映画のトップページに戻る
「続・黄金の七人レインボー作戦」
Il Grande colpo dei sette uomini d'oro
1966年・イタリア
○製作・監督・脚本:マルコ=ヴィカリオ○脚本:マリアノ=オゾレス、ノエル=ギルモア○撮影:エンニオ・グァルニエリ○音楽:アルマンド・トロヴァヨーリ
ロッサナ=ポデスタ(ジョルジャ)、フィリップ=ルロワ(「教授」ことアルベール)、ガストーネ=モスキン(アドルフ)、ガブリエレ=ティンティ(アルド)、モーリス=ポリ(アルフレッド)、マヌエル=サルツォ(アルフォンソ)、ジャン=ピエロ=アルベルティーニ(アウグスト)、ダリオ=デ=クラッシ(アンソニー)、エンリコ=マリア=サレルノ(将軍)ほか


 

 タイトルそのまんま、「黄金の七人」の続編である。NHKのBSシネマで前作と二夜連続で放映してくれたので両方を見ることができたのだが、前作のラストで続編の製作が明記されているので最初から続編を作る予定でいたらしい。確かに「七人」の設定は非常に面白く、一作で終わらせるにはもったいない。恐らくは前作のヒットを受けて予算も増え、よりスケールアップした続編となったのだが、これまたよくあるパターンでそうやって二匹目のドジョウを狙った続編というのはあまり成功してくれない。この「続・黄金の七人」もスケールアップがかえってアダになってしまったケースだと思う。

 前作のオープニング同様、またまた銀行強盗を仕掛けた「黄金の七人+美女一人」チームだったが(トップシーンが前作の「逆」になってるところがセルフパロディで笑える)、映画冒頭であっさり捕まってしまう。どうするんだと思っていたら、捕まえたのは某国機関FBIならぬ「LBI」で、彼ら「黄金の七人」チームの腕を見込んで、中米島国の某国の革命指導者の誘拐を依頼してくるのだ。
 書くまでもないことだが書いちゃうと、革命指導者のモデルは明らかにキューバのフィデル=カストロである(キャラ的にはゲバラも混じってる気がするが)。映画の公開年を見てみると、この当時キューバのカストロといえば世界中の注目を浴びる、ちょっとアブない感じもする存在であったはずで、そうした時事ネタをうまいこと取りこんだ形ではある。エンディングで「登場する人物団体は全て架空であり、類似は単なる偶然です」でギャグっぽく断ってはいるけど(笑)。今となってはこういう描写も歴史的説明が必要になってしまうな。

 要人誘拐なんて、そんなこと泥棒チームに頼まずにお前ら自分でやれよ、と思っちゃうところだが、その作戦にあたってソ連からその某国に援助資金として送られる船一隻分の大量の金塊をついでにいただいてしまおうということになって、「黄金の七人」チームは話に乗ってしまうのである。前作の銀行強盗から、世界各国を股にかけ熱帯南国を舞台に陸に海に(ちょこっとだけ空にも)とする大冒険へと大きくスケールアップ、前作以上に非現実的なメカ(思考を映像化する機械なんてものまで)もあれこれ登場し、内容的には盛りだくさん、ではある。

 もともと前作も、当時大人気だった「007」をはじめとするスパイ映画のノリが強かったが、あくまで泥棒の話になっていたためオリジナリティがあった。ところがこの続編ではとうとう我慢できずに本当にスパイ映画にしてしまった。「007」というより「スパイ大作戦」に近い気もするが、いずれにしても設定に少々無理があることは否めない。一応前作以来のオシャレでセンスのいいノリ、軽快なテンポ、チーム内でもお互いだましだまされの関係は健在で、最後まで展開が読めずにそこそこ楽しめる作品になってることは確かなんだけど、なまじスパイ映画に近づいてしまったためにかえって安っぽい印象が強まった気もしなくはない。

 紅一点ロッサナ=ポデスタのお色気度もパワーアップしていて、ボディライン丸出しのウェットスーツで潜入したり(このカッコがまた峰不二子のルーツと思われる)、登場するたびに髪型と服装だけでなく目の色まで変わる(カラーコンタクトなんだろうな)。金のためなら平気で味方を裏切るあたりも相変わらずだが、本作では彼女と「将軍」のコントのようなやりとりも見ものだ。モデルが明白なだけに美女にたらしこまれる将軍の姿に「ここまでやっていいんかい」と思っちゃうほど。ただカストロが本音のところアメリカと全面衝突する気はなかった(少なくとも当初は)という事実はあるので、映画はパロディの形をとりながら本質を突いていたかもしれない。

 結局すったもんだの大騒動の末に「ふりだしに戻る」になっちゃうのは前作のラストと同様だが、これまた続きを作る意図があったのかもしれない。調べてみたら実際に「新・黄金の七人7×7」(1968)なる作品が同じ監督の手で作られたそうなのだが、キャストは一新されてしまったという。内容は全く無関係なのに、監督が同じでロッサナ=ポデスタが出ているというだけで日本で勝手に「黄金の七人1+6 エロチカ大作戦」(1971)なんて訳題をつけたパチモンみたいなのもあるそうで。(2012/2/15)



映画のトップページに戻る