エナジー
ジャンル:アクション
媒体:HuCARD(4M)
発売元:メサイヤ(日本コンピュータシステム)
発売日:1989年4月14日
価格:5200円
商品番号:NCS 89005


◆パソコンから移植の超能力アクション(?)

外見 この項目を書くために調べてみるまで全然知らなかったが、この「エナジー」は意外にもパソコンゲームからの移植作だった。当時のパソコンゲームで「エナジー」というのがあるのかネット検索かけてみたけど見つからず、いろいろやってるうちにこのゲームの原作が「’ASHE(アッシュ)」なるPC-8801用ゲームで、開発・発売元は「クエイザーソフト」なる会社だったということまでは突き止めた(この「エナジー」でもタイトル画面で「CREATED BY QUASERSOFT」と表記はされている)。しかしゲームの内容についてはまるっきりわからないため、このPCエンジン向けの移植がどれほど原作を再現したものであるのかは分からない。

 PCエンジン版の発売元はメサイヤ(日本コンピュータシステム)。もともとパソコンでゲームを出していたがPCエンジンにもかなり早くから参入していて、第一弾として自社の戦術シミュレーションゲーム「ガイアの紋章」(’88)をPCエンジンに移植している。第二弾にPCエンジンならではの多人数プレイレースゲーム「モトローダー」(’89)、第三弾としてオリジナルアクションゲームとして「改造町人シュビビンマン」(’89)を発売、これらは一部の濃いファンを獲得するヒットとなり、以後PCエンジンの人気シリーズと化した。その直後にメサイヤブランドPCエンジンソフト第四弾として出たのが、これだ。

 プレイする前から風の噂にどうしても聞こえてきてしまうのが、このゲームに対する悪評(笑)。下にあるPCエンジンFAN誌読者投稿でもわかるように、全ソフト中でも下から数えて指折りの低評価である。さるPCエンジン同人誌でも全ソフト666本中、下から2番目の低評価(汗)。その割に下にある(勝)PCエンジン誌のレビューが悪くないように見えるが、このレビューはこのころ5より下はまずつけないんだよね。そこに4がついているんだから、相当なものかと。

 とまぁプレイ前からおっそろしくつまらんゲームをやらされそうだ、ということで覚悟を決めてとりかかった(笑)。
 起動するとビジュアルつきのデモが流れ、ゲーム世界への導入がなされている。この導入部分からして何かヘン。ヒマラヤにある「とうまたい」(説明書には「討魔隊」とあってようやく意味が分かる)の本部に緊急連絡が入り、東京が「魔物」の襲来により壊滅したことが知らされる。正義の味方・討魔隊から次々と隊員は全滅、腕利き隊員であるらしい「こういち」「モモコ」「メガネ」の三人が東京へ向かったが、いずれも帰還しないまま数時間(それだけかい!)が過ぎた。そこでプレイヤー自身に出動の命令が下る。
 ここで討魔隊の隊長と、なにやら怪しげな秘密兵器(これがちゃんと伏線になってるわけだが)を開発している博士から指示を受けるのだが、二人ともなぜか関西弁をしゃべる。どうものっけからシリアスなんだかギャグなんだかよく分からんノリでゲームは始まる。結局これが全編にわたって漂うムードなんだよな。

 ゲームは壊滅した東京を背景に始まる。画面が映った途端にゲンナリする人も多いだろう。およそPCエンジンとは思えない、ファミコンのB級ソフトか?と思えるようなチープな背景&キャラクターが映る。プレイヤーキャラも小さく、動かしてみるとスタスタと走る様はなんともゆっくり。ジャンプもピョコンとヘンな音を立ててちょっと飛ぶ程度。
 画面端まで動いていくと、さらに驚くべきことがわかる。このゲーム、いわゆる横スクロールアクションではあるのだが、画面の端まで移動するとそこでようやく画面全体がスクロールして、隣の画面の端にキャラクターが移動する、という妙な仕組みになっているのだ。しかもこのスクロールがえらく遅い!あちこち移動する際、イライラすること請け合い。これはPC−88の原作の仕様をそのまま移植したものと思うんだけど、家庭用に移植するならもうちょっと何とかしてほしかった。

 状況がよく分からないので、とりあえず右へと進むといきなりモンスターが襲ってくる。先ほど書いたようなスクロールの仕組みなので、隣画面に移動した途端、いきなり画面に登場したモンスターに襲撃されHPを大幅に減らしてしまうことも多い。
 こちらも攻撃をしなければならないが、この「討魔隊」の連中は全てエスパーということになっていて、攻撃は画面上方にHPと一緒にゲージで表示されている「ESP」によって行われる。ここでタイトルにもなった「エナジー」が使われるのだが、要するに魔法攻撃、ほとんどシューティングと同じである。「エナジー」は三種類あって、進むに連れて手に入るパワーアップアイテムで発射速度や発射方向を変更することも出来る。
 だが、いきなり出てくるモンスターに対して連続発射があまり出来ないし、攻撃するごとにESPを消費して、ESPがゼロになると攻撃そのものが出来なくなってしまう。ESPは自然回復するようになっているが、ザコ敵を倒しても経験値を得て成長するといったこともないので不必要な攻撃は避けるのが吉のようだ。

 それにしても…超能力攻撃とはいえ、エナジー弾が敵にあたってもショック演出(点滅など)がまったくないのも困りもの。当たってるんだか外れてるんだか全く分からないのだが。


◆セーブなどない!一発勝負で解くのだ!

 序盤すぐに、なぜか女の子に化けていた敵にだまされて主人公は地下迷宮に落っこちる。にもかかわらずよじのぼって元の地上に戻ることも可能なんだが、それでは話が先に進まないわけで、奥へ奥へと進んでみることになる。
 ここでようやく変なスクロールの意味が分かってくる。地下迷宮内は一画面ぶんの「部屋」に区切られた構造になっていて、特に序盤ではその部屋から隣の部屋への通路には扉がついており、その部屋の中のモンスターを全滅させると扉が消えるという仕組みになっているのだ。
 部屋の中のモンスターを全滅させてしばらく待つと(どうもこのゲーム、処理のためなのか変に待たせる間が多い)、薬が出現することがある。これは出現する部屋が決まっており、何度でも出現するようになっている。薬はHP回復のもの(赤)とESP回復のもの(青)の二種類。ESPは自然回復するので青が出ると実質ハズレのようなものだ。このゲームは事実上HP回復はこの薬に頼ることになり、攻略のポイントにもなっている。

ゲーム画面 迷宮内を進んでいてかなりイライラするのが先述の画面スクロールのみならず、主人公キャラの操作性の悪さ。ジャンプすると変な慣性がついていて、どうもこちらの思い通りのところに着地してくれないのだ。またキャラの進入不可能のブロックがかなり大きく設定されているらしく、ちょっとした段差を超えるのにもやたら苦労する時があるのには呆れる。その段差越えでバタバタしている時に敵に攻撃されてあっさり死亡というケースだって多い。
 ジャンプだけではない。上方下方に移動するときに柱や蔓(つる)をよじのぼる動作があるのだが、これも妙に難しく、何度も落っこちるケースがあった。慎重にやればいいんだけど、その間も敵の攻撃があって…HPはウカウカしているとあっという間に減らされてしまう。HPゼロになったら当然死亡で「GAME OVER」である。しかしこのゲームオーバーの時もただプレイヤーキャラが停止するだけで、情けないゲームオーバー画面へ飛ばされるのがなんとも。
 またこのゲームをプレイした人たちが必ず体験談で語るのが序盤にあるトラップ(笑)。トラップというほどのものでもないのだが、地底湖を前に行き詰まって、さてどうしたものかと湖にピョンと飛び込んでみると、いきなりHPゼロになってゲームオーバーになるのだ。まぁ常識的に考えろということで分からないではないのだが、いきなりオシマイというのにはガックリ。

 そもそもこのゲーム、途中でセーブすることができない。最初からラストまで一発勝負なのだ。89年初めという段階ではバックアップシステムがなかったから仕方の無いところもあるが、死亡したら最初からやり直しというのがたまらない。せめてパスワードとか考えてもらいたかったところ。このゲーム、あまりのヘボさと操作性の悪さによる理不尽な難度、そして死んだら全部最初からやり直しという試練に音を上げて途中で投げ出した人も多いそうだが、うなづける。
 ただ、根性でこのゲームをクリアした立場から言うと、セーブ機能なしという仕様も理解できなくはないのだ。解き方が分かってしまえば最初からプレイして1時間程度で終わる内容であることは保証できる。それまでに何十回も死にまくることになるのではないかと思うけど。

 
◆思いつくことは全部やる!(以下ネタばれあり)
 
 実際、僕も投げ出そうと思ったことが何度もある(笑)。しかしなんとなく気になるというか…こういうあまりにB級なもの、マイナーきわまるものを見ると血が騒いでしまう傾向があるみたい。FXでもいろいろあったからなぁ(笑)。自虐嗜好的なところがあるんでしょうか。

 とにかくこのゲーム、行き詰まりやすい。次に何をしたらいいのかわからなくなることはしばしばある。戦闘自体は慣れてくればそこそこ対応できるようになり、各地で行われるボス戦も楽勝が大半(先ほど書いたようにショック演出が全く無いので攻撃がヒットしてるのかどうか唐突に終わるまで全く分からないのが困りものだが)。しかし迷宮探索で行き詰まるケースは多いのだ。

 一番頭に来たのは中盤に出てくる、縦方向の巨大な吹き抜け。ビルの高さぐらいあるんじゃないかという、はるか上方まで空間が広がっているのだが、足場やよじ登れるようなものが何も無い。目の前に上下運動しているモンスターみたいなのが三匹いるのでこれに攻撃をかけてみたが何も起こらない。
 「はて…?」と思いつつその辺でジタバタしていると、突然ピョーーーーンと大ジャンプが出来てはるか上方へと上がることができてしまう。いくらゲームでも重力の法則を無視しすぎだろ!とツッコんでしまうほどの大飛躍。しかも方向キー操作で左へ右へと動くんだよな。最初は何が起こったのか分からず、しかも途中で岩にぶつかって落っこちてしまう。上の方に人がいるのが見えたので、そこに行けばいいらしいのだが、どういう理屈で大ジャンプしたのか分からないから困っちゃう。
 まぁここらでようやく気がつくが、この吹き抜けの底にいる三匹のモンスターに乗っかって、それをトランポリンよろしく利用して上空へ跳ね上がるということなのだ。しかしもう一回やってみようとするとこれがなかなか出来ない。どういう条件で跳ね上がれるのか、結局まったく分からず、適当に三匹の上に当たりそうなところでピョンピョンジャンプを繰り返し、運良く跳ね上がるのを待つしかなかった。
 大ジャンプが出来ても油断がならない。いったん上に上がってしまえば障害物にぶつからない限り延々と飛んでゆけるのだが、あちこちに岩があって上手く操作しないとそこでジャンプが終わって落ちるハメになる。で、この跳躍・落下時も例のスクロールをやってるもんだから、時間がかかるかかる…(汗)。何度も何度もやってるうちにいい加減意地が焼けてくると思うぞ。

 なんとかジャンプをこなして上方にいる「オギノメユキコ」ちゃんなるアイドル歌手と出会う。ユキコちゃんはいきなり歌いだしてHP・ESPを全回復してくれたりするので実にありがたい存在だ。さらに上方にジャンプすると三人の男たちがいて(一人はユキコのマネージャー)、東京壊滅の大災害で地下に落っこちた割にはノンキなセリフを吐いている。「『ガイアの紋章』やってたらこんなことになっちゃって」とかさりげなく自社ソフト宣伝をしていたりもして(笑)。

 さてこのゲームの本来の目的は先に出動して行方不明になった「こういち」「モモコ」「メガネ」の3人を探すことだったはず。「メガネ」は割とすぐに見つかるのだが(可哀相な事に死んじゃうんだけど)、残り二人がなかなか見つからなくて行き詰まってしまうはず。僕もマップの奥まで行ってそこから先に進めなくなってずいぶん悩んだ。
 「いちろう」についてはヒントが出ていたことを後から思い出して発見に成功したが…例の一発死亡の地底湖の下にいるんで気づきにくいだけなのだ。地底湖の反対側の岸から渦に向かって飛び込んですぐに下方向に移動すればHPは減らされるけど一発死亡はせずに下に行ける。なんじゃそりゃ、と思わないでもなかったが、一応ヒントは出ていたんだよね…。
 問題は「モモコ」。これには悩んだ。どう考えても行けるところには全部行ったはず…とウロウロしているうち、「とりあえずスタート地点に戻ってみたら誰かいるのでは?」と考え、地上に戻ってみた。地下への入口から左へ左へと進み、スタート地点に戻ろうとしたら、どうも画面スクロールが来た時より多いような気がする。「あれ?こんなに長かったっけ?」と思っていると、いつの間にやら来たことのない画面に入り、会ってない人が立っている。そう、実はゲーム開始時点でプレイヤーが投げ出された場所から「左側」に進めるエリアが存在していたのだふざけるな!とその時は激怒したものだが、冷静になってみれば「アクションゲームは右に進むもの」と考えるのはこちらの勝手、プレイヤーの意表を見事に突いたトンチ的難問だったと許容してやれなくもない。確かに行き詰まったら思いつくことを全てやるのは基本であろう。

 この後は特に難問も無く、ラストまでまっしぐら。ラスボス戦ではゲーム冒頭から伏線のはってあった「秘密兵器」の発動により、「こういち」と「モモコ」が駆けつけてきて「楯」の役目を果たしてくれるので時間はかかるが楽勝だ。しかしラスボスがモロに「グラディウスII」ボスのパクリなのがなんとも…(汗)。もしかしてパロディのつもりなんでしょうか。

 さてクリアしてしまえば、「いろいろとあったけど、苦しませ楽しませていただきました」と言ってしまうゲームである。評価が低いのはショボいグラフィックと様々な不親切さからクリアせず投げ出した人が多かったからではないか。原作のパソコン版は移植する気になったぐらいだからそこそこの評価を受けていたのだろう。それはクリアした立場としてはなんとなく分かる。
 ただ、このゲーム全体に漂う「幼児性」が謎だ。「とうまたい」の設定、適当すぎるキャラたちの名前、それらのふざけた台詞回し、子どものイタズラ的な仕掛けの数々…などなど、どう見ても小学生以下を対象に作ったゲームとしか思えない。それも低評価の大きな理由であろう。

 …しかし最大の謎は、こんなゲームに私がこんな長文を書く結果になってしまったことだ(爆)。


◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
2.929
2.901
2.591
2.774
2.732
2.901
16.828
第628位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★

★(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10段階評価)
レビュアー
採点
岩崎啓真

ウォルフ中村

小野泉

ドーピン和樹


  

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