あすか120%マキシマBURNING Fest.
ジャンル:格闘アクション
媒体:SUPER CD-ROM
発売元:NECアベニュー
発売日:1995年7月28日
価格:8200円
商品番号:NAPR-1049


◆「ギャル格闘ゲー」の代表の一本

 本作「あすか120%マキシマ」はアクション系としては珍しくパソコンゲームからの移植。確か原作「あすか120%」はファミリーソフトから出ていたような気がする。PCエンジン版は発売元はNECアベニューだが製作はフィル・イン・カフェが行っているらしく起動すると両社のロゴが順番に表示される。
 本作は「ギャルゲー」+「格闘ゲー」という当時の二大人気潮流を合流させた、ある意味かなり安直な企画で(笑)、やはりパソコンからPCエンジンに移植された「アドヴァンスドV.G.」(’94)と良く似たコンセプトである。だが「V.G.」がアダルトソフト出身であったのに対し、こちら「あすか」はH抜きの清純派ギャル格闘(!?)である点に違いがある。キャラクターデザインは七瀬葵さんで、この人ならではの元気で可愛い美少女たちが格闘しちゃうというのが本作の最大の売りで、移植にあたっては3名ほど新キャラが追加されファンには嬉しいところだろう。

 舞台となるのは繚乱女子高校(略称「乱女」)なる名門お嬢様高校。この高校の文化祭「百花祭」では名物の「部活動対抗予算争奪メガファイト」なる格闘大会が開かれており、これに勝たなくては部の予算がとれないという恐ろしいシステムになっているのである。主人公「あすか」は化学部部員で、先輩の指示で部費獲得のためにメガファイトに参加、運動部・文化部のさまざまなライヴァルたちと次々に戦っていくことになる。もちろん「あすか」以外のキャラも選択可能で、ストーリーモードではそれぞれのキャラごとに抱えている事情や他のキャラとのやりとりなどが楽しめるようになっている。いわゆるギャルゲーで典型的に登場するキャラクター(ロリキャラ、ボーイッシュ、お嬢様etc.)がほとんど一通り出てくるのはまさにお約束といったところ。なお、ストーリーモードでは最終戦の相手だけは各キャラごとに固定されている。ゲームで使用するキャラではないが実況を担当する報道部員の「古館伊知子」なるメガネキャラもさりげなく可笑しい。

 この「予算争奪メガファイト」であるが、格闘だというのに文化部も運動部もごっちゃまぜに参加している。そのため試合は完全なる異種格闘技戦。運動部でもまともな格闘系は空手とレスリングの部員ぐらいであとはバレーボール、テニス、ソフトボール、新体操、なぎなた(笑)といった具合でもうなんでもあり。だいたい「応援部」のチアガールまで参加しているぐらいだ。文化系は主人公「あすか」の化学部とその個人的ライバル関係にある生物部で、それぞれ爆発物や巨大カエルなどといったほとんど反則のような攻撃方法を使っている。


 ◆大雑把な爽快感が魅力の格闘

あすか120% 本作は美少女ばかりをそろえたキャラゲー要素の強い一本であるが、格闘ゲーとしても結構楽しめるレベルのものになっている。本格派というよりはアクションが苦手という人にも手軽に遊べる良さがあるのだ。一人につき必殺技は二つしか用意されておらず、複雑な入力コマンドはほとんどないうえ多くのキャラで技コマンドが共通しているからキャラを変えて慣れずに悩む心配も無い。追い詰められたときに出せる超必殺技も入力は結構簡単。またジャンプ時の滞空時間が長く(ジャンプからさらに上に再ジャンプすることも可能)ジャンプ中にも技を出すことが出来るので攻撃のバリエーションは広い。通常攻撃もボコボコと連続で入ることが多く、敵に多大なダメージを与えることが出来る。また防御面ではお互いの必殺技がぶつかりあって相殺してしまったりキャンセルコマンドで相手の必殺技攻撃をかわせるなど手軽な部分が多い。もちろんそこはお互い様と言うところもあるので勝負がいつも接戦になると言うことも多い。全体の印象として重厚な本格さよりもアバウトながら爽快なプレイ感をこころがけている観があり、これが七瀬キャラの醸し出す雰囲気とも合っていて遊んでいて結構楽しい。
 
  ゲーム画面の絵に関しては元がパソコンと言うせいもあってか家庭用ゲーム機の絵としては今ひとつ見劣りすることは否めない。SUPERCD-ROMソフトであるからそんなに大きなキャラも使えず、キャラの絵は荒くかなりドットが目立つ。そのため何が起こっているのかいまいちわかりにくいことも多い。また派手な動きと音声がクロスする時(脳震盪状態?に陥るとギャラリーから「がんばれ〜」と声がかかるようになっている)などにはかなり処理落ちし、音声がエコー状態になることもしばしば。だがコマンドへの反応は素早く攻撃するさいのスピードと爽快感はかなりのものなので、絵を犠牲にしてそちらをとったのは正解だったと思える。やはりSCDじゃ格闘ゲームは辛いんですねぇ。その中でも本作はかなり頑張っている方で、32ビット機であるPS版を押しのけてこちらの方を評価する声もあるぐらい。


◆親切丁寧な移植の仕上がり

キャラ選択画面 アクション部分以外での画面の美しさはいかにもNECアベニューのPC移植作。この時期から顕著に現れるアベニュー独特の綺麗な半角フォントも目に優しいし、七瀬美少女キャラを完璧に再現している顔グラフィックも丁寧なもの。ストーリーモード以外の対COM戦、対人戦、さらにはCOM同士の戦いを鑑賞する「ウオッチ」など定番ともいえる各種モードがあるが、いずれも親切なつくりで好感が持てる。
 登場キャラには当然のように全て声優さんが声をあてていて基本的にフルボイス仕様となっているが、あまり聞かない声優さんが多いような気がする。でもそれぞれのキャラのイメージはバッチリだし、試合前のちょっとしたやりとりなども見ていて面白い。もちろん聞かないで飛ばすことも出来るしもともと短いやりとりにまとめられている点も評価したいところ。全体的にプレイヤーにストレスを与えないように配慮してくれているという印象がある。

  最後に本作の意外に気づかない歴史的価値について述べておこう。いや、たいしたことじゃないんだけど。
 本作の発売は1995年7月。PCエンジンもすでに末期のころで夏休み商戦の時期にも関わらず本作と同時期に出たソフトは3本ぐらいしかない。そして本作は実は「PCエンジン最後の格闘ゲーム」という誰も気づいてなさそうなプロフィールも付くのである。PCエンジンはシューティング全盛期に設計されたマシンであり、格闘ゲーム全盛期に対応しきれず「アーケードカード」という生き残り策も講じたものの結局移植ソフトが出ず消え去っていったとまとめることもできる。最後の格闘アクションゲームがアーケードカード専用ではなくSCDの美少女系ゲームだった、ってあたりもPCエンジン末期の状況をそこはかとなく象徴しているようにも思える。


◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
4.480
3.762
3.724
4.180
4.031
3.686
23.863
第65位

★電撃PCエンジン(発売前テスト版による各項目5点、総合100点満点評価)
 「ウキキ松崎のギャルズアイ」レビュー
グラフィック
サウンド
操作快適度
ゲームバランス
オリジナリティ
コストパフォーマンス
総合






90
「ミンタンのACTアイ」レビュー
ゲームコンセプトマニア度総合評価
85

★ファミ通(発売前テスト版による総合10段階評価)
レビュアー
総合評価
浜村通信

羽田隆之

渡辺美紀

ローリング内沢



迷い込んだ方はこちらから