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「ある公爵夫人の生涯」
The Duchess
2008年・イギリス
○監督:ソウル=ディブ○脚本:ソウル・ディブ/ジェフリー・ハッチャー/アナス・トーマス・イェンセン○撮影:ギュラ=パドス○音楽:レイチャル=ポートマン○原作:アマンダ=フォアマン
キーラ=ナイトレイ(ジョージアナ)、レイフ=ファインズ(デヴォンシャー公爵)、ドミニク=クーパー(チャールズ=グレイ)、ヘイリー=アトウェル(エリザベス=フォスター)、シャーロット=ランプリング(レディ・スペンサー)ほか


 

  公開時には全然気がつかず、BSシネマでひょっこり放映されていることにその日に新聞のテレビ欄で気が付き、あらすじ紹介記事を読んで「なにやら18世紀にスペンサー家のお嬢様が奔放な人生を送る話らしい」と一応録画予約を入れておいて見ることになった。
 このあらすじ紹介から誰もが思い浮かべるのは、スペンサー家からイギリス王室に嫁入りし、不倫やら離婚やら、その後の恋と唐突な事故死を遂げたダイアナ元皇太子妃のことだろう。実際、調べてみたらこの映画の主人公、デヴォンシャー公爵夫人ジョージアナはダイアナ妃の直接の先祖と言うわけではないが、彼女の弟の子孫がダイアナ妃になるので広い意味での「ご先祖さま」には違いないのだった。映画も宣伝ではこのつながりを最大限にアピールし、「ご先祖様も奔放で波乱の人生でした!」と客寄せに使ったようなのだが、原作とされた伝記小説を書いたアマンダ=フォアマンはそういうつながりを強調され、ダイアナ妃と重ねあわされることに派御不快であったらしい。

 スペンサー家の令嬢ジョージアナは、貴族のお嬢様にしては「深窓の令嬢」なんておしとやかなタイプではなく、活発で自己主張も好奇心も強い17歳の女の子であることが冒頭で描かれる。ここでのちに恋人関係になるチャールズ=グレイ(演:ドミニク=クーパー)とも顔合わせがある。しかしこの手の貴族の娘にはよくあることだが、ずっと年上のデヴォンシャー公爵(演:レイフ=ファインズ)からの求めと、公爵家とつながりたいスペンサー伯爵家の思惑で政略結婚。とくに抵抗もせずまぁそんなものかと結婚する彼女だったが、デヴォンシャー公爵はただ「後継ぎの男子が欲しい」だけ。おまけに結婚前に召使いの女に手を出して女の子を産ませており、ジョージアナは実の子を産む前にその子をひきとって子育てをさせられるハメになる。
 
 それから数年後へとテンポよく話は進んで、ジョージアナはすでに何人も子どもを生んでいる。ところがみんな女の子で公爵を失望させていた。夫婦間の仲は最低で、ジョージアナは社交界の華となったり、政治に首を突っ込んで大衆に演説したりして気晴らしをする。そんななか、やはり夫との仲が悪いエリザベス=フォスター(演:ヘイリー=アトウェル)と親友になり、彼女を自分の家に同居させるが、なんと夫の公爵と彼女が関係を持ってしまう。愛憎渦巻く三角関係のままの「妻妾同居」状態になってしまってもはやドロドロ。たまりかねたジョージアナはかねて思いを寄せられていたチャールズ=グレイと関係をもち、その子どもまで産んでしまう…うーん、なんつぅか、「女は強い」と思わされてしまう(汗)。

 ラストまで見届けると、なんちゅう人間関係だと呆れてしまうのだが、調べてみるとほぼ史実で、その子孫たちもちゃんといらっしゃる。日本の昔の大名家とか貴族とか皇室だったら大変な大スキャンダルだが(念のため書くと古代・中世ならその手の話がチラホラとあるにはある)、ヨーロッパの王室・貴族ではこの手の話は割とありふれていて、キリスト教での一夫一婦制の建前がかえってその手の関係に走らせちゃってるのではあるまいか…と以前から思っていたのだが、この映画でまた改めてそう思わされてしまった。
 時代は18世紀後半、当時のイギリス貴族社会で社交界スターとなっていたジョージアナは、同時期のフランス王妃マリ=アントワネットと比較されることもあるそうで、そういえば劇中で彼女が当時流行しアントワネットもしていた巨大なカツラをつけている場面がある。その巨大カツラに火がついて大騒ぎ…という場面もあって、「ああ、そういうこと、やっぱりあるんだねぇ」などと思ってしまった。

 主演のキーラ=ナイトレイ、実は僕は彼女が出ている映画をちゃんと見たのはこれが初めてなのだが、いや〜確かに綺麗な女優さんである。これを見た後で調べてみたら、「スター・ウォーズEP1」でナタリ=ポートマンの「影武者」になる侍女の役(役がらだけに顔もまともには映らない)で出てたと知ってちょっと驚いた。もう大女優の風格すらあるから、「EP1」での出演はちょっとしたお宝映像扱いされそうだな。(2012/8/23)




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