エターナルシティ<都市転送計画>
ジャンル:アクション&シューティング
媒体:HuCARD(3M)/バックアップメモリ対応
発売元:ナグザット
発売日:1991年4月12日
価格:6300円
商品番号:NX91003


◆世界の士郎正宗デザイン?のロボットアクションゲーム

外見  ご覧のとおり(ちょっと見にくいかもしれないが)、PCエンジンソフトの顔である説明書表のイラストは、「アップルシード」だの「攻殻機動隊」だので世界的にも有名な漫画家・士郎正宗氏の手によるものである。電源を入れるとやはり士郎SDキャラと思しき女性と、この人がよく描く妙に有機的デザインのロボットとが並んだ画面が映る。
 じゃあこれは士郎正宗氏の原作漫画かアニメが存在するキャラゲーなのか?と思わせるが、そんな「原作」はまったく存在しない。このゲームは全くのナグザット・オリジナル作品であり、士郎氏はゲームの世界観を決めるデザインを担当したということなのだろう。まぁこの表紙だけでも何となく「買ってみようかな」という気にはさせるだろうから、バカにしたものでもない。それと「都市転送計画」という意味不明だがなんとなくカッコいいサブタイトルも気になるところ。

 さて、さっそく説明書を開いてみると、これがずいぶん薄手の内容でちょっと驚く。たいていのゲームは冒頭に「世界観」というか、「どうして主人公は戦いにおもむくことになったのか?」を説明するような解説がついているものだが、これがまったく無い。必要最低限のゲームのルールと操作方法がたった4ページで説明してあるだけだ。そりゃまぁ世界観説明なんて無くたってゲームは遊べるのだが、ここまで味も素っ気もないというのも困る。
 説明書の表紙と裏表紙、そして最初のページだけに敵味方のキャラとおぼしき士郎氏のロボットのイラストが入っているが、これがそれぞれ何なのか、まったく説明が無い。ルール説明の中で「アルギデロス」という単語が唐突に出てくるので、どうやらこれが主人公が乗っているロボットであるらしいが…

 ゲーム起動画面から「START」を選ぶと、オープニングデモらしきものが始まる。ここでようやく主役ロボットの名前が「YH−25“ALGIDEROSS”」であること、そのスペックなどが英語字幕で説明される。そしてそのロボットの中にほとんど「格納」された状態(「ロボットを着ている」と表現すべきか)で女の子が入っていることが示され、その名前が「MINTY GEILE」なる19歳の少女であることが簡潔に表示される。
 …っと、ここで説明書の表紙をよく見たら小さな英文でそれは書いてあった。しかし表紙に英語で書かれてもデザインの一部としか思えないし、説明書本文中にちゃんと説明するべきだよなぁ。
 オープニングデモは実はこれだけ。戦いに赴く理由も世界観や敵の状況も何も説明されず、ボタンを押したとたんにいきなり「ゾーン1」の戦場に放り込まれる。

 「ゾーン1」の最初は地上の風景で、割と描き込みの細かい風光明媚(?)な背景の前を、アルギデロスはスタスタと歩いていく。早くも敵(全てロボット系)がワラワラと出てくるので、これを銃で撃ち払いつつ右へ右へと進んでゆき、単純な横スクロールかな…と思っていると、突然大穴が開いていてそこに落っこちてゆく。上まで飛びあがることは不可能で、ここからは地下の暗黒に上下左右に広大に広がる大迷宮を探索してゆかねばならない。
 大迷宮と書いたのは誇張ではなく、実際「ゾーン1」からしてかなり広大かつ複雑。適当にまわっていたら確実に迷う。作り手もヒントぐらいはあたえておこうと配慮したのか、説明書にかなり小さく縮小してはあるが、大迷宮全体のマップが載せられている。これを参照しながら進むのが基本だろう。
 で、説明書のそのマップには「転送都市マップ」と書いてあるので、どうやらこれがその「転送都市」というやつらしい。しかし説明書にもオープニングデモにも、「転送都市」ってなんなのか、一切説明がないんだよなぁ。プレイしていてもそのことばかりが気になって…(笑)。


◆アクションのようなシューティングのような

 このゲーム、PCエンジンソフトカタログ類には「アクション」に分類されていたり、「シューティング」に分類されていたりまちまちで、ジャンル分けをする際に困る存在のようだ。無理に分類する必要はないんだけど、プレイして見た感覚では全体としてはアクション性のほうが強いと思う。ただ攻撃方法が全て銃撃だし、操作するロボットが空中を飛んで移動したり戦ったりするので、「シューティング」的な要素が強いのは確かだ。

 しかしこのゲームは強制スクロールではなく、こちらが動くと背景もその通り動くという任意スクロールなので、シューティング戦闘はかなり面倒。それでなくても移動速度が速くないのにザコ敵が同じ場所に次々とせわしなく出現するため、いちいち相手にしてるとなかなか先へ進めないのだ。しかも自機は基本的に地べたを歩いているので、ちょっとでも高さが違う敵が来るといちいちジャンプあるいは飛行しながら撃たねばならない。もともと飛んでいる戦闘機を操るシューティングとはここが違う。ザコ敵の出現の仕方をもっと調整するべきだったろう。
 あと、「ウェポンメーター」というゲージが画面下に常に出ていて、銃撃をするたびに減り、無くなると撃てなくなっちゃうのも困り物。「弾」とは違うので自然回復する武器もあるのだが、その間あまり撃てなくなるため多くのザコがいると厄介だ。回復薬である「シールドエナジー」を2つ一度に使用すると一定時間無敵状態になってザコの間を走り抜けるなんてこともできるようになっているが、「シールドエナジー」は貴重なものなのであまりやりたくはない。

ボス戦 これまた説明書には明確に書いてないのだが、敵を倒すごとに「経験値」のようなものが設定されているらしく、画面下に表示されている「LEVEL」が次第に上がっていく。どうもレベルが上がるごとに強くなっているらしいのだが、そもそもその「経験値」がどこにも示されていない上に、「レベルが上がった」とか報告するわけでもなくいつの間にか上がっているという感覚だし、序盤から中盤ぐらいまで進めてレベルを20以上まで上げてみても、特に自機が強くなったような感じもしない。耐久力は多少ついたかな?という程度で。

 広大な「転送都市」の迷宮は全部で8個の「ゾーン」に分かれている。ザコ敵と戦いつつ迷路を探索し、そのゾーンのボスと対決して、それを倒せば次のゾーンへ進める、というお約束の展開だ。しかしこのボスがいずれもあまり強くなく…攻撃をかわしつつ時間をかけて撃っていれば簡単に倒せちゃうのが多くて拍子抜けする。これじゃザコのほうがよっぽど苦労してるぞ、と思ってしまうことが多かった。

 迷路のあちこちに「転送ルーム」なるものが設けられていて、ここに入ると上官からの命令(次は何をするかの指示や攻略のヒントなどをくれる)が伝えられたり、「回復薬」の役割をする「シールドエナジー」や武器エネルギーの「ウェポンエナジー」の補充、新しい武器や機能の追加(ブースターを入手すると飛行が可能になり、それまで行けなかったところに行けるようになったりする)などが行われる。ただしアイテムをくれるような「転送ルーム」は一度使用するとそれっきり二度と使えないので注意。たまにしかないが、耐久力を示すシールドメーターとウェポンメーターを何度でも全回復してくれるというありがたい転送ルームもある。
 この敵だらけの大迷宮の中になぜか味方の施設があるというのもヘンな気がするが、どうもそれが「都市転送計画」となんらかの関係があるらしい。しかし「エヴァンゲリオン」における「人類補完計画」のようにプレイヤーにはこの点はさっぱり分からないままゲームを進めることになる(笑)。

 謎解きストーリーらしきものもなく、ただただ広大かつ暗い迷路の中を、やたらに出てくるザコ敵の相手も鬱陶しく、ボス戦はただただ退屈で時間がかかり、せっかくの士郎美少女もまるっきり顔を見せてくれず(笑)…と、やっててちっとも楽しくないゲームである。難度はそう高くないと思うが、最後までプレイするのはかなり根性がいるはず。


◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
3.205
2.735
2.823
2.823
2.882
3.058
17.526
第613位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★

(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
採点
岩崎啓真

ウォルフ中村

TOMOYO

ミロはじめ



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