映画のトップページに戻る
「ギャラクシークエスト」
Galaxy Quest
2000年・アメリカ・ドリームワークス
○監督:ディーン=パリソット
ティム=アレン(ネズミス)シガニー=ウィーバー(グエン)アラン=リックマン(アレックス)ほか




 いやはや、これは大変な作品だ。よくまぁこんなアイデアが実際に映画化にまでこぎつけたものだ。しかもSFXばりばりの本格的SF大作として。こんなの単館公開なんてもったいないったらありゃしない。
 アイデア自体はけっこう多くの人が一度は思ったであろうものなんだよね。子供向けにTVでやっているヒーローものの俳優たちが実際にTV番組同様の「現実」に投げ込まれたら…というアイデアだ(藤子・F・不二雄の作品なんかにはかなり近い発想のものがあったはず)。この映画のタイトルにもなっている「ギャラクシークエスト」というのは20年前に放映が終了したSF冒険活劇TVドラマで、今なお大人・子供を問わず熱狂的なファンが存在し、そのファン達によってコスプレ大会やネット上での研究活動などが行われているという設定になっている。
 分かる人は分かると思うけど、この「ギャラクエ」のモデルは明らかに「スタートレック」。日本放映時に邦題「宇宙大作戦」になっちゃったアレだ。ちなみに「ミッション・インポッシブル」は「スパイ大作戦」ね。っと、とにかく日本ではそれほど広がりはないがアメリカでは「スタトレ」の熱狂的ファンによるかなりディープな世界が広がっているのだ。あれをみていると「オタク」というのは日本の専売特許なんかじゃないってことがよく分かる。最近の映画でこのトレッキー(「スタトレ」オタク)が出てくるのはトニー=スコット監督の潜水艦サスペンスの傑作「クリムゾン・タイド」。主役のデンゼル=ワシントンが協力を求める乗組員が「トレッキー」で、ワシントンがそのネタを持ちかけるともう子供のように喜んでしまう。「ワープスピードだ!」ってな感じで(笑)。あんな場面が入ったのは自他共に認めるオタク監督・タランティーノが脚本に参加していたせいじゃないかと僕は思うんだけど。

 話があっちゃこっちゃ飛んでいるが、そういう「スタトレ」事情を頭に入れておくとこの映画は何倍も楽しめる。もちろん知らなくたって楽しめるが(僕も「事情」を知っているだけで本物の「スタトレ」は映画版の数本しか見ていない)。で、この映画はこの「ギャラクエ」に出演していた俳優達が熱狂的ファンの集まるコンベンションに招待されるところから始まる。ファン達は熱狂的に歓迎するが、実は当の俳優達はもうウンザリ。番組終了後、俳優達は仕事に恵まれず、ただ「ギャラクエ」の遺産だけで食っているような状態だ。特にトカゲ頭の宇宙人ハーフ「ドクターラザラス」を演じるアレックス(を演じているのは「ダイ・ハード」の敵ボスとか「マイケル・コリンズ」でアイルランド初代大統領を演じているアラン=リックマン。まぁややこしいこと)なんかはシェークスピア俳優だったプライドからいつまでも「トカゲ頭」扱いされることに我慢できなくなっている。ファン達にもてはやされて割と楽しんでいる感じのダガード船長役のネズミス(ティム=アレン)も内心はコンプレックスに悩まされている。他にもセクシー女優でドラマではただ命令などを復唱するだけの役だったグエン(なんとシガニー=ウィーバー)とか、パイロットの子役だったトミーとか、何人かの番組の元レギュラーメンバーたちは一緒に仕事をしつつも実はドラマのようなチームワークなんてありはしない。ただただ日々を「ギャラクエ」イベントに出ることで怠惰に生活を送っている。

 こんなどん底の状態から映画は始まる。そこへ「サーミアン」という宇宙人達がやってきて「ギャラクエ」のメンバー達に自分達を救って欲しいと頼んでくる。初めは例によってファンの冗談かと思っていた「ギャラクエ」レギュラーたちだったが、なんとこれが本物の宇宙人(爆)。なんと彼らは母星でTVドラマ「ギャラクエ」を受信し、これを「歴史ドキュメント」だと信じ込んでしまっていたのである!そしてご丁寧にもドラマに登場した宇宙船やらメカの数々を「実物」として製造し、自分達を侵略してくるエイリアンを倒して欲しいと「ギャラクエ」メンバーに依頼してくるのである。そんなもん作れるぐらいなら自分で戦えって気もするが、このサーミアンたち、実に正直者で心優しく、戦争なんて出来る種族ではない。だいたい「ウソ」を認識できないもんだから「ギャラクエ」を実話だと思ってしまったのだ(この辺、SF設定としても良くできてますね)。本物の「宇宙戦争」に巻き込まれてしまった「ギャラクエ」メンバーたちは当然ビビるが、なんとなく成り行きで戦わねばならなくなる…。

 以下、未見の方は映画を実際に見てもらった方がよいと思う。まぁとにかく波瀾万丈の展開となるのだが、おおむね観客の「こうなるんじゃないかな」という期待を裏切ることはまずない。こう書くとけなしているように見えるかも知れないが、実はこの映画、この「期待を裏切らない」ことが大切な映画なのだ。
 良くできた娯楽映画にあるパターンとして、「どん底から栄光への飛躍」がある。しかもダメ人間たちが集まってこれをやってくれるとそのカタルシスは大変なものになる。この「ギャラクエ」はまさにその王道を行く作品だ。初めは「スタトレ」をパロったギャグ作品かなと思っていると(まぁ確かにそうなんだけど)、どんどん展開はマジになり、主人公達も一致団結して巨大な敵に立ち向かっていく。ラスト近くでは意外に泣けるのだ、この映画。幼児のように純粋無垢な宇宙人「サーミアン」のキャラはとにかく良くできていて、「ギャラクエ」メンバーでなくても「なんとかしてあげたい」と思っちゃうのは確実。それと、メンバー達を陰からサポートする「ギャラクエ・オタク」たちのパワーも見所だ。アメリカのオタクパワーの凄さの一端をうかがい知ることもできますね。<あ、それと実際の番組ではレギュラーになれない「殺され役」だった俳優の存在も皮肉が効いていて個人的に大受けした。ラストにちゃーんとオチになっているところも最高(笑)。(2001/2/22)




映画のトップページに戻る