奇々怪界
ジャンル:アクション
媒体:HuCARD(4M)
発売元:タイトー
発売日:1990年3月27日
価格:6600円
商品番号:TPO2009


商品外見◆巫女さん主役の妖怪アクション!

 「奇々怪々」ではなく「奇々怪である。このゲームはもともと1986年10月にタイトーからゲーセン向けにリリースされたものがオリジナルで、このPCエンジン版はその移植作ということになるのだが、ゲーセンでのリリースから実に3年半近くも遅れての移植である。業務用ゲーム機と家庭用ゲーム機の性能差が大きかったこの時代には移植が数年送れというのは珍しいことではないが、本作はその中でも遅めの方と思われる。
 調べてみると、ゲーセンでリリースされた翌年の1987年8月にファミコンのディスクシステムで最初の家庭用移植版が発売されている。しかしゲーセン版そのままの移植はディスクシステムをもってしても無理だったようで、開き直って雰囲気優先で似せただけのかなりのアレンジ移植になっていた。それとほぼ同時期にMSX2向けにオリジナルにかなり準拠したとするものが出ていたそうだが、それでもマシンパワーからいってまだまだのものだったみたい。
 PCエンジン版はそれらに遅れること実に2年半で発売されたわけだが、そもそもPCエンジンの登場自体が1987年秋のこと。PCエンジンの勢いがついてきたのが1988年中で、タイトーは1989年3月の「究極タイガー」(’89)の投入で参入している。その後HuCARD向けにゲーセン移植作をコンスタントに発売していき、その中でこの「奇々怪界」が投入されたわけだ。少々遅めのリリースではあったが、それだけにそれまでの移植作に比べれば格段にオリジナルに近い出来の移植となっている。もちろん、そのまんまというわけにはいかなかったけれど。

 このゲーム、主人公が「小夜ちゃん」なる巫女さんである。今にして思えばはるかのちにジャンルとして明確になる「巫女さん萌え」のルーツであったかもしれない。この「奇々怪界」がその後スーパーファミコンでシリーズ化(3作出た)されたり、小夜ちゃんが他のタイトーゲームにゲスト出演したりしていたのを見ても、この主人公に萌えた人がかなり多かったことがうかがえる(笑)。もっとも設定上、これらのゲームに出てくる「小夜ちゃん」はゲームごとに別人ということなのだそうで(何せファミコン版も別人扱い)、PCエンジン版はゲーセン版と同じ「初代小夜ちゃん」が遊べるという点でもポイントが高い(笑)。
 小夜ちゃんがお祈りをしている目の前で宝船に乗った七福神の皆様が妖怪たちに連れ去られてしまい、小夜ちゃんは七福神を救い出すべく妖怪だらけの神社の境内を走り回る…という設定で、PCエンジン版は七福神たちが連れ去られるオープニングもほぼゲーセン版そのままに再現している。


◆高難度のシューティング&アクション


 七福神は各ステージのラスボスに捕らわれていて、ラスボスを倒すと解放できる。つまり全7ステージあるわけだが、おまけでもう一つ最終ステージが存在する。どのステージも神社の境内(えらく広い境内だが)で、鳥居や石灯籠、さらには地蔵やお墓など和風なムードで統一されている。登場する敵キャラ・妖怪たちも一つ目小僧や火の玉、から傘、ろくろっ首などおなじみの和風オバケばかりだ。
 各ステージはなかなか美しいグラフィックでオリジナルのゲーセン版に雰囲気は良く似せていて、小夜ちゃんの操作感覚も敵キャラの攻撃法などもほぼ同じ。だが上下左右あちこちにスクロールする構成になっているせいか原作そのままにはなっておらず(忠実度が高いのは一面くらい)、オリジナルの各面の要素をあれこれ組み合わせたり、2面以降に分岐ルート(難度は特に変わりはない)が用意されるなどアレンジもかなりなされている。これは「究極タイガー」とおんなじで、無理に原作そのままに移植するのではなく、家庭向けに遊びやすくして雰囲気の再現を優先したということなのだろう。

 小夜ちゃんの戦闘方法は「お祓い棒」(Iボタン)と「お札投げ」(IIボタン)の二種類。「お祓い棒」とは神主や巫女さんが「お祓い」に使う、変な紙飾りのついたアレのことで、このゲームではすぐそばに来た敵キャラを剣の如く「祓って」、サッと吹っ飛ばすことができる。一方の「お札投げ」は妖怪退散のお札を妖怪めがけて手裏剣の如く投げつけ消滅させることができる。要するに前者が近接戦闘、後者が射撃にあたるわけで、これがこのゲームを基本的にはアクションゲームでありながらシューティング要素の強いものにしている。
 どちらの攻撃も使えるのだが、当然「お札投げ」の方が相手と距離があるだけに有利と言えば有利。うまくコントロールすると斜め方向にも連続して投げられるので使い勝手は結構よく、基本的にお札投げだけでゲームを進めることができる。ただ敵が大勢群がり出てきたり敵の動きが速かったりすると対応しきれなくなり、その時は「お祓い棒」で対応、ということになる。IボタンとIIボタンを一緒に連打して両方とも同時に使うことも可能だが、後述する強力アイテム「水晶玉」はI・IIボタン同時押しで使うので、うっかり両方のボタンを使っていると使いたくない場面で発動させてしまうことになりがち。

5面 敵キャラの編隊を全滅させたり、石灯籠の前でお祓いをしたりすると各種のアイテムが手に入る。「おにぎり」のように単に点数をくれるだけのものもあるが、お札の距離や貫通力をパワーアップできるものはありがたい。中でも、たまにしか出ないのだがお札を大きくするものは破壊力抜群でかなり助かる。こうした強力なアイテムは井戸から次々と吐き出される「ばけうり」の中に紛れこんでいることが多く、点数稼ぎも兼ねて井戸の前でずっとアイテム待ちをする作戦もある。
 もっともあまりじっとしていると「走り鯛」(はるか遠くからピョンピョン駆けこんでくる)や「ばけちょうちん」(プリッとオナラのような音を出して火の玉を吐いてくる)などかなりうっとうしい攻撃をかけてくる敵が現れるので注意が必要。オリジナル版では1面からちょっとでも立ち止まっていると地中からガイコツが出て邪魔するようになっていたが、PCエンジン版では4面以降にならないと出現しない。

 ステージ内のあちこち強力アイテム「水晶玉」が隠されていて、お祓いやお札攻撃をすると出現する。「青」「黄」「赤」の三種類あり、ここぞという場面でI・IIボタン同時押しで発動される。青い水晶玉は画面内の敵が一定時間動きを止め、黄色い水晶玉は画面内の敵を消滅させ、赤い水晶玉は小夜ちゃんが一定時間無敵状態になる。まめに探せば結構見つかるのでストックしていよいよピンチという時に使うものなのだろうが、僕などはたいてい入手直後にピンチになって使ってしまっていて…
 あと、ステージ内のどこかにかならず「鍵」が落ちていて、これを手に入れないとボス戦に入れない。1〜4面まで見た限りでは分かりやすく置いてあるので特に問題になることはないのだろうけど、先の面では分かりにくいのもあるのかな?
 

◆後半はかなりキビしい…

 上の文で分かるように、僕はこのゲームの5面途中までしか進めていない。オリジナル版に比べると前半の1〜3面はかなり難度が下げてあるのだが、それでも当たり判定はかなりキビしめで、敵がやたらと多く出てくる場面ではすぐ敵と接触してアウトになりがち。とにかく敵の出現パターンを覚え、慎重に行動すれば3面まではなんとか突破できると思う。4面になるとオバケたちが弾を飛ばしてくるのでいっそう慎重に歩みを進めねばならなくなる。
 各ステージの最後には巨大ボスが待ちかまえていて、それぞれ個性的な攻撃をかけてくる。ボス戦はオリジナル版を良く再現していて、難度もそこそこ。しかし4面ボスの「山婆」戦には参った。ゲーセンのものよりもどうしても画面が小さいのでボス戦では逃げ場が少なく、とくにこの山婆の包丁投げ攻撃は相手の動きも激しいのでかわすのが大変。一度でもやられると直前からやり直しのうえパワーアップもゼロに戻ってしまっているのでリターンマッチではまず勝てない。この山婆戦だけで何十回やらされたものやら。4面についてはノーミスでボス戦までいかないとまず無理なんじゃないかと思う。

 山婆を倒してもそこからが大変。5面からゲーセン版に近い難度になり、倒しても倒しても復活するガイコツが邪魔してくる。この文章を書いている時点で僕が進んだのは5面ボス戦手前まで。七福神全員を救い出しても宝船を探してくる最終面があるから全部で8面構成ということになるのだが、とてもそこまでは進めそうにない…
 なお、このPCエンジン版「奇々怪界」は2008年7月に任天堂Wiiの「バーチャルコンソール」で配信されている。


◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
4.3
3.5
3.4
3.7
3.5
3.5
21.84
第236位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★

★(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
採点
岩崎啓真

ウォルフ中村

小野泉

山崎拓




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