昨年11月公開)、234分という長さに躊躇してどうしようか迷ってるうちに観逃してしまった映画です。今年2月にWOWOWで放送されたのを録画したまま、今頃になってようやく観たんですよね。
 中国北部のある寂れた地方都市。両親とは不仲で、友人をかばったはずみに不良を階段から突き落としてしまった高校生の少年。その女友達で、荒れ放題の家でシングルマザーの母との関係は冷えきり、教師と関係を持つことで自らの居場所を見いだそうとする少女。少年の知り合いで、娘夫婦に老人ホームに入るよう言われ、散歩に出た先では愛犬を他の犬に噛み殺されてしまった老人。そして親友の妻と寝て、それを知った親友が目の前で自殺してしまった、不良の兄であるチンピラのボス。このろくでもないクソみたいな世界の中で、出口のない閉塞感の中の絶望の果てにいる4人。彼らははるか2300q離れた満州里にいるという、1日中ただ座っている象の話を知り、やがて各々そこに向かおうと動き出す……。
 いや、すごい。ものすごい映画でした。長回しの映像、自然光での撮影(なので室内シーンはやたら暗い)、たっぷり取られた台詞の間。あらゆる意味でどっしりとした重さのある映画でした。これは映画館で観るべき映画だったな。昔観た『旅芸人の記録』や『[牛古]嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』を思わせました。非常に暗い映画ですが、その暗さが素晴らしい。そして主演の4人(ポン・ユーチャン、ワン・ユーウェン、チャン・ユー、リー・ツォンシー)も本当に素晴らしかった。監督のフー・ボーは初の長編映画である本作を完成させた後に、29歳の若さで自ら命を絶ったとのことで、これが唯一の長編映画となってしまいましたが、本作はその後ベルリン映画祭で国際批評家連盟賞と最優秀新人監督賞を獲り、台湾金馬奨でも最優秀作品賞を獲っています。
 果てしない暗闇の中で、本当にあるかどうかも定かでないわずかな光に微かな希望を託し、腐った世界から脱け出そうとする孤独な人々の1日間を描いた、これは紛れもない傑作です。


>映画館で観た映画
『プロジェクトV』
 ジャッキー・チェンの最新作。多くの娯楽大作が公開延期を選択する中で、休業要請の出ている地域でのみ公開を延期し、それ以外の地域では通常通り公開されました。実はあんまり期待してなかったんですよね。予告編をネットで観たらCGがどうも。スタンリー・トン監督のジャッキー映画は『カンフー・ヨガ』もいまいちだったし、それと似たようなテイストを感じたのです。
 実際に観てみたら、予想は半分当たってました。全体的なノリがまるで90年代の香港映画そのままで、そのコテコテの香港ノリがどうにもこうにも古くさい。CGの使い方もやっぱりなあ。アフリカのライオンやハイエナがCGで出てくるんですが、猛獣があんなに人に懐かねえだろ、と。あと、若手の命がけスタントにもCG使ってて(これが予告編にあったやつ)、CG使うくらいなら命がけスタントがそもそもいらんだろうとも思いました。広東語吹替だったのも個人的には残念。ジャッキー映画も最近はすっかり北京語が標準になりましたが、ファンの一部には“やっぱりジャッキーは広東語のほうがいい”という声があるらしく、それで今回は広東語吹替バージョンの上映になったようです。でも僕は北京語とか広東語とかではなく、吹替がどうも……。口の動きと合わず不自然だし、ヒロイン女優のシュ・ルオハンにアニメ声みたいな吹替をあててるのもマイナス。
 と、ここまでは貶してきましたが、アクションはとても良かった。銃撃戦に格闘アクションと息をつかせぬアクションの連続で、一部にびっくりどっきり兵器もありつつ、それも笑って面白がれました。今回のジャッキーは民間警備会社の社長で、アクションはちょこちょことはやるものの、基本的には部下の若い者たちに任せた『太陽にほえろ』の石原裕次郎か『水戸黄門』の黄門さま状態なんですが、その若手たちのアクションがなかなか良い。テレビドラマでも人気のヤン・ヤンら男優陣も良かったけど、『カンフー・ヨガ』ではヒロインだった女優ムチミヤのアクションもかなりキレがありました。全体的には意外とまあまあ面白かったです。

>またまた!懐かしの女優たち
『ビッグタウン』
 マット・ディロン主演、ダイアン・レイン共演の1987年(日本公開は翌88年)の米国映画。1950年代、田舎町の若い凄腕ギャンブラーが、一旗あげようと大都会シカゴに出てくる。上がりの上前を跳ねられるギャンブラー組合での仕事に飽き足らず、彼はストリップ劇場の密室で開かれる賭場で勝負し大勝ち。だが賭場を仕切る男の妻の魅惑的なストリッパーに惹かれ密通してしまう。それは彼女の巧妙で危険な罠だった……。いかにも80年代の映画って感じの雰囲気は懐かしかったんですが、映画自体の出来はまあまあ。80年代の映画とはいえ、50年代を舞台とした“時代劇”ですからね。懐かしさも半分くらいといったところ。出てくるギャンブルはサイコロ2個を振って出た目で勝負するもののようですが、くわしいルールはよくわかりません。が、映画のストーリーを楽しむ分には特に問題なし。ダイアン・レインがヒロインと見せかけて、もう1人真面目タイプのヒロインがいて、主人公が2人の女の間をふらふらするんですが、登場人物たちの立ち位置が今一つはっきりせず、中途半端感があって歯切れが悪い。敵役としてまだ売れる前のトミー・リー・ジョーンズが出てきますが、これは観て初めて知りました。

『ラ・ブーム』
 ソフィー・マルソーのデビュー作である1980年のフランス映画(日本公開は82年)。NHK-BSで放送されてたんで録画しました。面白かったです。まさに80年代の幕開けって感じの映画ですね。14歳の女の子の恋を描いた、内容的にはどうということのないティーンズムービーなんだけど、それだけに今でも全く古びてないのがすごい。主人公の両親(母親役は『禁じられた遊び』で子役だったブリジット・フォッセー)の浮気騒動も並行して描かれて、そっちも結構面白いんですが、やっぱりこの映画は13歳のソフィー・マルソーに尽きます。13歳にしては回りの子たちより背が高く顔立ちは大人びていて、もう“ソフィー・マルソー”の顔なんだけど、まだあどけない雰囲気と、それとは対照的にデビュー作とは思えぬ達者な演技ぶりは、明らかにその後の大物ぶりの予感を感じさせます。そりゃ世界的なアイドルになるよなと納得させられました。その後、現在に至るまでフランスを代表する女優として活躍してる今から観ると、当時リアルタイムで観た人はまさに「スター誕生!」の瞬間を目撃したんだろうなと思うとなんとも感慨深いし、なんとなくそれを追体験できちゃったような気もしちゃいます。この数年後には出てる映画のほとんどでばんばんヌードになる女優になってるとは当時は思いもよらなかっただろうけど(笑)。あと、主人公の(当時で言う)翔んでる(古い・笑)おばあちゃんの存在も良かった。それから劇中でたびたび流れる主題歌というかテーマソングが聞いたことのある有名な曲で、この映画の歌だったんだ!と思いましたね。CMかなんかでも流れてたのかな?



#1826 
バラージ 2021/05/22 15:42
00年代の中華圏女優たち 後編

 中華圏の女優の話、00年代後半編。世代的には前半の人たちとほとんど変わらないけど、前半の人たちが強すぎたため、後半の人たちはちょっと地味(笑)。ここからはほとんど中国女優ばかりになっていきます。
 前回紹介した四小花旦(四大若手女優)も00年代末にはすっかり大物となり、「もう“小”じゃねえよな。もう“四大花旦”だ」と言われはじめ、「じゃあ次の四小花旦決めようぜ」ということになったのか、2009年には騰訊娯楽というメディアが新しい四小花旦を選び出しました。元祖が全員70年代生まれなので、今度は全員80年代生まれが選ばれており、ホアン・シェンイー、ワン・ルオダン、ヤン・ミー、リウ・イーフェイの4人(今回はそのうち2人を紹介)。以後ことあるごとにいろんなメディアが人気投票などさまざまな方法で新たな四小花旦を選んでいるようですが、やはりいずれも元祖ほどには浸透していないようです。

カオ・ユアンユアン(カオ・ユエンユエン)
 ジャッキーの『プロジェクトBB』に出てた女優。ジャッキー映画もこのあたりから中国女優ばかりになってきます(00年代前半にジャッキー映画女優があまりいないのはハリウッドに行っていたため)。『〜BB』はあまり面白くなかったけど、その分この人の美人ぶりが際立ってましたね。それ以前に観た『スパイシー・ラブスープ』にも出てたらしいけど記憶にありません。他には韓中合作『きみに微笑む雨』、『北京の自転車』『海洋天堂』『南京!南京!』で観ましたが、あまりに正統派美人すぎて女優としてのインパクトはちょっと薄いような気も。テレビドラマ『大秦帝国』にも出演しています。

チャン・チンチュー(チャン・ジンチュー)
 ジャッキーのハリウッド映画『ラッシュアワー3』に出てた女優。その後しばらく見かけませんでしたが、『ジョン・ラーベ 南京のシンドラー』のヒロイン役や『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』のチョイ役で観た後、一昨年だったかに『グレート・アドベンチャー』で久々に見たら、20代だった子がすっかり大人のアラフォー女性になってました。他にも『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』『プロジェクト・グーテンベルク 贋札王』と最近やたらよく見かけるんですが、なぜか作品によってはかなりの厚化粧なのが気になるんだよな。テレビドラマ『始皇帝烈伝 ファーストエンペラー』にも出演しています。

リウ・イーフェイ
 ジャッキーとジェット・リーが共演したハリウッド映画『ドラゴン・キングダム』にヒロイン役で出てた女優で、今回紹介する中では最年少。ジャッキーとジェットは主人公の少年の導師的役どころなので、主人公の少年に対するヒロイン役です。つい最近『ムーラン』(未見)の主演でいろいろ話題になりましたが、9歳から14歳まで(1996年〜2001年)米国に住んでたらしく、国籍は今でも米国のようです。帰国して2003年にデビューした後、2006年から2009年まで米国留学している時に『ドラゴン〜』に出演したらしい。一躍売れっ子となり、2009年版の四小花旦にも選ばれています。他には『項羽と劉邦 White Vengeance』『曹操暗殺 三国志外伝』『第3の愛』『デスティニー・イン・ザ・ウォー』に出てるのを観ました。

リー・ビンビン
 同じく『ドラゴン・キングダム』に悪役で出てた女優ですが、それ以前にチャン・ツィイー主演の『パープル・バタフライ』で観ています。さらにそれ以前の『ただいま』(2000年、未見)での演技が評価されたのが出世作らしい。ジャッキー映画は『1911』にも奥さん役で出てましたね。『王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件』にも出てたようですが、あまり記憶にありません。個人的には顔立ちがあまり好みじゃないんだよなあ。近年はハリウッドに進出し、『バイオハザードX リトリビューション』『トランスフォーマー ロストエイジ』『MEG ザ・モンスター』などに出てるようですが、僕はいずれも未見。

ファン・ビンビン
 ジャッキーの『新宿インシデント』に出てた女優。この人も厚化粧系なんだよなあ。日本の烏龍茶のCMに出てた時は薄化粧で、それでも十分美人だったのに。ちょっとバタ臭い顔で個人的にはそんなに好みではないんですけどね。出世作はドラマ『還珠姫 プリンセスのつくりかた』(1998年、未見)。『墨攻』(未見)で注目され、以後『新宿〜』『ソフィーの復讐』『孫文の義士団』『新少林寺 SHAOLIN』『運命の子』、韓国映画『マイウェイ 12,000キロの真実』、再びジャッキー映画『スキップ・トレース』と一時出まくっていて、ドラマも『楊貴妃』『武則天 The Empress』(いずれも未見)などいっぱい出てる売れっ子でした。その一方でお騒がせ女優の面もあり、整形の噂を打ち消すためにバラエティ番組で骨格検査を受けたり、プロデューサーを兼ねた『楊貴妃 Lady Of The Dynasty』では当初の監督クァク・ジェヨン(韓国映画『猟奇的な彼女』の人)と対立して、一時製作が暗礁に乗り上げたりと、いろいろあったあげくの脱税事件でしたねえ。騒動女優だけに味方も少ないだろうと当局に狙い打ちされた感もありますが。現在は復帰してハリウッド進出の噂もあるようです。
 脱税事件といえば80年代のトップ女優だったリウ・シャオチン(『西太后』『芙蓉鎮』)も02年に脱税で逮捕されてますが、その後復帰して大御所として活動しています。

ホアン・シェンイー
 香港映画『カンフーハッスル』(未見)でデビューした中国女優。その後、所属事務所と揉めたり、いろいろあったものの、2009年版四小花旦の1人にも選ばれている……らしいんですが、僕は出演作を全然観てないんで、それ以上はなんとも言い様がありません。『白蛇伝説 ホワイト・スネーク』『アイスマン』など香港の娯楽映画ばかりに出てるようですが、期待されたほど売れてるようでもなく、僕も歴代四小花旦を調べて初めて知りました。

スン・リー
 『SPIRIT』『三国志英傑伝 関羽』『画皮 あやかしの恋』などに出演してた女優。なかなか可愛いとは思ったものの、それ以上でも以下でもないという感じでした。出世作はやはりそれ以前に出演してたテレビドラマで、10年代に入ってからのドラマ『宮廷の諍い女』『ミーユエ 王朝を照らす月』『月に咲く花の如く』(いずれも未見)が大ヒットしてトップ女優に。映画のほうでもチャン・イーモウの『SHADOW 影武者』で夫のダン・チャオともども主演して、ようやく代表作ができたようです。

リン・チーリン
 『レッドクリフ』二部作 に出てた台湾女優。本業はモデルのほうで、女優としては『レッドクリフ』がデビュー作だそうです。日本でも人気となり、ドラマ『月の恋人 Moon Lovers』(未見)というのに出てたらしい。僕は他には友情出演の『恋するシェフの最強レシピ』ぐらいしか観てないんですが、美貌はともかく演技のほうはあんまり……という印象。

タン・ウェイ
 『ラスト、コーション』で大胆なヌードシーンを演じて一躍話題の人となった女優。しかしその性描写と演じた役が漢奸を美化していると見なされたらしく、当局からにらまれて干されたため、香港に活動拠点を移します。監督のアン・リーはハリウッドを拠点とする台湾人、主演のトニー・レオンは香港人だったので、中国人である彼女だけが狙い打ちされたんだと思われます。その後、僕が観たのは『捜査官X』だけでしたが、しばらくすると中国映画に回帰し、去年映画館休業前に観た『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』などに出演しています。『大明皇妃 Empress of the Ming』で10年以上ぶりにテレビドラマにも主演しました。



#1825 
バラージ 2021/05/12 21:47
最近DVDや録画で観た映画

『ワン・デイ 悲しみが消えるまで』
 韓国のヒューマンドラマ映画。去年DVDで観た『サニー 永遠の仲間たち』でいじめっ子役を演じてて、いいなあと思った女優のチョン・ウヒがヒロイン役で出てたので、それ目当てで観た映画です。妻が病気で亡くなったことを受け入れられず、全てに無気力になっている保険会社の社員が主人公。現場復帰した彼は、代理人が示談を拒否している、車にはねられ植物状態になった視覚障害者の若い女性の担当を後輩から引き継ぐ。病院に赴き病室を訪ねるが、成果などあるはずもない。主人公がその病院で偶然何度か見かけた若い女性に声をかけると、女性は自分が見えるのかと驚いた様子。実はその女性こそ昏睡状態の女性の肉体から遊離している生霊だった……。いやぁ〜、めっちゃ良かった。生霊が出てくると聞くと、すっとんきょうな娯楽映画かと思うかもしれませんが、お話自体は実はかなり地味なヒューマンドラマ。静かに、ある意味淡々と話が進んでいきます。その雰囲気がすごくいい。夜のバーとか夜明けの海辺の映像も僕好みで心をわしづかみにされましたし、静かに流れる音楽の趣味もまたいい。そして主演のキム・ナムギルの演技が素晴らしい。妻を亡くした痛みから立ち直れない空虚感と、ヒロインとの出会いから彼女の人生に触れることによって主人公の中の何かが変わっていく姿を、繊細に丁寧に演じていました。そしてそしてチョン・ウヒももちろん良かった。生霊になることによって初めて目が見えるようになった視覚障害者の女の子を可愛らしく演じるとともに、幼い頃に親に捨てられ天涯孤独な身の上の少し孤独な感じをも絶妙なさじ加減で演じています。さすが若き演技派。彼女の演じるヒロインがとにかくめちゃくちゃ可愛く見える。というかチョン・ウヒ自身がもちろん可愛いんですが、彼女の演技力がそれを倍加させている。ストーリー展開、映像、音楽、俳優陣(主演2人以外も)、全てがとても良い、小品の佳作でした。ただ、ラストだけは賛否が分かれそう。そういう終わらせ方なのか、と思うと同時に、じゃあ他にどうすれば?という気もする、なんとも心に残るラストでした。

『第3の愛』
 韓国のイ・ジェハン監督が中国女優のリウ・イーフェイと韓国男優のソン・スンホンを主演にして中国の恋愛小説を映画化した中国映画。離婚したばかりの美人弁護士が大企業の御曹司と恋に落ちるという非常にストレートなラブストーリーで、観る前は中国人と韓国人の恋愛かと思ってたんですが、ソン・スンホンも中国人役を演じてました。しかしネイティブな中国語はやはりしゃべれなかったのか全編吹替ですが。W主演ではあるけれど、やはりどちらかといえばリウ・イーフェイのほうが主人公で、とにかく彼女が魅力的に撮られています。というかなんか彼女の撮り方がちょっとエッチと言いますか、スレンダーながらスタイル抜群のリウ・イーフェイにボディコンシャスなビジネススーツを着せて、やたらとタイトスカートのヒップショットがあったり、スーツの上着を脱がせてみたり、シャツの第1ボタンを外してみたりと、そこはかとなくエッチな男目線で撮られている(笑)。2人が恋に落ちる展開が早くて急だったり、妙に劇的だったり、恋の邪魔者が現れたりとなんとなく韓流っぽいところもありますが、丁寧な作りで俳優陣も魅力的に撮られており、なかなか面白かったです。

『雪暴 白頭山の死闘』
 中国の雪深い田舎町を舞台としたクライムサスペンス映画。北朝鮮との国境に近い白頭山の麓の雪深い町で金塊強奪事件が発生。犯人らしきグループを見つけた警官2人が職務質問すると犯人たちが発砲し、主人公の相棒が殺され犯人たちは逃走。主人公は辛くも一命をとりとめる。それから1年が経ち、再び冬。隠した金塊の回収に現れた犯人たちと、執念で彼らを追う警官の対決は、警官の恋人の女医も巻き込んで壮絶な闘いとなる……。面白かったです。ハードでヘビーでシリアスでリアルな作風が良かったし、広大な雪原でのロケもすごい。アート映画と娯楽映画の中間ぐらいの作風で、中国映画のレベルもここまできたかという感じですね。監督はこれがデビュー作とのこと。主演は台湾のチャン・チェンで、犯人のボス役のリャオ・ファンともども好演。そしてヒロイン女優のニー・ニーがこれまたすげえいい。正統派美女とはちょっと違うかもしれませんがめっちゃ美人で演技も上手い。チャン・イーモウ監督の『金陵十三釵』(2012年)でデビューしたそうですが、同作は南京大虐殺が題材のためかイーモウの映画では珍しく日本未公開。そのため彼女の日本での知名度もいまいち低いんですが、イーモウの女優発掘力はやはり確かなようです。

『ゾンビ』ディレクターズ・カット版
 ジョージ・A・ロメロ監督によるゾンビ映画の古典。『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(未見)に続く2作目で、原題は「Dawn of the Dead」。NHK-BSで放送してたんで、1度は観とくかなぁと録画しといたのを観ました。んー、なんかいまいち。つまんないわけじゃないんだけど、やっぱり僕はこういうホラー映画やパニック映画みたいのは合わないなあ。登場人物がアホな行動や余計なことをして勝手にピンチに陥るのが、観ててどうにもイライラしてしまいます。もっと賢く行動しろよ!と言いたくなる。へぇ〜と思ったのは、すでにゾンビが大量発生してる状態から映画が始まるところと、なぜゾンビが発生したかは劇中でも全く不明なところ。スプラッタ描写は今となってはまだおとなしめなのか、それとも僕がそういうのに耐性が強いのか、それほどには感じなかったですね。



#1824 
バラージ 2021/05/02 22:48
00年代の中華圏女優たち 前編

 中華圏の女優の話、00年代前半編。コン・リーとマギー・チャンが支配した90年代を過ぎて、スー・チーと四小花旦(チャン・ツィイー、ジョウ・シュン、ヴィッキー・チャオ、シュー・ジンレイの4人。日本では中国四大若手女優と訳された)が躍り出た時代です。スターが海外に流出した香港映画は徐々に没落していき、中国映画が商業化へと大きく舵を切った時代でもありますね。この世代の女優たちは今でもみんなまだバリバリの現役です。

スー・チー
 ジャッキーの『ゴージャス』(1999年)でヒロインというかW主人公の1人を演じて、僕はそれ一発でファンになっちゃった台湾出身の香港女優。地元台湾でタレントデビューするも全く売れずヌードモデルにまで転落。しかしヌード写真集が大ヒットして、香港映画界から誘われ三級映画(18禁映画)『ロレッタ・リー&スー・チーin SEX&禅(スー・チーのSEX&禅)』でW主演。『夢翔る人 色情男女』のポルノ女優役で香港電影金象奨の最優秀新人賞と最優秀助演女優賞を受賞してスターダムに駆け上がりました。その頃に『ビビアン・スー&スー・チーin 恋する季節』で共演した似たような境遇のビビアンとは親友だそうです。00年代は彼女の映画をたくさん観まくったなあ。香港女優なんでしょーもない映画も含めて、とにかくやたら出まくってましたが、出演映画の9割方は観ましたね。上記作品以外では日本公開順に『美少年の恋』『風雲 ストームライダーズ』『玻璃(ガラス)の城』『ホーク B計画』『異邦人たち』『わすれな草』『スイート・ムーンライト』『特攻!BAD BOYS』『スパイチーム』『トランスポーター』『クローサー』『ミレニアム・マンボ』『ブルー・エンカウンター』『マーシャル・エンジェル』『スー・チーin ミスター・パーフェクト』『スー・チーin トラブル・セブン』『ドミノ』『スー・チーin ヴィジブル・シークレット』『スー・チーin 慾女 セクシャル・リベンジ』『スウィート・シンフォニー』『the EYE(アイ)2』『ソウル攻略』『ラブ・イズ・マネー』『百年恋歌』『傷だらけの男たち』『死の森』『ソウルウェディング 花嫁はギャングスター3』『北京ロック』『戦場のマリア』『新恋愛世紀 ラブ・ジェネレーション』『ブラッド・ブラザーズ 天堂口』といった作品群。ほとんどが地元じゃ公開されないか、そもそもが日本ではビデオ・DVDスルーだったんで、ほぼほぼビデオ&DVD視聴ですが、借りまくりましたねえ。若い頃は「ちょっとオツムは足りないけれど心は純粋な女の子」というマリリン・モンロー的役柄を得意としてましたが、台湾を代表する世界的巨匠ホウ・シャオシェンのミューズにまでなり、香港・台湾を代表する世界的女優にまでなったんだからたいしたもんです。10年代に入ってからも『狙った恋の落とし方。』『ニューヨーク、アイラブユー』『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』『狙った恋の落とし方。2』『ライジング・ドラゴン』『西遊記 はじまりのはじまり』『弾丸と共に去りぬ 暗黒街の逃亡者』『黒衣の刺客』『ロスト・レジェンド 失われた棺の謎』『西遊記2 妖怪の逆襲』『グレート・アドベンチャー』と観ています。特に面白かったのは『ゴージャス』『夢翔る人 色情男女』『異邦人たち』『わすれな草』『スイート・ムーンライト』『狙った恋の落とし方。』『ニューヨーク、アイラブユー』『黒衣の刺客』といったあたりかな。

チャン・ツィイー
 コン・リーを見いだしたチャン・イーモウが『初恋のきた道』の主演に抜擢し、鮮烈なデビューを飾った女優。イーモウのスター女優発掘力が証明されたわけですが、コン・リーとのコンビ時代に思い入れが強かった僕は、今一つピンときませんでした。しかし日本では先に公開されていた出演2作目の『グリーン・デスティニー』での鼻っ柱の強い跳ねっ返り娘役をビデオで観て、あっさりやられちゃいましたね(笑)。映画館では観なかったんですが、激しく後悔したな〜。以後、ジャッキーのハリウッド映画『ラッシュアワー2』、再びイーモウの『HERO』『LOVERS』、ウォン・カーウァイの『2046』、韓国映画『MUSA 武士』、鈴木清順の日本映画『オペレッタ狸御殿』(未見)、ハリウッド映画『SAYURI』、さらに中国で『パープル・バタフライ』『ジャスミンの花開く』『女帝 エンペラー』『花の生涯 梅蘭芳』と世界を股にかけた大活躍で、21世紀のアジア女優で最も世界的に有名な人になりました。日本ではシャンプーのアジエンスのCM、「世界が嫉妬するアジアンビューティー」でも有名になりましたね。10年代に入っても『ソフィーの復讐』『最愛』『グランド・マスター』『危険な関係』『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』『The Crossing ザ・クロッシング』二部作、『クライマーズ』と観てますが、現在は初の連続テレビドラマ『上陽賦(原題)』に主演中。中国の若者はネット配信をパソコンやスマホで視聴するのが主流になっているらしく、ツィイーもインタビューで「最近の若者は私の映画を観たことがない」と嘆いていたという話が伝えられています。そのため彼女も配信に降りてきたというわけで、誰しも時代の流れには逆らえんのね。

ジョウ・シュン
 初見は1998年のチェン・カイコー『始皇帝暗殺』の冒頭で主人公に殺される盲目の少女役でした(それ以前に同監督の『花の影』(1996年)にもチラッと出てたらしいが記憶にない。出世作のテレビドラマ『雨のシンフォニー』も未見)。その時は強い印象が残ったんですが、その後しばらく忘れてました。00年代に入って『ふたりの人魚』『小さな中国のお針子』『ハリウッド★ホンコン』を観て、すごくいい女優だなぁと気に入り、過去の出演作を調べたら『始皇帝〜』があって、「あー、あの子か」と思い出したのでした。若い頃は上記3作や『ウィンター・ソング』『北京の自転車』などで演じた、男を惑わせ狂わせる小悪魔的な役どころを十八番としてましたね。『女帝 エンペラー』での一途な役はあまりハマってなかったな。10年代に入ると『酔拳 レジェンド・オブ・カンフー』『孔子の教え』『画皮 あやかしの恋』『ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝』『大魔術師Xのダブル・トリック』『妖魔伝 レザレクション』『サイレント・ウォー』など、文芸映画から娯楽映画にシフトチェンジした感じ。『クラウド・アトラス』でハリウッドにも進出しましたが、本人はあまりハリウッドへの憧れはないようです。『更年奇的な彼女』では韓国のクァク・ジェヨン、『チィファの手紙』では日本の岩井俊二と、中国に進出したアジア人監督が好んで起用する、今や大女優でもあります。00年代初めまでは出てたテレビドラマにも10年代後半から回帰し、現在BS11で放送中の『如懿伝 紫禁城に散る宿命の王妃』などで貫禄の演技を見せています。

ヴィッキー・チャオ
 日本で最初に知られたのは香港映画『少林サッカー』のヒロイン役ですが、ブスメイクをしてたためほとんど素顔はわからなかったらしい(僕は未見)。出世作は台湾のテレビドラマ『還珠姫 プリンセスのつくりかた』(1998年)で、ヴィッキーというファーストネームはその時に付けたとのこと(これも未見)。デビューは『画魂 愛、いつまでも』(1995年)の端役だったそうですがもちろん記憶になし。僕が最初に観たのは香港映画『クローサー』での主演でしたが、あまりピンときませんでした。その頃何かの雑誌に、中国の女性からは「ぶりっ子」「目がでかすぎ」などとあまり受けが良くないと載ってた記憶があるんですが、『ヘブン・アンド・アース 天地英雄』で本人の声を初めて聞いたら甲高いゴロニャン声で女から嫌われちゃうのもなんかわかるような気がしました(笑)。しかし性格的には結構さばけた人らしく、いつの間にかそんな見方もなくなったようで、『レッドクリフ』二部作にも出演。10年代に入ってからも『ムーラン』『画皮 あやかしの恋』『妖魔伝 レザレクション』などに出演するとともに、『So Young 過ぎ去りし青春に捧ぐ』(未見)では監督業に挑戦しています。

シュー・ジンレイ
 四小花旦の中で1番年上で、本国では大学生が選ぶ恋人にしたい女優1位に選ばれたり、ブログが大人気になって「ブログの女王」と呼ばれたりしてたらしいけど、日本では今一つヒット作がないこともあって、四小花旦が紹介された時に他の3人のおまけという感じで紹介されてました。出世作はやはりテレビドラマで、僕が最初に観た出演映画は『スパイシー・ラブスープ』(1999年)ですが、後から知って思い出してみればという話で、香港映画『風雲 ストームライダーズ』にも出てたらしいけれど全く記憶にありません。最初に意識して観たのは日中合作映画『最後の恋、初めての恋』のヒロイン役でしたが、やはり今一つピンとこず。以後も『傷だらけの男たち』『ウォーロード 男たちの誓い』、ジャッキー映画『新宿インシデント』などで観ましたが、男性映画の添物的役どころだったためかやはりさほど魅力的には感じられず。かなり早い段階から監督志向があったようで、2003年に自費で映画を初監督(兼脚本・主演)。以後、コンスタントに監督作を送り出してますが、日本ではほとんどが未公開か映画祭上映止まりで、『見知らぬ女からの手紙』『あの場所で君を待ってる』(いずれも未見)がDVD化されています。

セシリア・チャン
 いきなりチャウ・シンチーの『喜劇王』(2000年、未見)のヒロイン役でデビューし、『星願 あなたにもう1度』(未見)でスターダムに駆け上がった、清楚な美しさと演技力を兼ね備えた香港女優。しかし僕が観たのは『東京攻略』と韓国映画『パイラン』ぐらいかな。『パイラン』は良かったですね。浅田次郎の『ラブ・レター』(未読)の映画化なんですが、主演のチェ・ミンシクもセシリアも好演でした。しかしその後の『ワンナイト・イン・モンコック』『忘れえぬ想い』、チェン・カイコーの『PROMISE』なんかは未見。香港女優らしくしょーもない映画にもいっぱい出てますが、それらももちろん未見。そして2008年、エディソン・チャンのハメ撮り写真大量ネット流出事件が勃発。そのお相手で1番大物だったのが彼女で、清純派キャラは崩壊。旦那のニコラス・ツェーとも最終的には離婚とあいなりました。その後、数年のインターバルを置いて、2011年に復帰するも、駄作『女ドラゴンと怒りの未亡人軍団』をはじめほとんどの出演映画がコケたらしい。『危険な関係』での悪女役は良かったと思うんですが、結局バラエティ番組や歌手活動、事務所経営に転じ、その後の出演作はほとんどないようです。

ドン・ジエ
 チャン・イーモウの『至福のとき』でデビューした中国女優。日本では「ポスト・チャン・ツィイー」なんてキャッチコピーを付けられてましたが、1つ年下でデビューも1年しか違わないのに「ポスト〜」も何もねえだろ、って思いましたね(笑)。まあ、わかってやってるんだろうけど、コン・リーやツィイーに比べるとちょっと地味な感じで、並べるのはどうかと思いました。『最後の恋,初めての恋』でも同様の印象で、ウォン・カーウァイの『2046』では出番が数秒という扱い。自由に編集するカーウァイは気に入らない女優の出番はばっさりカットすることで有名です。予感通り徐々に露出は減っていき、テレビドラマに活躍の場を求めたようで近年の『三国志 Secret of Three Kingdoms』『如懿伝 紫禁城に散る宿命の王妃』で久しぶりに観ました。番手的には女優の中でも2・3番手ですが、その地味さが似合っていて、00年代前半にはまだ子供だったのがすっかりアラフォー熟女になってました。しかし年齢より若く見える清楚な雰囲気はそのままに、演技力もしっかりしてるのは相変わらず。

カリーナ・ラム
 台湾出身の香港女優で、出世作はレスリー・チャンの遺作となったホラー映画『カルマ』(未見)。僕が最初に観たのはNHK教育だかBSだかで放送されていた『恋の風景』で、儚げな雰囲気の地味系美人ぶりがすっげえ良かったです。しかし日本公開作がホラーやB級アクションなどあまり興味がわかないものが多く、他に観たのは『パティシエの恋』ぐらい。その後、結婚と出産で一時休業したようですが、数年前の台湾映画『百日告別』で久々に観ました。相変わらず上手いし美しかったですねえ。

グイ・ルンメイ
 青春映画の傑作『藍色夏恋』でデビューした台湾女優。僕もそれですっかりファンになったんですが、その後は学業優先でフランスの大学に留学したりして、このままフェードアウトするんじゃないかと心配しました。しかし00年代後半にちゃんと映画界に戻ってきて、『言えない秘密』『遠い道のり』と相変わらず清楚な美しさで好演。10年代に入っても『海洋天堂』『密告・者』『台北カフェ・ストーリー』『ハッピーイヤーズ・イブ』『ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝』『GF*BF』『薄氷の殺人』『星空』『ザ・ビッグ・コール 史上最強の詐欺師たち』『幸福路のチー』『鵞鳥湖の夜』と中台香を股にかけた活躍ぶりです。
 『鵞鳥湖の夜』は7月にBlu-ray&DVD化の予定がとうとう出ました。結局地元では上映なしかあ。まあ、またDVD化1週間前にやっと上映なんてパターンの可能性もなくはないんですが……。



#1823 
バラージ 2021/04/20 23:15
さらに訂正

 『バタフライ・ラヴァーズ』についての感想で文章が抜けてるところがありました。中国の古典的な悲恋物語『梁山泊と祝英台』の映画化です。



#1822 
バラージ 2021/04/20 22:54
あらら

 文字化けした部分は「深セン」です。



#1821 
バラージ 2021/04/20 22:52
最近観た映画いろいろ

>映画館で観た映画
『野球少女』
 プロ野球入団を目指す野球部員の女子高生ピッチャーを主人公とした韓国の青春ヒューマンドラマ映画。荒唐無稽な娯楽映画ではなく、リアルですごく真面目なドラマ映画となっています。
 パンフレットの解説によると、韓国では授業の後に補習として8時間目・9時間目があることが普通で、日本で言う放課後というものがなく、部活のない学校がほとんどなんだそうです。部活のある学校も体育会系のみでプロを目指す生徒だけが入り、昔は授業を全く受けずにスポーツばかりやっていたとのこと。さすがに問題になり、今では一部の大会は週末にやってるそうですが。主人公の女子高生はそんな環境の中であきらめずにプロ野球を目指すんですが、中学までは天才少女と呼ばれた彼女も、速球は最速130q台。将来を案じる母親からも監督からもあきらめるよう言われ、新任コーチも「プロは無理」と言い渡しますが、やがて主人公の強い思いに動かされ、プロ球団のトライアウトを受けられるよう奔走することに。コーチは彼女に速球は捨て、ナックルボールを習得することによってプロを目指すことを提案する……。
 面白かったです。リアルを追及した映画で、物語が劇的・叙情的になりすぎないように作ってあるのがいい。そして主演のイ・ジュヨンがとても良い。去年大ヒットした配信ドラマ『梨泰院(イテウォン)クラス』でトランスジェンダー役を演じてブレイクした女優とのことで、決して美人ではないもののショートカットがとても似合い、凛とした美しさがあります。こういうテーマの映画を娯楽的にならずにどこまでも真面目に作って、リアリティのある優れたドラマに仕上げる、近年の韓国映画の力を感じさせる佳作でした。

『ノマドランド』
 『ノマド 漂流する高齢労働者たち』というノンフィクションを原作に、中国の北京生まれで北京とイギリスで育ち、ニューヨークで映画監督となったアジア系女性監督のクロエ・ジャオが監督した米国映画。死んだ夫の勤めた企業の経営破綻によって町が死に絶え、職も住む家も失った高齢女性が主人公。彼女はキャンピングカーに住みながら短期労働の現場を渡り歩く「現代のノマド=遊牧民」として生きる。他のノマドたちとの出会いと心の交流の中で、過酷で厳しい人生の日々を生き、時として孤独や自省や寂寥感に苛まれながらも、彼女は孤高に誇り高く生きていく……。
 製作も兼ねる主演のフランシス・マクドーマンドが実在のノマドたちの中に入り、仕事場や路上・キャンプ地などで交流するという、フィクションとドキュメンタリーを融合させた演出とのことですが、どこまでがフィクションでどこからがドキュメンタリーなのか全くわからない。マクドーマンドとデヴィッド・ストラザーン以外の出演者のほとんどは実際のノマドたちが自分自身の役を演じているそうです。
 全米を車で放浪する物語というと、映画化もされたジャック・ケルアックの小説『オン・ザ・ロード』がありますが、あちらは青春の彷徨だったのに対して、こちらはやってることは似ていても趣きはだいぶ違います。初老から老人の漂流労働者たちの日々はもっと過酷で厳しく、また人生の哀感に満ちています。しかし、そこには同時にある種の孤高な神聖さや宗教性も感じられる。ちょっと身につまされるところも感じつつ、その一方でやはりこの映画で描かれているものにはいろいろな意味で米国特有のものがあるなとも思いました。主人公の内的な強さに裏打ちされた孤高性も、いかにも米国人もしくは米国文化特有のものです。日本ではこの映画と同じようなノマド的存在がいたとしてもその存在のしかたなどは大いに異なるだろうし、映画にしたらもっと湿度の高いねっとりとした映画になってしまいそう。この映画の質感はもっと乾いていてウェットなところがない。そこが良かった。面白かったです。

『トムとジェリー』
 僕は昔テレビでやってた『トムとジェリー』が好きで結構観てました。なのでこの映画もちょっと観てみたかったんですが、予告編を観て「あれ?」と思ったのは、普通のアニメじゃなく昔の『ロジャー・ラビット』(未見)みたいなアニメと実写を融合した映画というところ。そこがなんとも不安でした。
 観てみたら、うーん、やっぱりなんか違うんだよなあ。どっちかというと人間側の物語が主で、そこにトムとジェリーが闖入して引っ掻き回す話になってしまっている。五分五分どころか6対4くらいで人間側の比重が高い。トムとジェリーが主役じゃないんですよね。トムとジェリーがいなくても成り立つ物語で、逆に人間たちがいないと成り立たない物語になってしまっています。その人間側の物語もきわめてありきたりで陳腐なストーリー。世界観もよくわかんなくて、主人公ら人間たちがトムとジェリーを猫や鼠というよりキャラクターとして扱ってます。そういう世界観なのかと思えば、他の動物たち(全部アニメ)は普通に人間たちが動物として扱っていたりで、どうもよくわからない。また、アニメと実写の融合と言いながら、実写部分でもトムとジェリーが絡んだ、いろんな物や部屋や建物の派手な破壊シーンはほぼCGだと思われ、そうなってくるとアニメと実写の融合という意味合いも薄れてくるわけで、そこもどうも気になりました。残念ながら期待外れ。ただ、期待したほどではない凡作ではあったものの、途中でどうしようもなく退屈したとか、ものすごくつまらなかったというほどではなく、一応最後まで観ることはできました。

『ミナリ』
 韓国系米国移民家族の姿を描いたヒューマンドラマ映画。「ミナリ」というのは韓国語で「芹(セリ)」のことだそうです。舞台は1980年代、韓国からの移民の一家がカリフォルニアからアーカンソー州に越してくる。長年ヒヨコの雄雌選別作業に従事してきた夫は荒れ地を開墾して農業で成功することを夢見るが、妻は荒れ果てた土地とボロいトレーラーハウスを見て不安でいっぱいになる。だが幼い娘と息子は意外に順応。不安がる妻のためにその母親も同居するようになるが、共働き夫婦が留守の間に子供たちに花札を教えるなどちょっと型破り。農業も家族もトラブルの連続で、次々と困難が襲いかかる……。
 なかなか面白かったです。韓国系米国人一家の生活を時にユーモラスに、時にシリアスに描き出していくんですが、監督自身も韓国系米国人で実体験が反映されている半自伝的な映画とのこと。『ノマドランド』の中国系米国人女性監督と並べて、アジア系米国人監督の描く米国社会という特集が雑誌に載ったりしてました。一家を演じる俳優たちが全員美男美女じゃないのもリアルでいい。
 台詞が半分以上韓国語だからという理由でゴールデングローブ賞が作品賞の候補から外したことが批判されているそうですが(最優秀外国語映画賞を受賞)、米国でアジア人ヘイトが相次いでいる今こそタイムリーな映画なのかもしれません。

>録画やDVDで観た映画
『THE CROSSING 香港と大陸をまたぐ少女』
 BS12で放送してた中国映画。去年の11月に日本公開されたばかりらしいんだけど、DVD化もまだされてないのにもうテレビ放送されてました。『チィファの手紙』もそうでしたが、今後こういうパターンが増えてくるのかも。
 中国の深圳に住みながら香港の高校に通う「越境通学」をする女子高生が主人公。彼女は運送業で香港と深圳を行き来していた父と深圳に出稼ぎに来ていた母が不倫して産んだ子で、戸籍のある香港の高校に通学していたが、麻雀で生計を立てるだらしない母との暮らしを嫌い、香港の父を時々訪ねるも彼にはもともと別の家庭があった。孤独な彼女は高校で唯一の友達との北海道旅行を夢見るが、香港人の友達と違って裕福な家庭ではない。やがてひょんなことから最新のスマホを香港から中国に密輸する組織に出会い、友達のボーイフレンドもその一員であることを知る。お金を稼ぎたい彼女は、越境通学で深圳と香港を行き来する彼女に目をつけた組織の誘いに乗って、密輸を実行する役割を積極的に担おうとするのだが……。
 面白かったです。一国二制度の歪みが生み出した経済格差と、それを利用した密輸犯罪という現実とともに、深圳と香港という特殊な地にいるが故の、魂の癒しを求める孤独な少女の彷徨をも描き出した青春映画としての佇まいが素晴らしい。そういう雰囲気が90年代末の香港のフルーツ・チャン監督のデビュー作『メイド・イン・ホンコン』にちょっと似てました。監督はこれが長編デビューのバイ・シュエ(白雪)というこれまた若い女性監督なのも今という時代を映し出してます。主演女優ホアン・ヤオもとても良かった。女子高生にしか見えないんですが、実際には撮影時に24歳くらいだったようです。

『バタフライ・ラヴァーズ』
 2008年の香港映画。お気に入りの中国女優レジーナ・ワンの映画デビュー作と知って観たいと思ってたんですが、レンタル店にないし端役だろうから買ってまではなあと思ってたら、なぜか今頃になってレンタル店に中古が入荷されてました。昔から何度も映画化されてる題材らしく、それだけに何か新機軸をと思ったか原典にはない武侠アクション要素が加えられた上、他にも原典を大幅に改変してるようです。前半はコテコテのラブコメ、後半はベタベタのメロドラマで、やたらとアクションシーンも多い。美術や映像や役者といったビジュアルこそ今風ですが、演出が古臭くて雰囲気が安っぽく、80〜90年代の香港映画を観てるようでした。レジーナ・ワンはほんとにチョイ役(というかストーリーに必要ない役のような……)。でも出てきた瞬間にレジーナ・ワンだとわかっちゃいましたね。



#1820 
U・M 2021/04/19 11:08
メトロポリス

初めまして!フリッツ・ラング監督の「メトロポリス」のレビュー読ませて頂きました。

そうですね。今までメトロポリスと言えば、所謂「全長版(ノーカット完全版)」は
3時間半と言われて来ましたが、実は元々は前後編2部作に分かれていて、前編3時間半
後編3時間半だった・・・なんて説も有るみたいですね。
しかしもし仮に本当に前後編だったら、どれ程の大作映画だったのでしょう・・・

因みに、オリジナルから大幅カットされた映画と言うと坂東妻三郎の「無法松の一生」等も
有名でしたね!後は・・・
クラーク・ゲーブル、チャールス・ロートンの「戦艦バウンティ号の叛乱」。
これが戦前、初めて日本で公開された時は、ズタズタにカットされて、タイトルも
「南海征服」と改題され、単なる海洋冒険映画になってしまったとか・・・
流石に今は「南海征服」バージョンはDVD化されて無いと思いますが、逆に
そのバージョンも見てみたいと言う気もします笑



#1819 
バラージ 2021/04/11 00:05
90年代の中華圏女優たち

 去年映画館で観たジョウ・シュン主演、岩井俊二監督の中国映画『チィファの手紙』が、DVD化もまだされてないのに日本映画専門チャンネルで放送してたんで録画しようと思ってたら、すっかり忘れてて失敗。なので後半半分だけを直接観たんですが、やっぱり良かった。最初観た時よりもかなり面白い印象で、そういう映画はたまにありますが、経験上そういう映画は良い映画です。去年のベスト3から漏らしてしまったんですが、2位くらいにジャンプアップさせてもいいかな。6月にBlu-ray&DVDが発売されるようです。


 80年代香港映画女優の話をしたついでに、90年代の中華圏映画女優の話も書いちゃおうかな。

ドゥドゥ・チェン
 ジャッキーの『プロジェクト・イーグル』に出てた女優。子役から活躍していた、香港では非常に人気のある女優だったらしいんですが、日本での人気は今一つ跳ねませんでした。実際まもなくカナダに移住して90年代は休業してたらしいから、跳ねる暇もなかったんでしょう。現在は香港に戻り数多くのテレビ番組で司会をしてるとのこと。『〜イーグル』ではちょっとセクシーなシーンもあるコメディエンヌとして魅力を振りまいてましたが、検索すると出てくる今の顔はすっかりしわくちゃのおばあちゃん。ま、30年も前の映画で、もう60歳過ぎらしいから当然か。

ミシェール・ヨー
 ジャッキーの『ポリス・ストーリー3』で超絶アクションを披露してた女優。マレーシア華僑出身とのことで、当時の芸名はミシェール・キングでした。デビューは80年代で、その時からアクション女優として活躍してましたが、結婚とともに1度引退しています。80年代の出演映画は『七福星』『皇家戦士』を後になってから観ました。しかし離婚とともに復帰し、その復帰作が『ポリス〜3』。『プロジェクトS』『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』『グリーン・デスティニー』『酔拳 レジェンド・オブ・カンフー』などのアクション映画に出る一方で、『宋家の三姉妹』『SAYURI』『チルドレン・オブ・ホァンシー 遥かなる希望の道』などの非アクション映画にも出演。アクション専門女優ではないことが息の長い活躍ができる理由か。現在はハリウッドでの活動が主のようです。

ミッシェル・リー
 マカオ生まれでポルトガル系の父を持つハーフ美人女優。ミシェール・リー、ミシェル・リーなどの表記もあり。『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー2』に出てたらしいんですが、映画自体がいまいちだったためかほとんど記憶にありません。最初に記憶にあるのは『スウォーズマン 女神伝説の章』で、可愛い子だなとは思いましたが、ブリジット・リンやロザムンド・クワンなど先輩大物女優の存在感ほうが大きかったですね。演技派に脱皮したのはウォン・カーウァイの『天使の涙』から。ただしカーウァイは彼女の演技には不満だったようです。以後、ホウ・シャオシェンの『フラワーズ・オブ・シャンハイ』、スタンリー・クワンの『異邦人たち』とアート映画に出演する一方で、日本映画『漂流街』『真夜中まで』(どっちも未見)に出たり、資生堂「ピエヌ」のCMに出たりもしてました。しかし21世紀に入ると突如ペースダウンし、結婚とともに事実上の引退状態に。『孫文の義士団』の特別出演が最後の出演作となっています。

フェイ・ウォン
 ウォン・カーウァイの『恋する惑星』で、金城武とともに一躍知名度を上げた女優。というか本業は歌手で、女優としての出演作は多くありません。もともとは中国の北京出身で、米国留学の経由地として移住した香港で足止めを食らい、そこで歌手としてデビューしたという変わり種。その時の芸名は王靖雯(シャーリー・ウォン)。最初のうちは売れなかったためあっさり米国留学したそうですが、留学終了後まだ契約が残ってたことから、本名の王菲に近いフェイ・ウォンに改名してもう1曲出したらそれが大ヒット。第二のテレサ・テンと呼ばれるほどのアジア全域の大スターになったとのこと。他の女優としての出演作はやはりウォン・カーウァイの『2046』など。日本の連ドラ『ウソコイ』(未見)でも主演してました。現在も歌手として活動中のようです。

ビビアン・スー
 日本で大人気となった台湾のタレント。女優としても活動してたし、時代を映す人でもあるんで紹介してしまおう。95年に出版したヘアヌード写真集が大ヒットし、翌年からバラエティ番組『ウッチャンナンチャンのウリナリ!』に出演して人気者に。南原清隆、天野ひろゆきとともにブラックビスケッツとしてリリースした歌はミリオンセラーにまでなりました。21世紀に入る頃から活動拠点を地元台湾に移し、現在に至ります。出演映画はほとんど21世紀になってからのものしか観てなくて、駆け出し時代にスー・チーと共演した『ビビアン・スー&スー・チーin恋する季節』、ジャッキーの『アクシデンタル・スパイ』、スー・チー主演作にゲスト出演した『狙った恋の落とし方。』、恋愛群像劇『ホット・サマー・デイズ』、台湾映画『セデック・バレ』二部作といったあたり。台湾ではスー・チーやリン・チーリンが結婚したことで「最後の独身美女」と呼ばれてるとか。

アニタ・ユン
 難病悲恋映画『つきせぬ想い』で90年代半ばにスターダムに駆け上がったショートカット美少女女優。ジャッキーの『デッドヒート』や日香合作の『香港大夜総会 タッチ&マギー』にも出てました。『君さえいれば 金枝玉葉』『月夜の願い』のような少女マンガ的ラブコメ映画で可愛い美少女ぶりを振りまく一方で、『0061 北京より愛を込めて!?』『金玉満堂 決戦!炎の料理人』などのコメディ映画では器用なコメディエンヌぶりを発揮するなど、多い時には年10本もの映画に出演する活躍ぶりでしたが、90年代末にはテレビドラマにシフトを移したらしく、21世紀になるとぱったり見かけなくなってしまいました。僕は『君さえいれば』『月夜の願い』『金玉満堂』『デッドヒート』は観ましたね。近年の中国時代劇ドラマブームで日本でも再び顔を見せるようになりましたが、かつての美少女も今ではすっかりおばさんです。

伊能静
 ホウ・シャオシェンの『好男好女』で主演に起用され、ホウ監督の新たなミューズとなった台湾の女優。もともとはアイドル歌手出身で、最初に日本で紹介された際には金城武みたいに日本人の血が入ってると紹介されてた記憶がありますが、実は母親の再婚相手が日本人でその姓に改名したらしい。続くホウ監督作『憂鬱な楽園』でも主演しましたが、その次の『フラワーズ・オブ・シャンハイ』では助演になり、以後ホウ・シャオシェン映画には出演していません。他にはその頃NHK教育だかBSだかで放送された主演映画『国道封閉』、最近になって脇役で出てた中国・香港合作映画『曹操暗殺 三国志外伝』を観ました。

チャーリー・ヤン
 ウォン・カーウァイの『楽園の瑕』『天使の涙』で売れっ子となった女優で、台湾生まれの香港育ちとのこと。個人的にはそれほど好みじゃありませんでしたが、売れっ子だったのにあっという間に見かけなくなってしまいました。なんでも97年に恋人とマレーシアでデザイン会社の経営に転じ、人気絶頂の中で突如引退したとのこと。しかし経営が上手くいかなかったのか、2004年にジャッキーの『香港国際警察 NEW PORICE STORY』で復帰。現在も女優として活動してるようです。

カレン・モク
 これまた『天使の涙』に出てた女優。香英ハーフらしいんですが、個人的にはあんまり好みの顔立ちではない……。しかしお気に入り女優スー・チーとの共演が多いため、他にも『夢翔る人 色情男女』『クローサー』『ドミノ』と出演作を観ております。ジャッキーのハリウッド映画『80デイズ』にも出てました。数ヵ国語を話せる才女らしく、個性派女優として需要があるのかも。今でもまだ現役みたいです。

ケリー・チャン
 『世界の涯てに』『アンナ・マデリーナ』『ラベンダー』などの恋愛映画で金城武と主演してスターになった美人女優。歌手としても活動してるようです。子供のころ日本に住んでたらしく、少しだけ日本語も話せ、資生堂「ピエヌ」のCMに出たり、『冷静と情熱のあいだ』やドラマ『鬼の棲家』にも出てました。僕はそれほど好みではなく、上記作品はいずれも未見ですが、『わすれな草』『東京攻略』『インファナル・アフェア』『インファナル・アフェアV 終極無間』『西遊記 孫悟空vs白骨夫人』といったあたりは観ました。今でも現役のようですが、10年代あたりから出演作は減少傾向でセレブとしての活動のほうが目立ってるようです。

 『ゴージャス』のスー・チーや、『初恋のきた道』『グリーン・デスティニー』のチャン・ツィイーも90年代末に出てきた女優ですが、この人たちはどっちかっていうと00年代以降の21世紀中華圏映画界を背負った人たちだから今回はいいかな。



#1818 
バラージ 2021/03/28 23:02
懐かしの映画たち 80年代アイドル女優編

 今季観てたテレビドラマ『その女、ジルバ』『監察医 朝顔』『俺の家の話』が終了。いずれも「老い」や「死」を大きなテーマとした、明らかに「今」を強く意識したドラマでした。どれも面白かったです。

 さて、懐かし女優の話をしてるうちに、彼女たちが出てるまだ観てない映画を観たくなり、DVDでいろいろと観てしまいました。ちなみに今回観た映画にはある共通点があるのだが、あえて触れずにおこう(笑)。

『プライベイト・スクール』
 1983年の米国映画。全寮制の私立女子高を舞台に、(当時の)イマドキ女子高生たちの恋と性と友情を描いた、エッチなおバカ青春学園コメディ映画です。フィービー・ケイツが主演名義ですがどちらかといえば群像劇に近く、近隣の男子高トリオのエロバカっぷりなども含めて『グローイング・アップ』や『ポーキーズ』のノリに近い(どっちも観たことないけど)。あるいはドラマ『毎度おさわがせします』みたいといいますか。とにかくいい意味でバカバカしいエロバカ青春コメディで、随所で「絶対こうなるな」という見え見えのエロバカ展開があり、思わずゲラゲラ笑ってしまいました。『初体験 リッジモント・ハイ』みたいな映画史に名を残す重要な映画(アメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録されてる)ではないけれど、なかなか十分に面白かったです。やはりこの頃のフィービーは神がかり的に可愛く、そりゃ人気になるわなと思わされましたね。男子高3人組唯一のイケメンでフィービーの恋人役を演じてるのはマシュー・モディン。後の性格俳優になってからしか知りませんでしたが、こんなアホ映画にも出てたんだなあ。

『栄光のエンブレム』
 1986年の米国映画。主演はロブ・ロウで共演がパトリック・スウェイジという懐かしい面々。プロのアイスホッケー選手を目指してカナダのジュニアチームに入った青年が仲間の怪我にショックを受け1度は挫折するも、周囲の叱咤や励ましを受けて再び立ち上がる姿を描いたスポーツ青春映画です。ベタで王道なストーリーですが演出は抑制的で、派手すぎない堅実な作りは悪くありません。スポーツで成功できなきゃ実家の農場で働くしかないという田舎の高校生の現実も描かれてました。ちょっと地味で若干暗めですがそこが良く、まあまあ面白かったです。とはいえ題材が題材だけにちょっとマッチョイズムで、そこはあんまり趣味じゃなかったんですが。ヒロイン役のシンシア・ギブは正統派のアメリカンガールで美人で可愛いし、演技も達者で悪くないんですが、アクが弱くて今一つ印象に残らない感じ。

『栄光の彼方に』
 似たような邦題のこちらは1983年の米国映画で日本ではビデオスルー。題材も似ていて、こちらは高校アメフトの話ですが、試合自体は映画の前半で終わってしまいます。地元の田舎町を出ていきたいという主人公(ばかりでなく他の高校生やコーチまでも)のもがきや焦りが話のメインで、そういう現実が妙に生々しく描かれてます。映画としてはあんまり面白くないんですが、不況下で働き口が古い製鉄所しかないような米国のさびれた田舎町の閉塞感というのはよく描かれていて、今の米国を考えるとなんとも興味深かったですね。考えてみれば80年代の米国もレーガン政権下で右傾化した時代です。主演のトム・クルーズは『卒業白書』に次ぐ主演2作目で、主人公の恋人役がこれまた『バック・トゥ・ザ・フューチャー』より前のリー・トンプソン。

『愛にふるえて』
 クリストファー・ランバートとダイアン・レイン主演の1987年(または88年)のイタリア映画。この2人はこの共演がきっかけで付き合い出したんだったかな? 日本公開された89年にはもう結婚してました。仲違いした弟を事故で失い、ショックから音楽を捨てて島に流れてきたミュージシャンが、海で不思議な壺を拾う。壺の中からは美しい妖精が現れ、彼に3つの願いをかなえると言うが……というお話。どうでもいい話がだらだらと続く退屈な映画で、前衛映画にしたかったのかな? それとも演劇的演出をしようとしたのか? どっちにしろ前衛映画にも演劇映画にもなりきれてなくて、えらく安っぽい芝居が延々と続くチープな映画という印象。脚本にも問題がありますが、監督の演出力がダメすぎるんでしょう。ダイアン・レインの美しさしか見どころがありませんでした。

『サイキックSFX 魔界戦士』
 1986年の香港映画。ネパール奥地の超能力部族の長が悪の超能力野人?みたいなやつに殺されるが、自分の後を継ぐ者は東から来ると側仕えの巫女に遺言する。それは香港から恋人とネパール旅行に来ていたデザイナーの男だった。香港に帰った彼を追ってきた巫女は男の超能力を開花させるが、やがて2人は惹かれ合い、恋人と三角関係に。そして野人も主人公を追ってきて、ラストバトルが始まる、というようなお話。監督が後に『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』を監督し、今ではユエン・ウーピンとワイヤーアクションを二分するチン・シウトンだけあって特撮シーンがやたら多い。しかしアクション一辺倒の映画ではなく、チョウ・ユンファ演じる主人公とエミリー・チュウ演じる巫女のラブロマンス描写が終盤までの物語の軸となっています。なかなか面白かった。恋人役のナム・キットインという女優も、全然知らん人ですがこれまた美人でした。



#1817 
バラージ 2021/03/21 19:36
80年代の香港(&中国・台湾)アイドル女優たち

 80年代のアイドル女優の思い出、今回は香港(&中国・台湾)映画編。ほとんどがジャッキー映画に出てた女優になっちゃいますが。

ムーン・リー
 『プロテクター』に出てた可愛い系女優。それ以前に『蜀山奇伝 天空の剣』『五福星』『霊幻道士』にも出てたそうですが、それらは後になってから観ました。その後は愛くるしい顔してアクション女優に転向し、B級アクション映画で命がけスタントをやりまくり、全身大火傷の重傷を負ったこともあるらしい。90年代で引退し、現在は舞踏学校で後進の指導に当たっているとのこと。

サリー・イップ
 『プロテクター』に出てた女優。最初に見た時の印象は、ムーン・リーに比べて可愛くないというものでしたが、後に観た『北京オペラ・ブルース』や『狼 男たちの挽歌・最終章』での好演が印象的。もともと台湾の女優だったらしいんですが、当時は香港映画に出てるのはみんな香港女優だと思ってたというか、どこ出身なんて気にしたこともなかったですね。どちらかというと本業は歌手のほうで、90年代初めに女優業は引退しています。

エミリー・チュウ
 『ファースト・ミッション』に出てた美人女優。この人も台湾女優とのこと。ジャッキーとキスしまくるシーンがあったのを覚えています。他に観た映画だと『男たちの挽歌』『同2』『上海エクスプレス』『ルージュ』なんかにも出てたらしいんですが、そっちはあまり記憶に残ってません。90年代初めには台湾に戻り、90年代いっぱいで引退したとのこと。

シベール・フー
 『大福星』に出てた美人女優。この人も台湾の女優らしい。劇中では西脇美智子とキャットファイトを繰り広げてましたね。引き続き『七福星』にも出演し、他には『セブンス・カース』という映画でも観たんですが、なぜかこの人もアクション女優に転向し、B級アクション映画に出まくっていたようで、ムーン・リーともども全身大火傷の重傷を負っています。90年代に結婚して引退。

ブリジット・リン
 『ポリス・ストーリー 香港国際警察』に出てたショートカットの美人女優。この人も台湾女優とのことで、ジャッキーとは台湾のバカ映画『ドラゴン特攻隊』で共演済みでした。ジャッキーの1つ年下で、台湾では青春スターとかメロドラマの女王と呼ばれていたらしく、後にジャッキーの奥さんとなるジョアン・リンと人気を二分してたんだとか。『ポリス・ストーリー』に出た頃は、実は30歳過ぎて人気がやや斜陽になっていた頃で、『蜀山奇伝 天空の剣』にも出ています。その後は男装の麗人を颯爽と演じた『北京オペラ・ブルース』、戦争下の恋愛を演じて台湾金馬奨主演女優賞を獲った『レッドダスト』、金庸の武侠小説の映画化で性転換する怪人を演じて一代の当たり役となった『スウォーズマン 女神伝説の章』『同 女神復活の章』、再び男装の麗人を演じたウォン・カーウァイ監督の『楽園の瑕』とトップ女優として活躍しますが、カーウァイの『恋する惑星』を最後に90年代で引退。現在はエッセイストとして活動しているとのこと。いやぁ、この人はほんと美人でした。

マギー・チャン
 彼女も『ポリス・ストーリー』で初めて知ったけど、あれがデビュー3作目だったそうで。まさか後にアジアを代表する大物女優になろうとは、当時は思いもしなかったなあ。ただ、可愛い女の子だなと思ってただけでした。ジャッキー映画では『ポリス〜』シリーズの3までと『プロジェクトA2』『ツイン・ドラゴン』に出てます。90年代に入る頃から香港ニューウェーブなどのアート系映画に出るようになり、『フルムーン・イン・ニューヨーク』『レッドダスト』『ロアン・リンユィ 阮玲玉』『ラヴソング』『宋家の三姉妹』『花様年華』などで香港金像奨や台湾金馬奨の主演助演女優賞を獲りまくり、『ロアン・リンユィ』ではベルリン映画祭の主演女優賞まで獲得してしまいました。他にも『いますぐ抱きしめたい』『客途秋恨』『欲望の翼』『楽園の瑕』『チャイニーズ・ボックス』『HERO』『2046』と、有名作への出演は枚挙の暇もありません。僕は他に『セブンス・カース』『タイム・ソルジャーズ 愛は時空を超えて』『第1回欽ちゃんのシネマジャック「女とおんな」』『イルマ・ヴェップ』『オーギュスタン 恋々風塵』『ひとめ惚れ』といったあたりを観ています。まさに中国のコン・リーと並ぶ90年代の中華圏を代表する女優でしょう。しかし、カンヌ映画祭の主演女優賞を獲った2004年の『クリーン』を最後に女優業は引退状態で、その後は2010年の『ホット・サマー・デイズ』に1シーンだけ友情出演したのみ。しかしこうして改めて振り返ってみると、僕はマギーの女優人生のほとんどを見てきたことになるのか。いい女優でした。

ロザムンド・クワン
 『サンダーアーム 龍兄虎弟』『プロジェクトA2 史上最大の標的』に連続出演してた女優。それ以前に『七福星』にも出てましたが、僕は後になってからビデオで観ました。ちょっと濃い目の顔立ちが今一つ好みではなかったんですが、90年代に入ってからのリー・リンチェイ(ジェット・リー)主演の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズでのヒロイン役は良かった。その他の出演作は『上海エクスプレス』『スウォーズマン 女神伝説の章』『項羽と劉邦 その愛と興亡』『ブルー・エンカウンター』を観ました。2007年に引退。

カリーナ・ラウ
 この人も『プロジェクトA2』に出てた女優。この人の場合は大陸から香港に来て女優になったとのこと。やっぱりそこまで可愛いとは思わなかったんですが、それゆえにと言うべきか、2番手ヒロインや脇役もこなすバイプレイヤー的女優として現在まで息の長い活躍を続けています。他に『愛と復讐の挽歌』『同 野望編』『欲望の翼』『ロアン・リンユィ 阮玲玉』『月夜の願い』『楽園の瑕』『君さえいれば 金枝玉葉』『フラワーズ・オブ・シャンハイ』『新恋愛世紀 ラブ・ジェネレーション』『インファナル・アフェアU 無間序曲』『インファナル・アフェアV 終極無間』『2046』『王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件』『さらば復讐の狼たちよ』『ライズ・オブ・シードラゴン 謎の鉄の爪』と、特にファンでもないのにやたら観ているのはそのため。『2046』の時はさすがに老けたな〜と思ったんですが、『王朝の陰謀』ではそれを逆手に取って(?)則天武后を貫禄たっぷりに演じてました。

コン・リー
 この前も書いたんですがデビュー作の『紅いコーリャン』が初見。その時は映画の一部という感じで彼女個人にはあまり注目しなかったんですが、大学時代に観た次の『菊豆(チュイトウ)』では彼女の存在感が強く前面に出てきて、その次の『紅夢』で完全にファンになりました。以後、『秋菊の物語』『さらば、わが愛 覇王別姫』『上海ルージュ』『花の影』『始皇帝暗殺』と90年代中国映画を代表する作品群に出演。他に『テラコッタ・ウォリア 秦俑』『ゴッド・ギャンブラー3』『画魂 愛、いつまでも』『項羽と劉邦 その愛と興亡』『チャイニーズ・ボックス』など、彼女の出演映画の大半は観てきましたね。90年代は中国のスター女優を起用しようとすれば、コン・リー一択しかなく、まさに90年代中国映画を代表する女優でした。21世紀に入ってからも『活きる』『きれいなおかあさん』『たまゆらの女(ひと)』『2046』『愛の神、エロス』『SAYURI』『王妃の紋章』『シャンハイ』『妻への家路』『西遊記 孫悟空vs白骨夫人』と観ています。現在でもバリバリの現役女優ですが、共産圏は男女同権共働きの意識が強いという話も聞くのでその影響もあるのかも。

アニタ・ムイ
 80年代最後のジャッキー映画『奇蹟(ミラクル)』のヒロイン役だった女優。初見はちょっとおばさんくさく感じたんですが、実際に動いてる姿を見るとその演技力もあいまって非常にキュートで魅力的なコメディエンヌでした。ジャッキーも気に入ったのか、その後も『酔拳2』『レッド・ブロンクス』で起用しています。もともとの本業は歌手ですが、俳優としても売れっ子になった人で、僕は他には『ルージュ』くらいしか観てないんですが、出演作は非常に多く、香港のスーパースターの1人でした。チャン・イーモウの『LOVERS』にも出演予定だったんですが、2003年に癌で40歳の若さで死去。同年にはレスリー・チャンも衝撃的な自殺を遂げており、香港映画の落日を象徴する出来事に感じられました。

グロリア・イップ
 『奇蹟(ミラクル)』に出てたアイドル女優。80年代末から90年代初めに一世を風靡したアイドルで、この頃の『ロードショー』ではアリッサ・ミラノと人気投票1位の座を争ってましたね。日本で歌手デビューまでして、レコード(だかCDだか)も結構売れたらしい。日香合作の『孔雀王』でブレイクし、続編の『同 アシュラ伝説』では事実上の主人公に。金子修介監督の『香港パラダイス』にも出演してました。僕はそこまで好きだったわけではないけれど、『奇蹟』と『アシュラ伝説』は観ました。95年に若くして結婚し引退しましたが、その後もちょこちょこ復帰しており、日本映画『大阪プロレス飯店』にも出てたらしい。

シン・シューフェン
 大学時代に台湾のホウ・シャオシェン監督の『恋恋風塵』『悲情城市』『ナイルの娘』で観た、初期ホウ・シャオシェン映画のミューズとも呼ぶべき女優。もともと『童年往事 時の流れ』のヒロイン役を探していたホウ・シャオシェンが台北の街で見かけて、追いかけてスカウトした素人だったとのことで、確かに香港女優やコン・リーなどのようなプロの女優という感じではなく、素人っぽい女優だな〜と思った記憶があります。本人も女優志望ではなかったようで、『恋恋風塵』『ナイルの娘』出演後に米国に渡り結婚。ホウ・シャオシェンの熱望で『悲情城市』には出演したものの、それが最後の出演作となりました。『童年往事』は後にNHKで放送されたのを観ましたね。

ジョイ・ウォン
 『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』で大ブレイクした美人女優。この人も台湾出身だそうです。僕は1作目を大学時代にテレビで、2を映画館で観て、3は多分観ていません。日本でもかなりの人気となり、テレビドラマ・映画やCMにも出演してた他、歌手デビューまでしています。僕はそれほど好きだったわけではなく、出演映画は『ゴッド・ギャンブラー』『シティーハンター』『スウォーズマン 女神復活の章』を観ましたが、彼女目当てではありません。作品に恵まれなかった印象で、『チャイニーズ〜』の亜流みたいな映画やB級アクションにばっかり出てました。さらには『楽園の瑕』の出演シーンが、ウォン・カーウァイの眼鏡には叶わなかったのか全カットされ(確かに演技はそれほど上手いとは思わなかった)、それが理由かはわかんないけど一時休業。その挙げ句4年ぶりの復帰作が珍作日本映画『北京原人 Who are you?』というのも見る目がないというかなんというか。2001年に引退し、現在はカナダ在住とのこと。

ロレッタ・リー
 日本では「香港の薬師丸ひろ子」というキャッチコピーを付けられたアイドル女優。『最後勝利』という映画での演技が絶賛されたと紹介されてましたが、作品自体が日本に来るのは結構遅く、僕の初見は『孔雀王 アシュラ伝説』。他に『上海1920 あの日みた夢のために』も観ました。確かにめちゃくちゃ可愛かったですね。しかし1993年、香港でV級映画(18禁映画)の規制が緩和されたことを受けて、なぜか突如ソフトポルノ映画に次々と出演。『ロレッタ・リーのハード・ロリータ 禁断の果実』『マダム・ロリータ 爛熟の果実』『ファイナル・ロリータ 完熟の蜜蜂』『ロリータ3人娘のぞき大作戦 ピーピング・キャッツ』『ロレッタ・リー×スー・チーin SEX&禅(スー・チーのSEX&禅)』といった作品群で、日本でもビデオスルーされ、同時にヘアヌード写真集も出版。僕も結局はすべて観て、写真集も買ってしまいました。その後は結婚・出産などもあって休業と復帰を繰り返しつつ、今でも一応現役らしい。と思ったら、なぜか今頃になって週刊ポストで昔のヘアヌード写真集のカットが復刻袋とじになってる(笑)。



#1816 
バラージ 2021/03/16 22:14
80年代の洋画アイドル女優たち

 80年代の映画とか女優の話をしてるうちにふと懐かしく思い出してしまったんで、80年代に人気だった洋画のアイドル女優たちの思い出について列挙しちゃおうかな。

ブルック・シールズ
 70年代に『プリティ・ベビー』で美少女スターとなり、80年代になると『青い珊瑚礁』でロリータヌードを披露して人気爆発。続く『エンドレス・ラブ』もヒットした……らしいんだけど、個人的には世代じゃないせいもあって、どれもタイトルとなんとなくのストーリーしかわかりません。僕が唯一観たのは『ブレンダ・スター』(88年)。アメコミの映画化で、大学時代にテレビでなんとなく観た記憶。その頃すでに鳴かず飛ばずで過去の人という印象でしたが、テレビドラマに舞台を移して今でもそれなりに活躍してるらしい。個人的には後にテニスのアガシと結婚して離婚した人という印象のほうが強いですね。

フィービー・ケイツ
 80年代前半に『パラダイス』『初体験 リッジモント・ハイ』『プライベイト・スクール』で美しいヌードを見せて世界的アイドルになった女優さん。『プライベイト〜』のテレビCMは観た記憶があります。あとはカップヌードルのCMとか、英語教材イングリッシュ・アドベンチャーの広告にオーソン・ウェルズと並んで載ってたのとか見ましたね。中国系の血も入ってるとのことで、ちょっとだけオリエンタルな雰囲気があります。最初に観た映画は多分大学時代にビデオで観た『天使とデート』(88年)で、恋敵役を怪演してましたが、あんまり面白くなかった。次いでやはりビデオで観た、僕の映画ベスト5に入る『再会の街 ブライトライツ・ビッグシティ』(88年)では主人公を捨てる妻役を好演してました。『グレムリン』2作(84年・90年)はテレビでチラッと観たくらい。90年代に結婚・出産してからは育児を優先して、ほぼ引退状態になってしまいました。『初体験〜』『パラダイス』や『恋愛の法則』(94年)は数年前に初めて観たことを確かここにも書いたはず。

ダイアン・レイン
 70年代に『リトル・ロマンス』でデビューし、美少女スターとして大人気に。80年代に入るとコッポラの『アウトサイダー』『ランブルフィッシュ』『コットンクラブ』やウォルター・ヒルの『ストリート・オブ・ファイヤー』で日本ではトップアイドル女優になりますが、実は本国ではいずれもヒットしなかったらしくキャリアは低迷期に。『愛は危険な香り』『ビッグタウン』『愛にふるえて』などでヌードになり、大人の女優に脱皮しようとするも空振りに終わります。しかしその後も地道に女優を続け、『運命の女』(02年)で大復活。現在も第一線で活躍中ですね。僕が最初に名前を知ったのは多分『コットン〜』ですが、観てはいません。最初に観たのは大学時代の珍作日本映画『落陽』(92年)ですが、それ以前にカメリアダイヤモンドとかのCMで見まくってた印象。『チャーリー』(92年)、『ジャッジ・ドレッド』(95年)、『オーバー・ザ・ムーン』(99年)、『陽だまりのグラウンド』(01年)、『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(15年)といったあたりを映画館やビデオ・DVDで観ております。『リトル〜』『ストリート〜』もビデオ・DVDで観ました。『アウトサイダー』は大学時代にテレビでチラッと観た記憶。

ソフィー・マルソー
 デビュー作『ラ・ブーム』で一躍世界的アイドルになったフランスの女優。これはリアルタイムでタイトルと彼女を知ったような記憶があります。米国ではなくフランスってのが珍しくて印象的だったんじゃないかなぁ。あと、この人もCMとか多分出てたはず。最初に観た出演映画は大学時代の『狂気の愛』(85年)で、他に『スチューデント』(88年)も観ましたが、あとは観たのはハリウッド映画の『ブレイブハート』(95年)ぐらいかな。清純派だったのは2作目の『ラ・ブーム2』までで、あとは芸術映画・娯楽映画・前衛映画を問わず、地元フランスではほとんどの映画で脱ぎまくってます。ヨーロッパの女優は脱ぐことに抵抗がないのかもしれないけど、本当にほとんど例外なく全ての映画でヌードになってるんだよなあ。今や大女優ですね。

リー・トンプソン
 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でブレイクしてアイドル的人気を博した女優。個人的ベスト5映画『恋しくて』ではサブヒロインを好演。とはいえ他に観たのは『バック・トゥ〜』の2・3(89・90年)ぐらいかな。1作目はテレビと高校の上映会で、2・3は大学時代に観ました。『恋しくて』のハワード・ドイッチ監督と結婚。今でもテレビなどで女優業を継続中のようです。

ジェニファー・コネリー
 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』でデビューし、『フェノミナ』『ラビリンス 魔王の迷宮』で人気アイドルとなった女優。この人も日本のCMに出てたなあ。80年代末頃から低迷し、やはりヌードになって大人の女優への脱皮を図るも不発。しかし『ビューティフル・マインド』(01年)で復活し、現在も活躍中です。僕は『ラビリンス』をテレビでチラッと観た他は『愛の奴隷』(94年)、『狼たちの街』(96年)を観たくらいかな。

モリー・リングウォルド
 学園映画の旗手ジョン・ヒューズ映画のミューズとして『すてきな片想い』『ブレックファスト・クラブ』『プリティ・イン・ピンク 恋人たちの街角』で人気スターとなり、米国少女たちのアイコンとなった女優。彼女のファンを“リングレッツ”と言ったらしい。僕は高校生当時は顔立ちが今一つ好きではなかったんですが、『ブレックファスト〜』は90年代あたりに、他2作は数年前に観ました。やはり低迷した90年代にはヌードになってましたね。現在もテレビなどで女優として活動中。

シンシア・ギブ
 大学時代に「ロードショー」を読み始めて、少し前の時代に日本でアイドル的人気があったと知った女優。確かに美人で可愛いけど、特段ヒット作もないのになんでそんなに人気だったのかよくわからないなあ。ある程度ウケたのって『栄光のエンブレム』『ショート・サーキット2 がんばれ!ジョニー5』くらいなんじゃないでしょうか。僕が唯一観たのはオリバー・ストーンの『サルバドル 遥かなる日々』(86年)での脇役だけ。確か大学時代にビデオででした。現在もテレビなどで女優として活動中のようです。

メアリー・スチュアート・マスターソン
 『恋しくて』で人気となった、わが青春のアイドル、ショートカットの女神。とはいえロングヘアの時期も実際には結構あります。以後、僕は高校時代にビデオスルーの初主演映画『マイ・リトル・ガール きらめきの夏』(86年)、大学時代に『ワン・モア・タイム』(89年)、『フライド・グリーン・トマト』(91年)、卒業後は『蒼い月』(91年)、『妹の恋人』(93年)、『バッド・ガールズ』(94年)、『マンハッタン花物語』(95年)、『ヘブンズ・プリズナー』(96年)、『ウィズ・ユー』(97年)、『ポストマン』(97年)を観てますが、最近はやはり日本公開作が少ないですね。脇役やテレビドラマで女優を続けるとともに、監督業に挑戦したりもしているようです。つい先日公開された『ダニエル』という映画(地元には来てない)で主人公の母親役で久々に映画出演してたらしく、SNSでちょっとだけ話題になってたみたい。

エマニュエル・ベアール
 ハリウッド映画『天使とデート』(88年)で人気となったフランス女優。フランス女優らしく『美しき諍い女』(91年)をはじめとした多くの映画でヌードになってます。しかし僕が観たのは『天使〜』『ミッション・インポッシブル』(96年)というヌードになってないハリウッド映画のみ。現在も第一線で活躍中。

アリッサ・ミラノ
 「ロードショー」を読み始めた大学時代に読者人気投票で1位だったアイドル女優。いったいこの子何に出てたんだ?と思ったら、『コマンドー』でシュワちゃんの娘役やってたらしい。でもそれだけでそこまで人気になるってのがよくわかんないなあ。90年代半ばには人気は失速し、エロティック映画でヌードになったりしてましたが、テレビドラマで人気を取り戻し、今でもそこそこの活躍をしているようです。僕は観た出演映画はないなあ。


>またまた再見映画
 昔の映画のビデオを引っ張り出して再観賞。今回は『再会の街 ブライトライツ・ビッグシティ』。もう何回観てるんだってくらい観てるんですが、また観てしまいました。原作はジェイ・マキナニーが1984年に発表して大ベストセラーになった小説『ブライト・ライツ、ビッグ・シティ』。そっちももちろん買って読みました。監督はジェームズ・ブリッジス。
 最初に観たのは確か大学3年か4年の時。なんでビデオを借りたのか、もう今となっては覚えていませんが、とにかくその時の僕の中の何かと強く共振したんでしょうね。ハマりにハマりまくって何度も何度もレンタルして観たし、卒業後は低価格再発売ビデオを買い、これまた何度も繰り返し観ました。ビデオデッキが壊れてBlu-ray&DVDプレーヤーに買い換えてからはしばらく観てなかったんですが、再生専用ビデオデッキを買ってからはまた時々観るようになりました。そんなこんなで今までに30回以上は観てるんではないかなあ。もうあまりに何度も観すぎて、台詞とかも結構覚えてしまってます。観直すたびに、ああ、ここ字幕はこうだけどオリジナルの台詞ではこう言ってたっけ、とかなっちゃいます。あと、この映画でコカインというものの摂取方法を初めて知りました。粉末をストローで鼻から吸い上げるっていう。もちろんやったことはないけど(笑)。
 主演のマイケル・J・フォックスもいいですねえ。個人的には彼のベスト・アクトだと思います。僕にとってのマイケル・Jは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でも『ティーン・ウルフ』でもなく、この『ブライトライツ・ビッグシティ』なのです。悪友役のキーファー・サザーランドもハマってた。この頃はこういう曲者役ばっかりやってるバイプレーヤーでした。主人公を取り巻くフィービー・ケイツ、スージー・カーツ、トレーシー・ポランの女性陣も三者三様にいい(フォックスとポランはこの後結婚)。ショートカットになった黒髪フィービーは、本質的には知的な人なんだろうな。この映画や『恋愛の法則』を観てるとよくわかります。
 しかし改めて観ると、この映画は間違いなく80年代という時代の社会や風俗や風景の、1つの記録になっているように思います。今となってはある種の時代の一断面、歴史の証言とでも言うべき映画になっている。今回また観ても、やはりあの頃と変わらずに良かったですね。やはり僕の中にはこの映画と強く共鳴する部分があるようです。世間での評判は芳しくなかったようだし、マキナニーもフォックスも失敗作と見なしてるようですが、意外とこの映画のファンは多く、日本ではなぜかDVD化されてない(米国本国ではDVD化されてる)んですが、DVD化してほしいという声は結構あるのです。
 原作者のマキナニーは当時ブレット・イーストン・エリス(『レス・ザン・ゼロ』)などとともにNew Lost Generation(あらかじめ失われた世代)と呼ばれたとのこと。以後、マキナニーの小説を『ランサム』『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』『空から光が降りてくる』『モデル・ビヘイヴィア』と邦訳されたものは全部読んだし、彼が脚本を書いたTVムービー『ジア』も観ました。エリスの小説も『レス・ザン・ゼロ』『ルールズ・オブ・アトラクション』『アメリカン・サイコ』『インフォーマーズ』『帝国のベッドルーム』と邦訳されたものは全部読んでるし、映画化作品も全部観たし、脚本のみを担当した映画『ザ・ハリウッド』も観ています。彼らの作品には間違いなく時代の空気というものが宿っている。そう思いますね。



#1815 
バラージ 2021/03/02 23:47
懐かしの映画たち

 映画館でやってる映画に観たいものが無く、2月は映画館に行かないまま終わってしまいました。DVDや録画した映画も、なんだか最近のものより昔の映画が観たくなり(そういうことが時々──年に1回ぐらいあります)、お初映画も再見映画も懐かし映画ばかり観ております。
 ちなみにテレビドラマのほうで今観てるのは『監察医 朝顔』『その女、ジルバ』『俺の家の話』。

>お初映画
『鬼龍院花子の生涯』
 夏目雅子の出演映画は『時代屋の女房』や『瀬戸内少年野球団』は観てるんですが、この映画はずっと気になりつつも観ないできました。というのも五社英雄監督の映画って、なんか苦手そうで敬遠してたんですよね。去年WOWOWで放送されたのを録画したんですが、なんとなく気が乗らず今になってしまいました。観て驚いたんですが、夏目雅子が鬼龍院花子役じゃありません。仲代達矢演じる侠客の鬼政こと鬼龍院政五郎の娘が花子ですが、夏目雅子は政五郎の養女の松恵という役。しかも最初の1時間くらいは子役なので夏目は準主役に近く、タイトルの花子も完全に脇役で、鬼政が実質的な主役というタイトル詐欺みたいな映画でした。基本的には一種のヤクザ映画なんですが、夏目雅子が出てくると爽やかな風が吹いたように違う映画みたいになっちゃうのがすごい。ただ、やっぱり僕は五社映画もヤクザ映画もちょっと苦手。つまらなくはないんですけどね。ちなみに松恵の子供時代は子役の頃の仙道敦子。子役時代を初めて見ました。そして花子役の女優は全然知らない人で、出演したのはこれ1作のみみたい。夏目さんの「なめたらいかんぜよ!」という名台詞はほとんど最後のほうに出てくるんですが、原作にはない台詞だそうです。

『E.T.』
 説明不要の歴史的SFファンタジー映画ですが、僕はいまいち興味がわかず、今まで観てきませんでした。去年BSで放送してたんで、1回は観といたほうがいいかなあと思って録画したんですが、結局ずるずると先延ばしにして、これも今になってしまいました。まあまあ面白いことは面白かったんですが、僕はやっぱりこういう子供が主人公の映画はちょっと苦手かなあ。自分が子供の時、せめて10代のうちに観たなら、また違った感じ方だったんでしょうが、今観ると、あのマウンテンバイク運転してるの絶対スタントマンていうかプロのライダーだよね、とかイヤな大人の見方ばかりしてしまいます(笑)。やっぱりこういう映画は観とくべき年齢のうちに観とかないとダメですね。ただ映画全体に漂う80年代の雰囲気はなんとも懐かしかったです。

>再見&お初映画
『フライングハイ』
『フライングハイ2 危険がいっぱい月への旅』
 1作目は1980年の米国のコメディ映画。コメディ映画というよりもギャグ映画と言ったほうが近いですね。子供の頃にテレビの吹替版で観て、腹抱えて笑ったお気に入りの1本なんですが、実はそれ以来観ていませんでした。続編共々WOWOWで放送されたんで、久しぶりに観てみた次第。字幕版で観たのは初めてです。航空パニック映画のパロディが基本形で、子供の頃のように腹抱えて笑ったりはしなかったんですが、やっぱり面白かった。とにかくくっだらないギャグの連続で、いい意味で「くだらねー(笑)」と笑ってしまいました。ギャグとか内容も結構記憶にある通りで、覚えてるもんですね。ただ一部の下ネタとか、本物のカリーム・アブドゥル・ジャバー(NBAの歴代最高得点王。『死亡遊戯』でブルース・リーと戦ったでかい黒人)が絡むギャグのくだりなんかは、子供の頃はよくわからなかっただろうから全然記憶にありません。パロディやアメリカンジョークもわからないところがありますが、まあこれは仕方ない。ともかく面白かったです。
 2作目はたぶん今回初めて観ました。1982年の映画で日本公開は翌1983年だそうです。今度はSF映画のパロディで、前作より下ネタ多め。こっちも面白いことは面白いんですが、さすがに1作目よりは落ちるかな。監督と脚本家が変わったからかも。1作目の監督&脚本家は後に『裸の銃(ガン)を持つ男』や『ホットショット』を手掛けるのでした。

>再見映画
『恋しくて』
 ジョン・ヒューズ製作・脚本、ハワード・ドイッチ監督、エリック・ストルツ、メアリー・スチュアート・マスターソン、リー・トンプソン主演の青春恋愛映画。最初は高校時代にビデオで観て、ハマって何度も観た後、映画館でリバイバル上映されたんで観に行きました(『トップガン』との二本立て)。それ以来、低価格再発売ビデオを買い、DVDに買い換え、何年かに1度は繰り返し観てしまうお気に入りの1本で、またもDVDを引っ張り出して再見しました。今回ももちろん面白かったんですが、改めてその出来には感心してしまいましたね。ストーリー展開も人物配置も絶妙で、余計な人物が1人も出てこないし、逆に足りない人物もいない。1つ1つのエピソードが過不足なく描かれていて、ここはいらないな、と感じるところがほとんどありませんでした。
 台詞もウィットに富んでるし、映像にもセンスが溢れていて、特にラストからエンディングにかけては、台詞・映像・音楽、全てが完璧。最後にストルツ演じるキースがマスターソン演じるワッツに言う台詞、「僕の未来がよく似合う」は何度聞いても最高の名台詞。エンディングに流れる「Can't Help Falling In Love With You(エルヴィス・プレスリー『好きにならずにいられない』のカヴァー。大幅にアレンジしてるので言われないと気づかない)」も素晴らしい。
 この映画は青春恋愛映画のちょっとした古典として歴史に残るでしょう。いや、米国ではすでに青春恋愛映画の古典の1つになっているようです。

『紅いコーリャン』
 これまた昔の映画のDVDを引っ張り出して再観賞。これも思い出深い映画ですね。観たのは大学入試が終わった後、大学に入学する前の時期でした。ハリウッド映画とも香港映画とも日本映画とも違う、寓話的な語り口と、赤を基調とした鮮烈な色彩感覚、原初的な音楽の数々にとにかく圧倒されました。理屈抜きの凄まじいパワーを持った作品でしたね。
 その時は映画そのものの力に圧倒されて、映画の構成要素の一部という記憶だった主演のコン・リー。今になって改めて観ると、やはり彼女の存在感はこのデビュー作から出色です。1920〜30年代の田舎の造酒屋の女性を演じてるからか、今となっては珍しく日焼けしてるのも眩しい。芸術学校の学生たちからこの輝きを見出だした、これまた監督デビュー作のチャン・イーモウの目はやはり確かだったのです。以後、90年代前半の2人は公私ともに二人三脚となって(2人が後に不倫関係となったのは当時から有名だった)、中国映画を世界へと押し上げていきます。それをリアルタイムで目撃できたのは、僕にとっても幸運で幸福な出来事でした。しかしまあ、コン・リーばかりでなく相手役のチアン・ウェンも今観ると若いな〜。今やすっかり恰幅のよくなったチアン・ウェンも、この頃はまだまだ細かった(笑)。



#1814 
バラージ 2021/01/31 20:24
中華圏映画&ドラマいろいろ

>映画館で観た映画
『私たちの青春、台湾』
 台湾の若い女性ドキュメンタリー監督の傅楡(フー・ユー)が2011年に出会った学生運動のリーダー・陳為廷(チェン・ウェイティン)と、台湾の運動に共感を寄せる中国人留学生の人気ブロガー女性・蔡博芸(ツァイ・ボーイー)を通して、台湾・中国・香港の市民運動の共闘はできるかというテーマで2016年まで撮影されたドキュメンタリー映画。
 映画も2人の歩みも、2012年の反メディア闘争(中国資本による台湾メディア買収への反対運動)から2014年のひまわり運動(中国とのサービス貿易協定への反対運動)まではすべてが順調でした。傅楡監督も、社会運動が世界を変えることができるのではないかと期待に胸を膨らませます。その一方で、輝かしい成功に終わったかに見えたひまわり運動の内部では、陳為廷を含む一部指導者たちが密室会議で運動の方針を決め、それに外部からの参加者が不満の声を挙げる事態が起きていました。陳為廷も、政府の不透明性を批判してきたのに、これでは自分たちも政府と同じだと自嘲します。また、運動が盛り上がるにつれて「自分たちは台湾人だ」という台湾ナショナリズムが勃興し、それは運動の大きなエネルギー源になるのですが、中国の全否定にまで過激化していくと中国人留学生の蔡博芸は複雑な表情を見せるようになります。
 そして、ひまわり運動の指導者の1人としてスターとなった陳為廷は国会議員に立候補しますが、過去に複数の痴漢事件を起こしていたことが発覚し、選挙からの撤退を表明。一方、留学している大学の学生会長選挙に出馬した蔡博芸も、 反中的世論の中で中国籍を理由にルールを不当に改正され、正当な選挙をできないまま敗北します。2人に期待していた傅楡監督も失意に沈み、未完成のまま映画は放り出されることに。
 そして3年後、2人を呼んで未完成の映画を観てもらい、監督が2人と話した末にたどり着いた思いとは─。
 これは傅楡監督自身も言っている通り、“政治の映画”というよりも“青春の映画”です。陳為廷と蔡博芸、そして監督の傅楡という3人の若者の青春の映画なんですよね。これが、ひまわり運動の成功をもって幕を閉じる社会運動の映画だったとしたらあまり面白くなかったかもしれません。彼らの熱情と挫折を描いた青春ドキュメンタリー映画だからこそ優れた映画になったんでしょう。なかなか良い映画でした。

『薬の神じゃない!』
 こちらは中国で大ヒットした社会派エンターテイメント映画。
 上海で男性用強壮剤を販売している薬屋の男が主人公。薬はさっぱり売れず、家賃も払えない。離婚した妻は子供や再婚した夫と海外移住しようとしているし、父親の手術のために高額の費用もかかる。ある日、慢性骨髄性白血病の男が店に来て、国内で認可されている治療薬は高額なのでインドから同じ成分の安いジェネリック薬を密輸してほしいと依頼してくる。危ない橋と1度は断るが、金が必要な主人公は結局密輸を請け負い、大量に売りさばくために依頼人の他に、娘が白血病で患者が集まるネットコミュニティの管理人をしている女性、教会に集う患者に胸を痛める英語のできる牧師、田舎から出てきて貧困な生活を送る不良少年を仲間に引き入れ、事業は拡大の一途をたどる。金を儲け、患者たちからは感謝され、成功に酔う彼らだったが、ニセ薬を売っていた詐欺師と関わったことから刑事である元妻の弟ら警察にマークされ、主人公は皆の反対を押しきって足を洗う。だが1年後、偶然仲間と再会したことから患者たちの窮状を知った主人公は、再び危険を犯し、費用の持ち出しをしてまでも薬の密輸・密売を再開する。果たして主人公たちの運命は?
 いやあ、面白かった。陸勇という白血病患者がインドから安価なジェネリック薬を密輸し、他の患者たちにも配った「陸勇事件」という実話がモデルらしいんですが、いろいろと話を作り替えてコミカルな風味も加え、見事なエンターテイメント映画に仕立てあげています。笑って泣ける映画で、特に終盤のシーンは感動もの。本国で大ヒットし、日本でも評価が高いのもうなずける出来でした。
 高価すぎて多くの患者が治療薬に手が出せないという中国の社会問題に鋭く切り込んでいるのも偉い。中国じゃそういう社会批判を描くのにリスクもあったでしょうが、ぎりぎりまで攻めていたと思います。しかもこの映画と元ネタの事件そのものが現実にも影響を与え、中国の医療改革が進んだというからすごい。白血病患者は感染症を非常に恐れるため全員がマスクをしているという描写も、今観るとやたらタイムリーなものになっていて、シンクロニシティ(共時性)を感じさせましたね(中国では2018年公開だが日本では去年公開)。
 俳優陣も皆好演ですが、特に主演兼製作のシュー・ジェンが良い。なんといってもムロツヨシにそっくり(笑)。顔だけでなく声や演技も似てるんですよね。他の俳優も1人1人キャラが立っていて皆良かったし、悪役に見えた登場人物も一片の良心を見せてくれるところも良かった。おすすめです。

>録画で観た映画
『プロジェクト・グーテンベルク 贋札王』
 チョウ・ユンファとアーロン・クォック主演の香港の犯罪映画。紙幣偽造組織の技術者(アーロン)が香港警察に逮捕される。警察は組織のリーダー“画家”(ユンファ)の情報を吐かせようと技術者を訊問。技術者は画家の報復に怯えながら、贋札作家に堕した自らの半生を語り出す……というストーリー。技術者の回想で物語が進むんですが、後半になって技術者の供述につじつまの合わない矛盾が出てきたように感じてたら、最後に種明かしがあって「あー、やっぱりな。そういうことだったか」となりました。前半の贋札作りはリアルで面白いものの、中盤の東南アジアでの取引先の反政府軍とのドンパチがちょっと荒唐無稽で残念。たかが5〜6人で100人近い私設軍隊を一方的に全滅させるってあり得ないよなあ。アクションとしては面白いんだけど、贋札作りがリアリティがあっただけにいきなり荒唐無稽になっちゃったように感じましたね。まあ全体的には面白かったけど。贋札作家の元恋人の女性画家役のチャン・ジンチューも相変わらず美しかったし、女性刑事役のキャサリン・チャウや、贋札作家に助けられた女性役のジョイス・フォンも良かったです。

>最近観たテレビドラマ
『悪との距離』
 台湾の連続ドラマで、原題を直訳すると「私たちと悪の距離」。地元ローカル局で日曜深夜に台湾ドラマ放送枠があり、いつもは恋愛ものばかりやってるんですが、たまたま第1話の放送前にタイトルを見て直感的に面白そうと思って観てみたら大当たりでした。
 無差別殺人事件の加害者の家族、被害者遺族、報道機関、弁護士、精神科医、統合失調症患者とその家族といった人々を描いた群像劇で、ヘビーでハードでシリアスな社会派ドラマでした。とにかく重くて難しい題材を、奇をてらわず真正面から真摯に描いていて、誰も悪い人はいないのに全員が苦しまなくてはならないという簡単には答の出ない悲劇に、毎週目が釘付けでした。いやあ、いいドラマだった。
 ドラマ展開も最後にどうなるか読めず、バッドエンドになるんじゃないかとちょっとハラハラしたんですが、みんなが前向きになれるようなラストで良かったです。俳優たちもみんな素晴らしかった。



#1813 
バラージ 2021/01/04 00:27
あけましておめでとうございます

 お正月から何なんですが、去年亡くなった方の追悼書き込みなんぞを。

 まず三浦春馬さん。僕が見た出演映画は『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』『真夜中の五分前』『進撃の巨人』二部作、『コンフィデンスマンJP ロマンス編』、テレビドラマは遺作となった『太陽の子』『おカネの切れ目が恋のはじまり』といったあたり。以前も書きましたが、行定勲監督の日中合作映画『真夜中の五分前』が特に良かったですね。大河ドラマ『武蔵 MUSASHI』『功名が辻』『おんな城主 直虎』にも出演してるそうですが、僕が覚えてるのは『直虎』のみ。歴史映像名画座収録作品では映画『千年の恋 ひかる源氏物語』に出演してるようで、現在公開中のこれまた遺作の歴史映画『天外者』にも五代友厚役で主演しています。

 続いて芦名星さん。僕が見た出演映画は『ジャンプ』『カムイ外伝』、テレビドラマは『信長のシェフ』(パート2まで)、『クロコーチ』『相棒』シリーズ、『神の手』『テセウスの船』といったあたり。歴史映像名画座収録作品では大河ドラマ『八重の桜』にも出演してるとのこと。歴史映画では『源氏物語 千年の謎』にも出演しているようです。

 最後に竹内結子さん。僕が見た出演映画は『いま、会いにゆきます』『ショコラの見た世界』『FLOWERS フラワーズ』『殿、利息でござる!』『コンフィデンスマンJP ロマンス編』、テレビドラマは出世作となった朝ドラ『あすか』、大河ドラマ『真田丸』、配信ドラマは先日書いた『ミス・シャーロック』。特に良かったのは『ショコラの見た世界』『FLOWERS フラワーズ』『ミス・シャーロック』あたりで、朝ドラ『あすか』、大河ドラマ『真田丸』も良かった。歴史映画では『決算! 忠臣蔵』にも出演しているとのこと。

 新年から暗い話題になっちゃいましたが、去年のうちに書いとくべきだったかな。
 ともかく、こちらでも今年もよろしくお願いします。



#1812 
バラージ 2020/12/30 20:01
ハハハ

 こっちでも文字化け。
 『クーリンチェ少年殺人事件』の一文字目は「[牛古](牛偏に古)」です。



#1811 
バラージ 2020/12/30 19:55
ジャンル別おすすめ映画総まとめD

 ジャンル別おすすめ映画総まとめ、最後は社会派・ヒューマン編。今までで最も多くなっちゃってますが、分類にない青春映画や恋愛映画もここに入れちゃってるためです。個人的に最も好きなジャンルが青春映画なもんで。ま、なんでもヒューマンドラマに入れちゃおうと思えば入れちゃえますよね(笑)。

『勝手にしやがれ』……#1720
『裁きは終りぬ』……#1729
『十二人の怒れる男』……#1537
『野望の系列』……#1537
『白い巨塔』……#1537
『アメリカン・グラフィティ』……#1510
『リトル・モー』……歴史板#9602、#11012

『マタギ』
 3メートルを越える巨熊との再会をひたすら求める老マタギと、老マタギのもとでチビ犬を見事なマタギ犬に育てあげた孫との交流を描いたヒューマンドラマ映画。子供の頃にテレビで観て感動した記憶があります。老マタギ役の西村晃が名演。2代目水戸黄門をやるよりも前だったかな。

『炎のランナー』……#1210、歴史板#9602、10189
『初体験 リッジモント・ハイ』……#1678
『恋しくて』……#1452
『サルバドル 遥かなる日々』……#1221、歴史板#9703、#11017
『BU・SU』……#1545
『再会の街 ブライトライツ・ビッグシティ』……#1449
『紅いコーリャン』……#1540
『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』……#1716
『恋恋風塵』……#1716
『ニュー・シネマ・パラダイス』……#1540
『悲情城市』……#1202
『東京上空いらっしゃいませ』……#1545
『つぐみ』……#1434
『霧の中の風景』……#1716
『モ’・ベター・ブルース』……#1540
『真実の瞬間(とき)』……#1219、歴史板#11012
『ザ・コミットメンツ』……#1545
『紅夢』……#1716
『フライド・グリーン・トマト』……#1540
『欲望の翼』……#1439
『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』……歴史板#10573
『エドワード・ヤンの恋愛時代』……#1722
『きっと忘れない』……#1545
『恋愛の法則』……#1713
『バック・ビート』……歴史板#9629、#9874、#11003
『愛の奴隷』……#1221、歴史板#9703、#11017
『ナチュラル・ボーン・キラーズ』……#1537
『(ハル)』……#1510
『トキワ荘の青春』……#1729
『上海ルージュ』……#1722
『イングリッシュ・ペイシェント』……#1722
『いさなのうみ』……#1722
『ラヴソング』……#1722
『花様年華』……#1727
『八月のクリスマス』……#1510
『スイート・ムーンライト』……#1510
『藍色夏恋』……#1510
『ジョゼと虎と魚たち』……#1510
『トニー滝谷』……#1602
『恋の風景』……#1510
『さよならみどりちゃん』……#1728
『エリザベスタウン』……#1545
『ウィンター・ソング』……#1732
『あしたの私のつくり方』……#1545
『新宿インシデント』……#1680
『ノルウェイの森』……#1274
『森崎書店の日々』……#1274
『桐島、部活やめるってよ』……#1351
『台北カフェ・ストーリー』……#1365
『つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語』……#1379
『オン・ザ・ロード』……#1447
『インフォーマーズ セックスと偽りの日々』……#1455
『GF*BF』……#1544、歴史板#9881
『顔のないヒトラーたち』……歴史板#10030
『夏美のホタル』……#1640
『否定と肯定』……歴史板#10700
『彼女の人生は間違いじゃない』……#1695
『MIRACLE デビクロくんの恋と魔法』……#1695
『タクシー運転手 約束は海を越えて』……歴史板#10948
『猫は抱くもの』……#1717
『軍中楽園』……歴史板#10779
『1987、ある闘いの真実』……歴史板#10948
『フロントランナー』……歴史板#10875
『記者たち 衝撃と畏怖の真実』……歴史板#10886
『ブラック・クランズマン』……歴史板#10898
『旅のおわり世界のはじまり』……#1753
『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』……歴史板#10948

 歴史板の過去ログ化がされたということで、以前紹介した映画の修正版も再記述。

活劇アクション編
『さらば復讐の狼たちよ』……#1351、歴史板#10967
推理・サスペンス編
『パープル・バタフライ』……歴史板#10967
歴史・時代劇編
『真田風雲録』……歴史板#10443、#10902
『ロアン・リンユィ 阮玲玉』……#1201、歴史板#9665、#10967
『ラスト・ハーレム』……歴史板#10843
『LOVERS』……#1728、歴史板#10965
『丘を越えて』……歴史板#9525、#10907
『三国志英傑伝 関羽』……歴史板#9250、#10960
『神弓 KAMIYUMI』……歴史板#9434、#10981
『項羽と劉邦 鴻門の会』……歴史板#9654、#10960
『黒衣の刺客』……#1613、歴史板#10130、#10965
『金子文子と朴烈』……歴史板#10920
戦争編
『地雷を踏んだらサヨウナラ』……#1259、歴史板#10950
『南京!南京!』……歴史板#9625、#10967
『ジョン・ラーベ 南京のシンドラー』……歴史板#9974
ドキュメンタリー編
『SAWADA 青森からベトナムへ ピュリッツァー賞カメラマン沢田教一の生と死』……歴史板#9665、#10950
『主戦場』……歴史板#10913


>今観てるテレビドラマ
 地元のテレビ局で毎週日曜深夜に台湾ドラマを放送してるんですが、いっつも恋愛ドラマばっかり放送してて、あんまり観てませんでした。ところが今放送してる『悪との距離』というドラマは非常にシリアスな社会派ドラマでなかなか面白い。毎週楽しみに観ております。

 さて、今年も1年お世話になりました。今年の映画ベスト3は『殺さない彼と死なない彼女』『はちどり』、3位が同率で『スパイの妻<劇場版>』と『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』でした。1日早いですが、それではまた来年。



#1810 
バラージ 2020/12/14 22:47
現代に生きる女性の生きづらさ

 『82年生まれ、キム・ジヨン』を観ました。韓国で大ベストセラーになった小説の映画化です。原作は日本でもかなり売れているらしいですね。
 主人公の専業主婦キム・ジヨンは最近、母や亡くなった先輩や母方の祖母などが憑依したようになって別人のようになる。本人はその間の記憶がなく、不思議に思いながらもそのことには気づいていない。夫はそれを妻にどう伝えればいいかわからず何も言えないでいる。そこからジヨンが抱える現代女性としての生きづらさが、彼女の何気ない日常や子供時代から少女時代、就職、会社員時代などの過去を通して描かれていきます。
 面白かったです。この物語は主人公の旦那がいい人ってところがミソ。家事もすすんでやるし、妻の再就職を後押ししたりもする。妻の憑依も自分のせいじゃないかと深く悩むし、明らかに標準よりずっと理解力のある良き夫です。もし夫に問題ありだったら、その夫を糾弾することで問題が解決することになってしまいますが、そうでないからこそ社会システムや男性優位文化のほうに目が行く仕掛けになってるんですね。
 あえて難点を言えば、主演のチョン・ユミがちょっと美人すぎるかな。とても標準的な女性には見えません。まあ、そのあたりは仕方がないんだけど。個人的には主人公と姉と弟の3人姉弟のシーンがほっこりして良かったです。しかし今年は韓国映画の良作が多いなあ。やはり今は韓国映画の時代なのかもしれません。


>録画で観た映画
『いつのまにか、ここにいる Documentary of 乃木坂46』
 つまらなかった映画なんですが、ちょっと前に46&48ドキュメンタリー映画の感想をまとめて書いたんで、一応これの感想も。WOWOWで放送されてた乃木坂46ドキュメンタリー映画の2作目で、地元の映画館に来なかったのか、来たけどいまいち興味がなくて観逃したのか覚えてません。録画視聴もつまんなくて1回挫折したんですが、もう1回チャレンジしてようやく観終わりました。んー、やっぱりいまいち。なんというかテーマが絞りきれてなくて構成が散漫だし、ところどころ入るナレーション字幕が妙に青臭すぎるというか少女マンガみたいでどうにもこっぱずかしい。観てて、この感覚何なんだろうな〜とずっと考えてたんですが、これはプロモーションビデオですね。あの散漫さとこっぱずかしさはアイドルとかグラビアアイドルのプロモーションビデオそのものです。

>面白かったドラマの話
『ミス・シャーロック』
 竹内結子がシャーロック(に該当する役)、貫地谷しほりがワトソン(に該当する役)を演じた2018年のHuluの配信ドラマ。DVD化もされてて、以前から気になってたんですが、コロナで新作ドラマが軒並み休止になってた6月に日テレ金曜ロードショーで1・2話を放送。やっぱり面白かったんでDVDを借りて全話観ようと思ってたところに竹内さんの訃報が……。テレビ放送後しばらく借りられっぱなしで、竹内さんが亡くなった後またもしばらく借りられっぱなしだったため、なかなか視聴が進まなかったんですが、全8話のDVDをようやく観終わりました。いや〜、面白かった。その辺のテレビドラマなんかよりもよほどよく出来てます。予算的にも全く遜色なく安っぽいところは微塵も見られないし、脚本が非常によく出来てて、早く続きが観たくなるドラマでした。俳優も演技派ぞろいで、適役のハマり役ばかり。絶対続編も作れただろうに、本当にもったいない……。合掌。

>追悼キム・ギドク
 キム・ギドク監督もコロナで亡くなりましたね。今年公開された『人間の時間』が遺作になってしまったな。僕は『サマリア』ぐらいしか観ていませんが、ご冥福をお祈りします。



#1809 
バラージ 2020/12/05 23:56
ジャンル別おすすめ映画総まとめC

 ジャンル別おすすめ映画総まとめ、今回はコメディー編・ドキュメンタリー編・アニメ編をまとめて。
 まずはコメディ映画編。

『モダン・タイムス』……歴史板#9703
『チャップリンの独裁者』……歴史板#9629、#11003
『ピンクの豹』『暗闇でドッキリ』『ピンク・パンサー2』『ピンク・パンサー3』『ピンク・パンサー4』……#1535
『フライングハイ』……#1535
『ビッグ』……#1535。トム・ハンクス主演のコメディ映画は他にも、『マネー・ピット』『ドラグネット 正義一直線』『ターナー&フーチ すてきな相棒』なんかがおすすめ。『ターナー&フーチ』は刑事と警察犬のバディ・ムービーですが、同じネタのジェームズ・ベルーシ主演『K-9 友情に輝く星』もおすすめです。

『ペテン師とサギ師 だまされてリビエラ』
 コート・ダジュールを舞台に、マイケル・ケイン演じるベテラン詐欺師とスティーブ・マーティン演じる若い詐欺師の詐欺勝負を描いたコメディ映画。とても面白かったんですが、それと同じくらい記憶に残ってるのは、映画館の観客に外国人(米国人?)の一団がいて、アメリカンジョークのシーンでその外国人たちだけが大爆笑してたこと。こっちはアメリカンジョークであることは字幕からわかったものの、何が面白いのかは全く理解できず、カルチャーギャップというものを実感しました。

『奇蹟 ミラクル』……#1674。これまたジャッキー映画でアクションもあるんですが、人情喜劇『ポケット一杯の幸福』のリメイクってことでコメディ映画としてご紹介。
『卒業旅行 ニホンから来ました』……#1721
『毎日が夏休み』……#1535
『熱帯楽園倶楽部』……#1721
『キルスティン・ダンストの大統領に気をつけろ!』……#1220、歴史板#9703、#11013
『おっぱいバレー』……#1737
『ミッドナイト・イン・パリ』……歴史板#9165、#9684
『もらとりあむタマ子』……#1446
『リンキング・ラブ』……#1686


 お次はドキュメンタリー映画編。

『SAWADA 青森からベトナムへ ピュリッツァー賞カメラマン沢田教一の生と死』……歴史板#9665、#10901〜#11000のどこか
『フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白』……歴史板#9665、#11012
『ドアーズ/まぼろしの世界』……#1274、歴史板#9665、#11013
『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』……#1360、#1798
『DOCUMENTARY of AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見る?』……#1379、#1798
『悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46』……#1557
『シチズンフォー スノーデンの暴露』……歴史板#10739
『主戦場』……歴史板#10901〜#11000のどこか
『i 新聞記者ドキュメント』……#1762


 そしてアニメ映画編。といっても実はおすすめアニメ映画って少ないんですよね。物心ついた頃からテレビアニメは熱心に観てた僕ですが、アニメ映画となると……。テレビの総集編や再編集ならともかく、オリジナルのアニメ映画って昔は少なかったですし、映画を広く観るようになった大学生以降に観たものも富野由悠季・宮崎駿・高畑勲などの超メジャー級に限られ、すでに徒然草で紹介されちゃってます。そんな中、なんとかひねり出したおすすめアニメ映画は以下の通り。

『マジンガーZ対デビルマン』
 物心ついた頃にテレビ放送で観た作品。『マジンガーZ』も『デビルマン』もテレビで観てたので、それより後に観たのかな? なにしろ子供の頃なんで内容はほとんど覚えてないんですが、マジンガーZとデビルマンが協力して敵の機械獣(ロボット)&デーモン(悪魔)軍団と戦う話だったことは覚えていて、悪魔と戦うマジンガーや、ロボットと戦うデビルマンがなんかシュールに見えた記憶あり。とはいえ今で言うクロスオーバー作品としてわくわくしたし、画面サイズが映画仕様でテレビと違う感じだったのも面白かったですけどね。劇場用オリジナルアニメ映画の先駆けとなった作品だとか。

『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』……#1421
 ヤマトシリーズの劇場版第2作。これもテレビで観ました。ヤマトはテレビの第1シリーズをまず観て、本作、そのリメイクであるテレビ第2シリーズまで観たような記憶。劇場版第1作はテレビの総集編だったらしく、観たのか観てないのか記憶が曖昧です。テレビ第2シリーズも全部は観てないかも(最終回は観た)。その後のテレビスペシャル『新たなる旅立ち』、映画『ヤマトよ永遠に』、テレビ第3シリーズはちらっと観たような観てないような。映画『完結編』はテレビかビデオで観ました。この映画『さらば〜』は終盤で人々が次々に戦死していくのが強く印象に残ってるんですが、松本零士は最後のヤマト特攻が気に入らず、テレビ第2シリーズでは生き残る設定に変えちゃったんだとか。僕は最終回でがっかりした記憶があります。

『エースをねらえ!』
 テニスを題材とした少女スポーツ漫画の傑作のアニメ化ですが、僕は原作マンガのほうは読んでません。アニメは最初のアニメ化(のおそらく再放送)、2度目の『新・エースをねらえ!』、そしてこの映画版のテレビ放送と観ています。ずっと後の上戸彩主演の実写ドラマ版も観たな。この映画版はテレビ版の再編集や総集編ではなく、全く同じ話でありながら全て新規に製作されており、2度のテレビ版も含めて同じ話を3度観たんですが、そのたびに作風がちょっとずつ違っていて、しかもそれぞれに面白かった記憶。それまで観ていた子供アニメや少年アニメとは違った雰囲気の、繊細な心理描写や人物造形が子供心にすごく印象に残りました。

『ドラえもん のび太の恐竜』『ドラえもん のび太の宇宙開拓史』……#1543
 この2作は映画館で観ました。母親に連れてってもらったような記憶。ドラえもんの劇場用長編映画の第1作と第2作で、原作の長編マンガは『コロコロコミック』に掲載されてました。ちょうど『ドラえもん』が爆発的ブームになった頃で、僕が1番夢中になって『ドラえもん』を読んでいた時期でしたね。原作マンガのほうは第6作の『のび太の宇宙小戦争(リトル・スターウォーズ)』まで読んでたけど、アニメのほうは2作目までしか観ていません。1作目の『のび太の恐竜』がとにかくバカウケにウケてシリーズ化されたんだけど、僕は2作目の『のび太の宇宙開拓史』のほうが好き。もっと言うと『のび太の宇宙開拓史』の原作マンガのほうが好きだったりして(笑)。しかしここまで子供時代に観た映画ばっかりだなぁ。

『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』……#1261、#1424、#1543、#1700、#1744、#1747
 これも映画館で観た映画。ガンダムシリーズ初の劇場オリジナル映画です。テレビのガンダムシリーズは、最初の『ガンダム』(いわゆるファーストガンダム)は僕の地方では早朝の放送(通称「早起きアニメ」)、再放送も夕方でところどころしか観ておらず、再編集の劇場版3部作もテレビかビデオで順番バラバラに観たような記憶。次の『Zガンダム』はプラモデルから興味を持ち、ボードシミュレーションゲームや設定本や富野由悠季監督自身による小説でのめり込んでいきましたが、おそらく再び早朝にやっていたテレビ放送には気づかぬまま。気づいた時には『ガンダムΖΖ』の終盤で、面白く観終わった後、その熱量が冷めぬまま『逆襲のシャア』を観に行ったのでした。いやぁ、面白かった。個人的アニメ映画はこれがベスト1かな。本作だけ単独で観たらわかりにくいところがあるのも確かなんですが、なんというかもう全体的なパワーで圧倒されてしまいましたね。終盤は感動で胸が熱くなりました。


>最近観た映画
『アイヌモシリ』(「リ」は小文字)
 現代の北海道阿寒湖畔のアイヌコタンに住むアイヌ民族の男子中学生を主人公としたヒューマンドラマ映画。出演してるのが半分素人のような人たちで、その上あまりにも淡々とした作風なんですが、不思議とそれほど退屈はしませんでした。題材が興味深かったのと、1時間20分ちょいの短さなのが良かったのかも。出演者の役名もほとんどの人が本人と同じものですが、セミドキュメンタリーとかではなくあくまで劇映画で、ゲスト出演の三浦透子とリリー・フランキーだけがプロというか内地の俳優でした。現代のアイヌ少年を主人公としつつ、現代少年とアイヌ文化の距離感や、現代におけるアイヌ文化継承の課題や難しさを、劇的にしすぎない淡々とした作風で描いていて、なかなか面白かったです。イオマンテ(イヨマンテ)が物語の重要な要素となってるんですが、かなり忠実に再現されていたように思いましたね。そして主人公がビデオで観る昔のイオマンテの映像に、有名なアイヌの萱野茂さんが映ってました。



#1808 
バラージ 2020/11/24 01:09
ジャンル別おすすめ映画総まとめB

 ジャンル別おすすめ映画総まとめ、歴史・時代劇編です。徒然草未収録でも、歴史映像名画座に収録されている映画については省略しました。歴史板のほうでおすすめした名画座未収録映画ともかなりかぶりますが、第二次大戦後が舞台の映画については社会派映画の要素も強いんでそちらに回しています。

『真田風雲録』……歴史板#10443、#10901〜#11000のどこか
『死刑台のメロディ』……#1218、歴史板#9703、#11008
『ローザ・ルクセンブルク』……#1215、歴史板#9629、#11003
『愛と哀しみの旅路』……#1218、歴史板#9703、#11008
『ロアン・リンユィ 阮玲玉』……#1201、歴史板#9665、#10901〜#11000のどこか
『不滅の恋 ベートーヴェン』……#1215、歴史板#9629、#11003
『楽園の瑕』……#1417、1789
『クルーシブル』……#1218、歴史板#9602、#11008
『ラスト・ハーレム』……歴史板#10843、#10901〜#11000のどこか
『グリーン・デスティニー』……#1529、#1789
『あずみ』『あずみ2 Death or Love』……#1593
『LOVERS』……#1728、歴史板#10901〜#11000のどこか
『丘を越えて』……歴史板#9525、#10901〜#11000のどこか
『三国志英傑伝 関羽』……歴史板#9250、#10901〜#11000のどこか
『神弓 KAMIYUMI』……歴史板#9434、#10901〜#11000のどこか
『項羽と劉邦 鴻門の会』……歴史板#9654、#10901〜#11000のどこか
『ヒトラー暗殺、13分の誤算』……歴史板#10095
『黒衣の刺客』……#1613、歴史板#10130、#10901〜#11000のどこか
『菊とギロチン』……歴史板#10775
『金子文子と朴烈』……歴史板#10901〜#11000のどこか
『SHADOW 影武者』……#1754


 続いて戦争編。やはり徒然草未収録でも、歴史映像名画座に収録されている映画については省略しました。こうしてみると戦争映画はあまり観てないなあ。

『ひめゆりの塔』(1953年)……#1348、歴史板#9726、11023
『戦場のメリークリスマス』……歴史板#9726、#11023

『グッドモーニング,ベトナム』
 『プラトーン』をきっかけに流行ったベトナム戦争映画の1本。サイゴンに来た米軍の型破りなラジオDJエイドリアン・クロンナウアが主人公で、実在の人物とのこと。ロビン・ウィリアムズが当たり役とも言えるその主人公をイキイキと演じています。戦場はほとんど出てきませんが、南ベトナム解放戦線による爆弾テロが頻繁に起こるサイゴンを舞台に、米軍内の官僚的体質や、米国人の一方的な善意の押し付けとその限界、それに対するベトナム人の論理と感情などを描いた佳作でした。ベトナム人ヒロイン役は当時のタイの国民的人気女優チンタラー・スカパット。おそらく当時のベトナムには職業的女優がほとんどいなかったんでしょう。

『ひめゆりの塔』(1995年)……歴史板#9988
『地雷を踏んだらサヨウナラ』……#1259、歴史板#10901〜#11000のどこか。戦場カメラマンの一ノ瀬泰造の伝記映画ですが、広い意味での戦争映画に入れてもいいかなと。
『鬼が来た!』……#1201、歴史板#9592、#11023
『少年義勇兵』……#1222、歴史板#9726、#11023
『南京!南京!』……歴史板#9625、#10901〜#11000のどこか
『ジョン・ラーベ 南京のシンドラー』……歴史板#9974、#10901〜#11000のどこか


>つまんなかった映画
 前回つまんなかった映画として『CAT'S EYE キャッツ・アイ』のことを書いたんで、他にもここ10年くらいに観た、つまんなくて記憶に残ってる映画について書いちゃおうかなと思います。なんか記憶の中に沈殿物のように残っちゃってまして(笑)。

『ゲームセンターCX THE MOVIE 1986マイティボンジャック』
 2014年に映画館で観ました。別の映画を観に行った時にチラシを見て、なんとなく面白そうだと思って観に行ったんですよね。僕はそういう「直感で映画を観る」ことが時々あるんですが、自分の直感には結構自信があって、そうそう大きいハズレを引くことはありません。しかしこの映画は大ハズレ(笑)。大失敗でした。
 『ゲームセンターCX』というのはフジテレビのCSで放送されてるバラエティ番組だそうで、お笑い芸人よゐこの有野晋哉が懐かしのコンピュータゲームに挑戦し完全クリアを目指す番組とのこと。その番組の「マイティボンジャック」というゲームに挑戦した回と、マイティボンジャックが発売された1986年を舞台としたドラマパートを融合したストーリーとのことで、ひょっとしたらこれは面白いかもと思ったんです。ところが実際観てみると、ドラマを主としてそこにバラエティ番組のネタをちょこちょこ挟み込んでくるような構成だろうという僕の予想とは異なり、テレビ放送されたままとおぼしきデジタル化前の画質のバラエティ番組のほうが7割くらいを占めていて、要するに数年前のテレビ番組の再編集。映画館でテレビのバラエティ番組──それもいかにもCSといった感じのユルいまったり系バラエティを、しかもデジタル化前のテレビ画質で観たって面白くも何ともありません。いや俺、映画を観に来てるんだし。もうなんというか客を、そして映画を舐めてるよね? じゃあ残り3割のドラマパートは面白いのかというと、これが箸にも棒にもかからないつまらなさ。1986年頃の中学生のゲームやマンガあるあるみたいなのをネタにした思春期ストーリーですが、もう本当ににつまんない。しかもそれらバラエティ部分とドラマ部分が交互に流れるだけで、両者につながりも関連性もなく、いったい何なんだ?と思ったら、終盤になってようやくちょっとだけつながるんだけど、それもかなり無理やりかつほとんどどうでもいいこじつけのような関連付け。はっきり言って、これ映画になってないよ! ここ10年のうちに映画館で観た中で間違いなくワースト1の駄作。クソゲーならぬクソ映でした。

『守護天使』
 これはレンタルDVDで観て、あまりのつまらなさに30分くらいで放り出した映画。劇場公開は2009年ですが、地元では未公開だったかな? 最後まで観てないのに評価するのはフェアじゃないかもしれないけど、とにかくテンポが悪くて退屈きわまりなく、どうにも耐えきれなかった。お話は鬼嫁(寺島しのぶ。これが本当に鬼嫁で観てて不快)にいびられる毎日の、うだつの上がらぬ冴えないサラリーマン(カンニング竹山)が、駅で見かけた美少女(忽那汐里)に一目惚れ。何があっても彼女を守り抜こうと勝手に決意し、ひそかに見守り続けるストーカー状態に。ところが彼女がほんとに誘拐されてしまい、主人公は幼なじみのチンピラ(佐々木蔵之介)の手を借りて彼女を救いだそうと奮闘する……みたいなストーリー。まあ、そんなことどうでもいいくらい、とにかくつまんなかったです。

『魔法少女を忘れない』
 これもレンタルDVDで観て30分くらいで放り出した2011年公開の映画。確か雑誌の「DVDデータ」か何かで紹介記事を読んで、タイトルとあらすじが面白そうだったんで観たかったんだけど、地元には来なかったんだよな。原作はライトノベルで、ストーリーは以下の通り。男子高校生の主人公が母から会ったことのない妹を紹介されたのは半年前。その妹は魔法を使えなくなった元魔法少女だった。主人公は妹を受け入れようとし、幼なじみや友人たちとも打ち解けてきたが、元魔法少女はみんなの記憶から少しずつ消え去る運命にあり、主人公とその仲間たちは彼女のことを必死に記憶にとどめようとする……というストーリー。これだけ聞くとなんか面白そうなんだけど、実際観たら魔法少女というのがなんなのかも、なぜ人々の記憶から消えていくかも説明が一切なし。主人公と妹がそれまで会ったことがなかった理由も描かれず、主人公が魔法少女という存在をあっさり受け入れちゃってるのも理解不能で、正直なにがなんだか……。しかも主人公と妹の精神的近親相姦関係とか、サブヒロインの幼なじみの女の子がなぜかずっと武士言葉とか、オタク的設定が生理的にどうにもこうにも受け付けず、耐えきれずに途中で放り出しちゃいました。もう、この映画を忘れたい(笑)。



#1807 
KocmocKocma 2020/11/15 23:39
「国葬」「粛清裁判」「アウステルリッツ」

セルゲイ・ロズニツァ群衆ドキュメンタリー映画3選「国葬」「粛清裁判」「アウステルリッツ」昨日からイメージフォーラムで一般公開しています。

スターリン死去のニュースからレーニン廟に収められるまでのアーカイヴ映像を編集した「国葬」は135分。長さとしてはもっと長い作品も珍しくないですが、葬儀の様子を延々と、という内容だから、興味もてない人には耐え難いと思います。基本的にずっとざわざわした群衆のざわめきが入っていて、途中でちょっと眠たくなるけど、ベリヤが動いて肉声発していて、ミコヤンがちょっと涙ぐんでいて、グレート・ブリテン共産党がいて、意外と号泣している人は少なくて、日本のお葬式みたいに黒一色ではなくて赤旗や軍服の赤や金色のラインが映えて割と華やかに見えたりして、とにかくおもしろい映像でした。
最近撮ったんじゃないか?と感じるほど鮮明なきれいなカラー映像(モスクワ)とモノクロで荒っぽい地方の映像、同じ時期に撮ったとは思えない。
登場する政治家とかはやはり東欧中心でしたが、フィンランド首相、グレートブリテン共産党の人がいました。そして時代柄殆ど男性なのですが、ドロレス・イバルリがスペイン共産党で出席。
アジアからは中国とモンゴル。日本やコリアはいませんでした。ベトナムとかもいなかったと思います。

「粛清裁判」も2時間くらい。「国葬」の時代より20数年前、スターリンの粛清の端緒となった「産業党事件」の最高裁の法廷のドキュメンタリー。こっちは裁判が進行していくので(間に「反動分子に死を」と横断幕掲げた群衆のデモがさしこまれる)、「国葬」よりはストーリーはある。けどなぜこうなる?という無気味さは残る。
「産業党」なるものは存在しなかった、と最後に示される(現代の私達は既に知っている)けれど、ドキュメンタリーじゃなくて法廷劇演じているかのように粛々と裁判が進んでいって、判決言い渡されても誰も動揺しているように見えないし。
「被告人」「被告」が混在する字幕でしたが、「被告人」に統一するのがよかったのではないかと。

「アウステルリッツ」はアウステルリッツではなくてザクセンハウゼン収容所跡の記念館を訪れる観光客の様子を定点で撮っている。これが90分位。3本のうちこれだけが監督自身が撮影した作品。
タイトル「アウステルリッツ」はゼーバルトの小説からとっているのですが、この小説の最後の方に出てくるカウナス郊外の収容所跡の記念館には私は行ったことがあり、思い出してずきんとする箇所がありました。
しかし、このドキュメンタリーに映る見学者のほとんどはTシャツに短パンとか、タンクトップのホットパンツ、サンダル履きとか結構な軽装で、そんなんで観に行ったら震えあがってしまうよ〜!と思いながら、見学者の様子を観ていましたが、それは杞憂。
リトアニアとドイツの気候の違い、ではないと思いますが。
ガイドの説明聞いて(説明の最中に携帯の着信音鳴らす輩がいる)、誰からも質問は出ず、「まあ、それもいいでしょう」とガイドに謂れ、各所でせっせと自撮りして、晴れやかな顔で門を出ていく。そういった見学者たちを淡々と撮っています。

この監督さん、ドラマ作品も撮っているのですが、レニングラード攻防戦や1991年ソ連の8月クーデターのアーカイヴァル映画があるそうなので、それらをもっと観てみたいです。





#1806 
バラージ 2020/11/14 22:54
マンガ&アニメの実写化の成功例

 前回のタイトル、「ボーダーレスなアジア映画いろいろ」にするべきだったな。

 北条司の大ヒット漫画を、まさかのフランスで実写化した『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』を観ました。地元では今年の春に上映してたんですが観逃してしまい、WOWOWで放送されたんでようやく観た次第。
 いや〜、面白かった! フランスで実写化と知った時にはいくらなんでもミスマッチなんじゃないかと思ったし、ジャッキー・チェンによる香港版『シティーハンター』の脱力っぷりも覚えてるしで、どうも不安がぬぐえなかったんですよね。ところが聞こえてくる評判はかなり良く、どうしようかなと思ってるうちに上映が終わっちゃいまして。で、実際観てみたら確かにこれは良作。ヨーロッパの下ネタコメディ映画と『シティーハンター』の相性が抜群に良いというか、昔の『ピンクパンサー』を思わせます。何度も腹を抱えて爆笑しちゃいました。なんというか脚本のしっかりした、計算された笑いですね。しかも原作の再現度もバッチリなのに、それでいて漫画やアニメを実写化した時に生じる違和感が全くない。アクションもかっこ良くて映像表現もスタイリッシュ。いや、素晴らしかった。こうなったら『キャッツ・アイ』も海外で作ってほしいところ(笑)。
 ちなみに僕が観たのは字幕版で、登場人物の名前も全てフランス人の名前になってましたが、吹替版では(オリジナルの人物以外は)原作通りの名前みたい。


>一方こちらは失敗例
『CAT'S EYE キャッツ・アイ』
 説明不要の北条司の大ヒット漫画を林海象監督が実写化した1997年の映画。公開当時からヤバさプンプンだったんで原作ファンとしては到底観る気が起きなかったし、聞こえてくるのも酷評ばかりだったんでビデオ化以降も観る気は全然なかったんですが、あれから20年以上の月日が流れ、去年の年末にWOWOWで放送されたんで話の種にでもと怖いもの見たさで観てみたのでした。
 いやぁ、聞きしに勝るひどい映画でした。駄作であり、珍作であり、怪作であり、駄作。稲森いずみ演じる次女の瞳じゃなく内田有紀演じる三女の愛が主人公になってるけど、内容的には三姉妹均等な扱いなんで良しとしましょう。キャッツ・アイ三姉妹がレオタードじゃなくキャットウーマンみたいな猫耳ボンデージなのも良しとしましょう。瞳の恋人内海俊夫刑事がなぜか原作と違ってワイルド系になっちゃってるのもムカつくけど良しとしましょう。眼鏡の女刑事浅谷光子が原作と全然違う設定なのも良しとしましょう。原作に全然出てこない香港だか台湾だかのマフィア(というより昔の子供向け特撮の悪の組織みたい)がメインの敵役として絡んでくるのも断腸の思いだけど良しとしましょう。物語の肝である三姉妹の父親の設定が原作とまるで違うのも、本当は良くないんだけど涙を呑んで良しとしましょう。この映画のダメなところは、そういう原作からの改悪すべてに目をつぶって映画単体で観ても救いようのないくらいつまらないところです。いや、つまらないだけならまだいい。なんというかもうめちゃくちゃなんですよね。アクションがどうしようもなくダメダメな上に、セットや小道具の美術デザインも特撮も信じられないくらいチープで信じられないくらいダサいし、演出もところどころ意味不明で、終盤には脚本が破綻して完全に支離滅裂になります。全体的に悪い意味でアニメチックなんですが、ものすごく好意的に解釈すれば、この映画はアニメの表現をまるごと実写に置き換えようとしたのかも。もしそうだとするとその試みが壮絶な失敗に終わったということになります。いやはやひどかった。ここまでの駄作にお目にかかることはなかなかないでしょう。

>最近映画館で観た映画
『クライマーズ』
 ヒロインのチャン・ツィイー目当てで観に行った中国映画。香港のダニエル・リー監督だけあって中国映画というより香港映画のノリかなあ? 1960年に中国の登山隊初のチョモランマ登頂が成功したが、夜間登頂で証拠写真が撮影できなかったため西側諸国に認められず、その後1975年に二度目の登頂に成功した史実を基にした映画とのこと。とはいえそこは『項羽と劉邦 White Vengeance』とかアンディ・ラウの『三国志』とかジャッキー・チェンの『ドラゴン・ブレイド』のダニエル・リー監督だけに、史実通りなのは大枠だけ。あくまで史実をモデルとした娯楽アクション映画で、登場人物の名前も実在の人物とは変えてるし、ツィイー演じるヒロインなんかは架空人物のようです。
 僕は登山映画とか山岳映画にほとんど興味がなく、ほぼ観たことがないんですが、なんというかきわめてベタでコテコテな香港映画ノリの映画でした。ストーリー展開も超絶アクションも人物のキャラクター設定や感情表現も全部ベタ。最近すっかり愛国映画俳優になったらしいウー・ジン主演だけに少々愛国調なところもありますが、それよりもコテコテにベタなところのほうが気になる映画で、あまりのベタっぷりにところどころ笑っちゃいましたね。なんというか80年代のスタローン映画みたいな感じ。まあ、それでもそこそこ楽しめました。ジャッキー・チェンもちょっとだけ友情出演してますが、それもどうでもいいか(笑)。



#1805 
バラージ 2020/11/05 22:26
アジア映画いろいろ

>映画館で観て面白かった映画
『チィファの手紙』
 岩井俊二監督が中国で撮ったドラマ映画で、原作は岩井自身が今年日本で映画化した『ラストレター』と同じもの。製作はこっちのほうが先で、2年前に中国で公開されています。まず脚本を作り、それを日中韓でそれぞれ映画化する企画を立て、それと並行して小説化もしたとのこと。岩井監督が韓国で撮ったネット短編映画『チャンオクの手紙』を長編化したらどうなるか?という発想が企画の出発点だったそうです。僕は『ラストレター』のほうは未見で、小説も未読。
 映画のストーリーは、姉が亡くなったばかりの主人公の女性チィファが、姉が亡くなったことを伝えに、30年ぶりに開かれた姉の中学の同窓会に行ったところ姉と間違えられることに。かつて姉にラブレターを送り続けていた、チィファがひそかに憧れていた先輩からも声をかけられ、やがて彼からメールも送られてくるが、たまたまそれを見たチィファの夫が怒って携帯電話を破壊してしまう。困ったチィファは姉になりすまして先輩に手紙をしたためるが、それが姉の娘や息子、チィファの娘、義母(夫の母)やその恩師など、さまざまな人に波紋を投げかけることになる……といったもの。ドラマ映画とも恋愛映画とも言えるような作品でした。
 やはりどことなく日本映画的な香りもしますが、中国に合わせてちゃんと設定をローカライズしており、それでいてやはり中国映画にはあまり見られない雰囲気の映画になっています。主演のジョウ・シュン目当てで観たんですが、パンフに載ってたインタビューでジョウ・シュン本人も言ってた通り、ここまで普通の人を演じるジョウ・シュンは初めてかも。やっぱりいい女優です。先輩役のチン・ハオという男優をはじめ他の俳優陣もみな好演ですが、なんといっても若い頃のチィファ(チィファの娘と2役)と若い頃の姉(姉の娘と2役)の2人の少女俳優が素晴らしい。なかなか面白かったです。

>録画やDVDで観て面白かった映画
『チャンオクの手紙』
 というわけで実は今春にCSで放送されたものを観ていたこちらもご紹介。映画ではなく、ネスレ公式サイト内「ネスレシアター」用に制作されたショートフィルムで、15分ちょいの短編×4話の作品です。監督は岩井俊二でスタッフもすべて日本人ですが、韓国が舞台で韓国人しか出てきません。主演はペ・ドゥナ。ほぼ寝たきりのわがままな義母と、その世話を主人公に任せきりの夫、娘、息子に囲まれた専業主婦の日常を描いたほんわかとした作品で、タイアップということでネスレのバリスタマシンが必ず出てくるんですが、目立たない出し方で不自然に感じさせませんでした。作品の雰囲気がやっぱりどことなく日本映画的でそこも良いんですが、大変な日々を過ごしながら飄々と自然体で乗りきっていく専業主婦を演じたペ・ドゥナがなんといっても出色。やっぱり彼女もいい女優です。

『きみに微笑む雨』
 韓中合作の2009年の恋愛映画。監督は韓国のホ・ジノですが、映画は全編四川省成都市が舞台で、主演の韓国男優チョン・ウソンと中国女優カオ・ユアンユアンのダブル主演というほぼ50:50の映画です。ストーリーは、米国留学中に惹かれ合っていた男女が10年後に偶然再会。男はそれとなくアプローチをかけるが、女はなぜかそれをやんわりと断り続ける……というもの。美男美女のイチャイチャぶりをやたらと見せつけられる甘ったるいラブストーリーで、名作『八月のクリスマス』のホ・ジノ監督にしてはいまいちかなと思ったんですが、終盤意外に重い話になります。2008年の四川大地震が重要なキーの物語でした。主人公2人の会話は全編英語。現代中国の地方都市が舞台となる映画は意外に珍しく、街の風景や文化が興味深かったですね(動物園でパンダとあんなに触れ合えるんだ、とか・笑)。まあまあ面白かったです。


>追悼ショーン・コネリー
 90歳ですから大往生ですね。代表作はやはり『007』ということになるんでしょうが、個人的には何度か書いてるように『007』というとロジャー・ムーアの印象が強かったりします。コネリーのも子供の頃にテレビで『殺しの番号(ドクター・ノオ)』『ロシアより愛をこめて』『ゴールドフィンガー』『ダイヤモンドは永遠に』を観てるんですが、今となってはさっぱり記憶にありません。他の出演作では『メテオ』『オリエント急行殺人事件』も子供の頃に観たもののコネリーの記憶はやはりなし。大学時代にビデオやテレビで観た『薔薇の名前』『アンタッチャブル』『レッド・オクトーバーを追え!』、ちょっと昔の『未来惑星ザルドス』あたりが印象に残ってます。最後に観たのはやはりビデオで観た珍作『ライジング・サン』。こうしてみると映画館では1本も観てなかったんだな。
 俳優引退後も、スコットランド出身のテニス選手アンディ・マレーの試合を観にしばしば四大大会の客席に姿を見せていたのを見かけましたが、マレーの会見に酔っ払って乱入したこともあったらしく顰蹙を買ったりしてました。性格的にもスコットランド人らしく(?)ちょっと気難しいところがあったみたいですね。ご冥福をお祈りします。

>ジャンル別おすすめ映画総まとめ訂正
 活劇アクション編の『さらば復讐の狼たちよ』と推理・サスペンス編の『パープル・バタフライ』について過去に記述した箇所を「歴史板#10901〜#11100のどこか」と書きましたが、「歴史板#10901〜#11000のどこか」の間違いでした。



#1804 
徹夜城(支配人) 2020/11/04 23:27
ショーン・コネリー逝く

どうも久々に書き込むときはたいてい映画関係者の訃報ネタになってしまってます…

ショーン・コネリーが先日とうとう無くなりました。90歳ならまぁ不足はないですが、やっぱ寂しいですね。さすがに映画出演はずいぶんしてませんでしたが…「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」も当初はインディのパパ役で出るはずだったのでは、と思われます。出演しなかったために「遺影」が出ることになってしまいましたが。

「初代007」が訃報見出しになるのは予想通りでしたが、ボンド役をおりてからしばらく干された状態になってしまい、老けてヒゲ面にしたあたりからまた急速に出番が増えて「大御所」感が増していった…という印象ですね。
 「インディ・ジョーンズ最後の聖戦」でのジョーンズ教授役は本人もお気に入りだったらしいですね。ほかに僕の印象に強く残ったものとしては「薔薇の名前」のウイリアム修道士役ですね。



#1803 
バラージ 2020/10/21 23:34
ジャンル別おすすめ映画総まとめA

 ジャンル別おすすめ映画総まとめ、今回はSF・ファンタジー・特撮編。最近はSF映画をめっきり観なくなった僕ですが、昔ある時期までは結構よく観てました。

『ボディ・スナッチャー 恐怖の街』……#1670、#1748
『怪獣大戦争』……#1634
『猿の惑星』……#1724
『SF/ボディ・スナッチャー』……#1748
『遊星からの物体X』……#1748
『ターミネーター』『ターミネーター2』……#1529、#1670。『3』以降はあんまり面白くないんでおすすめしません。
『エイリアン2』……#1671。1作目は好みではなく、『3』は面白くありませんでした。
『ヒドゥン』……#1748
『ゼイリブ』……#1748
『アビス』……#1748、#1789

『ガメラ 大怪獣空中決戦』『ガメラ2 レギオン襲来』『ガメラ3 邪神(イリス)覚醒』……#1310
 1作目が製作中と聞いた時に、金子修介監督は『毎日が夏休み』『卒業旅行 ニホンから来ました』が面白かったから、これは期待できるかもと思い、楽しみにしてました。果たして観に行ったら、見事に大当たりでしたね。続編も面白かったけど、やっぱり1作目が1番かな。

『マーズ・アタック!』
 火星人の地球侵略をブラックユーモア風に描いたティム・バートン監督のSFコメディ映画。とにかく出てくる地球人、特に政府や軍などの要人がどうしようもないおバカばっかりで、それを超豪華スターたちが嬉々として演じているのも見もの。コメディといってもブラックな笑いで、ちょっとグロ風味もありますが、同じ年に公開された似たような題材の『インデペンデンス・デイ』よりも僕はこっちのほうがずっと面白かったですね。

『光の旅人 K‐PAX』
 自分は地球から1000光年離れた惑星K‐PAXから来た異星人だと言う男が精神病院に連れられてくる。精神科医は妄想として片付けようとするが、彼の説明は高度な理論に基づいており、数日後には彼の主張に相当する星が本当に発見される。さらに彼の存在は他の患者たちにも不思議な影響と効果をもたらし、治癒不能と思われていた患者たちが皆徐々に回復していく。戸惑う精神科医。果たして彼は本当に異星人なのか?
 ビデオ&DVD邦題は『K‐PAX 光の旅人』。レンタル店ではSFコーナーに置いてあることが多いんですが、内容的にはSFというよりヒューマンドラマ映画に近い作品です。もしくはせいぜいSFファンタジーという感じ。でも、そんなジャンルがどうこうよりも、とにかく面白い映画だったのでご紹介。

『ドラゴン・キングダム』……#1680

『第9地区』
 南アフリカのヨハネスブルグ上空に巨大UFOの故障で漂着し、第9地区で難民として暮らすことになった宇宙人たち。それから20数年の月日が流れ、スラムと化した第9地区の難民宇宙人に対するヨハネスブルグ市民の不満は沸騰し対立が激化。当局は隣接する、より劣悪な環境の第10地区に宇宙人を強制的に移そうとするが、現場責任者に抜擢された主人公は、宇宙人のウィルスに感染し、逆に当局に追われる身となってしまう……。南アフリカ出身の監督がニュージーランドで撮った映画で、アパルトヘイトを思わせる設定と展開が秀逸でした。

『グレートウォール』……#1672
『散歩する侵略者』……#1682


>最近観て面白かった映画
『ファンシー』
 ひなびた温泉街を舞台に、郵便配達と刺青彫師を兼業する常にサングラスをかけたニヒルな男(永瀬正敏)、自宅に引きこもって暮らす南十字星ペンギンという詩人(窪田正孝)、その大ファンで妻になりたいと押しかける若い女性(小西桜子)の三角関係と、町で起こるヤクザの抗争が並行して描かれていく映画。原作は山本直樹の短編マンガとのことで、言われてみれば確かになるほどという作品です。やたら生々しいエロいシーンが多く、3人の女優がヌードになっていて、そのうちの1人が準主演の小西桜子。永瀬正敏と激しいベッドシーンを演じててびっくりしました。まだ22歳でこれがほとんどデビュー作に近かったらしく、なかなかの女優魂の持ち主のようです。映画自体もハードボイルド×ピンク映画×アート映画といった感じで、なかなか面白かった。廣田正興監督は、市川準監督や古厩智之監督の助監督をしてたそうで。しかし永瀬正敏はいくつになってもカッコいいなあ。昔と全然変わらん。田口トモロヲや長谷川朝晴や宇崎竜童といった脇役たちもいい味出してました。



#1802 
バラージ 2020/10/12 23:28
ジャンル別おすすめ映画総まとめ@

 先日、NHK『クローズアップ現代+』の「“未来を変える力”を問いかけられて 〜大林宣彦からの遺言〜」という番組を観ました。カメラにおさめられた死去数ヶ月前の大林監督の姿が衝撃的でしたね。戦争を描くことにこだわった監督が、後を託した4人の監督──岩井俊二、手塚眞、犬童一心、塚本晋也、それぞれの受け止めも印象的でした。犬童監督はコロナ下で収入が以前の10分の1に激減したとのことで……。そんな中でも映画に邁進する監督たちの姿もとても印象に残りました。


 栄耀映画徒然草に未収録の映画で、個人的に面白かったおすすめ映画をちょくちょく紹介してきましたが、今回はそれらをちょっとまとめておこうかなと。要するに歴史板のほうでやった名画座未収録作品紹介の徒然草版ですが、感想の追記はあまりないので作品名の羅列というか箇条書きになります。
 まずは活劇アクション編。ちょっとアクション映画が多かったので、他ジャンルの要素がある映画は他ジャンルに回しました。『ターミネーター』なんかはSFに、『グリーン・デスティニー』などは時代劇に回してます。

 まずはブルース・リー映画。
『ドラゴン怒りの鉄拳』……#1787
『ドラゴンへの道』……#1790
『Bruce Lee in G.O.D 死亡的遊戯』……#1790

 続いてジャッキー・チェン映画。ジャッキー映画も個人的趣味からやたら多くなってしまったので、他ジャンルの要素がある映画は他ジャンルに回しました。ジャッキー映画はコメディ要素もあるんですが、ジャンルとしてはやはりアクション映画でしょう。『ゴージャス』はラブコメ要素が強いというかほぼラブコメディ映画なんですが、アクション要素も強いし、恋愛映画のコーナーがないんでこちらに入れました。
『プロジェクトA』……#1674
『ポリス・ストーリー 香港国際警察』……#1674
『ポリス・ストーリー3』……#1679
『ファイナル・プロジェクト』……#1679
『WHO AM I?』……#1679
『ゴージャス』……#1679
『香港国際警察 NEW PORICE STORY』……#1680

 お次は「リーサル・ウェポン」シリーズ。
『リーサル・ウェポン』『リーサル・ウェポン2 炎の約束』『リーサル・ウェポン3』『リーサル・ウェポン4』……#1529、#1707、#1714

 「ダイ・ハード」シリーズ。『3』以降は面白くないのでおすすめしません(笑)。
『ダイ・ハード』『ダイ・ハード2』……#1529、#1669、#1670

 「ミッション:インポッシブル」シリーズ。
『ミッション:インポッシブル』『ミッション:インポッシブル3』『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』……#1704
『ミッション:インポッシブル フォールアウト』……#1718

 最後にその他のおすすめアクション映画をまとめて。『さらば復讐の狼たちよ』『グランド・マスター』はアクション映画と言えるか微妙なんですが一応ここに入れました。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱』……#1785
『さらば復讐の狼たちよ』……#1351、歴史板#10901〜#11100のどこか
『グランド・マスター』……#1404、#1787、歴史板#9405


 続いて推理・サスペンス編。僕は純粋なサスペンス映画やミステリー映画はあまり観てなくて、社会派ドラマとかヒューマンドラマとかアクション映画とのジャンル分けが微妙な作品が多いんですが、その中でもサスペンス要素多めの映画をこちらで。

『ある殺し屋』『ある殺し屋の鍵』
 時代劇のイメージが強い市川雷蔵の珍しい現代劇映画で、雷蔵が普段は小料理屋の店主に見せかけて実は凄腕の殺し屋という男を演じる日本版フィルム・ノワールです。標的を針で殺す現代版必殺仕事人とも言うべき殺し屋で、ドライでクールでニヒルな作風が良い。雷蔵と野川由美子と成田三樹夫の三者による虚々実々の駆け引きも秀逸。続編というか、主人公の名前と普段の職業(日本舞踊の師匠)を変えた姉妹編『ある殺し屋の鍵』も作られましたが、雷蔵の急逝でシリーズは2作で終わりました。アクション映画とどっちかな〜と迷ったんですが、暗殺という手法なんで一応こっちに。

『ときめきに死す』……#1720
『裸のランチ』……#1721
『ザ・インターネット』……#1532
『誘拐』……#1639
『ファイト・クラブ』……#1532

『インファナル・アフェア』『インファナル・アフェア 無限序曲』『インファナル・アフェアV 終極無限』……#1693
 以前はおすすめアクション映画として紹介しましたが、サスペンス映画のほうが近いかなと思い直して、一応こちらに入れました。このあたりのジャンル分けって微妙なんですよねえ。

『パープル・バタフライ』……歴史板#10901〜#11100のどこか
『ポリス・ストーリー レジェンド』……#1457。ジャッキー映画ですが、やはりアクションよりサスペンス要素が強いと考えてこちらに。
『女が眠る時』……#1614



#1801 
バラージ 2020/09/28 14:32
個人的90年代日本映画 俳優編

 かなり前に歴史板のほうで自分が物心ついた80年代以降を舞台とした映画は「歴史映画」と認識しづらいと書き、その後しばらく経ってから80年代、さらには90年代も「歴史」の範疇に加えてもいいのではないかという気分に変わってきたという話を書きました。要するに自分の中で90年代──すなわち20世紀までが、ついこの間ではなく、ノスタルジーを感じるセピア色の懐かしい思い出へと変化してきたということなんでしょう。
 というわけで、映画板でも90年代に観た日本映画の個人的な思い出話。市川準・森田芳光・金子修介といった監督については以前にいろいろ書いたので、今回は90年代に好きだった日本の俳優の話です。まずは男優編。僕は基本的に女優好きで、女優に比べると、男優で映画を観るというほどに好きな男優は(ジャッキー・チェンなど一部を除けば)いないんですが、90年代だけは例外的に永瀬正敏と本木雅弘が好きというか注目してる男優でした。

 永瀬正敏の名前を最初に知ったのは確かジム・ジャームッシュ監督のオムニバス映画『ミステリー・トレイン』(1989年)。映画自体は観てないんですが、有名監督の米国映画に工藤夕貴と主演したことで一躍有名になったように記憶しています。初めて観た永瀬出演映画は山田洋次監督の『息子』(1991年)。一方で、僕はいずれも未見ですが『喪の仕事』(1991年)や林海象企画によるアジア6か国連作の『アジアン・ビート』シリーズ(1991年)など、インディーズ映画というか映画マニア向けのマニアックな作品への出演が多い俳優で、またテレビドラマにはほとんど出ず、専ら映画専門の俳優だったのもアート系俳優としてのイメージを高めていきました。
 僕は再び山田監督の『男はつらいよ 寅次郎の青春』(1994年)への出演で観た後、林海象監督で主演した「私立探偵 濱マイク」シリーズ第1作『我が人生最悪の時』(1994年)、第2作『遥かな時代の階段を』(1995年)を観賞。ただ、このシリーズは2作とも個人的にはいまいちで(林監督とはどうも相性が悪い)、第3作『罠』は観ず。そして、あがた森魚監督の『オートバイ少女』(1994年、ビデオ観賞)への友情出演、初めて観たアイスランド映画『コールド・フィーバー』(1995年)で主演、先日他界した渡哲也とのダブル主演だった『誘拐』(1997年)といったあたりが90年代に観た永瀬出演映画となります。
 こうしてみると、永瀬目当てで観たという映画は濱マイク・シリーズぐらい。他は観た映画に出てたといった感じですね。

 本木雅弘はなにしろシブがき隊のモックンなんで俳優になる前から知ってたんですが、俳優として初めて目にとまったのは確か解散後のテレビドラマ『恋のパラダイス』(1990年)だったかなあ? モックン、いい役者じゃん、と思いました。
 映画のほうは、周防正行監督の初の一般映画で主演した『ファンシイダンス』(1989年)が出世作ですが僕は未見。以後、『遊びの時間は終らない』(1991年)、『シコふんじゃった。』(1992年)、『魚からダイオキシン!!』(1992年)、『ラストソング』(1994年)など出演作は目にとまってたんですが、これまたいずれも未見でして(『シコふんじゃった。』のみ後になってからビデオで観た)、初めて観た出演映画は『RAMPO』(1994年)でした。その後も市川準監督作で主演した『トキワ荘の青春』(1996年)と、友情出演した周防監督作『Shall we ダンス?』(1996年)ぐらいで、案外僕は観ていませんねえ。『GONIN』(1995年)とか『中国の鳥人』(1998年)も未見です。
 テレビドラマにしても、『太平記』 (1991年)でチラッと観た後、主演した単発ドラマ『涙たたえて微笑せよ 明治の息子・島田清次郎』(1995年)が印象に残ったぐらいで、『徳川慶喜』(1998年)もチラッと観た程度。やはり単発ドラマの市川準監督作『ラッキィ』 (1994年)は数年前に某動画サイトで観ました。

 あれ? こうして見ると、永瀬も本木もそんなには観てないかも……。やっぱり俺は女優主義者なのか(笑)。
 というわけで女優編。

 まずは僕が映画を幅広く観始めた大学時代、デビューとほぼ同時に大ブレイクした牧瀬里穂。初見はハイシーLのコマーシャルでした。「ハイシーLはビタミンC!」というCMですね。「ごっきげん!」と言いながらロングスカートをバッとめくりパンツ(アンダースコート)を見せるシーンに目を奪われました。
 映画デビュー(というかCMデビュー前なんですが)は、いきなり主演した相米慎二監督の『東京上空いらっしゃいませ』(1990年)で、相米監督の『台風クラブ』(1985年)を傑作と言う友人たちがやたら薦めてましたが、映画を趣味とし始めたばかりの僕はちょっと奇妙なタイトルに引いてしまい映画館に観に行かず。後にビデオで観て、その面白さに映画館で観なかったことを激しく後悔したのでした。同作での牧瀬の初々しい魅力は目映いほどでしたね。続いて主演した市川準監督の『つぐみ』(1990年)も傑作で、やはり牧瀬が素晴らしく、完全にファンとなったのでした。雑誌「GORO」での大胆グラビアなんかもドキッとさせられたなあ。以後、つかこうへい舞台の映画化で主演した『幕末純情伝』(1991年)、『遠き落日』(1992年)、グリコポッキーのCMから派生した『四姉妹物語』(1995年)、吉岡秀隆演じる寅さんの甥・満男のマドンナ役の『男はつらいよ 拝啓車寅次郎様』(1995年)、『宮澤賢治 その愛』(1996年)、『卓球温泉』(1998年)と、90年代には牧瀬里穂の出演作をかなり観ましたねえ。いや、懐かしい。

 続いて、それ以前に大河ドラマ『独眼竜政宗』(1987年)であまりの美少女ぶりに目を奪われた後藤久美子。
 彼女の映画出演作で最初に観たのは『男はつらいよ 寅次郎の休日』(1990年)で、吉岡秀隆演じる寅さんの甥・満男のマドンナ役として2度目の出演でした。初出演の前作『男はつらいよ ぼくの伯父さん』(1989年)と、さらにそれ以前の映画デビュー作『ラブ・ストーリーを君に』(1988年)はそれより後にビデオで視聴。以後、満男マドンナ続投の『男はつらいよ 寅次郎の告白』(1991年)、『男はつらいよ 寅次郎の青春』(1992年)、ジャッキー映画『シティーハンター』(1993年)、『ひめゆりの塔』(1995年)、主演した『キャンプで逢いましょう』(1995年)と観たんですが、渥美清の遺作となった満男マドンナ再登板の『男はつらいよ 寅次郎紅の花』(1995年)はいまだ未見。そしてゴクミはアレジと結婚(事実婚)してイタリアへと去ったのでした。

 お次はやはり大学時代にミュージシャン桑田佳祐監督の『稲村ジェーン』(1990年)で初めて知った清水美砂(現・清水美沙)。映画自体はなんだかな〜という出来でしたが、ヒロインの彼女はとても良かった。というか彼女以外に良いところのない映画だったけど(笑)。友人と2人で観に行ったんですが、その感想で一致しましたね。
 とはいえその後すぐに彼女の出演作を観始めたというわけではなく、周防正行監督・本木雅弘とともに出世作となった『シコふんじゃった。』(1992年)、主演した『未来の想い出 Last Christmas』(1992年)、『おこげ』(1992年)あたりはいずれもちょっと後になってからのビデオ視聴。『おこげ』では美しいヌードも見せてくれており、なかなかに女優魂を持ち合わせた人でした。映画館で観たのはそれ以後の、滝田洋二郎監督・一色伸幸脚本の東南アジア・コメディシリーズの一作『熱帯楽園倶楽部』(1994年)、前記『四姉妹物語』(1995年)、周防監督作に友情出演した『Shall we ダンス?』(1996年)、カンヌでパルムドールを獲った今村昌平監督作で再びヌードを見せてくれた『うなぎ』(1997年)といったあたり。オムニバス映画『セカンドチャンス』(1999年)は00年代に入ってからのビデオ視聴だったかな。

 上記3人に比べれば観た映画は少ないけれど……というのが和久井映見と鶴田真由。
 和久井映見は最初に観たのは確かドラマ『スワンの涙』(1989年)だったかなあ? 映画は山田洋次監督の『息子』(1991年)でのヒロイン役を観たのが最初で、金子修介監督の『就職戦線異状なし』(1991年)はちょっと後になってからのビデオ視聴でした。他はフジテレビのトレンディ映画『バースデイプレゼント』(1995年)くらいかな。テレビドラマのほうは『夏子の酒』(1994年)などいくつか観てたんですが。
 鶴田真由はたぶん石田ひかり主演のドラマ『悪女』(1992年)で観たのが最初。映画は金子修介監督・一色伸幸脚本の東南アジア・コメディシリーズ『卒業旅行 ニホンから来ました』(1993年)で観たのが最初で、他には上記『就職戦線異状なし』(1991年)をビデオ視聴。『きけ、わだつみの声 Last Friends』(1995年)も映画館で観たけどそれくらいで、案外観ていませんねえ。

 90年代後半になると、広末涼子(『20世紀ノスタルジア』1997年)、遠藤久美子(『いさなのうみ』1997年)、田中麗奈(『がんばっていきまっしょい』1998年)らがデビューして、徐々に世代交代が行われていく。そんな時代でした。


>中華圏の西遊記映画の話
 なぜか今ごろになってふと思い出して書きたくなった映画シリーズ。今回は数年前に観た香港&中国映画の西遊記シリーズの話。
 西遊記というと日本でも昔から何度もドラマになってますが、本場の中華圏でも娯楽ファンタジーとして映像化しやすいためか、やたらと映画化されてます。近年の中国ではCGを駆使した3D映画が大流行のため、同じ四大奇書の三国志演義や水滸伝と比べても圧倒的に映画化が多い印象。
 それらの中で、シリーズ化されて日本でも公開されているものが2つあり、まず1つ目はソイ・チェン監督によるシリーズ。『モンキー・マジック 孫悟空誕生』『西遊記 孫悟空vs白骨夫人』『西遊記 女人国の戦い』とこれまでに3本作られてますが、僕の地方にはいずれも来ておらず。僕は2作目の『孫悟空vs白骨夫人』のみゲスト出演のコン・リー目当てでDVD視聴。その感想は#1658に書いたんですが、実は主人公の孫悟空役を1作目で演じていたドニー・イェンが降板し、2作目以降では1作目で牛魔王を演じていたアーロン・クォックに交代しています。シリーズにも関わらずメインキャストが途中で交代してしまうというのは、香港映画あるあるとでも言うべきか、結構ある現象でして。

 もう1つのがチャウ・シンチー監督・製作のシリーズで、こちらについては書いてなかったので改めて感想を。

『西遊記 はじまりのはじまり』
 三蔵法師一行が天竺に向けて出発するまでをチャウ・シンチー流の新解釈、というよりもほぼ完全にチャウ・シンチーのオリジナル・ストーリーで描いちゃったチャウ・シンチー版西遊記序章編とでも言うべきファンタジー映画。原典とはほとんど別物と言ってよく、主人公は三蔵法師で職業も坊さんではなく妖怪ハンター。沙悟浄・猪八戒・孫悟空は脇役で、他の妖怪ハンターなどのオリジナルキャラクターがやたらと多い。ヒロインの妖怪ハンター役をスー・チーが演じており、僕は彼女目当てに映画館で観ました。上記『孫悟空vs白骨夫人』よりも前ですね。なおチャウ・シンチーは監督・製作・脚本のみで出演していません。コテコテのしょーもないギャグ、荒唐無稽を突き抜けたCG、これまた荒唐無稽を突き抜けた超展開、そしてちょっとグロ風味ありという、なんというかいかにもチャウ・シンチー印の映画。シンチーの芸風がちょっと苦手な僕は彼の映画をあまり観てないんですが、これはなかなか面白かったです。続編を作ることは考えてないような作り方だったんで、続編製作は意外だったんですが、興行上の要請ってやつでしょうか。

『西遊記2 妖怪の逆襲』
 前作と違って地元には来なかったのでDVD視聴。4年後に作られた続編ですが、チャウ・シンチーは製作と脚本のみで監督は大先輩ツイ・ハークにバトンタッチ。明らかに前作は続編を念頭に置いてない作りだったんで、シンチーもいまいち気が乗らなかったから監督をしなかったんじゃないかなあ。ツイ・ハークもフリーハンドで作れないためか、これまたいまいち気合いが入ってない感じ。前作のようなオリジナリティーはなくなり、わりと普通の西遊記ものになってしまいました。とにかく展開が平板で退屈。シンチーお得意のしょーもないギャグとハークお得意のCG大洪水という悪いところばかりが目立つ映画でしたね。しかもキャストが総入れ替えされたばかりか登場人物のキャラクターも大幅に違う上、ストーリー的にも前作との関連性が薄いため前作がどんな話だったか思い出せず、前作の後に観た『孫悟空vs白骨夫人』と記憶がごっちゃになって混乱しました。前作はヒロインのスー・チー目当てで観たことから記憶を手繰り寄せた次第。そのスー・チーのみが続投してるんですが、(少々ネタバレだけど)前作で退場してるのにどうするんだ?と思ったら案の定ほとんどが前作の回想シーンという特別出演。この映画も目当てはそこだけだったんだけどなあ。



#1800 
バラージ 2020/09/27 22:52
続く追悼

 まさか今度は竹内結子さんが……。さすがにこれはショックが大きい。ついこの間、テレビ放送で『コンフィデンスマンJP』の映画版や、配信ドラマ『ミス・シャーロック』の1・2話を見たばかりでした。『ミス・シャーロック』は以前からレンタル店で気になってたドラマですが、観たらやっぱり面白かったんでDVDを借りて全話観ようかなと思ってたところでした。なんだかとても混乱しています。こういうことが続くと世の中がますます暗くなるという悪循環も心配。とにかくご冥福をお祈りします。



#1799 
バラージ 2020/09/15 00:10
三たび追悼

 今度は芦名星さんが……。彼女個人についてはくわしいことはまだわかりませんが、社会的にコロナ鬱が広がっているのか、世界的にも暗いニュースが多いことが影響しているのか……。
 芦名さんはどちらかと言えば脇役としていろいろな作品に出演してましたが、代表作というとやはりドラマ『相棒』になるんですかね。ご冥福をお祈りします。



#1798 
バラージ 2020/09/13 22:21
もはや、アイドル映画ではない

 日向坂46のドキュメンタリー映画『3年目のデビュー』と、欅坂46のドキュメンタリー映画『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』を観ました。どっちも映画館にはファンと思われる若い男女が結構入ってましたね。

 『3年目のデビュー』は、日向坂に今一つ興味が薄いんでどうしようかと迷ったんですが、欅坂の『僕たちの嘘と真実』が面白そうでぜひ観ようと思ってたんで、ついでに観とくかと思いまして。うーん、まあ、つまらなくはないけど面白くもなかったという感じかなぁ。良く言えば手堅くオーソドックスに作られてるとも言えますが、なんか土日の昼間にテレビで流すアイドル番組みたいなドキュメンタリーで、わざわざ映画館で公開する必要性が感じられませんでした。出てくるエピソードも大半がこれまでの48&46ドキュメンタリー映画で観たことのあるような話ばかりで新味がないし、掘り下げも浅くてさらっと流れていってしまいます。終始グループ内の話で物語がグループの外に広がっていかないのも面白くありません。正直始まって1時間も経たないうちに飽きたし退屈しました。終盤、2020年12月に東京ドームでコンサート!というサプライズ発表でメンバーが嬉し泣きするシーンがあるんですが、コロナでもう無理なのでは? 言及されるのかな?と思ったら何もなく。コロナで3月公開予定が延期されたらしいんで仕方がないのかもしれないけど。それにしても、なんで日向坂のだけ「Documentary of〜」ってタイトルじゃないんだろ?

 『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』のほうは、やはりというべきか、圧倒的な天才パフォーマー、絶対センター平手友梨奈を中心に映画が展開していきます。平手は今年の1月に脱退。その理由は多くは語られなかったんですが、この映画を観ているとなんとなくわかるような気もします。彼女の憑依的とも言える圧倒的な表現力とパフォーマンスに、ファンも他のメンバーもスタッフでさえも魅了され圧倒されたんですが、平手自身もまた自らの才能にある種苦しめられていたのかもしれません。初期のあどけなく初々しい姿は今となっては逆に新鮮でしたが、曲が始まるとその世界に没入していくのはその頃からで、完璧を追い求める姿勢は時が経つに連れてやがて彼女自身を追い込んでいったようにも見えました。音楽映画とも言えるほどにライブシーンの多い映画なんですが、それを観ているこちらも平手の、そして他のメンバーたちのパフォーマンスに圧倒されてしまいます。そんな平手を1番近くで見ていたメンバーたちによるインタビューが平手の、そして欅坂46の5年に渡る歴史の証言となっていく。平手自身のインタビューはありませんが(本人が断ったのかも)、それも逆に効果的。そして平手を失ったメンバーたちの喪失感。傷つき、打ちのめされ、のたうち回りながらも、そこから再び立ち上がる彼女たちの姿も印象的でした。
 こちらはコロナで公開延期となった4月以降の出来事も新たに撮影して追加編集しており、無観客の配信ライブにおける欅坂46としての活動休止と改名の発表から、最後はコロナ下の東京の街へ。『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』で東日本大震災と真正面から向き合った高橋栄樹監督だけに、この未曾有の事態をも映像の中に収めておこうという気概と誠実さを感じました。
 終盤は、香港民主派の女神・周庭さんも拘束中にずっと頭の中に浮かんでいたという「不協和音」から、「黒い羊」「誰がその鐘を鳴らすのか?」「太陽は見上げる人を選ばない」という流れの楽曲で、その歌詞が現在の世界に妙にリンクしているように思えるのは、もちろん作詞当時に意図していたものではなかったとはいえ、なかなかに心震えるものがありました。いや〜すごかった。さすが高橋監督。傑作です。


 この機会に、他の48&46ドキュメンタリー映画の感想もまとめて書いておこうと思います。過去にすでに書いたものについては省略。

『DOCUMENTARY of AKB48 to be continued 10年後、少女たちは今の自分に何を思うのだろう?』(2011年)
 AKB48ドキュメンタリー映画の第1作で、監督は寒竹ゆり。確か2作目だったか3作目だったかを観た後にDVDで観ました。#1360で途中で観るのをやめたと書いてるんで、その後に再チャレンジして最後まで観たんだと思います。AKB48の2010年の1年間を扱った映画なんですが、ドキュメンタリー映画というよりもインタビュー集と言ったほうがいいような内容で、わざわざ映画館で公開するようなもんじゃないですね。コンサートDVDの特典映像にでも付ければ十分です。つまんなくて観るのが苦痛だったし、今となっては10年も前の古いインタビューなので、よほどの好事家以外は観る必要はないでしょう。

『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』(2012年)……#1360
 AKBドキュメンタリー映画第2作で、2011年の1年間を扱っています。監督は高橋栄樹。僕は1月の劇場公開時にはまだAKBに興味がなくて観なかったんですが、その年のうちにちょっとハマって年末にレンタルDVDかNHK-BSの放送で観ました。東日本大震災が大きなウェイトを占めている映画で(高橋監督は岩手県盛岡市出身で高校時代を宮城県仙台市で過ごしたとのこと)、AKB48グループが行った被災地訪問ライブや当時メンバー唯一の被災者だった新メンバーへのインタビューを中心に、前田敦子が1位の座を奪回した選抜総選挙(「私のことは嫌いでもAKB48のことは嫌いにならないでください」という名言はこの時のものだが映画には出てこない)や、過呼吸と脱水症状で倒れるメンバーが続出した西武ドームコンサートの壮絶な舞台裏、若いメンバーたちによる新チームの動揺などが描かれていきます。それまでAKB48に関心のなかったような人々からも高く評価する声が続出し、「一種の戦争映画」と表現する人もいたような作品で、震災の記録映像としても価値が高い一作。シリーズ中でも最高傑作と言っていいでしょう。

『DOCUMENTARY of AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見る?』(2013年)……#1379
 シリーズ第3作で、扱っているのは2012年の1年間。監督は第2作に引き続き高橋栄樹。僕が初めて映画館で観たAKBドキュメンタリー映画で、絶対センター前田敦子の卒業という一種の社会現象にまでなった出来事を軸に、彼女の卒業後の次のセンター争いや、いくつかの恋愛スキャンダルの顛末、グループから卒業した元メンバーなどにスポットを当てています。前作が戦争映画なら本作は宗教映画とも評された映画で、秋葉原の街が前田敦子一色に染まった卒業公演の終わった深夜に、町中に貼られていた前田の巨大ポスターが次々にゆっくりと剥がされていく印象的なシーンは、高橋監督がルーベンスの「十字架から降ろされたキリスト」に重ね合わせたという映像。いわば神の座に据えられたスターが、卒業によって人間に帰るという、きわめて現代的で象徴的なシーンと言えます。ややオーバーに言えばアイドルとは何か?という、ある種の哲学的命題を含んだドキュメンタリー映画と言ってもいいでしょう。これもとても面白かったです。

『DOCUMENTARY of AKB48 The time has come 少女たちは、今、その背中に何を想う?』(2014年)
 AKBドキュメンタリー映画の4作目で、監督はまたも高橋栄樹。当初は2013年を扱う予定が、途中で2014年前半までの1年半を扱うことに変わりました。しかし実質的には2014年前半の半年間だけを扱っており、2013年のことはほぼ描かれていません。前田敦子と並ぶ人気メンバー大島優子の卒業が映画の中心的題材なんですが、前作とテーマがかぶってることもあって、どうも出来は今一つだった印象です。岩手における握手会で起こった傷害事件も取り上げられており、そこはかなりの緊張感がありました。

『アイドルの涙 DOCUMENTARY of SKE48』(2015年)……#1557に記述。監督は石原真。
『悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46』(2015年)……#1557に記述。監督は丸山健志。
『道頓堀よ、泣かせてくれ! DOCUMENTARY of NMB48』(2016年)……#1638に記述。監督は船橋淳。
『尾崎支配人が泣いた夜 DOCUMENTARY of HKT48』(2016年)……#1638に記述。監督は指原莉乃。
『存在する理由 DOCUMENTARY of AKB48』(2016年)……#1638に記述。監督は石原真。


>最近観て面白かった映画
『時をかける少女』
 大林宣彦監督が亡くなった時に追悼放送されたものを録画してたんですが、ようやく観ました。尾道三部作は『転校生』と『さびしんぼう』は観てるんですが、これだけ観てなかったんですよね。その2作同様にこの映画も面白かったです。やはり大林監督はSFジュブナイルの名手。ジュブナイルの本質は「切なさ」だろうと思うんですが、大林監督はその切なさを表現するのがすごく上手いんでしょう。特殊撮影(今見ればかなり拙いんだけど)を使った映像表現も面白い。『時をかける少女』が何度も何度も再映画化されるのも、筒井康隆の原作(未読)の力もさることながら、やはりこの映画の影響力の強さと言っていいかと(原作はそれ以前にNHKの少年ドラマシリーズというので『タイムトラベラー』というタイトルでドラマ化され、そちらも好評だったそうですが)。映画の中の80年代の空気もなんとも懐かしかったです。



#1797 
バラージ 2020/08/14 00:18
思春期の少女映画 と 中華ファンタジー史劇ドラマ

 『はちどり』という韓国映画を観ました。韓国が空前の経済成長を遂げていた1994年を舞台とした女子中学生が主人公の映画です。

 主人公は団地に住む14歳の中学2年生。小さな餅屋を営む両親と姉と兄の5人家族。学歴偏重のスパルタ教育がのさばる学校にはなじめず友だちもいない。家庭では権力的な家長の父親に誰も口答えできず、高校受験に失敗して隣町の高校に通う姉は彼氏と遊びまくっては父親に叱責されて泣き、ソウル大学を目指すよう父親からハッパをかけられている中学生徒会長の兄はそのストレスから親に隠れて主人公に暴力を振るう。家庭にも学校にも居場所がないと感じる主人公は、同じ漢文塾に通う別の中学の親友とカラオケやディスコで遊んだり、やはり別の中学に通うボーイフレンドや同性愛的に慕ってきた年下の少女とデートを楽しんだりして過ごす。
 孤独を抱える彼女が出会ったのは、新たに漢文塾に来た女性講師だった。ソウル大学を長く休学中という講師はどこか不思議な雰囲気を持ち、中学生の主人公にも子供扱いせず同じ目線で話を聞いてくれた。彼女は主人公に「誰かに殴られても黙っていてはダメ」と言葉をかける。出来心でした万引きで親友の裏切りにあい、ボーイフレンドには浮気され、年下の少女も学期が変わると熱が冷めたようになぜか冷たくなっている。そんな中で初めて自分を本当に気にかけてくれる大人に出会った主人公は、女性講師に徐々に惹かれていくが、やがて講師はなぜか突然塾を辞めてしまう。そして10月21日、ソウル中心部の漢江にかかるソンス大橋が崩落する大事故が発生した……。

 ほとんど何の情報も入れないまま、主人公の中学生の顔がアップになったチラシのデザインになんとなく惹かれて観たんですが、非常に興味深く、かつ面白かったです。本作は中学生が主人公なので、青春映画というよりも思春期映画、あるいは少女映画と言ったほうがいいでしょう。高校生を描いたいわゆる青春映画というのはたくさんあるし、小学生を描いた子供映画というか児童映画というのもわりとあるんですが、中学生を描いた映画というのは実は意外に少ないんですよね。81年生まれでこれが初監督だという女性監督キム・ボラ自身も、それを意識して女子中学生の映画を撮ることにしたと語っています。
 臨床心理学者の河合隼雄氏が、子供から大人に変わりゆく思春期の内面では自分自身でも言語化できないような凄まじい変化が起きていて、特に思春期の少女の内面は男性にはほとんど理解不可能に近いと著書で何度も言及していましたが、キム・ボラ監督はそれを映像として見事に描き出していたように思います。僕は男なんで女性特有の感覚に若干違和感を感じるというかしっくり来ないというか馴染みきれないところもあったし、作風がかなり淡々としてるので中盤少し眠くなるところもあったんですが、それを差し引いてもとても良い映画でした。主演のパク・ジフや女性講師役のキム・セビョクをはじめとする役者陣もみな素晴らしかった。
 子供から大人へと変わりゆく少女と、新たな国へと生まれ変わろうとする韓国の歪みと矛盾と苦しみが二重映しに描かれているのも監督の意図通りだったようで、韓国映画の幅広い底力を見せつけられたように思います。とても良い映画でした。
 歴史的な事象も物語の背景として出てくるんですが、それについては歴史板のほうに書かせていただきます。


 そしてBS12で放送してた中国ドラマ『海上牧雲記 3つの予言と王朝の謎』(全75話)の録画をようやく観終わりました。いやぁ、面白かった。BS12の中国ドラマは週5放送なんで録画消化がきついんですが、このドラマは面白くてサクサク視聴がはかどりましたね。映画ではなくテレビドラマ(もしくはネットドラマ)なんですが、歴史ものでもないんで歴史板ではなく映画板で感想を書かせていただきます。
 内容はファンタジー風味の史劇風時代劇ドラマで、原題は『九州・海上牧雲記』。中国を代表する7人の作家の共同創作によって作り上げられた架空の歴史世界“九州”を舞台とした小説の1つが原作とのこと。なんかテーブルトークRPGみたいな企画ですね。皇帝の息子・牧雲笙、将軍の息子・穆如寒江、蛮族の息子・碩風和葉の3人が主人公で、大量に出てくる登場人物のひとりひとりに綿密なキャラ設定とそれぞれのドラマがあり、それらが絡み合う濃密な群像劇ドラマが展開していきます。とにかく予算も人員もしこたまぶちこんだ、下手な映画をはるかにしのぐ大作で、脚本・演出・役者・撮影・美術・CG・アクションなどいずれも一級品の素晴らしさ。ハードでシリアスでワイルドでハードボイルドな作風も実に良い。今までに観た中国ドラマの中でも図抜けた出来で、脇役の1人として出演してる女優のレジーナ・ワンが目当てで観始めたんですが、すっかりハマってしまいました。そのレジーナ・ワンは今回は悪役まわりなんだけど、さすがの演技力でこれまた存在感を放っています。
 ただ、このドラマ、最後が「えっ? ここで終わり?」という、思いっきり「第1部・完」みたいな終わり方。どうも原作の3分の1しかドラマ化されてないみたいなんですよね。当初は三部作の予定だったという噂もあるんですが、続編は作られていないようです(本作は2017年のドラマ)。まあ、かなりの豪華キャストだったんで再招集は難しいでしょうねえ。ホアン・シュエン(『ブラインド・マッサージ』『空海 美しき王妃の謎』『芳華 youth』)、ショーン・ドウ(『サンザシの樹の下で』『危険な関係』『最後のランナー』)、ジョウ・イーウェイ(『薬の神じゃない!』)の主演3人をはじめ、ワン・チエンユエン(『ブレイド・マスター』『誘拐捜査』『ザ・クロッシング』『SHADOW 影武者』)やレジーナ・ワン(『軍中楽園』『戦神 ゴッド・オブ・ウォー』『鵞鳥湖の夜』)など、映画でもよく見かける有名俳優が多数出演してますからね。とはいえ、そのような終わり方さえも、「歴史というものはキリのいいところで終わるものではない。ドラマのその後も続いていくものだ」とでもいうように感じられて、妙に味のある終わり方に思えてしまいました。いや、良かったです。



#1796 
バラージ 2020/08/04 22:02
DVD&Blu-rayの話

 去年の9月に日本公開されたチャン・イーモウ監督の『SHADOW 影武者』ですが、普通は半年くらいでDVD&Blu-ray化されるはずなのにその情報すら出てこず、3月頃からずっと、どうなってるんだ?と首をひねっておりました。なぜか動画配信はされていて、なぜ配信だけ?と謎は深まるばかり。これもコロナの影響なんだろうか?などと考えてるうちに、今月WOWOWで放送されることになりました。配信はされてたから放送は可能なんでしょうが、DVD&Blu-rayはどうなってるんだ?と改めて調べたら、こちらもようやく発売情報が出ていたようで。が、なんと発売予定は11月とのこと。テレビ放送がされてからDVD化されるというのもおかしな話で、海外版のDVD&Blu-rayはとっくに出てるのに日本版だけこんなに遅れたのはやっぱりコロナのせいなんだろうか? ま、とりあえず無事発売が決まったことは良かった。

 そういやジャッキー・チェンの『ナイト・オブ・シャドー 魔法拳』もちょっと前にDVDレンタルが開始されたんで、ようやく字幕版を観たのを忘れてました。やっぱり外国映画は字幕ですね。タイトルやエンドロールはやはり全て英語だったんですが、英語版というより国際版なのかな。改めて観ても内容はほとんど『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』だったけど(笑)、まあまあ面白かったです。



#1795 
バラージ 2020/08/01 12:07
またも追悼

 アラン・パーカー監督が亡くなられましたね。
 リアルタイムで『ミシシッピー・バーニング』『愛と哀しみの旅路』『ザ・コミットメンツ』『エビータ』を観た他に、ビデオで『フェーム』を、テレビで『エンゼル・ハート』を観たから、僕は結構たくさん観てたんだな。どれもなかなか面白かったです。個人的に1番お気に入りなのは『ザ・コミットメンツ』(#1545)。監督作を調べたら、結構な寡作家だったんですね。
 デビューは『小さな恋のメロディ』の原作・脚本とのことで、これは知りませんでした。これも子供の頃にテレビで何度も放送してて、よく観ましたねえ。ウッチャンナンチャンがコントでパロディをしたりもしてたなあ。
 ご冥福をお祈りします。



#1794 
バラージ 2020/07/19 17:29
追悼

 モリコーネさんはもちろん名前は知ってるんですが、どの映画の音楽を担当したとかまではチェックしてないんですよね。改めて調べると僕が観たのは、『荒野の用心棒』『死刑台のメロディ』『遊星からの物体X』『アンタッチャブル』『フランティック』『ニュー・シネマ・パラダイス』『カジュアリティーズ』『みんな元気』『バグジー』『ディスクロージャー』『マレーナ』と結構観てるなあ。

 森崎東監督の訃報もありました。こちらも名前はよく聞くんですが、映画はあまり観てなくて。ビデオで観た『時代屋の女房』と、映画館で観た『美味しんぼ』だけかな。『美味しんぼ』はいまいちだったけど、『時代屋の女房』はなかなか面白かったです。夏目雅子さんが美しかった。

 そして昨日飛び込んできた衝撃的な訃報。三浦春馬さん。いったいなぜ……。何があったのかわかりませんが、若すぎますね。もちろん年齢だけではなく、死に方の問題でもありますが、こう言っては何だけど歳をとった人の死はある意味自然なことであって、僕にとってはそこまで衝撃的ではありません。僕はやはり歳若くして死ぬ人のニュースにショックとやりきれなさを感じます。彼の出演映画だと、日中合作映画『真夜中の五分前』での主演が印象に残っています。とてもいい映画でした。

 皆さま、ご冥福をお祈りします。



#1793 
バラージ 2020/07/17 00:14
最近観た映画いろいろ

 現在、BS12で放送中の史劇風ファンタジー時代劇中国ドラマ『海上牧雲記』を放送からはやや遅れながらも録画消化中。面白くて順調に観進めております。

>映画館で観た映画
『mellow』
 映画館の営業再開1発目に観た映画(『殺さない彼と死なない彼女』より前に観た)で、おしゃれな花屋の男性店主と、亡き父のラーメン屋を継いだ若い女性を中心に、様々な人々の恋心が交錯する日本の恋愛映画。誰もが誰かに片想いといった感じの、ゆったりとした時間が漂うほんわかとした映画で、正直ちょっとゆったりしすぎてて間延びしたようなところもあるんですが、まあまあ面白かったです。監督・脚本は今泉力哉という人で、どっかで名前を聞いたことあるなと思ったら、ドラマ『セーラーゾンビ』の監督の1人でした。主演は若き名バイプレイヤーから今や人気俳優へと躍り出た田中圭。ヒロインは岡崎紗絵という女優で、美人で可愛いし演技も上手いんだけど、ヒロイン役としてはややパンチが弱いような。他の俳優たちも田中圭以外はややパンチが弱いかな。

『デッド・ドント・ダイ』
 ジム・ジャームッシュ監督のゾンビ映画。僕はゾンビ映画初観賞でした。あんまり興味なかったからですが、この映画はたまたま予告編を観て面白そうだったんで観てみた次第。ジャームッシュの映画は『デッドマン』を唯一観てるんですが、もともとインディペンデント映画の雄として名を成した人で、この『デッド・ドント・ダイ』もまたなんとも奇妙というか変な映画です。いかにも伏線っぽいのが全然そうじゃなかったり、ほとんど意味不明の謎展開になったり、メタフィクションというよりほとんど楽屋落ちネタのシーンがあったりと、なんともとぼけた味わいの映画。怖がらせるホラーというよりコメディっぽいのは予告編を観てわかってたし、だからこそ観に行ったんですが、爆笑というよりクスリと笑うような映画でした。ただ、ジャームッシュのことを知らずに普通のゾンビ映画として観に行ったら肩透かしの連続でしょうね。僕もまあまあ面白かったって程度です。

『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』
 雨のニューヨークを舞台にしたウディ・アレン監督のロマンチックコメディ。ニューヨーク出身でアリゾナ州の大学に進学した青年と、地元アリゾナ出身の同じ大学の恋人の女の子が主人公。女の子は大学の課題で、有名な映画監督にニューヨークのマンハッタンでインタビューできることになり、青年はインタビューが終わったら地元ニューヨークでデートするためのプランを練り上げる。ところが彼と分かれて女の子が向かった監督へのインタビューが思わぬ展開となり、そこから有名脚本家や有名俳優と次々に関わることに。いつまで経っても帰ってこない彼女にスマホで文句を言う青年のほうも、偶然出会った高校の同級生が大学の課題で撮る映画に出演することになったり、その撮影で出会った元カノの妹と言い合いしたり意気投合したりしながら過ごすことになる。雨の降りしきるニューヨークで2人はまた会えるのか……といったようなお話。いかにもウディ・アレンという感じの映画でなかなか面白かったです。最後はそっちかい!とは思いましたが(笑)。

>録画やDVDで観た映画
『ビール・ストリートの恋人たち』
 ジェームズ・ボールドウィンの米国黒人文学『ビール・ストリートに口あらば』(旧邦題。新訳版は映画と同じ邦題)の映画化。原題直訳の「〜口あらば」じゃ文学的でわかりにくいと考えて「〜恋人たち」という邦題にしたんだろうけど、「たち」ったって恋人は主人公カップルしか出てこないんだよなあ。「ビール・ストリートの恋人」じゃ語呂が悪いと思ったのかもしんないけど。1970年代の黒人差別が残るニューヨークのハーレムを舞台に、無実の罪で逮捕された恋人を救うために奔走する妊娠した少女を主人公としたヒューマンドラマ映画で、『ムーンライト』のバリー・ジェンキンス監督作。公開は去年だったんですが、なんだかんだで観逃しました。アート系の映画で、評判通り香港のウォン・カーウァイの影響が感じられます。主演のキキ・レインとステファン・ジェームスも好演。なかなかいい映画でした。

『ブラインド・マッサージ』
 南京の盲人マッサージ院を舞台とした2014年の中国のヒューマンドラマ群像劇。監督は『ふたりの人魚』『パープル・バタフライ』『天安門、恋人たち』のロウ・イエ。畢飛宇の同名ベストセラー小説の映画化とのことで、原作は本屋で見かけたことがあります。盲人たちを無闇に聖化せず、等身大の人間として描いているのが新鮮で、彼ら彼女らの恋愛や結婚、悩み、性などの俗な部分を生々しく描いており、セックスシーンもあるためPG12になってます。映画の冒頭で普通は字幕で流れるようなタイトルや監督・出演者名をナレーションで流したり、全体的にも盲人向けの?ナレーションがちょくちょく入る。また暗闇のような映像表現で盲人の感じる世界を表現しているのも印象的。ホアン・シュエンはじめ主演クラスの複数の役者は普通の健常者の俳優だそうですが見事な名演で、その周囲の他の盲人役は実際の盲人たちが演じているらしい。これまでのロウ・イエ監督の映画ように終盤は胸が締め付けられるような切ない展開になっていきます。いい映画でした。



#1792 
哲也城(支配人) 2020/07/09 22:55
エンニオ・モリコーネ死去

こちらにはかなり久々に書き込みますねぇ。映画館もずいぶん行ってませんし、栄耀映画徒然草も更新とまってるし、話題がいまひとつなかったせいもあります。

書き込む話題が訃報ネタなのもいつものことのような気がしますが…
一昨日、イタリアの作曲家で数多くの映画音楽を手掛けたエンニオ・モリコーネさんが91歳でついにお亡くなりになりました。子に人も、失礼ながら「まだ生きてるよな」と思ってしまう映画関係者でした。未見なので知りませんでしたが、割と最近のタランティーノ監督策「ヘイトフルエイト」まで映画音楽の仕事をされていたそうで。

 あまりにも数多くの映画音楽を手掛けてますが、訃報記事の大半が「ニュー・シネマ・パラダイス」を代表作にしてました。まぁ確かに、あの作品自体が名作なのはもちろんですが、そこにあの曲がきてよけいに涙腺を刺激しちゃってるのは間違いない。
 だけどあれを「代表作」にしていいのかな、と思うほど、それ以前のキャリアが山のようにあるわけで…「アンタッチャブル」もありますし、「荒野の用心棒」をはじめとするセルジオ=レオーネ監督のイタリア製西部劇の数々とか「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」とか…一度聞くと忘れられない名曲が目白押し。
 映画ではないですが、日仏共同制作のTV番組「ルーブル美術館」のテーマ曲「モナリザの微笑」も印象的でした…といっても、あれ、何かの映画音楽の使いまわしアレンジだそうですけどね(日本の作曲家も結構同種のことをやってるのが見つかる)。

 この人が曲をつけるとどんな作品も名作になっちゃう…と評した人が僕の身近にいましたが、NHK映画「武蔵」にはそれが通用しなかったみたい(笑)。あの仕事はどうもやっつけ仕事と言っては言い過ぎですが、あまり力は入ってなかったらしくて、曲数も少ないのでスタッフがBGMあてに苦労していたなんて話も聞きます。



最近見た映画といえば…
先日テレビで放映していた「キングコング髑髏島の巨神」を初めて見ました。来る「ゴジラVSキングコング」の予習として今更ながら見たんですけどね。「地獄の黙示録VSコング」と来るとは(笑)。サミュエル=L=ジャクソンもコングとタメはっておりました。



#1791 
バラージ 2020/06/03 00:53
青春の翳りと煌めき

 緊急事態宣言が解除ということで僕の地方では映画館が営業再開されたため、『殺さない彼と死なない彼女』という日本映画を観てきました。
 東京では去年の11月に公開された映画なんですが地元では遅れに遅れて、DVD&Blu-ray化直前(動画配信は始まった後)という今年の5月1日から上映される予定でした。しかし緊急事態宣言による映画館休業のおかげでDVDレンタル開始後の公開となってしまい、それでも予告編を観た感触などからなんとなく期待できる予感があって地元映画館にしつこくリクエストを出してきた僕としては、ちゃんと映画館で観てきたのです。

 無気力な高校生活を送る「殺す」が口ぐせの小坂(間宮祥太朗)と、リストカット常習者の死にたがり鹿野(桜井日奈子)。ひたすら地味で真面目な地味子(恒松祐里)と、その親友でとにかく愛されたいキラキラ女子きゃぴ子(堀田真由)。恋というものがわからない八千代(ゆうたろう)と、断られても断られてもめげずに彼に告白し続ける撫子(箭内夢菜)。この3組の高校生の物語が別々に平行して描かれていき、最後のほうで意外な結びつき方をするという青春映画です。
 いずれも高校生活の場の真ん中にはいない、疎外されたというか孤立したというかある種の孤独なはみ出し者や変り者たちの青春の、一瞬の煌めきや儚さや切なさを穏やかでリアルな空気感の中に描き出していく作品で、6人の若い俳優たちの演技がいずれも素晴らしく、マンガ的な台詞でありながらいかにも高校生がしゃべってそうな自然な台詞回しがなんとも言えず良かったですね。薄い靄のかかったような淡い光の映像感も印象的(照明を一切使わず自然光だけで撮影したそうです)。そしてそこには常に死の影がある。ちょっと市川準のデビュー作『BU・SU』を思わせました。もしくは台湾映画『藍色夏恋』とかそういう系統の、青春の影と光を描いた映画です。
 原作はTwitterに投稿され、熱狂的支持を受けて書籍化された4コマ漫画とのこと。映画もロングランのヒットになったらしいんですが、それもうなずけます。すげえ良かった。期待にたがわぬ素晴らしさでした。早くも今年のNo.1決まりかな(去年の映画だけど)。


>面白かったテレビドラマ
 コロナ騒動ですっかり忘れてましたが、1〜3月期のテレビドラマ『女子高生の無駄づかい』がアホみたいなドラマで抱腹絶倒に面白かったです。女子高生の鼻くそレベルのしょーもない日常を描いたというコメディドラマで、原作はこれまたネットマンガとのこと。岡田結実、恒松祐里、中村ゆりか等出演者たちもみんな好演でした。最終回に新キャラっぽい子の後ろ姿がチラッとだけ映ったんですが、好評だったようなんで多分続編を作るつもりなんだろう……と思ったら、この騒ぎでありゃりゃといったところ。


>MVというショートムービー
 前田敦子や島崎遥香といった魅力的なメンバーの多くが卒業してしまったためもあってAKB48に関心を失いつつある僕ですが、AKB48はミュージックビデオの監督に有名映画監督を起用することが多く、そのためMVも短編映画風に面白く観れちゃうことが多い(YouTube公式サイトでタダで観れる)。以下の映画監督たちがAKBのMVを監督しています。

2010年
『桜の栞』岩井俊二
『ヘビーローテーション』蜷川実花
『Beginner』中島哲也
2011年
『桜の木になろう』是枝裕和
『Everyday、カチューシャ』本広克行
『フライングゲット』堤幸彦
『Flower(前田敦子ソロシングル)』熊澤尚人
2012年
『GIVE ME FIVE!』杉田成道
『真夏のSounds good !』樋口真嗣
『ギンガムチェック』ジョセフ・カーン
『UZA』ジョセフ・カーン
『君は僕だ(前田敦子ソロシングル)』犬童一心
2013年
『So long !』大林宣彦
『さよならクロール』蜷川実花
『ハート・エレキ』金子修介
『鈴懸の木の道で「君の微笑みを夢に見る」と言ってしまったら僕たちの関係はどう変わってしまうのか、僕なりに何日か考えた上でのやや気恥ずかしい結論のようなもの』北村龍平
2014年
『前しか向かねえ』熊澤尚人
『セブンスコード(前田敦子卒業後ソロシングル)』黒沢清
2015年
『Green Flash』是枝裕和
『僕たちは戦わない』大友啓史
2016年
『君はメロディー』蜷川実花
『翼はいらない』馬場康夫

 ただ最近は映画監督ではなく映像クリエイターと呼ばれる人を起用することが多いようで、知らない人ばっかりです。今まで一番多くMVを監督してるのは、『Documentary of AKB48』シリーズを3作監督している高橋栄樹。この人も映画監督というより映像クリエイターですが、かなり初期からMVを監督しています。『軽蔑していた愛情』『夕陽を見ているか?』(以上2007年)、『桜の花びらたち2008』『大声ダイヤモンド』(2008年)、『10年桜』『涙サプライズ!』『言い訳Maybe』『RIVER』(2009年)、『ポニーテールとシュシュ』(2010年)、『上からマリコ』(2011年)、『永遠プレッシャー』(2012年)、『唇にBe My Baby』(2015年)、『#好きなんだ』(2017年)、『センチメンタルトレイン』(2018年)、『サステナブル』(2019年)など。
 しかし、まゆゆこと渡辺麻友も引退ということで、時は過ぎ去っていきますな。



#1790 
バラージ 2020/05/19 19:04
ブルース・リー遊戯

 『ドラゴン怒りの鉄拳』について感想を書いてるうちに、他のブルース・リー映画の感想も書きたくなり、そういえばジャッキー・チェン映画の感想はまとめて書いたけど、ブルース・リー映画の各作品感想は書いてないなということで、まとめて感想を書いちゃおうと思います。

『ドラゴン危機一発』……#1264、#1268に記述。
『ドラゴン怒りの鉄拳』……#1787に記述。

『ドラゴンへの道』(原題:猛龍過江)
 ロー・ウェイに愛想を尽かしたブルース・リーがゴールデン・ハーベストと提携して自ら立ち上げたコンコルド・プロダクションの第1回作品で、主演・監督・製作・脚本・音楽・武術指導と1人6役で作った完全なるワンマン映画です。それだけにブルース・リーの思想性というか考え方が最もよく表れた映画と言えるでしょう。劇場公開邦題は『最後のブルース・リー ドラゴンへの道』。『燃えよドラゴン』から始まって『危機一発』『怒りの鉄拳』と続き、本作が日本で公開される最後のブルース・リー映画になったからだそうで、ビデオやDVDにもその邦題のバージョンがあります。
 ギャングに立ち退きを迫られて嫌がらせを受ける従姉妹の店を守るためにイタリアのローマにやってきた青年タン・ロンが、ギャングのチンピラどもやボスが呼び寄せた空手の達人と戦うというストーリー。全編イタリアのローマを舞台にした映画で、香港映画初のローマ・ロケをした作品とのこと。ブルース・リーがちょっと三枚目なところもある役どころをコミカルに演じているのも特徴で、ヒロインである主人公の従姉妹役のノラ・ミャオの現代風ルックも魅力的。ブルース・リー初の現代劇香港映画で、悪役のチンピラどもが拳銃を持ってたりするのにどう対抗するか?なんていうネタもちゃんとあったりします。全米空手チャンピオンで後にB級アクション映画俳優として出世するチャック・ノリスとのコロッセオでの死闘は、ブルース・リーのベストファイトと名高い傑作シーン。まあリバイバル上映の時に映画館で観たら、セット撮影なのが丸わかりのチープさだったんですが(笑)、そんなことどうでもいいくらいに興奮もののバトルだったんですよね。『怒りの鉄拳』と並ぶブルース・リーの最高傑作と言っていいでしょう。撮影の西本正(賀蘭山(ホー・ランシャン))は当時の香港映画界で活躍したカメラマンとのこと。
 ちなみに日本人空手家を演じているのは韓国人武道家のウォン・インシク(黄仁植)なんですが、彼の広東語吹替をした声優による「おまぃはたんろんかあ〜(お前はタン・ロンか?)」「あーいた(痛)」「おーいた(痛)」などの珍妙な日本語は有名らしく、僕も字幕版を初めて観た時はつい笑っちゃいました。最初にテレビで観た時は吹替だったんでわかんなかったんだけど。

『燃えよドラゴン』(原題:Enter The Dragon、中国語題:龍争虎闘)
 ブルース・リーとカンフーの名を世界に知らしめた代表作ですが、公開された時にはブルース・リーはすでにこの世の人ではありませんでした。米国のワーナーブラザーズと香港のコンコルド・プロダクションによる合作映画でワーナーによって世界配給され、そのためそれまではブルース・リーの映画に見向きもしなかった日本の配給会社(ゴールデンハーベストの売り込みや、誰か忘れたけど日本映画人の紹介もあったが買わなかったという)も「洋画(=米国映画)」扱いで輸入した映画です。『燃えよドラゴン』という邦題は、司馬遼太郎の小説『燃えよ剣』をヒントにしたというのも有名な話で、司馬の了解も得ていたとのこと。国際公開版は98分ですが、香港公開版のみにあったシーンを追加した102分のディレクターズカット版もソフト化されています
 日本では(欧米でも)ブルース・リー初体験となった衝撃から最も有名かつ最も人気のある代表作として扱われてますが、地元香港ではブルース・リー急死直後の公開でありながら『怒りの鉄拳』や『ドラ道』ほどのヒットにはならなかったとのこと。リアル世代じゃないため日本公開順に観ておらず、『怒りの鉄拳』『ドラ道』より後に観た僕の感想としても両作品に比べると今一つ。明らかに『007』をパクったようなストーリーもなんだかチープだし、準主役のジョン・サクソンの出番が思いの外多く、ほとんどダブル主人公に近い形になっちゃってるのも不満。肝心のカンフーアクションも、実際に少林拳の達人という悪ボス役のシー・キエンが当時すでにおじいちゃんのためもあってか、『怒りの鉄拳』『ドラ道』に比べると今一つ迫力がありません。ちなみにシー・キエンは悪役俳優として名を成したため、道を歩いていると石を投げられたこともあったとか。ブルース・リーはシー・キエンを映画界の父として慕っていたそうです。

『死亡遊戯』(原題:死亡遊戯)
 『ドラ道』に続いて監督兼主演第2作としてクライマックス・シーンのみ撮影したところで、ワーナーより『燃えドラ』のオファーが入ったため撮影が後回しとなり、そのままブルース・リーの死によって未完成となった作品。困ったゴールデンハーベストが『燃えドラ』のロバート・クローズ監督に依頼して、頭をひねったクローズがそっくりさんと過去の映画のつぎはぎで5年後になんとか完成させた映画です。日本公開時の邦題は『ブルース・リー 死亡遊戯』。原題通りの邦題となったのは、やはり『死亡遊戯』というタイトルが日本語でもわかりやすい上にかっこよかったからでしょうね。
 本物のブルース・リーが出てくるのはクライマックスの五重塔での10数分の対決シーンだけ。2階では棒術とヌンチャクの達人(ダニー・イノサント)、3階では韓国武術の達人(チー・ハンツァイ(池漢載))、4階では巨大な長身の黒人武術家(カリーム・アブドゥル・ジャバー。NBA通算得点最高記録を持つバスケットボール選手)とそれぞれ闘います(1階は入口、5階は悪ボスの爺さんがいるだけで、そっくりさんが演じている)。僕は最初テレビの吹替放送で観たんですが(「ドラゴン〜」ものよりも先に観たブルース・リー初体験映画でした)、面白かったのはその五重塔シーンだけで、あとは中盤のそっくりさんvs白人空手家(『ドラ道』『燃えドラ』にも出てたボブ・ウォール)の闘いがまあまあ面白いというぐらい。他はアクションだけでなく映画としても全く退屈な凡作でした。まあ、ロバート・クローズはB級アクション専門監督らしいからなあ。ただその分、五重塔シーンはめちゃくちゃ面白く、録画したビデオもそこだけ繰り返し何度も観たもんです。あと、ジョン・バリーが作曲した有名なテーマミュージックもめちゃくちゃかっこいい。

『死亡の塔』(原題:死亡塔)
 ブルース・リーの未使用フィルムがまだ残されていた、という売り文句で公開されたパチもん映画。劇場公開時の邦題は『ブルース・リー 死亡の塔』で、僕はテレビの吹替放送で観たこの映画が初めてのブルース・リー映画なんですが、最初から観たわけではなく、観たのはほとんど終盤のアクションシーンだけでした。ところがまず塔が出てこない(笑)、ブルース・リーが出てこない(!)、ものすごくつまらない、の三拍子そろったとんでもない駄作。ブルース・リー主演なのにクライマックスにブルース・リーがいない(だから僕にとってのブルース・リー初体験映画ではない)のがわけわかんなかったんですが、いろいろブルース・リーの知識を得ていくうちに本物が3分ぐらいしか出てこない「そっくりさん映画」だと知りました。以来長く観ないできたんですが、レンタル店で目当てのビデオが借りられてた時に、何を観ようか迷った末に借りて観ました。いやあ聞きしに勝るひどい出来。マニア以外は全く観る必要はありません。でもこんな映画でもBlu-ray化されてるんだよなあ。マニア恐るべし。こんな映画をBlu-rayにするくらいなら、もっと他にDVD化すべき映画があると思うんだけど。

『ブルース・リー神話』(原題:李小龍生與死、英語題:Bruce Lee, the Legend)
 ブルース・リー没後10年を記念してゴールデンハーベストが製作した、彼の生涯を描いた伝記ドキュメンタリー映画。日本では映画祭上映のみで、映画祭邦題&ビデオ邦題は『ブルース・リーの神話』でしたが、ビデオ再発売時に「の」が抜けて上記の邦題になりました。僕は確かNHK-BSで放送されたものを観ましたが、伝記ドキュメンタリーとしてよくまとまっていて、なかなか面白かったです。特に驚いたのが、『死亡遊戯』の本編に採用されなかった未公開映像が多数収録されていたこと。NGシーンではなかったので、つながりの問題から本編には収録できなかったんだろうなあと思ったんですが、その真相は次に紹介する映画で明らかになることに。

『Bruce Lee in G.O.D 死亡的遊戯』
 『死亡遊戯』では、ブルース・リー本人が演じた五重塔のシーンは10数分のみでしたが、実際には40分ほどのOKシーンがあったとのこと。ではなぜ10数分しか使われなかったかというと、オリジナルではブルース・リーの他にジェームズ・ティエン(『危機一発』にも出てた人)と解元という2人の俳優もいっしょに五重塔を上っていたんですが、5年後には解元も急死しており再集結が不可能だったため、ブルース・リー1人で五重塔を上る形に編集しなければならなかったからだそうです。
 この映画はフィルムの権利を買い取った日本の映画会社が製作した日本映画なんですが、前半はブルース・リーが『死亡遊戯』の構想を練るまでを描いた伝記映画(というか再現ドラマ?)パートですが、それは後半への助走であって正直そこはどうでもよく(笑)、後半で本来の3人バージョンで編集された五重塔シーンを観ることができます。他の2人が各階の達人に敵わず、ブルース・リーが達人を倒すというパターンの繰り返しですが、『死亡遊戯』の3倍以上のアクション・シーンは大興奮もので、こっちさえ観れば『死亡遊戯』のほうは観なくてもいいと言っていいでしょう。いやぁ、面白かった。ちなみに3階分しか映像がないのは、そこまでしか撮影されていなかったからだそうです。


>最近?観た映画
『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』
 緊急事態宣言で映画館が休業する前に最後に映画館で観た映画。中国映画で原題は「地球最后的夜晩」。ストーリーどうこうというより感覚的な映画というか、雰囲気はホウ・シャオシェン×ウォン・カーウァイといった感じで、映画の肝は80分過ぎたあたりで2Dから3Dに切り替わった後半1時間のワンショットノーカット撮影シーンでしょう。その3Dシーンはなんというか主人公の見てる夢を主人公と同時体験してるようなシーン。前半に散りばめられていた現実や記憶の断片が、現実や記憶とは違う形に変容して次々に登場し、内容があれからこれへと全く別なものにするりと変わったり元のところに戻ってきたり、現実にはあり得ないことが起こったりという、まさに眠りの中で見る夢そのもの。それを自分が見てるかのように3D体験するというのがこの映画最大の見どころ……なんですが、残念ながら地元の映画館では3Dじゃなく、2D上映なのでした。2Dでも十分面白かったんですが、できれば3Dで観てみたかった。弱冠30歳のビー・ガン監督の監督第2作だそうで、各国の一流映画人から絶賛されたとのこと。ファム・ファタール的ヒロインを演じたのは『ラスト、コーション』のタン・ウェイ。個人的には後半の夢の中の赤髪ショートボブ女性役が良かったです。

『こはく』
 こちらは録画で観た日本映画。幼い頃に離婚して出ていった父を街で見かけたという兄とともに父を探す弟が、だらしない兄や、父のことを語らない母、妊娠した妻、そして父との関係を見つめ直すヒューマンドラマ映画です。これまた長編2作目となる横尾初喜監督が故郷佐世保市を舞台とした半自伝的な映画で、主演の弟役が井浦新、兄役がアキラ100%こと大橋彰(本名)。横尾監督のことはもともとはよく知らず、エンクミこと遠藤久美子と結婚したことで知った人で、エンクミも弟の妻役で出演しています。
 いやぁ、いい映画でした。主人公の境遇に自分と重なるところは何一つないんですが、役者たちの自然な演技とゆったりと進むストーリーに引き込まれてしまいました。井浦新がいい役者なのは前から知ってましたが、アキラ100%が予想外に良い。遠藤久美子も最高に魅力的に撮られており、いい女優になったなあ。他にも母親役の木内みどり、石倉三郎、嶋田久作、鶴田真由、鶴見辰吾と役者たちがみな名演。調べたら去年地元の映画館で公開されてたんですが、多分なんとなく気分が乗らなくて観逃しちゃったんでしょう。映画館で観とくべきでした。ただ、井浦新がコロナ下のミニシアターを救う企画を立ち上げ、木内みどりが亡くなったというタイミングで観たのは、結果的に1番いい時期に観れたのかもしれません。共時性(シンクロニシティ。意味のある偶然の一致)ってやつでしょうか。

>中国ドラマ
 歴史板にも書いた通り現在BS12で再放送中の、九州という架空世界を舞台とした史劇風ファンタジー中国ドラマ『海上牧雲記 3つの予言と王朝の謎』を録画視聴中。週5放送なんで視聴が全然追いつかないんですが、映画並みに莫大な予算の壮大なロケとセットで、ワイルドな作風のドラマとアクション。映像センスも役者の演技も素晴らしく、ドラマというよりほとんど映画のレベルです。いや、それどころか下手な映画なんかをはるかにしのぐ出来。WOWOWでやってた『如懿伝』といい、こんなドラマを作られたら日本のドラマはもうかなわんなあ。なんだか大河がショボく見えてしまう。



#1789 
バラージ 2020/04/13 14:05
歴史関連映画感想追記・中国史番外編B

 名画座未掲載の歴史映像作品の感想の追記・中国史番外編、最後は武侠映画編。

『清朝皇帝 第一部 紅花党の反乱』『第二部 シルクロードの王女・香妃』(ビデオ邦題『風と興亡 第1部 紅花党の反乱』『第2部 シルクロードの王女・香妃』、DVD邦題『書剣恩仇録 上巻:紅花会』『下巻:香香(シャンシャン)公主』、原題:書剣恩仇録、書剣恩仇録之香香公主、1987年)……#1200、歴史板#9549
 香港の有名な武侠小説家・金庸の武侠小説『書剣恩仇録』を二部作で映画化した香港・中国合作映画。滅満興漢を目指す秘密結社・紅花会の2代目首領を継いだ主人公・陳家洛、実はその実兄で漢人だったという秘密を持つ清朝第6代皇帝・乾隆帝、清と対立する回族族長の娘・香香公主(香妃)ら、様々な群像の愛憎と戦いを描いたアクションスペクタクル時代劇です。
 原作は金庸のデビュー作で、故郷に伝わる民間伝承の乾隆帝漢人説をヒントにして書かれたとのこと。監督は香港ニューウェーブの女性監督アン・ホイ。まだ第5世代が台頭し始めたばかりで開放の進んでいなかった中国で大規模ロケを行い、全面的に中国人俳優を起用した映画となっています。80年代には他にも『西太后』『火龍』『天山回廊 ザ・シルクロード』(いずれも未見)など香港と中国の合作映画が次々に作られ始めた頃でした。
 1989年の日本劇場公開時には『清朝皇帝』の邦題で公開され、後にビデオ化された際には『風と興亡』という邦題に変えられました。その後、1996年から金庸の小説が続々と翻訳されるようになり、それに伴って金庸の知名度も徐々に上がっていき、また2000年に武侠映画『グリーン・デスティニー』が日本でも公開されて話題を呼び、『HERO』『LOVERS』などが続いて、武侠映画が市民権を獲得していきます。2000年代後半に入ると金庸原作のドラマ化作品が日本でも次々とDVD化されるようになっていき、『書剣恩仇録』のドラマ化作品も原題通りの邦題でDVD化されるようになると、本作も2013年についに原題通りの『書剣恩仇録』の邦題でレンタルDVD化。セルDVDも予約が200セットに達すれば商品化されるはずでしたが、予約は集まらずあえなくセルDVD化の話はお流れになりました。
 僕は劇場公開時には観逃し、ビデオで観たんですが、史実的にはほぼ全編フィクションとはいえ映画としてはなかなか面白かったです。ただ陳家洛が曲がりなりにも清の皇帝である乾隆帝に向かって、「兄さん、いっしょに清を倒そう!」みたいなことを持ちかけちゃうのは「おいおい」と思っちゃったけど(笑)。しかも乾隆帝も律儀にちゃんと迷っちゃうし(笑)。長大な物語を2本分の映画に収めたためか、全体的に原作から改変された部分も多いそうです。僕は金庸の小説は全て未読。

『スウォーズマン 剣士列伝』(映画祭邦題『スウォーズ・マン』、原題:笑傲江湖、1990年)
『スウォーズマン 女神伝説の章』(原題:笑傲江湖之二 東方不敗、1992年)
『スウォーズマン 女神復活の章』(原題:東方不敗 風雲再起、1993年)
 金庸の『秘曲 笑傲江湖』をツイ・ハークが映画化した武侠アクション映画シリーズ。ただし原作から大幅な脚色がされているとのこと。『スウォーズマン』という邦題は英語題の「Swordsman(=剣士)」からだと思うんですが、Sword(剣)の「w」は発音しない文字なので実は正しい発音は「ソード」のほうが近い。しかしなぜかファンタジーRPGなどでは「スウォード」と表記されることも多く、そのためもあってか「スウォーズマン」という邦題になったんでしょう。あと「ソーズマン」だと字面や音の響きがなんだかちょっとカッコ悪いからかも。
 1作目は製作のツイ・ハークがキン・フーを監督に招聘するも、意見が合わずキン・フーは初期に降板。ハーク他数人の監督で完成させたとのことですが、これが大ヒット。香港で武侠古装片(アクション時代劇映画)ブームを巻き起こした作品だそうです。主演はサミュエル・ホイ。そのヒットを受けて作られた続編『女神伝説の章』ではハークは再び製作に専念し、監督は1作目でも監督の1人だったチン・シウトンに変わります。また香港映画にはよくあることですが、なぜか主要キャストがほとんど総入れ替えされ、主演はジェット・リーに。ヒロインがロザムンド・クワンにミシェール・リーなど美女だらけですが、なんといっても全員を食っちゃうほどの怪演だったのが原題にもなっている敵役・東方不敗のブリジット・リン。原作では武術の奥義会得のために自ら去勢して男でも女でもなくなった高年齢の人物だそうですが(イメージとしては宦官?)、映画ではブリジットが演じてるだけあって中性的というか男装の麗人といった雰囲気。彼女の当たり役となり、ブリジットは他の映画でも似たような役を次々に演じることになりました。あまりにウケたため東方不敗が主人公のスピンオフとして作られたのが『女神復活の章』で、もはや原作とはなんの関係もない映画とのこと。こちらもハーク製作、シウトン監督で、ブリジットのみが続投し、ジョイ・ウォンも出演。
 日本では1作目は映画祭上映のみで劇場公開はされず、『女神伝説』『女神復活』が公開・ビデオ化された後にビデオ化されました。僕は未見。『女神伝説』『女神復活』は僕の地方では二本立てで公開され、両方とも観ました。原作では作中の時代に言及されていないそうですが、映画は明の時代と設定されています。『女神伝説』では秀吉への服従を拒んだ信長の残党が逃げてきて東方不敗と手を組むという展開があり(原作にはないオリジナル展開らしい)、その残党が敵を攻撃する時の「○○斬りだっ」などという日本語吹替台詞(吹替版ではなく字幕版のオリジナル吹替)が、その辺の日本人を連れてきて吹替させたんじゃないかというぐらいのひどい棒読み(笑)。残党と話すブリジット東方不敗のたどたどしい日本語とか、酒宴で興に乗った残党たちが踊り出して歌うのが「あんたがたどこさ」だったりとお馴染みの勘違い日本描写がありつつも、映画のほうはワイヤーワークを駆使したド派手なアクションでなかなか面白かったです。しかし『女神復活』のほうはハチャメチャが過ぎる支離滅裂な映画で、かなり出来が落ちるいまいちの作品でしたね。

『楽園の瑕』『楽園の瑕 終極版』(原題:東邪西毒、1994年、東邪西毒:終極版、2008年)……#1417
 ウォン・カーウァイ監督が金庸の『射G英雄伝』に脇役として登場する老人たちの若き日を描いたオリジナルの外伝映画。初公開版と終極版のどちらが好きか意見がわかれるようですが、僕は終極版のほうが好きです。映画そのものについてはすでに書きましたが、『射G英雄伝』の舞台は金と南宋が対立し、その北方にモンゴルが勃興する時代で、チンギス・ハーンなどもちらっと登場するようです。よってその前日譚である映画は南宋の時代となっていますが、劇中に歴史要素は特にありません。おそらくウォン・カーウァイはそういうところにはほとんど興味がないんでしょうね。まあ僕も映画としての面白さが第1で、歴史要素があるかないかは二の次なんで別にいいんですが。

『グリーン・デスティニー』(原題:臥虎蔵龍、2000年)……#1529
 中国の武侠小説家・王度廬の戦前の武侠小説『臥虎蔵龍』(未邦訳)を、米国でも活動する台湾のアン・リー監督が映画化した中香台米合作の武侠映画。アン・リーの映画は『ウェディング・バンケット』『恋人たちの食卓』『推手』を観てたんですが、それまでの作風からアクション映画を撮るとは想像できませんでしたね。やはり映画そのものについてはすでに書きましたが、名剣「碧名剣(グリーン・デスティニー)」(原作では青冥剣)をめぐる物語で、アクションとドラマが融合した傑作です。チョウ・ユンファ、ミシェール・ヨー、チャン・チェンらいずれも好演ですが、なんといってもチャン・ツィイーが全員を食っちゃう素晴らしい存在感で、一躍スターダムに駆け上がりました。舞台は19世紀らしいんですが、これまた特に歴史要素はありません。
 16年ぶりに作られた米中合作の続編『ソード・オブ・デスティニー』はNetflix配信のみでDVD化もされてないんで未見。ま、英語作品で、監督がユエン・ウーピンに交代し、続投がミシェールのみで(まあ、これはしょうがないけど)、新キャストがドニー・イェンの他は中国系欧米人やベトナム人など多国籍キャストと聞くと、あんまり食指が動かないんだよな。


>これ、続編ではありません
 前回・前々回のカンフー映画編で紹介した『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズと『イップ・マン』シリーズ。どちらもシリーズ作はすでに紹介した通りなんですが、シリーズとは関係ないのに似たような邦題を付けられちゃってる紛らわしい作品が多数あります。『Mr.BOO!』や『デブゴン』の昔からの香港映画あるあるなんですが、以下にそのような広告JAROに報告してやろうか的な映画たちをざっと紹介しておきます。僕は全て未見。
 まずは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』紛いの作品から。

『ラスト・ヒーロー・イン・チャイナ 烈火風雲(別邦題:ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地雄覇)』……シリーズを3作で降板したジェット・リーが、バリー・ウォン監督と組んで作った黄飛鴻映画。『ラスト〜』の邦題で劇場公開・ビデオ化されたんですが、ビデオ再発売時に『ワンス〜 天地雄覇』に改題され、DVD化の際に再び『ラスト〜』に戻されました。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝 天地笑覇』……黄飛鴻が主人公のパロディ的コメディ映画で主演はアラン・タム。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝 アイアンモンキー』……黄飛鴻が少年の頃の話で主人公は父の黄麒英。製作はツイ・ハークで主演はドニー・イェン。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝 鬼脚』……黄飛鴻の弟子の鬼脚が主人公で主演はユン・ピョウ。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝 アイアンモンキーグレート』……関連は邦題のみで黄飛鴻とは全く無関係な話。主演はドニー・イェン。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地発狂』……黄飛鴻が主人公で主演はウォン・クウァン。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地激震』……黄飛鴻が主人公で主演はチン・ガーロウ。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地雷鳴』……主人公は蘇乞兒で黄飛鴻は準主役。主演はドニー・イェン。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 八大天王』『少林故事』『無頭将軍』『辛亥革命』『理想年代』……黄飛鴻を主人公としたTVムービーシリーズで製作はツイ・ハーク。主演はチウ・マンチェク。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 英雄復活』『南北英雄』……久々の黄飛鴻映画。シリーズ作で主演はチウ・マンチェク。

 続いて『イップ・マン』の便乗映画。

『イップ・マン 誕生』『イップ・マン 最終章』
 いずれもハーマン・ヤウ監督作で、ドニー・イェン主演のシリーズとは無関係。ドニーのシリーズが2作目まで作られた時点で製作され、『誕生』はドニー1作目『序章』より前の時代、『最終章』はドニー2作目『葉問』より後の時代を舞台としています。主演は『誕生』がデニス・トー、『最終章』がアンソニー・ウォン。

>録画で観た映画
『アビス 完全版』
 ジェームズ・キャメロン監督による1989年のSF映画の、1993年に作られた完全版。劇場公開版は確か大学時代にビデオで観たんですが(#1748参照)、完全版のほうは今まで未見でした。先日、NHK-BSで放送したんで録画して初めて観た次第。劇場公開版を観た時も、宇宙ではなく深海が舞台のアクションではないSF映画というのがすごく面白かった記憶があります。しかし何しろ30年近く前のことなんで、30分以上足されたという完全版との違いも今となっては全然わかりません。今回観てもやっぱり面白かったけど。『ターミネーター』ではシュワに食われ、『エイリアン2』ではシガーニー・ウィーバーに食われたマイケル・ビーンは、本作ではついに悪役になってしまいました(笑)。



#1788 
バラージ 2020/04/11 19:59
追悼・大林宣彦

 大林宣彦監督がついに亡くなられました。2016年8月に肺がんと診断されて余命宣告されてからも執念で映画を撮り続けておられましたが……。
 大林監督の映画は子供〜中高生の頃にテレビで『ねらわれた学園』『転校生』『さびしんぼう』などを、大学時代くらいにビデオで『異人たちとの夏』や再び『さびしんぼう』などを観て、いずれも面白かったんですが、リアルタイムでは90年代の『あした』ぐらいしか観ておらず、21世紀に入ってからは全く観ていませんでした。CM監督出身の映画監督の先駆けで、チャールズ・ブロンソンのマンダムのCMを演出したのも大林監督だったんですね。ご冥福をお祈りします。

 ニュースなどによると、映画館も飲食店なんかと同じくコロナウィルスの影響で営業ぎりぎりの死活問題のようで、すでに休業どころか閉館した映画館も出てきているようですね。僕の地元でも映画館の客足が減ってて結構厳しい状態のようです。映画に救われ、映画館に育てられたと言いたいような身としては、なんとか力になりたいと思いながら、何の力にもなれません。文化の死は社会の死、人はパンのみに生きるにあらず。なんとか状況が好転してほしいと願うばかりです。



#1787 
バラージ 2020/03/28 23:06
歴史関連映画感想追記・中国史番外編A

 コロナウィルスのおかげで中国映画も米国映画も本国で続々と公開延期になったり動画配信のみになったりということで、日本にもその影響が押し寄せてきているようですね。このままでは遠からず映画館でかかるのは日本映画ばかりになってしまいそう。もっとも日本映画も(ドラマやバラエティなどのテレビ番組も)野外ロケ撮影にいろいろと支障が出てきているようですし、東京で映画館が閉鎖されちゃえば映画の上映自体が無くなって、そうなれば地方にも来ないわけで、地元が感染者ゼロのうちに映画館で映画を観ちゃおうかななどとも思ったり。
 トム・ハンクスが感染したと聞いて『フィラデルフィア』を思い出したり、米国での爆発的感染を見て『アウトブレイク』(未見)を連想したりとついつい何でも映画に引き寄せて考えてしまいます。


 名画座未掲載の歴史映像作品の感想の追記・中国史番外編、実在の武術家を主人公としたカンフー映画の後編です。

『ドラゴン怒りの鉄拳』(原題:精武門、1972年)……歴史板#9665
 問答無用のブルース・リーの傑作で、特にお膝元の中華圏においては最も人気のあるブルース・リー映画です。舞台は20世紀初めの上海。有名な武術家・霍元甲が何者かに毒殺され、高弟の陳真が葬儀のために霍元甲の道場・精武館に戻ってくるところから物語は始まります。悲しみに沈む精武館に敵対する日本人道場が嫌がらせや圧力を掛けてきますが、やがて陳真は師が日本人道場の陰謀で毒殺されたことを知り復讐に立ち上がるといったお話。
 前作『ドラゴン危機一発』ではまだなかったブルース・リーの「アチョー!」という叫び声(“怪鳥音”と言う)やヌンチャクが初登場した作品で(現行版『危機一発』では他の作品での怪鳥音が後録されている)、ブルース・リーがキスシーンを演じた唯一の作品でもあります。キスシーンのお相手は次作『ドラゴンへの道』でもヒロイン役を演じたノラ・ミャオですが、個人的には現代劇『ドラ道』での現代風ルックスのほうが好き。そっちを先に観ちゃったからかもしれんけど(僕が観た順番は、テレビで『死亡遊戯』→『ドラ道』→『怒りの鉄拳』→ビデオで『燃えよドラゴン』→『危機一発』の順)。
 『危機一発』でロー・ウェイ監督のいい加減ぶりに嫌気がさしてたブルース・リーは、本作ではアクション部分についてはかなりイニシアチブを得たらしいんですが、それでもまだ非現実的なアクションもいくらか残ってます。観てるこっちとしてはカッコいいから別にいいんだけど、ブルース・リー本人はかなり不満だったらしい。ちなみに敵ボスの鈴木(演じるは大魔神の中の人だった橋本力)がブルース・リーの蹴りで吹っ飛ばされるシーンのワイヤーアクションスタントをしたのが若き日のジャッキー・チェンだったというのは有名な話。また、70年代までのカンフー映画は大半が時代劇だったと書きましたが、『危機一発』と本作も20世紀初めを舞台としています(でも、そのわりにはこの作品も弁髪じゃないんだよな・笑)。しかしブルース・リーが主導した、以後の『ドラ道』『死亡遊戯』『燃えドラ』は全て現代劇なのもブルース・リー映画の特徴の1つで、ハリウッド帰りのブルース・リーは現代アクションを志向してたのかも。
 主人公の師匠で、冒頭ですでに死んでいるため直接は登場しない霍元甲(1868-1910)は清末の上海の実在の武術家で、精武体育会(映画の精武館のモデル)を創設した人物とのこと。日本人の武術家と試合した後に急死したそうで、そのため後になって毒殺説が出回ったらしいんですが、実際には試合は友好的なもので、霍と親しかった精武体育会の人が書いた本によると霍は病死だったそうです(肺を患っていたという。肝臓の病気だったという説もある)。毒殺説が出たのはずっと後になってからで、実録小説などに書かれて広まったらしく、また第二次上海事変で精武体育会が日本軍に接収されるなどの侵略の中で隠れレジスタンス的に広まったとのこと。
 ブルース・リーが演じた陳真は架空の人物ですが、ブルース・リーのあまりのインパクトもあってか地元香港などでも実在の人物と思った人も多いらしく、特にブルース・リーをリアルタイムでは知らず、本作を遅れて観た大陸の人には陳真を実在の人物と思い込む人が多かったとか。実際、陳真は霍元甲以上の有名人となり、続編やリメイクやオマージュ作などの映画やドラマが数多く作られています。父の移住したオーストラリアに渡ったジャッキーがロー・ウェイに呼び戻されて再デビューした映画が本作の続編『レッド・ドラゴン 新・怒りの鉄拳』(原題:新精武門)でしたし、ジェット・リーはリメイク映画『フィスト・オブ・レジェンド 怒りの鉄拳』(未見。原題:精武英雄)で、ドニー・イェンはインスパイアされたオマージュ的映画『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』(紛らわしい邦題だなぁ。原題:精武風雲・陳真)でそれぞれ陳真を演じています。
 ちなみにKINENOTEのあらすじでは陳真をチェン・チェン、霍元甲をホ・ユアン・チアとしてるんですが、僕が持ってるDVDの字幕では陳真はチャン、霍元甲はホー・ユンカップとなっており、前者が北京語、後者が広東語なのかなあ? DVDは広東語版ですが、劇場公開時は配給会社・東和の「洋画は英語で」という考えから英語版で上映されたそうで、僕が子供の頃に観たテレビ放送もおそらくその英語版だったようです(もちろん日本語で吹き替えられていた)。でもテレビでは陳真や霍元甲が何と呼ばれてたかいまいち記憶にありません。多分、陳真はチェンだったんじゃないかという気がしますが……。また日本公開の際には日本人が悪役であることが危惧され、それをぼかすために悪ボス鈴木の名前をニンムー(またはニン・ムウ)と中国語発音で表記したらしい。そんなの考えすぎじゃないかと思うんですけどねえ。実際、そんなの関係なく日本でも大ヒットしたんだし。ちなみにテレビ放送ではちゃんと「すずき」と呼んでました。なお、日本劇場公開版は上映時間が100分(または102分)ですが、これは日本人から見て変なシーンをカットしたらしく、2001年に106分のノーカット・広東語バージョンでリバイバル上映されたとのこと。VHS・DVDも初期のものは102分バージョンですが、後に106分バージョンになっています。Blu-rayでは最初から106分バージョンですが、リアルタイムで観た人には逆に日本劇場公開の英語版100分バージョンが好きという人もいるようで、エクストリーム・エディションというやつに映像特典という形で収録されています。

『SPIRIT』(原題:霍元甲、2006年)
 霍元甲を主人公としたジェット・リー主演のカンフー映画。実録映画っぽい売り文句だったんで少しは伝記映画要素があるのかなと思ってたら、ほぼフィクションのカンフー映画でした(笑)。まあ考えてみれば黄飛鴻映画だって伝記映画的なものは皆無で娯楽アクションばっかりなんだから、もっと早く気付くべきだったんだよな。前半の少年期〜青年期のお話からしてあからさまに創作エピソードなんですよね(この辺はなんかチェン・カイコーの『花の生涯 梅蘭芳』と似たような感じ)。おかげで遺族(子孫)から事実とあまりにかけ離れてると訴えられて裁判沙汰になったらしいんだけど、フィクションという断り書きが入っているのでOKという理由で訴えは退けられたんだとか。
 ジェット・リーが自らの武術映画の集大成にするつもりで製作したという作品で、「SPIRIT」という邦題は言い得て妙。娯楽アクションというよりも武術精神とか主人公の魂の遍歴みたいな話になっています。ただ、それがある意味ベタというか、やり過ぎ感が強いというか、いかにも作り話って感じなんですよねえ。どうも今一つといった感じでした。日本人は意外にも全面的な悪者ではなく、中村獅童演じる日本人武術家が霍と武術精神で共感する人物に描かれており(アクション・シーンは思いっきり吹替だけど・笑)、その分興行師役(だったかな? よく覚えてない)の原田眞人が一身に悪役を請け負っている感じ。そういや原田さんは『ラスト・サムライ』でも同じような役どころだったっけ。その一方でこの作品でも欧米人はちょっと鬼畜米英っぽいのが気になります。ヒロイン的役どころのスン・リーは、出番は少ないながらも可愛くて印象に残りました。
 allcinemaでは霍元甲をフォ・ユァンジア、KINENOTEではフォック・ユアンジェと表記してますが、DVDで観たんだけど実際にどっちの表記だったかは忘れちゃったなあ。日本公開版は103分の国際版で通常のDVDもそのバージョンなんですが、オリジナルは143分らしく、そのオリジナル・ロングバージョンは完全予約限定生産のコレクターズ・ボックスDVDでのみで発売されたようです。

『イップ・マン 序章』(原題:葉問、2008年)
『イップ・マン 葉問』(原題:葉問2、2010年)……歴史板#8932、#8936
 ブルース・リーのお師匠さんとして有名な実在の武術家・葉問を主人公としたドニー・イェン主演のカンフー映画シリーズ。葉問を「イップ・マン」というのは広東語発音で、北京語発音では「イェー・メン(またはイェー・ウェン)」というらしい。日本の配給会社は1作目の悪役が日本軍であることを危惧して、2作目『葉問』から公開し、その反応を見てから1作目『序章』を公開しました。邦題が変な感じになっちゃってるのはそのためです。だから気にしすぎだってば。実際、どっちも普通にヒットしたんだし。おかげで遅れ公開だった僕の地元でも2作目『葉問』→1作目『序章』の順番で公開されまして、2作目からなんで迷ったんですが結局どっちも映画館で観ました。
 続編のほうは戦後の香港が舞台ですが、やはり1作目を観てないと登場人物のキャラクターや人間関係にいまいちよくわからない部分があって、どうもなんか観ててモヤモヤするというかイラッとするというか……と思ってたら、1作目を観ると続編はお話が上手くつながってなくて、順番通りに観たとしても「なんで、この人こうなっちゃってるの?」というツッコミどころになっちゃってました。欧米人がまたまた鬼畜米英なのもどうにも気になりましたね。1作目がヒットしたんで無理に作った続編という感じで、映画としての面白さもいまいちでした。
 1作目のほうは後半が日中戦争で、占領した日本軍が悪役ですが、これまた意外にも全面的な悪役ではありません。ラスボスの将校(池内博之)が空手の達人で、横暴で居丈高な支配者然とはしているものの同時に武術精神も持ち合わせた人物になっています。その分、武術家ではない副官が全面的な悪役になっています。もちろん全体としては日本軍は悪役なんですがそれは当たり前の話で、それよりも日本軍は戦争しに来たはずなのに駐屯地で空手の稽古ばっかりしてるってのがどうにも珍妙。ただアクション映画としてはやはり1作目のほうがずっと面白かったですね。その後、さらに続編の『イップ・マン 継承』(原題:葉問3、2015年)も公開されましたが僕は未見。『イップ・マン 完結』(原題:葉問4 完結篇、2019年)が今年日本公開です。
 この映画シリーズも史実の葉問(1893-1972)の人生を大枠では踏襲はしてるもののほぼフィクションのアクション映画でして、もちろん実際の葉問はイギリス人ともましてや日本軍とも闘っていません。資産家の家に生まれ、働かなくても生活できたため趣味の武術の稽古ばっかりやってるうちに強くなったとか、侵攻してきた日本軍に家屋を接収されたとか、香港に出てきて生活のために初めて弟子を取ったとかは本当のことのようですが。

『グランド・マスター』(原題:一代宗師、2013年)……#1404、歴史板#9405
 こちらはアート派の巨匠ウォン・カーウァイ監督が、トニー・レオン主演で葉問(イップ・マン)の半生を描いた映画です。「イップ・マン」シリーズ以上に創作エピソード満載で、そもそもウォン・カーウァイは脚本を無視して即興演出を延々繰り返し、それを編集段階でつなげていくという手法や作風であることからいっても、彼自身も伝記映画を作ろうとは思っていなかったでしょう。仮に思っていたとしても、結果的にそういう映画にならないことはファンなら誰しもが予想してたはず。またカンフーを描いたとしてもアクション映画にはならないだろうというのも容易に予想できたことで、そういう意味では予想通りというか期待通りのウォン・カーウァイ映画でした。
 終盤ではトニー演じる葉問よりもチャン・ツィイー演じる架空人物の宮若梅(ゴン・ルオメイ)のほうが主役みたいになっちゃってるとか、チャン・チェン演じるやはり架空人物の一線天(カミソリ)が葉問に全く絡まず、宮若梅にもほんのちょっとしか絡まないため本編からほとんど独立した話になっちゃってるとか(葉問と一線天の闘いも撮影はされたが編集で全カットされたらしい)、ウォン・カーウァイ映画にありがちな未完成的まとまりの悪さはあるものの、そういうところも含めてのウォン・カーウァイ。僕は存分に楽しめました。Blu-rayも買っちゃった。
 史実的なことを言うと、この映画では葉問が香港に移った際、妻の張永成(チャン・ヨンチェン)を故郷に置いてきたまま2度と会えなかったとしているんですが、『イップ・マン 葉問』では妻子ともども香港に移り住んでます。いったいどっちが正しいのか調べるとこれは本作のほうが正しいようで、葉問は日本降伏後は国民党の官職についたため共産党政権が成立すると単身香港に逃亡し、当初は行き来ができたものの後に国境が封鎖されたため妻とは2度と会えなかったとのこと。ちなみに本作でも『イップ・マン 葉問』でも葉問が香港に移り住んだ理由についてはぼかしてあるんですが、この辺はどうも中国政権に配慮したような。なお本作では韓国女優のソン・ヘギョが妻を演じていて、そのためか台詞が非常に少なく、また出番も多くありません。ウォン・カーウァイは撮影して気に入らなかった俳優の出演シーンはばっさりカットするので、言語云々ではなく単純にソン・ヘギョの演技が気に入らなかったのかも。



#1786 
バラージ 2020/03/19 22:32
ありゃ

 文字化けかあ。『スネーキーモンキー 蛇拳』の原題の3文字目は「刀」の中の斜線が右上がりの横棒で、「ちょう」と読む漢字だそうです。



#1785 
バラージ 2020/03/19 22:13
歴史関連映画感想追記・中国史番外編@

 なんか大変なことになってきましたね。まさかトム・ハンクスまで……。

 名画座未掲載の歴史映像作品の感想の追記・中国史編で、歴史関連作ではあるものの名画座に掲載するのはちょっと微妙だろうな〜という映画をまとめて番外編として紹介しようと思ったんですが、書き出すと映画そのものについての記述が多くなっちゃったんで映画板のほうに書き込もうと思います。
 まずは実在の武術家を主人公としたカンフー映画の前編。この手の映画は実在の人物が主人公でも、伝記映画ではなくフィクションの娯楽映画であることがほとんどなんで、歴史映画とは言いがたいんですよね。

『ドランクモンキー 酔拳』(原題:醉拳、1978年)
『酔拳2』(原題:醉拳U、1994年)……#1382、1574、1673
 いずれもジャッキー・チェン主演の、黄飛鴻を主人公としたカンフー映画。一作目の『酔拳』が日本で初めて公開されたジャッキー主演映画ですが、地元香港で最初にヒットしたジャッキー主演映画はその1つ前の『スネーキーモンキー 蛇拳』(原題:蛇形刁手。日本では2番目に公開)。『酔拳』はその姉妹編として制作された映画で、宣伝文句には「蛇形刁手 第二集」と書かれていたらしい。内容的には全く無関係の作品ですが、キャスト・スタッフ・作風がほぼ共通しており、いずれの作品でも老師匠をユエン・シャオティエンが、敵キャラをホアン・チェンリーが演じています。『蛇拳』はまだ多少シリアス調が残っており、やや中途半端な映画でしたが、『酔拳』は完全にコメディ映画でしたね。
 黄飛鴻(1847-1925)は清末〜民国初期の有名な武術家で、彼を主人公とした映画は現在まで100本近く作られているとのこと。本来は高潔で立派な人格者といったイメージらしいんですが、『酔拳』はそんな黄飛鴻も若い頃はどうしようもない放蕩息子だったという変化球的な設定のフィクション映画です。また黄飛鴻が実際に酔拳を使ったという記録はないそうですが、そういう意味でも「もし黄飛鴻が酔拳を使っていたら」という変化球的映画なんでしょう。ユエン・シャオティエンが演じている蘇化子(蘇乞兒)が各地に伝わる酔拳を研究して酔八仙拳を創始した1人とされていて、黄飛鴻の父・黄麒英とともに「広東十虎」の1人とされていたこともヒントになったのかも。実際の酔拳は酒を飲んで酔っぱらうわけではなく、酔っぱらったような予測不能の動きをする拳法だそうですが、実戦で使うというより演武、要するに「型」というかデモンストレーションというか、悪く言うと見せ物として演じられる拳法らしい。
 僕は『酔拳』は多分80年代初め頃にテレビの吹替放送で観ました(『蛇拳』はずっと後になってから字幕版ビデオで観た)。その頃は、黄飛鴻は「こう・ひこう」と漢字日本語発音で、「ウォン・フェイフォン」と中国語発音で呼ばれるようになったのは、後述する90年代初めのリー・リンチェイ主演、ツイ・ハーク監督の黄飛鴻映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』(通称「ワンチャイ」)シリーズからだったと記憶しています。それまでは黄飛鴻が実在の人物だという情報すらそもそもなかったんじゃないかな。これもやはり「ワンチャイ」シリーズがきっかけで、『酔拳』の主人公も同じ人だったとその時になって話題になったはず。
 そして実に15年以上ぶりに作られた『酔拳2』。なぜジャッキーがそんな久しぶりにカンフー映画を作ったかというと、これも「ワンチャイ」シリーズの大ヒットで香港映画に武侠古装片(アクション時代劇映画)ブームが訪れていた影響が大きいらしい。前作『新ポリス・ストーリー』(原題:重案組)の興行成績が芳しくなかったこともあって、当たる映画を作る必要があったようで、実際『酔拳2』は大ヒットしたとか。ただ、ジャッキーはやはり古装片にはしっくり来ないものがあったのか、次作『レッド・ブロンクス』からは再び現代アクションに戻りました。
 「ワンチャイ」を観てから『酔拳2』を観て改めて気づいたことの1つに、「ワンチャイ」の黄飛鴻は弁髪だけど、「酔拳」の黄飛鴻は弁髪じゃないってことがあります。もちろん「ワンチャイ」のほうが正しいんですが、1作目の『酔拳』の頃は低予算ということもあって考証もいい加減というか別に気にしなかったんでしょう。実際そんなこと関係なくヒットしたわけですし。『2』でいきなり弁髪になるのも変だし、やっぱり観客だって気にしないだろうってことでそのままになったんでしょうね。

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地黎明』(劇場公開邦題『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』、原題:黄飛鴻、1991年)
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱』(劇場公開邦題『ワンス・アポン・ア・タイム 天地大乱』、原題:黄飛鴻之二 男兒嘗自強、1992年)
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地争覇』(原題:黄飛鴻之三 獅王争覇、1992年)
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ 天地風雲』(原題:黄飛鴻之西域雄獅、1997年)……#1200
 前記のとおり90年代初めに“香港のスピルバーグ”ことツイ・ハーク監督がリー・リンチェイ(現ジェット・リー)主演で黄飛鴻をよみがえらせ、香港で武侠古装片(アクション時代劇映画)ブームを巻き起こしたカンフー映画。日本では第2作『天地大乱』が最初に劇場公開&ビデオ発売され、第1作『天地黎明』は限定公開、第3作『天地争覇』はビデオスルー、第6作(後述)『天地風雲』が再び劇場公開。
 もともと70年代までのカンフー映画は大半が時代劇だったそうで、なぜなら敵味方ともに銃を使えない状況のほうがカンフー映画としては都合がいいからだそうです。ところが1982年、新興会社のシネマシティが製作した現代劇アクションコメディ『悪漢探偵』が香港で社会現象になるほどの記録的大ヒットとなり(以後『皇帝密使』『スペクターX』など続編が5作作られた。僕はいずれも未見)、一躍現代アクション映画ブームが訪れて、カンフー映画は一気に下火になります。ジャッキーがこの頃から現代アクションに転換し始めたのも1つにはその影響があったみたい。時代劇は製作費がかかる上に、発展が進んだ狭い香港ではロケ場所を探すのも難しくなっていたことも、香港映画の現代アクションへの転換を後押ししたのかも。
 同じ1982年に中国・香港合作のデビュー作『少林寺』でスターダムに駆け上がったリンチェイも、その後香港に進出すると現代アクションへの転換を試みますが、上手く行かず不遇の時期を過ごします。本人は米国で武術指導の道に進むことも考えたらしいんですが、ハークに口説き落とされて主演した『天地黎明』で再ブレーク。しかし契約問題で揉めてリンチェイは3作でシリーズを降板し、ウィン・ツァオ(チウ・マンチェク)が新たに黄飛鴻役に抜擢されて第4作『天地覇王』、第5作『天地撃攘』が作られました(日本ではいずれもビデオスルーで僕は未見)。それから数年後にハークと和解したリンチェイが黄飛鴻役に復帰したのが第6作『天地風雲』です(ハークは製作のみで、監督はサモ・ハン・キンポー)。以後リンチェイは、方世玉(『レジェンド・オブ・フラッシュ・ファイター 格闘飛龍 方世玉』『同 電光飛龍 方世玉2』)、洪熙官(『新・少林寺伝説』)、 張三豊(『マスター・オブ・リアル・カンフー 大地無限』)など、清以前の実在したんだかしてないんだかよくわからないような伝説的武術家を次々と演じていくことになります(僕は『方世玉』のどっちかだけ観たような気がするがよく覚えてない)。ちなみに方世玉・洪熙官・張三豊を主人公とした映画も、黄飛鴻ほどではないものの多数あるそうです。
 「ワンチャイ」シリーズは「酔拳」シリーズに比べて、欧米列強が清に侵食してくる時代を背景とした歴史要素の強い映画となっています。『大乱』では逃亡中の革命家・孫文や世を騒がす邪教の白蓮教団が物語の重要な要素となっていますし、『争覇』には李鴻章や西太后が登場。『風雲』は「〜&アメリカ」と邦題に付いてる通り、全編米国を舞台にした「黄飛鴻、西部を行く」といった感じの番外編的な作品で、ビリー・ザ・キッドなんかも出てきます。もちろん娯楽アクション映画なんで基本的には全編フィクションですが、『孫文の義士団』だって歴史映像名画座に入ってることですし、こちらも名画座に入れてもいいような作品なんじゃないかと。
 このシリーズの黄飛鴻は真面目で道徳的な堅物というイメージは受け継がれているものの、やたらと弟子たちにためになる立派な訓話をしようとしてはそれとなく敬遠されるというコミカルなシーンが毎回織り込まれています。また相思相愛でありながら奥手であるためになかなか進展しない、同い年の血のつながらない叔母(ロザムンド・クワン)とのほのかな恋もいいアクセント。ハークお得意のワイヤーワークも駆使されたカンフーアクションが最大の見どころで、僕は『大乱』を映画館で、『黎明』『争覇』『風雲』をビデオで観ましたが、どれも面白いもののやはり唯一一般公開された『大乱』が頭1つ抜けて面白い。それこそ『孫文の義士団』に匹敵する出来と言っていいと思います。特に終盤のリンチェイとラスボスの清朝官吏ドニー・イェンのバトルが大興奮もので、ドニーの出世作ともなった快作です。

『酔拳 レジェンド・オブ・カンフー』(原題:蘇乞兒、2010年)
 前記のとおり『酔拳』で黄飛鴻の師匠として登場していた蘇乞兒を主人公としたカンフー映画。蘇乞兒(別名:蘇化子、本名:蘇燦。生没年不詳)は一応実在の人物とされるものの、伝説的な虚構に彩られていてその実像には不明な部分も多く、一部には実在を疑う向きもあるようです。黄飛鴻ほどではないものの、蘇乞兒が主人公の映画もそこそこあるらしく、この映画もその1本。監督はユエン・ウーピンで主演はチウ・マンチェク。僕はDVDで観ました。
 当然ながら全編フィクションで、歴史要素も薄い映画ですが、それ以前に映画としてどうにもこうにもつまらない。ストーリーにおかしなところがあって、前半3/4と終盤1/4がほとんど別の話で全然関係がなかったり、その終盤まで酔拳の「す」の字も出てこなかったり(まあ、これは邦題のせいだけど)、中盤になぜか主人公がこの世ならざる空間?で武神(!)と修行するというファンタジーなんだか夢なんだかイメトレなんだかよくわからない変なシーンがあったり。香港初の3Dカンフー映画らしいんだけど(日本では2D公開)、武神の出てくるあたりは3D黎明期によく見かけたあからさまに3DのためにCGを入れたようなシーンでしたね。終盤の話では欧米人がほとんど鬼畜米英みたいな悪者しか出てこないのもどうも……。脚本にも問題があるのかもしれませんが、ユエン・ウーピンは武術指導としては優秀でも、監督には向いてないんではなかろうか。
 実は僕がこの映画を観たのは主人公の妻役のジョウ・シュン目当てでして、僕は気に入った女優が現れるとその人の出演作をあらかた観てしまうという趣味嗜好があります(笑)。主演のチウ・マンチェクはアクションはすごいんだけど、芝居が硬質で表情も乏しく、有り体に言えばちょっと大根役者。だからジョウ・シュンやレジーナ・ワンみたいな演技力のある美人女優を奥さん役に配されることが多いのかな? このつまらない映画もジョウ・シュンの演技力でかなり救われてますが、彼女は中盤に退場しちゃうんだよな。

 次回、カンフー映画後編に続く。


>最近、映画館で観た映画
『ナイト・オブ・シャドー 魔法拳』
 ジャッキー・チェンの最新映画ですが、東京より1ヶ月以上遅れての公開です。しかも地元では吹替のみの上映なので仕方なく吹替版で観ました。タイトルやエンドロールが全て英語だったんで英語版なんじゃないかなあ。そこもちょっと残念。
 原題が「神探蒲松齢」で、蒲松齢というのは実在の人物。17〜18世紀の清初期の人で、『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』『侠女』『画皮 あやかしの恋』などの原作の怪異小説集『聊斎志異』の作者とのこと。その蒲松齢が実際に妖怪ハンターだったという設定のファンタジーアクション時代劇です。あんまり期待してなかったんですが、意外にまあまあ面白かった。最近の中華圏娯楽大作ではすっかりおなじみになったCG大量ぶちこみ系3D(日本では2D公開)ファンタジー映画で、いわゆるジャッキー映画として観ると肩透かしなんですが、そういう映画だとわかって観ればそれなりに楽しめます。ま、ジャッキーも還暦過ぎてるし、昔のようなアクションを期待するほうが間違いってもんでしょう。お話のほうは『聊斎志異』というか、それを原作とした映画『チャイニーズ〜』とか『画皮』とか、はたまたもっと古い伝説の『白蛇伝』とかのいいとこ取りみたいな感じで、ジャッキーの役どころはさしずめ『霊幻道士』の道士様といったところ。どっちかっていうと若手俳優イーサン・ルアン(『軍中楽園』)とエレイン・チョン(『芳華 youth』)の人間と妖怪の悲恋物語がメインでした。
 日本の映画会社が変な邦題つけて、『酔拳』『蛇拳』などの「拳」シリーズ最新作!みたいなアホな売り方してると思ってたんですが、観てみると確かに70年代ジャッキー映画の風味が少しだけあります。蒲松齢に弟子入りする若者とのコミカルな掛け合いが、あの頃のジャッキー映画の主人公と師匠の関係を彷彿とさせました。まあ、それでも「魔法拳」てのは意味不明だけど。まあまあ面白い映画だったんで、DVDが出たら字幕で観直そうと思います。
 これが10年代最後のジャッキー映画になるのかなあ(10年代が「2010〜19年」なのか「2011年〜20年」なのかいまいちよくわかりませんが)。10年代のジャッキー映画で個人的に1番面白かったのは『ポリス・ストーリー レジェンド』(#1457)ですかね。

『パラサイト 半地下の家族』
 もともとはあまり観る気はなかったんですが、外国語映画初のアカデミー賞最優秀作品賞で話題になったこともあり、他に観たい映画もあまりなかったんで、じゃあ観てみるかといった感じで観ました。外国語映画初のアカデミー賞最優秀作品賞は確かにすごいことなんだけど、他にもカンヌとかベネチアとかベルリンとかもあって韓国映画はそっちも獲ったことあるんだしちょっと騒ぎすぎなんじゃないの?と思ったら、この映画はカンヌのパルムドールも獲ってたんですね。そっちも韓国映画初だったそうで。
 パンフレットでポン・ジュノ監督が「内容や展開をネタバレしないでください」とお願いしてたんでくわしいことは書きませんが、前半はよく出来てるって言えばよく出来てるんだけどどうも話がちょっとうますぎるんじゃないかなあ?と思いました。ただ中盤にどんでん返しというか意外な展開となってからはやはり面白かったです。だからといって過去に観た韓国映画の中で断トツとまでは思いませんが、面白い映画だったことは確かだし、観て損はない映画でした。
 ポン・ジュノ監督の映画は他にデビュー作の『ほえる犬は噛まない』を主演のペ・ドゥナ目当てで観ましたが、そっちもなかなか面白かったですね。

 そういえば日本のアカデミー賞でも『新聞記者』のシム・ウンギョンが最優秀主演女優賞を受賞しました。韓国の時代なんでしょうか。シム・ウンギョンの出演作をざっと眺めたら、『王になった男』にも侍女役で出演してましたね。そして同作の王妃役は後に『ミラクル デビクロくんの恋と魔法』に出演したハン・ヒョジュだったんだな。



#1784 
バラージ 2020/02/12 22:24
成瀬映画

 去年WOWOWでやってて録画しといた成瀬巳喜男監督の映画4本を今頃になって観ました。成瀬の映画はDVDレンタルをしてないから観れる機会は貴重です。ちなみに今までに観た成瀬映画は『おかあさん』『晩菊』『浮雲』。

『歌行灯』
 1943年の映画で泉鏡花の小説が原作。明治時代、地方巡業をしている東京の一流能楽一座の息子が、伊勢で評判の謡の名人の按摩師を引き合いに出され軽く見られたことに憤慨し、その按摩師がどれほどの者か父の座長に内緒で会いに行く。傲慢なその按摩師に実力の違いを見せつけるのだが、その按摩師は屈辱のあまり自殺。衝撃を受けた主人公は父からも勘当され、行方をくらまし門付け(今で言う“流し”)として流浪の生活を送る。按摩師の娘が芸者に身を落とし苦労しているのを知った主人公は、二度と能楽をするなという父の言い付けに背き七日間だけ娘に踊りを教えるのだが……というお話。面白かったです。最初、能の舞台から始まるんで、これは眠くなる映画かと心配したんですが、それは最初だけ。鏡花の原作があるからかもしれませんが脚本の展開が素晴らしく、終盤の森の中での主人公と娘の踊り指導のシーン、そして何よりラストの置屋で娘芸者が主人公の父と叔父の前で踊り、そこへ偶然主人公が現れるシーンなどはほとんど鬼気迫るものがあります。まさに傑作。成瀬、恐るべし。娘役の山田五十鈴がものすごく可愛いのもびっくり。物心ついた時には『必殺仕事人』ですでに婆さんだったからなあ。『おかあさん』の香川京子もそうでしたが、成瀬は女性を魅力的に撮るのが上手い監督なんでしょう。僕の好みに合ってます。

『めし』
 倦怠期が訪れた夫婦の危機を描いた1951年の映画。林芙美子の未完の絶筆小説が原作で、映画はオリジナルの結末となっているとのこと。東京から大阪に移り住んで数年が経ち、些細なことで諍いが絶えない夫婦(上原謙・原節子)。そこへ結婚をいやがって東京から家出してきた奔放な夫の姪が転がり込んできて夫婦の仲を掻き乱す。ついに妻は東京へ送り返す姪と共に上京し、母(杉村春子)と妹夫婦の住む実家へ転がり込むのだが……。なんだか去年観た小津の『お茶漬の味』『早春』と似たような話ですが、当時としては新しいテーマだったのかもしれません。成瀬の傑作の1つとして名高い映画なんですが、僕は『おかあさん』や『歌行灯』に比べるといまいちに感じました。オリジナルの結末を付けるにあたって映画会社側から離婚の結末は困ると注文をつけられたそうで、最後は夫婦がなんとなく元サヤに戻ってしまうんですが、なんとも取って付けたような結末でどうにも違和感が残ります。そのラストを観て気付いたんですが、この映画は前に観てました(笑)。多分昔NHK-BSで放送したんでしょう。小津や成瀬の映画はタイトルに特徴がないから覚えにくいんですよね。ひょっとしたら『晩菊』のほうを観てないのかもしれません。杉村や風見章子、大泉滉、小林桂樹らの若い頃は新鮮でしたが、浦部粂子だけは昔から変わらんなあ。

『放浪記』
 1962年の映画で、これまた林芙美子の自伝的小説とその舞台化作品が原作。森光子がでんぐり返ししてた作品という印象しかありませんが、映画の前年の1961年が初舞台だったそうです。原作は1920年代末に連載・出版された林の出世作で、それ以前にも何度か映画化・ドラマ化されていたらしい。この映画はいまいちでした。高峰秀子演じる主人公にどことなく貧乏人上がりのイヤらしさがあって、どうも好きになれません。劇中でも言ってますが、林自身にある種の露悪的なところがあって、そういうところも包み隠さず描いてるんでしょうけど、どうもねえ。若い頃の草笛光子や宝田明、加藤武など知ってる役者も出てきます(菅井キンはこれまた昔も変わらない)が、高峰秀子はリアルタイムで観たことないなあと思ったら、70年代に引退してエッセイストとして活動したんだとか。戦前に天才子役としてブレイクし、娘役としてアイドル的人気を博し、大人になってからは演技派カメレオン俳優として名女優になったという理想的俳優人生だったんですね。確かに同じ成瀬の『浮雲』の時とも、木下惠介の『二十四の瞳』の時ともまるで別人でした。

『乱れる』
 新婚だった夫が戦死した後、嫁ぎ先の商店を切り盛りしてきた未亡人(高峰秀子)と、彼女に秘めた恋心を抱く歳の離れた義理の弟(加山雄三)の関係を描いた1964年の映画。僕が物心ついた頃と時代が近くなったせいか、街の風景や家の様子がどことなく見覚えのある景色に感じられるし、冒頭から街を走るスーパーマーケットの宣伝カーが舟木一夫の『高校三年生』を流し、商店街が新興のスーパーにおびやかされるなどの時代描写も「もはや戦後ではない」とか「所得倍増計画」を連想させます(そういや東京五輪の年だな)。それだけになんとなく懐かしくもあるんですが、同時にかえってなんだか古くさくも見えてしまいました。大学を卒業したのに就職した会社を半年で辞めてぶらぶらしてる義弟には現代性を感じる部分もあるものの、店をスーパーにして弟に経営させようという他家へ嫁いだ義妹たちの思惑を察して自ら身を引く未亡人の自己犠牲的な行動や、義弟の情熱的な想いに惹かれつつも受け入れられない禁欲的な態度はいかにも一昔前の人物という感じ。俳優も加山や草笛光子に加えて白川由美の若い頃というのがなんだか逆に昔感を感じてしまいます(浦部粂子もまたまた脇役で出演)。終盤の展開や幕切れもずいぶん唐突で、それがヤルセナキオと呼ばれた成瀬の作風なのかもしれないけど、僕は1952年の『おかあさん』の解放感に満ちた作風のほうに好感を感じます。村上春樹も1940〜50年代の小津や成瀬が特に好きと何かで書いてましたが、やはり成瀬も小津も最盛期は1940〜50年代だったんではないでしょうか。


>映画館で観て面白かった映画
『テルアビブ・オン・ファイア』
 パレスチナで大人気(という設定)のメロドラマの製作現場を舞台としたヒューマンコメディ映画。
 パレスチナばかりかイスラエルでも女性に大人気の第三次中東戦争を舞台とした女スパイ・メロドラマ『テルアビブ・オン・ファイア』でプロデューサーをしている叔父のコネで、ヘブライ語指導として働くイスラエルのエルサレム在住のパレスチナ人青年が主人公。エルサレムから仕事場のパレスチナ自治区にあるラマッラーに行くためにはイスラエルの検問所を通らねばならない。ある日、たまたま検問所で尋問されることになった青年はとっさに脚本家だと嘘をつくが、検問所のイスラエル軍司令官は妻が夢中になっているドラマの脚本家だと知り、以後彼を頻繁に呼び止めてはドラマの内容に注文をつけるようになる。それをさも自分の案のように叔父に言うと、気に入られ案が採用されることに。怒った脚本家が降板し、脚本の一部を担当することになった青年は、検問所に寄るたびに司令官にアイデアを求めるようになる。時にパレスチナの製作陣とイスラエル軍司令官の板挟みになりながらも主人公は奮闘するが、最終回が近づくに連れて対立は激しくなっていき……というストーリー。
 なかなか面白かったです。ルクセンブルク・フランス・イスラエル・ベルギーの合作ですが、監督はイスラエル生まれのパレスチナ人で、舞台もパレスチナとイスラエルだし、まあパレスチナの映画と言っていいでしょう。コメディドラマにさりげなく社会的要素を滑り込ませ、面白く見せているのが良かった。結末はちょっとやり過ぎな感じもしましたが、まあ面白かったからいいや。それにしてもテレビのメロドラマって、ほんとどの国でも女性に人気なんですね。

>録画で観て面白かった映画
『おとなの恋は、まわり道』
 観たいと思ってたけど地元には来なかった米国映画。DVD化され、WOWOWでも放送されたのを録画して観ました。ストーリーは単純明快。気の合わない男女がケンカを繰り返すうちに徐々に惹かれ合っていくという典型的なロマンチックコメディです。しかしその設定に一癖あって、同じリゾート結婚式に呼ばれた道中で偶然隣同士になった中年男女が主人公。男は花婿と仲が悪い異父兄、女は婚約破棄された元カノで、偏屈で多弁な2人が延々毒を吐いたり屁理屈をこねたりする会話劇。その男女を演じるのがキアヌ・リーヴスとウィノナ・ライダーという90年代に青春を過ごした者にはなんとも懐かしい組み合わせで、僕が興味を持ったポイントもそこでした。青春映画は好きだけど大人の恋愛映画はあまり観ない僕も、同世代のかつてのスター男女のしかも正統派ラブストーリーではないちょっとひねくれたロマンチックコメディというところに興味を感じたんですよね。
 面白かったです。主演2人以外はエキストラレベルのモブキャラで、ほとんど最初から最後までキアヌとウィノナがひねくれた屁理屈と偏屈な会話を繰り広げるだけの映画なんですが、2人のおしゃべりだけで1時間半弱を飽きさせずに見せきっちゃうのがすごい。もともと2人とも人気だけではない演技派でしたが、その実力の高さに感心しました。2人の偏屈ぶりに思わず笑っちゃうところも多かったし、同世代ということもあって身につまされたり感情移入しちゃったりするところもありましたね。ラストも当然ながらハッピーエンドで、それも抑えぎみの洒落た終わり方なのも良かった。

>追悼カーク・ダグラス
 103歳とは! まさに大往生でしたね。とはいえ映画を趣味とし始めた頃から知識としては知ってた人ですが、リアルタイムで観てた人ではないからなあ。リアルタイムだったのは息子のマイケル・ダグラスのほうでして。出演映画をざっと見ても、観たのは『スパルタカス』だけ……と思ったら、『遺産相続は命がけ!?』という日本ではビデオスルーだった1994年のコメディ映画を観てました。マイケル・J・フォックスが主演でそれが目当てで観たんだけど、実はリアルタイムで観てたんだな(笑)。でも、いまいち面白くなかったです。あと、つい先日NHK-BSで『ユリシーズ』というイタリア製ギリシャ神話映画を放送してましたが、そちらでも主演だったようです。ちょっと興味はあったんだけど、裏番組とバッティングしたんで録画しませんでした。『OK牧場の決斗』は未見ですが、盟友バート・ランカスターとのW主演だと何かで読んだような気がするんだけど違うのかな? ご冥福をお祈りします。



#1783 
徹夜城(支配人) 2020/02/06 23:47
カーク・ダグラス逝去

 また訃報ネタになってしまいますが…カーク・ダグラスが亡くなりました。「まだ生きてるよな?」と思う往年の名優の代表的存在でしたが、なんと103歳まで生き抜きました。
 「徒然草」につい先日「OK牧場の決斗」をアップしたばかりでしたし、あれにもまだ存命って書いてるんですよね。

 映画人の訃報があると記事で何が代表作にされるかチェックするのですが、カーク・ダグラスは圧倒的に「OK牧場の決斗」でした。あれは主演でなく助演作品なんですけど、タイトルがもっとも知られた映画だから、ということでしょうか。
 僕が見た者ではやはり「スパルタカス」かなぁ。あれは当人が製作総指揮も兼ねてて、監督をキューブリックに差し替えたりしてますね(キューブリックとしてはダグラスの言う通りにしなきゃいけなかったので「自作」と認めてない)。
 あとは「ヴァイキング」や「海底二万マイル」なんかもありますね。



#1782 
バラージ 2020/01/31 22:17
人名表記・さらに追記

 またもしつこく人名表記の話。まずは今度は逆に日本人テニス選手の外国語(英語)発音の話です。
 伊達公子は90年代の最初の現役時代、「ダテック」というニックネームで呼ばれてましたが、それは「Date」という名字が英語ではどうしても「デイト」と読まれてしまうため、名前の頭文字を付けた「Date.K」で「ダテック」というニックネームになったとのこと(親しい外国人からは名前の「Kimiko(キミコ)」で呼ばれたりもしてたようですが)。また杉山愛も名前の「Ai」が外国人には「アイ」とは読めないため、もっぱら名字の最初のほうを取った「Sugi(スギ)」というニックネームで親しい外国人選手からは呼ばれてました。

 香港俳優は日本では英名のカタカナ表記が一般的と書きましたが、一部に英名ではなく中国語(広東語)名のカタカナ表記がされている俳優もいます。まずはチョウ・ユンファ。いろいろ調べてみたんですが、チョウ・ユンファの英名はわかりませんでした。どうもユンファは香港人には珍しく英名を持ってないか、持っていたとしても全く使っていないと思われます。次にレオン・カーフェイ。彼はちゃんと英名を持ってるんですが、それが「Tony」。トニー・レオンと英名が全く同じ「Tony Leung」なんですね。そのため日本に後から上陸した梁家輝のほうが中国語名のレオン・カーフェイになったと思われます。本国でも英名表記が紛らわしいためか、2人が共演した映画のエンドクレジットではカーフェイが「Tony Leung Ka-Fai」、トニーが「Tony Leung Ciu-wai」とそれぞれ表記されてました。ちなみにレオン・ライは英名(Leon Lai)です。チャウ・シンチーもなぜか日本でも中国語発音の表記ですが、「Stephen Chow(スティーヴン・チャウ)」という英名をちゃんと持っています。なぜ日本で英名でなく中国語発音表記になったかは不明。なお、同じ「周(Chow)」なのにチョウ・ユンファは「チョウ」で、チャウ・シンチーは「チャウ」ですが、後者のほうが正しい広東語発音に近いようです。
 香港人ではないのに英名を名乗っている中華圏俳優もいます。1980年代に台湾映画が商業的に壊滅状態に陥ったことにより香港映画に進出した台湾俳優は、香港俳優同様に独自の英名を名乗りました(まあ芸能人なら芸名を付けることも多いわけで、何を名乗ったっていいわけですからね)。女優のブリジット・リンやジョイ・ウォンがその代表ですが、僕もそうだったんだけど当時の香港映画ファンには彼女たちが台湾俳優だという認識がそもそもなかったように思います。その一方で90年代半ば〜後半に香港映画に進出した金城武やスー・チーは英名を持っていませんが、台湾ではこの頃から香港のように英名を付けるブームが起きたらしく、日本にも進出したビビアン・スーやドラマ『流星花園』のバービィー・スーやF4の面々などはいずれも英名を名乗っています。
 中国の俳優で英名で呼ばれてる人はかなり少ないんですが、女優のヴィッキー・チャオやレジーナ・ワンが英名。ヴィッキーは出世作となった台湾ドラマ『環珠姫 プリンセスのつくりかた』に主演した時に英名を付けたと聞いたことがあります。日本での初お目見えが香港映画『少林サッカー』だったこともあるのかも。僕の最近のお気に入りのレジーナはなんでかなぁ? 台湾映画『軍中楽園』や中香合作映画『戦神 ゴッド・オブ・ウォー』が最初に映画祭上映された時は「ワン・チェン」だったみたいなんですが、劇場公開時やドラマ『麗王別姫』が初放送された時にはレジーナ・ワンになってたんですよね。ワン・チェンだと同音の人が多いんで差別化を図ったのかなあ?


>「アンダルシアに憧れて」
 こりゃまた懐かしい(笑)。ブルーハーツのギタリストが作曲だったんですね。マッチが歌ってたのを聞いて、「なぜいまどき日活無国籍アクション映画? ずいぶん古臭い世界観だな」と思ったのを覚えています。



#1781 
2020/01/27 03:24


最後の思い出しを かの、「クロマニヨンズ」なるバンド、かつて「ザ・ブルーハーツ」だった頃、ギタリストの真島昌利氏の曲(元々はマッチ近藤真彦にと)に、「アンダルシアに憧れて」があります もう歌詞は日活というか、当時の「フィルム・ノワール」丸出しで、額縁の裏の金庫から拳銃(コルト)を取り出すわ、「立ち入り禁止の波止場の第三倉庫」で対決するわ、「暗闇からマシンガン」が火を噴くわもうね(汗) 歌詞一面に、当時の映画のタイトルが満載、この曲一曲聞くだけで、雰囲気はガッツリです 失礼しました



#1780 
2020/01/27 02:54


そうでしたか! 自分は、ルパンの方に書き込んだ記憶は多々あるんですが…それにしても、長きにわたって続けていただけていることに感銘を覚えます 自分も放置したブログとかあるので(滝汗) 今後ともよろしくです



#1779 
バラージ 2020/01/26 22:08
さらに追記

>スター・ウォーズ
 へえ〜、三船はダースベイダーの素顔役でもオファーされてたんですか。それは知らなかった。だとしたらオファーを断ってくれて正解だったな。マスクを取って三船の顔が出てきたら日本人はなんか笑っちゃいますもんね(笑)。マーク・ハミルにアジア系ハーフ要素もありませんし。
 マーク・ハミルの他の出演作だと、やはり僕の大学時代に『風の惑星』というSF映画が公開されてたような記憶があります。僕は未見ですが、えらく酷評されてた記憶。

>虎さん
 いや、昔この板にいらしてたと思いますよ。過去ログをさかのぼれば書き込みがあるはず。僕はほとんどここと歴史板にしか来てませんが(忍者屋敷の方の掲示板というのは知らない)、虎さんの書き込みを見た記憶がありますので。



#1778 
徹夜城(支配人) 2020/01/26 21:25
SWのことなど

前回の書き込みがバラージさんとタッチの差で入れ違いになっていたので、ちょこっとそちらにレズを。

SWへの三船敏郎出演オファーですが、やや情報が錯綜してます。当初「オビ・ワンだった」と伝えられ巻いたが、「いやダースベイダー」と確か三船家サイドから明かされてたように思います。で、その他の情報から推測をまとめるとどちらも一応ホントらしい。「4」の時にオビ・ワン役でオファーし、日本の武士みたいに裃姿のオビ・ワンのデザイン画も存在してるらしい。断られて別の大物ということでアレック=ギネスになるんですが。ギネスはチュニジアロケでは俳優たちのお手本のように協力的だったけどスタジオ撮影以後は不機嫌で、大ヒット後もSWファンからオビ・ワンのことを言われるのすら嫌がったとか(の割に幽霊役ながら連続で出ましたが)。
 そしてダースベイダーの素顔のところだけ出演のオファーもあった、というのもどうもホントっぽいんですね。キャラクター人形か何かがミフネ顔になっちゃってたんじゃなかったかな。もともと「隠し砦の三悪人」に多大な影響を受けたSWですから、ルーカスとしては何としても出てほしかったんじゃないかと。

 マーク=ハミルは「7」のラストで登場した時、「老けたなぁ」と同時に「腹が出てる」とツッコまれてたのは、俳優としてはともかく裕福ではあった結果でしょうか(笑)。
 僕も彼の他の役って、「ラピュタ」英語版でムスカ役、というのしか知らないです。

「ローグ・ワン」はだいぶ忘れちゃったなぁ…ソフトもあれは入手してないんですよね。



#1777 
2020/01/26 04:44


>バラージ様宍戸錠氏につき、コメントいただきありがとうございます そのお名前、以前からずっと気になっていました(笑) お名前を目にするたび、脳裏に怪獣アントラーが浮かんでしまい(汗) あとチャータムとか(略) 
やっぱりアレがベストですよね! 特に第一作! 第二作あたりから、ルーカスのプライベートフィルム的になってきたんでしょうか、製作、公開に何年もかかる映画で、「つづく」ってのはやっぱどうかなぁと思います SWの場合は特に、ハンソロ氷漬けで終わるとか、ハッキリ言って無茶ですよね(汗) まぁ今の時代だと、「つなぎの話をDVDで」とかいう商法もありうるかもですが…



#1776 
2020/01/26 04:34


>管理人、哲也嬢(違! すいません、うっかり一発変換したらこうなりました、うちのATOKひっぱたいておきます) 徹夜城様へ
ご返信ありがとうございます。 ちな、自分はよく考えると、ここには初見参でした(滝汗) そうとう昔、忍者屋敷の方の掲示板に、たまにお邪魔していたくらいですね、皆様の知見の深さに恐れをなして、遠のいていた記憶があります 
物凄くお久な上、今後どんだけ参加できるかも不確かですが、時々お邪魔すると思います、タイガースファンの虎より m(_ _)m




#1775 
2020/01/26 03:59


>管理人徹夜城氏
ご返信ありがとうございます 「先生の宍戸錠!」は(文庫で全巻持ってるのに!)
すっかり忘れていました(笑) やはりもうご存じの方が少ないと思い、孫引きで小林信彦氏の「日本の喜劇人」から エースのジョー周辺の評価を 

<日本の喜劇人の主流をなす発想のパターンは、まず
 珍芸で大衆を驚かし、人気が湧(わ)いたところで、少し
 ずつ、<演技派>に移行し始める。そして、うまくいった
 場合、晩年は、ポスターにずらりとならんだ名の最後に、
 筋一本へだてておさまる>
<宍戸錠はこれらの真反対から出発する。醜く整形することに
よって若手二枚目スターの道を自ら閉ざし、ハリウッドの脇役
スターの存在感を得ようとするところから始めた。>
<ギャグを含めたさまざまなアイデアを持ち込むことによって、
 彼は、パターン化した日活活劇を冷やかし、批評し、真にユニークな
 役者となっていった。<笑わせる殺し屋>という、それ自体、矛盾した
 役柄を、極限までひろげることによって、<エースのジョー>という、
 いまだに通用するイメージを創造したのであった。>
<さまざまな運と不運にもてあそばれてきたこの役者の半生は、
 そのような外的条件にもかかわらず、一つの方向を、はっきりと
 もっていた。それは<アクションの魅力>と<ナンセンスへの意志>
 である。彼が、いわゆるコメディアン以上にコメディアン的なのは、
 その目標に向ってのつみ重ねが、方法論を踏まえており、莫迦(ばか)
 な真似をやっている自分をみつめるもう一人の宍戸錠の距離測定が
 しっかりしているからではなかったか。>

笑わせる殺し屋 というイメージは、ある意味「ルパン三世」そのものでもあるかなと思いますし、実は、かなり古い子供向け(のはず 汗)の特撮ヒーローに丸ごと日活アクションの世界をぶっこんだような作品があります 「快傑ズバット」もうこれ自体マイナーですが(汗) 主人公はギターを弾きながら現れるし(常にテンガロンハット!)、毎回敵の殺し屋と何らかの勝負をする、そのきっかけが「〇〇の名人らしいが、日本じゃ二番目だな」
のセリフに続いて「ヒュ〜チッチッチ」と人差し指をゆらした後、自分が一番だと宣言して、勝つ、など、日活アクション映画の「そんな馬鹿な(笑)」を、全力で再現していました。こういう言わば「馬鹿馬鹿しカッコイイ」ノリは、やはりたぶんルパン三世に大きく受け継がれているかと思います もしいくばくかでも興味を持たれたら、「無意識過剰(小林信彦氏による)」なスター、アキラ(小林旭)を冷やかす悪役(と言うには陽気すぎる)「エースのジョー」の、不思議な魅力に、一度触れていただきたく思います ありがとうございました



#1774 
バラージ 2020/01/25 23:29
追記

>追悼・宍戸錠
 子供の頃から知ってるような気がするんですが、何で知ったのかとなるとどうも思い出せません。出演作を調べると、僕が子供の頃に観てたドラマ『熱中時代 刑事編』『あさひが丘の大統領』『猿飛佐助』『熱中時代 第2シリーズ』なんかに出てたみたいなんで、その記憶なのかなとも思うんですが、宍戸さんの記憶はさっぱりなかったりします。バラエティ番組で観たのかもしれませんが、やはり何の番組なのかは記憶にありません。指を振って「ちっちっちっ」というのは他の人の物まねでよく見てた記憶がありますが。
 映画『仁義なき戦い 完結編』は僕も昔深夜にテレビでやってたのをたまたま観たんですが、僕はシリーズでこれしか観てないんですよね。他の映画は古いものだと『ギターを持った渡り鳥』『転校生』『俺っちのウエディング』をビデオやテレビ録画で、リアルタイムでは『落陽』『8マン すべて寂しいよるのために』『我が人生最悪の時』『秋桜』『ケータイ刑事 THE MOVIE2』を観てますが、やはり宍戸さんの記憶はあまりなく。
 どの媒体でも触れてませんが、晩年(奥さんが亡くなられたあたりから火事で自宅が全焼した頃)は少々言動の様子がおかしいところが見られて、そのころからメディア露出もほとんどなくなりましたね。
 ご冥福をお祈りします。



#1773 
徹夜城(支配人) 2020/01/25 22:36
先生の宍戸錠!

>虎さん
 僕も宍戸錠さんが「エースのジョー」なんて呼ばれて日活無国籍アクションのスターだった時代はリアルタイムはおろかソフトのたぐいでも見たことがありません。僕がこの人の出た作品で唯一見たのって、

「仁義なき戦い・完結編」

 しかない…と思います。このシリーズの第二部で登場した狂犬的ヤクザ・大友勝利の老後(それほど年でもないのかな)という役で。この役、第二部では千葉真一が演じて有名なのですが、この完結編で再登場するはずが当人のスケジュールからかなわず、宍戸さんが代役として登板しました。だから同一人物なんだと気付かない人も多そうな。このシリーズは逆に同じ俳優が違う人物になって何度も出てきますけどね。

 あと映画の方は見てないんですが、大林信彦監督の「瞳の中の訪問者」で宍戸錠さんはブラック・ジャックを演じてます。たぶん最初にブラック・ジャックを演じた人。聞くところでは凄いメイクで原作に近づけたらえらく不気味なキャラになってしまい、手塚治虫も「あんな人間がいるか」とツッコんでいたとか。漫画の方でもピノコが唐突に「先生の宍戸錠!」と悪態をつく場面があり、僕はこっちを先に読んでセリフの意味が長いこと分からなかったものです。



#1772 
バラージ 2020/01/25 22:36
徒然草

 更新ご苦労様です。今回追加された映画で僕が観たのは『スター・ウォーズ』旧三部作のみ。といっても以前も書いた通り僕はスター・ウォーズの熱心なファンというわけではなく、基本的に昔テレビで吹替版を観ただけでして。
 最初の『スター・ウォーズ』(現エピソード4 新たなる希望)を観た時は、ルーク=渡辺徹、レイア=大場久美子、ソロ=松崎しげる、という布陣の吹替でした。調べるとこれが最初のテレビ放送だったらしく、1983年の放送だったようです。その後、普通の声優による吹替のテレビ放送も観た記憶があり、こちらは最初の放送が1985年でノーカット版放送だったとのこと。『帝国の逆襲』は1986年、『ジェダイの復讐』は1988年の放送だったようで、以上3作ともテレビ放送は僕の中高生時代ですね。90年代後半に公開された特別編は1作目だけ映画館で観ました(もちろん字幕)。いずれのバージョンもビデオやDVDなどでは1度も観ていません。

 やはり1番面白かったのは当然ながら1作目。それのみ3回も観てるのもそのためです。なんといっても1本の映画として完結してるのが良い。僕は映画というものは少なくともある程度は1本で完結してるべきだと思うんで、「次回に続く」とか「前回からの続き」という映画はいくら出来が良くてもやはり評価を下げてしまいます。『帝国の逆襲』や『ジェダイの復讐』に不満があるのもそのためでして、中高生の時以来観てない(しかも吹替で多分カット版)んで細かいところはもうあまり覚えてないんですが、最初の始まりからして中途半端なところから始まるので今一つ入り込めなかったし、『帝国〜』はもろに「次回に続く」終わり方なんで、「えぇ〜っ!?」って感じでフラストレーションでした。テレビ番組なら来週には続きが観れるけど、映画は(当時の感覚としては)いつになるかわかんないわけですし。ちなみに1作目もルーカスは「次回に続く」的なラストを構想してたけど、製作会社から「ラストでちゃんと完結させろ」と言われてああなったという話を聞いたことがあります。それが事実ならやはり製作会社のほうが正しかったと思う。
 徒然草を読んで『帝国〜』について記憶の底から思い出したこともいくつか。最初に出てくる帝国の四つ足メカは面白かったんだけど、ワイヤーで脚をぐるぐる巻きにされてドテーッとこけちゃうところで、「だったら普通にキャタピラとかのほうが良かったんじゃ……」と思ってしまいました(笑)。ラストのダースベイダーの「衝撃の告白」はもちろん記憶にあるんですが、観てた自分が衝撃を受けた記憶がなぜかない。衝撃を感じなかったのかなあ? むしろ主人公の片腕が切り落とされた衝撃のほうがよく覚えてるんですよね。今になって思うこととしては、ダースベイダー、なぜその告白をここまで引っ張った?ということ。もっと手前で、それこそ1作目の段階で告白してても良さそうなもんですが(笑)、あるいは観直せば納得できるのかなあ? そしてルークがでっかい穴の奥底まで落ちて見えなくなるシーンも印象的ですが、どうやって助かったかの記憶がこれまたない。機械の腕が取り付けられて、開いた蓋の中の腱を動かすと指が動くシーンは面白かったです。
 続いて『ジェダイ〜』について徒然草を読んで思い出したこと。こちらは「前回の続き」から始まるもののラストは完結してる……んですが、どうも映画自体が今一つ面白くなかった記憶。『帝国〜』でもそうだったんだけど、意味ありげに出てきたボバ・フェットの扱いが中途半端で、あっけなく死んじゃうのは肩透かしだったし、最後の皇帝との戦いも徒然草にもある通りなんだかあっけなくて肩透かしでした。しかし個人的に何より肩透かしだったのはダースベイダーの素顔。「普通のおじさんじゃん!」という感じで、マスクをかぶってた時の威圧感が一瞬にして無くなってしまいました。オビ・ワン役のアレック・ギネスはあんなにオーラに溢れていたというのに。そうそう、三船敏郎がオファーされたのはダースベイダーではなくオビ・ワン役だったのでは? 三船に断られたのでギネスにオファーが行ったと聞いたような。あと、最後にソロとレイアがちゃんと結ばれてめでたしなんですが、僕はそこで「ルークは!?」とも思っちゃったんですよね。主人公に恋愛エピがないというのも僕はちょっと不満でした(これは7〜9の新三部作もそう)。

 最後に主演と監督についていくつか。マーク・ハミルはルーカスと『スター・ウォーズ』の収益の何%だか0.何%だかを受けとる約束をしてたらしく、ほとんど一発屋にも関わらず左うちわの生活で今でも牧場をしながら悠々自適なんだとか。同じくほとんど一発屋だったキャリー・フィッシャーは後にドラッグに溺れた告白本を出して、メリル・ストリープとシャーリー・マクレーン主演で映画化されてました(邦題『ハリウッドにくちづけ』)。僕の大学時代でしたが未見。ハリソン・フォードはルーカスの出世作で映画史に残る青春群像劇映画の金字塔『アメリカン・グラフィティ』にもわりと重要な脇役で出演しています。
 アーヴィン・カーシュナー監督作は『ロボコップ2』は多分大学時代にテレビの吹替版で観たんじゃないかと思うんですが、ほとんど記憶にないんですよね。1作目と『3』も大学時代にテレビの吹替版で観てて、そっちは記憶にあるんですが、よっぽど印象の薄い凡作だったのかな? 実際、『2』の感想を散見すると酷評が多いようで。ポール・バーホーベン監督の1作目は結構面白かったし(まあ、だからこそ続編が作られた)、『3』は当時の典型的な勘違い日本人の出てくる変な映画だったんで記憶に残ってるんですけどね。リチャード・マーカンドは『ジェダイ〜』以前に『針の眼』、以後に『白と黒のナイフ』というわりと有名な映画を監督しています。僕はどっちも未見。

 次は前日譚三部作(1〜3)だと思いますが、ここまで来たらスピンオフの『ローグ・ワン』も収録しちゃったらどうでしょう? 『ハン・ソロ』も収録されてることですし。



#1771 
2020/01/25 01:46
エースの錠 死す

物凄くお久しぶり過ぎて目眩がしますが そしてあまり皆さまご存じないかもな、
「エースのジョー」こと、宍戸錠氏の逝去 まぁ自分も当然リアルタイムじゃないです
小林信彦氏の著作でその魅力を知り、いくつかレンタルしてみたのですが、
なるほど! ルパン三世に近いテイストを感じる世界で、ルパンに一番近い感じの
キャラかも、と思い楽しめました ご本人も不思議な世界観をお持ちだったようで、
独特の感性が惜しまれます 合掌



#1770 
徹夜城(支配人) 2020/01/21 16:33
「徒然草」更新。

当初「スター・ウォーズ」シリーズを一挙にアップするとか言ってましたが、予想以上に大変なことだったので、ひとまず公開順で最初の三部作のみ今回アップしてます。



#1769 
バラージ 2020/01/14 00:10
外国人名の日本語表記・追記

 外国人名の日本語表記について、さらに思い出したことを追記。

 80年代後半〜90年代前半に男子テニス界の王者だったスウェーデンのステファン・エドバーグは「エドベリ」とも表記されていたと書きましたが、より詳細に言うと彼が若手の頃から取り上げていたテニス専門誌ではエドバーグと表記していたのに対して、トップ選手になるにしたがって取り上げるようになった一般紙のスポーツ欄ではエドベリと表記したらしい。日本では女性ファンに圧倒的な人気があった選手で、その女性ファンからはエドベリじゃ「江戸川べり」のようで嫌だという意見が少なからずあったらしく、通信社の記者が本人にスウェーデン語での名前の発音を尋ねると、返ってきた答は「エドゥバーゥル」というもの。「エドバーグ」とも「エドベリ」とも聞こえるため、狐につままれたような感じでその話はそのまま沙汰止みになったそうです。ただ、本人は「エドバーグ」と英語発音されることを望んでいたとのこと。世界を飛び回るテニス選手にとって、一応の世界標準になるのはやはり英語なので。同様の例として、38歳の現在でも四大大会の優勝を争う男子テニス史上最強王者、スイスのロジャー・フェデラーは、当初日本ではフランス語発音でロジェ・フェデレと呼ばれてたそうですが、本人の希望で英語発音が標準になったそうです。
 逆の例としては90年代末〜00年代初めの女子のトップ選手だったオーストラリアのエレナ・ドキッチがいます。旧ユーゴスラビア生まれだった彼女は、当初は英語発音で「ドキック」と呼ばれてましたが、本人の希望で故国での発音に変更されました。ただ、ドキッチは強い上に美人で人気もあったものの、問題行動の多かったトラブルメーカーの時期があり(前記のエドバーグとフェデラーがスポーツマンシップの権化のような優等生なのとは対照的)、この発音変更要請もその時期に行われたもの。まもなく国籍も旧ユーゴ(後にセルビア)に戻してしまいます。その後、問題児だった父親と縁を切り、国籍をオーストラリアに戻しますが、名前の発音はもう定着したためかそのままでした。

 中国の張藝謀(チャン・イーモウ)や鞏俐(コン・リー)、台湾の侯孝賢(ホウ・シャオシェン)らは、記憶をたどると80年代末に日本に紹介され始めた当初は漢字表記にカタカナ表記のルビを振るという書き方でした。それがカタカナ表記に変わったのは、90年代半ば頃から中華圏において国境を越えるコラボレーションが行われるようになり、香港映画人と作品をともにするようになってからだったと思います。香港映画ではすでに70年代から英名のカタカナ表記が標準(チョウ・ユンファやレオン・カーフェイなど一部英名では呼ばれない人もいたが)でしたし、漢字表記に英名のカタカナ表記ルビではおかしい。そして1つの映画の人物名表記が漢字表記とカタカナ表記が入り交じっていては見栄えが悪いし分かりにくい。そういうわけでカタカナ表記に統一されたんでしょう。コン・リーはデビュー作の『紅いコーリャン』から『秋菊の物語』までのチャン・イーモウ作品では漢字にカタカナルビでしたが、その合間に出演した香港映画『テラコッタ・ウォリア 秦俑』では役者として主演してたチャン・イーモウともどもカタカナ表記のみでしたし、その後レスリー・チャンと共演したチェン・カイコー監督の『さらば、わが愛 覇王別姫』以後はカタカナ表記になったと記憶しています。
 中華圏映画人名発音の日本語表記における「揺れ」についてはそもそも香港映画の時からありまして。有名なところではジャッキー・チェン(英名:Jackie Chan)。Chanは本名および旧芸名の姓・陳からで、広東語に忠実に表記すると「チャン」が近いらしいんですが(例としてはジャッキー以前に日本でアイドル歌手としてデビューしたアグネス・チャン(陳美齢、英名:Agnes Chan))、「ジャッキー・チャン」じゃ「ジャッキーちゃん」に聞こえて女みたいだ、と日本の映画会社が判断したらしく「チェン」になったそうです。おそらく同様の理由でレスリー・チャン(張國榮、英名:Leslie Cheung)は最初に日本で紹介された頃はレスリー・チェンと表記されてましたし、女優ですがマギー・チャン(張曼玉、英名:Maggie Cheung)も最初の頃はマギー・チェンという表記もあったような。また歌手にして俳優のジャッキー・チュン(張学友、英名:Jacky Cheung)はやはり「チャン」だと変だし「チェン」だと有名な先輩とかぶっちゃうということで「チュン」という苦し紛れの表記となり、それが定着して現在に至っています。ウォン・カーウァイ作品を日本に紹介した今は無き映画会社プレノンアッシュが一時「張(Cheung)=チョン」で統一しようと(広東語発音に忠実だとそれが近いのかも)、カーウァイ映画に出演してる彼らを「レスリー・チョン」「マギー・チョン」「ジャッキー・チョン」と表記したりしてましたが定着しなかったようです。こう見てくると発音の正確性が全てではないとも言えるわけで、確かずっと以前歴史板のほうで書いたんですが、ロシアの政治家バカーチンは原語に忠実に発音すると「バカチン」だけど、それじゃ日本語の響きとしてあまりに変なので「バカーチン」になったという話を思い出します。
 中国の俳優だと、チャン・ツィイー(章子怡、発音表記:Zhang Ziyi)は初期の頃には「チャン・ツーイー」と表記してる雑誌もありました。僕は大学時代に第2外国語として中国語(普通話=北京語)をとってたんで、発音表記「Zi」は「ツー」のほうが近い発音だという記憶があり、またそれ以上に「ツィイー」は日本人には発音しづらいという理由で僕も一時は好んで「ツーイー」という発音を使ったり記述したりしてたんですが、映画会社は最初に彼女が日本に紹介された『グリーン・デスティニー』(中香台米合作)から一貫して「ツィイー」と表記しており、彼女の日本での知名度を高めたシャンプー「アジエンス」のCMも「ツィイー」表記だったためもあってか、徐々に一部雑誌の「ツーイー」は駆逐されていき(『キネマ旬報』だけが最後までしつこく「ツーイー」表記をして抵抗してた)、今ではすっかり「ツィイー」一色となったため僕も今では「チャン・ツィイー」にしております。でも「ツィイー」って言いにくいんだよな。

 そういや外国人名の日本語表記といえば、映画誌『スクリーン』は他に見られない独自の表記を採用してて、不思議な印象がありました。おそらく英語発音(原語発音ではない)を忠実に表記してるっぽいんですが、『スクリーン』は洋画専門誌の老舗として独自の方針やこだわりがあるんでしょうか? ライバル誌の今は無き『ロードショー』は一般的な日本語表記だったんですけどね。


>名画座の中華圏人名表記の追記
・名画座の『墨攻』では王志文、徒然草の『墨攻』ではカタカナ表記のワン=チーウェンになっている王志文(ワン=チーウェン)は、名画座の『始皇帝暗殺』にも王志文で記載がありましたね。



#1768 
バラージ 2020/01/10 22:53
外国人名の日本語表記

 僕はテニスファンでもあるんですが、昔テニスファンのブログで外国人選手の人名表記が話題になったことがあります。というのも外国人テニス選手の人名表記って媒体によってかなりバラバラでして、ファンでも混乱することがよくあるんですよね。現在のトップ選手で言うと女子の「セリーナ・ウィリアムズ」「セレナ・ウィリアムズ」なんかがいます。まあ彼女の場合は同一人物だと容易にわかるんであまり問題になりませんが、少し前のトップ選手だとベルギーの女子キム・クライシュテルスは他に「クライスターズ」「クリスターズ」「クリステルス」など様々な表記がありましたし、80年代後半〜90年代前半の男子トップ選手ステファン・エドバーグには「エドベリ」という表記もありました。上記ブログで話題になったときは、シャラポワもロシア語発音に忠実にすると「シャラポーヴァ」が近いなんて話になりましたが、もう「シャラポワ」で定着してるんだからそんなのわかりにくくなるだけだよね、ということに落ち着きました。
 中華圏(中国・香港・台湾)芸能人の人名表記については、僕は逆に基本的にカタカナ表記を使ってます。なぜなら一般的にそうだから、そうしないとわかりにくいだけなんで(笑)。中華圏の政治家などは日本でも漢字表記なのに、なぜ芸能人は一般的にカタカナ表記なのかというと、多分最初に一般的に日本で有名になった中華圏スターが香港のブルース・リーだからだと思われます。英国植民地だった香港ではほとんどの俳優が英名も持っていた&リーは米国帰りだったことも影響してるんじゃないでしょうか。それにプラスして当時の日本では洋画(ハリウッドもしくは欧米)コンプレックスが強く、輸入会社も漢字で中国っぽいと客が入らないと考えて欧米っぽく見せたかったんでしょう。また実際、日本で最初に公開されたブルース・リー映画はすべて英語吹替版だったそうです。そういえば子供のころテレビで観たリーの映画は全部主題歌が英語だったな。

 以下に歴史映像名画座(一部は栄耀映画徒然草)の中華圏人名表記で、あらためて見てみて気づいたことを。
 まず誤り。
・『HERO』……チャン=ツィイー、ドニー=イェンが、チャン=ツ「イ」イー、ドニー=イ「エ」ンと大文字になっちゃってます。
・『項羽と劉邦 その愛と興亡』のロザムンド=クアン……誤りとまでは言えないものの、ロザムンド=ク「ワ」ンが一般的。

 次に同一人物で表記が異なっている人物。
・『墨攻』のウー=チーロンと『新忠烈図』の呉奇隆……表記はニッキー=ウーが一般的ですね。というか徒然草の『墨攻』の項ではニッキー=ウーになっています。
・『墨攻』の王志文……徒然草ではカタカナ表記のワン=チーウェンになってますね。
・『ヘブン・アンド・アース 天地英雄』の王学圻と『孫文の義士団』のワン=チェシー……後者のカタカナ表記は間違い。ワン=シュエチーが正しいです。
・『水滸伝(2011年)』の張函予……『孫文の義士団』のチャン=ハンユーと同一人物。
・『岳飛伝 THE LAST HERO』の劉承俊……『ラスト・ソルジャー』のユ=スンジュンと同一人物。韓国出身の俳優です。
・『大明劫』『蒼穹の昴』の余少群……『1911』のユイ=シャオチュンと同一人物。
・『ウォーロード 男たちの誓い』のシュー=ジンレイ……徒然草のほうでは徐静蕾と漢字になっています。
・『ラストエンペラー』のウー=ジュンメイと『宋家の三姉妹』のヴィヴィアン=ウー……同一人物ですが間違いというわけではなく、『ラストエンペラー』の時はウー=ジュンメイと表記されてたんですが、その次の日本公開作(というか日本映画)『チャイナシャドー』からヴィヴィアン=ウー(またはビビアン=ウー)と表記されるようになりました。

 以下は日本ではカタカナ表記のほうが一般的なんじゃないかな〜という人物。ま、あくまで僕個人の感覚ですんで。
・陳凱歌(『始皇帝暗殺』『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』『さらば、わが愛 覇王別姫』)……チェン=カイコーが一般的。
・鞏利(『始皇帝暗殺』『項羽と劉邦 その愛と興亡』『さらば、わが愛 覇王別姫』)……もう完全にコン=リーが一般的でしょう。むしろ漢字にしたほうがわからない人が多いくらいで。
・張芸謀(『HERO』『項羽と劉邦 その愛と興亡』)……チャン=イーモウが一般的。
・張豊毅(『始皇帝暗殺』『項羽と劉邦〜背水の陣〜』『レッドクリフ』『さらば、わが愛 覇王別姫』)……どちらかというとチャン=フォンイーが一般的なんじゃないかなあ。
・胡軍(『大漢風』『レッドクリフ』『大明帝国 朱元璋』『孫文の義士団』)……最近はフー=ジュンが一般的になってきたかなあ。
・呉倩蓮(『大漢風』)……90年代から香港映画に出てた台湾出身の女優ですが、ウー=チェンリン(またはウー=チェンリェン)、ン=シンリンと北京語発音と広東語発音の両方で呼ばれることがあってちょっとややこしい人。とはいえ香港が主な活動舞台だったんで、どちらかといえばン=シンリンが一般的でした。
・張震(『レッドクリフ』)……台湾の俳優で、チャン=チェンが一般的。
・林志玲(『レッドクリフ』)……台湾の女優で、リン=チーリンが一般的。
・劉暁慶(『則天武后』)……昔の作品では漢字表記の場合も多いものの、リウ=シャオチンと表記されることも多い。
・姜文(『ヘブン・アンド・アース 天地英雄』)……チアン=ウェン(またはチャン=ウェン)が一般的。
・黄軒(『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』)……どちらかというとホアン=シュアンが一般的かなあ。
・張雨綺(『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』)……香港映画『ミラクル7号』でデビューしたためか、英名のキティ=チャンが一般的。
・馮小剛(『女帝-エンペラー-』)……どちらかというとフォン=シャオガンが一般的かなあ。
・林心如(『岳飛伝 THE LAST HERO』)……台湾の女優で、ルビー=リンが一般的。
・鄭佩佩(『岳飛伝 THE LAST HERO』)……60年代に前記のキン・フー映画『大酔侠』でデビューした香港の女優で、チェン=ペイペイが一般的。
・喬宏、韓英傑(『忠烈図』)……前者は『燃えよドラゴン』に出演してたロイ=チャオ、後者は『ドラゴン危機一発』『ドラゴン怒りの鉄拳』に出演してたハン=インチェ。いずれも香港の俳優。
・洪金寶、元豹、火星(『忠烈図』)……それぞれサモ=ハン=キンポー、ユン=ピョウ、マースですね。
・尹子維(『新忠烈図』)……香港の俳優で、テレンス=インが一般的。
・趙文卓(『戦神 ゴッド・オブ・ウォー』『英雄 国姓爺合戦』)……80年代から香港映画に出演しており、チウ=マンチェク、ウィン=ツァオ、ヴィンセント=チャオなどの呼称がありますが、チウ=マンチェクが最も一般的。
・斯琴高娃(『康熙王朝』)……80年代から香港映画に出演してる女優で、スーチン=ガオワーが一般的。
・孫儷(『宮廷の諍い女』)……スン=リーが一般的。
・許鞍華(『阿片戦争』脚本)……香港の女性監督アン=ホイです。
・姜武(徒然草の『1911』)……上記の姜文(チアン=ウェン)の弟で、チアン・ウーと表記されることが多い。


>追悼・上原正三
 子供向け特撮ドラマ一筋だった沖縄出身の脚本家・上原正三が亡くなりました。僕もリアルタイムでは知らないんですが、同郷の脚本家・金城哲夫の誘いでウルトラシリーズに立ち上げから参加し、後に『帰ってきたウルトラマン』ではメインライターを務めた人です。その後、東映でも『がんばれロボコン』『秘密戦隊ゴレンジャー』を大ヒットさせたとのこと。やはりウルトラシリーズで脚本を書いてた市川森一が、『ウルトラセブン』制作の舞台裏をフィクションを交えて脚本に書いた1993年のNHK単発ドラマ『私が愛したウルトラセブン』(現在DVD化もされてる)では、仲村トオルが上原を演じてました。金城は佐野史郎、市川自身をモデルとした人物は香川照之、モロボシダンを演じた森次晃嗣は松村雄基、アンヌ隊員を演じたひし美ゆり子は田村英里子、円谷英二は鈴木清順がそれぞれ演じてて、放送当時に観たんですがなかなか面白かったです。すでに金城と円谷はもちろん、市川も故人となりましたが、ご冥福をお祈りします。



#1767 
徹夜城(支配人) 2020/01/08 14:08
外国人の名前の読みは難しい…

今さらですがあけましておめでとうございます

>Kocmoc Kocmaさん
反応はいささか遅れてしまい、すいません。ご指摘の件については先ほど修正をアップしておきました。Kocmoc Kocmaさんのご想像どおりで、僕が参考にした配役情報がすでに「ラ」になっていて、これがキリル文字アルファベットの取り違えが原因であろうと思います。
 「歴史映像名画座」なんかやってますと、外国の人名の表記をどうしたものか困ることが実際多いんですよねぇ。ロシア・東欧に関しては以前からキリル文字くらい読めるようにしておかないと、と思いつつまだ勉強しておりません。おなじみのアルファベットで書いてあっても現地発音ではどう読むのか分からない、というケースも結構あります。あれこれググってなんとかごまかしてるところで…
 中国の人名表記も困る場合があるんですよね。僕は基本的に漢字表記で統一しようとしてますが、英語名とか北京語発音のカタカナ表記の方が一般的になってる人もいまして、づしたもんだか迷うことがあります。


>バラージさん
 キン・フー監督だと、僕は「忠烈図」(倭寇討伐映画だからですね)と、レンタルビデオでたまたま置いてあった「侠女」だけ見ています。
 「寅さん50」はどうしたもんかなぁ、と今も検討中。そもそも寅さんシリーズで最初から最後までちゃんと見たのは一本もなく、そのくせ名場面とかTV放映時に部分的に見たシーンなんかは結構あるんです。時をリアルタイムで隔てて登場人物たちの「その後」が描ける、というのはすごいことですけど、わざわざ作る意味あるのかなぁ、とも。「俺のアイデアだ!」と横尾忠則さんが騒いだ李してるようですが(汗)。




#1766 
バラージ 2020/01/07 20:06
はるかノスタルジー

 あけましておめでとうございます。今年最初に観た映画は『スター・ウォーズ9 スカイウォーカーの夜明け』、次に観たのが『男はつらいよ お帰り 寅さん』でした。

 『スカイウォーカーの夜明け』(ダサい邦題サブタイトルだなあ)は、取り立ててスター・ウォーズファンではない僕としては、ふーん、ま、こんなもんですかね、という感じでした。とりあえず退屈はしませんが、かといって面白いというほどでもありませんでしたね。途中あれが解決したと思ったらこれが起こり、これが解決したと思ったらそれが起こりで、ストーリーが右往左往し、さっぱり前に進まないのがちょっとイライラしたし、とにかくフォースの力が万能かつ強力すぎるんで途中ちょっとシラケてしまいます。キャリー・フィッシャーの出演シーンは前2作の没映像に特撮を加えて使ったそうですが、やっぱり不自然だったなあ。会話シーンがやたらとアップとバックショットの切り返しばっかりだったし、何よりレイアの登場シーンが少なすぎ。おかげでストーリー展開にも若干の不自然さができていました。あとやっぱり2時間半は長い。結局一番盛り上がったのはハリソン・フォードが出てきたところですかね。
 あと、これは新シリーズ3作通して観てなんですが、恋愛要素があるようなないようなぼんやりした感じで、その上その恋愛軸がふらふらで終始もやもや感がありました。旧三部作ではハン・ソロとレイアの恋愛が、ルークが兄とわかるまでは彼との三角関係も交えて最後まで1本の軸として大きな要素となってました。しかし新三部作は、7でレイとフィンとカイロ・レンの三角関係として展開するのかと思いきや、8ではフィンの相手としてアジア系女性が出てきてレイの恋愛要素がなくなったと思ったら、9はアジア系女性がちょい役に降格されフィンの相手っぽいアフリカ系女性が出てきてレイとレンがやっぱり恋愛っぽい?という一貫性のなさ。しかもどれも恋愛のようなそうでないような……というはっきりしない描かれ方でちょっとイライラしましたね。
 結局、僕は8>9>7の順に面白かったかな。以前から感じてたんですが、最初から三部作として作られることが確定してる三部作は最初のが1番つまらなく、真ん中のが1番面白い。最初のガンダム三部作も(テレビの再編集ではありますが)そうでした。逆に結果的に三部作となった三部作は当然ながら最初のが1番面白く、真ん中のが1番つまらない。スター・ウォーズ旧三部作がそうでした。
 そういえば『アメトーク』のスター・ウォーズ芸人で、スター・ウォーズを観たことがない狩野英孝にシリーズの製作順を知らせないまま時系列順に1〜6を見せてみるという企画をやってて、これがなかなか面白かった。製作順ではないと知らないまま時系列順に観るとこういう感想になるんだなと。1でいきなり説明のないフォースやジェダイがよくわからなかったり、3で主人公が最後悪人になってしまうのにショックを受けたり、4でいきなり映画が古臭くなるのを不思議がったり、赤ん坊から大人になったルークに感慨を感じたり、そこでようやくフォースやジェダイの説明があって理解したり、5でダースベイダーがルークにお前の父だと告白しても全然驚かなかったり(笑)。

 『お帰り 寅さん』は、寅さんの甥・満男(吉岡秀隆)の現在と、回想によるシリーズの名場面が交互に描かれていくという構成。寅さんが生きてるのか死んでるのか劇中では触れられず、おそらくあえてはっきりさせなかったんでしょう。現在のシーンと昔の映像を対比させることによって、うわー第1作の頃は倍賞千恵子も前田吟も若かったんだなーとか、ゴクミと吉岡くんの若い頃懐かしーとか感じさせ、それによって現在のシーンもまた活きてくるという構成は上手い。寅さんはもちろん、いずれもすでに故人となった、おいちゃん、おばちゃん、タコ社長、さらにこれまた故人となった人も多い歴代マドンナの映像も懐かしい(回想シーンにも関わらず、おいちゃんが3人も顔が変わるのはご愛嬌)。と同時に懐かしさありきのノスタルジック映画というところに引っ掛かりも感じてしまいました。ターミネーター、スターウォーズとそういう映画が続いただけに、なんだか後ろ向きな懐古的ノスタルジー映画ばかり続いてるようで(というか僕がそういうのを続けて観てるんでしょうが)、そういうところがなんというかちょっとどうも。
 僕がリアルタイムで観た『男はつらいよ』は大学時代。ビデオで42作「ぼくの伯父さん」、映画館で43作「寅次郎の休日」、44作「寅次郎の告白」、45作「寅次郎の青春」のゴクミ・サブマドンナ四部作でした。卒業後、1作とばして牧瀬里穂がサブマドンナの47作「拝啓車寅次郎様」も映画館で観ましたが、再びゴクミがサブマドンナとなった48作目、渥美清の遺作「寅次郎紅の花」は観ていません。それらを観た時も思ったんですが、山田洋次監督は(少なくともその時代以降の)現代の若者を描くのが下手ですね。当時も到底今どきの若者とは思えませんでしたが、今回は満男と泉(後藤久美子)はもう中年なんでそれほど違和感はないものの、満男の娘世代の若者のリアリティが無さすぎでした。



#1765 
Kocmoc Kocma 2020/01/04 08:21
ピョートル3世くん

明けましておめでとうございます。そしてお久しぶりです。
(以前は別の名前だったか?)

先ほどイラン情勢関連で歴史映画コーナーを覗いたんですが、ちょっとした記載ミスをみつけてしまったのでご指摘します。
連続ドラマ「エカチェリーナ」のピョートル3世役の俳優名がアレクサンドル・ラツェンコとなっていましたが、アレクサンドル・ヤツェンコАлександр Яценкоです。
https://www.kinopoisk.ru/name/224365/

彼は2003年だったと思うけれど東京国際映画祭でフドイナザーロフ監督の「スーツ」の3人の主人公のうちの一人として招聘されていて、上映前後にお話しました。当時22歳くらいでした。
ワインでほろ酔い状態になっていてすごくお喋りでした(こちらが理解しているかどうかはお構いなしにしゃべり続けていた)。次はどういう作品に出たいのかとかを聞いたりしましたが、意外とまじめに演劇観を語ってくれ(たぶん…)、きっとよい俳優になるだろうと思いました。
私は3人の中で一番若いアルトゥール・スモリヤニノフのファンになり、彼はその後結構有名監督の作品に出演して日本で上映もされているものもあってチェックしていたのですが、ヤツェンコの方はどうしているのかなあと気になっていました。
そうしたら思いがけなく連続ドラマでの”再会”が果たせて大変嬉しかったです。
まさにああいう役どころが得意なんだろうなと思います。

おそらくRとЯの誤読がどこかであっての誤記載だと思われますので、訂正をよろしくお願いいたします。

アルトゥール・スモリヤニノフくんにもヤツェンコくんにも、また会いたいな〜、


https://kirakocma.blogspot.com/


#1764 
バラージ 2019/12/31 12:52
キン・フー再び

 メールの整理をしていたら、一昨年にWOWOWで観たキン・フー監督の映画の感想が出てきました。過去ログを読み返すと、#1689で全体的な感想は書いていましたが、映画別の感想は書いてなかったので改めて書いちゃおうと思います。

『大酔侠』
 1966年の映画でキン・フーの監督2作目。司法長官を捕らえた盗賊一味が、捕らえられている首領との人質交換を要求。長官の妹である男装の女剣士が、謎の酔いどれ武術家の助力を得て盗賊一味との戦いに挑むというお話。いやぁ面白かった。女剣士を演じるのは若き日のチェン・ペイペイ。『グリーン・デスティニー』でチャン・ツィイーを唆す悪婆さんをやってた人ですが、若き日の凛々しい女剣士ぶりが爽やかでカッコいい。この映画で一躍大スターとなり、「武侠影后(武侠映画の女王)」と呼ばれたのもうなずけます。酒場での女剣士の大暴れや屋根から屋根への追跡劇など、『グリーン〜』は本作へのオマージュに溢れた作品だったこともよくわかりました。

『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』
 原題は『龍門客棧』。1967年の映画で香港・台湾・東南アジアで大ヒットし、90〜10年代にツイ・ハークがリメイク映画『ドラゴン・イン』とその続編的映画『ドラゴンゲート 空飛ぶ剣とまぼろしの秘宝』を作りました。日本では68年にバーターで輸入され北海道のみで限定公開。ブルース・リーによるカンフー映画ブームの74年にリバイバル公開されたそうです。明の時代、朝廷を牛耳る悪徳宦官に逆らった忠臣が処刑され、遺児たちが龍門に流罪となる。宦官は秘密警察に遺児たちの暗殺を命じ、彼らは身分を隠して竜門の宿(龍門客棧)で待ち伏せ。そこへ宿の主人を訪ねてきた弟分の風来坊、実は忠臣の参謀だった宿の主人、忠臣の部下の遺児である兄妹ら剣術の達人たちが偶然集まり、彼らは協力して秘密警察に立ち向かう。主人公たちが秘密警察を撃退する中盤までは面白いんですが、業を煮やした悪ボスの宦官が出てくる終盤はやや失速するのが惜しい。

『侠女』
 1971年の映画で「第一部:チンルー砦の戦い」「第二部:最後の法力」の上下二部合わせて3時間超の大作。カンヌ映画祭で高等技術賞グランプリを受賞しました。後に1本の作品として3時間にまとめられ、デジタル修復版もそのバージョン。明の末期、書画を描いて売る貧しい書生の隣家に越してきた美しい女性は、悪徳宦官の魏忠賢(実在の人物)に処刑された忠臣・楊漣(これも実在の人物らしい)の娘だった。身を隠していた彼女を殺すため秘密警察が送り込まれ、女剣士でもある娘と、占い師と町医者に身をやつした楊漣の部下、そして娘と相思相愛になった書生が秘密警察との壮絶な戦いに挑む。アクション時代劇を芸術にまで昇華させた群像劇で、謎の人物がぞろぞろ出てくるミステリー調の序盤から、華麗な集団アクションに書生と娘の恋など内容も多彩。特に中盤の竹林での戦いは『グリーン・デスティニー』『LOVERS』などでもオマージュされた名シーンです。ただ終盤はお助けキャラとして途中から出てきた偉い坊さんがなぜか主人公みたくなってしまい、えらく観念的な宗教映画のようになってしまう変な映画でもあります。

『迎春閣之風波』
 1973年の映画。『侠女』の長さと観念的芸術性が不評だったのか、再び娯楽アクションに回帰した作品。元の末期、反乱を起こした朱元璋の戦略地図が内通者によって元の重臣の手に渡る。酒場「迎春閣」に朱元璋の密偵と元の密偵がそれぞれ集い、やがて重臣が到着。朱元璋の密偵たちによる戦略地図奪回作戦が始まる。序盤は密偵同士も誰が敵で誰が味方かわからず、それが判明した後も終盤まで心理戦や頭脳戦が展開していくのが新機軸。どの映画でも女剣士を出すキン・フーですが、本作ではそれがエスカレートして迎春閣の女主人が雇った4人の女給仕に重臣の妹も加わり大乱戦。チャンバラだけでなくカンフー・アクションも導入されたのは大ブームとなったブルース・リーの影響でしょうか。リーも機会があればキン・フーと組みたいと思ってたらしいです。


 さて、今年も終わり。『スターウォーズ』や『男はつらいよ』は来年に回していいかな。今年のベスト3は『SHADOW 影武者』『旅のおわり世界のはじまり』、3番目が同率で『主戦場』と『i 新聞記者ドキュメント』でした。ではまた来年。



#1763 
徹夜城(支配人) 2019/12/26 23:22
SW9見てきました。

ここんとこ毎週映画館行ってます(笑)。今週は「スター・ウォーズ episode9 スカイウォーカーの夜明け」を吹き替え版で鑑賞してきました。
何を書いてもネタバレになりそうなんで、詳しい話はそのうちに「徒然草」でやりますが…まぁあそこまで盛大に豪華メニューを並べられりゃ満腹感は間違いないでしょう。一方で作り手も分かっててやってるんでしょうが、ひとまず旧シリーズ以来の、ルーカスが一時言ってた「全9部作」はここで終わるわけでして、「祭りの後の寂しさ」はかなりありました。
 まぁそもそも僕はep7以降の三部作はルーカスの手を離れている点で、続編には違いないけど何かモヤモヤしたものを抱いてしまうのですよね。宇治十帖みたいな(今回ますますその思いを強くした)。

予定では次回の「栄耀映画徒然草」で「スター・ウォーズ」全部アップしちゃおうかと。実はここ数日公開順に「4」「5」「6」と見ていたんです。「6」の直後に「9」を見たもんで、ある程度予想はしてたんだけど予想以上に類似してるというか一部人物と舞台が共通しちゃったりとか、まぁ復習がちょうどうまくいっちゃったような。



#1762 
バラージ 2019/12/22 22:09
徒然草

 更新ご苦労様です。今回追加された中で僕が観たのはチャン・イーモウ監督の『あの子を探して』だけ。
 チャン・イーモウ監督の映画については#1491にも書いたんですが、僕は日本で公開されたチャン・イーモウ監督映画はほぼ観てまして(商業的要請で撮ったというヤン・フォンリャンとの共同監督による監督2作目の『ハイジャック 台湾海峡緊急指令』のみ未見)、また公開当時に住んでた地方で上映されたチャン・イーモウ映画は映画館でほぼ観てるくらいのファンなんですが、この映画は映画館では観逃し、後にビデオで観ました。というのもこの映画に関しては以下の理由でどうにも食指が動かなかったもんで。
 現代のド田舎の農村を舞台とした社会派要素を持つ映画を、素人を使ってドキュメンタリータッチで撮るというのは、それ以前に『秋菊の物語』で行った手法で、『秋菊〜』では主演のコン・リーら4人だけがプロの俳優でした。僕はそれ以前にチャン・イーモウが監督した『紅いコーリャン』『菊豆(チュイトウ)』『紅夢』のような、1920〜30年代の地方の旧家を舞台とした寓話的な物語を、赤を基調とした鮮烈な色彩感覚で描いた表現主義的な映画に魅了されてたんで、『秋菊〜』の作風には戸惑ったし正直かなりがっかりした記憶があります(チャン・イーモウのファンにはそういう人が結構いたみたい)。なので同様の作風であることが予想された上に、コン・リーのようなチャン・イーモウ映画のミューズとも呼ぶべき女優も出演していない『あの子を探して』は今一つ観る気が起きず、結局映画館では観逃してしまいました(次の『初恋のきた道』は映画館で観た)。
 ビデオで観た感想としては、よくできてるとは思うしそれなりに面白いけどちょっと泣かせが過ぎるような気が。『秋菊〜』には泣かせ要素はなかったんで、チャン・イーモウがこんな素人の子供を使った“泣かせ映画”を作ったことにやや釈然としない気持ちがしました。『初恋〜』『至福のとき』と続く「桃色三部作(または「幸せ三部作」)」は、初期のコン・リーとのコンビ作に心酔した僕としては今一つノレませんでしたね。


>最近観て面白かった映画
『i 新聞記者ドキュメント』
 東京新聞の望月衣塑子記者を題材とした、森達也監督によるドキュメンタリー映画。今年公開された劇映画『新聞記者』のプロデューサーが同時企画した作品だそうです。
 菅官房長官の記者会見で舌鋒鋭く迫って一躍有名になった望月記者ですが、社会部の遊軍で政治部の記者ではないらしい。だから政治記者の慣例みたいなものに縛られず、記者クラブ的な馴れ合いにも与せず切り込んでいけるんですね。記者として当たり前の仕事をしてるだけでもあるんだろうけど、そういう人が浮き上がってしまうっていうのがね。なんとも。あと、望月さんは悪い意味での女性的な湿っぽさがない。メソメソしたり涙を見せたりしないのが良い。
 辺野古基地移設問題、伊藤詩織さん準強姦事件、森友・加計問題、宮古島自衛隊弾薬基地建設などを取材・追及するエネルギッシュでパワフルな望月の記者活動を撮影しつつ、ある意味それを狂言回しとして日本の政治状況、メディア状況、社会状況を描き出したドキュメンタリー映画でもありました。伊藤詩織、籠池夫妻、前川喜平、金平茂紀(TBS『報道特集』キャスター)なども次々登場していて、その度に、おお、となりましたね。
 しかしまあ菅官房長官とその報道官の望月記者に対する質問妨害はひどい。完全に狙い打ちの低レベルな嫌がらせ。安倍首相が辞めても次はこの人が首相かもと言われてるかと思うと頭がくらくらしてきますな。官邸前の公道でも望月記者と森監督だけがなぜか警察に度々通行を止められたり、カメラ撮影をやめさせられたりしています。しかし結局これは僕ら1人1人が考えなければならない日本社会全体の問題なんでしょう。
 同時にこの映画はなんというかエンターテイメント映画にもなっていて、単純に映画としてもとても面白かった。パワフルな映画でした。ラストでタイトルがなぜ『i』なのかの意味がわかって、なるほどそういうことかと感心しました。

『火口のふたり』
 脚本家の荒井晴彦が自ら監督もした恋愛ドラマ映画。白石一文の同名小説が原作で、主演は柄本佑と瀧内公美。
 かつて愛し合った男女が、10日後に結婚式を挙げる女の帰省を機に再会。お互い欲望のままに愛し合ったかつての記憶がよみがえり、婚約者が来るまでの5日間限定で2人は貪るように愛し合うのだが……というストーリー。
 『彼女の人生は間違いじゃない』で熱演してた瀧内公美がまたまたフルヌードで濡れ場を演じてると聞き、それも目当ての1つとして(というかそれを主な目当てとして・笑)観に行ったんですが、映画自体も予想外に面白かった。最初から最後までほぼ柄本と瀧内の2人芝居なんですが、ずっとヌードで絡みっぱなしというわけではなく、基本的にはむしろ普通のシーンのほうが多い。しかし主演2人の芝居がとても上手く、脚本の台詞回しも演出も極めて自然でドラマに惹き付けられ、最初から最後まで飽きずに観ることができました。ただ終盤の展開が、なんでそんな現実離れした荒唐無稽な話になっちゃうの?という感じで疑問。惜しい。
 瀧内公美のヌードは大変美しゅうございました。スタイル抜群で、ヘアまで見せまくりでした。美人で演技も上手いのに、なんで20代後半まで埋もれてたのか謎。柄本佑も『いだてん』とはまるで違う役なのに、これまたほんと上手い。弟の時生ともども親父譲りか(ちなみに親父の明は主人公の父親の電話の声のみで友情出演)。



#1761 
徹夜城(支配人) 2019/12/16 22:40
栄耀映画徒然草を更新しました。

実際に更新したのは昨日なんで、今さら遅れて報告になりますが。
今回はここ2カ月の間に見た者、ということで、新旧いろいろとりそろえております。
アニメの「ルパン三世THE FIRST」は鑑賞からアップまで最速記録かも知れません。

年末になるとまた見たい映画が次々公開になりますねぇ。
なんだかんだで「スター・ウォーズep9」は早めに見ておきたいですね。どうやって「締める」ことになるのか、そこはやはり注目したいと。ただ製作ばなしを聞いてるとルーカスが蚊帳の外のせいなのか、新三部作はストーリー作りが右往左往してるように見えちゃうんだよなぁ。



#1760 
バラージ 2019/12/02 21:58
28年ぶりに戻ってきました

 ターミネーター・シリーズの最新作『ターミネーター ニュー・フェイト』を観ました。ジェームズ・キャメロンが製作と脚本でシリーズ復帰した作品で、『2』の続編という設定になっています。
 なかなか面白かったですね。少なくとも『3』『4』『新起動』よりは面白かった(テレビシリーズの『サラ・コナー クロニクル』とかいうのは未見)。まあ『1』『2』みたいな衝撃はありませんが、アクション映画としてよく出来てたと思います。ツッコミどころも多少ありますが、面白かったからまあ良しとしよう。
 ストーリーも興味深かったです。話がメキシコから始まるのが異郷の雰囲気でいいと思ったら、米国との国境の壁を越えるところで、ああなるほどこのネタか、さすがリベラルなハリウッドと思わされました。ヒロインがメキシコ人というのもマイノリティをクローズアップするポリティカリー・コレクトで、新しいスターウォーズなんかといっしょ。その一方でシュワルツェネッガー演じる旧式ターミネーターに銃による武装の必要性を語らせて保守派への目配りもしてるあたりは興行に配慮する娯楽映画という感じでした。強化人間役のマッケンジー・デイヴィスが僕好みのショートカット美女で、髪型のせいもあるんでしょうが昔好きだったメアリー・スチュアート・マスターソンに似ています。ガタイのほうはだいぶ違うけど。それから最初に製作会社のロゴとかが出るやつが映画内に全部組み込まれてるのも良かった。最近の外国の大作映画は製作会社相乗りが多いんで、ひどい時はロゴが7つも8つも続いてうんざりするんですよね。特に中国映画がひどい。
 それにしてもリンダ・ハミルトンが歳とったのを見ると、そうか、『2』からもう28年も経ったんだな……となんとも感慨深くなってしまいます。シュワルツェネッガーはずっと目にしてるからあまり感じないけど、ハミルトンはあれ以来ですからねえ。なんか『2』を観たのもついこの間のことのような気がしてしまうんですが。

>ビデオで観て面白かった映画
『ウォーターダンス』
 歴史板に書いた『異聞 始皇帝謀殺』同様、これもAmazonで1円(送料別)で買ったレンタル落ち中古ビデオで観た米国映画。これまた昔レンタル店で見かけて、そのうち観ようと思いながらなんとなく観逃してしまっていました。ビデオ化されたのは1994年で、日本公開は93年、本国公開は91年です。
 下半身不随の車椅子生活になった作家の男と、彼が入ったリハビリ病棟の仲間たちの日々を描いたヒューマンドラマ映画。エリック・ストルツ主演のインディペンデント映画で、監督の実体験を基にしているとのこと。ストルツはこの頃インディペンデント映画によく出てたようですが、やっぱりいい役者だなあ。カッコいい。しかし映画は必ずしも彼の単独主人公という感じではなく、リハビリ入院仲間のおしゃべりなウェズリー・スナイプスと、いきがった元バイク乗りウィリアム・フォーサイスの3人がメインといった感じで、ストルツの恋人(不倫人妻)役のヘレン・ハントも含め、それぞれが好演。妙に泣かせに走ったりせず、深刻なテーマをさらりとしたタッチで淡々と描いているところが良かったですね。単純なハッピーエンドにしていないのもいい。これは当たり映画でした。
 それにしても80〜90年代の映画のビデオを部屋の小さなテレビで観てると、なんだかあの頃に戻ったような不思議な感覚になります。



#1759 
バラージ 2019/11/12 00:25
映画いろいろ

 先日BS-TBSで森田芳光監督、沢田研二主演の映画『ときめきに死す』が放送されました。DVDがもう廃盤で中古品も滅多になく、あったとしてもプレミアが付いてめちゃくちゃ高いのでテレビ放送してくれるのはありがたい。時々そういうDVD廃盤の映画がテレビ放送されるから油断なりません。相米慎二監督、牧瀬里穂主演の『東京上空いらっしゃいませ』もNHK-BSやWOWOWで放送されたし。

>映画館で観た映画
 #1753で前田敦子主演の『葬式の名人』を観ようと思ってると書いて、実際観たんですが感想を書くのをすっかり忘れてました。というのも期待外れで面白くなかったからでして……。監督の樋口尚文って聞いたことあるなと思ったら本業は映画評論家で、これが監督2作目。それを知って嫌な予感はしたんですが、なんか学生映画とか自主映画のような素人が作ったみたいな映画でした。
 高校時代の友人が突然事故死して遺体安置室に集まったかつての同級生たちが、遺体を母校に連れていこうとしたことから通夜をそこでやることになってしまい、なんやかんやというお話。とにかく登場人物がひっきりなしにしゃべってる台詞劇のような映画で、「間」や「沈黙」で見せてくれるところが全然ありません。舞台の映画化か?と思いきや、脚本家(兼プロデューサー)が演劇脚本のほうを主にやってる人のようで、演劇畑の人が作る映画の典型みたいな脚本。樋口監督は演劇畑の人ではないんで映像は舞台っぽくなくてそこは良かったんですが、映像の構図が妙に前衛的というか無理に変わった構図にしようとしてる感じで、いかにも評論家の頭でっかちな映画に感じられました。なんというかすごく素人くさいんですよね。そのせいか役者たちも精彩がなく、主演の前田敦子がただ1人孤軍奮闘してるんですが、正直言ってそこしか見どころがない映画でした。

>Blu-rayで観た映画
 ゴールデンウィークに公開されたジャッキー・チェンとピアーズ・ブロスナン共演の英米中合作映画『ザ・フォーリナー 復讐者』は結局地元では上映されず、レンタル開始されたBlu-rayでようやく観ることができました。んー、これまたあんまり面白くなかった。ま、なんとなくそんな予感はしてたんだよな。
 ストーリーは、IRA(中国&日本公開版ではUDIという架空の組織に変えられている)のテロで娘を失ったロンドンの中国移民(ジャッキー)が、復讐のために元IRAの北アイルランド副首相(ブロスナン)に接触して犯人を教えるよう要求。知らないと追い返されるが、隠していると考えた主人公はかつてベトナム戦争下の米軍特殊部隊で習得した戦闘術を駆使して副首相の周辺を次々に爆破し、犯人を教えるよう脅迫する。実はIRAといまだにつながりを持っていた副首相は、主人公に追い詰められながらも同時に組織内部の路線対立から過激なテロに走った分子を洗い出し始末しようとする……というもの。原作はイギリスのスティーヴン・レザーの『チャイナマン』という1992年の小説とのこと(新潮文庫より邦訳が出てたらしいが現在は絶版)。ちなみに原作では主人公は中国系ベトナム人(華僑?)という設定らしいんですが、映画ではジャッキーに合わせてかベトナムと国境を接する広西チワン族自治区の中国人になっています。
 まず第1に、ジャッキーは実質的に主役ではありません。最初こそ主役っぽく登場しますが、ブロスナンと接触するあたりからお話がブロスナン中心に展開するようになっていき、ジャッキーは脇役みたくなって実質的にブロスナンが主役みたいになってしまいます。観終わってから原作を読んだ人の感想を探すとどうやら原作からしてそうらしく、『チャイナマン』というタイトルなのにIRA内部の話が中心でチャイナマンは脇役みたいだとか、映画は大枠で原作に忠実だと書かれてました。第2に、原作が書かれた1992年と映画が製作された2017年とでは、25年も経って時代も状況もかなり異なるため、作品と現実のズレが起こっており、ところどころ不自然な話になっています。
 第3に、いくら娘を殺された復讐のためとはいえ主人公が偏執狂的過ぎて行動原理が理解不能。やってることはほとんどテロリストといっしょだし、途中からはなんだか主人公が横から邪魔するおかげで副首相によるテロリストの始末がスムーズに進まないようにさえ見えてきちゃいます。そもそもこの主人公は終始無表情で何を考えてるのかわからず非常に不気味。娘を殺された絶望感を表現するためにそういう芝居になったらしいんですが、むしろアジア人というのはいつも無表情で何考えてるかわからんという欧米人のステレオタイプな人種偏見が表れてるように感じられました(原作のタイトルである「チャイナマン」という言葉も現在では人種蔑視・民族蔑視のニュアンスを含んだ侮蔑的表現とされることが多い)。
 全体的にアクション映画というよりポリティカル・サスペンスに近く、その割には娯楽アクション要素もあってなんだか中途半端な作品。残念ながらいまいちでした。



#1758 
バラージ 2019/10/09 22:39
「名画座」じゃなく「徒然草」でした。

 どうもすいません。



#1757 
バラージ 2019/10/09 21:37
名画座

 更新ご苦労様です。今回追加された映画で僕が観たのは、『ゴジラ キング・オブ・ザ・モンスターズ』(#1749)、『バイス』(歴史板#10879)、『野火』(歴史板#9950)で、いずれも感想は記述済みですが、徒然草を読んでいくつか追記。

『ゴジラ キング・オブ・ザ・モンスターズ』
 チャン・ツィイーの双子設定は僕も気づきませんでした。米国にいたり中国にいたりでずいぶん神出鬼没だなあとは思ったんですが、なるほど双子だったんですね。そう言われてみれば髪型が違っていたような……。ちなみに『キングコング 髑髏島の巨人』にはジン・ティエンが出てるそうで、いずれもハリウッドの中国公開対策もあるのかも。家族愛をやたら前面に押し出すのは90年代の恐竜映画『ロスト・ワールド』(ジュラシックの2作目)もそうでしたが、僕はあんまり好きじゃないなあ。悪役の動機も含めて人間ドラマのほうは意外に陳腐に感じました。地球上の各地に多数の怪獣たちが出現するのは多分『怪獣総進撃』のオマージュなんじゃないかと。
 僕は字幕版で観たんですが、渡辺謙の「さらば、わが友よ」は日本語の台詞でした。なので吹替版でもそのまま使われたんでしょう。謙さんが最期の台詞は日本語でと希望したんじゃなかったかな。次作の『ゴジラvsコング』がシリーズ完結編になるそうです。

『バイス』
 僕は『ブッシュ』(歴史板#10867)のほうも観ましたが、そちらでもそっくりさん大会のごとく出演俳優がみんな本物に似せてましたね。今年は他にも『フロントランナー』(歴史板#10875)、『記者たち 衝撃と畏怖の真実』(歴史板#10886)、『ブラック・クランズマン』(歴史板#10898)と70年代以降を舞台とした米国史映画をやたらたくさん公開してましたがいずれも面白かった。特に『記者たち』(と『ブッシュ』)は本作と同じ題材を別の面から描いていて、本作と合わせて観るとより興味深かったですね。本作より後の時代が舞台の映画としては『シチズンフォー スノーデンの暴露』『スノーデン』(歴史板#10736)があります。
 クリスチャン・ベールの出演映画は、『ヘンリー五世(1989年)』『若草物語(1994年)』『シャフト』『アメリカン・サイコ』『ターミネーター4』と観てますが、彼の出演をはっきり覚えてるのは主演だった『アメリカン・サイコ』だけ(原作のエッセンスをまるで表現できてない駄作でしたが)。名画座収録映画では、僕は観てませんが『エクソダス:神と王』にモーゼ役で出てたとか。

『野火』
 僕の地方では2015年に公開された後、翌2016年以降も毎年8月に1週間上映されています。すごい映画だとは思うけど、もうDVDにもなってるのにまだ今年も映画館まで観に来る人がいたのかなあ? なかなかにハードな映画なんで僕はそう何度も観返すのは……。
 同じアジアでも中国や朝鮮半島に比べて東南アジアへの加害が話題になることが少ないのはいくつか理由があるでしょうが、映画について言えばやはり東南アジア各国の映画産業規模とか日本公開の頻度もあって東南アジア映画が日本ではあまり公開されないのも大きいんでしょうね。

 『キングダム』は観てないんですが、日本の中国史マンガなら『蒼天航路』も映画化してくれんかな。



#1756 
徹夜城(支配人) 2019/10/04 22:33
「徒然草」更新しました。

更新、というより追加、というべきですね。実は5月更新後にいくつか書き溜めていたものと、ここ数日で書いたものとを合わせて8本を追加しました。

今さらですが、改めて時代劇・歴史物のみが突出した本数になっちゃっててアンバランスですねぇ。アクションとか推理サスペンス、SFも本数としてはそこそこ見てるんですが最近見て書く機会がなかったわけで。こういうアンバランスも少しは埋めていきたいです・
 あと、もしかするとジャンルを新規に一つか二つ作るかもしれません。



#1755 
徹夜城(支配人) 2019/09/29 23:24
たまには書き込まないと(汗)

 どうも、管理人自ら書き込みますが、かなり久々です。ひとつには自分の映画感想は「徒然草」の方に書いちゃうからこっちでは…という理由もありまして。軽い話題などなるべく書き込むようにしましょうか。

 しばらく「徒然草」更新が止まってますが、この間にも映画館や録画などでいろいろと見てはいます。夏休み映画は「ゴジラ・キング・オブ・モンスターズ」くらいしか見てないんですけど。
 いちばん最近映画館に見に行ったのは「記憶にございません!」。これ、予告編がえらく面白そうに見えたんですよねぇ。結果としてはそれなりに面白いのですが予告編のインパクトほどじゃなかったかな、と。詳しくはそのうち徒然草で。

 BSで放映されて録画で見たのは東映の昔の時代劇映画「大殺陣」。東映時代劇がそれまでの「明るく楽しい」ではやってられなくなって、リアルで殺伐とした大アクションをやるようになった時期の一本。「十三人の刺客」の高評価を受けて作られた、同じ工藤栄一監督作品ですが(脚本も同じ)、どうしても「二番煎じ」感が否めず、より殺伐とした話になってしまって、これじゃあ客も…と思ってしまった。里見浩太朗の若かりし日の一作でもあります。
 この映画は実在した人物の暗殺を扱ってますが、のちに「江戸城大乱」でも似たような話をやってしまうことになります(あっちはもっと無茶やってますが)。



#1754 
バラージ 2019/09/13 14:47
影がゆく

 チャン・イーモウ監督の『SHADOW 影武者』(原題:影)を観ました。いや〜、面白かった。同じイーモウの『HERO』『LOVERS』『グレートウォール』のようなアクション映画ではなく、『紅いコーリャン』『紅夢』『上海ルージュ』などの初期作品、もしくは『王妃の紋章』の前半部分に近い、きわめてアートなドラマ映画でした。
 物語は三国志の荊州攻防戦をモデルとしつつ全くの架空世界の話で、境州をめぐる沛国と炎国の争いの中、沛国の都督とその影武者(ダン・チャオの二役)、都督の妻(スン・リー)、沛王(チェン・カイ)、その妹(グァン・シャオトン)、重臣(ワン・ジンチュン)、将軍(ワン・チエンユエン)、境州を預かる炎国の将軍(フー・ジュン)、その息子(ウー・レイ)、彼らそれぞれの秘めた心と思いと陰謀が複雑に絡み合う重層的な心理劇。シェークスピア悲劇のような話で、特に前半は凄まじい緊張感の中、静謐に物語が進んでいくし、水墨画を意識した映像は限りなくモノクロに近く、文字通り美しい絵画を観ているかのようです。終盤までアクションシーンはほぼなく、クライマックスにしてもアクションが映画の肝ではありません。そのアクションも爽快痛快という感じではなく、刺され斬られ殺される“痛さ”を感じさせるリアリティがあります。
 男たちはどいつもこいつも権力とか戦争ばっかり考えてる中で、女性2人はそれとは異なる動機で動いているのも印象深かった。チャン・イーモウはいつものごとく女優2人を非常に美しく撮ってますが、特に都督の妻役でヒロインのスン・リーはこれまでも映画『SPIRIT』『画皮 あやかしの恋』『三国志英傑伝 関羽』で観て美人だなぁと思ってたけど、今回はさらに美しさが際立ってますね。女性(女優)を魅力的に描くところはホウ・シャオシェンやウォン・カーウァイとも共通するもので、そういうところもイーモウは僕好みの監督です。しかしまあ人口が日本の10倍あるとはいえ中国には美人がごろごろいるもんですな。
 それにしてもエンタメ映画と見せかけて、これだけ莫大な金をかけたアート映画を作るなどという人を食ったような真似は、資質的にも立場的にもチャン・イーモウにしかできないでしょう。『グレートウォール』の時も思ったんですが、興行のことなんか考えず、あらゆる条件を利用して自分の作りたいものを自分の作りたいように作る。そして結果的にそれが評価される、というのがなんともすごいし偉い。
 というわけで僕はすごく面白かったんですが、他人におすすめするとなるとどうかなあ。人によっては、特にアクション映画を期待してた人は退屈と感じるかも。僕は今年ここまででNo.1なんですけどね。すげえ良かった。



#1753 
バラージ 2019/09/04 21:12
映画に愛される女優

 『旅のおわり世界のはじまり』という映画を観ました。
 黒沢清監督、前田敦子主演で、全編ウズベキスタンで撮影した日本・ウズベキスタン合作映画。日本とウズベキスタンの国交樹立25周年と、シベリア抑留された日本人が建設に関わったというナヴォイ劇場の完成70周年を記念してオファーされた映画だそうです。
 バラエティー旅番組のロケでウズベキスタンに来た撮影スタッフ一行の女性レポーターがたどる魂の遍歴を描く……といった感じの映画で、ほぼ全編前田敦子が出ずっぱり。当て書きをしない黒沢監督が主人公を前田で当て書きしたとのことで、監督の前田敦子愛が全編に溢れており、加瀬亮・染谷将太・柄本時生とウズベキスタンの国民的俳優アディズ・ラジャポフも完全に脇役に徹しています。そしてそれが見事にハマっていて、とにかく前田敦子が素晴らしい。ストーリー自体は希薄で淡々と映画が進んでいくんですが、とにかく前田敦子が映っているだけで画が持つし、中盤とラストの彼女が「愛の讃歌」を朗々と歌い上げるシーンは独特の艶のある歌声に聞き入ってしまう。
 前田敦子は映画監督からの評価が高く、犬童一心、山下敦弘、中田秀夫、黒沢清、廣木隆一、堤幸彦、鶴橋康夫らがいずれも絶賛してるんですが、今になって思えば市川準監督の最後の長編『あしたの私のつくり方』が彼女の映画デビューとなったことさえもなにやら運命的に思えるほどです。前田敦子の良さはテレビドラマでは今一つ発揮できないのではないか? このあたりは池脇千鶴にも通じるものがあるような気がしますね。まさに映画に愛される女優なんでしょう。
 今年はもう1本彼女の主演映画『葬式の名人』が控えているんで、こちらも観ようと思ってます。



#1752 
バラージ 2019/08/08 00:07
ウルトラ映画

 2つ前の書き込みで「『ゴジラ』はもう米国に任せて、日本は『ウルトラマン』や『仮面ライダー』を一流の役者とスタッフで本格的な映画にしてほしい」と書いたとたんに、庵野秀明と樋口真嗣の『シン・ゴジラ』コンビで映画『シン・ウルトラマン』の製作発表というタイミングにちょっとびっくり。とはいえ『シン・ゴジラ』が全然ダメだった僕としては、このコンビのウルトラ映画にかなり不安。まあ観に行くとは思いますけど……。

 てなわけで僕がこれまで観たウルトラ映画の感想を書いていきますかね。といっても昭和のウルトラ映画ってほとんどがテレビシリーズの再編集。僕は子供の頃に再放送されてた『ウルトラマン』も結構観てたし、一部ビデオなどで観た回もあるんで、実質テレビドラマ各回の感想となります。


『長篇怪獣映画 ウルトラマン』(1967年)
 第1話「ウルトラ作戦第一号」(登場怪獣 ベムラー)、第8話「怪獣無法地帯」(レッドキング、チャンドラー、マグラ、ピグモン、スフラン)、第26話&第27話「怪獣殿下 前後篇」(ゴモラ)の再編集。う〜ん、これは観たような観てないような……。テレビ各回はもちろん全部観てるんですが、それだけにこの映画をテレビやビデオで観たかどうかの記憶が曖昧です。ちなみに公開当時はカラーテレビの普及率が低く、本編は白黒テレビで観てた子供も多かったため、カラーで観れるこの映画は人気だったとのこと。
 「ウルトラ作戦第一号」は第1話なので位置付け的には当然重要なんですが、単体の作品としては実はあまり面白くありません。「怪獣無法地帯」は人気怪獣のレッドキングやピグモンを含めた複数の怪獣が登場する娯楽編エピソードで人気のある回です。「怪獣殿下」は初の前後篇構成で、3年後に開催されることが決定していた大阪万博が舞台。これまた人気怪獣のゴモラが登場する人気エピソード。監督は全て円谷一で、脚本はそれぞれ関沢新一と金城哲夫、金城と上原正三、金城と若槻文三。金城は『ウルトラマン』のメインシナリオライターです。

『実相寺昭雄監督作品 ウルトラマン』(1979年)
 第15話「恐怖の宇宙線」(ガヴァドン)、第22話「地上破壊工作」(テレスドン、地底人)、第23話「故郷は地球」(ジャミラ)、第34話「空の贈り物」(スカイドン)、第35話「怪獣墓場」(シーボーズ)の再編集。タイトルにある通り実相寺昭雄が監督したエピソード(脚本は全て佐々木守)のみを集めた、第三次ウルトラブームに乗って製作された映画の1本で、こちらは観たのは確かなんですが、観たのが映画館だったかテレビ放送だったか、これまた記憶が曖昧です。実相寺の監督回は変化球的な異色作が多く、前衛的な画作りやウルトラマンが全然活躍しないエピソードがあるのが特徴で、子供心にも強い印象を受けました。
 「故郷は地球」と「怪獣墓場」は哀感漂う特に評価の高い回で、一方「恐怖の宇宙線」や「空の贈り物」はコミカル回。後者ではカレーライスを食べていたハヤタ隊員がついついカレーのスプーンで……という有名な名(迷?)シーンがあります。「地上破壊工作」は地底人がサングラスを外すと……のシーンが怖かった記憶あり。

『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』(1979年)
 同じく第三次ウルトラブームに乗って、タイのチャイヨープロとの合作で製作された映画ですが、その後円谷プロとチャイヨーの間に契約のトラブルが発生して裁判沙汰になり、そのため現在では事実上の封印作品になっています。過去にビデオ化はされましたがDVD化はされていません。僕は劇場公開時に観ました。
 内容的には全編タイを舞台にタイ人のみが登場する完全なタイ映画で、主人公はハヌマーンというタイ・オリジナルのヒーロー。ウルトラ6兄弟は脇役です。日本人の感覚からするとハヌマーンがウルトラ兄弟と違いすぎるデザインで格好悪く、またやたらと残酷なシーンが多かったりするタイ独特の感覚もどうにも受け入れにくい(子供にこんなん見せていいのか?という残酷さだったりする)。登場怪獣(ゴモラ、『ウルトラマンタロウ』のアストロモンス、タイラント、ドロボン、『ミラーマン』のダストパン)の設定も本編とはかなり違ってます(そもそもダストパンはウルトラシリーズの怪獣じゃないし)。まあ好事家以外は観る必要ないんじゃないかなぁ。

『ウルトラマン 怪獣大決戦』(1979年)
 第2話「侵略者を撃て」(バルタン星人)、第3話「科特隊出撃せよ 」(ネロンガ)、第8話「怪獣無法地帯」、第16話「科特隊宇宙へ」(二代目バルタン星人)、第25話「怪彗星ツイフォン」(二代目レッドキング、ギガス、ドラコ)の再編集。これも同じく第三次ウルトラブームに乗って製作された映画で、前記「怪獣無法地帯」以外の監督は飯島敏宏、脚本は順番に千束北男(飯島のペンネーム)、山田正弘、千束、若槻文三。これも映画館で観たんだったか、それともテレビかビデオで観たんだったか、はっきり思い出せません。
 映画の冒頭でウルトラ兄弟1人1人を名場面を交えて紹介するシーンがあり、その中でシリーズ唯一のテレビアニメ『ザ☆ウルトラマン』のウルトラマンジョーニアスと怪獣の戦闘シーンが実写で新規に製作されてて、おお、と思った記憶あり。バルタン星人やレッドキングなどの人気怪獣・宇宙人が登場するエピソードを集めた作品で、特にバルタン星人初登場の「侵略者を撃て」はSF作品として非常によくできた回です。バルタン再登場の「科特隊宇宙へ」、レッドキング再登場の怪獣バトルロイヤル「怪彗星ツイフォン」も娯楽編として良質。

『甦れ!ウルトラマン』(1996年)
 最終回第39話「さらばウルトラマン」(ゼットン、ゼットン星人。監督は円谷一、脚本は金城哲夫)の後日談で、テレビシリーズの映像を再編集し、新録の台詞を被せて完全新規のオリジナルストーリーにしてしまった短編映画。僕はビデオで観ました。DVD化はされていません。
 台詞と編集を変えただけで、こんなに話が変わるんだなあ、となかなか面白く観たんですが、それはあくまで本編あってのもの。やはりテレビ本編を先に観ておくべきでしょうね。それにしてもウルトラマンを倒した最後の怪獣ゼットンのデザインは秀逸。


 と、ここまでウルトラ映画の感想を書いてきましたが、ご覧の通りほとんどがテレビの再編集ですし、ウルトラマンはやはりテレビこそが本編。というわけで映画には収録されてない個人的お気に入りエピソードをいくつか紹介させていただきます。


第7話「バラージの青い石 」(アントラー)
 監督は野長瀬三摩地、脚本は南川竜(野長瀬のペンネーム)と金城哲夫。僕のHNの由来となった回ですがあくまで語感が気に入ったからであって、面白い回の1つではあるもののこのエピソードに特に思い入れがあるというわけではありません。バラージというのは舞台となっている中東の架空の街の名前で、東宝特撮映画にもよくある異国情緒溢れるエピソードです。怪獣がウルトラマンに倒されない(ウルトラマン以外に倒される)話が早くも登場したことや、いろいろと謎を残したまま物語が終わるのも印象的で、『ウルトラマン』ではこういう全ての謎が明らかにされないまま終わるというエピソードが結構あります。

第17話「無限へのパスポート」(ブルトン)
 監督は飯島敏宏、脚本は藤川桂介。これはコミカル回。ブルトンは隕石が放射線を浴びて生まれたとかいう設定で、果たして怪獣と言っていいのか?というシュールレアリスティックなデザインが秀逸です。自ら動くことはなく、四次元空間を作り出して周囲の空間をねじ曲げ、科特隊を大混乱に陥れます。この科特隊基地内の四次元空間大騒動が、様々なアイデアの特撮でコミカルに描かれるのがこの回の見どころで、ブルトンはウルトラマンをも四次元空間で翻弄します。

第18話「遊星から来た兄弟」(ザラブ星人)
 監督は野長瀬三摩地、脚本は南川竜(野長瀬)と金城哲夫。バルタン以来の宇宙人登場回で、怪獣と違って宇宙人は明確な目的を持って策略で攻めてきます。『ウルトラマン』に登場する宇宙人はいずれも直接的には地球語を話せないという設定(バルタン星人は一時的に地球人と同化して地球語を話していた)が面白く、ザラブ星人は自分の言葉を地球語に翻訳する小型機械を短時間で作り出しています。地球に来たのは破壊工作員という下っ端ですが、ハヤタ=ウルトラマンに「なぜそんなことを!」と聞かれても、「わからない。それが私の仕事なのだ」と答えるのが印象的。

第28話「人間標本5・6」(ダダ)
 監督は野長瀬三摩地、脚本は山田正弘。これも宇宙人回。「星人」と付いてないし異名も「○○宇宙人」ではなく「三面怪人」のダダですが、設定では宇宙人とのこと。サブタイトルにもある通りダダの目的は地球人の標本を6体集めることですが、その理由は最後まで不明のままです。またも地球に来たのは下っ端で、モニター付きの通信装置で連絡を取ってる母星の上司にやたらときつく命令されたり怒られたりするのがなんだかちょっとかわいそう(笑)。

第30話「まぼろしの雪山 」(ウー)
 監督は樋口祐三、脚本は金城哲夫。差別と迫害(もしくはいじめ)という重いテーマを見事に怪獣ドラマの中に落とし込んだ傑作回です。謂われのない迫害を受ける少女ユキ(雪ん子)と彼女を守るウーの姿が涙を誘うシリーズ屈指の悲しい回でありながら、最後はそれを雪山のファンタジーかもしれないとするオブラートに包んだ終わり方にしているのが印象的。でもやっぱりあれはイデ隊員の言い訳だよな。どことなく日本民話風味の物語とも言えるかもしれません。

第33話「禁じられた言葉」(メフィラス星人)
 監督は鈴木俊継、脚本は金城哲夫。「暴力は嫌いだ」「地球人の心に挑戦しに来た」と言って、純粋無垢な少年に様々な誘惑や恫喝で「あなたに地球をあげます」と言わせようとするメフィラス星人のキャラクター造形とストーリー展開が秀逸です。ウルトラマンと互角の力を持ちながら、力vs力ではなく智略vs心の戦いを仕掛けるメフィラス星人は、物語の最後まで大物感たっぷりでとても印象に残りました。巨大フジ隊員などSF風味も◎。沖縄出身の金城は、メッセージ性を込めながら娯楽作としてのツボもちゃんと押さえているところが素晴らしい。個人的には『ウルトラマン』の最高傑作回ですね。



#1751 
バラージ 2019/07/25 23:23
極上の社会派ポリティカル・サスペンス

 『新聞記者』という日本映画を観ました。官邸記者会見で菅官房長官に舌鋒鋭く迫って一躍有名となった東京新聞の望月衣塑子記者の著書(ノンフィクション)を原案としたフィクションの社会派サスペンス映画です。
 いやぁ面白かった。今年ここまででNo.1ですね。首相のお友達の医科大学創設計画に始まって、官邸からの圧力で辞任した元文科省トップのスキャンダル捏造や、政権の提灯持ちテレビマンによるレイプ疑惑の隠蔽、上からの命令と良心の板挟みになった官僚の自殺など、現実の事件を巧みに織り込みながら、衝撃的な真相へとなだれ込んでいくストーリーが丁寧な演出で描かれていき、ぐいぐい引き込まれてしまいました。
 その渦中で事件の真相にたどり着こうと奔走する日韓ハーフで米国育ちの帰国子女の新聞記者を演じる韓国女優シム・ウンギョンと、外務省から出向し内閣情報調査室(内調)で政権維持のための情報操作やマスコミ工作に従事させられ、尊敬する上司の自殺に直面して守るべき家庭との狭間で苦悩するエリート官僚を演じる松坂桃李が素晴らしい。その脇を固める新聞社デスクの北村有起哉、同僚の岡本天音、妊娠中の官僚の妻の本田翼、自殺する先輩官僚の高橋和也、その妻の西田尚美らもいずれも好演で、よくある誇張されたり定型化された記者や官僚像ではない等身大の人物たちを、オーバーではない抑えた演技で演じているのも良かった。唯一、悪ボス的役どころの内調室長役の田中哲司がやや戯画的な怪演でしたが、それも十分に許容範囲。
 監督はその数日前に観た下記の『青の帰り道』の監督で若干32歳の藤井道人。『青の〜』でも、民主党政権の誕生や東日本大震災、原発再稼働反対運動などが主人公たちの人生の歩みの背景としてちょっとだけ挿入されたりしてたんで、もともとそういう意識の高い人かと思いきや、政治や時事問題にくわしくはなかったとのこと。
 ともかく社会派映画でありながら娯楽映画としても非常にすぐれたポリティカル・サスペンスにして極上の人間ドラマになっています。とても面白かった。ちょっと前に友人と、なんで日本では米国みたいな社会派映画がなかなか作られないんだろうと話したりしてたんですが、本作はテレビなどで全く宣伝できないにも関わらず口コミでかなりヒットしてるらしく、これをきっかけに社会派映画やポリティカル映画がもっと作られるようになれば……と思わずにいられません。


>その他に映画館で観て面白かった映画
『青の帰り道』
 上記で触れた藤井道人監督による、やや辛口の青春映画。真野恵里菜が初主演した青春群像劇ですが、メインキャストの1人である高畑裕太の事件で一時撮影中止となり、藤井監督が執念で1年後に全面撮り直しをして完成させた映画です。
 2008年に群馬の高校を卒業した仲の良い同級生7人組。東京に出ていく者、地元に残る者、それぞれの夢や生活や挫折や失望の数年間が描かれた、かなり重めの青春映画。話の展開にはややありがちというか、この手の映画でよく見るような部分もあるものの、丁寧な作劇と若手俳優たちの熱演に引き込まれてほとんど気になりません。メインキャストの7人、真野、清水くるみ、横浜流星、森永悠希、戸塚純貴、秋月三佳、冨田佳輔がいずれも素晴らしく、この映画にかける彼らの熱い思いが感じられるとともに、1年経ったことで芝居が成熟し一段と深いものになったんじゃないかと思えました。脇を固める工藤夕貴や平田満も好演。いい映画でした。

>DVDで観て面白かった映画
『女は二度決断する』
 去年映画館で観ようと思いながら結局観逃してしまったドイツの社会派サスペンスドラマ映画。ネオナチの爆弾テロでトルコ移民の夫と幼い息子を失ったハンブルクのドイツ人女性が主人公。警察は当初トルコ移民同士の犯罪抗争を疑い、夫や主人公にも疑いの目を向けるが、やがてネオナチによる移民を狙った爆弾テロと判明。裁判が開かれるが、夫の過去の犯罪歴、主人公の目撃証言の信用性への疑問、アリバイを証言するギリシャ人(ギリシャの極右であることが裁判中に明らかになる)の存在などから、推定無罪の原則で無罪が言い渡されてしまう。絶望した主人公が最終的に取った行動は?
 監督はトルコ系ドイツ人のファティ・アキン。この人の映画は『ソウル・キッチン』『消えた声が、その名を呼ぶ』とオムニバス映画『ニューヨーク、アイラブユー』の一編を観ましたが、硬軟自在でどれも面白い。本作は00年代に実際に起きたネオナチによる連続テロ事件をヒントにして作られたとのことで、初動捜査の見込みの誤りから10年以上も逮捕が遅れたドイツ警察戦後最大の失態だそうです。主演は国際的に活躍する女優のダイアン・クルーガー。愛する人を失い、警察の捜査にも裁判にも裏切られ、全てに絶望した女性の哀しみを見事に表現しています。排外主義と憎しみの連鎖というヨーロッパばかりか今や世界各地に広がる問題を扱いつつ、それを1人の女性の深い苦悩として描いた、重い、そして優れた映画でした。


>『太平記』の時代
 歴史板のほうでNHK大河ドラマ『太平記』出演者は当時黎明期〜全盛期だったトレンディドラマの出演者と大いにかぶるという話をしましたが、じゃあ映画のほうはどうだろう?ということで、僕の青春時代でもあったあの頃の、『太平記』出演者が出てた映画の話。

 まず主人公の足利尊氏役の真田広之。個人的にはなんといっても市川準監督、牧瀬里穂主演の『つぐみ』(90年)なんですが、アクション俳優から演技派に脱皮したのは『麻雀放浪記』(84年)の主演あたりからでしょうか。以後、『犬死にせしもの』(86年)の主演などを経て、『快盗ルビイ』(88年)では佐々木道誉役の陣内孝則と、『どっちにするの。』(89年)では藤夜叉役の宮沢りえと共演しています。
 陣内とましらの石役の柳葉敏郎は歴史板にも書いた通りトレンディドラマで共演してプライベートでも仲が良く、ずっと後にはバラエティー番組で2人で司会したりもしてますが、この頃は2人そろってニューウェーブヤクザ映画と呼ばれた作品群によく主演してました。陣内は『ちょうちん』(87年)、『疵』『極道(やくざ)渡世の素敵な面々』(88年)、柳葉は『螢』(89年)。その後、『さらば愛しのやくざ』(90年)、『赤と黒の熱情』(92年)で共演もしています。それ以外の映画では陣内は『ハリマオ』(89年)、柳葉は『おもひでぽろぽろ』(91年)の声優で主演。
 赤橋登子役の沢口靖子は映画ではないんですが、なんといってもスペシャルドラマ『さよなら李香蘭』(89年)。柳葉、北条高時役の片岡鶴太郎、赤橋守時役の勝野洋も共演です。映画だと沢口は足利直義役の高嶋政伸と『ゴジラvsビオランテ』(89年)で、北畠顕家役の後藤久美子と『ひめゆりの塔』(95年)で共演。鶴太郎は『異人たちとの夏』(88年)が出世作となり、ゴクミは『男はつらいよ』シリーズで4作連続マドンナ役(89〜92年)を演じてた時代ですね。
 千種忠顕役の本木雅弘はこの頃が演技派スター俳優へと駆け上がっていく時代で、『226』『ラッフルズホテル』『ファンシイダンス』(89年)、『遊びの時間は終らない』(91年)、『シコふんじゃった。』『魚からダイオキシン!!』(92年)と映画出演連発でした。楠木正季役の赤井英和は『どついたるねん』(89年)が、足利直冬役の筒井道隆は『バタアシ金魚』(90年)がデビュー作。花夜叉役の樋口可南子、陣内、鶴太郎は『座頭市』(89年)で共演しています。

 こうして列挙してみると、あの頃の記憶がよみがえってきてなんとも懐かしい。まあ列挙した映画は実は観てないもののほうが多いんだけど(笑)。



#1750 
つね 2019/07/01 00:17
質問

「栄耀映画徒然草」の「アニメ」の部分を鑑賞していたらどうも初見だったらしく、「ラピュタ」のところで「以前アップしていたランキング」という表現にぶつかりました。まあ表現通り「お気に入り度」みたいなものだと思いますが、気づきませんでした。いつごろのことでしょう?
「ラピュタ」「ナウシカ」の解説をアップしていたのが20年前なので、もっと昔なんでしょうね。「紅の豚」みたいに今、見るとまた変わるのでは? 「Ver.2」みたいな感じで(上書きではなく)「追加書き」してみてはいかがでしょう。



#1749 
バラージ 2019/06/11 22:19
怪獣王ゴジラ

 『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』を観ました。前作は観てないんですが、ラドン、モスラ、キングギドラにチャン・ツィイーも出てると聞いて観たくなり、日本のゴジラだって順番通りに観てないんだし、まあいいかと思いまして。正確には『ゴジラ(2014年ハリウッド版)』『キングコング 髑髏島の巨神』に続く怪獣シリーズ第3作とのこと(ただし『キングコング』は『ゴジラ』より前の時代が舞台らしい)。
 いやぁ面白かったです。人間側のドラマが陳腐(悪人たちの動機や、家族愛をやたらと前面に押し出した物語など)だとか、自然がどうとか地球がどうとかいう設定もこれまたよくあるネタだとか、核兵器が全面的には否定されてないとか、小美人が出てこないとか、オキシジェン・デストロイヤーが役立たずとか(笑)、ちょこちょこ不満はあるものの、怪獣バトルのものすごさで全て吹っ飛んでしまいました。特にキングギドラ、ラドン、モスラの飛行シーンや空中戦はCGでなければ表現できない映像でしょうし、ゴジラやキングギドラの足元を人間たちがちょこまかするシーンなんかもCGじゃないと表現できないシーンで、凄まじいド迫力でしたね。
 登場怪獣は『三大怪獣 地球最大の決戦』と同じですが、内容的にはそれほどの共通点はなく、その一方で『怪獣総進撃』や『海底軍艦』、観てないけど『ゴジラvsデストロイア』なんかの風味も散りばめられていて、監督は相当な怪獣映画オタクなんでしょうね。あと、ほんのちょっとだけ『エイリアン2』っぽさもありました。
 次作は来年公開のシリーズ完結編『ゴジラvsコング』だそうです。監督は1作ごとに変わってるらしいんですが、これも観てみようかな。

 あと、これも観てて思ったんですが、『ゴジラ』はもう米国に任せて、日本は『ウルトラマン』や『仮面ライダー』を一流の役者とスタッフで本格的な映画にしてほしい。これも30年以上も前から言われてることなんですけどねえ。


>これから公開される映画
 チャン・イーモウ監督の最新作『SHADOW 影武者』(原題:影)がついに9月6日に公開決定(まあ地方ではどうなるかわかりませんが)。やはり三国志の荊州攻防戦はあくまでモデル程度で、架空世界の架空人物による全く架空の物語を描いた武侠映画のようです。まあチャン・イーモウは歴史をそのまま題材にして映画を作るタイプの人じゃないですしね。とにかく非常に楽しみ。



#1748 
バラージ 2019/06/05 21:28
懐かしのSF映画

 5月3日に全国公開されたジャッキー・チェン主演映画『ザ・フォーリナー 復讐者』が、またも地元では上映予定さえ出ておらず、悶々とした日々を過ごしております……。

 決してSFファンではなく、今ではSF映画は年に1本観るか観ないかになってしまった僕ですが、広く様々なジャンルの映画を観るようになり始めた80年代末〜90年代前半には比較的SF映画も観てました。そもそも80年代に家がビデオデッキを買った時に僕が最初に録画した映画がSFパニック映画の『メテオ』だったりします(改めて調べるとビデオ化のみでDVD化されてないらしい)。そんなわけで80年代末〜90年代前半に観た懐かしのSF映画の感想を。いずれもビデオかテレビで観た映画です。

『ヒドゥン』
 平凡な男が突如凶悪犯罪を繰り返す事件が発生し、ロサンゼルス市警の刑事の銃撃で犯人は病院へ。しかし彼が死ぬと同時に今度は別の重体患者が突如起き上がり、同様の凶悪犯罪を引き起こす……。人間に寄生して凶悪犯罪を繰り返す宇宙人を、刑事と謎のFBI捜査官が追うSFアクション映画です。低予算ながらアイデア賞ものの快作で、アボリアッツ映画祭でグランプリを獲得したとのこと。後にドラマ『ツイン・ピークス』でブレイクするカイル・マクラクランが謎のFBI捜査官を演じています。

『ゼイリブ』
 すでに大量のエイリアンが人類の中に潜入し、支配者階級の人間に姿を変えてサブリミナルな洗脳によって人類を支配しようとしており、偶然からエイリアンの正体が見えるサングラスを手に入れた男が彼らと戦うというジョン・カーペンター監督のSFアクション映画。消費資本主義社会への批判的メッセージが込められてるそうで、これまた低予算ながらアイデア賞ものの1本。主演の人は本業がプロレスラーとのことで、アクションに肉弾戦が多いのはちょっといまいちですが(笑)。
 しかしこうして見ると『ヒドゥン』にしろ『ゼイリブ』にしろ、初期ウルトラシリーズ(『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセブン』)にありそうな話だよなあ。

『アビス』
 深海に存在する知的生命体との接触と交流を描いたジェームズ・キャメロン監督のSF映画。『ターミネーター』『エイリアン2』に続くキャメロン監督の大作SF映画で、宇宙ではなく深海を舞台とし、平和的で友好的な知的生命体が登場するというのが新鮮でした。生命体によって自由に操り形作られる、黎明期のCGで表現された“水”の描写が素晴らしく、その技術が『ターミネーター2』の液体ターミネーターへと進化していきます。後に3時間近い長さの完全版もビデオ発売されましたが、そっちは未見。

『遊星よりの物体X』『遊星からの物体X』
 1938年のジョン・W・キャンベルの短編小説『影が行く』(未読)の映画化。最初の映画化である前者は1951年の、2度目の映画化である後者は1982年の作品で、SFサスペンスもしくはSFホラーといった感じ。太古に南極(1作目では北極)に落下した宇宙船と氷漬けになった謎の生物が基地隊員により発見されるが、生物は他の生物に寄生同化する能力を持つ怪物だった……というストーリー。
 先に古い「より」のほうを90年代初め頃に観ましたが、SFというよりサスペンス映画に近く、正直言っていまいち面白くなかった記憶があります。あまり原作に忠実ではないらしく、いかにも昔のB級映画という感じでした。高く評価された「から」のほうは90年代半ば〜後半くらいに観たかなぁ。こちらのほうが原作に近いらしく、SFXの進歩もあって面白い映画に仕上がってましたが、グロ描写がややきつめなので好き嫌いが分かれそう。

『ボディ・スナッチャー 恐怖の街』『SF/ボディ・スナッチャー』
 ジャック・フィニーの1955年のSF小説『盗まれた街』(原題『The Body Snatchers』)の映画化で、最初の『恐怖の街』は1956年、2度目の『SF〜』は1978年の作品。1993年(『ボディ・スナッチャーズ』)、2007年(『インベーション』)にも映画化されてますがそれらは未見。主人公に街の人々が自分の周囲の人間がどこか別人のようになってしまったと訴えることが続き、やがて主人公は巨大な豆のサヤのようなものの中で人々そっくりの人間が育っているのを発見。それは宇宙からの侵略者によるもので、サヤの中の人間が人々に取って代わっていた……というストーリー。
 こちらは2度目の映画化の『SF〜』のほうを先に観ました。SFであると同時に心理サスペンスもしくは心理ホラーといった雰囲気の映画で、真綿で首を締めるように徐々に絶望的な状況に追い込まれていく主人公たちが印象に残っています。最初の『恐怖の街』は一昨年になってようやく観たんですが(#1670)、日本未公開で『SF〜』のヒットを受けてビデオスルーされたらしく、『SF〜』を観たのと同じ頃にレンタル店で見かけてたものの、いつか観ようと思ってるうちに一昨年になってしまいました。僕はこっちのほうが面白かったです。ドン・シーゲル監督の演出がテンポよく絶妙で、SF映画の傑作の1つと言っていいでしょう。特撮をほとんど使ってないのに、ちゃんとSF映画として成立しているのがすごい。
 そして、やはり『物体X』も『ボディ・スナッチャー』も初期ウルトラシリーズに似てる。こっちはウルトラシリーズのほうが影響を受けたんでしょうけど、そういう意味ではやっぱり初期ウルトラシリーズはSFなんだよな。


>最近観た映画
『体操しようよ』
 38年無遅刻無欠勤で定年を迎えたシングルファーザーの父親に、同居してる30歳の娘がもう家事はしないと宣言。これからは自立してと言い渡す。家事をしなれぬ父親は失敗ばかり。やがてはグータラし始める。見かねたかつての上司が朝のラジオ体操の会に誘い、その会のマドンナに惹かれた父親は毎回参加するようになるが、そこから父親は様々な人と出会い、地域に馴染んでいきつつも、ささやかな事件を引き起こしたり巻き込まれたりしていく……という日本映画。いやぁ、面白かった。全体に流れるほんわかした空気が心地良い良作でした。冴えない定年おじさんを演じる草刈正雄が良い。若い頃から顔立ちはすごいハンサムなのに、とぼけた役や悪役なんかもやる芸達者ですね。マドンナ役の和久井映見やラジオ体操会会長のきたろうも好演。そして娘役の木村文乃がとても良かった。終盤の展開が感動的で、少し寂しいラストも含めて良い映画でした。



#1747 
バラージ 2019/05/12 23:37
徒然草

 更新ご苦労様です。今回追加された映画では、『レオン』『2001年宇宙の旅』『レッズ』『ルパン三世 ルパンVS複製人間(クローン)』の4本を観ました。

 『ルパンVS複製人間』は中高生の頃にテレビ放送で観ました。『カリオストロの城』とどっちを先に観たかは覚えてませんが、テレビ第2シリーズはすでに観てましたね。その後、テレビでもう1回ぐらい観たかもしれませんがビデオやDVDでは観ていません。もう細かいところは覚えてないんですが、最初に観た時は、映画自体は面白いことは面白いんだけど、悪役マモーのしわくちゃ顔が気持ち悪く、また全体にもちょっと怪奇色が強くて、そのあたりが理由で全面的には受け付けにくかったような記憶があります。多分、この作品の大人向けの方向性が当時の僕には合わなかったんでしょう。面白いことは面白かったんですけどね。
 マモーの声って西村晃だったんだ。西村さんというとなんといっても2代目水戸黄門の印象が強く、またそれ以前にも歴史板にも書いた『猿飛佐助』で徳川家康役もやってたんで(すっかり忘れてたけど・笑)、僕は大物というイメージしかありませんでした。なので昔の映画で小悪党役なんかやってるのを見ると逆にびっくりしちゃいますね。また、マモーといえば、『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば』のコントで、ウッチャンとタレントのちはるがやってたパロディキャラ・マモーとミモーも懐かしい。あのキャラ、当時馬鹿ウケにウケたんだよなあ。個人的にはこっちのほうが記憶に強くあって印象深いくらいでして(笑)。日本映画専門学校出身のウッチャンナンチャンは無類の映画好きで、いろんな映画のパロディをやってましたね。
 話を戻すと、もともと僕はルパン三世の熱烈ファンというわけではなく、テレビアニメも観たのは第2シリーズぐらいで、しかも全話欠かさずというわけではありませんでした。原作マンガや第1シリーズはちらっと観た程度で、第3シリーズも第1話をやはりちらっと観ただけ。映画も『ルパンVS複製人間』と『カリオストロ』以外は『ハリマオの黄金伝説』をテレビ放送時にこれまたちらっと観たぐらいです。

 『レオン』は劇場公開時に観ました。完全版は未見。リュック・ベッソン監督の映画はビデオで観た『グレート・ブルー』が最初で、以後やはりビデオで『ニキータ』を観た後に、映画館で本作を観たと思います。『グラン・ブルー(グレート・ブルー完全版)』もビデオで観たんですが、『レオン』とどっちが先だったかは覚えてません。その後、『フィフス・エレメント』をやはり劇場で観たのがベッソン監督作を観た最後。
 ベッソンの映画って面白いことは面白いんだけど独特のケレン味があって、特に『フィフス・エレメント』はそれが強く、そこが今一つ僕には合わなかったようです。逆にそのあたりにハマった人も大勢いたわけで、そういう人たちによって90年代のベッソン・ブームが起こったんでしょう。『レオン』も確かに面白かったんだけど、1回観たら十分かな、という感じで何度も観たくなる感じではなかった。なので完全版も観てないんです。
 個人的に1番面白かったのは、やはり最初に観た『グレート・ブルー』。完全版の『グラン・ブルー』はちょっと長すぎ。あと、『グラン・ブルー』や『フィフス・エレメント』には海外映画によく出てくるような勘違い日本人が出てきて(製作・脚本の『WASABI』なんかもそう)、そのキッチュな日本人像がなんか日本人を小馬鹿にしてるように感じられた(ベッソン自身は否定してるが)こともちょっと不快でした。ベッソンは『フィフス〜』の次の『ジャンヌ・ダルク』の後は製作・脚本ばっかりで監督しなくなったなと思ったら、一応ちょこちょこ監督もしてるようですが僕はさっぱり知らない作品ばかりで日本ではあまり話題にもなっていないような。むしろ製作・脚本のみの『TAXi』シリーズや『トランスポーター』シリーズのほうが日本では受けている印象ですね。僕は『トランスポーター』の1作目をゲストヒロインの香港女優スー・チー目当てで観ただけですが。
 ジャン・レノも初見はやはり『グレート・ブルー』での主演で(ロザンナ・アークエット、ジャン・マルク・バールとのトリプル主演)、これで世界でも日本でも有名になったわけですが(次の『ニキータ』はあくまで脇役)、あまり作品を選ばない人のようで出演作も多く、レンタル店に行くとB級アクションみたいなのにも結構出てたりします。ベッソン監督作と『WASABI』以外では、『ミッション・インポッシブル』『1998年ハリウッド版ゴジラ』、そして下記の香港映画『グレート・アドベンチャー』を観てますが、なぜか作品によっては大根役者に見えることがあるんだよなあ。最近は日本ではパチンコのCMでお馴染みですね(笑)。
 ナタリー・ポートマンももちろんこれが初見。何しろガキンチョだったんで僕はそこまで彼女に魅せられはしなかったんですが、以後『ヒート』『ビューティフル・ガールズ』『マーズ・アタック!』『世界中がアイ・ラブ・ユー』と彼女目当てではなく観た映画にことごとく出てました。しかしやはり21世紀に入ってから個人的にはあまり見なくなり、『パリ、ジュテーム』『マイ・ブルーベリー・ナイツ』『ニューヨーク、アイラブユー』といったあたりで久々に観て大人になったなあと思ったりしました。
 ゲイリー・オールドマンは僕も『JFK』のオズワルド役が初見で、ベートーヴェンを演じた『不滅の恋 ベートーヴェン』も観ました。ビデオで観た『レオン』の前年の『蜘蛛女』では、逆にレナ・オリン演じる狂気のファム・ファタール的女殺し屋に翻弄される小者の悪徳警官を演じてましたな。

 『レッズ』も90年代にビデオで観ました。歴史映像名画座にも収録されてるので、感想はすでにあらかた書いてるんですが(#1334、歴史板#10743)、ジョン・リードはなんといってもロシア革命の歴史的ルポルタージュ『世界をゆるがした十日間』を著したジャーナリストという印象で、米国共産党の創設者とは知らなかったですね。なかなか面白かったです。

 『2001年宇宙の旅』は、多分90年代後半か00年代にNHK-BSで放送されたのを録画して観たと思います。すでにどんな作品かはなんとなくわかった上で観たので、これまた面白いことは面白かったけどなんとなく「ふーん」という感じで、特にハマったりということもなかったんですよね。このあたりが僕がSFファンではないところで(笑)、そもそも映画好きになってからずいぶん長いこと観なかったのも、なんとなく食指が動かなかったから。僕が興味を示すSF映画は、日常に非日常が侵入してくるというタイプのものが多く(例としては『ターミネーター』とか、テレビドラマですが『ウルトラマン』なんかもそのタイプ)、こういう全編これSF、といったタイプの作品にはどうもあまり興味がわきません。


>ガンダム
 個人的ガンダム史については確か前にも書いたよなと思って探してみると、#1261、#1424、#1700と何度か書いてました。ガンダム映画は劇場オリジナルの『逆襲のシャア』と『F91』だけ映画館で観てます。
 ファーストガンダムに関しては、最初に早朝の「早起き番組」で観た時は、当時から朝が苦手で早起きできずほとんど観ませんでした。わずかに観た中で強く印象に残ってるのは、ガルマの恋人のイセリナが敵討をする「イセリナ、恋のあと」の回。アムロがイセリナを埋葬しながら、「僕のことを仇と呼んだこの人はいったい誰だったんだろう?」とつぶやく台詞がものすごく印象に残ったんですよね。劇場版ではカットされちゃってるエピソードなんで、余計に印象に残ってます。夕方の再放送の時もところどころしか観てませんが、ララァが死ぬ「光る宇宙」の回の前衛的幻想シーンがわけわかんないながらもなんかすごく印象に残りました。テレビ放送やビデオで観た劇場版三部作は第二部「哀・戦士」編が1番面白く、逆に第一部が1番つまんなかったですね。テレビ放送版はビデオ化されてからようやく全部観ましたが、スレッガーがビグザムに特攻するあたりの絵は確かにちょっとひどい。中盤のマ・クベや黒い三連星の描写もちょっとねえ。
 ま、僕は『Z』〜『逆シャア』あたりで1番ハマったZ派ですし(くわしくは過去の書き込みで)。ガンダム以外の富野作品は『イデオン』の劇場版二部作をビデオで観たくらい。『ダンバイン』もビデオで観たんですけど途中で挫折しちゃいました。

>映画館で観た映画
『映画 賭ケグルイ』
 オリジナルストーリーとのことだったんで、『映画 みんな!エスパーだよ!』みたいにテレビドラマ版とは無関係な話かと思ってたんですがそうではなく、普通にテレビドラマseason2の後の話でした。あくまで原作マンガには無い話という意味でのオリジナルストーリーだったようです。僕の地方じゃseason2を放送中なんですが(東京ではもう放送が終わってる)、全5話のうち第3話まで観た状態で、2話分とばして観ることになりました。まあ別にそれほどの支障はありませんでしたが。
 ストーリーはちょっと前にテレビドラマの話で書いた通りで、多数の若手演技派俳優たちが異様にテンションの高いキャラたちを異様に高いテンションで演じていく、その演技合戦も見ものの1つ。ただ、あの異様にテンションの高い芝居をスクリーンの大画面で2時間ぶっ続けで観るのは、途中でお腹いっぱいになり、ちょいきつい。テレビで30分だから面白く観れるんだということを実感しました。また映画オリジナルのキャラクター(原作者もアイデアに関わっている)としてギャンブル否定派の生徒が出てくるんですが、そういうのを出しちゃうとギャンブルは良いか悪いかみたいな妙にリアルな話になってきちゃうんでちょっと引っ掛かりを感じましたね(だって実際にはどう考えたって悪いことだし)。そしてテレビドラマの劇場版特有の「続きから観てる感」はどうしてもぬぐえず、映画単独ではちょっと評価しづらいところがあります。面白かったことは面白かったんですが、期待してたほどまでではなかったという感じかな。ただまあドラマseason1、season2、映画総合で見れば、やはり間違いなく面白いドラマです。

>DVDで観た映画
『グレート・アドベンチャー』
 ヨーロッパを舞台に、刑務所から出所した怪盗が自分を罠にはめた人間を探すためチームを率いて再び宝石泥棒に挑むという中国・香港・チェコ合作のアクション映画。主演はアンディ・ラウで、落馬事故で重傷を負う前に最後に出演した映画です。監督はもとは二枚目俳優として活躍してたけど最近はめっきり監督業にシフトしたスティーブン・フォン。共演にフォンと結婚したスー・チーや、『ラッシュアワー3』のチャン・チンチュー、若手俳優のトニー・ヤン、ベテラン俳優エリック・ツァン、そしてフランスからジャン・レノという陣容。アンディ、スー・チー、トニー・ヤンが泥棒チーム。チャン・チンチューがアンディの元カノで、エリック・ツァンが依頼人であるマフィアのボス。ジャン・レノが泥棒チームを追いかけるフランスの刑事。アクション映画といってもハイテクを駆使したチームの盗みテクニックが中心で、いわゆるアクションは多くありません。一昔前のジャッキー映画『サンダーアーム 龍兄虎弟』『プロジェクト・イーグル』なんかのような、すごく金をかけた海外ロケのスペクタクル映画ですが、香港映画もずいぶんハリウッド的に洗練されたなあと感じたし、なかなか面白かったです。スー・チーは相変わらず可愛いし、チャン・チンチューはいつの間にかアンニュイな大人の女性だしで、目の保養になりますな。ただ、この映画ではジャン・レノがいまいち大根な上に、年齢のせいか太ったのかアクションの動きがちょっと……。アンディは歳取っても動きがきびきびしてるんだけどねえ。



#1746 
つね 2019/05/12 22:00
レオン

今回、「栄耀映画徒然草」で更新された中で私が見たのは昨年11月と比較的、最近レンタルして見た「レオン」です。ただ私が見たのは劇場公開版でした。パッケージには「オリジナル版」とあり、「へー、2種類あるのか。じゃあオリジナル版見ないと」と思ったのですが、完全版を探すべきでした。
オリジナル版でもホテルでの「モノマネなぞなぞ」はありました。微笑ましいシーンでしたね。言及されているように暗殺訓練は長距離射撃だけでしたが、ターゲットは殺されなかったところを見ると別に依頼されたわけではなく、たまたま選ばれたのかなあ。ボディガードがいたところを見るとVIPではありそうですが。
ゲイリー・オールドマンの怪演はもう言わずもがな。最初のレオンの大量殺人でターゲットのボスは、依頼元に電話をかけて「許してやる」と言われて開放しているのですが、あの依頼元がスタンフィールドなんですよね。しかしマチルダの親父も麻薬をくすねる悪人ですが、スタンフィールドに脅されたらその夜のうちに夜逃げしないと。どこから見てもレベルが違う危ない人なんですから。
言及されてなかった人で印象的だったのは、イタリアレストランの支配人をやっているらしい仲介役ですね。スティーブン・セガールっぽくてこの人も小さなサングラスが似合いそう。



#1745 
徹夜城(支配人) 2019/05/11 00:01
徒然草更新

もうお気づきの方もいるようですが、「栄耀映画徒然草」に7本を追加しました。最近見た映画について書いてるわけですが、劇場で見てないんですよね、ここ2か月ばかり。
佐藤順彌監督、モンキー・パンチさんの追悼企画なものも混じってますが、ちとタイミングを外したような。

ガンダムの映画は劇場まで足を運んだことはないんですよねぇ。ファーストガンダムの劇場版三部作はTV放送時に見て、以後はビデオやら何やらでよく見てますが。ファーストガンダムについては長いことTVシリーズがソフト化されず、劇場版しか見られなかった時期がありました。
 TVシリーズの方は放送当時ちょっとは見てたんですが(アムロの髪型が斬新に思えて絵で真似した覚えがある)どうも途中で放り出したらしい(笑)。「ザンボット3」や「ダイターン3」は最終回を覚えてるのに、ガンダムは記憶にないですから。それで劇場版のイメージがまずあり、かなりあとになってTVシリーズ見て、特に絵のギャップにおどろいたおぼえがあります(安彦さんが倒れて戦線離脱してたんですよね)。
 「Z」「ZZ」は最近になって全部見たし、「逆襲のシャア」や「F91」もそれより少し前にレンタルビデオで見てますけど、どうも今一つ乗れなかったなぁ…



#1744 
バラージ 2019/04/24 19:18
ガンダム映画

 ガンダムシリーズの『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』と『ガンダム Gのレコンギスタ』が映画化されるそうです。
 『閃光のハサウェイ』は富野由悠季が小説『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』の続編として書いた小説で、映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』とは厳密にはつながっていない作品です。映像化を前提としていなかったため、よりハードでシリアスな作風が特徴。三部作になる映画には富野監督は関わらないようですがコメントは発表してました。
 富野監督の連続アニメ『Gのレコンギスタ』はWOWOW放送だったので観てたんですが、正直なにがなんだかという出来でした。富野監督も不満足な出来だったようで、新作カットを大量に追加して再編集するとのこと。こっちは1本なのか何部作かになるのかまだ不明。
 まあそもそも地元の映画館まで来るのかも不明ですが、どちらも非常に楽しみです。


>最近観た映画
 韓国映画『バーニング 劇場版』を観ました。村上春樹の初期の短編『納屋を焼く』を、現在の韓国に舞台を置き換えての映画化。日本では去年の12月に吹替による95分の短縮版がNHKで放送されましたが、吹替だし短縮だしということで僕は観ず、劇場公開された今回の字幕による148分の全長版で初めて観ました。
 序盤から「『納屋を焼く』ってこんな話だったっけ?」と首をひねる展開だったんですが、やはり使っていたのはプロットのみだったようです。原作は村上春樹の短編に多い「ちょっと現実離れした奇妙で不思議な話」だったように記憶してますが、映画は雰囲気がそもそも違い、ある部分では妙にリアルで、不穏な雰囲気に満ちたミステリーサスペンスホラーみたいな話になってました。原作の「納屋」はビニールハウスに変更されてますが(現在の韓国に納屋はないんでしょう)、これも物語の中心にはなっていません。無言電話、消えた猫、空(から)の井戸、『グレート・ギャツビー』、フォークナーなど、村上の小説に頻出する(または村上自身に関係する)アイテムも村上の小説とは違った形で登場しますが、前記の通り映画の雰囲気そのものがちっとも村上っぽくありません。どっちかっていうとブレット・イーストン・エリス(『アメリカン・サイコ』『帝国のベッドルーム』)の小説の雰囲気。ちなみにフォークナーにも同名の『納屋を焼く』という小説があるらしく、そっちから取ったネタもあるらしいです。
 映画単独で見ればそんなに悪くない作品なんでしょうが、ちょっと僕の趣味とは違うかなあ。映像が暗い場面も多くちょっと見にくいところもありました。あと、あの作風で2時間半はいくらなんでも長すぎる。後半かなりだれましたね。結局1番良かったのはヒロイン役の女優チョン・ジョンソのヌードシーン。きれいなバストでベッドシーンもエロチックで良かった。

>追悼リンゴ・ラム
 今頃になって知ったんですが、香港のリンゴ・ラム監督が昨年末に亡くなっていたそうです。80〜90年代にはチョウ・ユンファとのコンビで数々の映画を送り出した、ツイ・ハークやジョン・ウーと並ぶ存在でしたが、2人とは違い職人監督といった印象で近年も精力的に活動されていたようです。僕は『いつの日かこの愛を』『スー・チーinミスター・パーフェクト』と、ツイ・ハークと共同監督したジャッキー映画『ツイン・ドラゴン』ぐらいしか観てませんが、享年63歳はちょっと早いですね。ご冥福をお祈りします。



#1743 
バラージ 2019/04/02 00:49
またまたテレビドラマの話

 最近映画をあんまり観てないんで、またまたテレビドラマの話です。一昨年と去年に観て面白かった民放のテレビドラマをご紹介。深夜ドラマの『賭ケグルイ』以外はいずれも視聴率的に厳しかったようですがどれも面白かったです。

『フランケンシュタインの恋』
 120年前から山奥で人知れず暮らしてきた怪物=人造人間が、ある人間の女性と出会ったことをきっかけに山を降り人間と暮らし初め、暖かな人々と触れ合ううちにその女性に恋をするという、ちょっとSF風味のヒューマンラブストーリー。原作ものではないオリジナル脚本によるドラマで、人間とは?といったちょっと哲学的な問いを投げかけながら、“人間ではない者”の切なさに泣かされ、純愛ドラマとしても心動かされる傑作でした。結構毎週泣かされちゃいましたね。主演の綾野剛やヒロインの二階堂ふみ、その他の俳優陣もみな素晴らしい。主題歌のRADWIMPS「棒人間」がこれまた良かったです。

『海月姫』
 おしゃれに無縁なクラゲオタクの女の子と彼女の周囲に集う様々なオタク女子の交流や、主人公をめぐる女装男子とエリート童貞のイケメン兄弟の恋愛模様などを描いたラブコメディ。原作はマンガとのことで映画化もされましたがそっちは未見。映画では尺の都合上原作の途中までしか映像化されなかったそうですが、ドラマ版では最後まで映像化されているとのこと。主演は芳根京子で、彼女を初め役者陣がいずれも好演ですが、特に女装男子役の瀬戸康史は普段女っぽいところが全然ない人なのに女装すると女性にしか見えないのがすごい。世の中からはみ出した人々への暖かな視線が注がれたとてもいい作品でした。

『賭ケグルイ』
 ギャンブルの勝ち負けで校内での地位が決まる富裕名門高校を舞台としたぶっ飛んだ設定の学園ギャンブルドラマ。原作はこれまた大ヒット漫画とのことで、設定こそ奇抜ですが要するにキャラ対決バトルドラマです。この手のゲームものはトリックが異常に複雑で非現実的だったりすることがありますが、この作品ではもっと単純できちんと納得できるトリックになっています。演出もオーバーになりすぎない程度に漫画的に誇張され、主演の浜辺美波を初めとする若手俳優たちの演技合戦もキレキレで面白い。中途半端なところで終わったと思ったら、予想通り4月からseason2が始まり、5月には劇場版が公開されます。とても楽しみ。

『チア☆ダン』
 チアダンスに青春をかける女子高生たちを描いたスポーツ青春ドラマ。同名映画の9年後を舞台としていて、映画は実話がモデルになっているとのことですが、これまたそっちは未見。ドラマのほうはオリジナルのフィクションで、少女たちが仲間を集め、様々な困難を乗り越え成功をつかむという王道ものの部活スポーツ青春ドラマです。主演の土屋太鳳を初めとする若手女優陣のがんばりと熱演がまぶしく、青春もの好きとしてはなかなか面白いドラマでした。

『健康で文化的な最低限度の生活』
 生活保護受給者を担当する生活課のケースワーカーとして働くことになった新人女性公務員を主人公に、様々なケースがある生活保護の実態を描いた社会派ドラマ。これまた原作はマンガだそうですがやはり僕は未読。シリアスで重い題材と娯楽性とを両立させていて、非常によくできたドラマでした。とても良かったです。主演の吉岡里帆を初め俳優陣も好演。特にいつもは強面役が多い遠藤憲一がしょぼくれた冴えない受給者を演じていて新鮮でした。



#1742 
バラージ 2019/03/16 22:05
徒然草

 更新ご苦労様です。今回追加された映画で僕が観たのは『それでも夜は明ける』だけ(感想は史劇的伝言板#9616)。アフリカ系米国人解放闘争史映画としては、『バース・オブ・ネイション』(ナット・ターナーの反乱)→『アミスタッド』→『それでも夜は明ける』→『カンサス騎兵隊』『七匹の無法者』(ジョン・ブラウンの反乱)→『グローリー』(南北戦争)といった流れになるわけですね。『女王陛下のお気に入り』は映画館で予告編を観ましたが、ちょっとドロドロっぽいなあと敬遠。この後も『ヴィクトリア女王 最期の秘密』『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』と英国女王映画が続くようですが、僕は王室ものはあんまり……。『ファースト・マン』は実は史劇的伝言板で初めてその存在を知った映画でして。で調べたら地元でも上映してました。これ邦題が悪いよなあ。全然心に引っ掛からんもん。
 『マトリックス』シリーズは今に到るまで全くの未見。僕はサイバーパンクSF?みたいなものにどうも食指がわきません(サイバーパンクの定義とかそもそも『マトリックス』がサイバーパンクなのかとかよくわからないんですが、あくまで雰囲気的になんとなくサイバーパンクなのかなと)。香港映画テイストがありながら香港映画よりはるかに大ヒットしたことへの反感や、大ヒットそのものへの天邪鬼もありまして、結局観てないんです。

 『翔んで埼玉』はまさかの大ヒットで動員100万人を超えたらしく、東京より埼玉の観客動員が多かったとか、いろいろすごいことになってますね。単なるおふざけスペクタクルコメディと見せかけて、実は些細な格差にこだわるバカバカしさや東京一極集中に対する皮肉をチクリと忍ばせた作品で抱腹絶倒に面白かったですよ。

 先日は『グリーンブック』を観てきました。60年代初めを舞台に黒人差別の根強い米国最南部を演奏旅行することになった裕福な天才黒人ピアニストの運転手兼ボディガードとして雇われた粗野な貧乏イタリア系白人の実話を基にしたロードムービーで、今年のアカデミー最優秀作品賞を取った映画です。こちらは現代史版のアフリカ系米国人史映画の1本と言え、確かによく出来てて面白いハートウォーミング・コメディでしたが、この手の映画はさんざん観てきたんでそれほど新味はないかな。いろんなところで指摘されてるように、似たような映画として30年前の『ドライビングMissデイジー』を思い出しました。そしてその『ドライビング〜』同様に、一見リベラルではあるが視点が白人中心的だと一部から批判されてるのもいっしょ。僕も、歴史的にはその後公民権運動が激化してマルコムXやキング牧師が暗殺されたりするのに、予定調和なハッピーエンドで終わっていいのかという気はしました。
 個人的好みではこの後に来るスパイク・リー監督の『ブラック・クランズマン』のほうが楽しみ。リー監督の映画は90年代はほぼ観てましたが、21世紀に入ってからは観てないので久々です。


>なぜか今頃になって書きたくなった一昨年あたりにDVDで観た映画
『ドラゴン・クロニクル 妖魔塔の伝説』
 70年代を舞台とした中国のSFファンタジー冒険アクション映画で、CGをしこたま使った3D映画(中国でこの手のが流行ってるのは海賊版が作りにくいためらしい)。『南京!南京!』『項羽と劉邦 鴻門の会』のルー・チュアン監督作ですが、これまでの重厚な文芸映画とは打って変わっていかにも商業主義娯楽作品です。とはいえルー監督なんでちょっとは期待してたんですが残念ながらいまいち。序盤からクライマックスみたいなアクション連打で設定や状況が不明の何が何だかよくわからないまま話が進んでいき、中盤あたりでようやく話の全体像が明らかになるんですが、太古に地球を支配しようとした宇宙人が作り出した魔族と、宇宙人を追い払った戦士の子孫の戦いという、とんでもなく大風呂敷を広げたような突飛な話でどうにもちょっとついていきにくい。なんでも中国で人気のWebファンタジー冒険小説の第1〜4部の映画化とのことですが、原作から大きく話を改変してるらしく、演出もいつもの文芸作に比べるとやる気がないんじゃないかというくらいの平板さ。それでも終盤のモンスターの群れとの戦いは迫力でまあまあ盛り上がります。

『ロスト・レジェンド 失われた棺の謎』
 古代の墳墓を盗掘することを皇帝から許された家系のトレジャーハンターの男2人と女1人を主人公とした、80年代が舞台の中国の冒険映画。わかりやすく言うとほとんどインディ・ジョーンズ。上記『ドラゴン・クロニクル』と同じWeb小説が原作でこちらは第5〜8部の映画化ですが、別々の会社が権利を買ったらしく監督や出演者も全て別。しかも上記の通り『ドラゴン〜』のほうが原作から大幅に改変したらしいんでほとんど関連性はありません。またまたCG大洪水のやたら金をかけたファンタジー大作ですが、テイストは完全にB級調。80年代後半から90年代前半の香港映画によくあったような作風でなんか懐かしささえ感じます。スー・チーが主演の1人(日本版パッケージだと単独主演みたいだけど実際には3番手)だから観たんですが、とりあえず退屈はせずそこそこ楽しめました。まあスー・チーが相変わらず美しかったんで良しとしよう。



#1741 
徹夜城(支配人) 2019/03/13 17:19
「徒然草」に対か

今日付けで「栄耀映画徒然草」に5本追加しました。
前回入れた「マトリックス」の続編2本と、歴史映画で「それでも夜は明ける」「女王陛下のお気に入り」「ファースト・マン」というラインナップ。今も公開中の映画の文章載せるのは珍しいですね、このコーナーとしては。
今後もなるべくペースを上げて収録本数を増やしていきたいと思います。

今回入れてないんですが、佐藤純弥監督追悼として「君よ憤怒の河を渉れ」とか、かれこれ20年ぶりに見たような気がする「レオン」なんかを次回に予定してます。
「レオン」、実に久々に見たんですが、ナタリー=ポートマンの美少女ぶりは際立ってたなあ。今見るとその後の活躍も知ってるから、また違った感慨もあります。


>バラージさん
「翔んで埼玉」、実際ヒットしてるそうで。僕はどうしようかなと迷ってまして。
そういや同じ原作者の「パタリロ!」も実写映画やるそうですね。



#1740 
バラージ 2019/02/26 23:12
壮大なおふざけ映画

 今年も年頭から『いだてん』に『トクサツガガガ』に『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』とNHKがなかなか攻めたドラマぞろいでいずれも面白いっす。

 『翔んで埼玉』という映画を観ました。なぜか最近になって話題となり大ヒットした、『パタリロ』の作者魔夜峰央が1982年に描いた未完の短期連載自虐的埼玉ディスりギャグ漫画の映画化です。監督は『のだめカンタービレ』(連ドラは結構観た)や『テルマエ・ロマエ』(未見)の武内英樹。
 ストーリーは19XX年、出身地域によって著しい差別がされていた関東地方で、ど田舎の埼玉県民は通行手形がなければ大都会東京都に入れないといういわれのない迫害を受けていた。そんな中、東京のトップ高校に証券会社の御曹司で米国帰りの優秀かつ華麗なる転校生・麻実麗がやってくる。東京都知事の息子で生徒会長の主人公・壇ノ浦百美は、最初は彼に敵対していたが、やがて心服し、惹かれ、恋するようになっていく。だが麻実麗は実は埼玉県民で、通行手形撤廃を目論む埼玉解放戦線のメンバーだった! そしてそれを皮切りに埼玉同様に迫害される千葉や、東京にすり寄る神奈川、関東の秘境群馬、さらには影の薄い茨城・栃木をも巻き込んだ壮大な愛と革命の物語が展開していく……というバカバカしくも壮大かつ奇想天外なもの。
 いや〜、いい意味でくだらない、いい意味でバカバカしい、いい意味で全力でふざけた映画でした。この手のおふざけ映画は米国や香港にもありますが、あっちの映画が単発ギャグの連発といった感じなのに対して、この映画は世界観やストーリーのしっかりした完成度の高いおふざけ映画で、なぜかちょっぴり泣けるシーンもあったりなんかします。ビジュアルも原作マンガに忠実で、宝塚風というかビジュアル系というかなんというか。出演は主人公の壇ノ浦百美役が二階堂ふみ、転校生の麻実麗役がGackt。他に伊勢谷友介、京本政樹、中尾彬、加藤諒、武田久美子、益若つばさ、麿赤兒、竹中直人、ブラザートム、麻生久美子、島崎遥香などで、全員が全力でバカバカしいことをやってます。『パタリロ』の作者のマンガらしくボーイズラブ描写もありますが、何しろ二階堂ふみが女性なので違和感がなく、ほとんど気になりません。
 細かい地域ネタとかはいまいちよくわからないところもありましたが、いい意味で観終わった後に何も残らない、理屈抜きで楽しめる抱腹絶倒の、壮大なスケールで描かれるバカバカしいアホ全開のスペクタクル・コメディ映画でした。いやぁ、面白かった。



#1739 
バラージ 2019/02/20 22:39
栄耀映画徒然草

 更新ご苦労様です。今回追加された作品には僕が観たものはありませんでした。
 『ハン・ソロ』は、そこまでスター・ウォーズの熱烈ファンじゃない僕としては、さすがにもういいかなと。外伝作りすぎ、とっとと本編完結させろよと思っちゃいましたね。山ほど作ってる『アベンジャーズ』がうらやましかったのかもしれないけど(笑)。
 『ジュラシック』シリーズもほぼ未見。唯一2作目の『ロスト・ワールド』だけ一昨年にDVDで観たんですが、それは以前物置から映画チラシといっしょに出てきた昔の映画の前売り券の中に半券になってない、つまり前売り券を買ったのに結局観に行かなかったものが7、8本あって、それらをまとめてDVDレンタルして観ちゃったことによるもの。その中の1本が『ロスト・ワールド』だったんですが、第1作を観てないのになんで前売り券を買ったのか、なんで結局観に行かなかったのか、今となっては全く思い出せません。観た結果としては、すごく金のかかったB級ホラーという感じ。生意気な女子供が勝手に危険なところに行ってはギャアギャアわめくとか、あーこいつ死ぬなと思ったやつは100%死ぬとか、なんか観ててイライラしました。やっぱり僕はこういう映画は苦手だなあ。まあ続編なんで1作目より出来が落ちてるのかもしれませんが。
 『シェーン』のパロディの養毛剤CM、僕はテレビCMで見ました。「シェーン! 髪バーック!」ってやつですね。検索してみたらYouTubeに動画がありまして、「髪は長〜い友達」ってのもこれだったんだ!と思い出し、うわ懐かしいと思っちゃいました。

 ブルーノ・ガンツの出演映画は『ベルリン・天使の詩』と、つい最近の『悪の法則』しか観てません。『ベルリン〜』は名作として名高いんですが、僕はどうにも眠くなる映画でダメでしたね。『悪の法則』も意図的に不快感を煽るタイプの映画で、これまたダメでした。
 佐藤純彌監督の映画も知ってる映画はいっぱいあるわりには、数年前に『野生の証明』を観ただけです。敬遠してるわけじゃないんですが、かといって観たいというほどでもないという感じ。『敦煌』はテレビでチラッとだけ観たんですが、日本人が日本語で中国人を演じるのはやっぱり変というか、日本人にしか見えないよなあ。『君よ憤怒の河を渉れ』はジョン・ウー監督が中日合作映画『マンハント』としてリメイクしてましたね。どうやら本国でも日本でも大コケしたようですが。あと佐藤監督の初期の珍作に『荒野の渡世人』ていうオーストラリアで撮影した西部劇があるらしいんですが、なんとこれが高倉健主演版『シェーン』だそうで(笑)。



#1738 
2019/02/18 17:30
久々の更新作業

アクセス調べてみると、意外とこの栄耀映画のコーナーも来客があるんですよね。なんの更新もしてないのも申し訳ないと思い、昨年から書き溜めていた「栄耀映画徒然草」をアップしました。
「シェーン」「壮烈第七騎兵隊」は往年の西部劇、「ヨーク軍曹」も古典的戦争永あ、「ジュラシック・ワールド炎の王国」「ハン・ソロ」は昨年公開作で実は直後に感想を書いてそのままになっていたもの。「マトリックス」は久々に三作見返してみたので、とりあえず一作目だけアップしておこう、ということです。

>訃報
 つい先日に俳優ブルーノ=ガンツの訃報が。僕が見たのは「ヒトラー最期の十二日間」のなりきり状態のヒトラー役しかありません。日本のネット上では「総統閣下シリーズ」としてその熱演がまた違った意味合いで知れ渡ってしまいました(笑)。

 そして、昨日の佐藤純彌監督の訃報です。あたりとはずれの落差が大きい監督でありまして、「作風」というのもこれといってない。ただ職人的に堅実に映画をまとめあげるという評価はあったようで一時期海外ロケつきの大作を続々と任されたのも、そうした手腕を評価されてだったのではないかと。
 振り返って見ると、僕も意外と見てるんですよ、佐藤純弥監督作品。
「新幹線大爆破」は鉄道映画、サスペンス映画、パニック映画の歴史で絶対におさえねばならない、佐藤監督の代表作です。高倉健とのコンビも多く「ゴルゴ13」「君よ憤怒の河を渉れ」「野性の証明」といったものも。正直なところ「新幹線」以外は僕には微妙な出来で…「君よ憤怒」は中国で大ヒットしたことで知られてますけど、僕には何かギャグなのかとツッコミまくってしまう作品でした。「ゴルゴ13」は革命前のイランでロケしたのが貴重というだけで論評に困る一本。イラン人俳優たちがみんな有名な吹き替え声優の声になってたのも妙な感じでした。

 中国ロケものでは「未完の対局」「空海」「敦煌」があり、いずれもまずまずといったところ。「敦煌」は僕は割と好きなんですが、当初熱望していた小林正樹だったら…とついつい言われてしまう作品です。
 「敦煌」に続いて「おろしや国酔夢譚」でロシア大ロケーション。これ、まず史実がかなり面白いのですが映画は時間内におさめなきゃいけない事情もあってかなり省略、および創作も加えてます。まぁ映画としてはこうなるかな、と。これも堅実にまとめたというところですが、光太夫とエカテリーナの会見は芝居くさすぎるというか。いろいろあるけどラストの海をバックにした壮大なロシア語コーラスつき音楽ですべてが許せてしまう作品です(笑)。
 「敦煌」と「おろしや国」の間に徳間康大映快社長は「三国志」を企画していて結局天安門事件でお流れとなるのですが、実現してたらやっぱり佐藤純彌監督だったのかな。

 大作続きのあとは「超能力者」高塚光の映画とか、エイズ問題、あるいは珍作として有名な「北京原人」といった作品を監督してますが、僕はこれらはいずれも見てません。
 「人間の証明」など角川映画も撮っているため、角川春樹出所後の大作「男たちの大和」も監督して、これは傑作といっていい部類だったと思います。そのあとが水戸市からの企画だった「桜田門外ノ変」で、結局これが遺作となるのですが、「テロを賛美しない」という姿勢からシナリオが時間を前後させたものになって理解しにくくなってしまったのが残念。

黒澤明が監督するはずだった「トラ・トラ・トラ!」ではB班監督で、黒澤降板を受けて代打監督を打診されるも結局降りちゃってるんですよね。このとき黒澤から「暴走機関車」の企画を聞いていたことが「新幹線大爆破」につながってるらしいです。
 深作欣二と一緒にテレビドラマもずいぶん手掛けてますが、出演者たちのコメントで見たら芸術肌の深作に対して職人肌だったと。一部映画人からは演出能力への疑問の声すらあったらしいですが、「おろしや国」スタッフから間に二人ほど置いて間接的に聞いたところでは、よく言えば人格円満温厚で、芸術家的こだわりで周囲と衝突することもない人だったらしく、それが大作を任される一因だったんだろうな、と思います。
 なんだかんだで結構見ているなぁと思い返しつつ、御冥福をお祈りします。「徒然草」にもいくつか追加しておこうかな。

 そうそう、この伝言板もようやく過去ログを一つ増やしてあります。



#1737 
バラージ 2019/01/30 23:52
昔観て面白かった映画G(最終回)

 昔観て面白かった映画、最後は00年代後半以降の後編(10年代のものはリアルタイムに書き込んでいるのであまりありません)。一転して再びほとんどが映画館で観た映画となります。

『言えない秘密』
 DVDで観ました。台湾の音楽学校を舞台とした青春恋愛ミステリーで、歌手・俳優として活躍するジェイ・チョウの主演&初監督作。ミステリーとしてははっきり言って半分くらい過ぎたところでネタがほとんど割れてしまうんですが、そんなことどうでもいいくらいにヒロインのグイ・ルンメイが超絶可愛い。『藍色夏恋』で鮮烈なデビューをした後フランスの大学に留学してしまって、このままフェードアウトしてしまうんじゃないかと不安でしたが、見事素敵な女優に成長しました。あとジェイ・チョウのピアノが神業でしたね。

『おっぱいバレー』
 中学バレー部の顧問となった新任女性教師がダメ部員たちにやる気を出させるため、“試合に勝ったらおっぱいを見せる”という約束をする羽目になったことから始まる青春コメディ。以前から原作小説を本屋で見かけて、面白いタイトルと表紙だなぁと思ってたんですが、映画は舞台を現在から1979年に移し、いかにも中学生男子らしいおバカさに笑わせられながら、最後はホロリと感動させられる青春映画になっています。連ドラ『ホタルノヒカリ』などで絶好調期に入った綾瀬はるかが、本作でも彼女自身のキャラクターとも重なる等身大のちょっと天然でキュートな主人公を好演しており、個人的にこの年のNo.1映画でした。

『空気人形』
 心を持って人間化したダッチワイフ(空気人形)が愛を求めて彷徨う姿を描いた是枝裕和監督のヒューマンドラマ映画。辛口な大人のファンタジーといった作品で、主人公の空気人形役のペ・ドゥナが素晴らしい。『プライベート・レッスン 青い体験』『復讐者に憐れみを』(未見)に続いてまたも美しいヌードを見せてくれます。空気人形が恋するレンタルビデオ店員役のARATA(現・井浦新)、空気人形の持ち主役の板尾創路、人形製作師役のオダギリジョーらも好演。

『ゼロの焦点』
 何度も映像化されてる松本清張の有名なミステリー小説を犬童一心監督が広末涼子主演で映画化。僕は原作未読で過去の映像化作品も全て未見ですが、面白かったですね。女性を魅力的に描く犬童監督だけあって、広末・中谷美紀・木村多江ら女優陣が良かった。特に広末涼子の透明感は主人公に適役。彼女を含む女たちの強さも印象的でした。

『ソフィーの復讐』
 チャン・ツィイーが主演と製作を兼ねた、女性監督エヴァ・ジンによるラブコメディ。監督が米国帰りだけあって、いい意味で中国映画っぽくないアメリカナイズされたおしゃれな映画で、洗練されたマンガ的表現に満ちあふれています。ツィイーの現代劇は結構珍しいんですが、見事なコメディエンヌぶりを如何なく発揮していて、30代に突入したとは思えない彼女の魅力爆発。とにかく可愛い。なお日本の配給会社は韓流ブームになんとか便乗しようとしたのか韓国俳優ソ・ジソプとのダブル主演に見せかけてますが、実際にはソ・ジソプは4番手でフラれ役。中韓合作ではあるものの内容的には全くの中国映画です。

『狙った恋の落とし方。』
 画期的な発明を投資家に売ったおかげで一夜にして大金持ちになった中年男性が、理想の結婚相手を探す旅に出る中国の恋愛ドラマ映画。名優グォ・ヨウが一風変わった主人公の中年男性を、彼が惹かれる影のある女性をスー・チーが演じています。前半は主人公のネット婚活と中国婚活旅、後半は実は不倫を断ち切るために婚活してたヒロインとの北海道旅行に。主演2人がいずれも好演でとても面白かった。中国では大ヒットして北海道旅行ブームが起きたそうです。原題は“非誠勿擾”でこれはネットで婚活する時の決まり文句とのこと(意訳すると“冷やかしはお断り”みたいな感じらしい)。最初に映画祭で上映された時の邦題はそれを直訳したような『誠実なおつき合いができる方のみ』で、こっちのほうが内容によく合ってるんですが、劇場公開では集客を考えてか軽いラブコメみたいな邦題になってしまいました。

『FLOWERS フラワーズ』
 資生堂TSUBAKIのCMから発展した、昭和から平成までの三世代に渡る女性たちの人生を描いたオムニバス的群像劇。主演は同CMに出演していた蒼井優、鈴木京香、竹内結子、田中麗奈、仲間由紀恵、広末涼子。主演6女優は当然ながら魅力的で美しいし、それぞれのエピソードが昭和映画のオマージュ的に小津安二郎風だったり喜劇の社長シリーズ風だったりというのも面白かったです。ただ女性の幸せが「結婚」と「出産」のみのように受け取られかねない描き方はちょっと引っ掛かりましたね。

『海洋天堂』
 妻との死別後、男手1つで自閉症の息子を育ててきたものの、癌で余命いくばくもない父親を描いた中国のヒューマンドラマ映画。脚本に惚れ込んだジェット・リーが父親役でノーギャラ出演し、初めてノーアクションで演じた映画です。そのジェットがアクションスターの面影を微塵も感じさせない好演で、自閉症の息子役のウェン・ジャンも素晴らしく、脇を固めるグイ・ルンメイやカオ・ユエンユエンらもこれまた好演で、なかなかの感動作でした。皮肉なことにジェット自身はその後、数年前から甲状腺の病気で簡単な運動もできないとのことで、アクション俳優としては残念ながら引退状態です。


>テレビやDVDで観て面白かった映画
『物置のピアノ』
 正月に民放で深夜に放送してて、たまたま途中から観たら面白かったんで、DVDを借りて最初から観た2014年の日本映画。東日本大震災から1年が経過した福島の田舎町を舞台に、物置に置かれたピアノを弾くことを心の癒しにする内気な女子高生が、美人で優秀な姉との確執や、過去に弟を事故で亡くした記憶、風評被害に苦しむ桃農家の祖父の存在、原発事故のあった浪江町から避難してきた同級生の少年との交流などを通して、人生の新たな一歩を踏み出していく姿を描いた青春ヒューマンドラマ映画です。製作途中で震災が発生し、一時中断した後シナリオを書き換えてから再開したとか。爽やかな感動を呼ぶとても良い映画で、オーディションで選ばれて映画初出演にして初主演したという芳根京子も好演。



#1736 
バラージ 2019/01/18 22:58
異色の小津映画

 去年NHK-BSで放送してて録画しておいた小津安二郎監督の映画のデジタル修復版をまとめて観ました。ちなみにこれまでに観た小津映画は有名な『東京物語』だけ。

『お茶漬の味』
 お見合い結婚してから数年が経ち、倦怠期に入った夫婦を描いた1952年の映画。小津は親子や家族を描くことが多く、夫婦を描くのは珍しいそうです。都会の良家出身の妻(木暮実千代)は生活習慣も趣味嗜好も合わない田舎出身の夫(佐分利信)に不満で、友人たち(淡島千景ほか)との秘密旅行や野球観戦などで憂さを晴らす日々。そこに自らのお見合いを嫌がる姪(津島恵子)や、就職の決まった夫の後輩の青年(鶴田浩二)などが絡み、なんだかんだと小さな事件があって、やがて妻は夫の良さを見直して夫婦でお茶漬を食べる。ストーリーだけ書くとなんてことないホームドラマなんですが、さすがは小津、登場人物の心の機微を丁寧に描いて面白く見せてくれます。しかし個人的に面白く感じたのはロケなども含めて描かれる当時の社会風俗の数々。前記の野球場に、伊豆の高級旅館やバーや電車や飛行場、パチンコに競輪にラーメン屋にタバコの「朝日」など、いずれも興味深かったですね。小津というと古い日本の情緒を描いた監督というイメージがあったんですが、こんなモダンな世界も描いてたんだなぁ。去年観た成瀬巳喜男監督の『おかあさん』の時も似たようなことを書きましたが実は同じ年の作品で、ストーリーやテーマは全然違いますが、若者とのジェネレーションギャップが描かれたり、戦後の解放感的明るさに満ちていたりと細部で似てるところの多い映画でした。面白かったです。

『早春』
 こちらも倦怠期の夫婦の危機を描いた1956年の映画。結構暗めの作品で、小津映画ではやはり異色作のようです。主人公夫婦(池部良、淡島千景)は『お茶漬〜』よりもやや若く、子供を病気で亡くしているという設定(そういえば『お茶漬〜』でも夫婦に子供はいなかった)。サラリーマンの夫は通勤電車でよく会う仲間たちとハイキングに出掛けた際に、その中の快活で魅力的な女性(岸惠子)と急接近し、ついには一線を越えてしまう。小津映画で不倫が描かれるとはちょっとびっくり。そしてそのような男女の話と平行して、夫らサラリーマン生活の悲哀も描かれていきます。戦争の影がまだ残っているのは『お茶漬〜』や成瀬の『おかあさん』と同様で、この映画でも当時の社会風俗が興味深くはあるんですが、それよりも男女関係にしてもサラリーマン生活のしんどさにしても、昔も今も人間ってたいして変わんねえなあという感じのほうが強いですね。60年前の現代劇でありながらそのまま今に置き換えてもいいような話で、昔の映画だということを忘れて面白く観れてしまいます。ま、最後はなんとなく夫婦が元サヤに収まってしまうあたり、時代なのかなとも思うんですが。どこか暗く虚無的な池部、凛とした佇まいの淡島、全身から魅力を発散してる岸がいずれも素晴らしく、妻の母親の浦部粂子、長屋のお隣さんの杉村春子、地方に転勤した夫の先輩の笠智衆、脱サラしてバーを経営する先輩の山村聰、そのバーで知り合う定年間際の東野英治郎など脇役陣も充実。

『東京暮色』
 1957年の映画で、多分小津映画としては『早春』以上の異色作。とにかく全編に渡って暗く重苦しい映画で、キネ旬ベストテンの常連だった小津ですがこの映画は19位に沈んだとのこと。しかし現在はベルリン映画祭でデジタル修復版が上映されるなど再評価が著しいそうで、正直言って僕もこの映画はダントツに素晴らしいと思います。ごく控えめに言って傑作。父(笠智衆)と娘二人の家族が主人公。姉(原節子)は夫と上手くいかず、娘を連れて実家に身を寄せている。妹(有馬稲子)は恋人の子を妊娠したが、男はのらりくらりと彼女から逃げ回っている。妹は恋人の仲間の溜り場の雀荘の女主人(山田五十鈴)と知り合う。一方、叔母(杉村春子)もその女と偶然会ったと父と姉に告げるが、実は彼女は父の単身赴任中に不倫して家を出ていった母だった……。脚本も映像も照明も音楽も効果音も完璧と言っていいくらい完成されてるし、何より上記5人を含めたキャスティングがいずれもハマり役で素晴らしい。物語の中心は意外にも原でも笠でもなく妹役の有馬で、終始不機嫌で憂いを帯びた、思い詰めたような表情が強い印象を残します。そして原も笠も山田も杉村も本当に芸達者の名演技。まさに役者ですね。出てくる男にろくでもないやつが多いのも特徴で、登場人物それぞれの過去の行いや感情や状況から多くのすれ違いが生じ、物語がどうしようもなく悲劇的な結末へと向かっていくストーリー運びと構成も圧巻。小津もまた成瀬同様に天才ですな。いや、良かった。


>去年DVDで観た映画
 そういえば去年の年末にDVD化された市川準監督の『大阪物語』がレンタル開始されてたんで借りて観ました。昔、市川監督の死後に観てるんですが、『BU・SU』や『トニー滝谷』が2度目に観た時に初見の時よりずっと面白かったんで、この映画もまた観てみたんです。でも残念ながらあまり印象は変わらなかった。

>こんな面白い記事が出てました
「「ダサい邦題」「タレントでPR」、熱心な映画ファンが“無視”される事情」
https://www.sbbit.jp/article/cont1/35768



#1735 
バラージ 2019/01/10 15:52
すっかり遅くなりましたが

 今年もよろしくお願いします。
 正月には地元でも公開された『ポリス・ストーリーREBORN』をもう1回観てきました。遅れ公開になるんじゃないかと思ってはいたんだよなあ。でもまあ隣県への旅も結構楽しかったからまあいいや。『ポリス・ストーリーREBORN』はもう1回観てもやっぱり面白かったです。
 去年の紅白もすごかったですねえ。最後は平成をさかのぼるどころか昭和まで行ってしまいました。久々に面白かった。



#1734 
徹夜城(支配人) 2019/01/02 23:47
謹画新年

明けましておめでとうございます。今年もよろしく。今年ももうちっとは映画徒然草など充実させていきたいな、と思います。夏休みに見た映画なんかも途中までかいて放置状態になってるのがいくつかあったりします(^^;)

 実のところ、去年は映画館にあんまり行ってないんですよ。仕事のスケジュールが変わっちゃって、それまでよく利用していたメンズデー鑑賞が5月以降できなくなっちゃったのが大きい。そのためこれまで使っていたところ以外の離れたところのシネコンを「開拓」するようなこともありました。
 映画館に最後に行ったのは「ボルグ&マッケンロー」だったかな。

 この正月は録画だめしていた映画を次々見てまして。「幸福の黄色いハンカチ」「ミッション・インポッシブル3」とか。「ミッション・インポッシブル」シリーズをNHKのBSシネマ年越し映画で一挙に5作やってくれたんで、3〜5作までを初鑑賞できることになりました。「3」はJ・J・エイブラムス監督だったんですねぇ。この人、ホント次々と人気シリーズをてがけますな。



#1733 
バラージ 2018/12/31 13:22
時が経てば

 去年も一昨年も、その年に観た映画の個人的ベスト3が明確ではなかったんですが、ある程度時間が経ってくるとそれがはっきりしてくることがあります。観たときはすごく面白かったのに時間が経ってみると印象が薄れている映画もあれば、逆にいつまで経っても色あせない映画もある。ベストセラーとロングセラーの違いとでも言いますか。
 そんなわけである程度の時間が経ちはっきりした一昨年のベスト3は、『黒衣の刺客』(#1613)『夏美のホタル』(#1640)『女が眠る時』(#1614)。去年のベスト3は、『リンキング・ラブ』(#1686)『グレートウォール』(#1672)『散歩する侵略者』(#1682)となります。


>DVDや録画で観て面白かった映画
『希望のかなた』
 今年公開されたけど映画館では観逃してしまった映画。フィンランドのアキ・カウリスマキ監督の“難民三部作”の第2作で、いつもはとぼけたユーモアが味わいのカウリスマキ映画ですが、本作は難民という題材のためもあってかちょっとシリアス。中東から東欧を経てヘルシンキまでやってきた難民の苦難や、フィンランドにも存在するネオナチによる暴力なども描かれています。その一方でいつものとぼけたユーモアも健在で、登場人物がみんなカウリスマキ映画お決まりの無表情なのがおかしい。カウリスマキ曰く、この映画は「いわゆる傾向映画(1920年代にドイツおよび日本でおこった左翼的思想内容をもつプロレタリア映画)」で、「そんな企みはたいてい失敗に終わるので、その後に残るものがユーモアに彩られた、正直で少しばかりメランコリックな物語であることを願います」とのこと。確かにいい映画でした。やっぱり映画館で観るべきだったかな。
 それにしても2〜3年前に初めて観た89年製作のカウリスマキ監督作『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』の頃はまだ東欧諸国も共産圏だったことを考えると、この30年間でヨーロッパは本当に歴史的な大転換を経験したんだなあと改めて思いますね。

『ザ・ビッグ・コール 史上最強の詐欺師たち』
 WOWOWがよくやってる日本ではDVDスルーの映画を発売前に先行放送する企画の中の1本。振り込め詐欺を題材にした中国・香港合作の社会派サスペンス映画で、タイに拠点を置く中国の振り込め詐欺組織と中国警察の対策専門チームの攻防を描いています。電話やネットによる振り込め詐欺の巧妙な手口が詳細に描かれる一方で、警察の組織捜査も緻密に描かれ、頭脳戦に継ぐ頭脳戦が手に汗握る緊迫の展開で面白い。最後の派手な銃撃戦はやや映画的な盛り上げでしたが、とにかく脚本がよくできていて人間ドラマ部分も良かったです。充分に劇場公開に値する映画だと思うんだけどなあ。
 ちなみに好きな女優のグイ・ルンメイ目当てで観たんですが、今回は珍しいことに詐欺組織のボスの恋人でリーダー格という悪役を演じてました。ボス役はルンメイと『GF*BF』で共演してたチャン・シャオチュアン(ジョセフ・チャン)で2人とも『GF*BF』とはまるで違う役柄。主人公の男性警官とその元恋人の女性潜入捜査官の俳優は知らん人ですがこれまたなかなかの好演で、役者陣の演技力が映画のリアルさを高めています。
 それにしても邦題はダサいなあ。あと最近の中国映画(香港含む)は複数の映画会社による合作が多いようで、最初の映画会社のロゴマークがひどい時には5つも6つも続くんでちょっとイライラします。

>映画館で観て面白かった映画
『ニセコイ』
 週刊少年ジャンプの連載マンガの映画化だそうで当然ながら僕は未読ですが、個人的に気になる島崎遥香が脇役で出てるんで観ました。しかしこれが予想外に結構面白かった。原作は一応ラブコメ漫画らしいんですが、映画はいかにもマンガという感じのハチャメチャギャグが満載。実写だからといって下手にリアルに近づけようとせず、CGなども駆使して徹底的にマンガの世界の再現を目指したのが成功したんでしょう。中島健人・中条あやみ・島崎遥香・DAIGOら俳優陣も絶妙にマンガ再現演技を演じており、唯一サブヒロイン役の池間夏海という16歳の子がちょっと拙い演技でしたが、濃いキャラばっかりの登場人物の中で唯一普通の子の役だったため、むしろそこが上手くハマってましたね。ラブコメとはいえ少年マンガなんで男が観ても違和感はありませんでした。


 というわけで今年の個人的ナンバー1は『猫は抱くもの』(#1717)。次いで『軍中楽園』(史劇的伝言板#10779)かな。『軍中楽園』は映画自体もさることながらヒロイン役のレジーナ・ワンに魅了されました。『戦神 ゴッド・オブ・ウォー』の時もいい女優だなと思ったんですが、『軍中楽園』で完全にやられちゃいましたね。DVDや録画で見た去年以前の映画『彼女の人生は間違いじゃない』(#1695)『MIRACLE デビクロくんの恋と魔法』(#1695)『シチズンフォー スノーデンの暴露』(史劇的伝言板#10736)も面白かったです。
 それではよいお年を。



#1732 
バラージ 2018/12/22 22:28
昔観て面白かった映画F

 昔観て面白かった映画、00年代後半の前編。今回は全部DVDで観た映画だなぁ。

『ピーナッツ』
 バラエティー番組『内村プロデュース』(通称『内P』)のレギュラー芸人(さまぁ〜ず、TIM、ふかわりょう)総出演のウッチャンこと内村光良初監督&主演映画。商店街再開発に立ち向かう草野球チームを描いた、おっさんたちの青春映画とでも言うべきコメディ作品でなかなか面白かったです。この映画を観た当時は『内P』にハマってたなあ。上記レギュラー6人による歌手ユニット「NO PLAN」のCDも買ってしまった。もう売っちゃったけど(笑)。

『間宮兄弟』
 30代になっても仲良く同居している兄弟のほのぼのとした日常を描いた森田芳光監督のヒューマンコメディ映画。兄役が佐々木蔵之介、弟役がドランクドラゴンの塚地武雅、兄弟が想いを寄せるヒロインに沢尻エリカと常盤貴子、沢尻の妹役に北川景子。原作小説があるそうですが、森田監督のオリジナル映画に非常に似た空気感の作品で、とても良かったですね。塚地と北川の出世作でもあり、2人が森田を師と慕い感謝しているのは有名な話。

『ストロベリーショートケイクス』
 都会に生きる4人の女性の恋や生活を描いたオムニバス女性マンガを映画化したドラマ映画。いかにも大人の女性マンガの映画化という感じで、同じく大人の女性マンガを映画化した『さよならみどりちゃん』に似た雰囲気の映画でした。池脇千鶴・中越典子らが主演ですが、池脇千鶴にハズレなし、と思い始めた頃の1本でまあまあ面白かったです。

『ウィンター・ソング』
 ミュージカル映画に出演するために再会した、かつて恋人同士だった香港の男優と中国の女優の過去と現在と劇中劇が交錯するピーター・チャン監督の恋愛ミュージカル映画。主演は金城武とジョウ・シュンで、女優と恋人である監督役にジャッキー・チュン。男を翻弄する小悪魔女性が十八番のジョウ・シュンの魅力爆発で、金城とジャッキーもハマり役。金城君は歌が得意でないことを自認してるようですが(笑)、歌手としても活動してたジョウ・シュンはなかなかで、“歌神”の異名を持つジャッキーはやはり別格。いい映画でした。原題は『如果・愛』、英語題は『Perhaps Love』で、直訳するといずれも『もしかして、愛』もしくは『もしかしたら、愛』。絶対そっちのほうがカッコいいタイトルだと思うんだけどなあ。

『恋する日曜日 私。恋した』
 オムニバス恋愛ドラマシリーズ『恋する日曜日』の映画版3作目。余命わずかな女子高生が幼い頃暮らした海辺の町を訪れ、それを隠したまま初恋の幼なじみに会うというストーリーで、青春映画を得意とする廣木隆一監督の佳作。主演の堀北真希が思春期の少女の繊細な心の揺れを好演しています。廣木監督の青春映画は純文学っぽい雰囲気なのが良いんですよね。

『音符と昆布』
 自閉症の一種アスペルガー症候群の姉と、彼女の存在を知らずに育った嗅覚に障害を持つフードコーディネーターの妹の交流と絆を描いたヒューマンドラマ映画。映画自体もまあまあ面白かったんですが、とにかく姉役の池脇千鶴のアスペルガー症候群の演技が素晴らしい。これまた池脇千鶴にハズレなし、と思わせる1本です。



#1731 
バラージ 2018/12/02 22:03
訂正

 「>その他の最近映画館で観た映画」ではなく「>その他の最近映画館やDVDで観た映画」でした。『オー・ルーシー!』はDVDで観ております。



#1730 
バラージ 2018/12/02 22:01
ジャッキー in SF

 ジャッキー・チェンの新作『ポリス・ストーリーREBORN』を観てきました。なんと今回は地元で公開されないんで隣県まで遠征です。まあ久々に隣県まで遊びに行きたかったんでいいかなと(楽しかった)。
 邦題に「ポリス・ストーリー」と付いてますが、これまた勝手な邦題で『ポリス・ストーリー(警察故事)』シリーズとは関係なし。原題は『机器之血(機器之血)』、英語題は『Bleeding Steel』。コアなジャッキーファンの1人として邦題が決まる前からチェックしてた僕はあらかじめ知ってましたが、知らずに観た人は、なんだこりゃ?全然ポリス・ストーリーじゃねえじゃん!てなったことでしょう。一応エンディングで流れる主題歌がポリス・ストーリー・シリーズの主題歌の新バージョンではありますが、日本の配給会社もなんでこんな邦題にしたんだか。まあ香港映画あるあるですけどね(今回は中国との合作だけど)。
 今回のジャッキー映画はなんとSF。といっても舞台は現在(序盤は2007年でメインは2020年)で、宇宙人なんかも出てきません。僕はSFにくわしくないんで知らなかったんですが、バイオSFとかバイオパンクと呼ばれるジャンルらしい。しかし肝心なこのSF設定、特に敵の設定がもう本当にツッコミどころ満載です。細かく言い出したらキリがないんですが、特撮もチープでB級SFといった感じ。正直バカ映画と言われても仕方がない出来です。デザイン的にもパクり満載らしく、僕もスター・ウォーズかよ!(笑)と思ったところがあります。やっぱり香港映画(中華圏映画)とSFは相性が悪い。
 では、つまらなかったのかというと、なぜかこれが意外と面白かったんですよね。少なくとも去年の3作(『レイルロード・タイガー』『スキップトレース』『カンフー・ヨガ』)よりは面白い。ジャッキーのアクションが全盛期に比べてすっかりおとなしめになってるのは、もうずっと前からわかってることで、そこが面白かったわけではありません。じゃあ何が面白かったのか?と聞かれると自分でも答えに困るんですが、なんか観終わった時の感覚としては全体的には面白かったんですよ。映画サイトやTwitterを見ても賛否両論のようです。
 ジャッキーの脇を固める俳優陣も良かった。若手イケメン俳優のショウ・ルオがコメディ担当で好演してる他、女優もジャッキー映画では久々に魅力的。娘役のオーヤン・ナナは可愛いし、部下役のエリカ・シアホウもショートカット美人でアクションもできて、これまた2人とも好演。ジャッキーも若手を育てることを意識してるのか、自分の出番を控えめにして彼らの出番を増やしてる感じがしました。ちなみにオーヤン・ナナは2000年生まれで撮影当時16歳。芸能一家に育ち、本業はチェリストで天才美少女と言われてるとのことで、欧陽菲菲の姪御さんだそうです。
 要するにこの映画、SFとジャッキー以外の要素が面白かったということでしょうか。なんか身も蓋もない話ですが(笑)。でもまあとにかくなかなか面白かったです。


>その他の最近映画館で観た映画
『ハナレイ・ベイ』
 村上春樹の同名短編小説の映画化で、原作も読んだはずなんですがほとんど覚えていません。『東京奇譚集』に収録されてるらしいんですが、同作と『女のいない男たち』の短編は『神の子どもたちはみな踊る』までの短編と違ってどうも印象に残ってないんですよね。映画は静謐で淡々とした作風な上に、寝不足の状態で晩飯を食った後に暖房がやたら暖かい中で観たんで、最初の30分ぐらいは半分眠かけしながら観てしまいました。それでもだいたい話は把握できてたはずだし、まあまあ面白かったです。

『オー・ルーシー!』
 去年の9月にNHKで73分のテレビ放送用再編集版が先行放送された時に観て面白かった映画で、日本では今年の4月に95分のオリジナル版が劇場公開されたんですが残念ながら地元には来ませんでした。何の楽しみもない毎日を送る40代の独身中年OLが、姪の頼みで彼女が通っていた英会話教室を引き継ぐ。金髪のカツラをかぶせ“ルーシー”という名前で呼ぶ変わったレッスンをするイケメン講師にハグをされ戸惑うが、やがて彼に惹かれるように。だが翌日教室に行くと、講師は辞めて姪といっしょに米国に帰ってしまっていた。主人公は仲の悪い姉と共に講師と姪に会いに米国に行くが……という物語。主人公はとにかくイタい独身中年女で、演技派の寺島しのぶが演じているからそれがまた妙にリアルです。姉役の南果歩、姪役の忽那汐里、講師役のジョシュ・ハートネット、同僚生徒役の役所広司も好演でした。



#1729 
バラージ 2018/11/14 23:30
(実際の)世紀末の映画

 市川準監督の『大阪物語』が公開から19年を経て、ついにようやくDVD化されます。池脇千鶴のデビュー作で初主演映画でもあるんですが、なぜかなかなかDVD化されず、今までVHSビデオが高値で取引されていました。
 今年は市川監督の没後10年ということで、毎年の目黒シネマでの市川準特集(今年のテーマは「市川準の女優たち、それから。」)の他に、大阪のシネ・ヌーヴォという映画館でも市川準映画祭というのをやるようです。

>最近、映画館で観た映画
『メイド・イン・ホンコン』4Kレストア・デジタルリマスター版
 1997年の香港映画で日本では1999年に公開されましたが、地元で公開されたかは覚えておらずビデオでもなんとなく観逃してしまい、DVDはレンタル店に並んでないので今に至るまで観ないままできてしまった映画です。
 中国返還直前の香港で生きるチンピラ少年を主人公に、閉塞感で鬱屈した当時の香港社会の若者たちのリアルな群像をスタイリッシュな映像で描いた青春映画。フルーツ・チャン監督が低予算で撮り上げたノー・スター映画で、街でスケボーしてるところをスカウトされた主演のサム・リーは一躍人気スターとなり現在まで活躍しています。フルーツ・チャン監督の映画はこれより後の『ドリアン ドリアン』や『ハリウッド★ホンコン』は観てるんですが、ややグロテスク趣味なところがあり、ちょっと敬遠してました。しかしこの映画にはそういうところは希薄。むしろ当時のリアルな香港をスタイリッシュな映像で描いているのが、今となってはまるで歴史の1ページになっているかのような感じです。確かに当時の香港映画にはこういうタイプの映画はなかったような気がしますね。サム・リーも演技初経験の素人とは思えないような存在感で、こりゃスターになるわと思わせるし、他の若者たちも素人ゆえのリアリティーを感じさせ、それが作品に力を与えています。いやぁ面白かった。
 しかしあれからもういつの間にやら20年も経つんですねえ。20世紀も遠くなりにけり。

>最近、DVDで観た映画
『裁きは終りぬ』
 陪審員制度を題材とした1950年のフランス映画。最初にこの映画を知ったのは確か90年代初めだったと思うんですが、観たいと思ってもビデオがレンタルされてなく、DVD時代になってもやはりレンタル店になく、BSとかでも放送されず、ずーっと長きに渡って観ることができなかった映画です。しかし先日ふと地元の図書館でDVDコーナーを覗いてみたらなんとDVDがあり、20数年越しで初めて観ることができた次第です。
 陪審制を描いた名作映画に『十二人の怒れる男』がありますが、『裁きは〜』を観ると『十二人〜』は同じ社会派映画でもやはり米国的な映画だったんだということが改めてわかります。確かに傑作ではあるんですが、なんだかんだ言って「正しきは勝つ」という健全なヒューマニズムに立ったハッピーエンドな映画なんですね。それに比べると『裁きは〜』の物語構造はもっと複雑で、そもそも陪審員が裁く事件が末期ガンで苦しむ恋人を安楽死させた女の裁判という有罪か無罪かが極めて難しい事例を扱っています。その背景にさらに複雑な事情がいくつか絡むんですが、その一方で7人の陪審員(フランスではそういうシステムのようです)それぞれの私生活が描かれていくのも特徴で、彼らもまた様々な事情を抱えながら裁判に参加しており、それがまた彼らの判断に影響を与えていく様子も描かれています。ラストも果たしてこれで良かったのか?と深く考え込んでしまうような結末で、ある意味米国式の単純ストレートでわかりやすい映画だった『十二人〜』と比べると、いかにもヨーロッパ的な深みを感じさせる映画でした。やはり名作です。



#1728 
バラージ 2018/11/04 23:23
昔観て面白かった映画E

 昔観て面白かった映画の第6回。00年代前半の後編です。

『ベッカムに恋して』
 女子サッカー選手を目指すインド系イギリス人少女を主人公としたイギリスのスポーツ青春映画。単純なスポーツ映画ではなく、インドとイギリスの宗教や文化慣習の違い、人種差別、性差別といった社会派要素の色濃い映画で、それをサッカーで乗り越えようとしていく主人公と親友になるイギリス人少女との友情がさわやかな感動を呼びます。原題は『Bend It Like Beckham』。直訳すると「ベッカムのように(弾道を)曲げろ」で、「人生を変えろ」という含意があるらしい。本物のベッカムもちょっとだけ友情出演。

『ハリウッド★ホンコン』
 香港の下町にやってきたキュートでコケティッシュな上海娘の魅力に惑わされる男たちの悲喜劇を描いたヒューマンドラマ映画。おしゃれでスタイリッシュなDVDパッケージのイメージとは裏腹に、内容はちょっとグロテスク趣味。それがフルーツ・チャン監督の持ち味のようですが、個人的にはそういうのはちょっと苦手。ただ裏の顔を持つ小悪魔的なヒロインを演じたジョウ・シュンが素晴らしく魅力的で、これまた彼女の出演作をその後観まくりました。

『LOVERS』
 映画館で観ました。チャン・イーモウ監督が『HERO』に続いて撮った武侠映画。『HERO』の出来には不満だったんですが、こちらは面白かった。やはりダンス経験者で、魅せるアクションのできるチャン・ツィイーを話の中心にしたのが良かったのかな。冒頭のツィイーの太鼓乱れ打ちのシーンだけで1本の映画のような満足感です。残念なのは、最後のシーンが花畑の予定だったのにSARS騒動の影響で出国できないうちに撮影地の花畑育成が失敗し、さらに季節外れの大雪というハプニングで急遽雪原でのシーンに変更されたこと。冒頭で金城武が「どうせ死ぬなら花に囲まれて死にたい」と言ってたのが伏線になるはずだったんだろうけどなあ。もう1つ残念なのは組織の女首領役として出演予定だったアニタ・ムイが癌で40歳の若さで亡くなったこと。メイキングには彼女の死の知らせを受けた監督やスタッフの沈痛な様子があります。代役は立てられず、女首領は顔の見えない状態で1シーンのみ登場し、女首領が担うはずだった役割は妓楼の女将役のソン・タンタンに引き継がれました。

『2046』
 映画館で観ました。製作中から木村拓哉がウォン・カーウァイ監督の映画に出演ということで話題になってましたが、当初の内容紹介は「中国返還から50年後、2046年の香港を舞台としたウォン・カーウァイ初の近未来SF映画」というものでした。しかしカーウァイをよく知る人なら、彼のことだから完成するまでどうなるかわからないと疑ってたし、実際完成した映画は全然違うものになっていた(笑)。製作は『楽園の瑕』の3年を上回る実に5年もの難産となり、主演でカーウァイ映画常連のトニー・レオンは記者会見で「製作中は監督が何を撮りたいのか全然わからなかった。多分監督自身も自分が何を撮りたいのかわかってないんだと思う」と言って爆笑を取ってましたね。木村拓哉も撮影に入ってすぐ脚本通り撮ってないことがわかったそうで、トニーがいなかったら無理だったかもしれないとインタビューで語ってました。映画は60年代香港を舞台とした『欲望の翼』『花様年華』の続編的作品で、観た時は久々のカーウァイ節に酔いしれましたが、少し時間を置いてみるとやはり全体的なバランスが悪い感じ。製作中にかつてカーウァイ映画の常連だったレスリー・チャンが衝撃的な自殺を遂げたことも映画に影響を与えたようで、数人の女性と関係を持つプレイボーイというトニーにはあまり似つかわしくない役は、むしろレスリーがカーウァイ映画でたびたび演じてきた役柄です。同じ年に起こったレスリーとアニタの死の影をまとった『2046』と『LOVERS』は香港映画の落日を象徴しているように思えました。

『ルールズ・オブ・アトラクション』
 1987年に出版されたブレット・イーストン・エリスの長編小説第2作を15年後に映画化。ドラッグとセックスに溺れるエリート大学生たちの日常をクールに描いた青春群像劇で、原作は全編登場人物の独白で構成されセンテンスごとに語り手が変わり、しかもその内容がそれぞれ矛盾するというかなり実験的な小説。映画では逆回転や画面分割、手持ちカメラの素人撮影などの映像技術を駆使して実験的手法のエッセンスを表現しようとしています。エリスの小説は処女作『レス・ザン・ゼロ』と第3作『アメリカン・サイコ』がこれ以前に映画化されてますがいずれも全くの失敗作。本作とこれ以後に映画化された『インフォーマーズ』は成功しています。

『世界の中心で、愛をさけぶ』
 説明不要の大ヒット青春恋愛映画。実写日本映画復活ののろしとなり、洋画と邦画の動員が逆転するきっかけとなった作品と言っていいでしょう。僕はあまりの大ヒットぶりとベタなお涙頂戴純愛映画っぽさに「けっ」と天の邪鬼を発動させ観に行かず、ブームがすっかり過ぎ去ってからテレビだったかビデオだったかで観たら、非常によく出来ててなかなか面白かったです(笑)。行定勲監督、さすがですね。

『リンダ リンダ リンダ』
 文化祭でブルーハーツのカバーを演奏しようとする女子高生バンドを描いた山下敦弘監督の青春映画。脱退メンバーの代打を急遽頼まれる韓国人留学生をペ・ドゥナが演じています。ちょっと「ん?」となるところもあったんですが、まあまあ面白かった。ペ・ドゥナはこの頃韓国のみならず日本でも引っ張りだこの人気女優でしたね。

『さよならみどりちゃん』
 好きな男とセックスした後で恋人がいると言われ、割りきった関係と承知している女を演じながら彼のことをあきらめきれない若い女性が主人公の恋愛映画。BS-i(現BS-TBS)で放送されていた若手女優主演の1〜3話完結オムニバス恋愛ドラマシリーズ『恋する日曜日』の映画版で、女性漫画家・南Q太の人気マンガを古厩智之監督が映画化。好きな女優の星野真里の初主演映画で、絶対観に行こうと思ってたんですが地元の映画館には来ず、やむなくDVD視聴に。普通の女の子の繊細な心の揺れを見事に演じていて、やっぱりいい女優だよなあと再確認いたしました。美しいヌードも披露してくれております。



#1727 
バラージ 2018/10/28 23:07
昔観て面白かった映画D

 昔観て面白かった映画の第5回。いよいよ21世紀に入りました。この頃からビデオやDVDで観た映画が多くなるので、今までとは逆に映画館で観た映画のみ、そう特記します。

『花様年華』
 映画館で観ました。1960年代を舞台に、お互いの妻と夫が不倫関係にあることに気づいた隣人の男女が、互いの境遇を慰め合ううちに徐々に惹かれ合っていく姿を描いたウォン・カーウァイ監督による恋愛映画。主演はトニー・レオンとマギー・チャン。群像劇の多いカーウァイ作品には珍しく1対1の恋愛映画で、同監督の『欲望の翼』と設定や世界観が一部つながっています。俳優として脂が乗った年齢のトニーとマギーの成熟した演技が素晴らしいんだけど、この後数年でマギーは実質引退状態になっちゃうんだよなあ……。

『東京マリーゴールド』
 映画館で観ました。市川準監督が田中麗奈主演で林真理子の短編小説「一年ののち」を映画化。恋人と別れた女性が合コンで知り合った男に恋をし、彼の恋人が留学から帰ってくるまでの1年間限定で付き合う、その1年間を描いた恋愛映画です。田中麗奈が黄色いペンキまみれになっているポスターが印象的で、監督が『つぐみ』や『トキワ荘の青春』の人だと知って観に行った映画でした。この映画で市川監督をはっきりと意識するようになりましたね。

『ekiden[駅伝]』
 大学駅伝部の同僚で親友でもある、別々の会社に就職した2人の男。1人は不況のあおりで廃部となった駅伝部を立て直そうとし、やがて様々な仲間が集まってくるが、部の存続を賭けた大会で彼らに立ちふさがったのは名門陸上部のエースとなった親友だった。でこぼこな仲間たちが集まってくるスポーツものの王道展開に、友情やマネージャーだった女性をめぐる三角関係も交えつつ描かれるスポーツ青春映画でなかなか面白かったです。ヒロインは田中麗奈(『東京マリーゴールド』より前の映画だがビデオで後に観た)ですが、彼女よりも脇役の野波麻帆が良かった。それ以前に準主演した単発ドラマ『そして、友だち』でこの子いいなあと思ってたんで、続けざまの好印象でファンになりました。

『夢翔る人 色情男女』
 V級映画と呼ばれる香港のポルノ映画業界の内幕を描いたヒューマンコメディ映画。主演は監督役のレスリー・チャンですが、ジャッキー映画『ゴージャス』でファンになった助演のスー・チー目当てで観た映画です。V級映画専門で出発した彼女が『ゴージャス』以前に出演したデビュー4作目で、素人の大根女優がプロ意識に目覚めて本物の女優になっていく姿を見事に演じています。この映画で金像奨の最優秀新人賞と最優秀助演女優賞をダブル受賞して、スターの階段を駆け上がっていくきっかけになりました。

『異邦人たち』
 香港近郊の小さな島を様々な理由で訪れていた香港や台湾や日本の人々。彼らは島で出会い交流を持つが、やがて島が伝染病の発生地として突如香港政府により封鎖されてしまう。彼らは不安を紛らすためパーティーを開くことにするが……というスタンリー・クワン監督によるちょっと不思議な雰囲気のヒューマンドラマ映画。ストーリーよりも雰囲気重視タイプの映画でなかなか面白かったです。これもスー・チー目当てで観た映画で、この頃はとにかくスー・チー出演映画を観まくりました。スー・チーは主演の1人で、日本から大沢たかおと桃井かおりも主演しています。

『ゴーストワールド』
 社会に馴染めず大人になれない、というかならない、なりたくないハミダシ者の変人少女二人組を描いた米国の青春映画。ティーンに大人気のコミックの映画化だそうで、『キルスティン・ダンストの大統領に気をつけろ!』や『キック・アス』に通じる人物造形ですが、コメディやアクションに走らず(コメディタッチではあるものの)、もうちょっとリアルな世界を描いています。中盤すぎまではコミカルでファンキーなダメ人間讃歌に溢れる展開なんですが、終盤は予想外に暗く物悲しい結末を迎えます。結局米国社会には主人公のような社会に順応できない人間の生きる場所はないのだろうか?という暗い問いがいつまでも胸に残る映画でした。

『プライベートレッスン 青い体験』
 2人の青年の高校から大学時代の恋愛と性体験を描いた韓国の青春映画。レンタルDVDはソフトポルノコーナーにあることが多いんですが、実際には性描写の多い青春映画といった感じ(原題はそのものずばり『青春』)。ペ・ドゥナのヌード目当てで観たんですが、一言で言うと村上春樹の『風の歌を聴け』と『ノルウェイの森』をごちゃ混ぜにしたような映画。著作権的に大丈夫なのか?とも思っちゃうんですが、困ったことに結構面白いんだよな。

『ミレニアム・マンボ』
 新世紀を迎えた2001年の台北。働きもせず遊んでいる同棲中の男への愛が冷め、クラブの客のヤクザに惹かれていく若い女性の姿を通して、現代の大都会・台北に生きる若い女性の不安定な内面を描いたホウ・シャオシェン監督の青春映画。それまでどちらかと言えば素人に近い人物や台湾のローカル俳優を使うことが多かったシャオシェンが初めて国際派スターのスー・チーを起用した作品で、スー・チーにとっては母国の巨匠の作品への凱旋主演となりました。以後、2人のコンビ作は『百年恋歌』『黒衣の刺客』と続いていきます。



#1726 
バラージ 2018/10/20 22:34
あちゃー

 また文字化け。書き込んでみないと文字化けするかどうかわからないんですよね。
 『ブレイド・マスター』の原題の一文字目は「糸肅」、『悪漢探偵』の原題の最後の文字は「木當」です。



#1725 
バラージ 2018/10/20 22:20
これ、続編です。

 つい先日、中国のアクション時代劇映画『ブレイド・マスター』(原題:&#32353;春刀)の前日譚『修羅 黒衣の反逆』(原題:&#32353;春刀 修羅戦場)を観たんですが、ご覧の通り邦題が前作と全然違うものに変わってしまいました。昔の香港映画からの伝統と言いますか、中華圏の映画の邦題にはこういうことがよくあります。
 近年の映画だと『王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件』(原題:狄仁傑之通天帝國)の前日譚が『ライズ・オブ・シードラゴン 謎の鉄の爪』(原題:狄仁傑之神都龍王)とか、『画皮 あやかしの恋』(原題:画皮)の続編が『妖魔伝 レザレクション』(原題:画皮U)とか、『モンキー・マジック 孫悟空誕生』(原題:西遊記之大鬧天宮)の続編が『西遊記 孫悟空VS白骨夫人』(原題:西遊記之孫悟空三打白骨精)とか、邦題だけ聞いたら続編や前日譚だとは全然わかりません。まあ『ライズ・オブ・シードラゴン』や『西遊記 孫悟空VS白骨夫人』はキャスティングが前作からかなり変わってるし、『妖魔伝』はキャスティングこそあまり変わってないものの前作の500年後の話になり登場人物のほとんどが変わっているため、いずれも続編色が薄いことから全然別の邦題にしてしまったのかもしれませんが、それにしてもねえ。
 ちなみに中華圏ではありませんがタイ映画でも『トム・ヤム・クン!』(英語題:Tom-Yum-Goong)の続編がなぜか『マッハ!無限大』(英語題:Tom-Yum-Goong 2)という邦題になってたりします。
 香港映画の伝統と書きましたが、昔の香港映画だと『悪漢探偵』(原題:最佳拍&#27284;)のシリーズ第3作が『皇帝密使』(原題:最佳拍&#27284;女皇密令)、第4作が『スペクターX』(原題:最佳拍&#27284;之千里救差婆)なんてのがあります(第2作『悪漢探偵2』(原題:最佳拍とう大顕神通)と第5作『悪漢探偵X 最後のミッション』(原題:新最佳拍&#27284;)は後にビデオスルー)。
 また超有名どころですが、『ポリス・ストーリー 香港国際警察』(原題:警察故事)の続編が『九龍の眼 クーロンズ・アイ』(原題:警察故事続集。低価格ビデオ再発売時に『ポリス・ストーリー 九龍の眼』に改題)、第3作が『ポリス・ストーリー3』(原題:警察故事V 超級警察)、第4作が『ファイナル・プロジェクト』(原題:警察故事4之簡単任務)と、ジャッキー・チェンの映画でもこの有り様。
 さらにジョン・ウー監督の『男たちの挽歌』(原題:英雄本色)も続編こそ『男たちの挽歌U』(原題:英雄本色U)ですが、1作目の前日譚である第3作は『アゲイン 明日への誓い』(原題:英雄本色V夕陽之歌。ビデオ化・DVD化の際に『アゲイン 男たちの挽歌3』『男たちの挽歌V・アゲイン』『男たちの挽歌V アゲイン 明日への誓い』などに改題)になってしまいました。
 ま、そんなわけで観るときには注意が必要です。お気をつけください。


>最近観て面白かった映画
『29歳問題』
 2005年、もうすぐ30歳の誕生日を迎える女性が主人公の香港映画。仕事は出世し長年付き合っている恋人もいて公私ともに順調な日々だったが、人生の曲がり角で徐々に全てが上手くいかなくなる。マンションを追い出され、代わりに住み始めた部屋で見つけた前の住人の日記を読むと、彼女は同い年で同じ誕生日の女性だった。主人公は日記を読み進めるうちに何事にも明るく楽天的なその女性に惹かれていく……。男にはなかなか気づけないアラサー女性あるあるが描かれるとともに、90年代香港ノスタルジー映画でもあって、なんとも懐かしかったですね。

『累 ‐かさね‐』
 抜群の美貌だが大根役者の舞台女優ニナと、類希な演技力を持つが顔に大きな傷があり、人目を避けるように生きてきた女性・累(かさね)が主人公。オスカー・ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』とかパーマンのコピーロボットみたいな分身譚の一種で、一人二役であり二人一役でもある土屋太鳳と芳根京子の鬼気迫る迫真の演技でぐいぐいと惹き付けていきます。特にクライマックスで土屋太鳳が得意の身体能力を駆使して演じるワイルドの『サロメ』が圧巻。やっぱり監督もしくは原作者はワイルドが念頭にあったんでしょう(あと前半ではチェーホフの『かもめ』も2人ともが演じていた)。

『食べる女』
 「食」と「愛」と「セックス」をテーマに8人の女たちの日常を描いた群像劇映画。主演が小泉今日子、沢尻エリカ、前田敦子、広瀬アリス、山田優、壇蜜、シャーロット・ケイト・フォックス、鈴木京香という超豪華女優陣。冒頭から小泉・鈴木・沢尻・前田が一堂に会する食事シーンで、洟があって演技も上手い主演クラスばかり4人が集まるその豪華さに、なんて贅沢なんだともうその時点でお腹いっぱい。そこから誰かが誰かとつながっている女たちの群像劇がオムニバス的に描かれていきます。とにかく出てくる料理がどれも美味そうで、観てて美味い飯が食いたくなる映画。女優たちがいずれも素晴らしかったです。

『純平、考え直せ』
 組から鉄砲玉になるよう命令された若いチンピラの純平が主人公の青春映画。野村周平演じる純平に惹かれて、嫌々勤めていた悪徳金融会社を飛び出し彼についていくOLを演じているのがグラビアアイドルとして売れっ子の柳ゆり菜で、その2人のダブル主演。でもってその柳ゆり菜がヌードになってると聞いて、半分それ目当てで観に行った映画です。そんな不純な動機で観た映画でしたが、予想外に映画自体もなかなか面白かった。ヤクザ映画はほとんど観ない僕ですが、この映画はチンピラ青春映画としてなかなかよくできていて、それにSNSを絡めているのが新機軸でしょうか。野村周平と柳ゆり菜も好演でした。



#1724 
バラージ 2018/09/21 23:18
猿の惑星

 僕は小学生か中学生のころに民放テレビの吹替放送で観たんで、ほぼ何も知らない状態だったためラストシーンは本当に衝撃でした。
 人民裁判などのシーンは中世の異端審問ではなく、1950年代の赤狩りをモデルにしています。脚本を最終的にリライトしたマイケル・ウィルソンは赤狩りの犠牲者の一人で、その体験を基にしているとのこと。『猿の惑星』以前に同じピエール・ブール原作の『戦場にかける橋』で脚本を書いたときには、同様に赤狩りの標的となったカール・フォアマンともどもノンクレジットになったそうです(後にクレジットは復活)。核戦争も含めた冷戦ネタを最初に盛り込んだのは最初に脚本を書いたロッド・サーリングで、ブールの原作(未読)にはそういう要素はないんだとか。
 僕はその後、『続 猿の惑星』『新 猿の惑星』もやはり民放テレビの吹替放送で観たんですが、『続〜』は全くの駄作、『新〜』はまあまあ面白かったです。『猿の惑星 征服』『最後の猿の惑星』や新シリーズは未見。



#1723 
つね 2018/09/17 17:54
猿の惑星

映画史に残る衝撃のラストと呼ばれる作品ですが、あまりにも有名であらすじの概要も知っていて、最近の新シリーズの「創世記」も見ていたので何となく敬遠してました。いざ見てみると古き良き映画という雰囲気もありますが、展開に飽きがこないうまい構成でした。今さらネタバレを気にする映画でもないと思うので、ネタバレ気にせずに、ちょっと感想を。

冒頭、4人の宇宙飛行士のうち一人は美人さんで、「やっぱヒロインは必要だよな」と思ってたら次のシーンでは干からびてました。2分間寝てるだけの出演・・・。この映画のヒロインは人間奴隷を挙げる人も多いと思いますが、私は猿の女性学者ですね。
しかし、猿が英語を読み書きしている時点で、少しは現在地がどこか疑ってもいいのでは?
人間が動物扱いされるのはガリバー旅行記を彷彿とさせますが、まあこれはたまたま似た絵面になってしまったのであって影響を受けたわけではないのでしょうね。
宗教裁判や科学との論争は、中世の異端審問そのもの。猿も人間の歴史をなぞってます。
衝撃のラストは、実は私がイメージしていたのとは少し違ってました。デイ・アフター・トゥモローに似たような場面があるから混同したかもしれません。デイ・アフター・トゥモローがオマージュしたのかも。

しかし、こうした超有名な作品になると、あらかじめあらすじなど耳に入ってしまいますから、少し損した気分。当時の鑑賞者が羨ましい。



#1722 
バラージ 2018/09/15 00:15
昔観て面白かった映画C

 昔観て面白かった映画第4回。今回は90年代に観た映画の後編です。

『エドワード・ヤンの恋愛時代』
 90年代当時の高度経済成長下の台北を舞台に、裕福なエリート階級に属しながら心に空虚感を抱える若者たちがやがて人生の転機を迎えるまでの3日間を描いた、エドワード・ヤン監督による青春群像劇の傑作。ヤン監督の映画で初めて観た作品で、下手をしたら当時日本で流行っていた軽いトレンディドラマみたいになりそうな題材を、濃密なそれでいて決して重くない爽やかな映画に仕上げています。都会派でありながらウォン・カーウァイとはまた違ったヤンの作風と、それまであまり観たことのなかった台湾の都会の風景がとても新鮮でした。

『ひとりぼっちの狩人たち』
 ビデオで観ました。1984年に実際に起こった3人の若者たちによる強盗殺人事件をモデルに、舞台を90年代に置き換えて描いたフランスの社会派ドラマ映画。深い考えもなく、自らの欲望を満たすために強盗殺人を繰り返す、あまりにモラルの欠如した若者たちの姿を淡々と描いていて、まあまあ面白かったです。ビデオパッケージは表裏両面なんですが、片面が劇中で一瞬だけ遠景で映る主演のマリー・ジランの着替えシーンのヌードを引き伸ばし、パンツに拳銃を差し込んだように合成したインチキ写真になってたのが脱力。DVD化はされていません。

『上海ルージュ』
 チャン・イーモウ監督が、1930年代の上海を舞台にギャングのボスの情婦であるクラブの歌姫がたどる悲劇的な運命を描いたドラマ映画。イーモウお得意の赤を基調とした鮮烈な色彩感覚が印象的な映画です。主演はこれまたお馴染みのイーモウが発掘したコン・リーですが、2人はこれを最後にプライベート関係を終わらせたため、以後しばらくいっしょに仕事をすることはありませんでした。

『イングリッシュ・ペイシェント』
 第二次世界大戦前後のヨーロッパと北アフリカを舞台とした恋愛映画。撃墜された飛行機から救出されたものの全身火傷で記憶を失い、「イギリス人の患者」と呼ばれる男が、看護婦に献身的に看病されるうちに徐々に記憶を取り戻し、そこに至った自らの壮大な恋愛劇を語り出すという物語。アカデミー賞を何部門も受賞した映画ですが、確かにとてもいい映画でしたね。

『いさなのうみ』
 WOWOWが製作した「J・MOVIE・WARS」という企画シリーズの1本。地元には来なかったのでビデオで観ました。DVD化はされていません。高知県室戸を舞台として三角関係の恋愛に過疎・捕鯨・生態系破壊などの社会的要素を絡めたファンタジックな青春映画。サブヒロインの遠藤久美子の初出演映画で、切なくも爽やかな余韻を残す佳作です。

『ラヴソング』
 ピーター・チャン監督が、中国大陸から香港に渡った男女の出会い、別れ、再会という10年にわたる恋愛をレオン・ライとマギー・チャン主演で描いた恋愛映画。中国の人々に今も愛されるテレサ・テンの数々の曲を背景に、香港とニューヨークを舞台とするしっとりとした大人のラブストーリーが描かれていきます。レオンとマギーを初めとする俳優陣も好演で、特に90年代香港を代表する女優だったマギーの演技が素晴らしい。

『接続 ザ・コンタクト』
 確かNHK教育のアジア映画劇場で観ました。劇場未公開でビデオスルーされましたが、DVD化はされていません。パソコン通信を題材とした韓国の恋愛映画で、同じような題材の日本映画『(ハル)』や米国映画『ユー・ガット・メール』(未見)と同時期に作られました。インターネットが急速に普及していった時代ですね。観たのは本当にたまたまだったんですが、なかなか面白い映画だったんで再放送(もしくはBSだったかも)された時に頭からきちんと観直しました。『八月のクリスマス』『シュリ』のハン・ソッキュがこの映画でも好演。アジア映画劇場は90年代に月1くらいのペースでやってましたが、公開もソフト化もされない珍しいアジア映画をたくさん放送してましたね。



#1721 
バラージ 2018/09/06 15:31
昔観て面白かった映画B

 昔観て面白かった映画第3回。今回は大学卒業後、90年代に観た映画の前編です。

『裸のランチ』
 ビデオで観ました。ウィリアム・バロウズの小説の映画化ですが、原作は筋らしい筋がなく映像化不可能と言われた難解な作品のため、バロウズの半生や他の作品のエピソードを織り込み、ほぼデヴィッド・クローネンバーグ監督のオリジナル作品になってるとのこと。悪夢的イマジネーションの連続といった感じで、まあまあ面白かったです。原作小説は買ってあるんですが、未だに読んでません。

『卒業旅行 ニホンから来ました』
 ビデオで観ました。東南アジアの架空の国を舞台として、卒業旅行に来た能天気な大学生が怪しげな日本人ブローカーによって歌手デビューさせられ、外タレとして大ブレイクしてしまうという青春コメディ映画。『僕らはみんな生きている』(未見)に続く一色伸幸脚本の東南アジアを舞台としたコメディ映画で、監督は金子修介。面白い映画でしたが、裏側ではクランクイン直前にヒロイン役の松雪泰子が恋愛騒動で降板して代役として鶴田真由が抜擢されたり(好演)、主演の織田裕二が撮影現場で金子監督らスタッフと対立するなど大変だったようです。後者の理由のためか未だにDVD化されていません。

『夏の庭』
 小学生三人組と偏屈な老人の交流を描いた相米慎二監督のヒューマンドラマ映画。人間の生と死が重要なテーマの1つとなっており、老人の死を描いた終盤はなかなかに感動的でした。老人役の三國連太郎が好演しています。

『熱帯楽園倶楽部』
 一色伸幸脚本による東南アジアを舞台としたコメディ映画の第3作。監督は『僕ら〜』と同じく滝田洋二郎。タイのバンコクに仕事で来た女性ツアーコンダクターが現地在住の日本人詐欺師2人に見事に騙される。仕事のゴタゴタがイヤになった彼女は詐欺師たちに無理やり仲間入りし、ひとときの楽しい時間を過ごすが……。主演の清水美砂(現・清水美沙)、萩原聖人、風間杜夫のアンサンブルが素晴らしく、最後に訪れる“夢の時間の終わり”の切なさがなんとも良かったです。

『裸足のマリー』
 ビデオで観ました。妊娠した相手の男に拒否され家出したベルギーの高校生の少女が、ふとしたことから出会った父親が死んだ男の子を、母親のいるポルトガルまで送り届けるためにいっしょに旅をするベルギー・フランス・ポルトガル合作のロードムービー。ベルギーの若手人気女優だったマリー・ジランの出演2作目にして初主演の辛口青春映画で、なかなか面白かったです。子供とお風呂に入るシーンで美しいヌードあり。DVD化はされていません。

『四姉妹物語』
 当時グリコポッキーのCMに四姉妹役で出演していた清水美砂、牧瀬里穂、中江有里、今村雅美がそのままのキャラクターで主演したミステリーコメディ映画。原作は赤川次郎の『三姉妹探偵団』。企画もののわりにはよくできてて、主演女優陣の好演も相まってなかなか面白かったです。DVD化はされていません。

『あした』
 『ふたり』(未見)に続く大林宣彦監督の新・尾道三部作の第2作。沈没した客船の犠牲者たちから親しかった人たちに港で待つとのメッセージが送られ、港に集まった人々の前に沈没したはずの客船が現れて犠牲者たちが降りてくる。彼らは最後の別れを告げに来たのだった……というファンタジックなヒューマンドラマ群像劇。これもなかなか面白かったです。



#1720 
バラージ 2018/08/24 23:58
昔観て面白かった映画A

 昔観て面白かった映画、第2階。今回は僕が大学に入る前に公開された映画ですが、観たのはほとんどが卒業後のことになります。

『大地のうた』
 インド映画の巨匠サタジット・レイ監督のデビュー作で、オプーという少年の家族を描いたドラマ映画。以後、オプーの青年時代を描いた『大河のうた』、結婚し父親となったオプーを描く『大樹のうた』と続いていきます。3作とも大学時代に仙台でやってたサタジット・レイ映画祭で観ました。それまでに観たどの国の映画とも違う独特な作風がとても印象に残りましたね。レイはインド映画の中でも傍流のベンガル語映画の監督だそうですが、世界的に最も有名なインドの映画監督でしょう。レイの映画は他に『チャルラータ』『遠い雷鳴』(いずれもソフト化されていない)をNHKでやってたアジア映画劇場というので観ましたが、そちらも面白かったです。

『第七の封印』『野いちご』『処女の泉』
 スウェーデンの巨匠イングマール・ベルイマン監督が世界的名声を確立した中期の映画3作品。確か『処女〜』は大学のAV(オーディオビジュアル)センターとかいうところで、『第七〜』は卒業後にビデオで、『野いちご』はさらにもっと後になってからBSで観ました。いずれも幻想的世界観の中で、「神の沈黙」や「老いと死」といった重いテーマを扱いつつ、かといって難解な作風に陥らず、観終わった後にずっしりとくる不思議な印象を残す映画でした。

『勝手にしやがれ』
 フランスのヌーベルバーグを代表するジャン=リュック・ゴダール監督のデビュー作。ゴダールってなんか難解そうだな〜とずっと敬遠してたんですが、数年前に市内の映画館で本作のリバイバル上映がされることを知り、なぜか直感的に観たくなって観に行きました。そしたら全然難解なんかじゃなかった。とても面白い映画でした。ジーン・セバーグは『悲しみよこんにちは』(未見)とこの映画でその名を映画史に永久に残しましたね。

『スローなブギにしてくれ』
 子供のころの映画公開時にテレビでCMが流れてて、その時の有名な主題歌が印象に残ってる映画です。若い男女と中年男の気だるい恋愛劇という、80年代でありながら70年代的な青春映画で、映画自体はまあまあといったところ。やはりこの映画はタイトル(原作通りだけど)と主題歌ですね。浅野温子はトレンディドラマの印象が強いんですが、この頃は美少女アイドルだったんだなあ。

『ときめきに死す』
 森田芳光監督が『家族ゲーム』の次に撮った、クールでちょっとシュールなサスペンスドラマ映画。あるクールな殺し屋、組織から殺し屋の世話を頼まれた医者、組織から2人のために送り込まれた女という3人の奇妙な共同生活と、殺し屋の任務が失敗に終わるまでを描いています。沢田研二、杉浦直樹、樋口可南子のアンサンブルが素晴らしく、殺し屋の凄絶なラストが衝撃。

『麻雀放浪記』
 イラストレーターの和田誠が初監督し、麻雀という博打に文字通り人生を賭ける男たちを描いたドラマ映画。登場人物1人1人がキャラ立ちしてて面白かったです。ギャンブル映画だとスティーブ・マックイーン主演のポーカー映画『シンシナティ・キッド』もなかなか良かった。

『キネマの天地』
 昭和初期の松竹蒲田撮影所を舞台に、スターの座へ駆け上がっていくある新人女優とその周囲の人々の姿を通して、映画づくりに情熱を捧げる人々を描いた山田洋次監督の人情喜劇。松竹大船撮影所50周年記念のオールスター映画ですが、元旅回り一座の役者で新人女優の父親という役どころの渥美清がここでも一世一代の名演を見せています。

『マイリトルガール きらめきの夏』
 日本ではビデオスルーで、残念ながらDVD化されていません。観たのは高校時代。問題児たちを預かる施設に夏休みのボタンティア活動として奉仕にやってきた上流家庭の娘を主人公としたヒューマンドラマ映画。メアリー・スチュアート・マスターソンが主演で彼女目当てで観た映画ですが、ほろ苦いラストが印象的な映画で意外な拾い物でした。

『プリティ・イン・ピンク 恋人たちの街角』
 ジョン・ヒューズ製作、ハワード・ドイッチ監督、モリー・リングウォルド主演の、貧しい女子高生と裕福な男子高校生の身分違いの恋を周囲の友人たちも交えて描く青春映画。ヒューズとリングウォルドのコンビは80年代後半に青春映画のヒット作を連発しましたが、個人的にはヒューズ監督の『すてきな片想い』『ブレックファスト・クラブ』より、ヒューズが製作にまわりドイッチが監督したこの映画や『恋しくて』(リングウォルドは出ておらず、主演はエリック・ストルツとメアリー・スチュアート・マスターソン)のほうが好きですね。

『旅人は休まない』
 大学時代に仙台でやってたアジア映画祭で観ました。朝鮮戦争残留孤児だった妻の遺骨を故郷の北朝鮮に葬ろうとする男が放浪の中で様々な人々に出会うという韓国のイ・チャンホ監督のドラマ映画。抽象的かつ観念的な描写が多い芸術映画といった感じですが、それだけに強い印象を残すのもまた事実で、いい映画でした。残念ながらDVD化はされていません。


>チェコスロバキア映画
 チェコスロバキア映画は昔『つながれたヒバリ』を劇場公開時に、『スイート・スイート・ビレッジ』をビデオで観ました。確か『つながれたヒバリ』は本国で20年以上上映禁止になっていたのが冷戦終結に伴って上映解禁になったという映画でしたね。どっちもまあまあ面白かったような記憶がありますが、今となっては内容の記憶がほとんどありません。
 チェコ事件(プラハの春)を描いた映画は『存在の耐えられない軽さ』しか観たことがないなあ。他にチェコ事件を描いた映画にはギリシャのコスタ・ガブラス監督による『告白』というフランス・イタリア合作映画があるようですね。



#1719 
Kocmockocma 2018/08/22 07:36
チェコ事件50年

昨日はワルシャワ機構軍のチェコ軍事介入から50年ということで、”Rebelove”(反逆者たち)のDVDを鑑賞しました。2003年のチェコ映画祭での上映の数年後にユーロスペースでレイトショー上映。このときの邦題は『プラハ!』。舞台はプラハじゃないんですが。
1968年夏、学校卒業した3人娘と列車でやってきた何か訳ありな3人の若者たち、それと地元の青年たちとの恋をレトロでガーリーなポップミュージカルに仕上げました(元は舞台だそうです)。
しかし、国境を越えて戦車がプラハを目指して通り過ぎ・・・ある者は祖国を去りある者は自由を奪われある者はおそらくその後も抵抗を続け(るのが示唆される)
ミュージカル映画が好きなわけではないのですが、これは大好きな作品でサウンドトラックは通勤中によく聴いたりもしているのですが、改めて見ると高校生(にはちょっと見えない)たちの恋愛に加えてヒロイン父の大人の恋も素敵。初見のときから思うけど、アメリカへの憧れが純粋すぎてなんか辛い。

68年のあの事件を扱ったチェコ映画は「心地のいい部屋」などもすごくよくて、いけてる若者といけてない子を対比しつつ胸苦しい回顧ものになっています。

チェコ事件の映画ではたぶん「存在の耐えられない軽さ」が知られているのですが、チェコ人たちは「ハイドリヒを撃て!」などでも他国人によって描かれた自国史の作品は敢えて見ない、という態度をとるそうですので、チェコ人たちの評価を聞いてみたいものです。

”Rebelove”(レベロヴェ)はスタッフ・キャストにはスロヴァキア(特にブラチスラヴァ)出身が割と多いようです。




#1718 
バラージ 2018/08/13 19:35
トム・クルーズのスパイ大作戦!

 『ミッション・インポッシブル フォールアウト』を観ました。
 いやぁ、面白かった。シリーズ最高傑作なんではないでしょうか。とにかく脚本が素晴らしい。何度もあるどんでん返しにいちいち唸らされたし、ストーリーとアクションの配分や絡めかたも秀逸。『3』『ゴースト・プロトコル』『ローグ・ネイション』の要素を散りばめながら、それでいて無理に続編にしたような不自然なところが全くない。アクション映画でここまで脚本がよくできているものも珍しいんじゃないかな。
 アクションもトム・クルーズがますます80〜90年代のジャッキー・チェン化して、体を張っためちゃくちゃなスタントをやってます。もちろんハリウッドだからCGやワイヤーの助けも借りてるでしょうが、カー・チェイスにヘリコプター・チェイスともうむちゃくちゃってくらいのアクションつるべ打ち。肉体バトルも他の出演俳優たちも含めててんこ盛りで、大満足の出来でした。
 『3』『ゴースト・プロトコル』『ローグ・ネイション』は観てたほうがいいでしょうね。観てなくても問題はありませんが、観てたほうがより楽しめます(1&2は観てなくても問題なし)。そのあたりの登場人物が再登場してるし、監督もシリーズで初めて前作からの続投となっておりその実力は証明済み。久々に大満足のアクション映画でした。

 ちなみに冒頭でトム演じるイーサン・ハントが交わす合言葉が、平昌五輪で羽生結弦選手が金メダルを取った時に中国の実況アナだか解説者だかが引用して一部で有名になった漢詩の一節で、偶然なんでしょうが「おぉ」と思っちゃいました(笑)。


>再見映画
 地元では吹替版しか公開されなかった『カンフー・ヨガ』のDVDが出たんで、レンタルして字幕で観直しました。しかしこの映画に関しては字幕で観ても印象はあまり変わらず。やっぱりCGが……。カーアクションでもCG使ってるんだもんなあ。しかもクラッシュした車が現実にはあり得ないような吹っ飛び方しててCGなのが丸わかりです。



#1717 
バラージ 2018/07/30 16:22
現実とファンタジーの境い目が曖昧な世界

 『猫は抱くもの』という映画を観ました。犬童一心監督、沢尻エリカ主演で、犬童監督の映画ならどんなに疲れてようと観ねばと思っていたものです。

 歌手を夢見たがアイドルとして売れず挫折して、全てが嫌になり東京から逃げ出して小さな田舎町で過去を隠し小さなスーパーの店員として働いているアラサー女性・沙織。思っていた通りの生き方ができず、そんな自分も好きになれない彼女が唯一心を開くのがスーパーの倉庫でひそかに飼っている雄猫の良男。自分を人間で沙織の恋人だと思い込む良男、沙織が出会う売れない画家のゴッホ、ゴッホを慕う飼い猫キイロなど様々な人と猫の姿を通して、人生の袋小路に入ったアラサー女性を描いていくヒューマンドラマ映画です。
 本作はなんと映画の7〜8割が舞台形式で描かれるという野心的かつ実験的な作品ですが、これが非常に効果的。舞台出身の監督が映画に舞台的表現を持ち込むと違和感を感じることが多いんですが、犬童監督はあくまで映画監督のためかそのような違和感を全く感じさせません(そういえば犬童監督のAKB48『恋するフォーチュンクッキー』特典映像ドラマ『ADS77』も舞台形式で、これまた面白かった)。そして猫たちを全て人間の役者が演じているのも極めて舞台的表現で、それが見事に成功しています。
 主演の沢尻さんも、夢を見失い、人に裏切られ、傷つき、大好きな妄想の中に逃げ込んでいくアラサー女性を見事に演じており、ゴッホ役の峯田和伸さんもこれまた好演で、2人のクライマックス・シーンが素晴らしい。そして良男役の吉沢亮さんや、キイロ役のコムアイさんら、猫を演じる俳優陣も見事な猫っぷり。そういえばコムアイさんは連ドラ『わにとかげぎす』でも好演してました。
 いやぁ、面白かった。こういう現実とファンタジーの境い目が曖昧な物語を描かせたら、犬童監督の右に出る者はいないですね。実際、観終わった後もどこまでが現実でどこからが非現実(妄想・ファンタジー)だったのかよくわからなかったりします。思えば犬童監督の『グーグーだって猫である』(映画版&ドラマ版)も『MIRACLE デビクロくんの恋と魔法』もそういう作品でした(そういえば『MIRACLE』同様に一部アニメーション・シーンもあった)。
 今年ここまで観た中で文句なしにナンバー1の映画です。すげえ良かった。



#1716 
バラージ 2018/07/22 16:27
昔観て面白かった映画@

 最近仕事が臨時で一時的に切り替わり忙しくてネタ切れ気味なんで、昔観て面白かった映画のうちこれまでに書き漏らしたものをいくつか書いていこうと思います。ドラマ映画・青春映画・恋愛映画に属するものが大半となります。まず今回は僕が大学時代(1990年前後)に観た映画。

『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』
 1950年代のスウェーデンの小さな港町と山間の小さな村とを舞台に、どんなつらいことがあろうと「人工衛星スプートニクに乗せられて死んだライカ犬に比べれば僕の人生は幸せだ」と考える12歳の少年の人生の日々を、少し悲しく、少しユーモラスに描いたラッセ・ハルストレム監督によるドラマ映画。母の死で主人公が移り住んだ田舎町の風変わりな人々がなんともユニークで楽しい。多分僕が初めて観たヨーロッパ映画で、それまで観ていた日本映画とも米国映画とも香港映画とも違った作風と雰囲気がなんとも心地よかったですね。

『恋恋風塵』
 1960年代、台湾の山村で育ち共に中卒で大都会・台北に出て就職した幼なじみの少年と少女の淡い恋が切ない別れに終わるまでを描いた、ホウ・シャオシェン監督の自伝的四部作(『風櫃(フンクイ)の少年』『冬冬(トントン)の夏休み』『童年往事 時の流れ』)の最終作となる青春映画。この頃のホウ監督の映画はいわゆる1シーン1ショットの長回しで、音楽はなく台詞も少ない上に俳優の話し声が小さいという静謐な印象の映画のため、観る側にある種の集中力を要求するタイプの映画でしたが、僕はハマりましたね。当時、中国のチャン・イーモウと共に中華圏映画のニューウェーブとして鮮烈な印象でした。

『仮面の中のアリア』
 引退を決意した老オペラ歌手が、彼を慕う若い女性歌手と街で拾った美声の青年という2人の弟子を育て上げることに残りの人生をかける姿を描いたベルギーのオペラ映画。主演の老オペラ歌手役は本物のオペラ歌手とのことですがなかなかの名演。劇中で歌われるオペラの数々も素晴らしく、クライマックスの弟子とライバルのオペラ対決も良かったです。

『ペレ』
 これは映画館で観逃してビデオで観ました。19世紀のデンマークを舞台にスウェーデン移民の老父と幼い息子ペレが過酷な生活環境の中で生き抜いていく姿を描いた、ビレ・アウグスト監督によるドラマ映画。よく出来てはいるものの、とにかく最初から最後までやたらと重苦しい映画で、原作が20世紀初めのプロレタリア小説(の主人公の幼年期編)と聞いてなるほどなぁと納得したのでした。

『誰かがあなたを愛してる』
 ニューヨークを舞台に、香港からやってきた女性とダウンタウンに住むちょっとヤクザだが純朴な香港男性の淡い恋を描いた香港の恋愛映画。女性監督メイベル・チャンの叙情的な持ち味が最もよく表れた佳作で、主演のチョウ・ユンファとチェリー・チェンも好演し2人の代表作となりました。ただオチはちょっとベタすぎるけど。

『霧の中の風景』
 会ったことのない父がドイツにいると母親から聞かされていたアテネの12歳の姉と5歳の弟が、まだ見ぬ父に会うため列車に乗って家出する。2人は私生児で父はいないという伯父の言葉を聞くが、それでも姉弟はドイツに向かう。様々な出来事をくぐり抜けてドイツにたどり着いた姉弟が見た光景は……。テオ・アンゲロプロス監督による寓話的なドラマ映画で、同監督の他の映画に比べればかなり観やすい作品です。アンゲロプロスの映画はラストにエンドロールもなく、「終わり」とも出ず、唐突にバッサリ終わるので、最初見たときは映写技師のミスかと思ってびっくりしたなあ。

『サラーム・ボンベイ!』
 インドの女性監督ミーラー・ナイールが、ボンベイを舞台にインドのストリート・チルドレンを描いたドラマ映画。初めて観たインド映画で、ストリート・チルドレンの過酷な運命を描いた社会派な面もあり、なかなか面白かったです。残念ながらDVD化されていません。

『紅夢』
 これは当時住んでた仙台には来なかったためビデオで観た映画。その1年後になぜか故郷の盛岡には来たのでその時に映画館で再見しました。これまたDVD化されていません。
 1920年代、ある富豪の第4夫人として嫁いだ若い女性が屋敷の中で体験する女たちの愛憎劇を描いたチャン・イーモウ監督のドラマ映画。デビュー作『紅いコーリャン』から始まったチャン・イーモウの映像美学が頂点に達したと言ってもいい作品で、主人が泊まる夫人の部屋の前に灯される巨大な赤い提灯や足の裏を叩くバチのようなマッサージ器具などイーモウお得意の創作道具が非常に印象的。
 しかしこの映画はやはりなんといっても主演のコン・リーに尽きます。『紅い〜』の時は映画自体の力に圧倒されて、彼女については主演とはいえ構成要素の1人といった印象だったんですが、次作『菊豆(チュイトウ)』では彼女の存在感が非常に強くなり、本作にいたって彼女なしのイーモウ映画は考えられないというまでになりました。「古い閉鎖的な因習や貧困や家父長制に抑圧されながらもそれに抗い、気が強く自己中心的で決して無垢な善人ではないものの、その裏に隠された弱さと同情せざるを得ない境遇を持つ女性」という難しい役柄を彼女以上に演じられる女優はそうはいないと言い切っていいでしょう。


>ソ連映画
 『アンナ・パブロワ』は子供のころにテレビで観た記憶があります。といっても頭から全部観たというわけではなかったような。テレビをつけたらたまたまやってたとかじゃなかったかな。休みの日の午前中だったような記憶があります。わりと面白かったような記憶がありますね。



#1715 
Kocmockocma 2018/07/21 07:33
ロシア・ソビエト映画祭

管理人様、とても久しぶりに書き込みます。Twitterでお名前を見かけて大変懐かしく思いました。
さて、現在京橋の国立映画アーカイブ(旧称:近代美術館フィルムセンター)で、現在ロシア・ソビエト映画祭があり、なかなかレアな作品も含め結構充実したプログラムなのでご紹介します。(別に関係者ではないのですが。)
http://www.nfaj.go.jp/exhibition/russia201806/

まずはいわゆる歴史ものだと「最後の夜」「アレクサンドル・ネフスキー」「イワン雷帝」「ホヴァンシチナ」「25日-最初の日」「ケルジェネツの戦い」「アンナ・パブロワ」「未来への伝言」「フルスタリョフ、車を」「マチルダ」

うち新作の「マチルダ」は1回しか上映がなく既に終わってしまったのですが(もう一本の新作「アンナ・カレーニナ ヴロンスキーの物語」も)今年の秋冬に一般公開があります。
ニコライ二世と愛人バレリーナのマチルダ・クシェシンスカヤの話ですが、ロシア国内では最近”殉教”したニコライ二世は聖人扱いされているので、その不倫の恋を扱ったというので上映禁止運動が起こるなどスキャンダラスに扱われました。私の先生(ロシア人女性)も「大変な騒ぎになった作品です」とおっしゃっていました。

過去にこういった特集上映があったときにはプログラムの中心だった文芸作品は今回はやや少なめですね。「復活」と「アンナ・カレーニナ ヴロンスキーの物語」くらいか?

ロシア帝国時代の作品がプログラムに入れられなかったこととか、3部作のうち2作品しかやらないとか(「マクシムの青春」「マクシムの帰還」)アニメーションプログラムがノルシュテイン作品集しかないとか1990年代の作品が薄いとか大衆娯楽作品がないじゃないか!とかどうせなら新作はもっと面白いのにしてよとかちょっと不満はありますが、とにかくレアなラインナップ。日本ではDVD化されてない作品も多いですし、お時間があれば是非ご覧になることをお薦めします。私の推しはミハルコフの「五つの夜に」とブィコフの「転校生レナ」。どちらも俳優出身の監督です。



https://kirakocma.blogspot.com/


#1714 
バラージ 2018/07/14 22:15
栄耀映画徒然草

 栄耀映画徒然草の更新、ご苦労様です。今回追加された映画で僕が観たのは、『カサブランカ』『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』の3作で、いずれも感想はあらかた書いてしまいました。なので書き漏らした小ネタをちょこっとだけ。

『ウィンストン・チャーチル』
 あの地下鉄シーン、フィクションなのはともかくとしても、乗客たちが全員一致で徹底抗戦というのは作劇的にも上手くないなあと思いました。1人くらい弱気な和平派がいてちょっと議論があった末に「やっぱり徹底抗戦だ!」となったほうが作劇としてもリアルだし、劇的なんではなかろうかと。似たようなテーマのノルウェー映画『ヒトラーに屈しなかった国王』と比べて、ストーリーや描き方が単純で深みがないように感じましたね。ゲイリー・オールドマンの特殊メイクは、20年ほど前のエディ・マーフィのコメディ映画『ナッティ・プロフェッサー クランプ教授の場合』を連想させましたが、あの映画でマーフィは特殊メイクでデブ家族の5役を1人で演じてました。

『ペンタゴン・ペーパーズ』
 原題は『The Post』ですが、米国の新聞で「Post」というと、「ワシントン・ポスト」の他に「ニューヨーク・ポスト」があります。こちらは大衆紙(というかゴシップ紙というか)で、日本でいうと東スポみたいなもんなんでしょうか。マイ・フェイバリット映画ベスト5に入る『ブライト・ライツ、ビッグ・シティ』(ジェイ・マキナニー原作、マイケル・J・フォックス主演)で主人公が「ポストを読むのは悪い癖だ」と自虐するシーンでその存在を知りました。

『アルゴ』
 僕は未見なんですが(興味がわかない)、『スノーデン』を監督したオリバー・ストーンがインタビューで「米国を肯定するような」「金銭面も含めて軍や政府の大きな協力のもとに作られていった」映画として『ブラックホーク・ダウン』『プライベート・ライアン』『パール・ハーバー』と共に本作を挙げて批判してました。ベン・アフレックやジョージ・クルーニーは比較的リベラルな映画人なんですけどねえ。それでもそうなっちゃうのか。


>『リーサル・ウェポン』シリーズ
 BSの『リーサル・ウェポン』シリーズ4日連続放送を録画したやつを全部観終わりました。最初に観た時以来(1・2はビデオで、3は映画館で、4はまたビデオで)ですが、アクション映画としてはやっぱり記憶通りに面白いとともに、1〜3(1987年、89年、92年)は今となってはいろんなところにあの頃の時代性が感じられてなんとも懐かしかったですね。特に1&2は映画の作りや雰囲気が完全に80年代なんだよなあ。主人公マーティン・リッグス(メル・ギブソン)がベトナム帰りという設定なのは以前にも書きましたが、今回観直したら相棒のロジャー・マートフもベトナム帰りで、1は敵もベトナム戦争で汚い仕事に手を染めたやつらという設定でした。3には若い黒人ギャングもちらっと出てきたりして、これも当時スパイク・リーに続いて出てきた黒人監督のジョン・シングルトン(『ボーイズン・ザ・フッド』)やマリオ・ヴァン・ピープルズ(『ニュー・ジャック・シティ』)なんかが映画で描いてたっけ。4もやはり面白かったんですが、1998年の作品だからか1〜3のような懐かしい気持ちにはならなかったし、時代性もあんまり感じなかったな。



#1713 
バラージ 2018/06/29 21:45
映画いろいろ

 去年、録画やDVDやビデオで観て面白かったんだけど、なんとなく感想を書きそびれていた映画の感想をまとめて。
 いずれも1980年代から90年代の作品です。

『俺っちのウエディング』
 根岸吉太郎監督によるミステリー・タッチの青春映画。結婚式場で花嫁の1人に化けた女に花嫁が刺され、幸い軽傷だったものの犯人は直後に自爆して死亡。身元がわからず、事件直後に式に遅刻してきた花婿の女性関係に疑いがかかる。花婿は警察や花嫁にも話せなかった過去の女を探すが……。1983年の作品で、青春の日々の陰りが軽妙なタッチでつづられていくのが心地よい。いかにも80年代の映画って感じで、同監督の『永遠の1/2(にぶんのいち)』や大森一樹監督の『風の歌を聴け』に似た雰囲気。映画の中の80年代の風景や風俗もなんとも懐かしかったですね。若き日の時任三郎・宮崎美子・美保純らも好演。

『ときめきサイエンス』
 青春映画の巨匠ジョン・ヒューズ監督による1985年の青春コメディ。上記は劇場公開邦題およびDVD邦題で、ビデオ邦題は確か『エレクトリック・ビーナス ときめきサイエンス』でした。モテないボンクラ高校生2人組がコンピューターで理想の美女のデータを作ったら、落雷のショックでなぜかその美女が実体化。しかし美女は2人がモテる男になるようレクチャーを始め……。もちろん最後は2人とも彼女ができてハッピーエンドという、いかにもバブル前夜の80年代的お気楽能天気コメディって感じですが、気楽に観れてまあまあ面白かったです。あの頃の米国映画はこういうのがいっぱいありましたね。邦題にも時代を感じます。

『北京オペラ・ブルース』
 80年代香港ニューウェーブの1人ツイ・ハークが監督した1986年の映画。辛亥革命直後の袁世凱政権時代、袁派の軍閥の将軍の娘でありながら袁独裁に反対する地下活動に身を投じた女性と、混乱の中で宝石を猫ババしようとした貧しい楽士の女、女人禁制の京劇(=北京オペラ)に出ることを夢見る一座の座長の娘の3人が、ひょんなことから知り合い友情を育むうちに、袁派の機密文書を盗み出すという将軍の娘の計画に他の2人も巻き込まれていく。肩がこらずに楽しめる娯楽活劇でなかなか面白かったです。ブリジット・リン、チェリー・チャン、サリー・イップの3人の主演女優がいずれも好演してますが、特に革命に身を投じる男装の麗人役のブリジットが素晴らしい。

『フルムーン・イン・ニューヨーク』
 DVD化されておらず、中古ビデオを購入して観た映画。ニューヨークに住む香港・台湾・中国出身の3人の女性それぞれの生活を描いた1989年の香港映画で、それぞれ香港・台湾・中国の女優であるマギー・チャン、シルビア・チャン、スーチン・ガオワーが主演。恋愛や夢や仕事や夫との関係に悩み、異郷の地で孤独に苛まれる彼女たちが、ふとしたことから出会い、友情を育み、傷ついても前を向いて生きていこうとする姿を描いています。アート系のスタンリー・クワン監督による落ち着いた作品で、なかなか面白かったですね。

『恋愛の法則』
 これもDVD化されておらず、中古ビデオで観た映画。米国アリゾナ州の小都市に住む20代後半の4人の男女の恋愛模様を描いた大人の青春映画で、ブリジット・フォンダとの他州への転居を明後日に控えながら勝手に旅に出てしまう恋人のティム・ロス、その元同棲相手で今はフォンダの親友フィービー・ケイツ、新たな住人のために内壁の塗り替えに来てフォンダに惹かれるペンキ屋エリック・ストルツの4人が主人公。ストルツが製作も兼ねた1993年の低予算インディペンデント系映画で、青年たちの人生の曲がり角を静かに描いていく佳作です。落ち着いた小品で、いい映画でした。それにしてもこの頃のストルツは本当にかっこいい。そしてケイツは美しい。個人的にはこの2人を見るだけでも価値あり。

『世界中がアイ・ラヴ・ユー』
 ウディ・アレン監督&出演の1996年のミュージカル・ラブコメディで、原題は“Everyone Says I Love You”。再婚同士の弁護士と慈善活動家の夫妻、妻の前夫であるパリ在住の小説家(これがアレン)、妻と前夫の連れ子、夫と前妻の連れ子、夫妻の子供たち、それぞれが繰り広げる様々な恋愛模様をニューヨーク・パリ・ベネチアを舞台に豪華キャストで描いています。アレン一流の皮肉とウィットとブラックユーモアをちりばめたシニカルな笑いに、こいつらどいつもこいつもほんとしょうがねえな〜、アホだな〜、懲りねえな〜などと楽しんでたら、最後は意外にも見事ロマンチック・コメディに着地。胸にジーンと染みるいいラストでした。いかにもウディ・アレンの映画という感じで面白かった。有名俳優がこぞってノーギャラでもいいからアレンの映画に出たいというのもわかる気がします。


>『カサブランカ』
 昔(といっても21世紀に入ってからだったような気がする)テレビかビデオで観ました。どっちで観たかはもう忘れちゃったな。あの有名な「君の瞳に乾杯」とか「昨夜はどこにいたの?」「そんな昔のことは忘れた」「今夜会える?」「そんな先のことはわからない」なんていう台詞はどこで出てくるんだろう?と思ってたら、意外にさらっと言ってて決して浮いた感じになってませんでしたね。時代的に一種の戦意高揚映画でもあるんでしょうが(『誰が為に鐘は鳴る』なんかもそうでしょう)、今観てもほとんど気にならないあたりが時代を超える名作の条件なんだろうな。「今となっては歴史映画」だとチャップリンの『独裁者』なんかもそうですね。ただしこちらは米国参戦前なんで戦意高揚映画ではなく、むしろ製作の妨害すらあったと言われてますが。
 ちなみに有名な『誰が為に〜』や『風と共に去りぬ』『E.T.』『未知との遭遇』なんかは僕は未だに観てなかったりします。

>『皇帝のいない八月』
>>「ブルートレイン「さくら」を乗っ取るクーデター計画、ってのがそもそも無理があるんですが」
 そこも突っ込みどころの1つでしたね。クーデターを起こすために列車で九州から東京に向かうくらいなら、最初から東京でクーデター起こせよっていう(笑)。
>>「クライマックスの対決で山本圭が渡瀬恒彦に完全に負けちゃってると」
 うーん、そこは僕は山本監督とは逆に感じちゃいました。リアリティーに欠けるメイン登場人物の中で唯一比較的(あくまで比較的ですが)リアリティーがあったのが山本圭の役で、それに比べて渡瀬恒彦が演じた人物にはほとんど説得力を感じなかったんですよね。個人的には、ちょい役で出てきたイチャついてる若いカップルとか、特別出演っぽい渥美清が演じた人物みたいな、事件に巻き込まれた一般市民をもうちょっとクローズアップするべきだったんじゃないかなあと思います。

>『ゴッド・オブ・ウォー』
 一般の劇場公開ではなく、日本公開が見送られた外国映画を複数の映画館で上映する「未体験ゾーンの映画たち2018」という映画祭での上映のようです。



#1712 
2018/06/25 22:49
最近は古い映画を続けて見てます

 数年前に録画だめして、そろそろ見ておかないと、と続けて古い映画を見てます。「栄耀映画徒然草」に近日中に書きますが、ここでも簡単に。

「カサブランカ」
あまりにも有名で見る前からだいたい話は知っていた、という作品。製作年代は第二次大戦中、それもフランスがドイツ占領下にあった時期で、劇中でもドイツはもちろんヴィシー政府を批判するようなシーンがあります。今見ると「歴史映画」なんですが公開当時は「現実」だったわけですね。

「炎の人ゴッホ」
こちらは1950年代。カーク=ダグラスがゴッホを熱演してます。ゴーギャンをアンソニー=クイン。感想としては「ゴッホみたいのが近くにいると困っちゃうだろうなぁ」(汗)
黒澤明「夢」でマーティン=スコセッシがゴッホを演じてたのを思い出します(英語で話してるって点ではかーぐ=ダグラスと同じ)。

「ジュリアス・シーザー」
1953年のマーロン=ブランド主演版。ブランドはアントニウス役で、あくまでシェークスピアの戯曲の映画化なのでタイトルになっていながらシーザー(カエサル)は主役ではありません。トップタイトルはブランドなんですが、この映画はジェームズ=メイスンのブルートゥスの方が印象的です。後年のチャールトン=ヘストンがアントニウス役だったものはすでに見てますが、同じ原作でもだいぶ印象が違いますね。


>バラージさん
「皇帝のいない八月」、僕は結構好きなんですが、いわゆる「カルト映画」の位置にいるんでしょうね。ブルートレイン「さくら」を乗っ取るクーデター計画、ってのがそもそも無理があるんですがそれは原作のキモなんでどうしようもない。内閣調査室の描写については山本薩夫監督も自伝のなかで「想像で埋めるしかなかった」としてあまりうまくいってないニュアンスであ書いてました。あと、クライマックスの対決で山本圭が渡瀬恒彦に完全に負けちゃってると。まぁ山本映画は悪役のほうがなぜか輝いてしまうというクセがあるのですが。

 この映画については僕は「鉄道映画」の一種、あとは自衛隊クーデターものとして前半のサスペンスが好きなんですよね。鉄道映画サスペンスということでは「新幹線大爆破」と双璧、かもしれません(笑)。どっちにも山本圭がいるという。

>ひろさわさん
 「戦神」、劇場公開もちゃんとやったんですね。僕はネット上で中国語版のまま見ちゃいましたが(史劇的伝言板参照)。日本語字幕版も見たいんでDVDは買うでしょうね。
 序盤で出てくる王直の息子、というのは養子の王ゴウ(この掲示板では使えない字)、別名を毛烈・毛海峰という人ですね。他にも僕の専門分野では「おなじみ」のキャラたちがぞろぞろ出て来て嬉しかった。ただ肝心の王直が死んでからの話なんですよねぇ。
 「王直がハメられた」については、結果的にそうなってるのは事実なんですけど、劇中に登場する胡宗憲は最初かあ応用をハメる気はなかったんだと思ってます。胡宗憲と王直の一筋縄でいかない関係について映画化ドラマになることはあるのかなぁ。



#1711 
ひろさわ 2018/06/23 00:58
ゴッド・オブ・ウォー

映画館で観てきました。
これ、徹夜城さんが好きなんじゃないか、と思いつつ。
1557年の話ですが、最初にちゃんと「倭寇に漢民族が入っている」と説明してました(実在の人物かどうかわからないですが、明王朝にハメられた王直(?)の息子が倭寇に入っている)。
考証がおかしいところもあったりするのですが(その当時に松浦”藩”は無いとか)、
チャンバラとカンフーが素晴らしく、戦乱にも関わらず、敵味方ともに少しづつ成長し、見終わった後にさわやかな気分になるという・・・
中央というものが辺境を作り、辺境は反逆し、中央は辺境の挑戦を受ける、と考えると、
わりかし普遍的なお膳立てかもしれません。

https://blog.goo.ne.jp/hirosawa_s


#1710 
バラージ 2018/06/09 23:13
映画いろいろ

 録画した『ダイ・ハード4.0』『ダイ・ハード ラスト・デイ』を観たのでその感想を。

 『4.0』は相変わらず主人公のキャラクターが第1作と違いすぎるのがなあ。前にも書いた通り『3』あたりからブルース・ウィリスの出世に合わせたかのような主人公のスーパーヒーロー化がどうにも……。全米の危機とか話も大きくなりすぎでしょう。それと『シチズンフォー』を観ちゃった後だとサイバーテロの描写がどうにもこうにも嘘くさい。そもそも金が目的のサイバー犯罪ならこっそりやったほうがいいわけで、あんな派手で目立つ大事件を起こす必要はないはず(もっともそれだとウィリスの出番がなくなっちゃうけど・笑)。それでも『3』に比べればまあまあ面白かった。あと、この映画にもジャッキーテイストというか香港アクションテイストがちょっとだけあって、近年のハリウッド・アクション映画におけるジャッキーや香港アクションの影響力の大きさが改めて感慨深かったですね。

 『ラスト・デイ』はほぼ全編ロシアが舞台で、ロシアの閣僚と政治犯の抗争とか実はCIAだった息子の極秘任務とか、これまたやたら大きな話なんですが、『3』や『4.0』よりは面白かったです。いろいろ突っ込みどころはあるんですが(大事件なのにCIA本部やロシア警察がほとんど出てこないとか)、観てる間はあまり気にならないんですよね。100分未満とコンパクトにまとめた分ジェットコースター的で考える間がなかったのかも(『4.0』は2時間以上あった)。ただ(ちょいネタバレですが)さすがにチェルノブイリの放射能はあんな簡単に無力化しねえだろ、とは思いました。あと「ラスト・デイ」とあるのにラストっぽさが全然ないと思ったら、勝手な邦題で原題にはそんな言葉はなし。『6』を作るという噂もあるようです。


>その他に観た映画
『皇帝のいない八月』
 自衛隊の一部が軍事クーデターを起こすという小林久三の社会派推理小説を山本薩夫監督が映画化した1978年の映画。タイトルのかっこよさとテーマの面白さに惹かれて昔から観たかったんですが、実際に観てみたら今の時代ではいろんな意味で古いと言わざるを得なかったです。
 当時と今では社会状況も風俗もあまりにも違うし、三島由紀夫の切腹とか金大中事件とかロッキード事件とかから数年しか経ってない映画製作当時ならひょっとしたらリアルだったのかもしれないけど、80年代以降をリアルタイムに経験してる身からするとリアリティーがまるで感じられません。寝台列車やコンピューターが今観るといかにも古くさい(ウルトラシリーズや東宝特撮映画みたいなコンピューター)のは仕方がないとしても、登場人物が類型的というかやたら主義主張の激しいやつか権力者や黒幕みたいな濃いやつばっかりでノンポリ市民(死語ですな)がほとんど出てこないのは、シラケ世代と言われた70年代当時の世相を考えても違和感を禁じ得ません。プロットやストーリー展開にも粗が目立ち、クーデター側や権力側の行動も「いくらなんでもそこまでしねーだろ」というリアリティーに欠ける描写が多い(山本監督お得意の戦前戦中映画のイメージに引っ張られたのかも)。
 僕がこの映画を知った80年代末か90年代初めあたりならまた違う感想だったかもしれませんが、今となっては70年代後半のif映画として観るしかないでしょう。でも今さらそんなの観てもなあ。すぐ古くなるのがif作品の欠点です。



#1709 
バラージ 2018/05/20 10:47
観るのは俺らだ

 僕もジャッキー映画を別にすれば、21世紀になってからはアクション映画を観なくなっちゃってましたね。全て20世紀中に作られた『リーサル・ウェポン』シリーズこそ全部観てるものの、『ダイ・ハード』は3まで、『ターミネーター』と『ミッション・インポッシブル』は2までしか観てませんでした。しかし2〜3年前に久々に観た『ミッション〜』の5作目『〜ローグ・ネイション』がすごく面白くて、それでこれまで観てなかったのも機会があったら観ちゃおうと思いまして、ちょうどBSやWOWOWなどで放送した時に録画して『ミッション〜』と『ターミネーター』の3以降も全部観ちゃいました。『ダイ・ハード』の4以降も録画したのでそのうち観ようと思います。
 ちなみに『リーサル〜』シリーズも来月にNHK-BSで4作全て放送されます。最初に観た頃以来観てないんで、また観てみようかな。『リーサル・ウェポン5』はリチャード・ドナー監督、メル・ギブソンとダニー・グローヴァー主演で製作準備中というニュースでしたが、まあ検討段階でしょうし実現するかは不明。

 007に関しては、僕は昔の以外はあまり観てないんです。子供の頃に民放の吹替で観たものばかりでして、当然ながら観た順番もバラバラ。90年代以降のはほとんど観てなくて、映画館で観たのも『スカイフォール』だけ。友人には全部観てる007の大ファンがいるんですけどね。以下に作品ごとのミニ感想を。

『ドクター・ノオ』……僕がテレビで観た頃は邦題がまだ『007は殺しの番号』でした。すでに他の作品をいくつか観ていたので、この第1作はいまいちに感じた記憶があります。
『ロシアより愛をこめて』……これはわりと面白かったような記憶がありますが、中身は今となってはさっぱり覚えてません。
『ゴールドフィンガー』……これは一般的評判通り面白かった作品。でも覚えてるのはあの有名な主題歌と、全身に金粉を塗られてベッドの上で死んでる女性だけ(笑)。
『サンダーボール作戦』『二度死ぬ』……未見。
『女王陛下』……これは冒頭のスキーチェイスシーンだけ覚えてます。あとジョージ・レーゼンビーはショーン・コネリーやロジャー・ムーアに比べて華がないな〜と感じた記憶あり。ただ前記の友人は良い作品だと言ってましたね。
『ダイヤモンドは永遠に』……悪役が人工衛星の先っちょに巨大ダイヤモンドをつけてレーザー光線を撃とうとするというのは覚えてます。
『死ぬのは奴らだ』……未見。
『黄金銃を持つ男』……黄金銃というのがテーブルか何かに取り付けられてるのだけ覚えてます。
『私を愛したスパイ』……これはマイベスト007。悪役ジョーズのキャラもいいし、ラストのボンドガールとのムフフシーンのオチも最高。この頃の007映画はファンの間でもコネリー派とムーア派に別れ、友人はコネリー派ですが僕はムーアの軽妙でとぼけた演技が好きだったりします。
『ムーンレイカー』……この頃レーガン大統領が打ち出したスターウォーズ計画に影響されたか、ついに007が宇宙進出。ファンの間でも悪のりしすぎだと言われるようですが、僕はわりと好きです。
『ユア・アイズ・オンリー』『オクトパシー』……未見。
『美しき獲物たち』……ムーアボンド最終作。もう、おじいちゃんなんでアクションがどうにもいまいち。ボンドガール(?)のグレース・ジョーンズが話題になりました。
『リビング・デイライツ』『消されたライセンス』……未見。
『ゴールデンアイ』……これはビデオで観ました。これもいまいちだったなあ。ちょうど前作と本作の間に冷戦が終結しちゃったんで方向性を試行錯誤してる感じでしたね。僕にとっては前作と本作の間がほぼ大学時代で、映画にハマったその時期に007をやってなかったことがあまり観てない理由の1つと言えるかもしれません。
『トゥモロー・ネバー・ダイ』……これもビデオ視聴。観た動機はジャッキーの『ポリス・ストーリー3』で超絶スタントを見せてくれたミシェール・ヨーがボンドガールとして出てたから。期待通り本作でもスタントマン任せのピアーズ・ブロスナンよりはるかにすごいスタントをやってて、主人公の007が完全に食われちゃってました(笑)。
『ワールド・イズ・ノット・イナフ』『ダイ・アナザー・デイ』『カジノ・ロワイヤル』『慰めの報酬』……未見。
『スカイフォール』……初めて映画館で観ました。面白いことは面白かったんですが、ムーア時代を最高と思ってる者としては少々シリアスすぎるし、ボンドガールとのムフフシーンも少ないのがちょっと好みと違うなあと。ただ、この映画にもジャッキー映画で見たようなアクションシーンがあり、21世紀アクション映画におけるジャッキーの影響力の大きさには甚だ感慨深いものがありました。
『スペクター』『67年版カジノロワイヤル』『ネバーセイ・ネバーアゲイン』……未見。



#1708 
徹夜城(支配人) 2018/05/14 14:36
また映画徒然草をためこんでます

「栄耀映画徒然草」、まさに「つれづれなるままに」気の向いた時に書いてるわけですが、そうこうしているうちに最近見た映画についてもついつい書かずにズルズル遅れてゆきますね。最近のくらいさっさと書いて更新しておきたいもんですが。

>シリーズもの
 「リーサル・ウェポン」シリーズは1作も見てないんです。リメイクTVドラマも知らなかったなぁ。映画の新作も企画されてるそうですが、「マッドマックス」同様にメル・ギブソンはもう使われないかな。
 アクションシリーズものとなると、「ダイ・ハード」も「4.0」までしか見てません。「ミッション・インポッシブル」も「2」どまりでしたが、先日TVで4作目をやってたのでそれで初めて鑑賞しました。
 「007」シリーズだと、21世紀以降の作品は全部公開時に見てますが、それ以前だとまだまだ見てないのが多い。ショーン=コネリー主演のものは全部見てますが、ロジャー=ムーア時代のものは一作くらいしか見てなくって。ジョージ=レイゼンビーの「女王陛下の007」も未見。



#1707 
バラージ 2018/05/09 21:49
リーサル・ウェポン

 またまた昔なつかしアクション映画シリーズの感想、今回は『リーサル・ウェポン』シリーズ。

『リーサル・ウェポン』
 メル・ギブソンとダニー・グローヴァーのコンビ感が良く、アクションがスタ&シュワ風のもったりしたパワー系ではなくスピード感重視なのがジャッキーファンの僕にぴったりでした。ハリウッド映画にありがちな銃撃戦一辺倒ではなく、香港カンフー風肉体バトルがあるのも個人的には良かった。主人公がベトナム帰還兵で自殺願望があるちょっと危ないやつで、1987年の映画だからベトナム戦争終結から12年は経ってるんですが、このあたりは今となっては時代を感じますね。

『リーサル・ウェポン2 炎の約束』
 唯一変なサブタイトルがついてるパート2(笑)。2作目は1作目の暗さが薄れてコメディタッチが強くなり、スケールアップしたバディ・アクション映画として前作を上回る面白さでした。悪役が当時はまだアパルトヘイトだった南アフリカの外交官てのも時代を感じますね。容疑自体は麻薬密輸でアパルトヘイトと直接関係はないんですが。

『リーサル・ウェポン3』
 連続ヒットでさらにスケールアップしたアクション大作で、コメディ色がさらに強くなってます。特に前作から登場したジョー・ペシが前作に輪をかけた大暴れで、中盤あたりはでこぼこトリオみたいになってましたね。相変わらず面白いんですが、ちょっと大味になってきたかなとも感じた作品。

『リーサル・ウェポン4』
 ちょっと時間を置いて作られた第4作。この映画はなんといっても悪役のリー・リンチェイ(現ジェット・リー)ですね。彼のハリウッド進出作で、これをきっかけにハリウッド・スターとなりました。映画自体も面白かったんですが、さすがに主演2人はちょっと歳を取ってきちゃったな〜とも感じましたね。

 そんな『リーサル・ウェポン』シリーズ、最近連続テレビドラマとしてリメイク(というかリブート?)されたんですが、なんと映画の第5作を作る話も出てるらしい。リチャード・ドナー監督、メル・ギブソンとダニー・グローヴァー主演という黄金トリオが再結集するという話ですが、2人とももうおじいちゃんなのに大丈夫なのか? まあ、まだあくまでも企画段階のようですが。



#1706 
バラージ 2018/04/28 00:12
続編とサブタイトル

 すいません。前の投稿は実際に投稿してみたら非常に読みづらかったんで、行間を開けて投稿し直します。前のやつは削除してください。


 映画徒然草の『プロジェクトA2 史上最大の標的』(1987年日本公開)についてまたまたもう1つだけ。

 最後のほうのサブタイトルについて触れているところですが、『プロジェクトA2』が第1作に及ばない出来であること、「史上最大の標的」というサブタイトルが全く意味不明なことには同感なんですが、配給会社の自信のなさの表れっていうのはちょっと違うんじゃないかなあと。というのも80年代、特に80年代後半の洋画にはこの手の適当なサブタイトルがついてるものがやたら多いんですよね。特にシリーズものの続編にはやたらめったら適当なサブタイトルがつけられてます。

 ざっと思い浮かんだものを書き連ねてみると、『スーパーマン2 冒険篇』(1981年日本公開。以下同)『スーパーマン3 電子の要塞』(1983)『ピンク・パンサー5 クルーゾーは二度死ぬ』(1983)『ポリスアカデミー2 全員出動!』(1985、以後シリーズ全てにサブタイトルあり)『ロッキー4 炎の友情』(1986)『霊幻道士2 キョンシーの息子たち』(1986、以後シリーズ全てにサブタイトルあり)『13日の金曜日PART6 ジェイソンは生きていた!』(1986、以後シリーズ全てにサブタイトルあり)『スーパーマン4 最強の敵』(1987)『エルム街の悪夢2 フレディの復讐』(1987、以後シリーズ全てにサブタイトルあり)『ティーン・ウルフ2 僕のいとこも狼だった』(1988)『フライトナイト2 バンパイアの逆襲』(1988)『ザ・フライ2 二世誕生』(1989)『ベスト・キッド3 最後の挑戦』(1989)『リーサル・ウェポン2 炎の約束』(1989)『ロッキー5 最後のドラマ』(1990)『48時間PART2 帰ってきた二人』(1990)『グレムリン2 新・種・誕・生』(1990)などなど……。もちろん『エイリアン2』(1986)などのようにサブタイトルがついていないものもありますが、量的には少ないと言っていいのではないかと。

 また、数字のついてない続編ものは当然ながらサブタイトルがついており、『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』(1980)『オーメン 最後の闘争』(1981)『スター・ウォーズ ジェダイの復讐』(1983)『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』(1984)『マッドマックス サンダードーム』(1985)『ランボー 怒りの脱出』(1985)『ランボー 怒りのアフガン』(1988)『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』(1989)など、これまたやたらたくさんあります。

 さらにはシリーズものでない映画でも、『ルードウィヒ 神々の黄昏』(1980)『レイダース 失われたアーク(聖櫃)』(1981)『ロマンシング・ストーン 秘宝の谷』(1984)『ポリス・ストーリー 香港国際警察』(1985)『プリティ・イン・ピンク 恋人たちの街角』(1986)『ベティ・ブルー 愛と激情の日々』(1987)『サルバドル 遥かなる日々』(1987)『童年往事 時の流れ』(1988)『ブロブ 宇宙からの不明物体』(1989)『ゴースト ニューヨークの幻』(1990)など、有名な文芸作からラブストーリー、エンターテイメント作品に到るまでサブタイトルがつけられてます。

 これはおそらく80年代特有の現象もしくは流行で、90年前後を境にパタッとこういう傾向はなくなるんですが(『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』(1989)『ダイ・ハード2』(1990)『ターミネーター2』(1991)なんかはサブタイトルがついてませんし、第2作には変なサブタイトルがついてた『リーサル・ウェポン』も『3』(1992)以降はサブタイトルがなくなっています)、理由を推測するにまず70年代以前には続編に数字がつけられておらず、「続」「新」と続いた後はサブタイトル付きの邦題にせざるを得なかったということがあります。その上で80年代当時は「カタカナ外国語(もしくは漢字の中国語)」のみの邦題にはまだわかりにくさや抵抗感があり、そのため日本語のサブタイトルをつけたのではないか? そして90年代に入る頃にはそういうものがなくなっていったのではあるまいか?というのが個人的推論であります。



#1704 
バラージ 2018/04/15 10:42
ミッション・インポッシブル

 『ミッション・インポッシブル』の最新作が今年8月に公開ってことで、過去にもちょろっと書いたこれまでに観たシリーズ作品の感想をもうちょっとくわしく書きたいと思います。

『ミッション・インポッシブル』
 ブライアン・デ・パルマ監督はアクション映画のイメージがあまりなかったんですが、予想以上に面白かったですね。オリジナルのネタをリメイクっぽく使ったシーンや、エマニュエル・ベアールとジャン・レノというフランス勢の投入も良かった。オリジナルの『スパイ大作戦』は観てないしぼんやりとしか知らないんですが(オープニングの導火線や、「このテープは自動的に消滅する」は名場面集みたいな番組で観ました)、設定の変更がオリジナルのファンからは不評だったとか。まぁわからなくはないけど、こちとらオリジナルを観てないからなあ。映画はその後もオリジナルとは異なる「トム・クルーズのスパイ大作戦」とでも言うべきシリーズが続いていきますが、そういう意味では邦題をオリジナルと変えたのも良かったのかも。

『ミッション・インポッシブル2』
 監督がジョン・ウーに交代ってことで作風も第1作とはガラリと変わりましたが、ここまで一作ごとに作風が異なるシリーズも珍しい。実はこの『2』については今となってはあまり記憶がありません。ただなんかいかにもジョン・ウーっぽいなあと思ったことと、第1作ほどには面白くなかったことぐらいしか覚えてないんですよね。ジョン・ウーの映画は面白いことは面白いんだけど、女性を描くのが苦手で女優があんまり魅力的じゃないところが僕の趣味にはいまいち合わないところです。

『ミッション・インポッシブル ローグ・ネイション』
 その後はシリーズをなんとなく観なくなり、久方ぶりに観た第5作。『ミッション〜』シリーズに限らず、21世紀に入ってからはハリウッドのアクション映画をとんと観なくなってたんですが、なんかふと観たくなって映画館で観た映画です。観た順番にまずこっちの感想を。いやぁ面白かった。肉体バトルに命懸けスタントとトムがジャッキー・チェン化してましたね。「あ、このアクション、ジャッキー映画で見たことあるな」っていうシーンがいっぱいあるんだよなぁ。実際トムはジャッキーを大いにリスペクトしてるようで、今年公開される最新作でも90年代のジャッキーみたいなスタントをやって足を骨折したというのがニュースになってました。

『ミッション・インポッシブル3』
 『ローグ・ネイション』が予想以上に面白かったんで3作目、4作目も観てみようかなと思ってたら、タイミング良くWOWOWで4作一挙放送をやってたんで観ました。監督が一作ごとに異なるためもあってか作風も一作ごとに変わる『ミッション〜』シリーズですが、本作の作風はやや暗め。つまらなくはないんですが、アクション映画としては今一つスカッとしない、ちょっと引っかかる映画でした。ちなみに少々ネタバレになりますが、本作では主人公の結婚が物語の大きな要素になってるのに、先に観てしまった『ローグ・ネイション』には主人公が結婚してる描写が皆無。そのわけは4作目の『ゴースト・プロトコル』で明らかになるんですが、やっぱり順番通りに観るべきだったかな。

『ミッション・インポッシブル ゴースト・プロトコル』
 『3』同様にWOWOWで観ました。これは面白かった。『ミッション〜』シリーズは一作ごとに作風が違うと書きましたが、この『ゴースト・プロトコル』と『ローグ・ネイション』は監督が違うにも関わらず作風が似通っています。要するに肉体バトルに命懸けスタントとトムがジャッキー化してるんですが、あるいはこのあたりからトムの意向や権限が強くなってきたのかも。でもそのおかげで今となっては全盛期を過ぎて見ることがかなわなくなった90年代ジャッキー的アクション映画が見れるわけだから、トムには感謝しなくてはなあ。最新作も楽しみ。


>笠原脚本
 『仁義なき戦い』は僕は『完結編』だけ観てるんですが、『完結編』だけが笠原脚本じゃないんですね。笠原脚本映画の一覧をざっと見てみたんですが、正直言って観たいと思う映画がないといいますか、僕は笠原脚本というよりも東映映画の作風自体が今一つ趣味に合わない感じ。笠原脚本作の歴史映画には血盟団事件を扱った『日本暗殺秘録』という映画があるようですね。



#1703 
徹夜城(支配人) 2018/04/07 15:29
そうそう、「ゴーシュ」もありました。

>バラージさん
 言われて思い出しました。高畑監督作品の映画といえば「セロ弾きのゴーシュ」がありました。これ、僕は劇場、といっても映画館ではなく市民会館での上映会で鑑賞しています。
 宮沢賢治作品のアニメ化で話をつなげると何年か前に実現した「グスコーブドリの伝記」のアニメ化について、高畑さんは否定的なコメントを出していたような(出来の問題ではなくテーマ的な話)。

 笠原和夫は、橋本忍と並んで脚本家が映画の「作者」と認識される例になってると感じてます。もちろん監督がいなきゃ映画にはなりませんが…
 笠原さんの代表作はなんつっても「仁義なき戦い」になりますね。あれは一応元になったヤクザ当人の原作手記があるんですが笠原さんは本人と直接接触して裏話も聞き出してシナリオにするなど、「脚色」ではなくしっかり作ってしまってるんですね(創作も含め)。ただそのシナリオを「いっさい変えない」と約束した上で演出した深作欣二の映画について試写会ではテンポが速すぎることに激怒、途中で飛び出したが、周囲から「傑作」と言われ、あとで映画館で見たら初めてそう思えた、とか(笑)。他の監督についても似た逸話があるそうです。
「県警対組織暴力」では「シナリオが完璧すぎる」とかえって深作監督を悩ませたそうで。
 笠原さんの他の代表作は「二百三高地」「大日本帝国」になりましょうか。どちらも舛田利雄監督になりますが、「大日本帝国」では演出に困って「どうしよう?」と笠原さんに現場から聞いてきた、という話があります。
 この戦争映画シリーズの流れで「海ゆかば」「226」なんかがありますが、このあたりからダメダメで。もっとも「226」については笠原さんは「あれは壬申の乱だ」と言っていて、ホントは昭和天皇と秩父宮をからめたもっとヤバい話にするつもりが、さすがにダメをくらって当たり障りない内容になったとかで。ラスト、処刑される三浦友和の「天皇陛下万歳」が意味深に響きますけどね。この辺は「大日本帝国」とおんなじ。
 「真田幸村の謀略」や「ヤマト」は名義貸しに近い感じもします。本人のインタビュー読むと何もしなかったわけじゃないけど「謀略」については自分に話が来た時には下敷きになるシナリオはほとんどできてた、と言ってた覚えがあります。アニメ映画「三国志」は割とちゃんと書いてたみたいですけど(もともと好きではあったみたい)。

 笠原脚本だけしか残っていない幻の一本が「実録・日本共産党」。笠原さん追悼企画で雑誌に全部掲載されたんで読むことができたんですが、いろいろ難航したシナリオだそうですが映画になっていたら一つのエポックにはなったかもしれません。たぶん深作組で作ってキャストもなんとなく予想できますが、今となっては完全に幻。大正から敗戦にかけての日本共産党の群像、迫害や転向、そして主人公を女性にしたことで一つの女性史ものとしても成立している、という実に異色作です。
 どこかで読んだ話では、ある大物女優がシナリオを読んで主演を熱望、角川春樹事務所でタイトルを「いつかギラギラする日」に変えて実現しそうになるも、政治的内容から結局お流れ(弾圧事件のくだりのカット要求を笠原氏が拒絶)。なぜかタイトルだけが生き残って深作欣二の銀行ギャング映画になっちゃったりするわけですが。



#1702 
バラージ 2018/04/07 01:26
追悼・高畑勲

 高畑監督作は他に、『ホルス』と『火垂る』の間に『パンダコパンダ』『パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻』『セロ弾きのゴーシュ』、実写ドキュメンタリー映画『柳川堀割物語』があるようです。僕は『火垂るの墓』をテレビで、『セロ弾きのゴーシュ』をビデオで、『おもひでぽろぽろ』(「い」じゃなくて「ひ」なんですよね)『平成狸合戦ぽんぽこ』『かぐや姫の物語』(史劇的伝言板#9501)を映画館で観ましたが、富野由悠季や宮崎駿に比べるといまいちに感じたというのが正直な感想でした。つまらなくはないんですが、なんか僕にはちょっと合わなかったようです。
 『じゃりン子チエ』はテレビ版はちょこちょこ観てたんですが、映画版はどうだったかなあ? ひょっとしたらテレビ放送時にちらっと観たかもしれませんが、あんまり記憶にありません。『ホーホケキョ となりの山田くん』は製作発表を聞いたときに「なんで今さらこんな映画を?」と正直思っちゃいましたね。どうにも観に行く気が起きず、大コケしたと聞いた時もまあ当然だろうと思わざるを得ませんでした(質的にどうだったかは別として)。ずっと昔ちょくちょく観てたテレビアニメ『おじゃまんが山田くん』と同じ原作だとてっきり思ってたんですが、今回改めて調べてみたら同じいしいひさいち漫画でもそれぞれ別の原作なんですね。
 一番面白かったのは、やはり『火垂るの墓』かな。これは間違いなく面白かった。
 ご冥福をお祈りします。

>笠原和夫と桂千穂の脚本
 ついでなんで徒然草の『福沢諭吉』で触れてる脚本の笠原和夫と桂千穂の脚本映画についてもちょこっと。と言っても僕は脚本家(やカメラマンや音楽や美術)目当てに映画を観るなんてことはほぼなく(そういう見方をする人は相当なマニアだと思う)、この2人についてもかろうじて名前を聞いたことがあるという程度。
 笠原脚本映画で僕が観たのは『真田幸村の謀略』(史劇的伝言板#10507)『宇宙戦艦ヤマト 完結編』(テレビ視聴)『三国志 第一部・英雄たちの夜明け』(史劇的伝言板#10661)の3本だけで、いずれもいまいち、もしくははっきりと面白くなかった映画です。まあ3本しか観てないし、映画の最終製作者は監督なんで、これで笠原脚本がどうこうは言えませんが。
 桂脚本映画で観たのは『アイコ十六歳』『あした』の2本のみ。前者は今関あきよし監督、富田靖子主演の青春映画で、2〜3年前に初めてテレビで観ましたがさすがに今観るとどうにもちょっと古臭い。後者は大林宣彦監督、赤川次郎原作のヒューマンドラマ映画で劇場公開時に観ましたが、こちらはとても面白い映画でした。桂は大林監督とよく組んでるようで、他に『HOUSE ハウス』『廃市』『ふたり』、そして最新作の『花筐』の脚本を担当してるようですが、僕はいずれも未見。



#1701 
徹夜城(支配人) 2018/04/06 13:44
高畑勲監督死去

映画関係者の訃報があると書き込む、というパターンがありますが、今日はアニメの高畑勲監督の訃報を起き抜けに知りました。
この掲示板の趣旨なので映画に話を絞りますが、監督した映画作品はそう多くはないんですね。東映動画時代の「太陽の王子ホルスの大冒険」、ジブリ設立後の「火垂るの墓」「おもいでぽろぽろ」「平成狸合戦ぽんぽこ」「ホーホケキョとなりの山田くん」「かぐや姫の物語」。どっかの新聞記事で「映画は6本」と書いてましたが、確かこれ以外に「じゃりン子チエ」の劇場版があるはず。TVの再編集の「赤毛のアン」もありました。
僕は「おもいでぽろぽろ」以外は見てますね。「火垂るの墓」は「トトロ」との同時上映で見て、「トトロ」→「火垂るの墓」の順に見てドヨ〜ンと暗くなって映画館を出たクチ。
 個人的にお気に入りは「平成狸合戦」でした。アニメならではの奔放さやギャグをやりつつ、社会派的側面と敗者のリアリズム、そして結構しぶとく生きていくタヌキたち、といった要素がいろいろ思い出深い。また当時多摩センター付近を電車でよく通っていたのであの辺が元ネタなんだと良くわかりました。
 「となりの山田くん」は大コケしましたが、フレデリック=バックに入れ込んだ結果、「手書きの絵が動くアニメ」志向を強めたんでしょうねぇ。「かぐや姫」ではその一つの完成形を見せてくれたわけですが、それを集団の巨額費用体制でやったというところも特徴かと。

 何かの本で読んだけど、東映動画で組合の委員長やってて、東映を退社して移籍することが内定してるのに組合委員長やってるのを集会で批判されたら「委員長としての高畑とアニメ監督としての高畑は別」だったかな、そんな趣旨のことを堂々と言って批判者を黙らせ、脇にいた宮崎駿が「一生この人についていこう」と感心した、という逸話が好きでした。宮崎さんも「なんだかんだいって高畑さんに見せるためにアニメを作ってる」ってな発言をしてましたしね。


>澤井信一郎監督
 バラージさんの話題に反応。こっちは訃報じゃなくて。
 僕はこの監督の映画ってろくに見てはいないんですが。角川春樹プロデュースで「蒼き狼・地果て海尽きるまで」を監督されてました。これ、チンギスハーン映画としてはかな〜り残念な出来(やはり感性が実に日本的)なのでありますが、即位式のシーンで気分が乗ってしまった春樹さんが自ら監督しはじめ、澤井さんは脇から見てるだけだったとかで。春樹さん、「前世がチンギス」と本気で言ってたからなぁ。



Tue Nov 19 16:31:11 2024
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