おぼっちゃまくん
ジャンル:アクション
媒体:HuCARD(4M)
発売元:ナムコ
発売日:1991年3月15日
価格:6800円
商品番号:NC91001


外見◆当時大人気のアニメをアクションゲーム化!


 「おぼっちゃまくん」は異能のギャグ漫画家・小林よしのりが生み出した大ヒット漫画&アニメで、PCエンジン時代ともいえるこの時期(80年代後半〜90年代初頭)に小学生だった子供たちにとってはほとんど聖書のように崇められた、時代を代表する一作だ。ここで説明する必要もないとは思うが、超がつくなんて言葉では生易しいほどの凄まじい大金持ちの御曹司である「御坊茶魔(おぼう・ちゃま)」を主人公にした漫画で、とくに彼が発するダジャレ言葉、「ともだちんこ!」「おはヨーグルト!」「さいなラッキョ!」といった「茶魔語」が子供たちにバカ受け、大流行となってしまった。アニメも大人気で89年から92年まで3年にわたる長期放映となり、小学生の間では「国民的人気アニメ」となっていた。その一方でこの作品がもつ「下品さ」が大人から拒絶反応も受け(まぁだからこそ子供が喜ぶのだが)、親に嫌われる漫画・アニメの代表的存在でもあった。作者・小林よしのりはその後言論漫画を描き始め、ドンドンおかしな方向へ進んでしまうことになるが、そのキッカケも世間のそういう風当たりにあったかな…という気もしている。まぁそれはゲームとはとりあえず関係ない。

 漫画やアニメが人気になれば次はゲーム化、というのはファミコン以来のパターンというもので、人気絶頂期の1990年からほぼ同時に開発を始めたのだろう、91年の3月にナムコからこのPCエンジン版、4月にテクモからファミコン版の「おぼっちゃまくん」ゲームが発売されている。ただし両者は原作以外は全くの無関係で、ファミコン版はボードゲーム型になっていたとのこと。

 PCエンジン版はオーソドックスな横スクロールアクションゲームとなったが、発売元があの「ナムコ」であるのが意外。しかし著作権表示をよく見るとPCエンジン参入メーカーであった「パック・イン・ビデオ」の名前もある。「はて?」と思い当時の雑誌を調べてみると、このゲームは本来「パック・イン・ビデオ」から発売とアナウンスされながら、突然ナムコからの発売に変更されたという経緯があるのだ。開発を進めていた会社が倒産したため別会社が引き受けて…というパターン(「アームドF」など)もあるのだが、別にパック・イン・ビデオが倒産したりPCエンジンから撤退したわけでもないので原因は全くの謎。エンディングを見ると開発は「ARC」という会社が行っているようだが…。ともかくナムコにとっては「発売だけ請け負ったソフト」と言っていいようだ。ナムコのアニメキャラゲーといえば「ちびまる子ちゃんクイズでピーヒャラ」(’92)という謎のソフトもあるが、もしかするとこれも似た事情があったのかもしれない。
 付け足しておくと、著作権表示には原作者以外に小学館・テレビ朝日も併記されており、説明書の画像もすべて漫画ではなくアニメ版の絵が使われている。タイトルで「アニメをゲーム化」と書いたのはこのためだ。

 ゲームを起動するとちょっとしたビジュアルシーンでプレストーリーが語られる。富士チャマーランドの真下から突然亀の甲の形をした巨大古墳が出現、これがなんと茶魔のご先祖「ちゃまとたける」の「亀の甲古墳」だった。御坊家の記録によればこの古墳は侵入者があったときに地上に出現するとかで、茶魔は4人の「友だちんこ」を誘って古墳へ向かうが、その途中何者かによって友だちんこ全員が連れ去られてしまう。茶魔はみんなを救い出すべく大冒険に…!といったストーリー。まぁ一応原作世界をうまく取り込んだゲーム設定というべきかな。茶魔は陸に海に空にとさまざまなステージを通り抜けていくことになるが、これらのゲーム舞台は話の筋とはとくに関係はない。


◆「茶魔語」オンパレードのステージ

 「『おぼっちゃまくん』といえば茶魔語だ!」というわけで、このゲーム、そこかしこに茶魔語が氾濫している。主人公の茶魔を操作しているときも方向キー上で「じしんまんまんでしゅ」の見栄きりをするし、下を押せば四つんばいになって「こんにチワワ」、スイッチI+IIで「ぶれいもも」のハイジャンプをする(…とマニュアルにはあるのだが、なぜか僕は実行できない)。IIボタンを押しながら移動すると茶魔が杖をついてノロノロ歩く「ひ〜こらばひんばひん」のポーズをとる。これらのポーズはポーズだけで、特に攻撃に変化が生じるわけでもない。おぼっちゃくんファンの小学生がいろいろやって喜ぶ…というところかな。さすがにすぐに飽きられると思うが。
 
 茶魔の攻撃方法もしっかり茶魔語。IIボタンが攻撃ボタンで、押すと「さいなラッキョ」を前方に投げつけ敵を攻撃する(命中すれば一撃で敵は倒せる)。これはアイテムをとることで射程が4段階に変化する。この辺の感覚はややシューティングゲームに近い。
 攻撃方法は他にも「踏みつけ攻撃」がある。これはジャンプするなどして敵の上方からチョンと踏みつければそのまま一撃で敵を倒せるというもの。決まると軽快ではあるのだがタイミングを間違えるとこちらにダメージがあって茶魔が一体死んでしまう上にステージの最初からやり直しというのが厳しい。

ゲーム画面 この手の版権ゲームは大勢いる原作のキャラを無理やり登場させるケースが多いのだが、このゲームは比較的無理なく登場させてるほう。ステージのところどころにある「亀の甲」の上に乗って上キーを押すと茶魔が演歌歌手の姿になって「〜してもら演歌」というポーズをとる。すると近くにあったアイテムがさまざまなマークに変化し、これをとるとお助けキャラとして原作のキャラクターが次々登場してくれるのだ。
 特に助かるのは一面から登場する「身我割成高(みがわりなりたか)」さん。原作でも茶魔の影武者の役どころだったが、このゲームでも常に茶魔の前に立ちはだかり敵の攻撃から守ってくれるだけでなく敵の粉砕もしてくれる。彼さえいてくれればほぼ無敵状態で先へ進めるのだが、方向切り替えへの反応が若干鈍いので油断しているとダメージをくらってしまう。
 また上の画面内にも映っているが、「クリコロまん」というアイテムをとると茶魔の「おとうちゃま」が武装ヘリで出現、弾をバラまいて大量の敵を一挙粉砕してくれる。さすがにこれは一定時間(ヘリが画面内にとどまっている間)のみだが、「おとうちゃま」の過激な愛を感じて心強い(笑)。
 他にも「こわがリータ」(茶魔の後ろに隠れつつ攻撃補助)「通掛聞造(とおりがかりきくぞう)」(会うと茶魔が一体増加)「うんの子フンフン」(UFOもどきに乗って現れ画面内敵を一掃)「ピエール」(茶魔の愛亀。乗ると一定時間無敵状態)といった調子で原作の脇役キャラがそれなりに役割を与えられて登場している。なお「友だちんこ」たちは救出されるだけなので各ステージの最後に出て茶魔とちょっとした寸劇(?)を演じてくれるだけ。
 「〜してもら演歌」で呼び出せるのはお助けキャラだけではない。あの「おはヨーグルト」も登場するのだが、なぜかこれをとると敵が一定時間凍りつき(ギャグが寒いからか!?)、こっちはやりたい放題になる。あと画面にやたらに出てくる「いたらき」を20個とるとか、コミック本を見つけるとかすると茶魔が一人増えるという謎の現象(笑)もある。

 登場する敵のほうもダジャレネーミングだらけだ。各ステージの最初に主な敵キャラは名前つきで紹介されるのだが、1面では「とらック」(トラのトラック)「しつこか」(しつこい蚊)、2面では「車エビ」(車輪がついたエビ)「おめでタイ」(笑顔で扇子で踊りながら泳ぐタイ)…といった調子。実はこれらの敵キャラは雑誌(未確認だが月刊PCエンジンかな?)で読者投稿のイラストコンテストを行った採用を決めたもので、ゲームをクリアするとエンディングのスタッフロールでゲーム中に登場した敵キャラの名前とともにその名前を考案して採用された読者の名前が表示される(HuCARDのため全部ひらがな表記)。採用されたのは「優秀賞」のみなのだが、そのほかに「佳作」「努力賞」の受賞者も全部表示され、どうみても100人は軽く超す名前が延々と流れる。おそらくほとんどが当時小学生の子供だったかと思われるが、こうしてゲームの中にその名が刻まれているというのを当人たちは大人になった今どう思うかなぁ…などと感慨深い。傑作は「どつきのわぐま」「ねコンドル」「そこどかん貝」かな(笑)。

 ゲーム自体はやはり小学生向けを意識してか難度は低め。全17ステージが用意されており、4ステージ進むと巨大ボスが出てきて、それを倒すと「友だちんこ」を一人救出できる。それを4回繰り返すと、最後に「ちゃまとたける」が現れ古墳の最奥部にあるラスボス戦のステージに導かれる。セーブ機能はないがゲームオーバーになっても電源を切らない限り最後のステージからやり直せるので、しつこくやればたいがいの人はクリアできるだろう。
 
 スタッフロールの中に「こうじろ ちえ」の名前が見える。そう、茶魔の声優の神代知衣さんだ。このゲーム、HuCARDながら頑張って肉声を随所に入れており、ミスしたときの「へたっぴー!」や「ともだちんこ!」、エンディングの「さいなラッキョ!」などは神代さんの声で聞くことが出来る。
 総じて原作というかアニメ版のファンのお子様には喜んでもらえるんじゃないかな、という出来ではある。ただ当時のPCエンジンのユーザー層がそれとどれほどかぶったのか疑問もあるが…


◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
3.854
3.041
3.020
3.145
2.791
3.333
19.184
第525位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★

★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
総合評価
東府屋ファミ坊

水野店長

森下万里子

TACOX

 

迷い込んだ方はこちらから