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「ジュラシック・ワールド」
Jurassic World
2015年・アメリカ
○監督:コリン=トレボロウ○脚本:リック=ジャッファ/アマンダ=シルヴァー/デレク=コノリー/コリン=トレボロウ○撮影:ジョン=シュワルツマン○プロダクションデザイン:エドワード=ヴァリュー○音楽:マイケル=ジアッキノ○原案:マイケル=クライトン○製作:フランク=マーシャル/パトリック=クローリー
クリス=ブラット(オーウェン)、ブライス=ダラス=ハワード(クレア)、ヴィンセント=ドノフィリオ(ホスキンス)、タイ=シンプキンス(グレイ)、ニック=ロビンソン(ザック)、オマール=シー(バリー)、B=D=ウォン(ヘンリー・ウー)、イルファン=カーン(マスラニ)、ジェイク=ジョンソン(ロウリー)、ジュディ=グリア(カレン)ほか




 「ジュラシック・パーク」シリーズ、ついに4作目。「バック・トゥ・ザ・フュチャーPART2」で2015年にまだ「ジョーズ」を作ってる(しかも監督がスピルバーグの息子)というギャグがあったけど、2015年にスピルバーグの「ジュラシック」シリーズはまだやってたわけだ(監督はしてないけど監修的立場にはいた)。それも3D映画になって。
 最初の「ジュラシック・パーク」が1993年公開。当時は「CG恐竜」に注目が集まり、その後のCG特撮全盛へと向かうきっかけになったわけだが、今から見ればさすがにかなり控えめな使い方だ。そして2作目「ロストワールド」が1997年。うっかり保存してなかったんだけど、公開当時このサイトで感想アップしてたんだよな。3作目「ジュラシック・パーク3」が2001年に公開されたがスピルバーグが離れたせいか僕はいまだに見ていない。そして4作目となったわけだが、いろいろと製作が難航していたらしく、気が付いたら前作から14年も間が空いてしまう事態に。この間に原作者のマイケル=クライトンもこの世の人では亡くなってしまった。劇中でやたらスマホが出てくるのも時代の流れを感じる。
 すでに一作目から20年も過ぎてしまったんだなぁ…と年代を振り返って感慨深かったが、3作目から本作までなぜか14年も時間が空いている。3作目を未鑑賞なのでそんなに間が空いてることに全く気付いてなかったんだけど、ヒットしたシリーズものとしては異例の事態かも。と思ったが、「ダイ・ハード」の3作目と4作目の間も12年空いていたんだっけ。忘れたころにやってきた続編どうし、なかなか終われないシリーズになっちゃったかな(逆に言えば新しいものってそうそう作れないんだよな)

 今度の「ジュラシック・ワールド」は、内容的には第一作から直結する続編となっていて、「2」「3」との関係はほぼ無視していい。第一作はDNAで復活させた恐竜たちのテーマパークを作ろうとして、そのオープン前に「事故」が発生するパニックものだったが、この「ワールド」はその事故を乗り越えてついに恐竜テーマパークが現実のものとなって営業されている状況が描かれる。一作目の事件は忌まわしい過去として経営陣の間ではタブー視されてるようで、一般観客はそんな過去も知らない様子。一作目で「カリブの海賊は人を食わんぞ」というセリフがあったが、オープン前とはいえ人が何人も食われてる事故が起こってるのにテーマパーク化できるんかいな、と思っちゃうが、それを言っちゃうと今度の映画自体が成り立たない。僕でさえそう思うくらいだから、製作側もどういう続編を作るかいろいろ悩んだ末にこうなったんだろうし、また納得できるだけの話が仕上がるまで時間をかけたんじゃないかと。

 「主役」になる人間の方は、「ワールド」で恐竜の調教をやってる元軍人オーウェンと、「ワールド」の経営で仕事一辺倒に走り回るクリスという「別れたカップル」の二人。そしてシリーズ毎度の子供枠にはザックとグレイの兄弟で、その両親はただいま離婚調停中。これらのキャラ設定が出てきた時点で最終的にお話が「絆の再構築」になっていくのは目に見えてしまう。まぁご家族みんなで見る映画ですしね、バレバレなんだけどそういう展開も必要でしょう。少なくともこの四人は最後まで無事に生き残るなと予想もできるし、その周囲の人たちがシリーズ毎度の「食われ要員」であることも分かってしまう(笑)。恐竜の軍事利用をもくろむ悪役さんとか、結果的に事故の拡大を招いてしまう社長さんとか、「因果応報」な死に方をしちゃう人たちも分かりやすすぎと感じもするけど、それって一作目からそうなんだよな。まぁわかりやすく、誰もが納得する映画作りはハリウッド通俗ヒット作の常道でもありますし。
 この社長さんがインド人、というのもこの20年の時の流れを感じるところ。また一作目で技術者の中に中国系の人がいるのが当時妙に印象に残ったのだが、その人がずいぶんお久しぶりなのにほぼそのまんま再登場しているのには驚いた。

 ついにちゃんと完成しオープンした恐竜テーマパークを登場人物と一緒にまわって楽しめるのもこの映画の見どころだ。一作目はしょせんオープン前だったからね。あれを見た時に感じた物足りなさはさすがに本作では十分に満たされた。実際に作られたらあるであろう数々のアトラクションには、それほどの恐竜マニアでなくてもやっぱりワクワクさせられてしまう。シリーズ3作目で翼竜が登場したが、今回は水中系、モササウルスが登場、まるで水族館のクジラ・イルカショーみたいな見世物にされている(「恐竜愛護団体」が抗議活動、といったネタがそのうちありそうだな)。このモササウルスの場面、妙に強調して時間をとるから、これまたオチが見えてしまった(笑)。
 こんな風に実際に恐竜テーマパークとしてオープンしてしまってからの「事故」だけに、今回は被害も大拡大。プテラノドンが大量に飛び回って観光客を襲いまくるし、「興行上」の要請から遺伝子工学で作り出された新種「インドミナス・レックス」は人間を出し抜くほどの知性と並外れた運動能力と、「殺しを楽しむ」ような始末に負えない凶暴性とが加わって、さすがに観光客までは襲わないが警備員た恐竜たちに大被害を出してしまう。いや〜ここまで大事故に発展しちゃったら、もう「続編」が作れないんじゃないか?というのは余計な心配だろうか(笑)。

 今回の新機軸は、第一作以来のスターであるヴェロキラプトルが人間に調教され、「悪役」であるインドミナス・レックスにチームで立ち向かう趣向があるところ。もちろん最初っからあぶなっかしい話で、インドミナスから「説得」されて寝返りを打つなんて場面まであり、映画の後半はこの展開でかなりハラハラさせられる。また飼いならされた恐竜を「兵器」として利用しようとする悪人たちが登場するところもアイデアとしては面白く(実のところあまり効率のいい兵器とは思えないが…ソ連軍が「自爆犬」訓練のエピソードをふと思い起こした)、「死の商人」とか戦争屋をストレートな悪役にするあたり、パターンではあるけど一定の社会派っぽさも盛り込める。第一作からあるテーマ、「生命を利用してやれと甘く見てると手痛いしっぺ返しを食う」は健在だ。

 すったもんだの大騒ぎの末に、結局は「大スター」であるティラノサウルスが乱入、観客から「待ってました!」と拍手喝采(今時そんなことはなかろうが)なクライマックスは弟一作のラストの自己パロディな感じ。意地悪にいろいろツッコむことはできるんだけど、やっぱり観客が望むであろうものをしっかりと押さえ、ハラハラドキドキだけどもちゃんとホッとはさせ、最後には家族恋人円満にめでたしめでたし、という、ハリウッドのファミリー向け映画のお手本のような作りにはやっぱり感心もしてしまう。
 ああ、ただザックくんだけは、親公認の恋人いるのによそへ出かけたら他の女の子にキョロキョロと色目を使うあたり、今後の波乱が予感される。そうか、続編はそれでいくのかな?(笑)(2015/10/28)




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