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「バック・トゥ・ザ・フューチャー」
Back to the Future
1985,アメリカ
○監督:ロバート.ゼメキス○脚本:ロバート・ゼメキス、ボブ・ゲイル○製作:スティーブン・スピルバーグ○音楽:アラン・シルベストリ
マイケル・J・フォックス(マーティー)、クリストファー・ロイド(ドクター・ブラウン)、リー・トンプソン(ロレイン)、トマス・F・ウィルソン(ビフ)、クリスピン・グロウヴァー(ジョージ)






 コメディ的SFとしては最高傑作だと思う。「両親を縁結びさせる子ども」など似たようなタイムスリップネタは藤子・F・不二雄の「ドラえもん」にもあって別段オリジナリティの高いものではないのだが、なんといってもこの映画は数多くの伏線を巧みに張り巡らせた脚本が見事すぎる。序盤の1985年で展開されていた伏線が1955年に次々と浮かび上がり、1955年に残した伏線が終盤の1985年でまた解きほぐされていく。その芸の細かさは何度見ても新たな発見が出来るほど凝っていて巧妙だ。遠い過去ではなく、ほんの30年前にタイムスリップすることによって発生する「世代間ギャップ」のギャグの数々も見逃せない。公開当時のレーガン大統領が30年前にはあまり売れないスター俳優だったなんてのも映画ファン心理をくすぐるネタだ(他にもシリーズを通して映画ファン向けの細かいギャグが多い)。そう言えばテロリストが「リビア人」となっているのも今になってみると「時代」を感じるネタになっているなぁ。

またこの映画はタイムスリップネタということもあってか、「時間」を使ったハラハラドキドキのサスペンスがしばしば巧みに使われている。クライマックス、1985年へ帰還するために落雷を利用するわけだけど、その時間までに両親の関係をうまくまとめておかねばならない。そこに至るまでにもすったもんだの大騒動となるが、それが無事に終わったあともタイムマシン(デロリアンという車を使うアイデアが秀逸!なんでもオリジナル脚本では冷蔵庫の予定だったとか…ほんと「ドラえもん」だな)がエンストしたり落雷を伝える装置が故障したりと時間ギリギリまでこれでもかとばかりにトラブルが襲ってくる。ちょっとあざといという気がしなくもないけど、そこらへんを開き直って巧みなテンポで処理していくので、見ている方はもう主人公に次々と降りかかる災難を笑っちゃいながらサスペンスに巻き込まれていくという仕掛けになっているのだ。

SFとはいうものの、どこかノスタルジックで「さわやか青春映画」のノリも感じる本作だけど(それはもちろん主演のマイケル=J=フォックスに拠るところが大きい。もっともこれも撮影中に主演交代でなったのだそうだが)、この映画の脚本は当初ディズニーに持ち込まれ、面白いとは思われたもののある道徳的理由で却下された経緯があるのだそうだ。本作では高校生時代の母親がタイムスリップしてきた自分の息子に恋心を懐いてしまうという展開があるが、それが問題とされたのだそうな。やれやれ、ディズニーってのは想像以上に「アメリカの良心」を体現しなきゃいけない会社のようだ。結局この企画は大ヒットメーカー・スピルバーグが引き受けて「スピルバーグ製作作品」として世に出ることになるが、結果的にそれが幸いしたところはかなりあったと思う。タイムマシンを冷蔵庫から車に変えたのも「子どもがマネできないように」というスピルバーグのアイデアだったそうだし。

この映画のラスト、未来から戻ってきたドクは「君の息子が大変だ!」と言ってマーティーを未来へと連れ出してしまい、「つづく」と出て幕となる。しかしどうもこれは製作者のジョークであったようで、本気で続編を作る気はあまりなかったようだ。しかし大当たりした作品の宿命として続編が制作され89年に「2」が、90年に「3」が公開されている。こちらは最初から三部作構成を決定していて撮影も一挙に行われている。「2」は未来のマーティーの息子の救出から再び1955年に行くまで。「3」はちょっと飛んで西部劇時代を舞台としている。いずれにも「ドラえもん」との共通点を感じてしまうのだが…先祖や子孫がみんな同じ顔(同じ役者が演じている)ってのもソックリだしねぇ。(2000/3/27)



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