アドヴァンスドV.G.(ヴァリアブル・ジオ)
ジャンル:格闘アクション
媒体:SUPER CD−ROM
発売元:TGL
発売日:1994年9月22日
価格:8800円
商品番号:GLCD4001


◆パソコンから移植の美少女格闘ゲーム

外見 このゲームがPCエンジンから発売されるとPCエンジン専門誌で大々的に発表されたときの印象から語ろう。当時は次世代機戦争が迫っていた時期でもあり、PCエンジンも新作ソフトの発表がやや途絶えがちになっていた。そんなころだからすでに名の知れた本作の移植発表には「よかった、よかった」と喜んだことは事実。だがその一方で「ああ、やっぱりねぇ…」とあまりの予想通りに拍子抜け、と同時にますますギャルゲー専門機とみなされちゃうなという失望感もあったのだった。

 このゲームの「原作」はパソコンの、しかも18禁アダルト美少女ゲームである「V.G.(ヴァリアブル・ジオ)」である。開発したのはTGL販売(「ファーランドストーリー」シリーズなどで知られるパソコンゲームメーカー)のアダルトブランド「戯画」で、美少女系アダルトゲーム業界にあって一般向けゲームを思わせるRPG、アクション、シューティングなどを続々と発売した、かなり特殊なブランドである。確かその第一弾がこの「V.G.」だったと思う。パソコンの美少女アダルトゲームでありながら本格格闘アクションという異例のジャンル、しかもキャラデザインに木村貴宏氏を迎えアニメファンにも大きくアピールする絵作りなどで、かなり注目を集めた。タイトルにもなっている「ヴァリアブル・ジオ」とは最強のウェイトレスを決める格闘大会のことで、登場するキャラは全てファミレスなどのウェイトレス制服に身を包んでいる。ムチャな設定なのだが、そこが受けているのも事実(笑)。原作のPC版はさすがアダルトということもあり、敗北した相手が脱いでかなり過激なビジュアルを見せてくれたものだそうだが、私はまだこのPC版(最近キャラデザイン一新してリメイクされていたっけ)はプレイしていない。

 とにかくなんだかんだと話題を呼んでいたこのゲーム、「ドラゴンナイト」シリーズなどPCアダルトゲームの移植で他機種に先駆けていたPCエンジンへの移植話があがってくるのも無理からぬところで、94年春ごろに移植が発表された際も「ああ、やっぱりね」と僕だけでなくかなりのPCエンジンユーザーが思ったはずだ。
 さすがに原作どおりのアダルト表現を残すわけは無く、過激ビジュアルは一切カット。その代わりそこそこお色気系のグラフィックが新たに追加されている(ストーリーモードクリア後、2分ほど放置しておくと優香のシャワーシーンのサービスCGが見られる)。新キャラも4人も追加され、以後パソコンや他機種でも出たこのシリーズの「原作」がこのPCエンジン版になるという妙な事態も起こっている。またPCエンジンCDということで全キャラに声優による声がつき、看板キャラの武内優香を主人公としたオリジナルのストーリーモードが追加され(シナリオは「ガンダム」「マクロス」で知られる松崎健一氏が書いていたりする)、大量のハイレベルなビジュアルシーンが拝めるようになった。単なる移植を超えた、TGL側の力の入りようが感じられる商品であると思える。


◆ビジュアルシーンとアクション画面のギャップが…

 このゲームは世間一般の格闘ゲームと同様に、登場キャラ一人一人を選んで対COM戦を戦っていくモード、他のプレイヤー相手に戦う対戦モードが存在する。キャラの個性、入力コマンドのバリエーションなど、登場キャラが全て美少女という点(「あすか120%」も同様だった)を除けば特にこれといった特徴が無い、いたってオーソドックスな格闘ゲームである。
 PCエンジン版で追加された目玉の一つがアン○ラのコスチュームを身にまとう武内優香を主役にしたストーリーモード。優香を使ってライヴァルたちと戦ってゆきながら、その合間に入る大量のビジュアルシーンと音声演出で語られるストーリーを楽しむというもので、デジコミと格闘アクションの融合みたいな内容となっている(この点は「フラッシュハイダース」とも似てるな)

  このストーリーモード、意外なほど大真面目かつシリアスな展開で、アニメーターも加わったと思われるハイレベルな作画もあってなかなかに楽しめる。個人的にはもともとウェイトレスが格闘するというムチャクチャな設定なんだからもっとお遊びがあっても良かったと思うんだけど、ギャグっぽい描写は序盤までで、終盤に進むにつれ話はダークな色合いが濃くなってくる。ラストでは凶悪なまでに強い2人組ボスキャラを相手にしなければならず(これはストーリーモードのみに登場するが、裏技で対戦モードで使用可能になる)、それを乗り越えても悲劇的なムードの濃いエンディングとなる。いわゆる「ラスボス」には逃げられてしまう形になるのだが、これはいずれ続編をコンシューマー機で出す予定だったということだろう。それにしてもラスボス戦の直前に優香の目が見えなくされてしまい、真っ暗な中で格闘戦が始まったときは焦った(^^;)。さすがにそれで勝てということではなかったが…

格闘画面 さて、このストーリーモードのビジュアルシーンなど「絵」のレベルは相当なものなのだが、残念なのが肝心のゲーム部分、格闘場面でのドット絵グラフィック。背景もあまり描きこまれていないし、各キャラもかなり小さめ、かつ雑で、ビジュアルシーンでの絵がなまじうまいだけに、ゲーム場面での各キャラが激しく見劣りしてしまうのだ。
 格闘ゲームというのは大量のメモリを必要とするためSCDレベルでは辛いのは事実で、そのためにアーケードカードが登場したという経緯もある。しかしそこは作りようというもので、「フラッシュハイダース」(’93)「あすか120%マキシマ」(’95)両作はSCDソフトながらアーケードカードに負けないレベルのドット絵アクションを実現していた。この両作と比較するとこの「ヴァリアブル・ジオ」のドット絵キャラパターンは残念なレベルと言わざるを得ない。また、格闘ゲームとしてみてもかなり大雑把で練りこまれていない嫌いがあり(必殺技と通常技のダメージ差が大きすぎる…)、どうしても美少女キャラによるビジュアルシーンが主体で格闘ゲームはそのおまけ、みたいな印象を受けてしまうところもある。まぁ実のところ「それでいい」と思うエンジンユーザーも少なからずいたような気もするが。


◆コンシューマーとアダルトの微妙な関係

 このゲームが果たしてどれほど売れたのかは分からないが、当時のPCエンジン市場向けとしては狙い通りというところだったみたい。TGLは本作の発売から間もなく同じ「戯画」ブランドのPCアダルトシューティングゲーム「スチームハーツ」(’96)のPCエンジン移植を発表。かなり時間がかかり一時はお流れの噂もあったが96年3月に無事発売した。
ビジュアルデモ画面 さすがにこの時期にはPCエンジン市場はすっかり消滅しかかっており、TGLはそのままFXに移行するかと思われた。実際、同社の看板タイトルである「ファーランドストーリー」はFX版が早い段階で発表されややあって無事発売されているし、実は本作「アドヴァンスドV.G.」もFX版の発売が一時発表されていた。しかしその直後に突然撤回されてしまい、けっきょく幻のタイトルとなってしまったのである。当時の雑誌記事に出ていた話だが、FX市場は原価がバカ高の上に市場が小さいのでやってられないとTGLの関係者が正直にこぼしていたっけ。ひところは同社の「ハーレムブレイド」などアダルト系RPGが移植されるんじゃないかとの憶測もあったものだが、エンジンならともかくFXでは…というところだったみたい。

 冒頭にも書いたようにPCエンジン後期から末期にはこうしたパソコン系美少女アダルトゲームの移植が目立った。「ドラゴンナイト」シリーズ、「CAL」2作を皮切りに「同級生」「ヴァリアブル・ジオ」「スチームハーツ」「DE.JA」など、いずれもアダルト表現抜きでもゲームとして面白いものを中心にしていたとは言えるが、やはり「PCアダルトのコンシューマー進出」という流れが大きく関心を呼んだのも事実。それは買い手にも売り手にも大きな関心事だったはず。
 この傾向は18禁枠を設けるハードも出てきた32ビット戦争期にはより明確に出てきて、FXでは「同級生2」「きゃんきゃんバニー」「Piaキャロットへようこそ」など明白な18禁枠ソフトも発売されるようになった。しかしFXでは市場が小さいこともあって同じく18禁枠を設けていたセガサターンにエルフを初めとするアダルトソフトメーカーが殺到、いつの間にやらサターンがギャルゲーさらにはアダルトゲームの総本山みたいなムードを生み出してしまい、慌ててセガが18禁枠を取り消したなんて展開もあった。アダルトソフトメーカーのコンシューマー機進出の野望はその後も延々と燃え盛っており、独自ハードの開発やら、PS2でも遊べるDVDゲームやら、最近ではドリームキャストで18禁枠が復活するなど、いつまでたっても話題は尽きない。
 PCエンジン年代順リストの方にも書いていることだが、アダルト移植系が増えてくるころのエンジン・FXって人気にかげりの出たアイドルがヌード写真集を出している様に似てるんだよなぁ…(^^;)


◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
4.459
3.893
3.609
3.597
3.816
3.459
22.833
第137位

★電撃PCエンジン(発売前テスト版による100点満点での採点)

レビュアー
総合評価
岩崎啓真
30
ウォルフ中村
50
ウキキ松崎
90
城イドム
50

ウキキ松崎評価
グラフィック
サウンド
操作快適度
ゲームバランス
オリジナリティ
コストパフォーマンス






 

迷い込んだ方はこちらから