餓狼伝説SPECIAL

ジャンル:格闘アクション
媒体:ARCADE CARD専用CD−ROM
発売元:ハドソン
発売日:1994年12月2日
価格:6900円
商品番号:HCD4067


◆アーケードカード最大のヒット作

商品外見 PCエンジンのさらなる脱皮と生き残りを賭け、1994年3月に市場に投入された「アーケードカード」。その最大の狙いはアーケードで当時大流行していた「格闘ゲーム」の移植にあった。アーケードカード専用ソフトの目玉となるラインナップは全て「ネオ・ジオ」からの移植で、その中でも最大の目玉商品が、当時大ヒット稼働中だったこの「餓狼伝説SPECIAL」だった。PCエンジン版「餓狼伝説SPECIAL」(’94)は1994年の年末商戦に投入され、実際にこの時期のPCエンジンソフトとしては最大の売り上げを記録している。アーケードカード専用では最大のヒット作に間違いないだろう。

 しかしこの一本がアーケードカード最後のヒット作でもある。1994年12月といえばセガの「サターン」、ソニーの「プレイステーション」、NEC−HE&ハドソンの「PC−FX」といった32ビット次世代機が集中的に発売された時期で、先行するCD-ROMマシンであったPCエンジンも一気に過去のものとなってしまう。そんな時期だけに単体でも1万円以上の値段がするアーケードカードを購入してまでPCエンジンで「餓狼SP」を遊ぼうという人は、正直なところかなり物好きのレベルだったと思う。
 一応この時点ではまだ「天外魔境III」がアーケードカード専用ソフトとして発売されると「公約」されていたので「天外待ち」の人も多かったようだ。しかしこれも結局翌95年3月にPC-FXへの移行が発表され、アーケードカードは完全に「終わっちゃった存在」となった。

 PCエンジンの歴史をひもとけば、似たような例が「PCエンジンSUPERGRAFX」にあった。これはPCエンジン上位互換機で、当時のアーケードの人気作「大魔界村」(’90)「1941カウンターアタック」(’91)をかなり忠実に移植できたのだが、それらが発売される頃にはすでに「終わったマシン」と化していたのだ。アーケードカードの方は「餓狼スペ」の後もいくつかしぶとくソフトが出されるのだが、結果的には「スパグラ」の轍を踏んでしまう形となった。


◆原作をほぼ忠実に移植

 「餓狼SP」はSNKの「餓狼伝説」シリーズの第3作目(「3」は別にあるので番外編的存在)で、1993年9月にアーケードにお目見えした。同シリーズの「1」「2」のキャラが結集し、登場キャラは実に15人。この時点での総集編的な位置づけとなっていて、前作ではプレイヤーは使えなかったビリー、ホーク、ローレンス、クラウザーといった終盤ボス連中も操作可能となった。条件を満たすと最後にSNKの他作品「龍虎の拳」の主人公リョウ・サカザキが登場する、という「おまけ」もある。まさに「スペシャル」の名前にふさわしい豪華格闘ゲームだ。システム面では当時の流行であった「連続技」を導入し、とくに対人対戦に深みを持たせている。

 PCエンジン版は原作のリリースから一年以上経った1994年12月の発売で、ややピーク時期を逸したきらいはあったが、移植度そのもののはかなり高い(オープニングデモのクラウザーのアップ描写がない、といった細かいカットはある)。これは「餓狼2」の項目でも書いたようにSNKとハドソンとが互いに協力し合い、SNKからグラフィックやアルゴリズムなどのデータを提供されたためと見られる。
ゲーム画面 まさに「そのまんま」の移植であるためPCエンジン版そのものについてはあまり語るところがない。すでに「餓狼2」でほぼ完全な移植が可能であったから、「餓狼SP」も技術的には特に問題はなかっただろう。実際PCエンジン版は原作・ネオジオ版にほとんどひけをとらない出来となっている。「餓狼SP」ならではの注目点は左図のタン・フー・ルーステージの絵画を思わせる美しい背景、オーラを放つ「撃放」という技のグラフィックがPCエンジンのパワーでも見事に再現されている、ということぐらいだろうか。
 クリア後のスタッフロールのハドソン部分でコミカルになった餓狼キャラたちのCGが表示されるのは「2」から引き継いだもの。ただ「2」ほどの工夫はなく、あまり面白みはない。

 前作でネックとなったCD-ROMならではの問題、大量データをロードする時間も大幅に軽減され、ストレスはかなり少ない。対戦キャラが表示されるとすぐ早送りでステージに入れるようになり、格闘アクションのテンポをそれほど崩さずに済んでいる。どうやってロード時間を軽減したのかは分からないが(素人目にだが、細かいところで少しずつロードしてるような)、こういうのはプログラム次第である、ということなんだろう。
 この点、ハドソンからCD-ROMのノウハウを受けてSNKが作った「ネオジオCD」版の「餓狼SP」は読み込み時間でかなりつらいものがあると聞く。PCエンジンとアーケードカードさえ持っていれば比較的少ない投資でネオジオとそう遜色ない、下手するとより快適な「餓狼SP」を遊べた、ということにもなってしまう。


◆ PCエンジンとゲーセンと

 そのせいでもないだろうが――この前後に、「以後の作品は他機種には移植せず」宣言をSNKが出している。主目的はネオジオ及びネオジオCDの普及を図るためだったと見られるが、結果的にはほとんど不発になった。どっちにしてもPCエンジンアーケードカードへのネオジオ格闘の移植は技術的にもこの辺が限界だったようで、当時大人気で移植希望のトップ常連になっていた「サムライスピリッツ」については「技術的に移植不可能」と雑誌でメーカー側から回答されていたから、このあとにネオジオ格闘が移植される可能性はまずなかっただろう(格闘以外なら「雀神伝説」なんてのがネオジオから移植されてるけど)

 ともかく、1987年に発売された8ビットマシンであるPCエンジンの上で1994年段階での最新格闘ゲームがほぼそのまんま遊べるというのは当時のゲーム業界の日進月歩ぶりから言って驚きだったと思う。もちろんCD-ROMシステムやアーケードカードといったパワーアップアイテムを付けた上での話ではあるが、PCエンジン本体の基本性能に変わりはない。ここらへんが限界ではあっただろうが、ゲーセン移植マシンとしての実力を最後まで見せてくれたということでもある。

 PCエンジンはもともとシューティングゲーム全盛期に設計され、一番古い「スペースインベーダー」から始まり、80年代の全盛期ゲーセンシューティングの多くが移植された。90年代に入ってからの格闘ブームにもなんとか対応したことで、PCエンジンワールドはゲームセンターの歴史をまとめて見られる博物館的要素もあったりする。「餓狼伝説SPECIAL」はそのゲーセン移植作博物館の最後を飾る豪華作(厳密にはこのあとに出た「スーパーリアル麻雀PVカスタム」がゲーセン移植の最終作)としてPCエンジン史的に歴史的価値があるのだ。


◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
4.116
3.902
3.800
3.680
3.857
2.988
22.343
第187位

★電撃PCエンジン(100点満点での採点)
レビュアー
総合評価
岩崎啓真
85
ウォルフ中村
95
ウキキ松崎
90
城イドム
90

ウキキ松崎評価(各項目5段階評価)
グラフィック
サウンド
操作快適度
ゲームバランス
オリジナリティ
コストパフォーマンス







★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
総合評価
浜村通信

鈴木ドイツ

渡辺美紀

ジョルジュ中治



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