姐(あねさん)
ジャンル:アクション
媒体:SUPER CD−ROM
発売元:NECアベニュー
発売日:1995年2月24日
価格:7800円
商品番号:NAPR-1045


◆前代未聞?のレディースアクション!

外見 本作「姐(あねさん)」はNECアベニューがPCエンジン末期に放った異色中の異色作。NECのソフト部門担当としてPCエンジン初期以来アーケードからの移植作に力をふるい、後期にはパソコンの、それも美少女系ゲームの移植が目立った、いわば「移植専門屋」と言えるこのアベニューだが、終盤にいたって少しは方向転換を考えたのか、何本かオリジナルのゲームを発表している。例えば「バステッド」(’94)というRPGがあったし「レニーブラスター」(’95)という妙なアクションもあった。しかしここはオリジナルを作るとおおむねハズす、と考えて間違いない。この「姐」もそのパターンに見事にはまっているというほかないソフトだ。

 ただ企画的には最初っから「変なゲーム」と思われることを狙って作ったソフトであるのはまず間違いない。恐らく狙いは「超兄貴」(’92)の女性版ということだったのだろう。タイトルからしてそれがうかがえるし、音楽も同じ葉山宏治氏だし。おそらく「兄貴」→「姉貴」→「姐」という流れでタイトルを思いつき、ヤクザというわけにもいかないから女性暴走族=レディースにしてみた、とまぁこういう企画の流れではなかっただろうか。

 オープニングで語られる設定だが、主人公・愛は少女時代いじめられっ子だったが、レディースだった姉の優子にいつも助けてもらっていた。しかし一匹狼の優子に対し有力2チームから誘いの声がかかる。やがて二大チームの抗争に発展し、「いちばん赤い一日」と呼ばれるほどの事態に激化。その中で優子は行方不明となっていた…数年後、愛は仲間と共に姉の優子を探すべく、関東各地のレディースチームに戦いを挑む…ってな話である。
 このオープニングでは「超兄貴」と良く似た葉山節がバックに流れ、その強烈なアクのCGとあいまって「期待」も高まる。もちろんこれを見ただけで拒否反応を起こす人が多数だろうが、もともとそういうノリのゲームなのである。


◆連打、連打で日が暮れて…

ゲーム画面 プレイヤーは主人公の「愛」とそのマブダチ二人の中から一人を操作キャラに選ぶのだが、この三人、一応それぞれ動きの癖があるので操作性の好み(顔の好みを考慮したい方はしてもいい)で選んだほうがいい。実際にやる人はあまりいないと思うが、本作は2人同時プレイも可能である。

 ゲームはわりかし古典的な横スクロールアクション。ステージはいずれも街中の風景で、そこを前後から歩いてくる敵チームのヤンキー姉ちゃんたちをひたすら殴って倒していけばいいだけである。操作はIボタンで「ジャンプ」、IIボタンで「攻撃」のみという実にシンプルなもので、コマンド入力はおろかパンチ・キックの区別もない。敵が近づいてきたらひたすらIIボタンを連打、それだけで相手は倒れ、吹っ飛ばされていく。一応各キャラごとに必殺技があるんだけど(IとIIを同時押し)、自分のHPをすり減らすうえ効果もさして無いため、まず使う必要はないだろう。
 特殊な攻撃といえば、相手と組んだ瞬間にIIボタンを押すと「投げ」をかましたり、髪をつかんでひっぱったり(笑)ということができる。また相手が倒れたところにのしかかって下+IIを押すと、「オラァ!」とばかりにケリを入れるなんて楽しい仕掛けもある(一部キャラはその連打が可能)。そうそう、このゲーム、さすがに肉声は入れてないけどアクションを起こすたびに画面下にセリフが出るんだよな。

 画面を見ても分かるようにステージは3ラインの形になっており、このラインを移動しつつ、ウロウロしている敵(敵の方からはあまり積極的には攻撃してこない)をブチのめしていく。スクロールは一画面内の敵を全滅させると先へ進むという仕掛けだが、全滅させたと思って油断して先へ進もうとすると画面外から急に敵が出現したりするので注意。このへんはどう見てもゲームとしてはいい加減なつくりになっていると言わざるを得ない。3ラインにしていても攻撃可能範囲はかなりアバウトだ。だからただただIIボタンを連打していれば、どんどん先へ進めちゃうというワケ。
 危険が全く無いわけでもない。時折前後から敵チームのバイク部隊が走りこんでくることがあるのだ。このバイクに激突するとダメージはかなり大きく、かわすか攻撃して倒すかするしかない。攻撃にはちょいとコツがあるので慣れないうちは無闇にバイクに戦いを挑むものではないだろう。バイクは唐突に出現するので危険なのだが、後述の「通信販売」でサングラスを買っておけば事前にバイクの来る方向が矢印で表示されるようになる。

 自分のHPを戦闘中に回復させるにはステージ内に時折落ちているリンゴやジュースなどを拾えばいい。不幸にして体力が0になると、そのキャラは使用不能となり(何日か休むと復活する)他のマブダチキャラに変更して再アタックすることになる。ただし、これも全滅してしまった場合はとうとうゲームオーバーである。

 各ステージは前後2部に分かれており、それぞれの最後にボス(中ボスが副長、大ボスが総長というわけ)が待ち受けている。これらボスはそれぞれ個性的な攻撃をかけてきて、中には事前に知らないと痛い目に会うものもいるが、まぁたいていはいつもの「連打」だけで一方的に勝利を収められる。実のところザコとボスの差が全然ないんだよな、このゲーム(汗)。
 ボス戦に勝利すると、負けたボスはそのまま主人公の友達となってくれ、以後プレイヤーによる操作が可能となる。そして優子の情報をチラチラと漏らしたりしてくれ、物語は先へと進む。


◆意図的「変ゲー」の半端ぶり

 1ステージが終わると、愛の自室に画面が切り替わり、ここでセーブ・ロードが行える。また「通信販売」でアイテムを購入したり、BGMを変えたり、「ねむる」を選んで体力回復したりといった作業が行える。
 「通信販売」で購入できるものはグラサン、特攻服、ハチマキ、木刀、ナイフなど「いかにも」的なものから、ステッカー、雑誌、ぬいぐるみなど「?」と思ってしまうようなものまでさまざま。それぞれに体力アップや防御力・攻撃力・回復力アップなど効果があるが、一部に「不幸のアイテム」があって、それを入手していると友達ができなくなる(笑)。バイクももちろん売りに出ているが、金額がかなり高い。コツコツとカネをためるしか無さそう。

ポエム画面 この自室画面に「ボーナスゲーム」なる選択肢が出ている。ここを選ぶと「怖い顔グランプリ」もしくは「チキンレース」が遊べる(チキンレースはバイクを購入していないと表示されない)。このゲームでやはり話題になってしまったのが「怖い顔グランプリ」の方で、要するにヤンキー姉ちゃん同士によるガンの飛ばしあい…というよりは恐怖のにらめっこといった方がいいかも。操作方法は方向キーの連打(というよりグルグル?)のみで、連打の回数にしたがってキャラたちの顔がどんどん恐ろしい顔に変貌していく。もともと強烈な顔が多いだけに、その変貌過程はホラーそのもの。まぁ一見の価値ぐらいはあるかも。あんまり繰り返し見たくはないが。「チキンレース」は暴走族ものではおなじみの、猛スピードで壁に向かい、どれだけブレーキを我慢できるか競い合うものだ。

 ゲーム本編はつまらない(ザコが吹っ飛んでいく様はストレス解消に多少なる…かもしれないが)。売りにする気だったらしい(?)サブゲームもインパクトは別としてとても遊べたものではない。ホント、何の狙いで作ったんだろ、このゲーム…と思ってしまうことしきり。恐らく念頭にあったと思われる「超兄貴」はあれでちゃんとゲーム性があったからこその人気だったのだが…。意図的に「変なゲーム」を作ってウケよう、というその意図がまさに見え見えなのが本作をいっそうシラケたものにしてしまっている。
 変さ加減を狙っていると露骨に感じられるのが、眠っている間に愛が見る夢?とおぼしきものだ。この愛ちゃんはポエムの趣味がおありだそうで、眠っている間にごらんの通りの摩訶不思議な絵が表示され、愛らしいというよりは薄ら寒さを覚える彼女のポエムが肉声で読み上げられる(笑)。もちろんストーリー上なーんの関係も無い。

 ところで筆者は一回このゲームをクリアしたのだが、主人公の愛が結婚式を挙げ、仲間たちに祝福されているという唐突なビジュアルデモが表示されエンディングになったのだが、優子さんはどうなったんでしょ?何かまだ隠されている秘密が…?いちいち確認する気も起きないんだけどね。



◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
3.139
3.395
2.744
2.930
2.790
2.906
17.904
第602位

★電撃PCエンジン(100点満点での採点)
レビュアー
総合評価
岩崎啓真
50
ウォルフ中村
50
ウキキ松崎
55
城イドム
40

城イドム評価(各項目5段階評価)
グラフィック
サウンド
操作快適度
ゲームバランス
オリジナリティ
コストパフォーマンス







★ファミ通(発売前テスト版による総合10段階評価)
レビュアー
総合評価
サワディ・ノダ

ローリング内沢
イザベラ永野

TACO・X




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