カトちゃんケンちゃん

ジャンル:アクション
媒体:HuCARD(2M)
発売元:ハドソン
発売日:1987年11月30日
価格:4500円
商品番号:HC62006


 外見◆PCエンジン立ち上げ時のキラーソフト?

 本作「カトちゃんケンちゃん(’87)の発売日は1987年11月30日。まだ昭和の御代の62年、PCエンジン本体の発売開始からちょうど一カ月後の発売だった。PCエンジンの本体と同時発売になったのは「上海」(’87)「ビックリマンワールド」(’87)の2作という、えらく地味なラインナップでのスタートで、その後の11月21日に当時としては驚異的だったデカキャラアクション「THE功夫」(’87)が発売されている。そしてこの「カトケン」である。ドリフターズの人気者二人を主役にしたタレントゲームであり、その二人が出ていたTV番組とのタイアップ商品でもあり、なおかつ内容は単純明快なアクションゲームということもあって、PCエンジン最初期のラインナップにあっては明らかに一番の目玉商品だった。その評価はさておき、PCエンジン初期ソフト内においてプレイ人口がそこそこ多く、知名度の高いソフトであることは間違いない。

 僕も含めて、その時代を知る世代には説明の必要はないが、一応「ドリフ史」をおさらいしておこう。ドリフターズ全員が出演していた伝説的お化け生番組「8時だよ!全員集合!」がついに16年の長期放送に幕を下ろしたのが1985年のこと。絶大な人気を誇ったこの番組だったが終盤にはマンネリも否めず、「ひょうきん族」など若手のアドリブ系お笑いに視聴者を奪われつつあった。全員集合を放送していたTBSではそのころからドリフのうちで人気のある加藤茶志村けんをメインにした番組に引き継ぐ計画を立てていて、それが「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」(1986〜1992)として実現することになる。
 この「ごきげんテレビ」、生放送だった「全員集合」とは違いコントは録画で、加藤と志村がデコボコ探偵コンビを演じる「ディティクティブ・ストーリー」なるTVドラマスタイルとなっていた。失敗ばかりで貧乏している探偵事務所の二人のもとへ謎の「ボス」から「私だ」と電話がかかってきて「今回の任務」が伝えられる。ところがお約束で二人はやっぱり失敗ばかり…という内容だった。人気はそこそこあったようで「ごきげんテレビ」のメインとして製作され続けていた。

 このゲーム「カトちゃんケンちゃん」は名前にこそ「ごきげんテレビ」と入っていないしTBSのクレジット明記もないが、明らかにこの番組を意識したものだ。しかもゲームの冒頭、事務所に電話がかかってきて加藤と志村が「出動」するところは明らかに「ディティクティブ・ストーリー」をなぞっている(部屋にあるテレビに「カトケン」が映っている…)。しかし電話は「ボス」からのものではないようで、「私だ」というお約束のセリフも言わないし、電話をとったカトケンも「え?さらわれた?」とだけ唐突に言って出動してしまう。どうやら誘拐事件の解決にかけつけてゆくことになるらしいのだが、それがどうしてこんなみょうちきりんな世界で飛んだり跳ねたりすることになるのか、さっぱり分からない(時々黒服の男たちが襲ってくるところに何となく原作のムードはあるが)。まぁ当時はアクションゲームなんてそんなもの、という空気もあり、深くツッコむ人はあまりいなかったんじゃないかと思う。

 ただし、このゲームでプレイヤーキャラとして使われる「カトちゃん」「ケンちゃん」の二人の顔は、デフォルメされてるとはいえかなりリアルなもので、当時のゲーマーは結構驚いていたようだ。先行するファミコンにおいても人気タレントを使ったゲームは存在していたが、この「カトケン」における「本人そのまま」の顔表現を実現したデカキャラは、視覚的にPCエンジンの性能を見せつけたと言っていい。ただ顔だけリアルな二頭身キャラは不気味と言えば不気味でもあり…(笑)。要するにこのゲーム、実在のタレントを使った「スーパーマリオ」といった趣きだ。


◆激ムズなアクションワールド

 このゲームでは開始時にプレイヤーキャラを「カトちゃん」にするか「ケンちゃん」にするか選ぶことになる。どちらにしても大して難度の違いはないのだが、両者のプレイ感覚は微妙に異なり、人により好みが分かれる。「ケンちゃん」の方がやや速度があると同時に急ブレーキが利かず前方に飛びだしやすい、というのはあるかな。
 二人のうちどちらかを選択すると、選ばれたキャラが「誘拐」の連絡電話を受けて出動、選ばれなかったキャラは「ずるいんでない?」とスネて行く先々でプレイヤーキャラを妨害したり、あるいは体力を回復してくれたり攻略ヒントをくれたりする役回りとなる。この時に「だいじょぶだぁ〜」だの「バカ殿さま」だの「カトちゃんペ」だの、それぞれの持ちネタが使われている。ヤカンが落ちて来て頭を直撃、というのもドリフ世代には懐かしいネタだ。
 
 アクションゲームとしてはいたって普通の横スクロールで、襲ってくる敵キャラを避ける、あるいは蹴飛ばしたりジャンプ踏みつけにして倒しつつ、先へ進む内容。各エリア4ステージ、6エリアが用意されていて、一面が町中から地下通路、二面ではいきなり南国の海、三面では雲の上、といった具合に舞台は「ディティクティブ・ストーリー」とはおよそ関係がない。
 プレイした人の多くが語るのが、このゲームのシビアさだ。敵の攻撃を受けたり接触すると体力が減るのは当然だが、岩などの障害物にちょっと触れただけでもかなりダメージを受ける上に、何もしなくても時間が経つと体力がドンドン減って行く。そこかしこに体力回復アイテムがあったり、こまめに全回復の秘密部屋(ドアを蹴飛ばすと入れる)があるので一応バランスはとっているのだが…点数を集めて行くと残り人数や体力も増加していくお約束も装備されているけどかなりキビシイ難度であることは間違いない。
 特に「転落」はともかくとして、焚き火にちょっと触れただけで火だるまになるなど割とささいなことで一発死亡が多いのがキツい。ともかくとしてと書きつつ、かなり意地悪な構造が多いうえに「カトちゃん」も「ケンちゃん」も進行方向にかなり強い慣性がかかっている(つまり前方へスベっていく)ので、転落で一発死亡という悔しい目にあうことが多い。コツとしては迷ったりせず思いきってジャンプを繰り返して進む、ということのようだが。
 ジャンプと言えば、、このゲームではジャンプして敵に踏みつけ攻撃をかけられ、その繰り返しリズムにハマると何とも快感。この敵を踏みつけてジャンプを繰り返さないと先へ進めない部分もある。相棒キャラが空き缶を次々投げて妨害してくる所でうまく相手の上方にジャンプすると空き缶へのジャンプ攻撃が延々と続けられ、一気に大量得点、という作戦もあった。このゲーム、得点により残り人数が増加する仕掛けなので、つとめて点をとりにいく必要があるのだ。

 これも「スーパーマリオ」に学んだのだろうが、ステージのあちこちに仕掛けがあり、そこかしこを蹴飛ばせば隠し部屋やアイテムが出てくるし、ボーナスステージやワープコースも豊富に用意されている。あちこちでメダルが手に入ることがあるが、ところどころに隠されているスロットマシン部屋でそれを使って目をそろえ、体力回復やパワーアップアイテムを手に入れることもできる。
 また各エリアの最後にボスが待ち受けているのだが、そのボス戦に入るためにはカギが必要で、ステージのどこかに隠されているカギを探さなければならない。カギを持たずにボス戦直前まで行った場合はワープで元に戻って探すことも可能だ。
 初期ソフトということもありセーブ機能はない。全滅したらそこでゲームオーバーだが、そこで「I+II+RUN」を押し続けるとその時点で進んだエリアの最初からやり直しができるようになっている。

 難度はともかくとして、総じて子供が遊んで楽しめる要素はふんだんに盛り込まれている。これといったオリジナリティはないんだけど、人気タレントの起用も含めて当時としてはそこそこ遊べるソフトとして多くの人に遊ばれたようである。


◆ 独特の下品さも

 人気絶頂期のドリフが「子供に見せたくない」と何かとPTAのやり玉に挙げられていたことはよく知られる。その理由の一つが「下品」なのだが、これはどの時代にも子供向け(小学生以下)には見られる現象なので、そう批判されることはむしろ狙い通りというところだろう。その直接的な「下品さ」はこのゲームにも大きな要素として含まれている。

 まず何かというと「ウンコ」が出てくる(笑)。空を飛ぶ鳥が落としてくるし、壁を壊しても出てくることがある。さらには相棒キャラの「カトちゃん」「ケンちゃん」が行く先々で野グソ中で、それを蹴飛ばすとお尻丸出しで吹っ飛ぶ(笑)。立ちションをしている光景もしばしば目撃される。
 そして攻撃方法の一つに「オナラ」がある。後ろを向いてしゃがみこみ、下キーを押し続けるとプゥーとオナラを発射、その匂いで敵を倒してしまうのだ(「ポテト」のアイテムを手に入れるとオナラの距離が長くなったりもする)。このオナラ攻撃でないと倒せないボス敵もいるほど(笑)。まぁ下品と言えばあまりにも直接的に下品だが、子供が喜ぶ要素には違いない。

 しかしこのストレートな下品さはアメリカではアウトだったようで…アメリカ版PCエンジン「TurboGrafx16」向けソフトの「J.J.&JEFF」というのが「カトちゃんケンちゃん」の海外版で、キャラの顔を欧米人風に描き変えただけで基本的には同じゲームになっているのだが、こうしたお下品ネタは全てカットされている。「野グソ中」も単に草むらの中で何かイタズラしようとしているだけ、「立ちション」も向こうを向いてスクワット(?)をしているだけ、「オナラ攻撃」は前方へのスプレー攻撃に変更されてしまっているのだ。あちらは子供向けとなると妙にキビしいところがあるからなぁ…。
 この「J.J.&JEFF」の方は後年Wiiの「バーチャルコンソール」で海外では配信されたが、日本では「カトケン」が配信されることはなかった。恐らく実在人物を使ったキャラゲーであることがネックになったのだろう。

 最後になったが、このソフトのTVCMには当然と言えば当然だが、「カトケン」の当人たちが出演している。駅(?)にやって来たケンちゃんが「カトケン一枚!」とHuCARDを差し出し、駅員(?)のカトちゃんが「おっ、HuCARDだね!?」とそれをPCエンジンに挿し込み夢中になってゲームをしちゃうという展開。当時はHuCARDじたいが物珍しかったろうし、その宣伝も兼ねていた気がする。


◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
4.086
3.326
3.099
3.263
3.189
2.990
19.956
第455位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★



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