悪魔城ドラキュラX〜血の輪廻(ロンド)〜
ジャンル:アクション
媒体:SUPER CD-ROM
発売元:コナミ
発売日:1993年10月29日
価格:7800円
商品番号:KMCD3005


◆これぞ「CD-ROMアクション」最高峰!

 「悪魔城ドラキュラ」シリーズはファミコンからスタートしたコナミの看板の一つともいえるアクションゲームシリーズ。ヨーロッパ怪奇物調の舞台設定の中をムチをふるって敵を倒していく主人公という、思えば随分異色なゲームだ。このPCエンジン版はシリーズ10作目にあたることから「X」と命名され、シリーズ初のCD-ROMソフトとしてあれこれと意欲的な試みがなされている。

 このころにはPCエンジンの牽引役とも思えるトップメーカーになっていたコナミだが、PCエンジン参入はかなり遅いほうに属する。参入第一弾「グラディウス」が発売されたのが91年の11月。参入発表はその2ヶ月程度前のことで、すでにスーパーファミコンも登場し頭打ち感のあったPCエンジンへのコナミの突然の参入は当時大きな驚きをもって報じられたものだ(入れ替わりのようにナムコが出て行くけど)。なにせ当時のコナミ自身が打った広告コピーが「黙っていたけど、コナミはPCエンジンでゲームを出します」ってな内容だったのである。最初はHuCARDでシューティングの古典的名作群を発売していたが、やがてCD-ROMにも参入、いきなり「スナッチャー」(’92)という大傑作を打ち出してしまう。以後、「グラディウスII」(’92)「ときめきメモリアル」(’94)などCD-ROMならではの傑作を生み出していった(一部にどーしよーもないものもあるんだけど)。CD-ROMの使い方をもっともよく心得ていたメーカーだったという気もする。

 そしてこの「悪魔城ドラキュラX〜血の輪廻〜」もそんなコナミCD-ROM作品群の実力を示す一本。起動していきなり度肝を抜かれるのがオープニングビジュアルデモ。ゾクゾクするようなゴシックホラー調のアニメ映像が流れる中、渋くカッコイイ、ドイツ語のナレーションが悪魔城城主ドラキュラ伯爵の復活を告げる。そしてタイトルが出るのだがそのまま放っておくと打って変わって主人公リヒターがモンスター相手に暴れ回るアクションムードばりばりのビジュアル映像が流れる。とにかくゲーム抜きでも楽しめるビジュアルデモだ。そしてRUNボタンを押しますと、「ギイイイイイ…」と重いドアを押し開く陰気な音が響くという、なんとも心憎い演出があり、プレイヤーはドキドキしながらゲーム世界へといざなわれる。

 CD-ROMソフトというと、「キャラクターがしゃべる」「アニメ並みのビジュアルシーンが見られる」といった大容量を必要とする演出が売りになるわけだけど、それをゲームの中でうまく使っている例は残念ながらごくごくわずかだ。ストーリーを語るADV、RPGなどはともかくアクションゲームにおいては「しゃべり」「アニメ」などは特に使いようが無く、あえて持ち込んでも面間ビジュアルに使用するぐらいのものだ。
 しかしこの「悪魔城ドラキュラ」では特に音声がゲーム中で実に効果的に使用されている。BGMは当然CD音楽で重々しい雰囲気を見事に表現し(音楽だけ聴くモードも有る)、各面ラストにいるボスは必ず肉声で語りかけ、派手な登場演出を見せてくれる。ボスばかりでなく要所要所に出てくる多彩な敵キャラもやられた時に絹を裂くような悲鳴を上げるなど心憎いばかりの音声演出がなされている。面間ビジュアルはあまり乱発せずに絞り込み、5面クリア時にアクセントとしてかなり長時間のものが挿入されているなど効果的な配置と思える。なお、本作は「スナッチャー」以来コナミのソフトには必ず搭載されている「RSS(ローランド・サウンド・スペース)」という立体音響システムがやはり搭載されており、音響環境さえととのっていれば音に包まれる感覚が実現できる…らしいのだが、やってみたことないもんで実感は無い(^^;)。

 ともあれ、当時のPCエンジンがCD-ROM世界だったからこのソフトをCD-ROMで出しましたという単純な制作姿勢でないところに物凄い好感を持ってしまうソフト。せっかくCD-ROMで「悪魔城」をやるんだから、CDの利点を最大限に活かしてCDならではのものを作らなければ、という制作スタッフの意気込みがひしひしと伝わってくる。そしてそれがまた大きな成功を収めているところが本作の凄さだ(意気込んでも成功するとは限らない。実例多し)
 他にもいろいろと対抗馬は挙げられようが、一般論として本作がPCエンジンCD-ROM史上最高峰のアクションゲームであることは動かないところだと思われる。なおこのゲーム、発売本数があまり無かったためなのか、それとも気に入っちゃった人が手放さないためなのか(笑)、中古市場ではプレミアがついてしまい原価を上回る価格で売られている(現在1万円前後)。PCエンジンに限ったことではないのだがプレミアソフトって単に入手困難度やマニアック加減で値が付いてしまうために価格とゲーム内容の質が合致してないものが非常に多い。そんな中で、この「悪魔城ドラキュラX」はかなり正当な評価と感じる稀有なプレミアソフトだ。


◆憎らしいばかりの敵キャラの動きとギミックの数々!

 本作は構造自体は実に古典的な横スクロールアクションゲーム。右へ右へと進む中、次々と襲ってくる敵を倒し、障害物を乗り越えていく。ホント、まったくもって特に目新しいところがあるゲームではない。ただ主人公キャラがムチを使うというあたりがオリジナリティであるわけだけど。ムチ以外にも途中で手に入る武器アイテム(斧、ナイフ、十字架、聖水など)も攻撃に使用できる。ただこの特殊攻撃にはステージ内で集められるハート(たいていロウソクを壊すと出てくる)を消費するため、そう無闇に使えるわけではない。このハートを大量に消費するが、「アイテムクラッシュ」という武器アイテムをぶちまける画面全体への大攻撃(SELECTボタン一発)もかなり有効。

悪魔城ドラキュラ これらの攻撃を駆使して敵を倒していくわけだが、この敵キャラ群が実にいやらしい動きを見せてくれるのだ。とにかくよくプログラムされているもんだと激怒しつつも感嘆してしまうばかりの、見事なまでに巧みかつ複雑な動きを見せてくれる。プレイヤーのスキ・弱点を見事なまでに突いてくるので、初めのうちはこれらザコ敵の動きを見切るのに時間を食ってしまうはず。うっかり一撃で倒しそこねると執拗に追いかけてくるザコ敵も多く、特に空中から攻撃をかけてくる連中には泣かされるはず。ボスのところまで無事に行き着くのがとにかくしんどいゲームなのだ。
 そうやって苦労の末にたどりついたボス戦もまたかなり大変であることは言うまでもない。それぞれにクセのあるいやらしい攻撃を繰り出してくる。何度も何度も殺されて必勝パターンをみつけるしかないのだが、このゲーム、ご親切なことにボス戦の「模範演技」を見せてくれるモードがあり、攻略研究が出来るようになっている。決してアクション系が得意ではない僕はこのモードを随分参考にさせてもらった。

 敵キャラばかりでなくステージそのものも工夫や仕掛けが散りばめられている。城の奥に進んでいく4面の鉄球振り子を避けてすすんだり落ちてくる巨岩を渡り歩いていくところなど、高いテクニックが要求される難関。5面の幽霊船の上下にステージ全体が揺れ動く様子とか、背景だと思っていた肖像画がいきなり攻撃してくる場面などもPCエンジンの限界に迫るかと思えるような演出。
 演出といえば敵キャラを倒すと「ギャッ」と叫びながら炎とともに消えていくなんてのも「見た目」にこだわった心憎い演出である。各所にこうした細かい配慮が行き渡っているところにこの作品に対するスタッフの熱いこだわりが感じられて感動するところだ。敵キャラ、ステージ、背景ともに統一感のある高度なグラフィックで流れる音楽とあいまってプレイしていて非常に心地よい。…なんて感激しているとあっさりザコにやられちゃうので緊張を維持すること(笑)。


◆それでもPCエンジン風アレンジも

 当時のPCエンジン市場の一般的イメージとして「軟派」という空気があったことは否めない。実際にそうかどうかはともかくとしてHuCARD全盛時代のゲーセンのシューティング・アクションゲームが続々出た時期とは異なり、SUPER CD-ROM2のもとビジュアルシーンにものを言わせたADVやRPGが高売り上げを見せ、指先勝負の難易度が高いゲームに敬遠気味の空気が出始めていたのは事実(もっともそれはPCエンジンに限らずゲーム自体が一般化するにともなってゲーム全体に見られたことだが)。そこへ「悪魔城」を投入したコナミも、やはり売れ行き上の配慮ということもあってか本作に「PCエンジン風」のアレンジをいくつか行っている。

 CD-ROMということでビジュアルシーンをつけていることも大きいが、何と言っても最大のアレンジは「マリア」という女の子キャラ(かなりロリ入ってます)が使えるという点。「PCといえばギャル入れろ!」という安直な発想とも思えるが、このマリアってのが実は主人公リヒターよりずっと強いんですよね(笑)。「難度にへこたれた軟弱プレイヤーは女の子使って先行ってください」という姿勢とも感じられ、「硬派」を自負する僕などは意地になってリヒタープレイを続けちゃうのだが(笑)。ま、これも「配慮」の一つではあるのだろう。なお、マリアは最初からは登場せず、2面ステージ内のどこかに囚われているのを救出しなければ使えない。救出するとお約束のように「一緒に戦う」というビジュアルシーンが入ります。他にも助け出される女性キャラ多し。

 システム面でも親切設計が見られ、それまでのプレイ内容はバックアップメモリにセーブされ、次回起動時はクリアした次の面から始められる。もちろん面セレクトもあり、複数人が同時に攻略しているときのために個人別のファイルを作成することも出来る。ファイル管理機能も実に配慮の行き届いたものだ。先述の「ボス戦模範演技」も実にユーザーライクな親切設計だと思える。

 コナミは本作の直後に「マーシャルチャンピオン」(’93)を発売、これはかなりイマイチな出来だったが、翌年にあの「ときめきメモリアル」(’94)を発売する。タイトル発表時、「ああ、あのコナミまでPCエンジンの風潮に迎合してギャルゲーに…」などと嘆きの声も聞かれたが、これがとんでもないお化けソフトになったことはご存知の通り。とにかくCD-ROM作品でこれほど名作を連発した凄いメーカーなのである。それ以後いささか調子に乗りすぎてる気もしますがね。

(追記)本作は2008年4月に任天堂「Wii」向け「バーチャルコンソール」の一作として配信されている。

◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
4.467
4.721
4.352
4.131
4.459
3.877
26.007
第9位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★★★

★電撃PCエンジン(発売前テスト版による100点満点での採点)
レビュアー
採点
岩崎啓真
95
パトリオット佐藤
90
ウォルフ中村
90
メタラー佐々木
95

★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
総合評価
野田稔

鈴木ドイツ

イザベラ永野

TACOX


★「ユーゲー」誌連載「19××」読者投票
1993年下半期 全機種ソフト中 第1位


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