検証!PC−FX論

○その四・販売戦略論○

目次
FX市場の現在−−シェア論−−
ハード価格について
ソフト価格について
販売店・販売ルート
宣伝・販促活動
アニメ戦略について
パソコンとのリンク
総括

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ソフト論を読む!
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★ご注意★本文は1997年夏ごろ執筆されたものです。
FX市場の現在−−シェア論−−

まず、現状の認識から入ろう。FXのゲーム市場全体におけるシェアは、だいたい「1%前後」と考えてもらいたい(ハードのシェアとソフトのシェアで若干の差があるがこの数字なら差なんてないようなもの)。現在日本の家庭用ゲーム市場はPSが50%以上、SSが20〜30%程度、N64が5〜10%、あとはGB等が占める、といった情勢だ。かつての「スーパーファミコン」「PCエンジン」「メガドライブ」の占めていたシェアとほぼ入れ替わっているような具合である(これが欧米だとPSの独走にN64が肉薄し、SSは話にならないって状況になりつつあるらしい)。とにかく前身のPCエンジンから比べるとPC−FXの1%というシェアは「話にならない」レベルに受け取られても仕方があるまい。

しかし、絶望する前に次のデータを聞いてもらいたい。某新聞の経済面によると、PSのソフト一本当たりの平均売り上げは5万本弱程度である。「おいおい、それじゃFX最大ヒットの「同級生2」でもいい勝負じゃないか」と嘆くなかれ。この数字は毎月のように10万本以上を売るヒット作を出し、「FF」みたいな数百万本を売ったソフトもあるPS市場での話である。いかにその他の大量のソフトが低い数字を出しているか、という証拠と言っていい。他の論文でもたびたび触れているが、現在のゲーム市場は「名前を知っているソフト」「話題作」に人気が集中しがちで、ヒット作とその他とでは大きな差が生じつつある。

FXではどうだろうか?NECの「電撃姫」に載ったコメントによれば「ソフト全体で150万本」を売ったという。「はは、全体でFFの半分にもおよばんのか」と嘆くなかれ。これソフト本数が50タイトルいかない段階の数字なんですぞ。単純計算なら一本当たり平均3万本以上売ったことになるのだ!「電撃王」の数字を毎月チェックしているマニアは驚かされることだろう。どう考えてもFXのソフト一本で最高の売り上げは5万本程度と見られているから、かなり平均的に差のない形でソフトが売れているとしか思えない。しかも「電撃王」データによるといつも初回売り上げで1万本売れたら上出来という情勢なので、その後息長く同じソフトが売れ続けているというわけで(新作がなかなか出ないので他に目がいかないと言う見方も出来るが)、PSの大量の「クソゲー」よりはずっと健全な市場を築いているという見方も出来るのだ。「シェア」というやつはあくまで全体で見た指標であり、細かい実態にまで深く入れるわけではないのである。よくマスコミやソフトハウスが「シェアが、シェアが」と言っているが、それって本当に市場をよく見ていると言えるのか?と、少しは疑いの目を持ってみよう。

ま、もちろん現在のシェアではFXの将来は明るいとは言えない。良質ソフト、傑作ソフトでも最低10万本は売れないと話にならない。これを打開するには・・・以下のいくつかの視点から検討してみよう。

ハード価格について

まずハードの価格について述べよう。一般にFXのハード価格は高いと言われ、FX普及の妨げとなってきたとされている。発売当初、FXの本体価格(あくまで希望小売価格)は49800円。他機種が発売直前に当初の予定から1万円ほど価格を下げて3万円台で発売したのに対し、FXはあくまで価格を下げなかった。その後PSとSSの間の熾烈な値下げ競争が続行され、両者とも2万円を切る事態となっても、FXの希望小売価格は依然として変化しなかった。実際は小売店の判断で実売価格を下げていったのだが、表向きは変化しなかった訳である。実際私の近所でソフトも売ってないくせに(なぜか中古はある)FX本体を39800円で売っている店が存在する( と、思っていたら最近¥19800になっていた)。

ではFXの価格はそんなに高いものだったのだろうか?まあ確かに安くはなかった。しかし次世代機のトップを切った3DOは本来7万円という価格で登場したことを思い起こそう。結局他機種の情勢を見て値下げしたが、それでも5万円台であった。PSやSSも本来5万円のところを4万円台に下げていたわけで、FXの当初の価格は十分妥当な線だったのである。PCエンジンDUOだって初登場時は5万円したのだ。しかしPSとSSはシェア獲得を急ぐあまりハードの価格破壊を起こしてしまった。はっきりいうが、3万円台になった時点でハード売り上げによる利益はまずないと言っていい(というか赤字)。あとは大量に売るかソフトで稼ぐかして元を取るわけである。あの値下げを歓迎する向きは多かったと思うが、はっきり言ってあれはバクチである。正直言ってバクチに敗れた形のSS(反論もあるとは思いますが、海外市場も考えるとね。バンダイもだから見限ったんでしょ)は非常に危険な状態だと思う(と言って、値上げするわけにも行かないし。すでにSSの出荷量は縮小され、セガの社長も「次世代機はソニーや任天堂と話し合って共通のハードを」なんて弱気な発言をしていた)。「FXは高くて・・・」と」いう人は多かったが、やたらに下げるのも本来考えものなのである。

ところが96年の秋頃から、秋葉原を中心にFXの価格が急激に下がり、2万円を切ってしまった。「ついに在庫処分か、投げ売りか」という憶測も飛んだが「同級生2」「ブルーブレーカー」といったヒットソフトがあった時期だけに、それも考えにくかった。ここからは推測の域を出ないが、ひそかにNECも価格破壊に踏み切った(つまり小売店に何らかの援助もしくは指示を出した)可能性がある。「FXは高い」というイメージを払拭する作戦だったのかも知れない。翌97年初頭にはFXの価格は正式に「オープン価格」となった。つまり希望小売価格が無くなったわけで、基本的に価格は小売店の判断に任されている。現在(97年夏)私が知る限りFX本体の最安値は14800円(秋葉原を拠点にする某S店。いつもここがFX値下げを真っ先にやる。といってFXには力を入れてる方なので単なる投げ売りでも無いらしい。大手だけにNECと何か協定でもあるのでは?)。普通の店や通販で19000円台というのが相場である。価格に関しては他機種並になってしまった。こうなったら何か「何としてもFXを買わねば!」と思わせるソフトさえ出れば50万台はいけると思うのだが(少ない?いや、とりあえずこんなものでしょ)。現在FXの累計売り上げは30万台行ったか行かないからしい。

ハードの価格に関して、FXの生みの親の一人とも言えるハドソンの中本伸一氏はFX発売前に「ソフト二本分の価格でハードが手にはいるのが理想」と語っていた。現在幸か不幸かFXを含むゲーム市場はこれをほぼ実現してしまったようだ。もうこれ以上下がるとしたら、今度こそ投げ売りだろうな。

ソフト価格について

ハード同様、FXソフトの値段に関しても「高い」という印象が広がっているようだ。確かにFXソフトの希望小売価格は7800円か8800円。実売価格で5000円台から7000円台に落ちるものの、PSやSSのソフトの大半が4000円台から6000円台で売っていることを考えると比較的高い。しかしこれだってPCエンジンのCD−ROMと変わらないし、かつてのスーファミのカセットと比べれば格段に安い。CD−ROMの値段としてはそう不当な値段とは言えないはずである。もっと大量に売れる見込みがあれば、もっと下がるはずではあるが。

ところで実売価格というのは、言うまでもなく小売店が売れゆきを見ながら上下させるもので、そのソフトがどれだけ売れているかを知る目安ともなる。ゲームというやつは初回だけ売れて、あとは持続せず、いきなり価格を下げられていくのがほとんどである。つまり限りなく生ものに近い商品で、結構取り扱いが難しいらしい(売れ残りは場所を取るだけ目も当てられない)。そんな中で(東京近辺に限るが)FXのソフトというのは比較的に初期の価格を維持する傾向が見られる。秋葉原の店では人気作の新品は今でもかなり高値だ(「ニルゲンツ」なんか1年以上たっているのに下がらない。かえって「ブルブレ」なんかは再販時に入荷しすぎたらしく安くなった店が多い)。この原因はシェア論で触れたようにFXソフトは大量とは行かないが、急激な落ち込みもせず息長く売れる傾向があるためで、このこと自体は健全な状態と言っていいだろう。「電撃姫」に載っていた秋葉原某M店のコメントによると「FXのソフトの売れ行きは読みやすく価格が安定する」のだそうで、小売店にとっては案外取り扱いやすい商品ではあるのだ。

販売店・販売ルート

ほとんど上のソフト価格の話の続きになる。上で「取り扱いやすい」とは言ったものの、FXのソフトは「大量には売れない」と言うのも事実である。小売店としては大ハズレがないのは有り難いかも知れないが、大当たりもないわけで、大きな利益を上げられる訳ではない。このため全国的に見てもFXを取り扱う店は非常に少ない。「アニメフリークVol.4」に全国のPC−FXショップのデータベースがあるが、これを見てもその数は少なく、地方へ行くほど売っていないことがよく分かる。しかもこれに載っていても現在は取り扱っていない店も多く(私の自宅近くに一軒存在していたが、やはり扱っていなかった。逆に載っていなかったのに取り扱っている店もあったが)、また取り扱っていても新作がほんのわずか並べてあるだけで旧作を手に入れるのは困難という状態が多い(だからいつまでもソフト不足の印象を与えているんだよ…)。秋葉原でFXソフトが少ないながらもコンスタントに売れるのは、地方のこうした状況が背景にあるからなのだろう。

販売店の少なさはFXの存在そのものを知らない人々を生み出しており、ますます悪循環となっている。むしろ濃いマニアが集まる秋葉原などでは結構FXを見かけるので案外彼らの間では知られているようだ。こればかりはNECの営業スタッフに頑張ってもらうしかないが、最近NECもポスター等の関連グッズを出すことで販売店へのバックアップを行うようになっている。少しでも店内でFXの存在を目立たせ、話題をまくようにすれば案外展望は開けるかも知れない。少なくとも地方中都市にはあるぐらいにして欲しいものだ。

さて、現在のゲーム販売ルートは小売り店ばかりではない。ご存じのようにコンビニエンスストアでのゲームソフト供給が開始されている。この仕組みは売り上げを正確に把握し値崩れを防ぐ意味からソフトメーカーにメリットが多いらしく、一部ソフトメーカーを中心に進められた。確かにユーザーにとっても便利と言えば便利で、確実なソフトの入手、時間を問わないなどのメリットもある。しかしこの仕組み、あくまで大手メーカー、あるいは話題となっているソフトのみにメリットをもたらすと言っても過言ではない(全てのソフトがおけるわけでなし)。FXのソフトなどこのシステムの恩恵にあずかれるかどうか怪しいところだ。ゲーム屋の片隅に置かれて時々目に触れるほうが、ましのようにも思う。まあ大型店が存在しない地方でFXのソフトを売る方法としては良いような気もするが。

あと忘れてはならないのが通信販売だ。一部雑誌の広告やアニメフリークVol.4に掲示されているが、FXのハード・ソフトの通信販売が細々ながら行われている。私は利用したことがないので実態はよく分からないが、地方によっては入手困難なソフトや周辺機器などがこれによって入手できるのであれば結構なことであろう。以前FXソフトの入手困難に関してNECHEがパソコン通信、インターネットによる通販を検討しているようなことを言っていたが(一応問い合わせは出来るようだが)、とくにインターネットによる通販は、もっと力を入れた方がいいのではないだろうか。せっかく割と力を入れたホームページ(人によってはいろいろ異論があるかも知れませんが、あれでなかなかだと思いますよ)を持っているのだから、そこを拠点に通販にも力を入れてもらいたいものだ。

宣伝・販促活動

商品を売るのに宣伝は不可欠の要素と言っていい。ところがFXユーザーの目から見てもNECHEのFX関連宣伝活動は、酷なようだが力が入っていなかったとしか言いようがない。そもそもTVCMが全くと言っていいほど無い。FX発売当時、FX本体の宣伝CMが存在はしたのだが、ほとんどの人が気づいていなかった。その後あったという話も聞いていない。せめて新作ソフトを出すときはもう少しTV媒体も考えて良いのではないだろうか(もっとも私はPSのCM攻勢にははっきり言って嫌悪感を抱く。あれは「洗脳」だ)。FXの宣伝というとほとんど雑誌の広告である。しかしこれもFX専門誌が事実上存在しないおかげで、あまり効果があるとは思えない。インターネットも宣伝の媒体として考えられるが、これに関してはNECHEのホームページはあまり力が入っているようには見えない。新作の情報が少なすぎるのだ。せめてゲーム総合誌を上回るような情報量はもって欲しい。FXが雑誌でなかなか取り上げられない昨今、FXユーザーは情報に飢えているのだから。

そう言えばFXが珍しく宣伝した例と言えば、ラジオ番組「PC−FXクラブ」が存在した。96年秋から文化放送で深夜に放送されたものだが、これは明らかに「アンジェリーク2」と「LIP」の宣伝番組であった。ここでは光栄とNECのCMが流されると言う貴重な活動が行われていたが、もともと期間限定の活動であったようで年内に終了。こういう企画はしぶとく続ければ結構効果があったと思うのだが(最近のラジオリスナーは声優・アニメ系が多いだけに)

さて宣伝活動の一つにキャンペーンがある。売り上げを上げるために一定の期間おまけや値引き等を用意して宣伝活動を行うものだが、FXでは目玉になるソフトが無いこともあってか、あまり行われていない。記憶にあるのは発売一周年の時期に行われたキャンペーン(「ユナ」体験版がおまけであった)ぐらいで、あとは秋葉原などで「ブルーブレーカー大ヒット記念キャンペーン」とか称する安売りや(結局このあと下がる一方だが)、最近の「女神天国2」とロルフィーポスター付きFX販売が行われた程度である。ソフトの販売では「ブルーブレーカー」と「チップちゃん」のテレカプレゼント、「アンジェリーク2」と「不思議の国の」の抱き合わせキャンペーンがあった。その後、キャンペーンというわけではないが、ソフトを初回に買うとポスターや設定資料集を付けてくれる傾向が強くなった(私も「LIP」のポスターと「スパークリングフェザー」の設定資料集を持っている)。

キャンペーンの次にイベントについても触れよう。NECHEはFXの販促活動としていくつかのイベントを行っている。まず例の「アニメ戦略」が発表された直後に「コミケ」への出展を行った。イベントと言うほどでもないかもしれないが、珍しくNECHE自らが乗り出した企画で、以後ほぼ恒例化した。またイベントとして最大のものは96年6月に池袋で行われた「PC−FXアニメフェスティバル」であろう。これはどちらかというと声優目当てで集まった人が多かったようだが、かなりの来客があったらしい(のべ二万人とか)。以後これほどのイベントは行われていないが(ラジオ番組と連動した「アンジェリーク」イベントがあったようだが)、こうしたイベントはFX自体の知名度を上げるためにも(費用はばかにならんが)一年一回はやったほうが良いと思う。

アニメ戦略について

FXの販売戦略として、取り上げなくてはならないのが「アニメ戦略」というやつである。これはPC−FXの売り上げがおもわしくなく、他の次世代機に大きく遅れを取った時点で発表された、FX独自の販売戦略である。その内容は、「アニメ表示にずば抜けた実力を持つFXの特性を生かして数多いアニメファンをターゲットにしたソフトを供給し、これを中心として他のジャンルの展開も行っていく」自分流にまとめたが、こんなところであろう。この戦略の発表と同時に「アニメフリークゾーン」「アクティブプレイゾーン」「アイドルコミュニケーション」といった分野で構成されるFXワールドの概念図も発表、同時に発売予定ソフトを20本も一気に発表した。とりあえずこの時点でFXの方向性はほぼ定まったと言って良いだろう。

しかしこの戦略の発表に関しては、賛否両論がユーザーの間でもあった。明らかにマニアックで一般的とは言い難い方向性であり、とくに「ギャルゲー戦略だ」という非難もとんだ。逆に「方向性が明確になって良かった」「他機種と差別化し、独自のマーケットを築ける」といった賛成論もあった。まあこの時点ではこの賛否両面とも一理あり、ユーザーのFX離れとFXファンの固定化の両方を招く結果となった。問題はその後である。

NECには酷のようだが、「アニメ」といえば売れる、という甘い考えでこの戦略を発表したのではなかっただろうか(だいたいFX発売前は「動画機能」と硬派な呼び方をしていたのに、この発売後コロッと「アニメ」を連発し始めた)。確かにアニメ関連のソフトは大きく売れる可能性を秘めている。しかし売れるのはあくまでヒット作の版権を利用したものであり(困ったことにこれはクソゲーでも売れる)、この版権というやつがまた、シェアを大きく取っているハードにしか流れない、という傾向を持っている。実際FXにどれほどの人気作が流れただろうか。「アニメフリーク」シリーズは確かにある程度は売れ、FXを支える柱となってはいるが、本物のアニメフリークがどれほど魅力を感じるか疑問がある内容と言わざるを得ない。またFXにとって痛かったのは、PS、SSといったマシンがポリゴンの限界を感じると、こぞって版権ものやアニメを売りにしたゲームを次々とリリースし始めたことだ。はっきり言って見た目には大差のないアニメをPSやSSは表示できる。ユーザーもさすがに細かい画質やリアルタイムの操作など専門的な所までは気にもとめない。おかげでFXの売りはまたまた小さいものになってしまった。

現在さすがのNECHEも「アニメ戦略」を声高に言わなくなっている。ただ、「アニメ戦略」そのものは、PSやSSの現状を見れば分かるように、決して方向性は間違っていなかった(それにしてもFXの「アニメ戦略」をけなしまくっておきながら、現在のPSやSSのアニメを売りにしたソフトやギャルゲーを絶賛しまくる一部ゲームマスコミって何考えてるのだろう。結局数は力、ということか)。他機種が事実上アニメ戦略を展開している今、むしろFXは硬派な独自性の高いソフトを作る方が賢明ではないだろうか。私の見るところ、この状況にも関わらずFXユーザーをやっている人って、かなりの硬派だと思うのだが(それに普通他機種を所有してるしね)。

パソコンとのリンク

「硬派」な話が出たついでにFXの持つもう一つの面について触れよう。「パソコンとのリンク」の件である。

ハード論でも触れているが、FXの発売当初からの売りの一つに「パソコンとの親和性」というやつがあった。FXのデザイン自体にそれが反映されているわけだが、初めの頃はもしかしたらFXが普及する力となるのでは、と言われていた。なんせ当時のパソコンは上昇気運。これと一体化すればFXも急上昇…と言われていたのである(日本物産も「98ユーザーがすべてFXユーザーになる可能性も」などとコメントしていたっけ)。思いつきは悪くなかった。ただ最初がまずかった。それで出た製品がSCSIユニット(FXを倍速CD−ROMドライブにできる)とFXボード(GAとは違い、ゲームプレイ専用。98CanBeのみ対応)であったが、いずれも人が飛びつくほどのインパクトはなかった。初めからFXボードを積んだ98でも出していれば少しは状況が好転したと思うのだが…。ちなみにパソコンで家庭用ゲームができるというコンセプトは3DOにもあった。

95年12月、NECHEはハドソンと協力して「PC−FXGA」を発売した。これについて詳しいことはGAのコーナーに譲るが、「ゲームを作れる」というコンセプトは結構強烈で、価格も安い(PSの「ネットやろうぜ」を見れば安さがわかるでしょ)ものであった。3DCGの製作ソフトも同梱し、「ゲームメーカー」の提供する開発環境もほとんどプロの使うそれに匹敵した。また32ビットマシンの開発環境の世界初の一般公開とあって、当時それなりに話題となっていた。非常に意義もあり画期的な商品ではあったのだが、いかんせん素人が使うには難しすぎた。マニュアルも難解で、どうも一般公開しながらプロのソフトメーカー向けに作っているような印象も受けた(その反省から「んーにゅー」を出したわけだが)。「マイコンベーシックマガジン」や「でべろ」(そういやこの雑誌もどうしたんでしょうね?PCエンジンBASICも当てが外れ、サターンBASICを待っているようだが)に連載も持たれたが、いずれも大きな反響を呼ばなかった。どうも最近ゲーム作りの雑誌は軒並み苦戦で、こうした世間の状況がFXGAを苦しくしたとも言える。結局一部の支持を受けてはいるものの、あまりかんばしい売り上げはなく、今年(97年)の春先に秋葉原などで一斉に投げ売り(3000円台)される事態となった。ところがこれがあっという間に売れたらしく、ほとんどどこも完売。今や完全な入手困難商品となってしまった。どうも関心のある人はかなりいた、ということであるらしい。

先日、雑誌「電撃姫」のFX特集記事に置いて「FXGAの今後の展開は考えてない」というNECHEのコメントがあった。別に売らない、作らない、と言っているわけではないのだが、もうかなりあきらめているのだろう。最近あちこちのインターネット上でFXGAを求める声を聞く。NECもあきらめるにはまだ早いと思う。こういう種の商品は時間をかけて育てるものだ。地道な努力はきっといつか報われる。そう信じてNECHEのFXGA再販売を促したい(この段落のほとんど同文をNECHEのホームページに電子メールで送りました。賛同される方はぜひご一緒にNECに働きかけてください)。

総括

お世辞にも売れているとは言い難いFXの「販売戦略論」をまとめるのは、はっきり言って辛いものがあった。FXの戦略はことごとくハズレまくっている観があるもので。

まあ悲観することも無いのかも知れない。一時シェアをある程度獲得して一挙に崩壊した3DOに比べればずっとましである(一部マスコミにFXと3DOを同列に論じる向きがあるが、何も分かっちゃいませんね)。少ないながらも濃いユーザー達の愛情につつまれているFXって結構幸福なマシンだという見方も出来るのだ。もっとももう少し増やす努力をしないと、このまま衰退して行くだけなので、NECHEの一層の努力を期待したい。

またFXというマシンは、さすがPCエンジンの弟分だけあって斬新な先進性を依然持っている。アニメ戦略にしてもパソコンとのリンク、ゲームクリエイトにしても、常に他機種に先駆けていた。問題なのはそれに乗ってこない世間と、その後それをきっちりバックアップしないメーカーにあったのである。

今後のFXの販売戦略としては、完全に他機種に真似の出来ない何かを新たに見いだすことだろう。FX自体非常に拡張性の高い設計になっているので、これを何とか利用する手だてを考えた方がいいだろう。また自慢の動画機能にしても「アニメ」ばかりに安易に使わないで、他の画期的な使い道があるように思える。とにかく現状のままズルズルやってこうなどとは思わず、もっと冒険的な新しい試みに挑んでもらいたいのだ。FXはそれが出来るマシンであるはずなのだから。