餓狼伝説2-新たなる闘い-

ジャンル:格闘アクション
媒体:ARCADE CARD専用CD−ROM
発売元:ハドソン
発売日:1994年3月12日
価格:6900円
商品番号:HCD4060


◆アーケードカード専用第一弾!

商品外見 「餓狼伝説」といえば、言わずと知れたSNK、「ネオ・ジオ」の看板シリーズの一つ。「ストII」で格闘ブームが起こっていた1991年に第1作がリリースされ、2ライン移動のシステムと、より迫力のあるデカキャラアクションとで人気を博した。1992年には一部キャラクターを交代させた「2」がリリースされ、格闘ヒロインの代表の一人「不知火舞」をはじめとするキャラクターの魅力もあって人気はますます拡大。このころには「100メガショック!」の掛け声とともにゲーセンそのままのプレイが家庭で遊べる「ネオ・ジオ」も大きく売り上げを伸ばし、家庭用ゲーム機の世界でもにわかに新興勢力となっていた。

 「餓狼伝説」シリーズは「ストII」とタメをはるように各種家庭用ゲーム機に移植されていたが、PCエンジンでは雑誌の移植希望上位に常に挙がりながらも移植は遅れた。はっきり言っちゃえば当時PCエンジンの主流であるSuperCD−ROMでは、大量のキャラパターンを必要とする格闘ゲームの移植はRAM容量の問題で技術的に難しかったのである。「ストII」の方も当初は移植不可能と言われていたほどだった。ところが「ストII」はあえて媒体をHuCARDにし、バンク切り替え技術による20Mの大容量HuCARDという手段でかなり再現度の高い移植を実現させてしまう。
 こうなると大人気のネオジオ格闘も、という話になるわけだが「100メガ」をうたうソフト群、さすがにHuCARDではもはや無理。そこでNEC−HEとハドソンはSCDにさらに大容量のRAMを追加するパワーアップアイテム「アーケードカード」を出すことで移植を実現することにしたのだった。

 アーケードカードと同時発売のキラーソフトには「餓狼伝説2-新たなる闘い-」(’94)「龍虎の拳」(’94)のネオジオ格闘2タイトルが用意された。これに続けてやはりネオジオ作品である「ワールドヒーローズ2」(’94)、少し遅れて「餓狼伝説SPECIAL」(’94)の移植も発表された。ネオジオ作品ばかりなのはアーケードカード開発の事情から言って当然ではあるが、実はこの時期SNKも自社で家庭向けCD-ROMマシン「ネオジオCD」の発売を計画しており、当時CD-ROMについては先行ノウハウを多く持っていたハドソンと取引をした、という話もある。つまりハドソンからネオジオにCD-ROMのノウハウを教える代わりに、ネオジオは自社の人気タイトルの移植を許可するだけでなくゲームのグラフィックやアルゴリズムなどの内部情報をハドソンに提供した、というのだ。
 
 当初1994年の年末商戦に投入される予定だった「アーケードカード」と「餓狼2」「龍虎」だが、この年に愛媛県の化学工場で爆発事故があり、このために世界的にRAM不足が発生、このあおりを受けて「アーケードカード」の発売は3ヶ月延期となった。たかが3ヶ月ではあるが、この3ヶ月は結果的に大きく響いたようにも思う。すでにアーケードでは「餓狼伝説SPECIAL」が大人気稼働中で、1994年3月の段階で「餓狼2」の発売というのはかなり時期外れ感があったのだ。
 おまけにこの3月に32ビット次世代機の先頭を切って「3DO」が発売され、年末には「プレイステーション」「セガサターン」「PC−FX」の発売が予定されていた。アーケードカード単体でも1万円以上の値段がするのだから、買い控えが起こるのも無理はない。

 当時秋葉原のゲームショップで「アーケードカード」と「餓狼伝説2」をセットで1万円、という売り方をしていたのを目撃している。実際そのぐらいにしないと売れないような雰囲気だったし、たぶんNEC−HEから販促のための補助金でも出ていたのではなかろうか。


◆ほぼそのまんまの移植

 上述のようなネオジオとハドソンの裏事情もあって、この「餓狼伝説2」を初めとするネオジオ格闘ゲームのPCエンジン版は、スーパーファミコンやメガドライブでの移植版に比べるとかなり原作に近い。というか、見た目、操作性に関してはほぼそのまんまと言っていいと思う。

プレイ画面 「ストII」に比べて大きく重量感のあるキャラ、そのキャラによる多彩な技のパターン、スピーディーな展開、ボーナスステージ、そしてテリー・アンディ・舞のステージにおけるスクロールで展開される派手な背景演出など、PCエンジン版は実に忠実に再現している。「ストII」移植実現の時にも驚かれたそうだが、1987年に発売開始された8ビット機であるPCエンジンの実質処理速度の高さはここでも証明された。もともと80年代後半のシューティング作品の移植を念頭に設計されたPCエンジンが、大容量RAMさえあれば90年代前半の格闘ゲームの忠実な移植ができたというのはPCエンジンの設計の先見性を証明するもので、発売当時店頭デモを見、アーケードカードとセットで購入してプレイもした僕も結構驚かされたものだ。

 もちろん原作そのままというわけでもない。そうやりこんだわけでもない僕には分からないが、当時アーケードやネオジオで腕を鳴らした達人たちに言わせれば「やっぱり操作感が違う」という声はあった(なまじ近いだけに微妙な違いがえって許せない、ということもあったかも)。また同作初のCD-ROMということで音楽がCD音声になりかなりアレンジされたものとなったが、これが「耳触り」と感じる人もいたようだ。だがラスボス・クラウザーのステージの荘厳なオーケストラ生演奏はCDならではの迫力に満ちていたと思う。
 難度は家庭用ということもあってレベルが選択できるようになった。「EASY」「NORMAL」「HARD」「ARCADE」の4レベルがあり、「ARCADE」がその名の通り原作アーケード版のレベルで「NORMAL」と「HARD」の中間とされていた。

 まぁ当時も言ってた人がいた気がするが、初代PCエンジン(白PC)にCD-ROMシステム+アーケードカードPROの組み合わせの上で「餓狼」がグリグリと動く様は「力まかせ」という表現がよく似合っていた。PCエンジンもまだまだやれるぜ!と思った人がどれほどいたかは分からないが、コアなユーザーにそう思わせるものはあったと思う。PCエンジンの初期HuCARD時代はアーケード人気作の移植が売りだったがSCD全盛期になってからは縁遠くなっており(「スーパーリアル麻雀」とかはあったんだが(笑))、アーケードカードの投入でその夢よ再び、という見方もなくはなかった。さらにはこの直後に「天外魔境III」がアーケードカード専用になるとのアナウンスもあり、もしかするとPCエンジン再飛躍の可能性も…とまぁ半年ぐらいは甘い夢を見られたような気がする(笑)。


◆CD-ROMならではの欠点

 非常に高い移植度のPCエンジン版「餓狼2」だが、ひとつ大きな難点も抱えていた。CD-ROMにはずっとつきまとう問題、CD-ROMからバッファRAMへのデータロードに時間がかかる、という問題である。特にアーケードカードはRAMを18Mまで拡張したからこそネオジオ格闘ゲームの移植を可能としたのだが、そのぶん大量のデータを一度に読みこまねばならず、その待ち時間はSCD以上に長くなることになってしまった。

 PCエンジン版「餓狼2」では対戦キャラを選択した直後、ステージとなる場所を表示するため地球を回転させているデモの間にキャラデータの読み込みを行っている。読み込みが済むまで地球は回転し続け、読み込みが全て終わってから両側に対戦キャラが表示され「○○VS△△!」とコールされる。それまで一切こちらが手を出すことはできず、アーケードやネオジオ版、さらにはSFC、メガドライブのカセット版のようにさっさとデモを飛ばして対戦に突入することができない。システム上やむをえないことなのだが、格闘アクションだけにプレイヤーはさっさとゲームに突入したいのに下手すると一分前後は待たされてイライラとストレスがたまってしまう。

 ロード時間をなくすことは不可能だが、プログラムの工夫次第で短縮したり「気にさせない」ことはできた。「餓狼2」はこれでもまだマシなほうで、同時期発売の「龍虎の拳」は真っ暗な画面にキャラのシルエットが浮かぶ画面で残りロード時間を示す棒が減って行くのをじっと待つほかなく、しかもこれがかなり長かった。こういう技術はだんだん進歩したようで年末に出た「餓狼スペ」ではほとんど気にならないレベルにまで向上している。
 ハドソンからCD-ROMのノウハウをもらった上でネオジオが作った「ネオジオCD」でも同様のロード時間の問題があり(CD-ROMドライブはPCエンジンと同じ等速だった)、結果的にはこれが大きなネックとなってネオジオCDの普及を妨げた。だからこの両者のギブアンドテイクは結局どちらにとっても不成功に終わってしまった、ということになる。

エンディング さてネオジオ版とほとんど違いがなく、その分とくにこれといったプラスアルファ要素もないPCエンジン版だが、クリア後のスタッフロールのところだけオリジナリティがある。原作のSNKのスタッフロールが終わった後に移植にあたったハドソンのスタッフロールが始まると、「餓狼2」キャラたちがギャグ調にアレンジされたCGが次々と背景に映されるのだ。チン・シンザンとビッグ・ベアがゴルフをしてたり、練習後のキム・カッファンが奥さん(?)と一緒にいる様子を羨ましそうに眺めるアンディを編み物をしている舞が睨みつけてるとか、ピースサインをしながらアップで映る十兵衛を舞が扇子ではたいている(左図)とか、キャラが立っていた「餓狼」ならではの面白CGで、ラストはテリー・アンディ・丈のトリオがボディビルのポーズ(「超兄貴」?)をしているというヘンなもの。パロディ同人誌的なノリを感じてしまうが、さすがはハドソン、CGレベルは結構高くPCエンジンならではの追加サービスだったと言えそうだ。


◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
4.342
3.798
4.080
3.872
4.087
3.395
23.574
第84位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★

★電撃PCエンジン(100点満点での採点)
レビュアー
総合評価
岩崎啓真
60
ウォルフ中村
70
ウキキ松崎
60
城イドム
90

ウォルフ中村評価(各項目5段階評価)
グラフィック
サウンド
操作快適度
ゲームバランス
オリジナリティ
コストパフォーマンス







★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
総合評価
野田稔

ローリング内沢

イザベラ永野

TACO・X



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